2010/10/14 08:13
テーマ:創作mirage-儚い夢- カテゴリ:韓国TV(ホテリアー)

mirage side -Reymond-23

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私は、例の書類をユイ捜査官に渡し、組織の全てを彼に委ねた。
このことが引き金となって間違いなく、我が父を初めモーガンや組織の者達の多くに
捜査の手が及ぶことになるだろう。

もちろんこの私にも多くの責任がある。しかし可笑しなことに・・・
組織を壊滅させる重要な材料を提供した私にはその手は及ばない。

その代わり、私にはやらなければならないことがある。

パーキン家という永く暗黒街に蔓延った組織を壊滅させ、そこで生きていた者たちを
再生させる責任がある。

それはモーガンが言う通り決して簡単なことではないだろう。
どれ程の人間が私の敷いたレールに乗って光差す途へと軌道修正できるのか。
予測することすら難しかった。

しかしもう既にその火蓋は切られた。
これから私は力の限り、彼らの行く途に転がる石を取り除いていく。
それがこの私に課せられた刑とも言えよう。

そして今は・・・その私の目的の為に、巻き込んでしまった愛しい者たちを
この手で救わなければならない。

FBIの事情聴取を受けながらも、私の心はここに無かった。

ジニョンの元へ・・・

フランクの元へ・・・

ソニーの元へ・・・

私の心は飛んでいた。


彼らの容態に関する報告は随時受けていたものの、この目で確認するまでは
安心できるものではなかった。
しかも、ジニョンの深刻な様子を知った時は、少しでも早く飛んで行きたい衝動に駆られた。



私が彼らが運ばれた病院に向かうことが出来た時には、既に二日を経過していた。

ジニョンのそばには連絡をしておいたジョルジュが、ジニョンの父親を伴って付き添っていた。

「ジョルジュ・・・すまない・・・ジニョンをこんなことに巻き込んでしまった
 ジニョンの父上にも・・陳謝したい・・そして・・君の父上にも・・・」

「レイ・・・話は先日の電話で大体理解しました
 しかし・・今は・・・ジニョンの父親にその事実は伝えたくはありません
 フランク・シンの存在も・・今はまだ・・」

「しかし・・フランクは君達のソウルホテルを救おうと私に向かっていたんだ・・・
 ソウルホテルと・・・ジニョンを救うこと・・彼はそれだけのために動いていた
 私は・・・」

「レイ・・・もう止めましょう・・・俺はあんたが好きだ・・・
 しかし・・ジニョンがあんな目に遭ったのがあんたのせいだとしたら・・・俺は・・・
 あんたを簡単に許すことができない
 しばらく・・俺たちをそっとしておいてもらえませんか」

ジョルジュはそう言うと、私から視線を逸らし背中を向けた。



ジニョンには軽い傷以外に身体的な異常は全く見られなかった。
しかし、不思議なことに、目覚めていても周囲にいる父親やジョルジュの姿さえ、
目に入らない状況だという。
医学的にはその原因すら見出せず、三日が過ぎた。

私は来る日も来る日も、彼女の病室の前で彼女の回復を待った。


   ジニョン・・・


   きっと君は・・・

   彼を待っているんだね・・・



私は彼らの入院手続きを代理の者に依頼していた。
その時ジョルジュの意向もあって、敢えてフランクの病室をジニョンの病室から離すことを
病院に願い出ていた。

私がここへ訪れた時には既にフランクの病室は別棟へと移されていたが
ジョルジュは決して、フランクをジニョンから遠ざけようとしていたのではなかった。
ふたりのことをジニョンの父親に素直に認めてもらうには、余りにタイミングが悪過ぎると
ジョルジュは思っていたようだった。

「時間が必要です・・・おじさんは頑固な人ですから・・・
 今は・・何も話さない方が・・・」

今は仕方の無いこと・・・私もそう思っていた。
しかし・・・例えそうであったとしても、ふたりが哀れでならなかった。
きっとフランクを待っているだろうジニョンが不憫でならなかった。

ジニョンの父は目覚めぬジニョンのそばを離れようとせず、たったの一度も
病室を出て来ることはなかった。

ジョルジュが時折、病室を出入りしていたが、病室の前で待つ私とは視線すら
合わせてはくれなかった。

無論ジニョンに会うことなど到底叶うところではない、そのことは重々わかっていながら
私は待つことしかできなかった。



      
ある時、フランクに付き添っているというソフィアという女が、ジニョンの病室の前に
大きな花瓶に生けた赤い薔薇を持って現れた。

彼女はジニョンの部屋をノックすると中から出てきたジョルジュにこう言った。

「この花を・・・病室の窓辺に飾ってください」

「窓辺に?」

「ええ・・窓辺に・・・外からよく見えるように・・・」
       

   外からよく見えるように・・・

   フランクの病室からよく見えるように・・・


私にはそう聞こえた。


ジョルジュにもきっとそう聞こえていたのだろう。
彼はまぶたをゆっくりと閉じて彼女に応えていた。

彼女がその花瓶をジョルジュに手渡した時だった。

「ちょっと・・待って」

彼女が急に振り返って、私の前に進み出ると手を差し出して唐突に言った。

「あなたのそのお花を・・・」

「・・・・・・?」

「一緒に・・・」

そう言って彼女は、私の手の中から私の赤い薔薇を奪うように取り上げ、
ジョルジュの手に渡った花瓶にその薔薇を入れ、彼女の薔薇と馴染ませるように生けた。

「これだけあると豪華ね」

そして彼女は、私に振り返るとにっこりと微笑んだ。

受け取ったジョルジュもまた、今までの私へのわだかまりの全てを解くかのように
私に向かって柔らかく頷いた。


もしかしたら、彼女は私が毎日こうして花を抱えここに座っているのを
見ていたのかもしれない。

そしていつも・・・
それを渡すことすら叶わず、そのまま持ち帰ってしまっていることも・・・
知っていたのかもしれない。


     フッ・・・きっとそうだ・・・

彼女が用意した花束にはあの花瓶は少し大き過ぎた。


多くを語らずとも・・・

フランクとジニョン・・ふたりの行く末を案ずる者同士

祈る心がここにあった


   通じ合う・・・


       ・・・心がここにあった・・・


         




 


 

 







































 


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