2009/11/21 16:53
テーマ:【創】恋の病 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「恋の病」2(終)




 
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BYJシアターです。

「恋の病」、本日は後編です。
前編がまだの方はそちらからどうぞ。そのほうがおもしろいです。


【配役】
J・・・・・・・・ぺ・ヨンジュン(写真集のスーツのJoon 横断歩道を渡るJoonを参考にどうぞ)
パク・ユリ・・・ご自分でどうぞ(27歳・会社員)
キム・ウソン・・キム・テウ  (32歳・会社の同僚)・・初恋の先輩役でJoonのお友達です。

特別出演
ゴージャス・・・イ・ミスク  (スキャンダルのチョ夫人)



ユリは気になる男、Jの店を知った。
ユリにとっては、初めての熱病を引き起こした男・・・。

それはまさに恋の病。


これから彼女はどうなっていくのでしょうか。



これより本編。
どうぞお楽しみください。



~~~~~~~~~~~~~






恋の病。

それは突然やってくる。



ある日突然、熱を発症し、
胸が痛くなり、

急に心が金縛りに会い、
感情の行き場を求めて、おろおろとする。

恋が成就しなければ、
いつまでも
ざわざわと泣き叫ぶ切ない虫と
暮らさなければならない。


しかし、これを打破するにはどうしたらいいのか。


もう成すすべもなく、泣いているだけ?



手だてはない、
ただ恋に身を焼く・・それしかない。


そして、それが最良の方法だ・・・。





主演:ぺ・ヨンジュン

【恋の病】2(終)






【胸の痛み】

あの日、あいつの店に行ってから、ユリはできるだけ、時間があるかぎり通うことにしていた。

あまり日を空けてしまうと、あいつは私を忘れてしまうかもしれない。ただの通りすがりの女になんかなりたくない。

そんな強がりを言ってみたいが、本音は毎日あいつを見つめていたい。隙があれば、あいつに触れたいのだ。あの女たちのように、あの指先で触れてほしい・・・。


でも、その先に何があるというのだ。
あいつと私。まったく歯車が噛み合わない人生を歩いているのではないか。


ウソンと私・・・たぶん、きっとお似合いだ。
ウソン・・・一流大学を出て、仕事が好きで、気持ちが優しい。背も178cmあり、年齢もぴったりだ。どこも悪いところなんてない。
では飛び抜けたところは・・・ない。でもそれがバランスの良さかもしれない。

あの男・・・J 。元ホスト。バー経営者。背が高く、顔良し、声良し、セクシー。指先がキレイ。それだけ。平均点は・・たぶん、世間的には厳しい点がつくかもしれない。では飛び抜けたところ・・・私を熱病にしたこと。それだけで、120点。





もうすぐ5時半だ。終業のベルと同時に飛び出さなくちゃ。


ウソンが帰り支度をするユリのところへやってくる。


ウ:ねえ、今日、ご飯食べにいかない?(やさしそうに見つめる)
ユ:ごめん。今日は用事があるの。(残念そうなフリをする)
ウ:・・・避けてる? (あのことで)
ユ:まさか・・・なんで?(違うの)
ウ:ならいいけど。今度の日曜日はいいね?
ユ:え、ええ。
ウ:(にっこりして)わかった。週末、二人になれるならいいや。じゃあな。
ユ:じゃあ、お先に。(笑顔を作る)



終業のベルとともに飛び出す。なるべく早い時間に着きたい。
今日は木曜日。水曜日が定休日なので、昨日は会えなかった。早く会いたい。




あいつは言った。

J:もう10時近いぞ。早く帰れよ。
ユ:大丈夫よ。(微笑む)
J:だめだ。(きっぱりと)もうあんたの時間は終わった。ここは、あとの客は水商売が多くなる。堅気のあんたがいちゃいけない。男はまだしも女たちが来るからな。帰ったほうがいい。(冷たく言い放つ)

私は仕方なく、席を立った。




あそこに座って何をするわけでもないが、ただあいつの仕事ぶりを見ているだけで心が和む。
早い時間に行って、ゆっくり彼を見ていたい。



ユリは通りを走りに走って、Jのビルの前まで来て一息つき、地下への階段を下りていく。
Jの店の厚い木のドアが開き、中から女が出てくる。たまにJの店で会う女。常連だ。女が階段のほうを見上げる。
ユリと目が合う。ユリは気にせず、その女の横を通り過ぎようとするが、いきなり女がユリの顔を平手打ちする。ユリはバランスを崩し、転んでしまう。


ユ:何するんですか!
女:自分の胸に聞いてごらんよ。ここに何しに来てんだよ? あんた、堅気だろ? あいつに何の用なのさ? (ガン付けする)
ユ:何の用って・・・ただ、ここが気に入ってるだけで・・・。
女:ウソつくんじゃねえよ。あんた、Jの何なのさ!(ものすごい剣幕だ)


女が凄み、ユリは驚く。その時、中からJが出てくる。


J:おい。うちの前でごたごたは起こさないでくれよ。ナヨン、もう帰れよ。うちの客にまたこういうことをしたら、出入り禁止だぞ。(ユリを抱き起こす)
ナ:(態度をがらっと変えて)ごめん、J。あんたの事が心配で・・・。ごめんね。(かわいく微笑む)私が悪かったわ。許して、J。もう二度とこんなことはしないわ。
J:この子に謝れよ。(睨みつける)
ナ:(じっとユリを見つめるが、Jが見ているので)ごめんね。私が勘違いしてたわ。許してくれるわね。
ユ:(下を向いたまま)ええ。
ナ:(甘えるように)J、これでいいでしょ? もう行かなくちゃ。じゃあまたね。(小さく手を振る)


ナヨンはさっさと階段を上がっていく。ユリとJが残された。


ユ:どうしてわかったの?(Jを見る)
J:あれ。(ドアの上の防犯カメラを指さす)まあ、中へ入れよ。(ユリの背を押す)
ユ:ええ。


店内はちょうど客が切れていて、Jとユリの二人だけだ。
フランソワーズ・アルディが流れている。早い時間はアンニュイな曲が、夜はジャズがかかっている。


J:顔、見せてみろ。(指先でユリのアゴを上げて、左頬のあたりをよく見る)冷やせば大丈夫かな。


カウンターの中に入り、おしぼりに氷を詰め、それをビニール袋に入れて、ユリに渡す。


J:これでよく冷やせよ。
ユ:(手を伸ばして受け取る)ありがとう。


いつもの窓際のイスのほうへ少し足を引きずりながら、歩く。
それを見て、Jがカウンターの中から出てくる。


J:どこかケガしたのか?(心配そうに見る)
ユ:よろけて転んだ時に右の膝の辺りを打ったみたい。
J:見せてみろ。
ユ:えっ?


ユリは躊躇する。スカートを上げて男に膝をみせるなんて。でもJは気にせず、ユリの長めのスカートをたくし上げ、少し触って、膝の様子を見る。


J:痛いか?(顔を覗く) 少しシップしておいたほうがいいな。


Jがまたカウンターの中へ救急箱をとりに行く。


ユ:救急箱もあるの?
J:酔っ払い相手だといろいろあるんだよ。


Jがユリの横へ来て、救急箱をカウンターにおくと、まず、ユリを抱き上げてイスに座らせる。そして救急箱から、シップ薬を出して、裏のフィルムを剥がす。


J:ちょっとスカートを上げろよ。
ユ:うん。(おとなしく従う)


Jがシップを右膝の打撲した辺りに貼る。


J:ここでいいか?
ユ:うん。


Jがシップ薬の周りに絆創膏を貼って、またカウンターの中へ入って行く。


ユリはJを見つめ続けている。
レストランで腕を掴まれて以来、初めて、Jがユリに触れた。

彼は私を抱き起こした。
アゴを掴んで私の顔を見た。
スカートを上げて、膝を触った。
抱き上げてイスに座らせた。

あまりに自然に・・・。自然すぎて、その感触がちゃんと残っていない。
あんなに触れてほしかったのに、それはまるで当たり前のように行なわれて、その感触がはっきり残っていない・・・。



J:まだメシ、食ってないんだろ?(いろいろ仕事をしながら聞く)
ユ:うん。(カウンターに座ってJを見つめている)
J:客もいないから、サンドイッチでも作るか。(他を見ながら話している)
ユ:うん。(ただ見つめている)
J:(サンドイッチを作りながら)うん? どうした? 今日は威勢が悪いな。ケガして弱気になったか?
ユ:うん・・・。(ただ見つめている)


Jが顔を上げた。


J:どうした?(ユリを見つめる)
ユ:あなた、私にはもう来るなって言わなかったね。ごたごたを引き起こしている張本人なのに・・・。
J:・・・。(ユリを見つめる)
ユ:ちょっと胸がいっぱいになっただけ。(Jを見つめている)
J:・・・・。(フンと笑う)


Jは黙って、サンドイッチを作る。ユリは涙ぐみながら、Jの顔を見つめている。そして、時折、鼻をすする。
Jは、ミルクを温め、ユリのため、カフェオレを作る。

ユリの前に、サンドイッチとカフェオレを出す。


J:食ってけよ。
ユ:うん。
J:顔もちゃんと冷やせよ。
ユ:うん。


ユリは鼻をすすりながら、カフェオレを飲む。Jの顔を見ながら、サンドイッチを食べる。ただ見つめているだけ。
Jを睨むように見つめながら食事をする。

Jもカウンターごしにユリをじっと見つめている。

ユリが食べ終わって水を飲む。


ユ:もう少しいちゃだめ?
J:・・・。
ユ:(壁の時計を見る)まだ7時だもの。次のお客さんが入ってくるまで。居ていいでしょ?
J:・・・うん。(大きく息を吐く)そうだな。・・・ユリ、おまえもわかってると思うけど、水商売の女は体を張ってるんだ。それだけにいざとなると、鼻息も荒いし、取っ組み合いになる・・・。おまえはそういう世界にいないんだから、あんまり関わらないほうがいい・・・。
ユ:でもJに会いたいの・・・。


Jが空いた皿を片付けにくる。その手をユリがぎゅっと掴んだ。

Jが驚いて、ユリを見る。ユリは掴んだその手を見つめている。愛しい手。この手に撫でられたくて・・・。ユリは指でやさしく撫でる。Jはユリの様子を見ている。


ドアが開く。Jが手を引っ込め、


J:いらっしゃい。


サラリーマン風の二人が入ってくる。
もうJとユリとの時間はおしまい・・・ユリはゆっくりイスから降りる。Jはにこやかに客と話をしている。

ユリがドアに向かうとJの声がする。


J:毎度!


ユリはドアを開け、出ていく。

通りを歩いて、角まで来ると、急に涙が込み上げてくる。


何してんのよ。こんな事続けてどうすんのよ・・・。答えはわかってるのに・・・。
あいつがホストだった頃には、女たちはお金をかけてあいつのもとへ通ってたのよ。
それを思えば、よかったじゃない、私は傷ついてないもん・・・。


どうしようもなくて、ユリはその場に座り込み、泣いてしまう。

酔っ払いが通りかかり、声をかける。


酔:よう、姉ちゃん、遊んでいかないか? なあ、返事くらいしろよ。


ユリは顔を上げる。


ユ:うるせーな。人に構うんじゃねえよ。


ユリはドスをきかせて言うと、立ち上がって、威勢良く走っていく。


痛い膝を庇いながら走る。涙が出て仕方がない。

Jは絶対に手に入らない男なのか・・・。住まいも育ちも何も知らない。でも今の彼が好き・・・。






【熱】

ベッドに入っても眠ることができない。

重い恋の病。
ああ!

でも彼は今、仕事をしている。午前0時。まだまだ彼の仕事は続く。
確実に、彼はあそこにいる。他の女と遊んでなんかいない。
わかっている。そんなこと・・・。

でも安心して寝付く事が出来ない。

なぜ・・・。なぜ、こんなに愛しているの・・・?






にぎやかな夜のバー。早い時間のアンニュイな曲とはうって変わって、ジャズがかかっている。カウンターには客が所狭しと入っている。男も女も。定員いっぱいだ。補助イスまで出ている。タバコの煙と笑いとジャズがごちゃ混ぜになって夜のバーを盛り立てている。

一人の女がクダをまいてる。しかし、周りもうるさいので目立つことはない。


女1:ねえ、J。デートしよう。(Jにラブコールを送る)カウンターごしなんてつまんない。あんたが恋しい。あんたが恋しいよお。(酔って頬杖をつきながら泣く)
女2:ごめんね、兄さん。最近、姉さん、お酒、弱くなっちゃって。姉さん、大丈夫?
女1:あ~ん、もういや。Jが恋しい・・・。


Jがやって来て、カウンターごしに手をのばし、女の手を握ってやる。


女1:ありがとね、あんた、やっぱりいい男だよ。(涙が光って笑う)


向こうのほうから、

男:マスター、ちょっと。バーボン、ちょうだい。
J:(男のほうへ行く)バーボンはどれにしますか。いろいろあるけど・・・お勧め? う~ん、香りが強いのがいいの? じゃあ、・・・・・。


Jが後ろに並ぶバーボンを説明している。
女はJに目が釘付けである。

女2:姉さん、まだ好きなの?(心配になる)
女1:うん。(ずっとJを見ている)だめだわ、あいつが一番だもん。忘れられない・・・もうお金では手に入らないんだよね・・・。もう遠い人なんだよね。
女2:(先輩を気遣って)ねえ、テヒョン、知ってる? すっごくかわいいよお。姉さんの好みだよ。遊びに行こうよ。あいつ、楽しいしさ、ナンバーワンになる前に手をつけようよ。
女1:でもさ・・・。ここにいたほうがいいよ。(ほろ酔いでJを見ている)
女2:ねえ、姉さんたら。(顔を覗きこむ)ぐっと抱きしめてくれる男のほうがいいよ。テヒョンのとこ、行こ。きっと気に入るって!(元気づける)


女は後輩に抱き抱えられながら、ドアのほうへ進む。


女2:兄さん、ありがとね!(手を振る) ご馳走様!
J:毎度!
女1:ただの「毎度」かよ・・・。(情けないな)
女2:姉さん!(いさめるように背を押して出ていく)


Jは出て行ったドアをちらっと見て、また次のオーダーを聞きに行き、客と楽しげに笑う。





次の日。ユリは会社を休んだ。
洗面所で顔を確認する。頬骨の辺りがもしかすると、少しあざになるかもしれないが、たぶん、そんなにひどい事にはならないだろう。
昨日の夜はあまりよく眠れなかった。昨日は手を握っただけで帰ってきたので、何か不完全燃焼で気分が収まらない。


Jに会いたくて仕方がない。
Jに言葉で思いを告げたい。
まあ、あいつは知っているんだけど。私が彼に夢中だってことは。でも、知られていても告白したい・・・。

なんか少し、ストーカーみたいだけど・・・でもあいつだって、少しは私のことを、少しは頭にあるはずだ。


ユリはタンクトップとキャミソールを重ね着して、スカートをはいて出かける。




公園で待ってみるが、来る気配がない。
バーのほうへ行ってみることにする。


バーのドアの前で、ノックをして、防犯カメラのほうに手を振る。

ドアが開く。
Jが覗いた。ユリが微笑むと、中へ通す。


J:どうした? また会社を休んだのか?
ユ:うん。
J:まじめに働けよ。(モップを持つ)
ユ:うん。・・・掃除してるの?


Jがモップをかけている。


ユ:公園に来なかったね。今日は散歩しないの?
J:昨日は夜が遅かったから・・・。掃除が遅れちゃってさ。
ユ:何かあったの?
J:ああ。(モップをかける手を止める)おまえが邪魔だな・・・。こっちへ来い。


Jがユリを軽々抱き上げ、窓際のカウンターの上に座らせた。


J:そこでじっとしてろよ。
ユ:うん。


Jはモップをかけ続けている。


ユ:昨日、何があったの?
J:ああ。・・・夜中のデート。(顔を上げない)
ユ:それで、寝不足・・・?
J:うん・・・。


ユリは胸が痛い。この人と寝られる人がいるんだ・・・。


ユ:どんな人?
J:(顔を上げて)恋人。今週は水曜日が会えなかったから・・・。


あの人だ・・・。


ユ:イタリアンで会ったゴージャスな人?(あの人?)
J:よく覚えてるな。やっぱり、ストーカー以上だ。(笑う)
ユ:恋人なんだ・・・。(心が萎んでいく)
J:うん・・・。(どんどん掃除を続けていく)
ユ:長いの?(胸が苦しい)
J:そうだな。ホスト時代からだから・・・。
ユ:・・・その人のジゴロだったんだ・・・。
J:(横目でちらっと見て)そうだよ。
ユ:・・・。(胸がいっぱいになった)
J:彼女がいなかったら、あの仕事も続けられなかったよ。
ユ:なぜ?
J:全てがウソの愛じゃ、いやになるじゃないか。(顔をユリのほうに向ける)
ユ:本物の愛に支えられていたというのね?
J:・・・うん・・・。
ユ:(胸が苦しいが聞かずにはいられない)結婚しないの、その人と。
J:いいんだよ、形なんて。今のままで・・・。
ユ:ゴージャスも独身なの?
J:未亡人・・・。
ユ:そうなんだ・・・。スポンサーから恋人になったのね・・・。


掃除を終えたJがユリを見つめた。ユリのほうへ歩いてきて、ユリが座っているカウンターに、ユリの両サイドに両手をつき、ユリを見つめる。


ユ:なんで話したの? 恋人のこと?
J:おまえがあんまり・・・一生懸命だからさ・・・。


ユリのミュールが脱げて下へ落ちた。Jがそれを見た。


ユ:(やさしい声だが悲しげに)なんで言ったのよ・・・なんで・・・教えてくれなくてよかったのに・・・。


素足になった足で、Jをやさしく何度も蹴る。


ユ:バカ・・・。(少し涙ぐむ)


Jはユリの気持ちを察して、ユリの足に蹴られている。じっとユリの顔を見つめる。


ユ:ひどい男・・・。こんなに好きだってわかってるのにキスもしないで、恋人の話をして・・・そのくせ、やさしくて。ひどい男よ、あなたは。(涙が流れてしまう)

Jがユリの涙をやさしく拭う。ユリは近づいたJの首に手を回して、抱きついて泣く。
Jがやさしく抱き、背をトントンとたたく。ユリは余計、寂しい思いにかられ、泣けてしまう。



ひとしきり泣くと、Jが顔を覗きこんで、

J:(ユリのアゴに指先を添えて、左頬がよく見えるように顔の向きを変え)これなら、あざにはならないな。よかった。(顔を良く見て笑顔で)おい、一緒にメシでも食いにいくか? オレは今の時間に行かないと後がないんだ。
ユ:(Jを見つめる)泣いた女を食事に誘うの? (気分を入れ替えて) いいわ、行くわ。化粧室貸して。汚さないように使うから。
J:(うなずいて)普通に使えよ。オレはシャワーを浴びてくるから。汗臭いまま、仕事に出られないからさ。
ユ:シャワーがあるの? (どこに?)
J:奥にね、本当にちっちゃいやつ。それと仮眠室。ゆっくりして待ってて。
ユ:うん・・・。J、私、あなたの汗のニオイも好き・・・。


Jはユリを見て、もうどうしようもないなという顔をして、微笑む。ユリを抱いてカウンターから降ろし、自分はカウンターをくぐり、奥の部屋へ入っていく。



ユリはバッグを持って化粧室へ入っていく。

鏡の前に立つ。化粧を直す。

今日は思いつめて、ここへ来た。
でも、Jにはもう恋人がいた。ゴージャスがそうだったんだ。
寂しいけれど、彼が複数の女と遊び暮らしているのではなく、決まった女がいるというだけでもなぜか心が温かくなった。不思議だ・・・。




こざっぱりしたJとユリが並んで歩く。まだ仕事着になっていないJはTシャツにジーンズだった。ただ香りはいつものコロンだった。
ユリの心を蝕み、今は心を癒すニオイ・・・。


J:いつも行く定食屋でいいだろ?
ユ:うん。


Jとお日様の下を歩くのはなんとも楽しい。ちょっとだけ腕を組みたくなる。


ユ:腕組んでもいい?(Jを見上げながら言う)
J:ああ。(腕を貸す)


ユリは腕を組み、Jにもたれるように歩く。ずっとこうやって歩いていたい・・・いつまでも。


ユ:ねえ、私のどんなところが気に入った?(もたれながら目は遠くを見ている)
J:えっ? (唐突なので驚く)
ユ:恋人じゃなくても一緒にいてくれるのは、たぶん何か気に入ったところがあるはずだもん。
J:(ちょっと考えて言う)・・・怒った顔かな。
ユ:えっ?(顔を覗きこむ)なんでえ?
J:(笑顔でユリを見る)真剣に怒った顔。それから、何か考えながら必死な時、人を睨みつけるだろ。あの顔。〈笑う〉
ユ:ひどい!(笑う)笑顔は? 笑顔はないの?(Jの腕を引っ張る)


Jが笑っている。


ユ:ねえ、笑顔はかわいくないの?(Jの顔を覗きこむ) ひど~い。
J:そんなことはないよ・・・ただ、おまえは・・(ユリを見る)美人だから、どれもいいけど、真剣な顔が気迫があって好きなだけだよ。


それを聞いて、ユリは胸がいっぱいになった。

たぶん、彼も私を好きなんだ・・・。それがわかった・・・。
でもきっとだめなんだよね。
もうきっと、この人は生きる道を決めてしまっているんだ。



ユリは胸にあふれてくる思いを悟られないように、顔を見せないように歩く。
Jの腕にもたれるようにして、定食屋まで歩いていった。




小さな、親父一人がやっている定食屋にJが入っていく。

J:こんちは!
親:よ! 兄さん、今日はちょっと遅かったな。あれ、お連れもいるの?
J:ああ。入れよ。(ユリを呼ぶ)
親:珍しいね。姉さんも入って。


ユリがちょっと会釈しながら入る。ユリはJとカウンターに座る。


J:何にする? 品書きは親父の後ろにあるやつ。(親父に)オレはいつものね。
親:あいよ!
ユ:う~ん、じゃあ、私も!
親:姉さん、それはムリだ。
ユ:えっ、なんで? (驚く)
親:この人、すごい量食べるんだよ。姉さんじゃムリだよ。
ユ:ええ~。(Jを見る)
J:まともに食べるのはここだけだから、食い溜めだよね、親父。(笑う)
ユ:へえ。(微笑んでJを見る)


確かにそうだ。午後3時に店が始まってしまえば、午前3時近くまで自分は飲み食いしている暇がない。
一人で全てをやっている。掃除も何もかも。
この人はそうした地味なことができるから今があるんだ、きっと。ただの浮き草ではなかったんだ。


J:何、笑ってるの?
ユ:えっ? え・ら・いなと思って。全部自分でやって。
親:姉さん、それを言うなら、おじさんもだよ。
ユ:あっ、そうですね。皆、すごいわ!
親:うれしいねえ。じゃあ、姉さん用に、特製で兄さんのランチのミニ版、作ってやるよ。
ユ:えっ? やったあ!(うれしそうにJを見る)


ユリは楽しげに笑った。Jも笑った。
ユリがこの恋の病になってから、こんなキレイな笑顔で屈託なく笑ったことはなかった。Jが好きな顔を選ぶのに後回しにした気持ちがよくわかる。

今、ユリは大輪の花のような笑顔でJを見つめた。








【岐路】

日曜日ごとにユリはウソンとデートしていた。特に変わったことはしなかったが、お茶を飲んで、映画を見て、食事をした。

まだユリはウソンにプロポーズの返事をしていなかった。
もうそろそろしなくてならない。

それは、ウソンのプレゼンが通って、彼は2ヶ月後、日本に赴任しなければならなかったから。
32歳という彼の年齢を考えてもここでキチンとYes,Noの返事をしてあげなければいけない。それがマナーというものだろう。


ユリは決めかねていた。もう、Jは見込みがないことはわかっていたが、それでも彼と離れるなんて、今のユリにはできそうにない。
Jの隠れた思いに気づいてしまってからはなおさらだ。


あの日、思いつめてJを訪ね、恋人のことを聞いて泣き、そのあとで、実はJも自分のことを好きだということに気がついた。そして、あのJの屈託のない笑顔・・・。

あの日の出来事はユリの心を大きく揺さぶっている。


そして気がつけば、Jは、ユリを「おまえ」と呼んでいる。最初は「あんた」と言っていた。「おまえ」は特別な呼び方だ。

心の区切りがつけられない・・・。しかし、決着の日は差し迫っていた。






ある木曜日の夜。

ユリはウソンと一緒に夕食をとり、一緒に友達に聞いたバーへ行こうと誘った。
ウソンは、「その友達って誰?」と聞いたが、大学時代の友達と言って、ごまかした。


ユリは、自分の心臓の鼓動が人にも聞こえそうなほどドキドキしていたが、ウソンを連れて、Jのビルの階段を降りていった。入る前に防犯カメラを見た。
Jは手が空いている時は必ずカメラを覗いていたから。


ドアを開ける。

Jがユリを見た。ユリはウソンを「こっちよ」と引っ張った。Jがしっかり、ウソンを観察している。


J:どうぞ、いらっしゃい。


ウソンは座りながら、


ウ:いい感じのお店ですね。ええっと、何があるのかな。君にカクテルみたいの作ってもらおうか?(ユリを見る)
J:お連れさんはカクテルですね。お客さんは?
ウ:僕はドライマティーニ。女の子用に甘い感じで強くないの、作ってください。
J:わかりました。

Jが二人のカクテルを作っている。

ウ:本当にいい雰囲気だね。ユリの友達はセンスがいいなあ。(ユリに微笑む)
ユ:ええ。(微笑み返す)


二人の前にカクテルが並べられる。
ユリに出されたのは、Jがユリ・スペシャルと呼んでいたものだった。
ユリは胸がいっぱいになるが、笑顔で手に取る。


ウ:乾杯。(笑顔)
ユ:乾杯。(笑顔を作る)
ウ:(自分のを飲んで)ユリ、おいしい?
ユ:ええ。
ウ:ユリ、僕はいい返事がほしいんだけど。今じゃなくてもいいんだけど・・・もう少ししたら、返事がほしいんだ。日本へ行くのに、もし、もし君が行ってくれる場合、書類の手配もあるし。ね、いいね?
ユ:・・・ええ・・・。
ウ:うん・・・。覚悟して聞くよ、その時は。・・・でもまだいいよ、まだ。悩んでいいよ。たくさん悩んで・・・いい返事を聞きたいから・・・。いいね?(笑顔でユリを見る)
ユ:・・・ええ・・・。


遠くでJが二人の会話を聞いている。ユリはなかなかJの表情を見ることができなかったが、顔を見ても見なくても、なんとなく、Jの気持ちが、ユリのほうへ流れてくるような気がした。
いつもより沈んだ空気が、そこにあった。

ウソンがお金を払い、二人が出て行くとき、いつものように、Jが言った。


J:毎度!


Jは防犯カメラで出て行った二人を目で追っている。その顔はいつになく真剣で苦しそうな表情をしていた。




ユリはもう初めから答えはわかっていると思っても、まだ決められなかった。こうしている自分が情けなかった。
Jが好きでもJのところへ行くことはできない。
Jはホストという職業をしていたけれど、きっと人に恩義を感じる人なんだろう。
未亡人となったゴージャスを振ることはできない。これは手前味噌に考えてのことだが、そうでなくても、長く愛し合ってきたのなら、私のもとへは来ることはない。

Jに会って、気持ちを話そう。そうすれば、少しは勇気を出して結婚に踏み切れるはずだ。








【恋】

会社を休み、バーの休みの日にJを訪ねる。Jもこれが最後と思ったのか、休みの日を空けてくれた。


会う前から胸が苦しかったが、ユリはビルの地下への階段をゆっくり降りる。
深呼吸して、ドアをノックして、防犯カメラを見る。

ドアが開いた。Jが顔を覗かせる。Jはなにも言わず、中へ引き入れた。


J:今、コーヒーを入れるよ。座って。
ユ:うん。


ユリはいつもの窓際の席に座る。Jがコーヒーを2つカウンターに置く。そして、自分も外へ出て、ユリの隣の席に座った。


ユ:初めてね、並んで座るの。いつもあなたはカウンターの向こうで・・・距離があった・・・。(感慨深げに言う)
J:そうだな。でも今日はおまえの話を聞く日だから。(やさしく微笑む)
ユ:うん。なんの話だか、わかるでしょ?(顔を覗く)


二人はイスを回転させて膝がくっつく距離で向かい合う。


J:あの彼氏のこと? 今思うと、イタリアンで一緒にいた人だね。(ユリの顔を見る)
ユ:そうよ。よく覚えているのね。(あなたも私を見てたのね)あの日、彼がプロポーズしたの。・・・でも私は聞いてなかった。あなたの姿を追っていて・・・とても彼の話を聞ける状況ではなかったのよ。(正直に話す)
J:・・・そうか。(ちょっと下を向き自分の手元を見て)オレもおまえのことをよく覚えてるよ。(顔を上げて)あの人の肩ごしにオレをじっと見つめていたこと。オレと同じワインを頼んだこと・・・。(ユリを見つめる)


ユリは涙がこぼれてしまう。Jもあの時から、私を好きだったんだ。


ユ:私、どうしたらいい?(Jの顔を見つめる)
J:答えは決めて来てるんだろ? 顔に書いてあるよ。
ユ:J。・・・私、ウソンと結婚するわ。(自分の気持ちを言葉にしてみる)
J:そうか・・。それがいいよ・・。(やさしい顔をする)
ユ:ウソンと結婚したら、浮気なんて絶対しない。
J:・・・。(聞いている)
ユ:ウソンのために尽くすわ。
J:・・・。
ユ:J・・・。今まで、あなたみたいに、無条件で好きになった男はいなかった。もう、きっとそんな人なんて出てきやしない・・・。
J:・・・。(ユリを見つめる)
ユ:あなた以外だったら誰でも同じ。でも、その中ではウソンはとってもいい人よ。彼がいい人だってわかったでしょ?
J:そうだね・・・おまえを大切にしている。愛しているんだね。
ユ:きっとそう・・・。だから、ウソンにする。(でも最後に言いたいの)・・・あなたが好き。でもだめなんでしょ? ・・・もうあなたのことは諦める。でも、好きだって気持ち、持っててもいいわよね? この気持ちはとても大切だから。J、あなたに会えてよかった・・・。ここまで人を好きになれるってわかったから。


Jがユリを見つめる。


ユ:私たち、だめでしょう? 答えて、J。(見つめる)
J:・・・ごめん・・・。それしか言えなくて。(苦しそうな顔をする)
ユ:違うもんね、私たち・・・。こんなに好きでもだめなんでしょう?(胸が痛い)
J:もう会うのはやめよう。・・・もうここには来るな。(強い視線で見つめる)
ユ:(唇を噛みしめるが)うん。もう、絶対来ない。・・・さようなら、J!


向かい合って座っていたイスから、ユリがポンと降りる。ユリはJを睨みつけて、バッグを手にとると、ドアのほうへ歩いて行く。

Jは目の前のイスが空っぽになると、急に寂しくなり、胸が痛くなる。ユリを追って、ドアのほうへ行き、ユリの腕を掴む。ユリが振り返った。

Jは左手でドアのカギをカチャっと閉めた。





ユリとJが向かい合う。まるで真剣勝負をするかのように。

Jがユリの顔を両手で包み、顔を近づけた。ユリは持っていたバッグを落とす。
Jはユリを愛しそうに見つめ、長くて熱いキスをする。
二人の吐息が漏れ、もう一度、キスをする。


ユリはキスをされながら、Jのズボンのベルトに手をかける。カチャカチャという金属音がした・・・。
Jが気がついて、ユリの顔を見る。ユリはJの顔を睨んだまま、ゆっくりとJのズボンのボタンを外した。

Jが静かにユリを見つめている。ユリは目に涙を溜めているが、しっかりとJを睨みつけている。
Jがユリを苦しそうな、なんとも言えない顔をして見つめ、ユリを壁際に押し付けた。ユリは一筋の涙を流して、Jを愛しそうに見つめたまま、Jの顔を両手で包んだ。Jが顔を近づけ、熱いキスをして、ユリを抱き上げた。ユリがせり上がり、彼の首にしがみつくように腕を回し、抱きついていった・・・。










【明日】

ユリは今、自宅の部屋に一人いる。

J、あなたに出会えたこと、私は忘れない。
結局、あなたは、私のものにはならなかったけど・・・。

最後に二人が一つになれたこと、身も心も一つになれたこと、
それだけでもうれしかった・・・。あなたの愛を感じたもの。

心に傷を残したけど・・・。

でも、私は幸せ。
あなたを知らなかった時より数倍・・・。

勇気を持って生きるわ。
あなたがいなくても・・・。

あなたは私に愛する力をくれたもの・・・。

私を熱病に侵して・・・そして愛することを教えてくれたのよ。



J、きっといつまでも・・・私の心にあなたはいる。











空港のロビーのベンチで、ウソンが幸せそうにしている。


ウ:もうすぐだね。あと30分くらいで搭乗だね。
ユ:うん。
ウ:最高の気分だな。(ユリを見る)だって、仕事は成功。ユリは僕とここにいるだろ。なんか人生最良の日って感じだよな。(晴れ晴れとした顔をしている)
ユ:もっといい日がもっともっと来るわよ。(ウソンの人の良さに、この人でよかったと思う)
ウ:そうかな。うん・・・。(うれしそうだ)



そうよ、もっといい日が来るわ。
私があなたを心から慕って、あなたじゃなくちゃ生きていけないと思える日が。
二人でいることが何よりもステキだと思える日が。



搭乗のアナウンスが流れる。二人は立ち上がり、ゲートへ進む。






これから二人は日本へ行く。新天地で二人、一から始めるわ。




きっとJは今日もあのバーで仕込みの準備をしているはずだ。


私がこうして旅立つ日も。
私がかわいい子どもを抱く日も。
私がウソンと愛を育て、平和な生活を長く続けていく間、いつもJはあそこにいる。






私のタイムカプセルの中、Jはいつも、あそこにいる・・・。










THE END






次回シアターは12月半ばです。

大人の恋を描いた「恋の病2」は、
こちらのブログのテーマ「BYJシアター」の8ページあたりにあります。






2009/11/19 01:39
テーマ:【創】恋の病 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「恋の病」1

Photo


 
BGMはここをクリック!




BYJシアターです。

ここのブログには、禁止用語があって・・・
長い創作をアップしようとして、それにひっかかると、
その答えを探せないので、諦めざるを得ません・・・。

今日もそうで・・・ちょっと残念です・・・。

というわけで、何点かここにアップできないものがあります。

では、気を取り直し、

本日は「恋の病」前編です。

これはもう4年以上前の作品ですが、今読んでもドキドキします^^

前に「恋の病2」をアップしましたが、あれとは全く違うお話です。


こちらは写真集のもっとジゴロ系のJoonです。
濃いサングラスをかけ、短いスカーフを首に巻き、
横断歩道に佇む、フェロモンムンムンのJoon。
立っているだけで、その熱もニオイも感じられるあのJoonです。


*水商売は詳しくないので、記述が変だったら、関係者の皆様、ごめんなさい。
あくまで創作の世界。主人公二人の話のほうを優先してみてね。

ほとんど、二人芝居です。


今回は短編で、前・後編の2回です。



【配役】
J・・・・・・・・ぺ・ヨンジュン(写真集のスーツのJoon 横断歩道を渡るJoonを参考にどうぞ)
パク・ユリ・・・ご自分でどうぞ(27歳・会社員)
キム・ウソン・・キム・テウ  (32歳・会社の同僚)・・初恋の先輩役でJoonのお友達です。

特別出演
ゴージャス・・・イ・ミスク  (スキャンダルのチョ夫人)



もし、あなたの前に突然こんな男が現れたら・・・どうしますか?

恋の病に落ちるでしょうか?




これより本編。
どうぞお楽しみください。



~~~~~~~




恋の病。

それは突然やってくる。



ある日突然、熱を発症し、
胸が痛くなり、

急に心が金縛りにあい、
感情の行き場を求めて、おろおろとする。


恋が成就しなければ、
いつまでも
ざわざわと泣き叫ぶ切ない虫と
暮らさなければならない。




しかし、これを打破するにはどうしたらいいのか。


もう成すすべもなく、泣いているだけ?



手だてはない、
ただ恋に身を焼く・・それしかない。




そして、それが最良の方法だ・・・。





主演:ぺ・ヨンジュン

【恋の病】前編





【始まり】

7月のある午後。

急ぎの書類を抱えてユリは全速力で走っていた。こんな大切なプレゼンの日にもっとも重要な書類を忘れていくなんて。
あのバカ。
四星工業まで、あと50m。
頑張れ、ユリ!


前から来た男とすれ違い様に肩がぶつかり、ユリは書類を落とす。男はちょっと振り向いてユリの顔を見るが、またさっさと行ってしまう。


何よ。今のやつ!

地団駄を踏む。

まあ、今の男より落ちてバラバラになった書類を集めなくちゃ。やだ、あと15分しかないっていうのに。
まったく!


ユリは書類を全部かき集め、また急いで走り出す。受付嬢に手渡しすると、プレゼン会場に受付が電話して、書類は滞りなく、届けられた。


あまりに走ったので、ユリの頭の中は酸欠で真っ白だ。
やっと大役をこなし、ビルの外へ出てくる。
タクシーが捕まらず、ここまで走ってきてしまった。
会社からここまで徒歩15分て言ったって、全速力で走ったのだから、足はガタガタだ。なんか喉も痛い。
パンプスにこの走りにくい会社の制服のスカートのせいで、どっと疲れが吹きだす感じだ。


もっと走りやすいラインにしてよ。スリットを大きく入れるとかしてさ。これじゃ足がもつれちゃうよ。


また道を戻っていくと、途中の川沿いの公園のベンチにさっきの男がいるではないか。


あいつ! とは思っても、ケンカを売りにいくわけにもいかないから、諦めてしばらく歩く。
でもあの男のせいで余計疲れさせられたのだ。
だんだんむかついてきて、結局さっきの男の方へ走っていく。



濃いサングラスをかけたその男は肌が透けそうな薄い紫のテレンとしたシャツを着て、ベンチに両手をかけ、足を組み、横を向いて座っている。ユリは男の前に立って、


ユ:ねえ、あんた。さっき私とぶつかった人でしょ?
男:(顔をユリのほうへ向けて)ああ、あんたか。
ユ:ちょっと! あんたからぶつかって来たんでしょ? ごめんなさいの一つもないわけ?
男:・・・なんで今頃、いちゃもん、つけてくるのさ?
ユ:(確かに・・)さ、さっきは急いでたのよ。し、仕事の用事があったのよ。あんたのせいで書類はバラバラになっちゃったし、ったくもう!


男はフンと笑って、ユリの顔をじっと見た。


ユ:なによ、その態度。
男:まあ、熱くなるなよ。・・・悪かったな。それでいいんだろ? それ以上何かあるのかよ?
ユ:うう~ん・・・ないわよ!(バカにして!)
男:じゃあ、バイバイ。(軽く右手の親指と人指し指、中指をくっつけてバイバイをする)
ユ:うううん・・・(私は子供じゃないわ)・・むかつく・・・。
男:ねえ、オレここで待ち合わせしてるんだよ。ど・い・て。(笑顔を作る)
ユ:むかつく!(男の顔を睨む)

ユリは怒って、くるりと方向を変えると、大股で歩き出す。

むかつく! なんなの、あの男。バカみたいなやつ。口もまともにきけないやつ!・・・ホント、むかつく!


イライラしながら、公園の出口にさしかかると、かわいい感じの女がいそいそと中へ歩いていく。
ふと、振り返ると、あの男のもとへ歩いていくではないか。

あのバ~カ。

見ていると、男は女の顔を見ると、満面の笑みを浮かべ、やさしそうに手招きする。
女が横に座ると、やさしく肩を抱き、髪を撫でる。
そのしぐさの自然なこと。ユリはふっと惹きつけられ、二人の世界に入り込む。


しかし、次の瞬間、さっきのことを思い出して、

バッカみたい。だめだめ、あんな男に気を取られちゃ。会社に帰ってお仕事お仕事!



そうは言って会社に戻ったものの、伝票整理はしているが、なぜか、あの男の笑顔と、髪を撫でる手のしぐさが忘れられない・・・。頭の中に浮かんでしまう。そして一人で火照ってしまう。

やだ。どうしたっていうの? なんであんな男のことが頭から離れないの・・・変よ。
私、変になっちゃったの?
欲求不満? やだなあもう・・・。

しかし、ちょっと気を許すと、あの男の顔が頭に浮かぶ。

今はそれだけではない。あの男のコロンのニオイまで思い出している。
やだ。胸に光っていた金のネックレスまで・・・。その細工まで覚えている・・・。
手のしぐさというより、指の一本一本の動きまでコピーしたように私の脳裏に焼きついている・・・。




6時近くになって、そろそろ帰ろうとしていると、プレゼンに出ていたキム・ウソンが戻ってきた。


ウ:ユリ。まだいてくれたの?(うれしそうな顔になる)
ユ:仕事が捗らなくて・・・。(まいったわ)
ウ:今日はありがとう。おかげで助かったよ。
ユ:ねえ、もう忘れ物はなしよ。タクシーが捕まえられなくて、私、全速力で走ったんだからね。それに人とぶつかって書類も落としたし。まいったわよ。
ウ:悪い!(ユリを両手で拝むようにする) なあ、ハラ減っただろ。おごるよ。いいだろ?
ユ:おいしいもの、食べさせてよ。(ちょっと睨む)
ウ:ユリの好きなパスタ。いいだろ?
ユ:あ・そ・こ?
ウ:う~ん。(ピンポン!)
ユ:やったあ!


ウソンとは入社以来、同じ営業でもう5年の付き合いになる。ユリは今年27歳。ウソンは32歳になる。二人の中は縮まりそうで縮まらず、かといって、二人とも他に付き合っている人はいない。

ウソンは気が優しくて、ほんとうにいいやつだ。どこがステキって聞かれると答えられないほど・・・・・・平凡だ。
でも、きっとこの平凡さがいい夫だったりいい父親になるのかもしれない・・と考えてみたりする。
少し、ユリが心を決めかねているところが二人の距離を縮めない理由であることも薄々気がついている。






【心に釘】

ユリのお気に入りのイタリアンレストラン。
それは小さな店だが、ソウルに住むちょっとおしゃれな人種には人気の店だ。
ウソンが会社を出る前に予約の電話を入れてくれた。


店に入ると、水曜日とはいっても、人気の店だけあって、席はほぼ満席だ。


ウ:予約しておいてよかったな。(耳元でささやく)
ユ:そうね。


ウェーターが、

ウェ:お客様、どうぞ。こちらへ。


二人は案内されて、店の奥へ進む。二人のテーブルに近づくと、今日の午後の、あの男が座っている。ユリは固唾を呑む。しかし、相手が気がついていないようなので、そのままウソンのあとをついて入っていく。
一番奥の席についた。


ウェ:お客さま、どうぞ。

引かれたイスにユリが座る。あの男の席が見えるところだ。


ウ:ラッキーだね。一番の席が取れちゃったよ。(笑顔で言う)
ユ:・・・。(ぼーと男を眺める)
ウ:ユリ! 聞いてないの?
ユ:えっ? え、なあに?(我に帰る)
ウ:(つまらないといった顔をして)もういいよ。(ちょっとすねる)
ユ:ごめん。なあに? (ごめん、ウソン)
ウ:一番いい席だねって言ったんだよ。
ユ:あっ、本当ね。ラッキーね。


そういいながら、ウソンの肩ごしにあの男を覗き見る。


ウ:何にする? 今日は君が好きなものでいいよ。
ユ:え、えっ? (ウソンに集中できないユリがいる)
ウ:どうしたの?
ユ:あなたと一緒でいいわ。決めて・・・。(また目が移動する)


男が白ワインを飲んで、微笑む。


ユ:ねえ、ワインを頼んで。し、しろで。
ウ:OK!


ウソンがウェーターにオーダーをしている。


あの男。夜はピンストライプの黒のスーツに短いスカーフを巻いている。
一緒にいる女が違う。昼の女もかわいかったが、今一緒にいる女はゴージャスだ。大きな指輪・・・ダイヤモンドかしら。

あっ、差し出した女の手を撫でている・・・。
ユリは自分の手を撫でる。


ウ:乾杯しよう!・・・ユリ? ユリ!
ユ:え、えっ。ごめんなさい。・・今日はお疲れ様!
ウ:うん。乾杯。
ユ:乾杯!(あ~とため息をつく)
ウ:ユリ。今日は、君に話があるんだ・・・つまり、今度の、この仕事がうまくいったら・・・。


あの指先・・・女の手をやさしく撫でる指先・・・。


ウ:しばらくの間、向こうに・・・。


サングラスを外し、女を見つめる。あの目・・・あんなに見つめて・・・。


ウ:それで、君がよければ・・・。


あっ、手を握ってたわ・・・。
ユリは自分の手をぎゅっと握りしめる。


ウ:一緒に来てくれるかい?


あ~。ユリは深いため息を吐く。


ウ:ユリ、やっぱり僕とではだめなのかい。(気が弱そうに見つめる)
ユ:ええっ・・・ごめんなさい・・・今日は私・・・。
ウ:返事は今しないで。いい返事を聞きたいんだ。たくさん考えていいよ。ただ僕は君を・・・。
ユ:ごめんなさい。ちょっと席を立ってもいい? すぐ戻るわ。
ウ:(心配そうに)ああ・・・。


ユリは済まなそうに席を立ち、化粧室に向かう。中へ入り、鏡を見る。


どうしちゃったの・・・。あの男のことばかり、考えている。
相手の女にすることに目を奪われてしまう。
なんなの? この気持ち・・・。

ウソンは・・・さっき・・・もしかしたら、プロポーズをしていたのかしら。ちゃんと聞いてなかった・・・。
彼はどうしたいって言ったのかしら・・・。大切なことを聞き逃すなんて。
5年目にして初めて口にしたのに・・・私はあんなやくざみたいな男のことで頭がいっぱいだったんだわ。


ユリは少し落ち着きを取り戻して、化粧室を出る。化粧室を出た角から男が現れる。ユリは心臓が飛び出しそうだ。男は目が合って、フンと笑った。


男:ずっと見てたでしょ? どう?(サングラスを外して、顔を覗きこむように) 何を思って見てたの?
ユ:えっ? 別に。(ドギマギして目は逸らす)昼のやな男がいるなって思ってただけよ。(口から心臓が飛び出しそうだ)


顔から目を逸らして視線をズラすと、男の胸が目の前だ。白のYシャツが第3ボタンまで開いているので、厚い胸板が見える。男のコロンも匂ってくる。
胸が苦しい。目まいがしそうだ。


男:そうかなあ? 昼もオレと彼女の様子をじっと見てたでしょ?
ユ:別に・・・。(こいつ、よく見てる・・・)
男:そうかな。オレには見とれているみたいに見えたけど。(微笑む)
ユ:なんですって?


ユリが怒ってその男の顔を睨む。男の顔を間近に見る。男が反対に睨み返す。
ユリは体が硬直してしまい、男をボーと見ている。いや、見とれている・・・。
少し間があって、


男:彼氏が待ってるんじゃないの? ねえ。


ユリは一瞬、自分が何をしていたのかわからなくなるが、そうだ、今はウソンとデートをしているのだと思い出す。


ユ:(むっとした顔で)失礼。


彼を押しのけて行こうとすると、サッと腕を掴まれる。


男:じゃあまた。どこかで・・・。(ちょっと微笑んだ)


ユリは返事をしないで、手を振り切り、前を見つめて歩いていく。

しかし、腕には男の手の感触が残り、鼻には男のニオイが残った。そして、目には男の顔が残った・・・。







【発病】

昨日はウソンに途中で具合が悪くなったと言って、ウソをついて帰ってきてしまった。
化粧室から戻ったユリの顔が紅潮していたので、ウソンは驚いたが、ユリが「熱っぽいの」というと、「そうだったのか」と納得して、二人は食事も早々にレストランをあとにした。

男はまだあのゴージャスと笑って話をしていた。

最後に、あの男の笑い声も耳に残った。



そして今日もまた熱があるとウソをついて、会社まで休んだ。
確かに熱がある。額にではなく、心に。
あの男はいったい何なのだ。きっとホストか何かだろう。
なのに、なのに、私は彼に心を蝕まれている。
そんな男に現を抜かす女なんて軽蔑していたのに・・・今は自分がその女だ。

それもなんのサービスも受けていない・・・。ただ見ただけ。彼が女にサービスしているのを見ただけなのに。

髪を撫でる指先。女の手を撫でる指先。握った手。自分がされたわけでもないのに、その熱っぽさまで覚えている・・・。


一秒たりともあの男を忘れられない。この胸に込み上げてくるものはなあに?



ああ、あの男が睨み返してきた時、私にキスするのかと一瞬勘違いした・・・一瞬期待した・・。
変だわ。知らない男にキスされたいなんて。ウソンをほったらかしにして。


今、外へ出たらあの男が待っているような気がする。恐くて出られない・・・。
いや、違う。この部屋を一歩出たら、狂ったようにあの男を捜しに行きそうなのだ。それが恐いだけだ。



あの公園で、男は誰かを待っているのだろうか・・・。

どうしよう・・・。行ってみるべきかしら。今日もいるかしら。同じ時刻に行ったらいるかしら。
あの男は私の気持ちに気づいている。それにひれ伏すのはいや・・・。
でも会いたいのだ。私も彼の顧客の一人に過ぎないのだろうけれど・・・。それでも会いたい。



ユリはサマーセーターにジーンズをはいて、昨日の公園に向かう。

自分でも自分がしていることは全くおかしいということはわかっているのだが、たぶん、私は熱病にかかってしまったのだと思う。
今までこんなに一人の知らない男に心を乱されたことも、振り回されたこともない。
でも、なぜか、バカみたいに彼を求めているのだ。


ゆりがベンチに座っていると、同じ時刻に前から男がやってきた。サングラスをかけている。あいつもラフなサマーセーターを着ていた。
今日はオフなのだろうか・・・。


男:本当に来てたな。(苦笑する)
ユ:・・・。(胸がいっぱいで答えられない)
男:オレが来ると思った?(ユリの顔を覗く)
ユ:・・・なんとなく・・・。(緊張してつぶやく)


ふ~んという顔をして隣に座って足を組む。隣に座って前を向いている。
ユリに触れることはない。当たり前だ。そういう関係ではないのだから。

ユリはちょっと下を向いたが、顔を上げ、男の顔をじっと見る。男がユリのほうを見て、サングラスを外す。二人はじっと見つめる。男は自分のあごに手をやり、ユリを見て、


男:どうしたいの? 昨日ここで会った時から、あんたの目がオレを追ってるからさ。それも熱烈って感じで。


ユリは真っ赤になる。


ユ:わからない・・・。ただあなたのことが気になって・・・。一瞬もあなたが頭から離れないの。それで困ってるの・・・。(こんな正直な自分ってなあに?・・・自分にも戸惑う)
男:困った人だな・・・。(やさしく見つめる)
ユ:でも忘れられなくて・・・。自分でもいやになってるのよ。病気みたいで・・・。(下を向いてしまう)
男:病気か・・・人はよくそういうよ。
ユ:えっ?(なぜ?)
男:(首をかしげ、ユリを見る)だいたい想像はついてるんだろ? オレのこと・・・。
ユ:ど、どんな・・? (男を見つめる)
男:仕事とか・・・。あんたはこの間、制服を着てたからな・・。
ユ:(そうだった・・・)あなたのこと、よくわからないけど・・・。
男:言ってみろよ。どんな仕事だと思う? (不良っぽく見つめる)
ユ:(勇気を出して)ホスト・・・とか・・・。
男:フン、そうだな。・・・確かに・・・やってた。
ユ:今は違うの?
男:似たようなものさ。女に金を出してもらった・・・。
ユ:でもホストではないのね・・・。
男:ただのジゴロさ。(ぐっとユリを睨む)


男の目がユリの胸に突き刺さる。
ジゴロ・・・。ヒモってわけ?


ユ:だれの?(顔を覗きこむ)
男:ハハハ・・・。おもしろいね、あんた。来るか?
ユ:どこへ? (心臓がバクバクだ)
男:オレのところへ。
ユ:えっ? (な、なに?)
男:食べたりしないよ。オレの店さ。


男は立ち上がり、歩き出す。そして、振り向き、手招きをする。


食べたりしない・・・と男は言った。
私はもうすでに食べられている・・・心を。


そこからしばらく歩いていき、細い通りに入り、そこを進むと、一つのビルの前まで来る。そこの地下へ降りる階段を男が下りていく。通りにはスタンドが立っており、

「Chez J 」(シェ・J、Jの家)とある。

ユリも続いて階段を下りていく。大きな木製の扉を開ける。
中は横に細長く、長いカウンターが一つあるだけだ。定員15名ほどか。地下ではあるが、奥には一面大きなガラス戸があり、明り取り用の半畳ほどのスペースがあって、そこはガーデン風に設えてある。

男はカウンターの一部を上に開いて中へ入る。


男:まだ営業時間前なんだ。ここは3時からだから。
ユ:そう?


周りを見回す。どっしりとしたオークカラーの店内は天井が高く、とても落ち着いた雰囲気だ。カウンターの奥の棚には所狭しと酒が並んでいる。
ガラス戸とは反対側の奥の壁には、高い位置に大きくて縦に長い鏡が下向きにかけられている。それがカウンターを映し出し、店内を広々とみせている。



男:座れよ。
ユ:ええ。


窓側の高いカウンターのイスに腰かける。こういうところに一人でくるのは初めてだ。


ユ:ここは、夜はバーなの?
男:うん。6時まではコーヒーを出す。そのあとはバー。
ユ:ふ~ん、落ち着いた感じでいいわ。


男はコーヒーの準備をしながら、ユリの様子を見る。


男:あんたも少しは落ちついたみたいだね。
ユ:・・・。(そうかな)


男が小さな皿にチョコを出す。


ユ:ありがとう。こういうとこってチョコも高いんでしょ?


男はちょっと微笑んだ。


男:いいよ。金は。
ユ:ご馳走様。


ユリは一粒、口に入れる。


ユ:今は、ホストはしてないのね? ここのお店だけなの?
男:まあね。
ユ:でも女とは付き合う?
男:(店の準備をしながら)昔のお得意さんだからな。ここまでにしてもらったから。
ユ:そう・・・。


ユリの顔が少し紅潮した。男がユリを見る。


男:あんたが今、思った通りさ。そのおかげだよ。


ユリは心を見透かされ、恥かしくなって下を向く。
コーヒーができて、ユリの前に出される。

ユリは男の顔を見てコーヒーを飲む。


男:飲んだらお帰り。
ユ:なぜ? 話がしたいわ。(ここまで来たのに)
男:オレと?(笑う)もう熱は下がったろ?
ユ:どうしてそう思うの? (不思議)
男:気になる男の実態がわかって。(見つめる)
ユ:ううん、ぜんぜん。(笑顔で)話しやすくなったし、近づいた気がする。
男:制服を着た女の来るところじゃない・・。(冷たく言う)
ユ:客なら? いいでしょう?
男:まあな。(見つめて、仕方がない)


ユリはコーヒーを飲み干す。
イスから降りて、男を見る。


ユ:ねえ、なぜ、ここに連れてきたの?(男の顔をしっかり見る) だれでも連れてくるの? 違うでしょ? あなたも何か感じたから連れてきたんでしょ? それがまだ解決してないわ。
男:探偵ごっこ?(笑う)
ユ:だって・・・あなたに強い視線を投げかける女なんていくらだっているでしょ? ・・・でも私はここにいるわ。あなたの気まぐれでもいいの・・・私はここまで来られたんだから。・・・また来るわ。
いいでしょう? (強い視線で見る)
男:ああ。(ユリをじっと見る)


ユリはドアのほうへ行って、


ユ:ねえ、ここの「シェ・J」ってあなたのこと?
男:ああ。
ユ:J何?
男:ただのJさ。(見つめる)
ユ:じゃあ、マスター。Jさん。また来るわ。あなたがわかるまで・・・自分の気持ちがわかるまで。
いいでしょ? (念を押す)
J:(フンと笑う)ああ。じゃあな。お嬢ちゃん。
ユ:ユリよ。パク・ユリよ。名前ぐらい持ってるわ。じゃあ。バイバイ!



手を振り、ユリが出ていく。Jは複雑な気持ちになって、ユリを見送った。








後編へ続く。




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