2009/08/12 01:04
テーマ:【創】「アマン」第1部 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】「アマン」31 最終回

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BYJシアターです。

本日は「アマン―夏の恋人」31部・最終回です。


ではお楽しみください。





父さんは私に、母さんと一字違いの名前をくれた。

生まれてきた私が、あまりに真っ黒だったので、
白くてキレイな子になるようにと、「スワン」と名づけた・・・。

でも、今だに地黒だけど・・・。

いつ、「スワン」に変身するのかしらって、父さんも母さんも楽しみにしてくれてたけど、
私はずうっと、「あひる」のままで・・・ちっともかわいくならなかった・・・。


そんなわけで、中学・高校と大した恋もできず、
窓際に立って、
恋人ができた友人を見つめているしかなかった・・・。


でも、大学に入って、「嵐が丘」のヒースクリフを知ってから、
彼に恋して・・・彼みたいに一途に愛を貫く力強い男を求めた・・・。

でも、それって、やっぱり、現実にはありえなかったよね・・・。



恋なんてほとんどしたことのなかった私が、
30歳になったあの夏の日、ヨンジョンに出会った・・・。


彼はとてもいいニオイのする大工さんで・・・
私は、彼が気になって気になって仕方がなくて・・・
気がつけば、
彼に心を奪われていた。


あの頃の私といったら、父さんの残した黒縁のメガネをかけて、化粧もしないで・・・
ぜんぜん、カッコよくなかったのに・・・。



あの夏が彼を私の元へと運んでくれた。



それまで現実の恋に臆病だった私が、
とても簡単に受け入れられた恋心・・・。

少し彼を疑ったこともあったけど・・・。
あんな簡単に愛せたこと・・・。


それは、彼がヨンジョンだったからに他ならない・・・。



初めて、海岸で彼に抱きしめられた時、
私は気を失うかと思った・・・。

それほど、衝撃的。

それから、ヨンジョンは私の全てになった。



彼は、何気なく私の髪を直してくれる。
長い髪が風に揺れて、私の顔にかかると、そっと髪を直す・・・。


彼の手が私の髪に触るだけで、私はうっとりする。


あなたは気づいていないでしょ?


そんな仕草に、私がうっとりしていること。
とっても気持ちがいいと思っていること・・・。


あなたに触れられると、私は、つま先まで幸せが伝染していく。


知ってた?



あなたにちょっと意地悪を言ったり、すねてみるけど・・・
そんな後でも、あなたに触れられると・・・私はとても幸せになる・・・。


ヨンジョン、

あなたは私の全てよ・・・。
ただの夏の恋人ではなく・・・私の一生の恋人。

あなたが私を妻に選んでくれたことに感謝するわ。



私の名前には、きっと但し書きがついていたに違いない。

『本当に愛する人と出会えた時のみ、
その名のように変身できると・・・』


だから・・・
私は、あなたの前では、
「スワン」そのもの・・・。


でも、よくあなたは私に恋してくれたわね・・・。

あなたはこう言ったわね。

「君といると、ぜんぜん気疲れしない」って・・・。
「幸せな、あったかい気分でいられる」って。

あなたの口癖は、
「ホントにかわいいなあ」

きっとあなただけよ、そう思い込んでいるのは。
あなたにだけ、私は「スワン」なんだわ・・・。


でも、それで、幸せ。



そして、あなたは、まるで、私のお父さんみたいな時がある。

私が不器用で、ちょっと神経質なのも知っている。
だから、とてもさりげなく、私を助けてくれる。




ヨンジョン・・・。

私はあなたのチキンライス・・・。

あなたの愛で包んでもらって、やっとオムライスに変身できる・・・。

だから、ずっとあなたの愛で包んでほしい。



いつか、あなたが私の前を去る時が来ても・・・

私は自分で、周りの卵なんて作らない。
自分で作ったチキンライスだけ、食べるわ・・・。

あなたの味を思い出してね。
あなたが包んでくれた卵を思い出して・・・。


あなたがいなくちゃ、
私は、一品の料理にもなれない・・・。



だから、


だから、

あなたが必要。



あなたがいるから・・・

私は一人前に、立っていられるの。



あなたがいるから・・・

私の未来は輝いているの。



あなたがいるから・・・

私はこんなに幸せなのよ!


そして、あなたは、
私の最高のアマン・・・。




ぺ・ヨンジュン
チョン・ドヨン主演

「アマン―夏の恋人」31 (最終回)



ス:ねえ、背中掻いて・・・。
ヨ:・・・。
ス:ねえ、痒いの・・・。
ヨ:・・・。
ス:ねえ、掻いて・・・。

ヨ:どこ? (ちょっと掻く)
ス:う~ん、もっと右・・・もっとしっかり掻いて。パジャマの中に手を入れて掻いて。
ヨ:そんなに掻くとボロボロになるよ。
ス:でも、痒い・・・。

ヨ:こっち向いて。抱っこしてあげるから。


スワンが寝返りして、ヨンジョンに抱かれる。
ヨンジョンは、目を瞑ったまま、スワンを抱いて、スワンの肩まで布団をかけ、背中を掻く。


ヨ:これでいい?
ス:・・・。
ヨ:ねえ・・・?
ス:・・・。


スワンは寝息を立てて、もう寝ている。






さて、イ・ソンジュンが引き起こした週刊誌騒動は、とんでもない結末で終止符を打った・・・。

それは、アンジュがジョンアとの結婚を決めたことだ。

この早業には、ヨンジョンとスワンばかりではなく、周りの人たち皆が驚いた。


驚かなかったのは、当の本人たちだけである。


ある程度、年がいけば、相手が自分に向いているかどうかは、そんなに時間をかけなくてもわかるものだ。

ジョンアの頭の中は、アンジュでいっぱいだったので、彼のプロポーズをすぐにOKした。
ジョンアは、もともと建築など物作りが好きな性質だったので、料理などの創造性のある家事にすっかり心を奪われた。

アンジュはその辺、少々大人で、このジョンアの家事への熱が冷めたとしても、彼女の仕事への意欲を買っていたので、また建築家としてのデビューもいいじゃないかと、ジョンアの新しい人生にも違った角度から夢を持っていた。



なぜ、この週刊誌騒動が、二人の結婚で簡単にピリオドを迎えたかといえば、週刊「コリア・ジャーナル」の編集長がアンジュと同じソウル大卒で、アンジュが共通の友人を発見したことだ。

当初、アンジュは、担当している汚職事件とバーター交換してもらおうと考えていたが、こちらの裁判が長引きそうだったので、それを断念した。
その代わり、アンジュは自分たちの結婚式の主賓の一人として、友人を介して編集長を招待したのだ。


そんなことぐらいで?

アンジュが配った結婚式の案内状は、全くもって不思議なものだった。


そこに書かれた不思議な文面はこういうものだった・・・。

「私たちを結びつけて下さいました「コリア・ジャーナル」のヤン編集長に感謝します。
編集長のお心添えがあったからこそ、この愛が結実したと言ってもおかしくありません。
ここに感謝の言葉を添えたいと存じます」


これには、編集長も観念し、結局ヨンジョンたち・・・というより、ジョンアと理事長のスキャンダルは葬られた。

こうして、アンジュは、まさに、「愛のちから」で、ジョンアを守ったのである。






今日は、ヨンジョンとヒョンスがユンアの墓参りに行く日だ。
ユンアの本当の命日には、ヨンジョンたちはもうアメリカへ旅立っているので、その前に、ユンアの両親とヨンジョンとヒョンスで、墓参りをすることにしていた。


朝、スワンとともに、車で家を出た一行は、まずスワンをスワンの実家に送り、ユンアの墓のある寺へ向かった。

ユンアの墓は、ソウル市内にある小さな寺にあり、ここはユンアの実家の菩提寺である。
その実家の墓の隣に、小さな空き地があったので、両親はそこへユンアを葬った。



スワンも一緒に行くべきか悩んだが、あえてヨンジョンの家の墓に入らず、実家の菩提寺に墓を作ったことを考えても、ヨンジョンの新しい妻であるスワンは行くべきではないだろうということになった。





今日のスワンは、実家で母にキムチの漬け方を習いながら、二人の帰りを待つことにした。


ス:母さん、おはよう。
母:あら、来たの。
ス:うん。

ス:今日は、よろしくお願いします!
母:まあ、お茶でも飲んでから、始めますか。ね。
ス:うん。

母:ヨンジョンさんたち、行ったの?
ス:うん・・・。
母:そう・・・。
ス:・・・。

母:寂しい?
ス:ちょっとね。
母:でも仕方ないじゃない。奥さんを亡くした人と結婚したんだもん。
ス:そうだよね・・・。でも、これってずっと続くんだよね。
母:・・・。
ス:私が死ぬまで。

母:変なこと言うわね。はい、お茶。
ス:ありがとう。・・・ヨンジョンが亡くなっても、ヒョンスが生きてる限り・・・。
母:当たり前でしょ。ホントのお母さんだもん。
ス:うん・・・。

母:でもいいじゃない。ヨンジョンさんは、あなたと一緒にいてくれるんだから。あなたは、一緒のお墓でしょ。そんなことってめったにないわよ。
ス:・・・。

母:皆、前の奥さんと同じお墓に入るんだから。そう思えば、スワンは、ヨンジョンさん一人占めで、いいじゃない。
ス:うん・・・。

母:焼きもちなんて、焼かないの。
ス:焼きもちじゃないわよ・・・。ただ、ちょっと気持ちが複雑になるだけ・・・。

母:うん。・・・あ、これ、キムチの作り方ね。
ス:サンキュー。助かる。(レシピを読む)

母:とにかく、こういう寒い日がキムチを漬けるのにはいいのよ。あったかくしてやりなさいよ。そのズボンでいいの?(スワンのいでたちを見る)

ス:この下、タイツはいてきた。
母:そっか。じゃあ、お茶飲んだら、始めようか!
ス:うん!







ヒ:お父さん。お寺でお祖父ちゃんたちと待ち合わせしたの。
ヨ:そうだよ。お寺でお経をあげてもらって、お墓をお参りして、それからおじいちゃんちへ行くんだよ。
ヒ:うん。


ヨンジョンの車が、ユンアの実家の墓のあるお寺に着く。
二人は車を降りた。

今日は冷え込んでいるが、空には雲ひとつない。

あの日もそうだった・・・。
ユンアが亡くなった日も厳しく冷え込み、空が快晴だった。


ヒョンスは、寺の入り口にいる祖父たちを見つけて、うれしそうに走っていった。
祖父たちもそれに気がついて、ヒョンスに手を振った。


それを見ながら、ヨンジョンは思った。
ヒョンスの中では、まだあの人たちは生きているが、自分にとっては、もう遠い過去の出来事の一コマにいた人々に過ぎなくなっていることを。

ヒョンスにとってのユンアの両親と、ヨンジョンにとっての彼らでは、その存在のあり方に雲泥の差があることを。

そして、ユンアの両親にとっても、ヒョンスは今もかけがえのない孫であり続けていることを。


遠く、皆が再会を喜ぶ姿を、まるで傍観者のように、ヨンジョンは見つめた。







ス:ああ、腰が痛い。(腰を伸ばす)
母:休みながらやりなさいよ。あんまり頑張ると、お腹の赤ちゃんによくないから。
ス:うん。でも、結構漬けたよね。(感心して、漬け込んだ樽を見る)

母:だって、あなたたち姉妹3人の家族分があるもん・・・。これ、アメリカへ持っていけるかしら?
ス:どうかな。臭いで没収されちゃうかもね。いいよ。行くまでに、どんどん食べるから。

母:そうねえ・・・。あっちは、ソウルと気候が違うから、向こうでうまく漬けられるかしらね・・・。
ス:ボストンも冬は寒いから、やってみるよ。
母:そうだね・・・。


二人は庭先の大きなキムチ用の樽の前に座って、一休みする。


母:もうすぐ、行っちゃうのね。
ス:うん・・・。
母:ちょっと寂しいけどね。
ス:うん・・・。

母:ここのところ、あなたたちがうちに来てて華やいでたから・・・。ちょっと寂しくなる・・・。
ス:・・・。


母:あなたたちがアメリカへ行っちゃったら、きっと台風が去ったあとみたいになるんでしょうね。
ス:・・・やな例え。(笑う)
母:そうか、違うね。(笑う)

母:やっちゃおか。
ス:そうだね。


二人はまた立ち上がって、キムチを漬ける作業を始める。
久しぶりの親子での作業・・・笑いあいながら楽しい反面、次回の約束ができないことが切ない・・・。







墓参りを終えて、ユンアの実家での会食を済ませ、別れの挨拶をして、ヨンジョンとヒョンスが実家から出てきた。

車を止めた駐車場に向かいながら、ヨンジョンはヒョンスに言った。



ヨ:ヒョンス・・・。おまえはこれからも年に一度は、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんの所を訪ねてあげるといいよ。
ヒ:・・・。どうやって? アメリカへ行っちゃうんでしょ?
ヨ:うん。年に一度、帰ってくればいい・・・。おまえだって、ママのお墓をお参りしたいだろ?
ヒ:・・・。(困った顔で父を見る)
ヨ:お祖父ちゃんやお祖母ちゃんだって、おまえに会いたいだろ・・・。今日だって、うれしそうだったじゃないか。
ヒ:・・・。

ヨ:ヒョンス。お父さんとスワンと新しい家庭を作っても・・・ママのお祖父ちゃんとお祖母ちゃんは、おまえのことを今まで大事に育ててきてくれた人だから・・・たまには顔を出しておあげ・・・。そのことで、オレたちに遠慮することはないんだよ。
ヒ:・・・。

ヨ:ヒョンス。これから、スワンにも赤ちゃんが生まれて・・・スワンも、今までみたいにおまえだけのことを考えてやれないかもしれない・・・。でも、それは・・・おまえが知っている通り、スワンは不器用だから、いっぺんにいろいろできないだけで、おまえを蔑ろにするわけじゃないからね。
ヒ:うん・・・。
ヨ:だから、それでスワンの愛を疑ったりしちゃいけないよ。


ヒ:うん。お父さん、僕ね・・・スワンさんは大好きなんだけど・・・ホントは、まだお母さんって思えないんだ・・・。
ヨ:・・・。
ヒ:ごめんね。

ヨ:気にすることはないよ・・・。スワンだって、今までお母さんじゃなかったんだから、急には完璧なお母さんにはなれない・・・。一生懸命やってくれてるけどね・・・。(微笑んでヒョンスを見つめる)それは、お父さんと同じだよ。

ヒ:お父さんは・・・お父さんだよ・・・。僕には、お父さんはお父さんだよ。

ヨ:・・・うん・・・。(頷く)


ヨンジョンは、ヒョンスの肩を抱くように手を置いて、ヒョンスの顔が見えるように屈んだ。そして、視線を合わせるようにして話をする。


ヨ:ヒョンス。・・・無理して、スワンをお母さんなんて思わなくていいんだよ。仲のいいお姉さんでもいいんだよ。
ヒ:・・・うん・・・。


ヨ:ただ、スワンも、おまえをとっても大事に考えていることだけはわかってあげてほしいんだ。
ヒ:うん。・・・前にね・・・。(ヨンジョンの顔を見る)雷が鳴って眠れなかった夜、二人で約束したんだ。何でも話し合おうって。自分が辛い時こそ話し合おうって。
ヨ:うん。(ヒョンスと視線を合わせながら、頷く)

ヒ:でも、それって難しい・・・。やっぱりできないんだ。(じっと父を見つめる)
ヨ:・・・。

ヒ:本当の気持ちって話しにくい・・・。だけど・・・お祖母ちゃんがね。
ヨ:お祖母ちゃん? (ん?)

ヒ:うん! スワンさんのお母さん。
ヨ:ああ・・・。(スワンのお母さん・・・)

ヒ:お祖母ちゃんがね。お父さんやお母さんじゃなくても、誰かすごく好きな人がいて、その人がとても話しやすい人で、その人がすごく親身になってくれるんだったら・・・その人に自分の気持ちを話してもいいんだよって言ってた。
ヨ:お祖母ちゃんが?

ヒ:うん! お祖父ちゃんはね、学校の先生だったから、いろんな生徒さんがおうちに遊びにきたんだって。それで、お祖母ちゃんは、いろんな子を知ってて・・・。中には、お父さんやお母さんがいても、とても寂しく暮らしている子がいるんだって。・・・そういう子も、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんを、お父さんやお母さんみたいに慕って遊びにきたって・・・。
ヨ:・・・。(息子の顔をじっと見る)

ヒ:それでね、自分のお母さんに自分の気持ちをうまく言えない子でも、先生だったお祖父ちゃんには、ちゃんと気持ちが話せたりしたんだよって。
ヨ:・・・。(なぜか、涙がこみ上げる)

ヒ:お父さん。
ヨ:うん?
ヒ:僕、お祖母ちゃんがすごく好きなんだ。すごく話しやすくて・・・。それにすぐ僕の気持ちがわかっちゃうんだ。
ヨ:・・・。(息子を見つめる)


ヒ:だから・・・お祖母ちゃん子でもいいよね?
ヨ:・・・。(涙が流れる)
ヒ:お祖母ちゃんに、いろいろ相談してもいいよね?
ヨ:・・・。(涙が頬を伝わる)


ヒ:・・・駄目? (父を見つめる)


ヨ:うううん・・・・いいよ。(さっと涙を拭く)おまえがそれでいいなら・・・いいよ。ただ、スワンもおまえをすごくかわいいと思ってること、愛していることだけは忘れないでほしい。
ヒ:わかってるよ。それは、わかってるんだ。でも・・・今は、そうさせて。今は、たくさん甘えられる人がほしいんだ。
ヨ:・・・うん・・・。


ヨンジョンは、ヒョンスを引き寄せて抱きしめた。


スワンとは、あんなに仲の良い関係でも、思い切り自分を曝け出して、甘えることができなかったヒョンス。
そんな心のもどかしさがあって、子供らしい甘えが許されるところがほしかったに違いない・・・。

それが、スワンの母親だった・・・。



ヨンジョンは、ヒョンスの手を引いて、駐車場へ向かう。


ヒョンスのスワンへの気持ちを聞いて、最初は戸惑いを感じたが、ヒョンスが偽らざる胸の内を話してくれたことは、ヨンジョンにとってはうれしいことだった。


スワンは、確かにヒョンスの母親ではない・・・。
でも、いつか、スワンも自分の子供を育てて、子供の心という不思議を少しずつわかってくるのだろう。
そして、ヒョンスもいずれ、スワンに身構えすることなく、接することができるようになるだろう。

今は焦らず、見守ってやるのがいいだろう。

ヒョンスだってスワンだって、一生懸命近づこうとしているのだから。
お互いに大好きなんだから・・・。



二人はヨンジョンの車に乗り込んだ。

ヒ:お父さん。お母様には言わないでね。がっかりするといけないから。
ヨ:言わないよ。これは二人だけの秘密にしておこう・・・。それに、おまえもスワンが好きなんだし、スワンもおまえを好きなんだから、それでいいだろ?
ヒ:うん!

ヨ:じゃあ、お母様を迎えにいくか!
ヒ:うん!


ヨンジョンたちの車は、スワンの実家へと向かった。






ス:母さん。ヒョンスの好きな小松菜のナムルと卵焼きは、多めに作ってよ。


スワンは母親と二人で、夕飯の支度をしている。


母:わかってるわよ。(笑う) ヨンジョンさんの好きなごぼうもね。
ス:あ、そうそう。(笑う)もうすぐ、来ると思うんだけど。(時計を見る)向こうでいろいろ食べてくると思うけど、まあいいよね?

母:だって、こっちで何も用意してなかったら、おかしなものよ。そうだ、今日漬けたキムチも、浅漬けだけど、ちょっと出そうか。ヨンジョンさんが喜ぶわよ。
ス:そうかな。(微笑む)

母:うん。スワンが漬けたんだもん。あなたがいろいろ覚えてできるようになるの、ヨンジョンさん、幸せそうに見てるじゃない。
ス:そう? (照れくさそうに笑う)


母:うん。いいダンナ様よ。
ス:ありがとう。
母:あなた、大切にしなさいよ。
ス:わかってるわよ。

母:最初は子連れの人と思ったけど、あんないい人はそうそういないもんね。かえって、子供がいたから、あなたと結婚してくれたのかもしれないわね。
ス:ヒド~イ!

母:そのくらいに思ってなさいよ。それで、あなたはちょうどいいんだから。(料理しながら言う)
ス:どうして?
母:もうたくさん、甘えちゃってるんだから。このままだと、歯止めが効かなくなるわよ。
ス:そんなあ。

母:甘えすぎて、ヒョンス君をなおざりにしちゃ駄目よ。
ス:しないわよ。自分の子より、大切に育てるわ。
母:そう、そのくらいの気持ちが大切・・・。自分の子って、無条件でかわいいものだもの・・・。ね。
ス:うん・・・。



ピンポーン!



ス:あ、来た来た! (顔が輝く)
母:まあまあ。(喜ぶ娘を見る)こっちはいいから、行っておあげなさい。
ス:うん!


スワンはうれしそうに玄関へ飛んでいった。


今日の日を静観している様子だった娘のスワンも、本当はユンアの実家を訪れていたヨンジョンとヒョンスのことが気がかりで、やっと自分のもとへ戻ってきた夫を、満面の笑みでうれしそうに迎えに飛び出していく。

そんな娘が、母はちょっと健気に思えて、胸が痛くなった。


ス:お帰り!
ヨ:ただいま。
ス:今ね、母さんと夕飯の支度してるの。食べていくでしょ?
ヨ:うん。

ヒ:お祖母ちゃんのお手伝いしてくる!(玄関を上がる)
ス:お願いね! ヒョンス。(ヒョンスがキッチンへ向かうのを見送る)どうだった?
ヨ:うん・・・。滞りなく終わったよ。

ス:そう・・・。
ヨ:うん・・・。

ス:ねえねえ、今日漬けたキムチ、浅漬けだけど、少し食べるでしょ?
ヨ:お、いいねえ。(喜ぶ)
ス:ふん。(笑う)

ヨ:何だよ。
ス:母さんがきっとヨンジョンが喜ぶって。やっぱり。
ヨ:そうか。(笑う)
ス:ねえ、来て来て。


スワンはもう、ヨンジョンに甘えて、腕にぶら下がっている。







4人で、ダイニングテーブルを囲み、夕食をとる。


母:これで、スワンが安定期に入ったら、ボストンへ行っちゃうのね・・・。(ちょっと寂しそう)
ス:母さん・・・。
母:なんか寂しくなるわ。こうやって、4人でご飯食べるのも、しばらくお預けね。


ヨ:どうぞ、遊びに来てください。
母:うん・・・。
ス:来てよ、ホントに。

母:そうね・・・うん・・・。ヒョンス君の新しい学校も見たいし。お祖母ちゃんを案内してくれる?
ヒ:いいよ! おいでよ。(うれしそうにする)
母:うん。じゃあ、そうする。(笑顔)そうねえ・・・。じゃあ、スワンの赤ちゃんが生まれる頃に行こうかな。
ス:ホント?(うれしい)

母:あなたのお世話をしに行くんじゃないわよ。ヒョンス君と街を見て、学校を見て楽しむの。たまには、お祖母ちゃんのおいしい料理も食べさせてあげたいし。
ヒ:うん! 来て来て。

ヨ:お世話になります・・・。必ず、来てくださいね。待ってますから。
母:わあ、なんかうれしくなってきたわ。行かせていただくわ。ありがとう、ヨンジョンさん・・・。
ヨ:こちらこそ、助かります。


ス:絶対来てよ。
ヒ:絶対だからね!





3人の門出の日は近い。

3人が4人になって、また新しい土地で新しい生活を始める。

うきうきする楽しさと、始めることの不安・・・。

きっと、それは、ヒョンスが一番感じていることだろう・・・。


スワンの母が、夏近くに、ボストンを訪ねる約束をして、ヒョンスは本当にうれしそうに笑った。





今、スワンとヨンジョンは、マンションの片付けに忙しい。

このマンションは残しておくものの、またいつ帰ってくるというはっきりした予定はない・・・。

月に一度、母が空気を入れ替えにくる・・・それだけは決まっている。



ヨンジョンは、友人の設計事務所の副社長としての生活が始まり、スワンは子育てと大学院生活が待っている。

結局、パク先生の勧めてくれた留学となったので、自費留学となり、これにはいつまでという制限が無くなった。
先生が世話してくれた大学での韓国語講師の職も一年ごとの更新で、それもいつまでという制限はない。

ヒョンスは、ヨンジョンが教育環境を重視したので、地元でも名の売れた私立の中学へ進む。



つまり、スワンの学費もヒョンスの学費もすべて、ヨンジョンが支払うことになり、それには、韓国より収入のよいボストンでの仕事のポストは不可欠で、この3人のアメリカ生活は長く続きそうである。


ヨンジョンとスワン、二人の未来は、これからどうなっていくという結論はない。


ただ、幸せに向かって走っていること・・・

それだけは確かだ。



そこに愛があるから、


二人の未来は明るい。







THE END







「アマン―夏の恋人」を読んで下さり、ありがとうございました。
この二人のお話は、まるで私たちが生活をしていくのと同じように
ゆっくりゆっくりと、毎日の積み重ねでした。


ではまた、ヨンジョンとスワンと、ヒョンスに会う日まで、御機嫌よう^^。

中お休みを入れて、またBYJシアターをお楽しみください^^









2009/08/11 00:11
テーマ:【創】「アマン」第1部 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】「アマン」30





BGMはこちらで^^




BYJシアターです。

本日は「アマン―夏の恋人」30部です。



ではお楽しみください。





母さんは言った。

スワン、幸せって実は私たちのすぐ近くにあるものよ。

父さんと母さんはね、幼なじみでいつも一緒だったけど、
そこに愛があることに気づかないでずいぶん長い間、回り道しちゃった・・・。

でもね、よく見たら、すぐ目の前に幸せがあったのよ。

おかしいわね。


あなたは夢が大きいから、いつも遠くばかり見ているけれど、
たまには、近くも見たほうがいいわ。

遠くばかり見ていても探せないこともあるのよ。





ぺ・ヨンジュン
チョン・ドヨン主演

「アマン―夏の恋人」30






ス:ソンジュンがそんなことを!


スワンは電話を切ったヨンジョンを見つめた。


イ・ソンジュンが、大手週刊誌「コリア・ジャーナル」に、大学でのヨンジョンの一件を売り込んだと言う。


ヨ:まいったなあ・・・。絶対、スキャンダルになるよ。
ス:・・・。

ヨ:オレのことより、ジョンアさんのこと。理事長となんかあったんじゃないかって。そっちの方がおもしろいだろ? 一介の教師より大学の理事長と美人助教授のほうが売れるからなあ・・・。
ス:ヨンジョン・・・。
ヨ:男より、女と権力のほうがスキャンダラスだろ・・・・。


そう言って、ヨンジョンはダイニングテーブルに座り込む。



ス:ヨンジョン、どうする? あの先生、やってくれるわよね?
ヨ:う~ん・・・これこそ、愛があるかどうかだな・・・。ジョンアさんとはうまくいったのかな・・・。電話してみるか。



ヨンジョンが自分の携帯を取り出して、キム・アンジュに電話してみる・・・。

少し呼んで切れた。




ヨ:切れた・・・。(携帯を見る)

ス:ええ! だめなのかな・・・。(心配そうにヨンジョンを見る)
ヨ:ま、仕事中だったら、出ないだろうけど・・・。(テーブルの上に携帯を置く)


ス:どうしよう・・・。
ヨ:アンジュ先輩に助けてもらうしかないだろ? オレについてはさ、もうアメリカへ行っちゃうんだし、何をされてもあんまり影響はないけど、ジョンアさんはねえ・・・。

ス:ソンジュンに電話してみようかしら。
ヨ:君が? しても無駄だよ。君やソンジュンが考えているほど、マスコミは甘くないから・・・。もう、話した時点で、ソンジュンの手からは離れているよ。
ス:・・・・。



ヨンジョンの携帯が鳴った。



ヨ:もしもし。
ア:すまん、すまん。今、クライアントとの打ち合わせが終わったんだ。どうした?
ヨ:大学審議会にタレ込んだやつから、今度は、週刊「コリア・ジャーナル」へタレ込んだっていう電話が入って・・・。
ア:何者だよ、そのバカ。(軽く言う)
ヨ:それが・・・。


ヨンジョンは話そうとして、スワンと目が合い、ちょっと顔を赤らめた。
そして、立ち上がって、寝室のほうへ移動する。
スワンが一緒についていくと、寝室のドアはスワンの目の前でパタンと閉まった。


ス:何よ・・・。







しばらくして、ヨンジョンがにこやかに寝室から出てきた。

ダイニングテーブルに座って、ヨンジョンを見つめているスワンと目があった。


ス:何よ。さっきの態度・・・。(ちょっと怒ってる)
ヨ:(にこやかだった顔が戻る)なんだよ。
ス:人の目の前でドア閉めちゃって。

ヨ:・・・二人で話したかっただけだよ。
ス:どんな? 隠すようなこと、ないじゃない。
ヨ:ちょっとね。
ス:ちょっと何よ。

ヨ:ちょっと、ソンジュンについての、正しい知識を入れておかないとね。
ス:どんな?



ヨンジョンは言いにくそう顔をして、キッチンへ行く。



ス:ねえ、どんなよ。
ヨ:どんなって・・・。

ス:もう、言ってよ。妊婦には心労が一番よくないんだから。


ヨ:そうかい?


ヨンジョンが笑って、紅茶の準備をする。


ス:なんで笑うの?
ヨ:だって・・・君のは・・・心労というより興味津々って感じがするけど。
ス:・・・。

ヨ:そんなに聞きたい?
ス:うん、聞きたい! だって、興味津々だから。 ねえ、ヨンジョンたら!


ヨンジョンが紅茶を入れて、テーブルに来る。


ヨ:はい、姫にもどうぞ。
ス:ありがとう。あ、これ、ゆず茶入れたの? レモン漬け? どっち?

ヨ:どっちだ。ニオイ嗅いで。
ス:ええと・・・。ゆず茶!
ヨ:当たり! 

ス:サンキュ! ロシアンティ(ジャム入り)ってあるじゃない? だから、これは・・・コリアンティかな?
ヨ:いいねえ、その名前。アメリカ店でも出すか。
ス:ふん。(笑う)おいしい・・・。あ、騙されそうになった・・・。言いなさい、ソンジュンのこと。


ヨ:くどいなあ・・・。ただオレを好きだって言ったんだよ。
ス:・・・わかってたんだ・・・。(ちょっと驚く)
ヨ:・・・。
ス:気がつかないのかと思ってた・・・。

ヨ:そんなことはないよ・・・。(ちょっと笑う)別れの挨拶で、握手したときね・・・ギュッと握られて・・・ちょっと普通じゃなかった・・・。(紅茶を口にする)「ヨンジョンさんのことは忘れませんから」って・・・。
ス:なあに、それ。・・・ヨンジョン、あなた・・・。


ヨ:なんだよ。
ス:それでどうしたの? ソンジュンにまさか・・・ニコっとかしたの?(じっと見る)
ヨ:・・・。(ちょっと赤くなる)

ス:やっぱり・・・したんだ・・・。(いやな顔をする)笑えばいいってもんじゃないわよ・・・。
ヨ:やな言い方・・・。
ス:だから・・・誤解されるのよ・・・。だから、つけ込まれる・・・。


ヨンジョンがスワンを見て、憮然とする。


ス:なあに?
ヨ:君とソンジュンて似てるね。(嫌そうに言う)
ス:似てないわよ。
ヨ:あいつも同じこと言ったよ。だから、つけ込まれる・・・それは、ジョンア女史にだけどね・・・。

ス:似てないわよ、あんなやつに・・・。
ヨ:さすが、同じ釜の飯、食べてただけあって似てるよ・・・。(じっと見る)
ス:ぜんぜん、似てないわよ。(怒る)


ヨンジョンが気を取り直して、笑う。



ヨ:怒った?
ス:もう・・・。




ヨ:なんとかしてくれるよ、先輩が。
ス:・・・。ジョンア先輩と付き合い始めたの?
ヨ:みたいだよね・・・。ジョンアさん、車買ったらしいよ。
ス:え?

ヨ:いつでも、アンジュ先輩のところへ行けるようにって。高速バスや電車じゃ、時間が限られるからって。
ス:・・・すごい・・・。


ヨ:あの人って、情熱的だよね。仕事もそうだけど、入れ込むとそれしか見えないのかもね。
ス:そうかもね・・・。それで、あんな電話しちゃったんだよね・・・。
ヨ:・・・。(下を向く)うん・・・。


ス:でも、その雑誌、止められるのかな・・・。
ヨ:編集長がソウル大だって。そのつながりで探りを入れてくれるって。
ス:ふ~ん・・・それだけで、収まるのかな・・・。
ヨ:うん・・・先輩はもっと大きな事件を抱えているから・・・それとバーター交換みたいなこと、言ってたけど・・・。
ス:そう・・・。

ヨ:でもね・・・。それじゃあ、一社しか押さえられないからね・・・。

ス:じゃあどうするの?
ヨ:うん・・・。

ス:どうするの?
ヨ:うん。

ス:どうするんだってば。
ヨ:くどい。

ス:でも、考えがあるんでしょ?
ヨ:そうね。

ス:そうねって・・・。
ヨ:それについては・・・先輩とも意見が一致したんだけど・・・。
ス:・・・なあに?
ヨ:ま、ソンジュンを押さえるってことだな。


ス:どうやって?
ヨ:・・・。愛の力ってやつ・・・。

ス:・・・なんかやな予感。
ヨ:そうお?

ス:ヨンジョン・・・体は使わないでね。
ヨ:(笑う)バカ。会って話すだけだよ。

ス:そんな簡単に済むと思うの?
ヨ:ええ!
ス:だって・・・あっちは燃えてるのよ。
ヨ:スワン、君ねえ。(笑う)
ス:ヨンジョンの方がわかってないじゃない・・・。



スワンとヨンジョンが見つめ合う。


ヨ:参ったな・・・。
ス:絶対、変なことしないでね。

ヨ:するわけないじゃない・・・。おかしいよ、そんな事、言うの。
ス:だってえ・・・。この間ね、本屋さんで見た週刊誌。「妻の妊娠中に男に走った夫」っていうのがあったもん。
ヨ:ナンセンス・・・。

ス:ソンジュンを触った手でなんか、触らないでね・・・。
ヨ:スワン・・・。



ヨンジョンが急に、スワンの手を握った。

スワンは「キャア」っと言って、手を振り解き、手を振っている。



ヨ:スワン! まだ触ってないよ。
ス:やだあ・・・。驚かせないでよ!
ヨ:ホント、大げさ・・・。
ス:あなたがいけないのよ・・・。


スワンとヨンジョンはちょっと見つめ合って、笑った。










それから、3日後の午後。
ソウルのコーヒーショップ。


ヨンジョンの前に、ソンジュンが膝をくっつけて、お行儀よく座っている。



ヨ:ソンジュンさん。あなたが私のためにいろいろお骨折りくださるのは、うれしいのですが・・・(この言葉でいいかな・・・)私やスワンにとっては、大学で起こったことはもう過去のことなんです。これから始める二人の生活のほうを大事にしていきたいので、今回のように、雑誌に私のことを売ったりしないでください。

ソ:売るなんて・・・僕は、ヨンジョンさんのために、動きたいだけです。
ヨ:でも、私の話なんかより、ジョンア女史と理事長を面白おかしく書きたてて、雑誌の売り上げを上げようとするのが、雑誌社ですよ。だから、もうこんなことはやめてください。


ソ:ヨンジョンさんはそれでいいの? 人に誤解されたままで。(じっと見つめる)
ヨ:私には、妻も子どももいるんです。彼らが私を慕ってくれているだけで、うれしいんです。


ソ:そうですか・・・。スワン先生は幸せだな・・・。
ヨ:・・・あなただって、いい人に巡り会えますよ。

ソ:そうかな・・・やっと出会えたのに・・・。(ヨンジョンを見つめる)
ヨ:(内心困る)・・・。



ソ:スワン先生のどんなところが好きなんですか?
ヨ:え?

ソ:なんかとっても平凡に見えるけど。
ヨ:平凡な女性は嫌いですか?

ソ:いえ・・・そういう意味じゃなくて・・・。ヨンジョンさんみたいな人が恋をしちゃう人って、もっとドラマチックな人なのかなと思って・・・。
ヨ:(笑う)こう見えても、ドラマチックですよ。・・・人の人生ってよく覗いてみないとわかりませんよ。


ソ:そうですか・・・。一目で好きになりましたか?
ヨ:・・・。




ヨンジョンはあの日を思い出していた。

ソファで昼寝していたスワンが、コロンと転げ落ちた時のことを・・・。
父親の大きな黒縁のメガネをかけたスワンを・・・。


そして、ヨンジョンは一人、クスッと笑って、ソンジュンを見た。




ヨ:ソンジュンさん。あれが一目惚れかな・・・。(笑う)人って、予想もつかない時に恋に落ちるのかもしれませんね。大学の講師のスワンと、助教授の私が知り合ったんだったら、あんまりドラマはないけど・・・(笑う)あの時の二人は職業も知らなかったんです。
ソ:・・・。
ヨ:それに、決してカッコよくもなかった・・・。でもね、恋しちゃったんです。きっと、縁のある人っていうのはそういうものかもしれませんね。


ソ:あなたの心の中は、スワン先生でいっぱいなんですね。
ヨ:・・・そうです・・・。

ソ:誰も入り込む余地はないですか・・・?
ヨ:・・・ないです・・・。



ソ:ヨンジョンさん、あなたの香りってなんて言うコロンなんですか?
ヨ:なぜ?
ソ:・・・とても素敵だから・・・。僕もつけたいなと思って・・・。

ヨ:これは・・・。(笑う)教えません。
ソ:(驚く)なぜ?

ヨ:スワンも好きで、たまにつけるんです。だから・・・あなたと浮気されたら、たいへんです。
ソ:そんなあ・・・スワン先生と浮気なんてしませんよ。
ヨ:でも駄目です。私は・・・とってもヤキモチ焼きなんです・・・。

ソ:・・・そうなんですか・・・。
ヨ:ええ・・・。


ソ:いいな・・・愛されていて・・・。
ヨ:あなただって、いつかそんな人に出会えます。
ソ:・・・。

ヨ:ソンジュンさん、いろいろありがとう。でも、これであのことは忘れてください。
ソ:・・・あなたのために何かしたかった・・・。(ソンジュンが俯いた)



テーブルの上に載せていたソンジュンの手の甲の上へ、ヨンジョンが大きな手を重ねた。



ヨ:ありがとう。その気持ちだけでうれしいです。これで終わりにしてください・・・。


ソンジュンが顔を上げて、ヨンジョンをじっと見つめた。そして、ヨンジョンの手の上に、反対の手を重ねた・・・。









ス:どうだった?
ヨ:うん、穏便に話はまとまったよ。


ヨンジョンがジャケットを脱いでソファに腰掛けた。


ス:ホント? よかった。簡単に身を引いてくれたのね。
ヨ:そうだね・・・。



スワンがヨンジョンの横に座る。


ス:ねえ、手出しはしなかったんでしょ?
ヨ:変な言い方。
ス:だってえ・・・。愛を行使されたら、ちょっと妻としては・・・辛いわ。
ヨ:そう・・・。




ヨンジョンが隣に座っているスワンの頬を撫でた。



ス:あいつを触った手でなんかで、撫でないでね。気持ち悪いから・・・。


ヨンジョンの手が止まった。



ス:・・・うそ・・・。
ヨ:・・・何だよ。
ス:触ったの?
ヨ:触ったって・・・握手しただけだよ。
ス:うそ・・・違うんでしょ?

ヨ:何言ってるんだよ。
ス:ホント?
ヨ:ホント。



ヨ:たぶん、これ以上は騒がないと思うけど・・・。納得してたから。後は、問題の「コリア・ジャーナル」だけど。もう、ソンジュンが説得しても、先方は聞かなかったよ。
ス:そうなんだ・・・。アンジュ先輩、うまくいったかな・・・。
ヨ:祈るばかりだね。


ス:そう言えば、今日、ジョンア先輩と電話で話したの。
ヨ:そう。どうだって?

ス:なんかすごく幸せそうなの。今度、料理教室も通うって。先輩、洋食とか好きだったのに、急にキムチを正しく漬けられるようになりたいって言い出して。
ヨ:へえ・・・。スワンも一緒に習ったら。
ス:もう・・・。
ヨ:お母さんのところで、一緒に習えばいいじゃない。スワンのお母さんのキムチはおいしいから。
ス:そうかあ・・・。


ヨ:いずれにせよ、幸せなんだ。
ス:うん。なんか、アンジュさんのために何でもやってあげたいって感じなの。
ヨ:へえ、尽くすタイプなんだ。

ス:そう。だから、アンジュさんには、僕のことより、仕事もちゃんとやりなさいって言われちゃうんだって。
ヨ:へえ・・・。

ス:先輩、あんなに尊敬できる人と出会えて幸せって言ってたよ。
ヨ:そうかあ。
ス:ヨンジョンの目に狂いはなかったね。

ヨ:そうか・・・よかった。(スワンをじっと見る)ジョンアさんのほうが、尽くすタイプでよかったかな。
ス:ヨンジョンたら・・・。

ヨ:スワン、かわいいだけじゃ駄目だよ。
ス:もう、ヒドイ!



ヨンジョンは、立ち上がって寝室の方へ歩いていく。



ヨ:スワン。ダンナ様の着替えを手伝って。


そう言って、ヨンジョンが寝室へ入っていった。




ス:もう、自分で着替えたら。あ・・・。


スワンが後を追いかける。




ス:失礼します。(ドアを開ける)お着替えを手伝いにきました。


スワンが声をかけるが、ヨンジョンの姿がない。



ス:あれ・・・。ヨンジョン? ヨンジョン!


ヨ:わあ!
ス:キャ!



ヨンジョンがドアの後ろから飛び出した。


スワンは驚きながら、ヨンジョンに抱きつく。


ス:もう、脅かして。
ヨ:ごめん、ごめん・・・。(スワンを抱く)

ス:もう、物足りない妻でごめん・・・。
ヨ:何だよ。
ス:だって・・・。先輩みたいにパワフルじゃないし。
ヨ:ほどほども大切だよ。あんまり頑張りすぎると、後で疲れちゃう・・・。
ス:うん・・・。


ヨ:スワンはスワンでいいよ。
ス:ホント?

ヨ:うん・・・あと少し・・・。キムチが上手に漬けられたら・・・。
ス:もう・・・。やっぱり・・・。
ヨ:だから、今のままでいいったら。



二人は抱き合いながら、グルグル回って、ベッドに倒れこむ。



ス:うそつき・・・。
ヨ:うそなんてついてないさ・・・。

ス:好き?
ヨ:まあね・・・。
ス:・・・。やっぱり・・・。
ヨ:愛が見たい?
ス:うん・・・。


ヨ:・・・。見せてやろう・・・。(髪を撫でる)
ス:(笑う)・・・もう、ヨンジョンたら・・・。
ヨ:(笑う)・・・。


ヨンジョンは、スワンの体の上にドンと乗って、スワンの顔を両手で包み、顔を覗き込む。


ス:(笑う)やっぱり、私のヨンジョンだわ・・・。私だけのヨンジョンだわ。


二人は見つめ合って、笑った。








続く・・・







次回、最終回はちょっとロングバージョン^^。
そう、これより長いバージョンです・・・が、ここに入りきるのかな^^;
お楽しみに!



2009/08/10 00:30
テーマ:【創】「アマン」第1部 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】「アマン」29





BGMはこちらで^^




BYJシアターです。

本日は「アマン―夏の恋人」29部です。



ではお楽しみください。






母さんは言った。

スワン、幸せって実は私たちのすぐ近くにあるものよ。

父さんと母さんはね、幼なじみでいつも一緒だったけど、
そこに愛があることに気づかないでずいぶん長い間、回り道しちゃった・・・。

でもね、よく見たら、すぐ目の前に幸せがあったのよ。

おかしいわね。


あなたは夢が大きいから、いつも遠くばかり見ているけれど、
たまには、近くも見たほうがいいわ。

遠くばかり見ていても探せないこともあるのよ。





ぺ・ヨンジュン
チョン・ドヨン主演
「アマン―夏の恋人」29






ヒョンスが総合病院の廊下で困った顔でベンチに座っている。

学校帰りに急にお腹が痛くなって蹲ったスワンに頼まれて、タクシーを探し、運転手と一緒にスワンを車に乗せた。

運転手は、スワンにどこの病院へ行けばいいか、尋ねたが、スワンは全く答えられる状態ではなく、真っ青な顔をして、お腹を押さえて、痛みを堪えている。

「どこが悪いのかわからないから、近くの総合病院の救急がいいだろう」と、運転手が言って、ここの病院へやってきた。
運転手に、救急受付に声をかけてもらい、スワンはストレッチャーで運ばれた。



ヒョンスは、スワンから預かったバッグから、お金を払い、スワンのストレッチャーの後ろを走るようにしてついていった。


ナースに「あなたは誰?」と聞かれ、「息子です。僕のお母さんです」とヒョンスは答えた。




処置室の外で待たされていると、中からナースが出てきて、「お父さんは?」と言う。
「お父さんは、今アメリカです」
「そう・・・誰か、大人の人いない? お祖母ちゃんとかお祖父ちゃんとか」

ヒョンスが連絡の取れるお祖父ちゃん、お祖母ちゃんと言えばユンアの両親で、スワンの母親の電話番号どころか、名前さえ知らない。

スワンはキムだが、母親はなんという苗字なんだろう・・・。


お母さんて書いてあるのかな・・・。


スワンから預かったバッグを開けて、中から携帯を取り出す。


名前を探して・・・
探して・・・。


全くわからない・・・。




でも、ヨンジョン(US)というのがあった。

USの意味はわからなかったが、もしかしたら、アメリカかも知れない・・・。



ヒョンスは、そこにかけてみる。


長いコールのあとで、わからない英語が流れ・・・ヨンジョンが出てきた。


ヨ:はい・・・。


眠そうな声だ。



ヨ:スワン? どうしたの?

ヒ:お父さん!
ヨ:・・・ヒョンス?

ヒ:お父さん、大変なんだよ。(父の声に涙が出そうになる)
ヨ:どうした。スワンは?

ヒ:スワンさんが、お腹が痛いって、道の真ん中でしゃがみ込んじゃって、今、タクシーで病院へ来たんだ。
ヨ:どこの?
ヒ:ええと、ええと、ここは・・・(周りを見渡して・・・)ソウル中央総合病院。


ヨ:それで具合はどうだって?
ヒ:看護師さんがお父さんは?って。大人の人じゃないと話してくれないみたい・・・。誰か、大人の人に来てもらってって。スワンさんのお祖母ちゃんの電話番号が探せないんだ。なんていう名前かも知らないんだもん。


ヨ:イ・スオンだよ。ちょっと待って、お父さんが電話番号を持っているかもしれないから・・・。あ、あった。今から、お父さんから電話を入れて、お祖母ちゃんにそっちへ行ってもらうようにするから。
ヒ:うん。
ヨ:一人で心細いかもしれないけど、そこで待ってるんだよ。
ヒ:うん。

ヨ:その携帯は、手に持ってるんだよ。お父さんと連絡し合うようにね。お祖母ちゃんが来て、お父さんに電話って言ったら、その携帯を渡して。わかったね?
ヒ:うん・・・。
ヨ:スワンは今、病室?

ヒ:ええと、処置室って書いてあるところに入ったまま。
ヨ:・・・そうか・・・。ヒョンス、よくそこまで運んだね。エライぞ。ありがとう・・・。今、お祖母ちゃんに電話する。だから、いったん、電話を切るよ。いいね? 
ヒ:うん。

ヨ:そこで待っているんだよ。
ヒ:うん。






それから、30分ほどして、廊下の向こうから、スワンの母親がやってきた。


母:ヒョンス君! ヒョンス!
ヒ:あ、お祖母ちゃん!


ヒョンスは、スワンの母親を見つけ、走っていって抱きついた。
やっと、母親が来て、ヒョンスは安心したのか、母親の胸でしゃくり上げるように泣いた。



母:一人でエラかったねえ。(顔を見る) お父さんから電話をもらってびっくりしちゃった・・・。何があったの?
ヒ:わかんない。一緒に歩いてたら、急にお腹が痛いって座り込んじゃって、タクシー呼んでって。

母:そう・・・それで、あなたがここまで連れてきてくれたのね。頑張ったねえ・・・。

ヒ:タクシーの運転手さんが、どこが痛いかわからないから、総合病院がいいだろうって。
母:うん、うん。ヒョンス君、よくやったよ。


ヒ:お母様、どうしちゃったんだろう。
母:今日は、その前に何かしてたの?

ヒ:今日は学校の参観日で、親子リレーをやったんだ。
母:・・・スワンも走ったの?
ヒ:うん。
母:そう・・・。(思い当たる)


ヒ:それで、具合が悪くなっちゃったの?

母:わからないわ。人は何が原因で具合が悪くなるか、わからないことが多いから・・・。まずは、容態を聞かなくちゃね。ヒョンス君はまだスワンに会ってないの?

ヒ:うん。看護師さんが、大人の人を連れてきてって言って、中へ入れてくれないの。お父さんはって言われたから、「今、アメリカです」って言ったら、お祖母ちゃんはって。

母:そう、それは大変だったわねえ。お父さんの電話番号、よくわかったね。よく気がついたわね。
ヒ:ヨンジョンUSってあって、意味がわからなかったけど、英語みたいだったから。

母:うんうん・・・そう・・・。ちょっと先生とお話してくれるね。ここで、待っててね。






母はナースステーションへ行って名前を名乗り、ナースに様子を聞く。
ナースが母親を連れて、診察室へやってきた。
母親は中へ入って、担当医にスワンの容態についての説明を受け、また外へ出てきた。



ヒ:どうだった?
母:ちょっとの間、入院だって。
ヒ:そんなに具合が悪いの?

母:というより、少し様子を見なくちゃいけないって。ヒョンス君、お祖母ちゃんちに来る?
ヒ:どうしよう。
母:う~ん、あなたは学校があるもんねえ・・・。じゃあ、お祖母ちゃんがヒョンス君の家に泊まるね。いい?
ヒ:うん。でも、お母様、一人でいいの?

母:ここは完全看護だから、家族は泊まれないんですって。全部、看護師さんが見てくれるんだって。
ヒ:へえ・・・。寂しがらないかな。お母様は寂しがりだから・・・。



母親は、愛しそうに、スワンを心配するヒョンスの頭を撫でた。



母:ちょっとスワンを覗いてくるわね。処置室へ入ったままだったよね。
ヒ:うん。






処置室の扉を開けると、スワンが点滴をして寝ている。



母:スワン? スワン・・・。
ス:(目を開ける)ああ、母さん・・・。
母:たいへんだったわね・・・。

ス:うん・・・。
母:今、ヒョンス君から話を聴いて、先生とも話してきた・・・。
ス:うん・・・。赤ちゃんは・・・?

母:処置が間に合ったから、大丈夫だって。でも、一晩様子を見るって。
ス:そう・・・。
母:・・・。(じっと娘の顔を見る)

ス:ごめんね、心配かけて。バカみたいだったかな・・・。

母:うううん・・・母さんも・・・スワンだったら・・・走ってたわよ。(微笑む)
ス:母さん・・・。(涙が出てくる)


母:ヒョンス君はエラかったね。あなたをここまで運んで・・・ちゃんとお礼を言いなさいよ。
ス:うん・・・。ヒョンスの前で、産婦人科の病院名を言えなかった・・・。バカだね・・・。

母:今日はヒョンス君を連れて、あなたの家に泊まるわ。ヨンジョンさんにも報告しないと。ヒョンス君があなたの携帯からヨンジョンさんに電話して、そこからうちに電話があったのよ。とっても心配してたから・・・。

ス:そう・・・。ヨンジョンにも心配かけちゃった・・・。
母:ヨンジョンさんはお父さんだもん、当たり前・・・。ヒョンス君にはまだ、赤ちゃんのことは言ってないんだって? そんなことをヨンジョンさんが言ってたけど・・・。
ス:ヒョンスはまだ知らないの。ヨンジョンがアメリカから帰ったら話す予定だったから・・・。


母:そう・・・。でもね、スワン。危ないって感じた時はちゃんと専門の病院へ行かないとね。
ス:はい・・・。
母:今回はいい病院に当たったけど・・・なかなかそうはいかないわよ。
ス:うん。


母:赤ちゃんのこと、母さんから話してもいい?
ス:・・・でも・・・。
母:うまく話すから・・・ね。
ス:うん・・・。お願いします。ヒョンスは外にいるの? お礼言っておかなくちゃ。

母:そうね、連れてくるわ。







母親がヒョンスを連れに行った。

入ってきたヒョンスを、スワンが寝たまま、頭を撫でて、「ありがとう。ヒョンスのおかげだよ」と言って見つめた。






ヒョンスと一緒にマンションの部屋に帰ってきた母親はヨンジョンに電話を入れた。


母:あ、ヨンジョンさん。
ヨ:お母さん・・・。スワンは?
母:しばらく入院することになったの。
ヨ:まさか・・・。(声がかすれる)
母:大丈夫よ。安定するまで様子を見るっていう話だから・・・。


母:ヨンジョンさん、今日ね、ヒョンス君の参観日で、親子リレーがあって、走ったらしいの。
ヨ:それで・・・。

母:それでね、ヒョンス君と帰り道、急にお腹が痛いってうずくまっちゃって、それをヒョンス君がタクシーで総合病院まで連れてってくれたのよ。
ヨ:・・・。

母:ヨンジョンさん、今ね、ヒョンス君が心配そうな顔をして、私の横にいるのよ。
ヨ:ヒョンスにはまだ妊娠のこと、話してないから、あいつも訳がわからなくて・・・。

母:そうよね・・・。今日はスワンもお母さんとして参観日で頑張ったんだけど・・・。
ヨ:・・・。

母:(少し考えて)それでね、ヨンジョンさん、病院に行って、たいへんなことがわかったの。(横のヒョンスを見る)ねえ、ヒョンス君も聞いてね。(うれしそうに話す)ヨンジョンさん、スワン、お腹に赤ちゃんができてたの。
ヒ:え、そうなの? (驚く)

母:まだ、できたてのほやほや。ヨンジョンさん、おめでとう。よかったわね。
ヨ:話せるということは、完全に大丈夫なんですね? (少し気持ちが安らぐ)

母:あなたもお父さんよ。まあ、あなたには二人目だけど。(笑う。そしてヒョンスの顔を見る)ヒョンス君もお兄さんね。だからね、お腹に赤ちゃんもいるから、お医者さんが同じお腹が痛いんなら、もう少し様子を見ようって、今日は入院しました。

ヒ:そうなの?
母:うん・・・。まだ、できたてだから、大事にして泊まってくださいって。
ヒ:ふ~ん。あとは病気じゃないんだね?
母:たぶんね・・・。ほかに病気がないか、今のお腹が痛いのが赤ちゃんに影響しないか、様子を見て調べてくれてるのよ。
ヒ:そうなんだ・・・。


ヨ:お母さん・・・ありがとうございます。スワンのことも・・・ヒョンスに話してくれて、助かります。
母:ヨンジョンさん、こっちはなんとかなると思うわ。もしなんかあった時は電話を入れますから、あなたはお仕事をしっかり片付けてきてちょうだいね。何回も行ったり来たりできないでしょう。・・・あそこの病院は完全看護なの。だから、私もヒョンス君の面倒も見られるし、大丈夫だから。それと、病室では、携帯が使えないから、スワンはあなたに電話できないけど・・・絶対安静ではあるけど・・・もうスワンは大丈夫だから・・・。

ヨ:すみません。お母さんがいてくれて助かります。よろしくお願いします。ヒョンスをちょっと電話に出してくれませんか?
母:待ってね。ヒョンス君、お父さん。(受話器を渡す)


ヒ:お父さん・・・。

ヨ:ヒョンス、よくやったな。ありがとう。スワンも大丈夫そうだし・・・。おまえもお兄さんになったみたいだし、お父さんもまた一人赤ちゃんができて・・・これからは、家族4人になるんだね・・・。赤ちゃんができて・・・いいだろう?

ヒ:うん。僕もうれしいよ・・・お兄さんになれて・・・きっと兄弟っていたほうが楽しいよね?
ヨ:そうだね。お父さんも一人っ子で、兄弟がいたらよかったのにと思った時期もあったから、きっと楽しいと思うよ。
ヒ:うん・・・。


ヨ:・・・。お父さんも今一生懸命、アメリカでの生活の準備をしているから・・・ヒョンス、おまえもスワンのお祖母ちゃんとちゃんと留守番をしているんだよ。
ヒ:うん。

ヨ:じゃあまた、お祖母ちゃんに代わって。


母:もしもし、安心してね。土曜日になったら、うちのほうへスワンとヒョンス君を連れて帰ります。そのほうがスワンもゆっくりできるから。
ヨ:すみません。ベッドもなくて・・・。よろしくお願いします。




ヨンジョンのマンションは、寝具が足りなかった。
アメリカへ行くまでの短い期間を考えていたので、寝室にあるベッドもヨンジョンのセミダブルだけだ・・・。




母はリビングのソファに、ヨンジョンの掛け布団をかけて寝ることにする。

なら、ベッドでも同じ・・・ような気もするが・・・やっぱり、ソファに洗ったシーツのほうが気が休まった。







3日ほどして、スワンもやっと退院できるようになり、迎えに来たヒョンスと母親と三人で、実家へ向かった。


実家のソファをスワンが陣取って横になるように座り、横にヒョンスが座った。


ス:心配かけたね。でも、もう大丈夫だからね。しばらくあんまり動けないけど、元気は元気だから。ヒョンスは、命の恩人だよ。
ヒ:・・・。
ス:二人分、助けちゃったから。(微笑む)


母:ヒョンス君、お祖母ちゃんと一緒に、プリン作ろう。
ヒ:うん!


ヒョンスがキッチンへ飛んでいった。

母とヒョンスは羨むほど、楽しそうに時を過ごしている。

スワンはちょっと妬けた。
自分といる時より、ヒョンスは子どもらしいし、快活だ・・・。




母:さてと・・・。しばらく、蒸しているからね・・・。
ヒ:何分ぐらい?
母:20分くらいかな。あんまり強火にしないでゆっくり蒸したほうが、プルプルのプリンになるのよ。
ヒ:へえ・・・。





母:スワンお母様は、お茶でも飲む?
ス:うん・・・。

近くに来た母親を見て、スワンがちょっと顔をしかめる。



ス:母さんのほうがヒョンスと仲良しみたい・・・。
母:妬ける?(微笑む)
ス:ちょっとねえ・・・。なんか関係が自然で・・・私といる時より、ヒョンスが子どもらしく見える・・・。なんでかな・・・。今まで私たちって仲良しだと思ってたのに・・・。

母:それは、スワンがホントのお母さんになる人だから・・・。粗相がないようにしているのよ。
ス:そんなこと、気にしなくてもいいのに・・・。

母:子ども心に気にしているのよ。そのうち、本当に慣れてくれるから、ゆっくりやりなさい・・・。
ス:うん・・・。


母:スワン・・・母さんはもう30年以上・・・うううん、40年近くお母さんやってるんだもん・・・スワンより、子どもの扱いが慣れてて当たり前。それに、ヨンジョンさんだって、ヒョンス君と住み始めてまだ一年も経ってないでしょう・・・。あなたたち二人はまだまだ、親になり切れてないのよ・・・。修行が足りない・・・。
ス:そうかもね・・・。

母:お父さんの恋愛に付き合って・・・新しいお母さんができて・・・。でも、いいじゃない? 若いお父さんとお母さんで。フレッシュで。きっとヒョンス君は幸せよ。
ス:・・・。
母:いい子じゃない。大切になさいよ。
ス:うん。


そうだ、母に比べたら、私なんてひよっこ・・・。
だから、まだまだだわ・・・。


母:そうだ・・・。前の奥さんの一回忌とか、もうすぐあるのかしら・・・。
ス:うん・・・それを済ませてから、ボストンへ行くの・・・。その頃になったら安定期だし。

母:うん・・・区切りね。お墓は?
ス:あちらの実家に眠ってるの・・・。離婚はしてなかったけど、離れて暮らしてたし、あちらのご両親には、かわいい一人娘だったから・・・。
母:そう・・・。でも、そのほうがよかったのかもしれないわね・・・。
ス:うん・・・。




ヒ:お祖母ちゃん! 20分経ったよ!
母:あ、忘れるところだった。(笑う)


母は、キッチンのヒョンスのほうへ飛んでいった。






ヒョンスは、母を「お祖母ちゃん」となんの衒いもなく、呼んでいる。
自分はまだ、「お母様」なのに・・・。


スワンはちょっと寂しい気がしたが、ヒョンスはお祖父ちゃん・お祖母ちゃんに育てられたから、もしかしたら、母親と一緒のほうが、居心地がいいのかもしれない・・・。






やっとヨンジョンがボストンでの日程を終えて帰ってきた。

いったん、スーツケースをマンションに置いて、スワンの実家へ迎えにきた。

スワンの母に手料理をご馳走になって、ヨンジョンの車でスワンとヒョンスはマンションへ戻った。





帰国したてのヨンジョンは、家へ帰るとすぐにシャワーを浴び、旅の疲れを取った。


ヨ:ああ、さっぱりした。(髪を拭きながら、リビングへ来る)
ス:いろいろ準備はできたの?
ヨ:うん。(冷蔵庫から缶ビールを取り出す)会社もなかなか活気もあるし、いい仕事をしてたよ。これで、仕事は決まったし、住まいもね。ここの2.5倍はあるかな。いいマンションだった。
ス:マンションにしたの?
ヨ:最初はそのほうがいいだろう? 赤ちゃんもいて、大学もあるし・・・。一軒家はメンテメンスがたいへんだから。
ス:そうだね。

ヒ:学校見てきた?
ヨ:見てきたよお。私立だけど、良さそうだった。海外からの生徒のための英語クラスがあるから、それに行くといい。
ヒ:うん。

ヨ:赤ちゃんもできたし。よかったなあ。
ス:・・・。(微笑む)
ヨ:スワンはちょっとたいへんだったけど。
ス:うん・・・。

ヒ:走っちゃいけなかったんだね。

ス:でも、知らなかったからね。
ヒ:ハードルなんて跳ばなければよかったね。

ヨ:ハードルなんてあったの?(驚く)
ス:・・・うん・・・。
ヨ:なんで跳んだの?

ス:・・・そこにハードルがあったから・・・。

ヨ:じゃあ、年を取った親御さんはどうしてた?
ヒ:横を通っただけだよね。
ス:うん・・・。
ヨ:・・・・。(ちょっと怒った目)

ス:でも、知らなかったから・・・。(恐縮する)
ヒ:でも、カッコよかったよ。
ス:ありがとう。(笑顔)





夜の寝室で。

スワンは気まずそうに、ヨンジョンを見つめる。


ス:ごめんなさい。
ヨ:・・・。
ス:ごめんごめんごめんごめん・・・ホントにごめん・・・。
ヨ:走っただけじゃなかったわけね。

ス:うん・・・。
ヨ:赤ん坊だけじゃなくて、君の命も危なかったのに・・・。(睨む)全く・・・。
ス:だから、ごめんなさい。
ヨ:全く君は・・・。これからは気をつけてね。


ヨンジョンは憮然として表情でベッドに入る。
スワンもその横に不安そうな顔をして寝る。


ス:ヨンジョン、怒ってる?
ヨ:・・・怒ってるよ。


ヨンジョンはそう言って、スワンのほうを向いた。


ヨ:どんなに心配したと思ってるの? (恐い目つき)
ス:・・・。
ヨ:もう、君だけの体じゃないんだから・・・。
ス:・・・。


スワンがヨンジョンのほうを見る。
ヨンジョンが怒った顔をしたまま、スワンを引き寄せて抱きしめた。


ヨ:君がいなくちゃ、困るじゃない・・・。君がいなかったら・・・。
ス:ヨンジョン・・・。(涙ぐむ)


ヨンジョンがスワンをギュッと抱きしめる。


ヨ:君はもう・・・僕の家なんだし・・・。(抱え込むように抱く)
ス:・・・。

ヨ:君のニオイがする・・・。君の温もりがあって・・・。
ス:・・・ヨンジョン。
ヨ:やっと帰ってきたって気がするよ・・・。


ス:ヨンジョン・・・。すごく、寂しかった・・・それはわかる? 失敗しちゃったけど・・・ヨンジョンがいない家を守ったよ・・・。
ヨ:うん・・・。(顔を見て微笑む)失敗しちゃったけどね・・・。ありがとう・・・。いいお母さんだったね。
ス:ヨンジョン・・・。(ありがとう)

ヨ:もう、おっちょこちょいなんだから・・・。
ス:ごめん・・・。

ヨ:これからはちゃんと考えてよ。(真面目な顔をする)
ス:うん・・・。

ヨ:これからは、そばにいるから・・・。(髪を撫でる)
ス:・・・。

ヨ:君を一人にすると危ないから・・・。(頬を撫でて、軽くつねる)
ス:・・・バカ・・・。(甘える)


久しぶりに、スワンはヨンジョンに甘えて、彼の胸で安らかに眠った・・・。






それから、しばらくして、リビングの電話が鳴った。

ヨ:もしもし。
ソ:イ・ソンジュンです。ご無沙汰してます。
ヨ:あ、どうも・・・・。スワンですか?
ソ:いえ・・・ヨンジョンさんに・・・。

ヨ:なんでしょう?
ソ:実は、会ってほしい人がいるんです。
ヨ:え? どういうこと?

ソ:ヨンジョンさんが大学で受けた名誉毀損。なんとか回復したいと思って・・・実は、大学時代の雑誌記者に相談したんですよ。
ヨ:・・・。
ソ:そうしたら、やりたいって。どうです? 彼に会ってみませんか?
ヨ:いや・・・。

ソ:このままにはできませんよ。

ヨ:ソンジュンさん・・・そのことはもういいです・・・。
ソ:なぜ?

ヨ:私の話が出ると、ジョンア女史の名前も出るでしょう?
ソ:当たり前です。あんな汚い手を使ったんですから。
ヨ:それはちょっと困るなあ・・・。
ソ:なぜ?

ヨ:彼女に迷惑かけたくないんです・・・。大学審議会で証言してくれたし。彼女の未来に汚点を残したくないんですよ。
ソ:ヨンジョンさん! 生温いですよね、そんな風に人がいいから、つけ込まれるんです。
ヨ:つけ込まれるって・・・。
ソ:・・・いずれにせよ、記事にはするそうです。こんな、大学内での茶番は許されませんからね。


ヨ:ソンジュンさん・・・もしかして、君が大学審議会に密告したの?
ソ:密告なんて。ちゃんとした事件ですよ。
ヨ:・・・・。


ソ:弱者に対する大学という権力のあり方に、僕は、憤りを覚えるんです。ましてや、その矛先が、ヨンジョンさんだなんて・・・・。
ヨ:ソンジュンさん・・・。

ソ:僕に任せてください。
ヨ:待ってください。それは、私の真意とは違います。

ソ:甘いな・・・いずれにせよ、僕は頑張ります。
ヨ:どこの雑誌ですか?

ソ:週刊「コリア・ジャーナル」です。
ヨ:そんな、メジャーな雑誌!

ソ:では、任せてください!
ヨ:ソンジュンさん! ソンジュンさん!




電話は切れた・・・。

電話の前で呆然としているヨンジョンに、洗濯を終えたスワンが声をかける。


ス:誰から?
ヨ:イ・ソンジュン・・・。週刊「コリア・ジャーナル」にオレの記事を売ったって・・・。名誉回復のため、頑張るって・・・。ジョンア女史の名前も載るらしい・・・。

ス:ええ! そんなあ!







続く・・・

いよいよ、大詰めです・・・。


勘違い男?
愛にあふれた戦士、イ・ソンジュンの登場で、
ヨンジョンとスワンは、ジョンアとの板ばさみに!




2009/08/09 02:02
テーマ:【創】「アマン」第1部 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】「アマン」28





BGMはこちらで^^




BYJシアターです。
本日は「アマン―夏の恋人」28部です。


ではお楽しみください。







母さんは言った。

スワン、幸せって実は私たちのすぐ近くにあるものよ。

父さんと母さんはね、幼なじみでいつも一緒だったけど、
そこに愛があることに気づかないでずいぶん長い間、回り道しちゃった・・・。

でもね、よく見たら、すぐ目の前に幸せがあったのよ。

おかしいわね。


あなたは夢が大きいから、いつも遠くばかり見ているけれど、
たまには、近くも見たほうがいいわ。

遠くばかり見ていても探せないこともあるのよ。







ぺ・ヨンジュン
チョン・ドヨン主演
「アマン―夏の恋人」28








ス:ねえ、その人ってすごい人なの?
ヨ:すごい人だよ。(ボールに卵を割っている)

ス:カッコいい?
ヨ:・・・そりゃあ・・・もちろん。(砂糖を入れる)



ヨンジョンが朝食の準備をしているそばで、スワンは背の高いイスに座りながら、助手をしている。


ヨ:砂糖の後は、塩をほんの一つまみ入れて。
ス:塩?
ヨ:ほんの少しでいいから・・・砂糖の甘みがまろやかになって、甘みが増すんだよ。
ス:へえ。このくらい?
ヨ:そう。いいよ。


ボールにヨンジョンが牛乳を入れる。


ヨ:シナモン、入れて。
ス:このくらい?
ヨ:もう一振り。・・・OK!


ヨンジョンがボールをかき混ぜて、パンを漬け込む。


ス:これを焼けば、フレンチトーストの出来上がりね。(うれしそうな顔をする)
ヨ:ホントに食欲が出てきたねえ。
ス:でしょ?
ヨ:でも、オレが作るんだ。(笑う)
ス:ちゃんとここで勉強してるでしょ?
ヨ:自分の分は自分で焼いてね。(スワンを見る)
ス:はい、先生。



ヨンジョンがサラダ用の野菜を冷蔵庫から出している。



ス:ねえ、さっきの話。どのくらいすごい人?

ヨ:何しろ、ソウル大学法学部主席だから。(手は動いている)
ス:一番だったの!
ヨ:・・・う~ん、二番かも・・・三番かな・・・。


洗ったプチトマトを一個、スワンにあげる。


ス:(プチトマトを受け取りながら)なあ~んかうそ臭い・・・。(口に入れる)
ヨ:とにかく、優秀。
ス:へえ・・・。いくつ? (次のトマトを摘む)

ヨ:30・・・7かな・・・。おい、全部食べるなよ。

ス:あと一個、ちょうだい。もうお腹が空いちゃって。
ヨ:もうすぐできるんだから。(苦笑する)ほら!(トマトを口に入れてあげる)


ス:(口に入ったトマトのへたを取りながら)ずいぶん、ヨンジョンと年が違うんだ。
ヨ:学士入学だったからね、彼は。その前は経済学部で、公認会計士でもあるんだよ。
ス:へえ・・・。すごい人なのね・・・それで、カッコよくて・・・なんで一人だったのかしら?
ヨ:・・・そりゃあ・・・忙しかったんだろ? ジョンアさんだって仕事一途じゃない。


ス:まあね・・・。背も高いの?
ヨ:背の高さなんて、弁護には関係ないだろう・・・。さ、サラダができたから、もう焼くよ。
ス:うん。でもさあ、先輩って背が高いじゃない。


スワンはイスから降りて、パンの入ったボールを持ち、ガスレンジのほうへ向かう。


ヨンジョンがフライパンにバターを引き、スワンの持つボールからパンをとって、フライパンに並べる。


ス:ヨンジョン! 空きスペースあり! そこに私のパンも置いて!
ヨ:・・・。そんなズルばっかりしてると、ホントに料理の腕が上がらないぞ。
ス:ズルなんて・・・。
ヨ:次回はやってよ。

ス:次回は全部自分でやる!
ヨ:聞いたからな。(じろっと見る)


フライパンの空いているところに、スワンのパンも並べる。


ス:・・・わかった・・・。(ちょっとしょぼんとする)
ヨ:ちゃんとやってよ。(やさしく見る)
ス:うん・・・。


スワンは、パンを焼いているヨンジョンの横に並んで、フレンチトーストが焼けるのを見ている。



ス:なんで私は一緒に行っちゃいけないの?
ヨ:・・・目移りしちゃうだろ?(微笑む)
ス:そんなあ・・・。私はもう、ヨンジョンしか愛せない体だから・・・。(いたずらっぽく微笑んでから、笑う)

ヨ:朝からへんなこと、言うなよ。
ス:ねえ、ホントにカッコいい?


ヨ:うん・・・。顔なんて、いい顔してるよ。
ス:髪が薄いなんてこと、ないよね?
ヨ:なんでよ?

ス:だって、条件良過ぎるもん。
ヨ:ふ~ん・・・まあ、少し、テッペンがね・・・。

ス:やっぱり・・・。
ヨ:何がやっぱりだよ・・・。


ヨンジョンがパンを裏返す。


ス:それから? あ、背の高さは? 聞いてなかった。さっき答えなかったよね。
ヨ:背?


ヨンジョンがパンの上を押したりしている。


ス:あ、誤魔化そうとしてる・・・。
ヨ:なんにも、誤魔化してないだろ。確か、165くらいかな・・・。
ス:私ぐらいなんだ。


ヨンジョンがスワンを見てから、また、フライパンの中を覗く。


ヨ:160くらいだったかな・・・。
ス:うそつき。カッコよくなんかないじゃない!



ヨ:でも、頭の中は最高だよ。ジョンアさんには、そういう人が合ってるよ。(火加減を調節する)
ス:そうかなあ・・・。だって、先輩は才色兼備よ。

ヨ:だから。 自分が揃ってる人は、相手にはそういう見た目なんて求めないんだよ・・・。ジョンアさんの話すことを瞬時にわかって、彼の話すことも瞬時にわかる・・・それって最高だろ? (スワンの顔を見る)

ス:まあねえ・・・。

ヨ:スワンはオレのどこに惚れたの?
ス:ええ? う~ん・・・(ニオイ・・・)忘れた。今は全部。(笑う)

ヨ:きっと、ジョンアさんも惚れれば、あばたもえくぼだよ。焼けた。盛り付けるぞ。
ス:そう? そうかなあ・・。
ヨ:とにかく、優秀でいい人だよ。だけど、並の人だと、彼がわからないんだ。頭が良過ぎてね。


ス:ふ~ん・・・。



ヒ:おはようございます。お父様、お母様。
ス:(後ろを振り向いて)おはよう。



ヒョンスが起きてきた。


ヒ:お母様、今日、家庭科の調理実習あるの、覚えてる?

ス:あ、そうだ! エプロンと三角巾だよね。
ヒ:マスクも。

ス:用意してあるよ。エプロン、デニムの生地の、買ったの。いいでしょ?
ヒ:うん、男の子用?
ス:うん。


スワンとヒョンスが子ども部屋のほうへ行く。


ヨンジョンは朝食をテーブルに並べながら、そろそろヒョンスにスワンの妊娠について、言わなくてならないと思っている。



ヒ:お父様。今日は早めに行きます。
ヨ:なんで?
ヒ:朝の体操の日なんだ。
ヨ:じゃあ、一口でも食べていきなさい。
ヒ:うん!


ヒョンスが皿を持って、フレンチトーストを立ち食いしている。


ヨ:座って食べろよ。
ヒ:だってえ、急いでるんだもん。お父さん、いつからアメリカ行くの?
ヨ:来週の頭。一週間行くからね、スワンと仲良くやってるんだよ。

ヒ:うん。お母様のお祖母ちゃんが遊びにおいでって。
ヨ:そうか。それじゃあ、スワンと行ってくるといい。
ヒ:うん! ご馳走様。
ヨ:牛乳も飲んで。
ヒ:じゃあね。

ヒョンスが牛乳を流し込み、玄関へ飛んでいく。



ス:ヒョンス! それで全部だよね? 忘れ物ないね?
ヒ:うん。


玄関で靴を履くヒョンスの横で、スワンが忘れ物のチェックをして、ヒョンスは元気よく出ていった。








ス:元気だよね、ヒョンスは。
ヨ:そうだな。学校が合ってるのかもしれないな。じゃあ、こっちはゆっくり食べるか。
ス:うん。


ヨ:もうそろそろ、ヒョンスに赤ん坊のこと、言わなくちゃいけないと思うんだ。
ス:うん・・・ここのところ、家にいるせいか、お腹が大きくなってきたもん・・・。
ヨ:うん・・・。まだ、他人の目にはわからないけどね・・・。それで・・・考えたけど、オレがボストンから帰ってきたら、言おうか?


ス:その前は駄目?
ヨ:・・・万が一、スワンとの関係がギクシャクした時にオレがいないとマズイだろ?
ス:そうだね・・・。
ヨ:今は、スワンの実家に遊びに行くのも楽しみにしているから・・・帰ったら話そう。
ス:うん・・・。



スープを飲みながら、フレンチトーストを食べる。



ス:ねえ、ジョンア先輩たちのお見合いには、どうして私は行っちゃいけないの?
ヨ:だって・・・いいんだよ。
ス:何が、「だって」なの?
ヨ:要は見た目じゃないんだから。
ス:見せたくないんだ。


ヨ:スワンがそういう目で見てたら、ジョンアさんだって、感情移入できないだろ?
ス:ふ~ん・・・。
ヨ:でも、いい人だよ、ホントに。冷静に見られる時間が必要なんだ。(そう言って笑う)

ス:まるで私がミーハーみたい・・・。
ヨ:(にこっとする)・・・。


ス:わかった。ヨンジョンに任せる。とにかく、お見合いは駄目でも、守ってくれそうな人なのね? 仕事はバッチリね?
ヨ:そう。いろいろな難しい案件をこなしてきた人だから・・・法曹界では、若手では有名なんだよ。
ス:ふ~ん・・・。そうか・・・じゃあ、頼みますね、お父様。
ヨ・・・OK !










ス:ねえ、お父様は何を着ていくのお?



クローゼットの前で、スワンは中を覗いて、ジャケットを選んでいる。

洗面所から戻ったヨンジョンは、ダークなシャツを着て、いいニオイをさせている。



ヨ:付き添いだからね・・・目立たないのが・・・いいんだよ・・・。


そう言って、黒のピーチスキンのジャケットを取り出して着込む。


ス:目立たない?
ヨ:だろ? (笑う)

ス:そうお? かえって、目立つ気がする。
ヨ:目立たないよ。こんなにダークだし。行くね。

ス:ええ~・・・ちょっとカッコ良過ぎるよ・・・ねえ。
ヨ:そお~んなことないって。(笑う)




ヨンジョンが玄関に向かう。


どう見ても、スワンから見ると、いいニオイだし・・・ダーク系はカッコいい・・・。


ス:そうかなあ・・・それで、成功するのかなあ・・・。
ヨ:まあ、任せなさい。
ス:ヨンジョン・・・。でも、その格好、素敵だよ。(ちょっと心配そう)

ヨ:スワン。(笑う)それはスワンがオレの奥さんだから、そう見えるだけだよ。でも、そう言ってくれてうれしいよ。じゃあね、行ってくるよ。
ス:うん・・・。先輩とその先生にもよろしくね・・・。
ヨ:うん。



ヨンジョンは出かけていった・・・。


なあ~んか、違うと思うけど・・・あれって、カッコよくないのかな・・・。違うよねえ・・・。




スワンはリビングの窓へ回って、出かけていくヨンジョンの後ろ姿を見る・・・。


やっぱり・・・素敵・・・。あ~あ・・・なんか間違ってる気がするけど・・・。










スワンの心配をよそに、ヨンジョンは楽しげに出かけていった。

ジョンアの件については、相手のキム・アンジュには、現在置かれた彼女の立場をよく話したし、彼女がなかなかの才媛でとても仕事熱心であること、そして芯の通った女性であることをデフォルメせずにちゃんと伝えた。


弁護士のキム・アンジュは、マヤカシのある女性は嫌いで、真面目に自分の人生にまい進する女が好きだった。
ジョンアはまさにそうだったし、それにソウル大学時代もその美貌で有名だったことも、もちろん、キム・アンジュは大いに気に入っていた。








約束のソウルのシティホテルのラウンジの前へ行くと、ジョンアが待っていた。


ヨ:先生! 早かったですね。
ジ:ええ・・・。チェ先生・・・今回はありがとうございます。こんなバカな私のために、弁護士さんをご紹介下さるなんて・・・。すみません・・・。
ヨ:いえ、いいんですよ・・・。スワンもとても心配しているから。これからのあなたの身の振り方に、何か間違いがあったらどうしようって。今まで頑張ってきたのに、かわいそうだって・・・。
ジ:・・・。(胸がいっぱいになる)


ヨ:今日会うキム・アンジュ弁護士は、私の大学時代からの友人で、彼は学士入学だったから、年は上なんですけど、とっても優秀な人なんですよ。何しろ、弁護士の資格だけじゃなくて、公認会計士の資格も持ってて。
ジ:まあ・・・。

ヨ:だから、汚職問題とか強くて・・・この間のペケペケ事件、覚えてますか?
ジ:ええ、たいへんな汚職事件でしたね。

ヨ:あれも彼が手がけた事件なんです。
ジ:まあ! (関心する)

ヨ:それに・・・とってもチャーミングな人柄で。
ジ:・・・まあ・・・どんな感じに?

ヨ:普段はとても厳しい顔つきなんですけど、友達や家族にはすごくやさしい人で、何しろ、笑顔がとても素敵な人なんです。
ジ:まあ・・・。


ヨ:でも、忙しすぎて、まだ独身で・・・ホントに勿体無いんだ。
ジ:・・・・。

ヨ:あ、来ましたよ。アンジュ先輩!



ホテルの入り口の回転扉から、小柄な男性がやってきた。髪はさらさらで・・・さらさら過ぎてちょっとかわいそうだが、ヨンジョンを見て、にこっと笑う顔は、どちらかというと童顔でやさしさにあふれていた。



ア:待たせちゃったかな。すまない。
ヨ:いえ、まだ時間じゃないですよ。皆、早く来たから。あ、こちら、お話したチョン・ジョンアさん。

ア:キム・アンジュです。(じっとジョンアを見つめて、にこっと笑った)
ジ:よろしくお願いします。


ジョンアは、もしかすると、自分より10CMは小さいかもしれないその男性が、かわいい水色の蝶ネクタイをして、にこっと笑ったのを見て、思わず噴出しそうになった。

でも、そのちょっとやさしげでいながら、鋭さもある目の持ち主が、ジョンアをじっと見つめた瞬間、ジョンアは真っ赤になった。



一見かわいささえ、感じてしまう男なのに・・・とても、男を感じる目をしている・・・。
不思議・・・。


ホテルのラウンジに入り、3人は丸テーブルに座った。


ア:結婚したんだってね。
ヨ:ええ。
ア:うん、よかった。おまえみたいのがやもめでいるなんて、この世の中どうなってるんだと思ったけど、ちゃんといい人、捕まえたんだ。
ヨ:まあ・・・今は幸せにやってますよ。

ア:うん・・・あ、そうか。それが発端でしたね・・・。
ジ:・・・ええ。
ア:それにしても、勿体無いな、こんなキレイな人が。
ジ:・・・。(ドキドキ!)

ア:その理事長の勝手な行動には釘を刺してあげましょう。
ジ:そんな・・・私もいけなかったんです。
ア:でも、一人の助教授の電話で、配置換えしたり、自分の身が危なくなったら、あなたを左遷するなんて、ひどいやつですよ。(じっと見る)

ジ:・・・。
ヨ:彼女の名前がマスコミに出ない様にしてほしいんだ。
ア:うん・・・。マスコミ対策ね。
ヨ:それと・・・再就職がうまくいく様に・・・今回の事件が響かない方法を考えてほしいんだ。

ア:う~ん、なかなか難しい注文だね・・・。まあ、やってみよう。
ジ:ありがとうございます。でも、私、お礼があんまりできないんです・・・。
ア:それは、こいつからいただきます。
ヨ:そんなあ・・・。(笑う)

ア:まあ、負けておくよ。こんな素敵なクライアントじゃね。あ、ご飯、食べながらでいいですか? 昨日から徹夜なんですよ。
ジ:まあ、そんなにお忙しいのに・・・。
ア:・・・でも、なんか俄然とやる気が出てきましたよ。
ジ:そうですか?
ア:ええ。(見つめる)


小柄で童顔でやさしそうなくせに、ジョンアが出しゃばる隙を与えない・・・。

ジョンアがとてもしっとりした女に見えた。


ヨンジョンは二人の顔を見て、立ち上がった。


ヨ:じゃあ、紹介したから、私はこれで。
ア:え、ご飯食べていかないの?
ヨ:うん。うちでカミサンと食べるよ。
ア:まいったなあ。
ヨ:いいだろ? 二人で。


ア:そのほうが話がしやすいかな。ね、ジョンアさん。二人のほうが今後の対策が練りやすいでしょ?
ジ:え? ええ・・・。


ヨ:じゃあ、ジョンアさん、お先に。アンジュ先輩、よろしくね。

ア:早く行け、色男。
ヨ:あ、名誉毀損で訴えますよ。
ア:ふん。(笑う)じゃあ、この弁護代でなんとか・・・。

ヨ:ですね? OK ! ではよろしく!


ヨンジョンは二人を置いて、自分はさっさと家路に向かった。







ス:ねえ、ホントにいい感じだったの?
ヨ:うん。
ス:10CMも背の低い彼で?
ヨ:君みたいにミーハーじゃないよ。でも、最高の学歴と頭脳だよ。

ス:そうか・・・。そういう手ね・・・。
ヨ:でも、いい人だよ、ホントに。


二人は、マンションのダイニングテーブルで紅茶を飲んでいる。



ヨ:でも、よかったじゃない。これで、安心してアメリカへ旅立てるし。
ス:うん。


二人で見詰め合う。


ス:でも、ヨンジョンが行ってる間、寂しい・・・。
ヨ:何言ってるんだか。帰ってきたら、ずっと一緒じゃない。
ス:だってえ・・・。ヨンジョンと長く離れるのって、久しぶりだから・・・。



きっと寂しくて仕方がないだろう。
前のアメリカの時だって、とても寂しかった・・・。

今はこんなにずっと一緒にいるんだもの・・・めちゃくちゃ、寂しいに決まってる。




ヨ:ちゃんとお母様しててね。
ス:うん・・・。それはちゃんとするよ・・・。
ヨ:寂しくなったら、お母さんのところでも遊びに行ってなよ。

ス:うん・・・土日はそうする。でも、ヒョンスの学校のある時は駄目でしょ・・・。
ヨ:ヒョンスだって、我慢してるんだから、お母様も我慢だよ。
ス:そうだね・・・。


ヨ:これで、仕事と家が決まって、スワンの安定期に入れば、オレたちもボストンへ一直線だな。
ス:うん。

ヨ:そうだよ、ちゃんと勉強していかなくちゃ。専攻は比較文学?
ス:そう。英文学じゃ、学位は取れないもん。

ヨ:そうだな・・・それでも、文学部はたいへんだ。頑張ってね。
ス:うん・・・。

ヨ:なんか、お土産を買ってきてあげような。(スワンの顔を見る)
ス:お土産より、毎日、電話して。夜中でもいいから・・・。

ヨ:わかった・・・。寂しがりや・・・。
ス:自分だって、ホントはそうのくせに・・・。


ヨ:いい子にして待ってて。
ス:うん。







それから、しばらくして、ヨンジョンは、ボストンへ旅立った。

スワンは、苦しいくらい、恋しさが募ったが、ヒョンスも協力的にいい子にしていてくれたので、自分だけ、寂しいとか恋しいとは、口に出せなかった。


ヨンジョンが旅立ってから、3日ほどして、ヒョンスが学校から帰るなり、スワンを探した。



ヒ:お母様! お母様!
ス:なあに?


スワンが洗濯物を取り込んでいると、ヒョンスがやってきた。



ヒ:お母様。明日、参観日なんだって。
ス:え、そうなの?
ヒ:うん。僕が転校する前にお知らせのプリントが配られたんだって。
ス:そうか・・・。あ、ヒョンス、これ、ちょっと持って。


スワンが取り込んだ洗濯物の一部をヒョンスに渡す。


ス:どうする?
ヒ:・・・。

ス:私でもいいの?
ヒ:うん!(うれしそうにする)

ス:じゃあ、お母様が行っちゃおうか!
ヒ:うん。

ス:なんか、ドキドキする! デビュー戦だね。
ヒ:うん。

ス:キレイにしていくからね。
ヒ:うん。




ヒョンスが立ち上がって、ランドセルを子ども部屋に掛けにいく。
あっと、立ち止まって、思い出したように振り返った。


ヒ:あ、お母様。明日はね、体育の時間なんだ。
ス:そう。

ヒ:それでね、親子リレーだから、運動靴で来てね。
ス:え?
ヒ:そのジーンズに、運動靴でいいよ。
ス:・・・。



ヒョンスはうれしそうに、子ども部屋に荷物を置きに行った。



親子リレーって・・・。
走るんでしょ・・・。


・ ・・・。


大丈夫かな。

少しくらい、大丈夫よね・・・。


それとも、今、ヒョンスに話したほうがいいかしら・・・。


ヨンジョンがいないのに・・・。

どうする・・。

大丈夫。少しくらい走ったって、大丈夫よね・・・。





ヒョンスに打ち明けるべきか、悩んだが、結局、打ち明けることができず、ヒョンスが楽しみにしている参観日に出席することになった。


周りのお母さんたちに比べて、スワンは若くて、皆が振り返った。

皆、ヒョンスが母を亡くして、ここの学校へ転校してきたことを知っていたから。
同級生も、その親も、興味深々、スワンの顔を見た。

ヒョンスは、保護者の中で、スワンが光って見えて、とても幸せな気持ちになった。



いよいよ、親子リレーが始まり、中でも年の若いスワンが全速力で走らないわけにはいかなかった。

スワンは心の中で、「無事」を祈って、ヒョンスと手をつなぎ、走った。
途中、ハードルがあり、それを飛び越え、網をくぐって、ヒョンスとスワンは一等でタスキを渡した。


何事も起こらなかった。



スワンは内心ホッとして、今日の参観日を無事に終えたことを喜んだ。



帰り道、ヒョンスと一緒に、笑いながら、歩いていたスワンだったが、急に下っ腹が痛くなってきて立ち止まった。



ヒ:お母様、どうしたの。
ス:ヒョンス・・・。


スワンはそう言って、座り込んだ。



ヒ:どうしたの?
ス:ごめん、お腹が痛くて歩けないの。
ヒ:・・・大丈夫?


ス:・・・ごめん、駄目みたい。タクシー、拾って。ヒョンス、タクシー!
ヒ:タクシー? ぜんぜん歩けないの?


ス:うん・・・動けない・・・。


スワンが下を向いて座り込んでいる。


ヒョンスはどうしていいか、わからなかった。


ヒ:大通りに出たほうがいい?
ス:うん・・・そうして、早く探してきて。


ヒ:うん!



ヒョンスが走って大通りのほうへ走っていく。

時より後ろを振り向き、スワンを見る。

スワンはさっきより小さくうずくまっている。


ヒョンスの心臓は、全身で鼓動しているようだ。



早く、
早く、

タクシーを捕まえなくちゃ!









続く



2009/08/08 00:27
テーマ:【創】「アマン」第1部 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】「アマン」27





BGMはこちらで^^




BYJシアターです。

本日は「アマン―夏の恋人」27部です。



ではお楽しみください。





母さんは言った。

スワン、幸せって実は私たちのすぐ近くにあるものよ。

父さんと母さんはね、幼なじみでいつも一緒だったけど、
そこに愛があることに気づかないでずいぶん長い間、回り道しちゃった・・・。

でもね、よく見たら、すぐ目の前に幸せがあったのよ。

おかしいわね。


あなたは夢が大きいから、いつも遠くばかり見ているけれど、
たまには、近くも見たほうがいいわ。

遠くばかり見ていても探せないこともあるのよ。





ぺ・ヨンジュン
チョン・ドヨン主演
「アマン―夏の恋人」27





ス:ヨンジョン! ここ、すごいわ!


結婚式を終えて、新婚旅行に出たヨンジョンたちの車は、ソウルホテルのコテージ前に乗り付けた。
ヨンジョンとスワンは車の中からコテージを眺めた。


ヨ:降りよう。
ス:うん。


スワンは興味深そうに周りの景色を見渡す。
ヨンジョンが車のキーをかけ、コテージの鍵を開けた。



ス:なんか静かで・・・ソウル市内じゃないみたいね。
ヨ:そうだね。入ろう。
ス:うん。ヨンジョン・・・抱っこ!(うれしそうにヨンジョンを見る)

ヨ:なんだよ。・・・ああ、花嫁さんの抱っこね。
ス:うん。


ヨンジョンが、スワンをどっこいしょと抱いて、コテージの中へ入る。



ヨ:ああ、重かった。(笑って腕を振る)
ス:ふん。(笑う)そんなことを言われても平気よ。


そう言って、中へ入っていく。
リビングのドアを開けると、ダイニングテーブルがあり、大きな花かごとフルーツが置いてある。


スワンはうれしそうに花に挿してあるカードを取って、読み上げた。


「ご結婚おめでとうございます。
お二人のお幸せをお祈り申し上げます。

ソウルホテル一同」



スワンはにこっとして、隣でカードを覗き込んでいるヨンジョンを見上げた。
彼はちょっと笑って、スワンを見つめた。



ス:この「ハネムーンプラン」ていうの、当たりだね。ねえ、お部屋を探索してみよう。


スワンがヨンジョンの手を引っ張った。


ヨ:スワン・・・。(笑う)



二人は手をつないで、部屋の中を見て回る。


ス:あ、ここが寝室。大きいベッドだね。久しぶりに広々と寝られるね。
ヨ:うん・・・。
ス:ねえ、「今夜は寝かさない!」なんて言って。(笑ってヨンジョンを見る)
ヨ:そりゃあ、寝るだろ? 身重なんだから。


そう言って、スワンの手を引っ張りながら、ヨンジョンがあっさりと出ていく。


ス:何よ。その言い方! ヨンジョンてば!




洗面所を見て、風呂場を見る。

横に長く寝ながら入れるようなバスタブだ。


ス:ねえ、久しぶりに一緒に入ろう。
ヨ:そうだね。


そう言って、ヨンジョンは立ち止まらず、またどんどん手を引っ張って出ていく。


ス:ヨンジョン! 前みたいに洗って。
ヨ:ああ。



ス:もう、そっけないんだから。


スワンはまたヨンジョンに引っ張られてバスルームを出た。

リビングに戻り、大きなガラス戸を開けて、ベランダに出る。



ス:ねえ、ジャグジーもあるよ。


木材でできた広いベランダの一角に、蓋のかかった大きなジャグジーがあった。


二人は屈んで、蛇腹になっている蓋を少し開けて、中のお湯に手を入れる。


ヨ:温かいな。いつでも入れるようになってるんだ。
ス:うん。こういうの見ると、ヒョンスも連れてきてあげたかったね。
ヨ:そうだな・・・。いつか、家にジャグジーを作ろう。
ス:うん。今日はここで、入ってみようよ。


ヨ:いいよ、暗くなったらね。
ス:うん。




二人は立ち上がって、ベランダの向こうを見る。
ソウルの街が一望できそうだ。



ス:すごく眺めがいいねえ・・・。まるで展望台みたい。ソウルの街が見渡せるんだ。(眺める)
ヨ:ホントだね・・・。

ス:夜景なんてキレイでしょうねえ。
ヨ:うん・・・。





広いベランダから、眼下に見えるソウルの街を見渡す。

少し風が吹いて、スワンの髪が顔にかかった。


二人は手をつないでいるので、利き手の利くヨンジョンがスワンの髪を直そうと、髪を撫でつけるつもりが・・・不覚にも手が震えた。

スワンはちょっと驚いて、ヨンジョンの顔を見上げた。

ヨンジョンは何時になく、まじめな顔をして、スワンを見つめている。
スワンは、そんな彼の腰に両手を回してぎゅっと抱きしめ、顔を見上げた。

ヨンジョンがじっとスワンの顔を見つめている。
ヨンジョンの心臓がドキンッドキンッと熱く鼓動するのが聞こえてきそうだ。

ヨンジョンが自分を愛してくれていることを肌で感じて、スワンはもっと抱きついた腕をきつく絞めて、彼の瞳の奥を見つめる。


ヨンジョンがそっと呟いた。


ヨ:スワン・・・愛してるよ・・・。今まで以上に君を・・・。
ス:・・・。


スワンは涙がこみ上げてきて、眉間にしわを寄せた。

ヨンジョンがそんなスワンにやさしくキスをした。










二人が本館で夕食を済ませ、また車でコテージへ戻ってきたのは、午後8時過ぎだった。

今、お酒が飲めないスワンに合わせ、夕食ではヨンジョンも酒を飲まなかった。





スワンとのお約束通り、二人は少し、中の風呂で温まってから、バスローブをひっかけ、ベランダにあるジャグジーへ向かった。




夜の闇の中で、ジャグジーの中の青いライトだけが明るく輝いている。

バスローブを脱ぎ捨てて、二人はジャグジーに飛び込む。


スワンは、うれしそうにクスッと笑った。


ヨ:楽しい?
ス:うん。二人でこんなところに入るなんて、なんかわくわくしちゃう。(笑う)



青い光を放つジャグジーの中は、横から下から泡が吹き出していて、静かな外の闇とは対照的だ。


ヨ:なんか不思議な空間だね。
ス:異次元みたいね。


ス:(湯船から胸まで出して)でも、ソウルの街の明かりはキレイに見える・・・。
ヨ:ホントだ。
ス:ちゃんとソウルにはいるのね・・・。


二人はソウルの街の灯を見る。



ス:ヨンジョン!


スワンがポンとヨンジョンの膝に、ヨンジョンと向かい合うように座った。



ヨ:もっと広々と使ったら。(笑う)
ス:ここがいい・・・あなたの膝の上が・・・。ふん。(うれしそうに笑う)


ヨ:二人だけの世界だね・・・。(スワンの髪を撫でる)
ス:うん・・・異次元でもいいよ。ヨンジョンと二人なら・・・ここが宇宙ステーションでも・・・。

ヨ:・・・。(スワンの肩から胸を触る)
ス:素敵な夜だね。(じっと見つめる)
ヨ:・・・。(スワンの腰を抱く)
ス:二人っきりで・・・。(ヨンジョンの首に腕を回す)



ヨンジョンがギュッとスワンを抱きしめた。




暗い夜の闇に浮かぶ青いジャグジー・・・。


二人の思いのように、泡は終わることなく、吹き出している。









翌朝は、朝食をルームサービスで頼み、コテージの部屋で取った。


ヨ:昨日も今朝も具合がいいね。
ス:うん。吐き気がなくなっちゃったの。それに、食欲満々!


スープをおいしそうに飲んでいる。


ヨ:昨日、思ったけど、少しお腹が前に出てきたよね。
ス:ヨンジョンもそう感じた? (トーストをちぎりながら言う)昨日、ウエディングドレスを脱いだ時、そう思ったんだ。着る前より、お腹が大きいって。

ヨ:そんなバカな。(笑う)
ス:でも、そうなの。だって、私だけじゃなくてヨンジョンにもわかるんだもん。やっぱり、大きくなったのよ。

ヨ:まあ、元々がぺっちゃんこのお腹だからね。人から見たら変わりない感じだけど。・・・おもしろいね。
ス:この子にもわかったのかしら? もう大きくなっていいって。
ヨ:すごいな・・・。
ス:あなた、頭がいいわ。(お腹を撫でる)


ヨンジョンがスワンを見つめる。


ス:なあに?
ヨ:急にスワンがお母さんに見えてきたよ。
ス:そう?(笑う)でも、まだまだ、恋人気分でいたいわ。まだ、新婚なんだから。
ヨ:そうだね。(笑う)




二人だけのゆったりとした朝の時間を過ごして、午前10時、二人はチェックアウトした。









今日は、文部省にある大学審議会に出かける。
ヒョンスを学校に送り出し、二人は仕度をして午前10時の呼び出しに合わせ、家を出た。

ジョンアとは、大学審議会のある建物の前で待ち合わせをしたが、なかなかやって来ない。


時間は、9時45分を過ぎて、二人は顔を見合わせた。

スワンの携帯が鳴った。





ス:もしもし。先輩、どうしたの? え、事故渋滞? そう・・・。とにかく、こっちへは向かってるのね。わかったわ・・・。私たちはもう、建物に入らないと・・・遅刻はできないから・・・。うん・・・じゃあ・・・。
ヨ:どうしたの?

ス:タクシーに乗ったら、事故渋滞に遭っちゃったんだって・・・。どうする?
ヨ:・・・仕方ないね・・・先に入るか・・・。
ス:うん・・・。



ジョンアが間に合わなければ、ヨンジョンの不当な人事異動も、スワンの留学の急な取り消しの理由も、大学側のうそがまかり通ってしまう・・・。


スワンは少しがっかりしたが、でも、実は先日の結婚式を経て、スワンのヨンジョンへの考えも少し変化した。


二人の式に、呼びもしなかったヨンジョンの友人たちまでもが押しかけて、皆がヨンジョンの結婚を本当に心から祝ってくれた。

そんな姿を目の当たりにすると、彼が、前の結婚で、どれだけのものを犠牲にして頑張ったかということを、彼の周りの人間はちゃんと理解していたし、彼を信じて、決して彼が一部で語られているような男ではないことを皆が知っている。
もちろん、そんなことは、スワンが一番よくわかっているのだが・・・。

そんな理解者がたくさんいることにスワンは喜びを感じたし、もうこの大学での醜聞に囚われるのはやめにしようと考え始めていた。





審議会の調査官室前の長いすでスワンとヨンジョンが待っていると、部屋のドアが開き、中から調査官が顔を出した。



調:チェ先生と、キム・スワン先生?
ヨ・ス:はい。
調:どうぞ。

ヨ:はい・・・。



二人は中へ入った。




調査官のデスクの横にもう一人の調査官も座っていて、ヨンジョンとスワンは並べられたイスに座った。



調:本日はご足労いただきました。お二人の結婚を機に大学側のお二人に対しての不当な扱いがあったという連絡があり、大学側とお二人に事情を伺いたいと思いまして、こちらにお呼びしました・・・。もう、大学はお辞めになったんですね?
ヨ:はい。

調:まずはチェ先生、あなたのどんなことが原因で、人気のあった講座が打ち切りになり、あなたが研究所へ配置換えになったとお考えですか?
ヨ:このキム・スワンと結婚したことです。

調:う~ん。大学側はあなたが海外研修を拒んだと言っていますが。
ヨ:いったい、どこへ研修に行けと言ったことになっているのでしょうか。少なくても、私はアメリカで学位を取っているくらいですから、もしそういうことがあれば進んでいきたいと考えています。チャンスですからね。でも、そうした話は一つもありませんでした。

調:うん。(頷く)奥様のキム先生は、どういうことで留学が取り消しになったとお考えですか?
ス:このチェ・ヨンジョンと結婚したことです。

調:なぜでしょう?
ス:・・・。ある方から、結婚したのだから、妻として母としての役割を大切にしなさいと言われました。でも、その選択は、私のすることであり、指示されるべきではないと考えています・・・。あのスカラシップでは、過去に既婚の男性が何人も留学していますから。女性だけ、既婚者はだめというのはおかしいと思います。
調:うん・・・。大学側は、あなたが夫と行動をともにしたと言っていますが・・・もし、チェ先生が海外研修に出られた場合、どうするつもりだったのでしょうか?
ス:そんな話はもともとなかったんです・・・。もし、主人がどこか・・・遠くに研修に出かけても・・・私は・・・。私は、夫と子どもを置いて、アメリカへ留学するつもりでしたから、彼が韓国にいるか、あるいはどこか海外にいるかの違いで、私の留学には変更はなかったはずです。


調:チェ先生は奥様が一人で留学されても平気なんですか?
ヨ:・・・調査官。あなたは今、妻を差別されましたよ。彼女は女ですが、この場合、男女で差別してかかってはいけません。
調:・・・そうでした・・・失礼。


もう一人の調査官が質問者の顔を睨んだ。



ヨ:調査官。私たちは、もう大学を離れ、また新たな人生を歩みだそうと考えています。妻はこのスカラシップの取り消し後、別のルートで大学の韓国語の講師をしながら留学するチャンスを掴みました。私も新たに建築家としてやっていきます。ですから、もうこの件に関しては、私たちから言うことはありません。


調:そうですか。まあ、そうでしょうね。お二人は早く新しい人生を行きたいでしょう。ところが、今、こうしたセクハラやパワハラまがいの不当な左遷がまかり通っているんです。それを調査し、大学に勧告することが私たちの仕事なんです。
チェ:・・・。





その時、ドアがノックされ、職員が入ってきて、調査官の耳元で、囁いた。
調査官が顔を上げて、職員を見て頷いた。



調:チェ先生、ジョンア先生という方がお見えです。あなたがたについて、お話したいということですので、お通ししてもいいですか?
ヨ:・・・ええ・・・。



職員が去って、ジョンアが入ってきた。



調:いらっしゃい。どうぞ、そこにお座りください。


ジョンアは走ってきたのか、少し汗ばんで、いつもより顔が赤かった。


調:どういったことですか?
ジ:・・・・。今回のチェ先生夫妻の人事異動、及び・・・留学取り消しは・・・私のせいです。
調:え?
ジ:私が・・・お二人に嫉妬して、理事長に、二人に不当な処分をするように言ったのです。


ヨンジョンとスワンがじっと聞いている。



調:どういうことですか?
ジ:つまり・・・私は・・・・チェ先生に憧れていて・・・それで、結婚が許せなくて・・・理事長に電話してしまったんです。
調:・・・それで?
ジ:・・・それで、二人は・・・大学を辞めることになりました。



調:よくわかりませんね・・・。どうして、結婚ぐらいで左遷できるのでしょうか?


ジ:私が・・・。


ジョンアの目が潤んだ。



ジ:私がチェ先生について・・・うそを言ったからです・・・。彼は・・・すぐ女に手を出す危険人物だって・・・。
調:・・・。
ジ:スワン先生は、私の高校の後輩で・・・親しかった分、私には甘えも嫉妬もあったんです・・・。お二人の研究室が隣だったことで邪推したんです・・・でも、よく聞けば二人は大学へ来る前からの知り合いでした・・・。

調:それは、まさにチェ先生へのセクハラと言えますが、そのくらいのことで、理事長が動くでしょうか?
ジ:・・・・。


調:・・・。
ジ:・・・動きます・・・。
調:なぜ・・・?
ジ:・・・私に・・・興味を持っていたから・・・。それを使ったんです・・・。

調:・・・・。
ジ:・・・・。


調:それが本当のことですか?
ジ:ええ・・・。
調:・・・。
ジ:・・・。


調:わかりました。・・・実は、ジョンア先生がおっしゃったことが告発文として上がってきていました・・・。それが真相ですね?
ジ:ええ。

調:なぜ、大学はあなたのことを隠蔽したのでしょうか?
ジ:・・・理事長の行動を隠すためです・・・。
調:・・・あなたは、こんな発言をして大丈夫なんですか?

ジ:私は、うそつきの加担者でいたくなかったんです。こんなバカな事件を引き起こした自分をはっきりと自分で罰したかったんです。
調:今後、どうされるつもりですか?
ジ:今の大学では、私が研究所送りになって隠されてしまいました・・・。姥捨て山へ送られてしまったんです・・・。だから・・・私も大学を辞めるつもりです・・・。
調:・・・。



ヨ:調査官。この話は内密にお願いします。
調:・・・。
ヨ:もう私たち夫婦はいいんです・・・。でも、ジョンア先生は、とても仕事熱心で優秀な方です・・・。確かに、私たちが受けた大学側のやり方には怒ったし、ジョンア先生も恨みました。でも、今、私たちは幸せな結婚をして別の世界で生きていく決心をしています。ジョンア先生に、つまらない理事長とのスキャンダルで不幸になっていただきたくないんです。ですから・・・この調査が終わっても、このことは、公表してほしくないんです・・・。私たちは、ジョンア先生がこちらに来てくれたことに感謝しています。彼女の未来を踏みにじる結果にならないように、配慮のある決断をしてください。


調:ジョンア先生の部分を隠せと?
ヨ:そうです。
調:・・・・。(考える)
ヨ:私たちは、大学やジョンア先生を訴えることもできます・・・でも、それは辞めます・・・。その代わり、マスコミには名前を明かさないでいただきたいんです。


調:・・・わかりました・・・。決心していらしたんだ。ジョンア先生の名前が出ないように努めます。


ヨ:調査官。それは絶対にお願いします。もしもの時は・・・私がジョンア先生に弁護士をつけます。
調:チェ先生!

ヨ:いいですね?
調:わかりました・・・。今日はご足労いただきました。(立ち上がる)ジョンア先生は少し残って、もう少し詳しくお話を伺ってもいいでしょうか?


スワンが心配した顔でジョンアを見つめた。


ジ:はい。理事長との会話をちゃんと話します。(スワンを見て)大丈夫よ。逆に心配させてごめんね・・・。
ス:先輩・・・。


調:では、お二人はお帰りください。
ス:でも・・・。
ジ:・・・またね・・・。(スワンを見る)





ジョンアを一人置いて、二人は退室した。





スワンは不安そうに、眉間にしわを寄せている。


建物の外に出て、ヨンジョンがスワンの肩を抱いた。



ヨ:大丈夫だよ。ジョンアさんは強い人だから・・・。
ス:でも、かわいそう・・・。(泣きそうになる)
ヨ:いい考えがあるんだ。大学時代の友人の弁護士・・・。彼なら、彼女を守ってくれると思うんだ。
ス:すごい人?(泣きそうになりながらヨンジョンを見る)

ヨ:そうだな・・・。さっき、閃いたんだ・・・。あいつなら・・・。きっと愛の力で守ってくれるさ。
ス:愛? (何?)

ヨ:きっと、お似合いだと思ったやつが頭に浮かんだんだ。
ス:こんな時に!


ヨ:こんな時だからこそ、仕事じゃなくて、愛の力が必要なんだよ。絶対に守ってやるっていう思いが。
ス:・・・。
ヨ:スワンみたいに・・・守ってくれる人が。(見つめる)


泣きそうだったスワンの顔が、ヨンジョンの一言で、ちょっと笑顔になった。

ヨンジョンがやさしくスワンの肩を抱き、二人は紅葉の美しいソウルの街を歩き出した。










続く




2009/08/07 00:05
テーマ:【創】「アマン」第1部 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】「アマン」26





BGMはこちらで^^




BYJシアターです。


本日は「アマン―夏の恋人」26部です。


さて、おさらい^^

ヨンジョンは長い髪にサングラスの彼。
普段はメガネなしです^^

ではどうぞ!


ではお楽しみください。






母さんは言った。

スワン、幸せって実は私たちのすぐ近くにあるものよ。

父さんと母さんはね、幼なじみでいつも一緒だったけど、
そこに愛があることに気づかないでずいぶん長い間、回り道しちゃった・・・。

でもね、よく見たら、すぐ目の前に幸せがあったのよ。

おかしいわね。


あなたは夢が大きいから、いつも遠くばかり見ているけれど、
たまには、近くも見たほうがいいわ。

遠くばかり見ていても探せないこともあるのよ。






ぺ・ヨンジュン
チョン・ドヨン主演
「アマン―夏の恋人」26







ス:う~ん、う~ん・・・。
ヨ:(顔を起こして)気持ちが悪いの?
ス:うううん・・・感じてるの・・・。
ヨ:(笑う)・・・。


スワンの胸の下の辺りに顔を埋めていたヨンジョンが、ドンとスワンの顔のほうへせり上がった。
そして、上からスワンの顔を見下ろす。


ス:なあに?
ヨ:(微笑む)・・・。
ス:う~ん・・・なあに?
ヨ:・・・具合が悪くなったと思ったよ。
ス:違うわよ・・・。(微笑む)

ヨ:・・・ホントに気持ち悪くなるといけないから・・・寝ようか。
ス:なんで? (つまんない)
ヨ:明後日、式じゃない。体調を整えないとね。
ス:・・・もう、気が変わるんだから。
ヨ:やっぱり粗相があったらマズイなと思って。(笑って)今日はゆったりと寝よう。
ス:ヨンジョンと一緒なら、いつもいい気分なんだからいいのに・・・。

ヨ:寝るよ。(スワンの唇に軽く、チュッとする)
ス:わかった。


ヨンジョンが横に寝転ぶ。


ヨ:ところで、パク先生。一緒にバージンロード、歩いてくれるんだって?
ス:うん、そうなの。思い切って頼んでよかった。(笑う)バージンロード・・・じゃないけど、いいよね?

ヨ:・・・。(笑う)急でも結構来てくれるもんだね・・・。ありがたいよ。
ス:大学時代のお友達も来るんでしょ?
ヨ:うん。スワンもだろ?
ス:うん・・・。よかったね・・・母さんが提案してくれて・・・。昨日、ウエディングドレス着てみたじゃない、結構素敵だった・・・。
ヨ:そう?
ス:きっと、ヨンジョンが見たら、泣くと思う。(笑う)
ヨ:なんで?
ス:そのくらい、素敵だっていうことよ。とってもいい女に見えるの。
ヨ:へえ・・・。楽しみにしておく。
ス:ヨンジョンはどうだった?
ヨ:まあまあかな。

ス:そうお?
ヨ:うん。男はそんなもんなんじゃないの?
ス:そう・・・。まあいいわ。
ヨ:花嫁がキレイならそれが一番だよ。
ス:うん。あ、もう一回、美容液、塗って寝よう。少しでもキレイにしなくちゃ。ヨンジョンも塗ってあげる。
ヨ:いらないよ。
ス:駄目駄目。私の友達も来るんだから。つるつるになってなきゃ。



スワンが近くの鏡台から、美容液を持ってきて、手に取る。そして、自分の顔ではなくて、ヨンジョンの顔に塗る。


ヨ:いいよ、やめろよ。
ス:駄目よ、新郎なんだから。(やさしく塗る)OK! キレイになったわよ。(そういって自分の顔にもつける)これで、出来上がり。ふ~。寝る?


スワンがヨンジョンの腕枕にそっと頭を乗せて、顔を見て、ヨンジョンの頬をつんつんと突いて笑った。








いよいよ、結婚式の朝。

今朝の天気予報は、とても微妙だ。

晴れのち曇り、ところによって、にわか雨・・・。


昨夜から、実家に泊まっていたスワンたちだが、早い朝食を食べ終わって、テレビの天気予報を見ている。


ス:この「ところによって」っていうのが困るわよね。はっきりしなさいって言いたいわ。
ヨ:スワン。心がけがよければ晴れるよ。
ス:そんなものかしら。(笑って)ヨンジョンのほうが理科系なのに、なんか言うことがロマンチック。(顔を覗いて、クスッと笑う)



母:スワン、早く準備しなさいよ。あなたが一番お仕度に時間がかかるんだから。
ス:男の人はいいわね、簡単で。
ヨ:せいぜいキレイにしてもらっておいで。(笑う)
ス:大丈夫。土台がいいから。ヒョンスだって、そう思うでしょう。
ヒ:(肩をすくめる)・・・。
ス:二人とも信じてないわね・・・見てらっしゃい。(笑って睨む)


母:スワン、あなたはもう少ししたら、教会へ行きますよ。
ス:わかってるわよ。姉さんも早めに来るんでしょ?
母:ええ。今回は、あの子がいろいろ準備を手伝ってくれてるから、助かるわ。
ス:ヨンジョン。あの家の主よ。あとで紹介するわ。(微笑む)
ヨ:ふ~ん。(頷いて笑う)

母:ヨンジョンさんとヒョンス君は1時間後に来ればいいですからね。家のカギをお願いね。
ヨ:わかりました。お世話になります。
母:ヒョンス君は、今晩はおばあちゃまとお留守番しようね。パパとママは新婚旅行だから。
ヒ:うん。どこへ行くの?

ス:ソウルホテルのコテージに一泊。ちょっと離れになっていて、素敵なんですって。私の姉さんがね、予約してくれたの。姉さんてそういうの、調べるの、好きよね。(母に言う)
母:ホント。実は自分が泊まってみたかったみたいよ。なんでも、ドラマの中で主人公が泊まってたところなんですって。
ス:ふ~ん。ヨンジョン、わかる?
ヨ:さあ。(首を傾げる)

母:まあ、お楽しみにして・・・。スワン、私たちはもう出ましょう。
ス:うん・・・。あ、もう一度歯を磨かせて。(洗面所へ行く)
母:・・・何度磨くの・・・。(呆れる)
ス:(奥から)母さん!待っててね! すぐ磨くから!
母:はい、はい。(笑う)







スワンと母親は、準備のため、先に教会の控え室に行った。
今日は、姉の友人のメイキャップアーティストが、スワンをキレイに仕上げてくれる。


友:髪もこんな感じでいいかしら?(スワンに合わせ鏡で確認させる)
ス:ええ。なんか、自分じゃないみたい・・・。(鏡の中を覗く)

友:すごくキレイよ。新郎の方が驚くわね。
ス:(うれしそうに笑う)だといいけど。



全てが整ったところに姉がブーケを持ってやってきた。



姉:スワン!(驚く) すごい。あなた、素敵よ。スンヨン、ありがとう。さすが、プロだわ。
ス:姉さん! 素材もいいのよ。
姉:うん、まあね。うちの家系は美人揃いだから。(笑う)


年の離れた姉はもうすっかり落ち着いたマダムの雰囲気で、姉というより母親のような目をして、スワンの晴れ姿を見つめている。




スワンのウエディングドレスは、このメイキャップアーティストが出入りしているスタジオで借りたもので、上質な白の厚手のタフタでできており、胸のくりは胸の曲線に沿って大きくV字型に開いていて、胸から肩にかけては、ふんだんに刺繍が施されいる。
肩のデザインは少しパフスリーブで、袖は長く、手の甲の部分を隠すように中指の付け根まで伸びている。手の甲を覆った部分は中指に向かって尖ったようなデザインで、そこにも白い糸の刺繍が丁寧になされている。
胸のすぐ下でスカート部分へと切り替えになっている。


そのデザインは、母が身重のスワンのウェストを締めないように薦めたものだ。

そして、11月の空の下、ガーデンでの披露宴にも冷えないように、厚手のタフタの生地を、下穿きがはけるように、カイロをつけられるようにと、下半身のゆったりとしたデザインを選んだものだった。

そのドレスの雰囲気に合わせ、スワンの髪は前髪を垂らさず、全ての髪を後ろに流している。
後ろで束ねた髪は幾重にも編みこまれ、比較的下の方でまとめて、重厚感さえ感じられる。
その髪の上にティアラが乗って、そこに長いチュールがかけられた。

その姿は中世な姫のようであり、それでいて、現代的なスワンの表情が、モダンさをも、かもし出していた。


姉は用意してきた白い花のブーケを手渡した。


姉:スワン、幸せになるのよ。
ス:・・・姉さん・・・ありがとう・・・。(受け取る)
姉:じゃあ、新郎の胸にお花をつけてくるわね。もうお仕度が整ったかしら。
ス:よろしくね。
姉:スワンの彼氏って会うのが楽しみだわ。どんな人かしら。ちょっと行ってくるわね。




姉はうきうきと出ていった。


それから、妹が来て、友人が来て、入れ替わり立ち代り、皆が祝いにかけつけた。

たぶん、ヨンジョンもこうして、式の前の時間を過ごしているのだろう。






ヨンジョンの控え室には、ヨンジョンの母と祖父が訪れていた。
その部屋の隅に、ヒョンスが行儀よく腰かけ、父と二人の様子を見守っている。



母親は、部屋に入った瞬間から、胸がいっぱいになった。
そこには、本当に逞しく凛々しくなった大人の息子がいて、その佇まいがとても穏やかで理知的だったから・・・。


こんな息子の晴れの姿を夫が見たら、どんなに喜ぶだろう・・・。
かわいがっていた息子は紆余曲折はあったものの、こんなに立派な男になったことをもう一度再確認してほしい・・・。





爺:ヨンジョン。おまえも立派になったなあ。見れば、一目でわかるぞ。おまえがちゃんと生きてきたことが。
ヨ:お祖父ちゃん・・・。(微笑む)今日は、お二人でありがとうございます。スワンのお母さんがいろいろお骨折り下さって、今日の式が実現したんです。
母:後で、お母様にはキチンとご挨拶をさせていただきますね。ヒョンス君も、ちゃんとキレイにドレスアップして下さって。


ヒョンスは、子供らしいスーツに、蝶ネクタイをしていた。



今日のヨンジョンは、黒のモーニング姿で、白ワイシャツの立ち襟に白の蝶ネクタイをつけ、先ほど、スワンの姉が持ってきてくれた白い花を胸の高い部分につけていた。
長めの髪は、全て後ろできっちりと縛っている。


母:あちら様は、お父様はいらっしゃらないのね?
ヨ:スワンが大学院の頃に亡くなられたんだよ。それで、今日は文学部時代の教授がバージンロードを一緒に歩いてくれるんだ。
母:まあそうなの・・・。


そういって、母の話は途切れた。
頭の中は夫のことが気がかりで、ヨンジョンとの会話もなぜか途切れがちだ。

そんな様子が外からも見てとれるから、ヨンジョンも祖父もつい、無口になる。


ヨンジョンと母が見詰め合っていると、教会の係りの人がノックして、顔を出した。


係:お式の時間でございます。








いよいよ、式が始まり、ヨンジョンは、祭壇の前に立った。

ここはプロテスタントで、祭壇にはキリストの像はないものの、そこには美しいステンドグラスがあった。
古いこの教会は、床が大理石でできており、その石でできた重厚感と、飴色に輝く壁の木材の温かみが、参列者の気持ちを引き締めると同時に温かくした。




スワンは教会のドアの外で、最後の点検を受け、顔にチュールをかけた。
そして、隣に立ったパク教授の腕に腕を通した。


ヨンジュンは後ろを振り向き、扉が開くのを待つ。




後ろの扉が開き、パク教授に腕を取られ、スワンが入ってきた。

スワンが一歩踏み出すと、祭壇の左手に並んでいた聖歌隊のソプラノが、賛美歌を歌い出した。
母の所属しているコーラスサークルがアカペラで賛美歌を歌っているのだ。

ソプラノのやさしい歌声に乗って、スワンが一歩一歩、ヨンジョンのもとへ近づく。



普段、あんなに近くで見つめ合っている二人なのに、緊張して、お互いを見つめる。


ヨンジョンの立ち姿があまりに素敵なので、スワンは胸がキュンとした。


いつものスワンと違って、少しクラシカルで、人形のようにかしこまったスワンを見て、ヨンジョンは胸がときめいた。



スワンが一歩ずつ一歩ずつ近づき、ヨンジョンのもとへやってきた。

二人は牧師の前に並んだ。

お互いの温もりや思いがこぼれ落ちるように、隣に立っていて感じられる。

牧師の言葉を聴きながら、出会いから今まで月日にしては短かったが、二人で乗り越えたこと、愛を語ったことを思い出した。




誓詞を二人で読んだ。


ヨ:私、チェ・ヨンジョンは、キム・スワンを一生の伴侶として、これを愛し、これを信じ敬い、病める時も悲しみの時も、二人で乗り越えていくことを誓います。
ス:私、キム・スワンは、チェ・ヨンジョンを一生の伴侶として、これを愛し、これを信じ敬い、どんな時も助け合って生きることを誓います。


スワンの指に結婚指輪がはめられ、ヨンジョンの指に結婚指輪がはめられた。


二人は向かい合って、ヨンジョンがスワンのベールを上げ、二人は見つめ合った。
ヨンジョンの顔が近づいて、スワンに軽くキスをした・・・。



そして、二人は晴れて夫婦となった。



アカペラの美しい賛美歌が流れ、起立した参列者の間を、ヨンジョンとスワンが腕を組み歩いて退場していくと、一番後ろの席に、ヨンジョンの父が立っていた。

二人は立ち止まって、父を見た。

ヨンジョンと父親はしばし見つめ合って、父がヨンジョンに手を差し伸べ、二人は握手をした・・・。
父は、ヨンジョンを微笑んで見つめた。




二人の挙式は終わった。
退場した後、ヨンジョンは走って、父のもとへ行ったが、もうその姿はなかった・・・。

一言、話したかった。
父にお礼を言いたかった・・・でも、もうそこには父はいなかった。





式が終わって、30分ほどしてから、教会の中庭で、ケータリングのガーデンパーティが行われた。


二人は乾杯のあと、皆の間を回り、笑顔で挨拶をしていく。

大学時代の友人がいて、姉妹がいて、見つめる母や祖父がいる。

パク教授がいて、ミンシャがいて、満面の笑みのソンジュンがいた。
そして、その横にジョンアが立っていた。



ジ:チェ先生、スワン、おめでとうございます。

二人は頭を下げた。


ジ:ホントは、ここへは申し訳なくて、来られた義理じゃないんだけど・・・でも、二人には、ちゃんと会って謝って・・・お祝いを言いたかったの・・・。
ス:先輩・・・。
ジ:私、本当にひどいことをしたわ・・・。
ヨ:・・・。

ジ:それで・・・大学審議会には、私も一緒に行きます。そして・・・愚かだった自分の行為を話します。

ス:・・・大丈夫なの? 大学を首にならない? そんなことをして・・・。
ジ:もう、ほとんど首と同じよ・・・。だから、ちゃんと自分のしたことに決着をつけたいの。

ス:・・・ヨンジョン・・・。
ヨ:ジョンア先生・・・。僕は、あなたをひどい人だと思ったけど、でも、スワンの留学もパク先生のおかげで決まったし・・・もういいですよ・・・。
ス:ヨンジョン・・・。

ジ:そうはいかないわ。それでは、スワンにも申し訳ないの。私、自分自身も出直したいの。私も隠蔽されて、未来のないような生活をしたくないのよ。


ス:本当にいいの?
ジ:ええ。卑怯な自分を引きずって生きたくないの。
ヨ:・・・ありがとうございます。僕たちは、3日後に呼び出されています。先生もご一緒してくれるんですね?
ジ:ええ。


ジョンアは、ヨンジョンをまっすぐ見つめて答えた。

ジョンアは決心していた。自分がマスコミの餌食になってしまうことも。
でも、それ以上に、卑怯な自分で終わることは、彼女のプライドが許さなかった。

ジョンアには自分は優秀であるはずだという自負がある。
そして、大学最後の日にスワンが励ましてくれたように、自分で蒔いた種は自分で刈るという強い決心も、それができるだけの自分であるはずだという自信も戻ってきた。





スワンとヨンジョンは自分たちの席に戻ると、不安そうにスワンはヨンジョンを見た。


ス:先輩、大丈夫かしら・・・。ヨンジョンの汚名返上はしたいけど、先輩は女だもん・・・。どんなに頑張っても、危険は危険だわ・・・。
ヨ:弁護士の友達に聞いてみるよ。彼女をマスコミの餌食にするわけにはいかないからね。(手を握る)
ス:・・・うん・・・。





司会のヨンジョンの友人がマイクを取って言った。


司:さて、幸運にも、中世の姫を、花嫁に手に入れたヨンジョン、おめでとう。ではここで、ヨンジョン君とスワンさんには皆に熱々のところを見せてもらいましょう。では、お二人に踊ってもらいましょう。


ス:ええ、やだ・・・。踊れないのに・・・。
ヨ:・・・。
ス:ヨンジョン、断って。踊れないもの・・・。


ヨンジョンがスワンを見ていたずらっぽく微笑んだ。


ヨ:オレが幸せになったことを皆に見せてやろう。おいで、スワン。(スワンの手を握る)
ス:だって・・・ヨンジョン。
ヨ:夫唱婦随だろ? おいで。




ヨンジョンがスワンの手を引っ張って、皆の前へ出た。



周りがざわめいて、音楽が流れた。


ヨンジョンがスワンの手を取って、リードし、二人は踊った。
スワンの目には、今、目の前にいるヨンジョンしか見えなくて、ヨンジョンにリードされるまま、体を動かした。


皆のため息の中、二人は幸せそうに揺れた。





ジョンアは、心にしこっていたものが解けていくのを感じた。


あの人を好きだった・・・。
でも、結局、私は本物のあの人を知らない・・・どんな人が好きで、何が好きかもよくわからなかった。
でも、好きだったってこと、覚えていてもいいわね・・・確かに、あなたは素敵な人だから・・・。

ジョンアの心に、明るい日差しが入ってきた。





スワンがヨンジョンの顔を見上げていると、ぽつんと・・・目に入った・・・。


雨だ。


予想通り、ところによってにわか雨・・・。

「心がけがよければ降らないはずの雨」が、スワンの目に入った。


ス:雨!
ヨ:行こう!(スワンの肩を抱く)



皆は、教会の奥の間と、テントの中に逃げ込む。


楽しかった披露宴は、最後、「心がけがよければ降らないはずの雨」で終わった・・・。






テントの中へ逃げ込んで、スワンがヨンジョンの黒のモーニングの上に乗っている雨粒を手で弾き落とす。

そんなスワンの仕草をヨンジョンは見つめて、そして、スワンの顔を眺めた。



髪にも顔にも肩にも、雨がかかり、その雨粒が昼の光にきらきらと輝いている。


スワンの大きな瞳が、ヨンジョンを見つめて、笑顔になった。


スワンの瞳が輝いて・・・スワンが美しく輝いて・・・思わず、ヨンジョンの目から涙がこぼれ落ちた。



幸せな瞬間・・・。



二人の他には誰もいなくて、昼のにわか雨に輝きを放つ二人だけがここにいる。



スワンも、涙するヨンジョンを見つめた。


二人には、「心がけがよければ降らないはずの」昼の雨に、照らし出された、永遠の愛の姿が、そこにあるように思われた。









続く



2009/08/06 01:36
テーマ:【創】「アマン」第1部 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】「アマン」26




BYJシアターです。


本日は「アマン―夏の恋人」26部です。


さて、おさらい^^

ヨンジョンは長い髪にサングラスの彼。
普段はメガネなしです^^

ではどうぞ!


ではお楽しみください。






母さんは言った。

スワン、幸せって実は私たちのすぐ近くにあるものよ。

父さんと母さんはね、幼なじみでいつも一緒だったけど、
そこに愛があることに気づかないでずいぶん長い間、回り道しちゃった・・・。

でもね、よく見たら、すぐ目の前に幸せがあったのよ。

おかしいわね。


あなたは夢が大きいから、いつも遠くばかり見ているけれど、
たまには、近くも見たほうがいいわ。

遠くばかり見ていても探せないこともあるのよ。






ぺ・ヨンジュン
チョン・ドヨン主演
「アマン―夏の恋人」26







ス:う~ん、う~ん・・・。
ヨ:(顔を起こして)気持ちが悪いの?
ス:うううん・・・感じてるの・・・。
ヨ:(笑う)・・・。


スワンの胸の下の辺りに顔を埋めていたヨンジョンが、ドンとスワンの顔のほうへせり上がった。
そして、上からスワンの顔を見下ろす。


ス:なあに?
ヨ:(微笑む)・・・。
ス:う~ん・・・なあに?
ヨ:・・・具合が悪くなったと思ったよ。
ス:違うわよ・・・。(微笑む)

ヨ:・・・ホントに気持ち悪くなるといけないから・・・寝ようか。
ス:なんで? (つまんない)
ヨ:明後日、式じゃない。体調を整えないとね。
ス:・・・もう、気が変わるんだから。
ヨ:やっぱり粗相があったらマズイなと思って。(笑って)今日はゆったりと寝よう。
ス:ヨンジョンと一緒なら、いつもいい気分なんだからいいのに・・・。

ヨ:寝るよ。(スワンの唇に軽く、チュッとする)
ス:わかった。


ヨンジョンが横に寝転ぶ。


ヨ:ところで、パク先生。一緒にバージンロード、歩いてくれるんだって?
ス:うん、そうなの。思い切って頼んでよかった。(笑う)バージンロード・・・じゃないけど、いいよね?

ヨ:・・・。(笑う)急でも結構来てくれるもんだね・・・。ありがたいよ。
ス:大学時代のお友達も来るんでしょ?
ヨ:うん。スワンもだろ?
ス:うん・・・。よかったね・・・母さんが提案してくれて・・・。昨日、ウエディングドレス着てみたじゃない、結構素敵だった・・・。
ヨ:そう?
ス:きっと、ヨンジョンが見たら、泣くと思う。(笑う)
ヨ:なんで?
ス:そのくらい、素敵だっていうことよ。とってもいい女に見えるの。
ヨ:へえ・・・。楽しみにしておく。
ス:ヨンジョンはどうだった?
ヨ:まあまあかな。

ス:そうお?
ヨ:うん。男はそんなもんなんじゃないの?
ス:そう・・・。まあいいわ。
ヨ:花嫁がキレイならそれが一番だよ。
ス:うん。あ、もう一回、美容液、塗って寝よう。少しでもキレイにしなくちゃ。ヨンジョンも塗ってあげる。
ヨ:いらないよ。
ス:駄目駄目。私の友達も来るんだから。つるつるになってなきゃ。



スワンが近くの鏡台から、美容液を持ってきて、手に取る。そして、自分の顔ではなくて、ヨンジョンの顔に塗る。


ヨ:いいよ、やめろよ。
ス:駄目よ、新郎なんだから。(やさしく塗る)OK! キレイになったわよ。(そういって自分の顔にもつける)これで、出来上がり。ふ~。寝る?


スワンがヨンジョンの腕枕にそっと頭を乗せて、顔を見て、ヨンジョンの頬をつんつんと突いて笑った。








いよいよ、結婚式の朝。

今朝の天気予報は、とても微妙だ。

晴れのち曇り、ところによって、にわか雨・・・。


昨夜から、実家に泊まっていたスワンたちだが、早い朝食を食べ終わって、テレビの天気予報を見ている。


ス:この「ところによって」っていうのが困るわよね。はっきりしなさいって言いたいわ。
ヨ:スワン。心がけがよければ晴れるよ。
ス:そんなものかしら。(笑って)ヨンジョンのほうが理科系なのに、なんか言うことがロマンチック。(顔を覗いて、クスッと笑う)



母:スワン、早く準備しなさいよ。あなたが一番お仕度に時間がかかるんだから。
ス:男の人はいいわね、簡単で。
ヨ:せいぜいキレイにしてもらっておいで。(笑う)
ス:大丈夫。土台がいいから。ヒョンスだって、そう思うでしょう。
ヒ:(肩をすくめる)・・・。
ス:二人とも信じてないわね・・・見てらっしゃい。(笑って睨む)


母:スワン、あなたはもう少ししたら、教会へ行きますよ。
ス:わかってるわよ。姉さんも早めに来るんでしょ?
母:ええ。今回は、あの子がいろいろ準備を手伝ってくれてるから、助かるわ。
ス:ヨンジョン。あの家の主よ。あとで紹介するわ。(微笑む)
ヨ:ふ~ん。(頷いて笑う)

母:ヨンジョンさんとヒョンス君は1時間後に来ればいいですからね。家のカギをお願いね。
ヨ:わかりました。お世話になります。
母:ヒョンス君は、今晩はおばあちゃまとお留守番しようね。パパとママは新婚旅行だから。
ヒ:うん。どこへ行くの?

ス:ソウルホテルのコテージに一泊。ちょっと離れになっていて、素敵なんですって。私の姉さんがね、予約してくれたの。姉さんてそういうの、調べるの、好きよね。(母に言う)
母:ホント。実は自分が泊まってみたかったみたいよ。なんでも、ドラマの中で主人公が泊まってたところなんですって。
ス:ふ~ん。ヨンジョン、わかる?
ヨ:さあ。(首を傾げる)

母:まあ、お楽しみにして・・・。スワン、私たちはもう出ましょう。
ス:うん・・・。あ、もう一度歯を磨かせて。(洗面所へ行く)
母:・・・何度磨くの・・・。(呆れる)
ス:(奥から)母さん!待っててね! すぐ磨くから!
母:はい、はい。(笑う)







スワンと母親は、準備のため、先に教会の控え室に行った。
今日は、姉の友人のメイキャップアーティストが、スワンをキレイに仕上げてくれる。


友:髪もこんな感じでいいかしら?(スワンに合わせ鏡で確認させる)
ス:ええ。なんか、自分じゃないみたい・・・。(鏡の中を覗く)

友:すごくキレイよ。新郎の方が驚くわね。
ス:(うれしそうに笑う)だといいけど。



全てが整ったところに姉がブーケを持ってやってきた。



姉:スワン!(驚く) すごい。あなた、素敵よ。スンヨン、ありがとう。さすが、プロだわ。
ス:姉さん! 素材もいいのよ。
姉:うん、まあね。うちの家系は美人揃いだから。(笑う)


年の離れた姉はもうすっかり落ち着いたマダムの雰囲気で、姉というより母親のような目をして、スワンの晴れ姿を見つめている。




スワンのウエディングドレスは、このメイキャップアーティストが出入りしているスタジオで借りたもので、上質な白の厚手のタフタでできており、胸のくりは胸の曲線に沿って大きくV字型に開いていて、胸から肩にかけては、ふんだんに刺繍が施されいる。
肩のデザインは少しパフスリーブで、袖は長く、手の甲の部分を隠すように中指の付け根まで伸びている。手の甲を覆った部分は中指に向かって尖ったようなデザインで、そこにも白い糸の刺繍が丁寧になされている。
胸のすぐ下でスカート部分へと切り替えになっている。


そのデザインは、母が身重のスワンのウェストを締めないように薦めたものだ。

そして、11月の空の下、ガーデンでの披露宴にも冷えないように、厚手のタフタの生地を、下穿きがはけるように、カイロをつけられるようにと、下半身のゆったりとしたデザインを選んだものだった。

そのドレスの雰囲気に合わせ、スワンの髪は前髪を垂らさず、全ての髪を後ろに流している。
後ろで束ねた髪は幾重にも編みこまれ、比較的下の方でまとめて、重厚感さえ感じられる。
その髪の上にティアラが乗って、そこに長いチュールがかけられた。

その姿は中世な姫のようであり、それでいて、現代的なスワンの表情が、モダンさをも、かもし出していた。


姉は用意してきた白い花のブーケを手渡した。


姉:スワン、幸せになるのよ。
ス:・・・姉さん・・・ありがとう・・・。(受け取る)
姉:じゃあ、新郎の胸にお花をつけてくるわね。もうお仕度が整ったかしら。
ス:よろしくね。
姉:スワンの彼氏って会うのが楽しみだわ。どんな人かしら。ちょっと行ってくるわね。




姉はうきうきと出ていった。


それから、妹が来て、友人が来て、入れ替わり立ち代り、皆が祝いにかけつけた。

たぶん、ヨンジョンもこうして、式の前の時間を過ごしているのだろう。






ヨンジョンの控え室には、ヨンジョンの母と祖父が訪れていた。
その部屋の隅に、ヒョンスが行儀よく腰かけ、父と二人の様子を見守っている。



母親は、部屋に入った瞬間から、胸がいっぱいになった。
そこには、本当に逞しく凛々しくなった大人の息子がいて、その佇まいがとても穏やかで理知的だったから・・・。


こんな息子の晴れの姿を夫が見たら、どんなに喜ぶだろう・・・。
かわいがっていた息子は紆余曲折はあったものの、こんなに立派な男になったことをもう一度再確認してほしい・・・。





爺:ヨンジョン。おまえも立派になったなあ。見れば、一目でわかるぞ。おまえがちゃんと生きてきたことが。
ヨ:お祖父ちゃん・・・。(微笑む)今日は、お二人でありがとうございます。スワンのお母さんがいろいろお骨折り下さって、今日の式が実現したんです。
母:後で、お母様にはキチンとご挨拶をさせていただきますね。ヒョンス君も、ちゃんとキレイにドレスアップして下さって。


ヒョンスは、子供らしいスーツに、蝶ネクタイをしていた。



今日のヨンジョンは、黒のモーニング姿で、白ワイシャツの立ち襟に白の蝶ネクタイをつけ、先ほど、スワンの姉が持ってきてくれた白い花を胸の高い部分につけていた。
長めの髪は、全て後ろできっちりと縛っている。


母:あちら様は、お父様はいらっしゃらないのね?
ヨ:スワンが大学院の頃に亡くなられたんだよ。それで、今日は文学部時代の教授がバージンロードを一緒に歩いてくれるんだ。
母:まあそうなの・・・。


そういって、母の話は途切れた。
頭の中は夫のことが気がかりで、ヨンジョンとの会話もなぜか途切れがちだ。

そんな様子が外からも見てとれるから、ヨンジョンも祖父もつい、無口になる。


ヨンジョンと母が見詰め合っていると、教会の係りの人がノックして、顔を出した。


係:お式の時間でございます。








いよいよ、式が始まり、ヨンジョンは、祭壇の前に立った。

ここはプロテスタントで、祭壇にはキリストの像はないものの、そこには美しいステンドグラスがあった。
古いこの教会は、床が大理石でできており、その石でできた重厚感と、飴色に輝く壁の木材の温かみが、参列者の気持ちを引き締めると同時に温かくした。




スワンは教会のドアの外で、最後の点検を受け、顔にチュールをかけた。
そして、隣に立ったパク教授の腕に腕を通した。


ヨンジュンは後ろを振り向き、扉が開くのを待つ。




後ろの扉が開き、パク教授に腕を取られ、スワンが入ってきた。

スワンが一歩踏み出すと、祭壇の左手に並んでいた聖歌隊のソプラノが、賛美歌を歌い出した。
母の所属しているコーラスサークルがアカペラで賛美歌を歌っているのだ。

ソプラノのやさしい歌声に乗って、スワンが一歩一歩、ヨンジョンのもとへ近づく。



普段、あんなに近くで見つめ合っている二人なのに、緊張して、お互いを見つめる。


ヨンジョンの立ち姿があまりに素敵なので、スワンは胸がキュンとした。


いつものスワンと違って、少しクラシカルで、人形のようにかしこまったスワンを見て、ヨンジョンは胸がときめいた。



スワンが一歩ずつ一歩ずつ近づき、ヨンジョンのもとへやってきた。

二人は牧師の前に並んだ。

お互いの温もりや思いがこぼれ落ちるように、隣に立っていて感じられる。

牧師の言葉を聴きながら、出会いから今まで月日にしては短かったが、二人で乗り越えたこと、愛を語ったことを思い出した。




誓詞を二人で読んだ。


ヨ:私、チェ・ヨンジョンは、キム・スワンを一生の伴侶として、これを愛し、これを信じ敬い、病める時も悲しみの時も、二人で乗り越えていくことを誓います。
ス:私、キム・スワンは、チェ・ヨンジョンを一生の伴侶として、これを愛し、これを信じ敬い、どんな時も助け合って生きることを誓います。


スワンの指に結婚指輪がはめられ、ヨンジョンの指に結婚指輪がはめられた。


二人は向かい合って、ヨンジョンがスワンのベールを上げ、二人は見つめ合った。
ヨンジョンの顔が近づいて、スワンに軽くキスをした・・・。



そして、二人は晴れて夫婦となった。



アカペラの美しい賛美歌が流れ、起立した参列者の間を、ヨンジョンとスワンが腕を組み歩いて退場していくと、一番後ろの席に、ヨンジョンの父が立っていた。

二人は立ち止まって、父を見た。

ヨンジョンと父親はしばし見つめ合って、父がヨンジョンに手を差し伸べ、二人は握手をした・・・。
父は、ヨンジョンを微笑んで見つめた。




二人の挙式は終わった。
退場した後、ヨンジョンは走って、父のもとへ行ったが、もうその姿はなかった・・・。

一言、話したかった。
父にお礼を言いたかった・・・でも、もうそこには父はいなかった。





式が終わって、30分ほどしてから、教会の中庭で、ケータリングのガーデンパーティが行われた。


二人は乾杯のあと、皆の間を回り、笑顔で挨拶をしていく。

大学時代の友人がいて、姉妹がいて、見つめる母や祖父がいる。

パク教授がいて、ミンシャがいて、満面の笑みのソンジュンがいた。
そして、その横にジョンアが立っていた。



ジ:チェ先生、スワン、おめでとうございます。

二人は頭を下げた。


ジ:ホントは、ここへは申し訳なくて、来られた義理じゃないんだけど・・・でも、二人には、ちゃんと会って謝って・・・お祝いを言いたかったの・・・。
ス:先輩・・・。
ジ:私、本当にひどいことをしたわ・・・。
ヨ:・・・。

ジ:それで・・・大学審議会には、私も一緒に行きます。そして・・・愚かだった自分の行為を話します。

ス:・・・大丈夫なの? 大学を首にならない? そんなことをして・・・。
ジ:もう、ほとんど首と同じよ・・・。だから、ちゃんと自分のしたことに決着をつけたいの。

ス:・・・ヨンジョン・・・。
ヨ:ジョンア先生・・・。僕は、あなたをひどい人だと思ったけど、でも、スワンの留学もパク先生のおかげで決まったし・・・もういいですよ・・・。
ス:ヨンジョン・・・。

ジ:そうはいかないわ。それでは、スワンにも申し訳ないの。私、自分自身も出直したいの。私も隠蔽されて、未来のないような生活をしたくないのよ。


ス:本当にいいの?
ジ:ええ。卑怯な自分を引きずって生きたくないの。
ヨ:・・・ありがとうございます。僕たちは、3日後に呼び出されています。先生もご一緒してくれるんですね?
ジ:ええ。


ジョンアは、ヨンジョンをまっすぐ見つめて答えた。

ジョンアは決心していた。自分がマスコミの餌食になってしまうことも。
でも、それ以上に、卑怯な自分で終わることは、彼女のプライドが許さなかった。

ジョンアには自分は優秀であるはずだという自負がある。
そして、大学最後の日にスワンが励ましてくれたように、自分で蒔いた種は自分で刈るという強い決心も、それができるだけの自分であるはずだという自信も戻ってきた。





スワンとヨンジョンは自分たちの席に戻ると、不安そうにスワンはヨンジョンを見た。


ス:先輩、大丈夫かしら・・・。ヨンジョンの汚名返上はしたいけど、先輩は女だもん・・・。どんなに頑張っても、危険は危険だわ・・・。
ヨ:弁護士の友達に聞いてみるよ。彼女をマスコミの餌食にするわけにはいかないからね。(手を握る)
ス:・・・うん・・・。





司会のヨンジョンの友人がマイクを取って言った。


司:さて、幸運にも、中世の姫を、花嫁に手に入れたヨンジョン、おめでとう。ではここで、ヨンジョン君とスワンさんには皆に熱々のところを見せてもらいましょう。では、お二人に踊ってもらいましょう。


ス:ええ、やだ・・・。踊れないのに・・・。
ヨ:・・・。
ス:ヨンジョン、断って。踊れないもの・・・。


ヨンジョンがスワンを見ていたずらっぽく微笑んだ。


ヨ:オレが幸せになったことを皆に見せてやろう。おいで、スワン。(スワンの手を握る)
ス:だって・・・ヨンジョン。
ヨ:夫唱婦随だろ? おいで。




ヨンジョンがスワンの手を引っ張って、皆の前へ出た。



周りがざわめいて、音楽が流れた。


ヨンジョンがスワンの手を取って、リードし、二人は踊った。
スワンの目には、今、目の前にいるヨンジョンしか見えなくて、ヨンジョンにリードされるまま、体を動かした。


皆のため息の中、二人は幸せそうに揺れた。





ジョンアは、心にしこっていたものが解けていくのを感じた。


あの人を好きだった・・・。
でも、結局、私は本物のあの人を知らない・・・どんな人が好きで、何が好きかもよくわからなかった。
でも、好きだったってこと、覚えていてもいいわね・・・確かに、あなたは素敵な人だから・・・。

ジョンアの心に、明るい日差しが入ってきた。





スワンがヨンジョンの顔を見上げていると、ぽつんと・・・目に入った・・・。


雨だ。


予想通り、ところによってにわか雨・・・。

「心がけがよければ降らないはずの雨」が、スワンの目に入った。


ス:雨!
ヨ:行こう!(スワンの肩を抱く)



皆は、教会の奥の間と、テントの中に逃げ込む。


楽しかった披露宴は、最後、「心がけがよければ降らないはずの雨」で終わった・・・。






テントの中へ逃げ込んで、スワンがヨンジョンの黒のモーニングの上に乗っている雨粒を手で弾き落とす。

そんなスワンの仕草をヨンジョンは見つめて、そして、スワンの顔を眺めた。



髪にも顔にも肩にも、雨がかかり、その雨粒が昼の光にきらきらと輝いている。


スワンの大きな瞳が、ヨンジョンを見つめて、笑顔になった。


スワンの瞳が輝いて・・・スワンが美しく輝いて・・・思わず、ヨンジョンの目から涙がこぼれ落ちた。



幸せな瞬間・・・。



二人の他には誰もいなくて、昼のにわか雨に輝きを放つ二人だけがここにいる。



スワンも、涙するヨンジョンを見つめた。


二人には、「心がけがよければ降らないはずの」昼の雨に、照らし出された、永遠の愛の姿が、そこにあるように思われた。









続く



2009/08/06 00:47
テーマ:【創】「アマン」第1部 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】「アマン」25





BGMはこちらで^^




BYJシアターです。
本日は「アマン―夏の恋人」25部です。



ではお楽しみください。





母さんは言った。

スワン、幸せって実は私たちのすぐ近くにあるものよ。

父さんと母さんはね、幼なじみでいつも一緒だったけど、
そこに愛があることに気づかないでずいぶん長い間、回り道しちゃった・・・。

でもね、よく見たら、すぐ目の前に幸せがあったのよ。

おかしいわね。


あなたは夢が大きいから、いつも遠くばかり見ているけれど、
たまには、近くも見たほうがいいわ。

遠くばかり見ていても探せないこともあるのよ。





ぺ・ヨンジュン
チョン・ドヨン主演

「アマン―夏の恋人」25





ヨ:これで、全部だね?
ス:だよね。(周りを見回す)終わったね。


ヨンジョンのソウルのマンションの部屋もやっと整理がついた。


ヨ:・・・帰ってきちゃったね。
ス:うん・・・。よかったんだよね?
ヨ:もう、前に進むしかないだろう?
ス:だよね。

ス:ホントに短い滞在だったね・・・。(微笑む)
ヨ:まあね。でも、スワンに会いに行ったようなものだから。まあ、上出来? (微笑み返す)
ス:だよ! 



ソファに座ったヨンジョンの膝を跨ぐようにして、スワンは向かい合って座った。


ス:いいお土産つきじゃない?
ヨ:ま、そういうことにしよう。
ス:でしょ?
ヨ:・・・うん。
ス:ふ~ん。


ヨンジョンが時計を見た。


ヨ:おい、もう1時だよ。なんか時間を忘れて片づけしてたな。
ス:ホント。でも、まだぜんぜん眠くないわ。
ヨ:でも、寝よう。あれ、ヒョンスは?

ス:9時ごろ、子供部屋を覗いたら、もう寝てた。
ヨ:あいつも疲れたのかな。明日は・・・。役所へ行って・・・それから、スワンの医者探しをして・・・。ヒョンスが元の学校に戻りたいって言うから、顔を出してみるよ。1~2ヶ月のことだけど、お世話になりたいって。
ス:うん。友達がいるから、そのほうがいいのかもしれないね。

ヨ:落ち着いたら、お母さんのところに顔を出しておくか。
ス:そうだねえ・・・。ソウルに帰ってきちゃったからね・・・。


ヨ:しばらくは無職だし。スワンの大学の返事がこないと、動けないし・・・。まあ、のんびり釣りでもするか。
ス:ノンキ!(笑う) もうすぐ審議会からお呼び出しがあるわよ。
ヨ:そうだなあ・・・。さ、明日からソウルの生活が始まる。頑張っていこう・・・。


そういうと、目の前にあるスワンの唇に軽くキスをして、ヨンジョンが笑った。


ス:寝る?
ヨ:うん。
ス:私のベッドもここに入れたほうがよかったかな。ずっとセミダブルのままになっちゃうよ。
ヨ:いいじゃない。新婚なんだから。どうせ、短い期間だよ。一緒に寝よう。
ス:うん・・・。
ヨ:降りて・・・立てないから。
ス:抱っこしてって。(甘えて笑う)
ヨ:やだよ。
ス:なんだ。じゃあ、おんぶは?
ヨ:・・・あくまで、拘るんだね?
ス:うん。
ヨ:じゃあおんぶ。それとも、やっぱり、抱っこしてあげようか? あっちこっち、ぶつけながら歩くの。(笑う)
ス:やだ、おんぶ!


二人は立ち上がって、スワンがソファの上に立ち、ヨンジョンの背中に負ぶさった。


ス:行って。
ヨ:恐い奥さんだな。
ス:行って。
ヨ:ぶつけるよ。
ス:やだあ。(笑って肩を叩く)



ヨンジョンとスワンは、久しぶりに開放感を感じながら、深夜の部屋でじゃれ合いながら、ソウル引越し後の初めての夜を過ごした。





それから、2、3日して、昼間、スワンは実家に遊びに行き、ヨンジョンは大学時代の友人のところへ出かけた。
夕方、ヨンジョンがヒョンスを連れて、スワンの実家を訪れることになっている。


母:ゼリーでも食べる?
ス:ありがとう。


母がスワンの前にゼリーを置いた。
それは、コンソメの中に小さく切られた魚や野菜が入っていた。
冷たく冷やされたゼリー寄せは喉越しがよく、最近、偏食になっていたスワンにはありがたかった。


ス:ヨンジョンが母さんに料理を習ってよって。(笑う)
母:そっか・・・。うちの仕事を覚えないまま、あっちへ行っちゃったもんね。 習いにいらっしゃい。
ス:うん。これ、おいしい・・・。(笑顔を見せる)


母:で、しばらくは様子見なのね?
ス:うん。私の留学先が決まったら、ヨンジョンがボストンへ行って、住まいも決めてくるの。

母:そう・・・。たいへんなことになったわね。でもまあ、学年末には辞める予定だったんだから、早まったと思えばいいわね。
ス:うん・・・それだけで済めばいいけど・・・。あとは、大学審議会の状況次第かな。
母:うん・・・。ねえ、まだ、アメリカへ行くまでに時間があるんだから、結婚式でもしたら?
ス:え?


母:あなた、初婚なんだし。ヨンジョンさんだって・・・結婚式したことないんでしょ?
ス:まあね。
母:いい機会じゃない。(微笑みかける)ちゃんとお式をあげなさいよ。記念になるし。結婚の重みも身に沁みるわよ。
ス:もう沁みてるわよ。

母:そうお? まだまだあなたがちゃんとした主婦みたいな気がしないんだけど。
ス:・・・かな・・・。
母:ヨンジョンさんになんでも頼りすぎたら駄目よ。男の人だって疲れちゃう。
ス:うん。
母:これから、アメリカへ行ったら、あなた、勉強もするんでしょ? 彼に負担をかけ過ぎないようにね。会社の副社長さんが、妻や子供の世話で忙しかったら駄目よ。
ス:・・・。
母:・・・前の結婚の失敗を繰り返したら・・・あなた、彼を失うわよ・・・。


ス:うん・・・そのことは肝に銘じる・・・。
母:どんなにいい人だって、キャパシティっていうものがあるから・・・。
ス:わかってる。

母:スワン、母さん、あなたのウェデイングドレス姿、見たいわ。
ス:うん・・・。でも、急で・・・。


母:ここの教会、聞いてみてあげる。
ス:あそこの? 3丁目の? 
母:うん。
ス:だって、あそこって由緒ある教会でしょ。素敵だけど・・・。
母:お父さんの教え子なのよ、牧師さんが。
ス:へえ・・・。


母:頼んでみる。
ス:ふ~ん・・・ありがとう。
母:いいのよ。私が娘の花嫁姿を見たいんだから。(微笑みかける)
ス:うん・・・。(見つめる)
母:親孝行しなさい。
ス:(涙が込み上げる)うん・・・。
母:バカね、泣くことはないわ。




スワンは、自分でも止められないほど涙ぐんでしまう。



母:やっぱり・・・赤ちゃんがいるのね? あなたは、今、ちょっと気持ちが敏感になってるんだわ・・・。
ス:・・・。(母を見る)

母:わかるわ、あなたを見ていると。


スワンと母親が見つめ合った。



ス:言わなくてごめんなさい。でも、赤ちゃんのことがわかる前に、結婚を決めたのよ。だから、できちゃった婚みたいに思われたくなかったの。
母:うん・・・。
ス:それに・・・まだ、ヒョンスに話してないの。
母:・・・そう・・・うまく話さないとね。
ス:うん・・・。
母:何ヶ月?
ス:まだ9週。
母:できたてなんだ。(微笑む)


母:学校のこととか、いろいろあったかもしれないけど、でも・・・いい人と一緒になれて、よかったじゃない・・・。
ス:うん・・・。
母:大切にしなさい。
ス:うん。
母:ヨンジョンさんだけじゃなく、ヒョンス君もね。
ス:うん・・・わかってる。


母:二人が来たら、おいしいものを作ってあげるわ。そうだ・・・これから、行ってみるわ、教会。
ス:母さん。そんなに急がなくても。
母:早いほうがいいじゃない。式をあげなさい。
ス:・・・うん。






夕方になって、ヨンジョンがヒョンスと一緒に、スワンの実家を訪れた。
三人は、スワンの母の手料理をご馳走になっている。


母:スワンもしばらく、ここへ通うか、あるいは、私があなたの所へ行って、お料理習わなくちゃね。


ヨンジョンがにこっとして、スワンを見た。


ス:そうする。
母:ヒョンス君だって、ちゃんとしたお料理食べたいわよね?
ヒ:・・・。(周りを見る)

ス:ヒョンス、遠慮しないでいいのよ。
ヒ:・・・。(赤い顔で微笑む)
ヨ:お母さん、よろしくお願いします。

母:やっぱり。(笑う)ご主人に頼まれたら、仕方がないわね。スワンもしっかりやらなくちゃ。
ス:ふ~ん、もう・・・。(笑う)



母:ところで、ヨンジョンさん。差し出がましいんだけど。
ヨ:はい。

母:アメリカへ行くまで、時間があるし、結婚式を挙げませんか?
ヨ:・・・。
母:さっきね、ここから歩いて、10分のところにある教会で聞いてきたの。挙げてもいいって。来週の日曜日あたり、どうかしら?
ヨ:・・・。(スワンを見る)

ス:すごく由緒正しい教会なの。でも、お父さんの教え子なんだって、牧師さんが。親孝行したいの・・・(ヨンジョンをじっと見る)それに、私もウェディングドレスを着てみたいと思い始めたの。
ヨ:そう・・・。(考える)

母:ヒョンス君も結婚式、見たいでしょ?
ヒ:うん。

母:どうかしら?
ヨ:そうですね・・・。

母:・・・お父様やお母様もお呼びして・・・いい機会じゃないの?
ヨ:・・・。来られるかどうか・・・。
母:ヨンジョンさん。駄目もとよ。やってみましょう。(微笑む)この人の姉妹も呼んで、お友達も呼んで・・・なんとか、やりましょうよ。

ヨ:・・・。
母:せっかく、ソウルにいるのよ。もったいないわ。こういう機会を逃しちゃ駄目よ。
ヨ:ええ・・・。
母:私に任せて。あなたたちは、お友達に連絡して・・・。

ス:母さん。
母:やらせて、最後の娘だもん・・・やってあげたいの。
ヨ:わかりました。よろしく、お願いします。(頭を下げる)





夜、スワンがベッドの縁に座って、目覚ましをセットしながら、ヨンジョンに聞く。


ス:ヨンジョン、よかった? 結婚式のこと・・・。
ヨ:うん・・・自分じゃできなかったから・・・チャンスだね。
ス:うん・・・お父様やお母様のことは、億劫がらずに乗り越えないとね。来てくれたら、うれしいし、駄目でも、やってみよう。
ヨ:うん・・・。おじいちゃんには、来てほしいなあ・・・。
ス:そうだよ。元祖ヨンジョンさんからもクドいてもらおうよ。それがいいかも。ヨンジョン、おじいちゃん孝行にもなるよ。
ヨ:うん、そうだな。


ス:パク先生やミンシャにも声をかけてみる・・・。母さんが教会のお庭も借りてくれたから、ケータリングで、披露宴をやったらって。
ヨ:すごいな。やり手だね、お母さん。(笑う)
ス:うん・・・。ヨンジョン。
ヨ:何?

ス:母さんに言ったよ。赤ちゃんのこと。
ヨ:そうか。
ス:喜んでくれたし、いい人と一緒になれて、よかったねって・・・。
ヨ:そう・・・。
ス:うん・・・。
ヨ:そうか・・・よし! 勇気を出して、式を挙げるか!
ス:何よ、それ。私とは隠れてしたかったの?
ヨ:(笑う)・・・。
ス:そうなんだ、こんないいお嫁さんなのに・・・。
ヨ:(笑う)・・・。


ス:ヨンジョン、前の奥さんと私は違うわ。それに、ヨンジョンが今までもちゃんと生きてきたこと、皆に教えなくちゃ。臆病になんてなってられないわ!
ヨ:スワン・・・。

ス:皆に教えてあげましょう。いい結婚をしたって。すごく幸せなんだって。


ヨンジョンはスワンを抱きしめて、ちょっと泣きそうな顔で見つめた。
スワンは幸せそうに、鼻にしわを寄せて、笑った。







ミ:先生! 行きますよね?


ミンシャが文学部の研究室で仕切っている。


パ:もちろん!
ミ:OK!  ではここからは出席2名と・・・。


ソンジュンがミンシャの顔を見た。


ソ:なんで聞いてくれないんです?
ミ:え! 行くの・・・?
ソ:もちろん、ヨンジョンさんの晴れの日です。・・・もちろん、スワン先生も。
ミ:ですね・・・。では、ここから、3人。



パ:ミンシャ君・・・待って。もう一人、誘おう。
ミ:・・・先生。へんなこと、言わないでくださいよ。
パ:変か?

ミ:・・・聞きたくない・・・。
パ:とにかく、誘ってみよう。



パク教授が、内線で、電話を入れる。


パ:もしもし、文学部のパクです。実は、スワン君たちが結婚式を挙げるのでね。お誘いです・・・。どうですか? あなたもスワン君の長年の先輩として、出席せきゃいかんでしょう。私と一緒にいきましょう。エスコートしますよ。・・・エントリーしておきますからね。いいですね? では。




ミ:どうでした? (恐々聴く)
パ:迷っていたが、行くそうだ・・・。

ミ:・・・。
パ:行って・・・自分の目で恋の終わりを確かめることだ。
ミ:先生・・・。

パ:ジョンア君の発言は重要だよ。なぜ、不当な人事があったか。まあ、それより、彼女も、ホントは行きたいだろう。長年の後輩だ。それに・・・他にジョンア君の友人て聞いたことがないしな。
ミ:・・・仕方ないですね・・・。ではここからは4人・・・。無事に式が終わりますように。(祈る)
パ:・・・バカだな。大丈夫だよ。


ソンジュンも幸せそうに目を輝かせた。








スワンとヨンジョンの結婚式。

それぞれの思いが交錯している。


ヨンジョンの祖父を面会に来ている、ヨンジョンの母が中庭で車椅子を止めると、ため息をついた。


母:どうしましょう・・・。
爺:わしは行くよ。これが最後の見納めかもしれん。ペルパーさんと行ってもいいんだが、できれば、あんたと行きたい。
母:・・・。
爺:あいつのことより、息子の気持ちを考えてやったら、どうだ。あんたがいなかったら、あいつなんて、大した男じゃないんだ。なんだかんだ、言ったって、あんたとは、別れることなんてないんだから・・・。ヨンジョンを祝ってやったらどうかい?


母:お祖父ちゃま・・・。

爺:考えて悩んでいるうちに、月日というものは過ぎてしまう・・・。あんたも、生きているうちに、息子の笑顔を見たいだろう・・・。
母:・・・そうですね。行きます。あの人がなんと言っても。この間、会ったヨンジョンは、立派でした・・・。あの子を信じて、私は行きます。

爺:うん。これで、あんたやヨンジョンが幸せになれればいいが・・・。わしは、それだけが心残りだ。(ヨンジョンの母親を見る)
母:お祖父ちゃま・・・。





結婚式まであと3日となり、スワンも幸せな気分で、母に習った料理を作っていた。

チャイムが鳴って、内容証明付きの郵便が届く。


大学審議会からの呼び出しだった・・・。
時は、結婚式から3日後。


いったい、ヨンジョンに、スワンに何を聞きたいというのだろうか。
スワンが正したいのは、ヨンジョンという人間に対しての誤解だけだ。


ヨ:どうしたあ? 


チャイムの音にヨンジョンが書斎から出てきた。


ス:大学審議会・・・。
ヨ:・・・オレたちから何を聞きたいんだか・・・。もうスワンの留学も決まったし、この問題をズルズル引きずりたくないね。
ス:でも、誤解だけは解かなくちゃね。
ヨ:うん・・・。


ヨ:でも、よかったなあ。パク先生のほうの大学に決まって。
ス:うん。
ヨ:安定期になったら、向こうへ行って、来学期には勉強が始められるし、ちょうど夏休み中に出産だしね。夏休みが3ヶ月あれば、なんとかなるだろう。
ス:うん・・・。ヨンジョンには、苦労かけるけど・・・。

ヨ:最初の一年を乗り切れればなんとかなるさ。ヒョンスの学校も地域では良さそうだし。なんか、我が家の春だね。
ス:神様・・・このまま、春でありますように!
ヨ:バカ。(笑う)

ス:だって、願わずにはいられないわ。私たちの未来ははっきりしているようで・・・外野次第だから。(笑う)


ヨ:まずは結婚式だね。
ス:うん・・・。まずは、晴れること。(笑う)だって、ガーデンだからね。奥の間って狭かったでしょ。
ヨ:そして、気持ちが悪くならないこと・・・。
ス:(笑う)そうね。それは大切だわ。あ、お料理、お料理。今日のはおいしいはずよ。



スワンが幸せそうに笑った。





続く





2009/08/05 00:39
テーマ:【創】「アマン」第1部 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】「アマン」24





BGMはこちらで^^



BYJシアターです。
本日は「アマン―夏の恋人」24部です。


ではお楽しみください。





母さんは言った。

スワン、幸せって実は私たちのすぐ近くにあるものよ。

父さんと母さんはね、幼なじみでいつも一緒だったけど、
そこに愛があることに気づかないでずいぶん長い間、回り道しちゃった・・・。

でもね、よく見たら、すぐ目の前に幸せがあったのよ。

おかしいわね。


あなたは夢が大きいから、いつも遠くばかり見ているけれど、
たまには、近くも見たほうがいいわ。

遠くばかり見ていても探せないこともあるのよ。






ぺ・ヨンジュン
チョン・ドヨン主演
「アマン―夏の恋人」24





ミ:先輩、大変なことになりましたね・・・。
ス:うん・・・。でも、どうして、大学審議会が知ってるの?
ミ:内部告発者がいたんです。
ス:誰?
ミ:まだわからないけど・・・。日が浅いからね・・・そんなに多くの人が知ってるわけじゃないし。工学部と言っても、教授やジョンア女史が言うはずないし・・・やっぱり教務課の人かな。
ス:・・・そう・・・。
ミ:でも、動きが早いんで、驚いちゃったんです。
ス:ホントね。普通は、ほったらかしじゃないの?
ミ:ええ。それが・・・パク教授が言うには・・・(小声になる)S大学で最近不当な解雇や左遷があって、それで、審議会がこの内部告発に飛びついたんじゃないかって。ほら、同じような事件て、芋づる式に出てくるじゃないですか?
ス:やだ・・・。

ミ:ところで、先輩・・・私、気がついちゃったんですけど・・・。
ス:何に?
ミ:うん・・・先輩・・・体の具合、悪い?
ス:・・・。
ミ:この間、一緒に食事した時。チェ先生がちょっと心配しているというか、労わっている感じだったから。最初は保護者みたい!なんて思ってたけど。引越しで、重い物を持つなとか・・・それってやっぱり・・・。少し・・・体調悪いよね?
ス:・・・うん・・・。
ミ:それで、結婚したの?

ス:うううん・・・それは、後でわかったの・・・だから、私たち、そのことで結婚したんじゃないの。この街で、こそこそと付き合いたくなかったから。それにジョンア先輩とヨンジョンのことが小学校でも噂になっていて。ヨンジョンが早く結婚しちゃおうって。
ミ:そうか。うん、わかる。この街は狭いもん・・・。それに、チェ先生を見てるとわかる。先輩のこと、本当に好きだって・・・。先輩を見る目が違うもん。やさしいもん・・・。ヒョンス君も先輩を信頼しているのがよくわかったし・・・。

ス:うん・・・。
ミ:でも、これからどうします? チェ先生の人事異動は不当だけど、先輩の留学は微妙ですよね・・・。
ス:・・・うん・・・。でも、留学の話を受けた時はそういう状況じゃなかったんだけど・・・。
ミ:あまり大事にならないといいですね。
ス:うん・・・。
ミ:一人で留学する気だったの?
ス:その辺は・・・。
ミ:微妙なところなのね・・・。もしかしたら、ジョンア先生が変なことしなくても、二人は大学辞めてたかもしれないんだ・・・。

ス:・・・。
ミ:もしかして・・・パク先生もそのこと、知ってるの?
ス:・・・うん・・・。
ミ:それで・・・。それでパク先生は違う留学先を進めていたのね・・・。


ス:ミンシャ、悪いけど、その話は、内緒にしてくれる? ヒョンスにまだ話してないのよ。
ミ:そうなんだ・・・。それがネックなのね。先輩は継母だもんね。うん・・・言わない・・・先輩たちが話すまで言わない。これって微妙なことだもんね・・・。
ス:ありがとう。

ス:それにしても、内部告発者がいるんだ。あの教務課でそんなことしそうな人って・・・。(考える)人って見かけじゃわからないものね。
ミ:ホント。でも、その人って、先輩たちの味方ってことですよね。
ス:まあ、そうだよね。
ミ:教務の背の高い人、あの人って・・・。



研究室のドアが開いて、ソンジュンが入ってきた。




ミ:あ、先輩。(小声になる)ソンジュン先生が来たから、またね。なんか動きがあったら、また電話するね。

ソ:おはよう。どうしたの? そんな顔して?
ミ:別に・・・。あ、先生。スワン先輩とチェ先生の不当人事異動で、大学審議会が動き始めましたよ。
ソ:え! ヨンジョンさんの?

ミ:そう・・・。
ソ:そうか・・・ずいぶん、早いなあ・・・。この間、左遷されたばっかりなのに・・・。



ソンジュンは、そういいながら、弾んだ様子で席についた。
顔がニコニコしている・・・この間の様子といい、今の笑顔といい、「ヨンジョンさん」という呼び方といい・・・。



ミ:先生! (ソンジュンのデスクの前に立つ)
ソ:何? (ミンシャを見上げる)
ミ:先生って・・・。
ソ:ん? (首を傾げる)

ミ:先生って・・・(顔を覗くように)チェ先生が・・・好き?
ソ:(赤い顔をする)・・・いけない?
ミ:・・・。(驚いて顔を見つめる)
ソ:いけない?
ミ:いけないわけじゃないけど・・・。

ソ:別に手を出すわけじゃないんだから・・・いいでしょ?
ミ:・・・そうだったの? そういう人だったの?
ソ:・・・駄目ですか? そういうの。
ミ:いえ・・・。
ソ:ミンシャさんも好きですよ。でも・・・今は・・・ヨンジョンさんが・・・一番です・・・。
ミ:・・・。

ソ:あなたも好きです。
ミ:どっちも好きなの?
ソ:・・・ええ・・・。(恥ずかしそうに笑う)
ミ:そうなの・・・。

ソ:でも、あの人は、もう人のものだから、憧れるだけで・・・。
ミ:ふ~ん・・・。



ミンシャは複雑そうな顔をして、自分の席へ戻っていく。
席について、ソンジュンを見た。

彼は幸せそうな顔で微笑んだ。

もう自分と言う人間を曝け出して、認めてもらったような・・・。
大手を振って、ヨンジョンを好きだと表現しても構わないとばかりに、幸せそうな目をして、思い出し笑いをした・・・。









電話を切ってから、スワンはダイニングテーブルに座って考え事をしている。
ヨンジョンが外から帰ってきた。



ヨ:ただいま。(テーブルの上に買い物袋を置く)
ス:どうした? ヒョンスの学校は?
ヨ:担任の先生に挨拶してきたよ。一応、今週いっぱいまでということで。
ス:そう・・・。ヒョンスもたいへんだよね。
ヨ:ちょうど音楽の時間だったから、担任の先生とよく話しをしてきたよ。まあ、イジメみたいのはなかったみたいだけど、大学の職員の子達が成績を競っているんだって。親がそうらしいよ。・・・男親だけだったから・・・そこまで考えが及ばなかったな・・・。まあ、ソウルに戻ったら、ゆっくりインターナショナルでも探すよ。元の学校へ戻るのがいいのかどうか、わからないから・・・。本人の意見を聞かないと。

ス:そうだねえ・・・レモン、買ってきてくれた?
ヨ:レモンと蜂蜜ね。(袋から出す)このレモン、無農薬だって。高かったよ。
ス:ありがとう! ホントにヨンジョンて、気が利くよね。

ヨ:どういたしまして。オレの子のためだからね。(笑う)
ス:なあんだ、私のためじゃないんだ。(ちょっと鼻にしわを寄せて笑う)



ヨンジョンがニコッと笑った。



ス:ヨンジョン。さっき、ミンシャが電話してきて、大学審議会がヨンジョンの不当人事異動と私の留学取り消しで動き始めたって。
ヨ:(レモンを見ていた目を上げて)・・・誰か、告発したの?
ス:らしいの・・・。それで、来週、学長や教授たちがソウルへお呼び出しらしいよ。
ヨ:ふ~ん・・・ずいぶん急だね。

ス:うん。ミンシャが言うには、あ、これ、パク教授の受け売りだけどね、最近、S大学で突然人気のある教授が解雇になったり、左遷させられちゃった事件があって、それに似た事件を調査しているんだろうって。
ヨ:ふ~ん。パワハラか。
ス:どうしよう。
ヨ:どうしようって?


ス:ミンシャも気がついてたの・・・私の妊娠・・・。
ヨ:・・・すごいな。女の人は気づくのかな。お母さんもそうだったよね。
ス:ねえ・・・ミンシャが私の留学の話は、ちょっとマズイかもって言うの。
ヨ:・・・なんで? 君が辞退するならともかく、あっちから結婚で取り消しは、やっぱり向こうがマズイでしょう。
ス:そんなもの?

ヨ:じゃないの? (レモンを見る)切る?
ス:うん。




二人で、キッチンに入る。
スワンがレモン表面をよく洗って、輪切りにする。



ヨ:奥さん(笑う)・・・それ、厚くない?
ス:厚いねえ・・・。(笑って、1枚取ってみせる)



ヨンジョンが包丁を受け取って、レモンをスライスし始める。



ヨ:ねえ、ホントにお母さんに料理、習ってよね。
ス:・・・うん。もう、約束するってば! 約束するから・・・。ねえ。(甘える)
ヨ:全部、オレが切るの?
ス:切ってくれる?
ヨ:いいよ。1個1000ウォンで5個分ね。
ス:なあに、それ。
ヨ:手間賃。
ス:高いなあ・・・。負けてよ。
ヨ:駄目。(きっぱり!)
ス:ケチ。いいわよ。今度、スライサー買ってくるから。
ヨ:(笑う)そうだよ。買ってくればよかった。・・・ビンは?
ス:これに入れて。(ビンを差し出す)
ヨ:君の失敗作。(笑う)どうする?
ス:食べる。



スワンが厚く切ったレモンがうれしそうに食べる。
ヨンジョンが酸っぱそうな顔をする。


ヨ:よく食べられるね・・・。不思議だね。酸っぱくないの?
ス:それがおいしいのよ。
ヨ:妊娠て、不思議だよね・・・。



そう言いながら、本当に不思議そうにスワンの顔を見る。
スワンは笑って、ビンに入れたレモンの上から蜂蜜をかけている。


ヨ:(スワンの口元を見ながら)よく食べられる・・・。
ス:ふん。
ヨ:じゃあ、昼飯もレモンライスでいいんじゃないの?
ス:バ~カ。(笑う)



スワンが保存用のビンのふたをする。



ヨ:でも、痩せたね。(スワンの横顔を見る)



スワンの頬が少しこけて、アゴが前より突き出すように、ほっそりとしている。



ス:見てわかっちゃうよね?
ヨ:うん。(愛しそうに見る)
ス:2キロも急に痩せちゃったから・・・。
ヨ:・・・。
ス:なんか、顔付きも前と違うの。



ヨンジョンがやさしく頬を撫でる。



ヨ:赤ちゃんが生まれれば元に戻るよ。
ス:そうお? (ヨンジョンを見る)・・・元に戻った?
ヨ:・・・うん・・・。
ス:・・・。(微笑む)じゃあ、いいか。



ヨ:そうだ。今朝、ジェイムスの会社の会議に、コンピュータの画面で参加したよ。
ス:どうだった?
ヨ:なかなか人材も揃ってるし、手ごたえがあるな・・・。それでね、準備のために一度渡米したいんだ。
ス:うん・・・。何日くらい?
ヨ:一週間くらいだけど・・・君とヒョンスで・・・。





リビングの電話が鳴った。




ヨ:もしもし、チェです。あ、はい・・・。どういうことですか? 僕の辞める決意には変わりはありませんよ・・・。それに、今日、息子の転校手続きもしてきました・・・。週末には、ソウルへ戻ります。引越し業者も決めたし・・・。なぜですか?


ス:(小声で)誰?
ヨ:(受話器を押さえて)教務課。
ス:なんで・・・。


ヨ:あ、はい・・・。息子の小学校には、「辞めた」とはっきり言ってしまいましたよ。今さら、ごまかせって言われても。海外研修で休講ってことにするんですか? まあ、好きなようにやってください。僕はソウルに戻りますから・・・。キム・スワンもです・・・。では・・・。




ヨンジョンが受話器を置いた。



ヨ:海外研修で休講ってことにしてくれって。研究所行きはなしにするからって。
ス:まあ・・・大学審議会用ね。
ヨ:それより、学生たちがどういうことだって言ってきたらしいよ。確かにこんなしょっちゅう教官が変わってたら、不信に思うよ。

ス:隠蔽に走ってるのね・・・。
ヨ:こうやって事件に会ってみると、この大学の体質が鼻につくよ。サッサとソウルへ戻ろう。
ス:うん。

ヨ:まあ、オレらもお呼び出しはあるんだろうな・・・。当事者だから・・・。
ス:そうね・・・でも、ヨンジョンの人間性の名誉回復だけはちゃんとしたいわ。
ヨ:・・・そうだね。
ス:でしょ?
ヨ:・・・ありがとう・・・。
ス:・・・。(見詰め合う)



ス:ヨンジョン、ボストンへ準備に行くのね?
ヨ:うん、実際に行ってみないと、マズイだろ? 実際に会社を見たりしないと。業績は調べたところでは問題ないみたいだけど。
ス:うん・・・。ヒョンスと二人でお留守番してる・・・。
ヨ:うん・・・。

ス:いつごろ、行くの?
ヨ:君の、パク先生の留学が決まってから。もし、あそこの大学に行くなら、住まいも通いやすい場所を選ばなくちゃね。
ス:・・・うん!




ヨ:さあ、荷造りするか! 前に進むしかないよな。
ス:うん。










そして、週末。
ヨンジョンの家に、引越し業者が入り、引越しの準備が始まった。


スワンの体調や急な引越しを考えると、多少お金はかかっても、引越し業者に頼もうとヨンジョンは言った。

ヨンジョンの部屋はもちろん、まだ荷物を残してあったスワンの部屋も同時に引越しとなった。

スワンの荷物の一部は、実家へ送ってもらい、残りはヨンジョンのマンションへ送る。

もともと、ヨンジョンの部屋の家具のほとんどは借り物だったので、そう大して引越しには時間がかからなかった。

荷物はトラックに積まれ、明日の朝、ヨンジョンたちのソウルのマンションに運ばれることになっている。

スワンたちは、荷物を見送り、部屋の掃除をして、ヨンジョンの車で、ソウルへ向かうことにした。





借り物の家具だけになった部屋には、もはや彼らの部屋のニオイはなかった。
ホテルのように、無機質な存在となった。




最後の仕上げの掃除をしていると、玄関でチャイムが鳴り、スワンを呼ぶ声がした。





ス:どなたですか?


スワンが出ていくと、そこにジョンアがいた。




ス:先輩・・・。
ジ:いよいよ引っ越すのね・・・。
ス:ええ。
ジ:うん。


ス:何かご用ですか?
ジ:・・・うん・・・スワン、私、研究所へ行くことになっちゃった・・・。
ス:・・・。

ジ:大学に見捨てられたわ。
ス:・・・。
ジ:あんなにソウル大出ってちやほやしてたのに・・・この年で、研究所。ジイサン、バアサンしかいないとこ。
ス:・・・そう・・・それは・・・。でも、そこへ、先輩は、ヨンジョンを送り込もうとしたのよ。



ジョンアとスワンが見詰め合う。



ジ:そうね・・・。
ス:彼に謝る?
ジ:どうやって? 頭を下げただけじゃ駄目でしょ?

ス:うん・・・。彼を侮辱したことは、公で訂正してもらわないとね。
ジ:・・・。スワンって強いのね。
ス:だって、大切な人のことよ。簡単には引き下がらないわ。



ジ:・・・。大学審議会のほうには私は行かないの・・・というより、行けないの。
ス:なぜ?
ジ:行っちゃいけないって。口止め。
ス:じゃあ・・・私たちが・・・ヨンジョンが左遷させられたり、私の留学が取り消しになった理由ってなんなんですか? (驚く)


ジ:彼は・・・海外研修に行くのを拒んで・・・スワンもそれに同調してやめたということみたい。もし、チェ先生が大学を続けてもいいと思えば、ただの海外研修に行ったということになるらしいわ。スワンはそれについて行ったと。



ス:まるっきりのうそね?
ジ:そうね。
ス:そんなうそつきの集団でも先輩は残るのね?
ジ:自分でも決められないの・・・。確かに、あなたたちを陥れたのは・・・私だけど・・・。


ス:・・・。
ジ:ごめんね、スワン。なんであんなことしちゃったのか、わからないの。よく考えないで、二人のことが・・・悔しくて。理事長のところへ電話しちゃったのよ。(泣きそうな顔をする)
ス:普通は、嫉妬しても、悔しくても、そんなことはしないわ・・・。

ジ:そうよね・・・。前に・・・ホントに、理事長に言い寄られたことがあって・・・それで、できるかもって思っちゃったの・・・。
ス:・・・バカ。



ジョンアがスワンを見つめた。


スワンはすっかり痩せてちょっと青白い感じではあったが、スワンの「バカ」には、温かさがあった。




ジ:ホントに、バカ・・・。
ス:そんなこと、先輩みたいな人がやっちゃ駄目よ・・・。
ジ:・・・うん・・・。



ジョンアが俯いた。
いつも強気の彼女だが、今日はとてもしおらしい。




ジ:結局、あなたたちに迷惑をかけて、自分で転んじゃった。
ス:・・・先輩のことはもういいの。ただ、ヨンジョンの名誉だけでも回復したいわ。
ジ:そうね・・・。


ス:ちゃんとやってよ。
ジ:スワン。
ス:ちゃんと、先輩の手で名誉回復してよ。
ジ:・・・。
ス:自分でやったことでしょ? 責任取ってよ。
ジ:・・・。
ス:ちゃんとやってよ。先輩は頭がいいんでしょ? そのくらい、できるでしょ? 今までだって、頑張ってきたんでしょ? やってよ。
ジ:・・・。(泣きそうになる)

ス:泣いてる場合じゃないわ・・・。
ジ:スワン・・・。



すっかり弱気になっていたジョンアだが、スワンの言葉にちょっと勇気づけられた思いがした。












研究室のチェックを済ませて、教務に二人分のカギを返したヨンジョンは、スワンの古巣のパク教授の研究室を訪ねた。



パ:来たか。
ヨ:先生。いろいろお世話になりましたが、今日でこことも、おさらばです。(笑う)
パ:そうか・・・。スワン君の大学のほうは今週中にはわかるから、ソウルへ電話するよ。
ヨ:よろしくお願いします。(頭を下げる)



研究室のドアが開き、ソンジュンが入ってきた。



ソ:ヨンジョンさん!
ヨ:お世話になりました。今日、引っ越しますよ。
ソ:そうなんですか! それは残念だ・・・。ソウルに行った折には、また楽しいお話を聞かせてください。(名残惜しそうな目をする)
ヨ:ええ。ありがとう。(微笑む)



パ:ヨンジョンくん、知ってるかい。ジョンア女史、研究所行きになったよ。
ヨ:え?
パ:大学が隠蔽に向かった。彼女は隠された・・・そして、真実もね・・・。

ソ:なぜですか?
パ:う~ん、一人の女の嫉妬で、理事長が動いたというのがマズイらしい・・・。そこで、ヨンジョン君が大学が指示した海外研修を断って、大学を辞めたということに収めたいらしい・・・。君のところへなんか電話でもなかったかね。

ヨ:ああ・・・先日、ここに留まる気はないかと。考え直してみないかという電話が入りましたが、断りました。そうしたら、学生たちには、私が海外研修に出るから休講になったという説明をしたと・・・。
パ:やっぱり・・・理事長は、自分がジョンア女史とスキャンダラスに取り上げられるのを回避するために、話の方向性を変えたんだな。


ヨ:ということは・・・。(考える)
ソ:理事長の親父には、「色気」があったわけですね・・・。
パ:うん・・・。(頷く)

ヨ:まいったなあ・・・。
パ:いずれにせよ、君のようないい青年を、スキャンダラスな噂の男に仕上げたままで、ジョンア女史がお隠れになるのはマズイな。そこが改善されないままだ。(困った顔をする)
ソ:それは許せませんよ・・・。

パ:うん・・・。



ミ:先生!(勢いよく部屋に入ってくる) あ、チェ先生! こんにちは。
ヨ:あ、こんにちは。(じっとミンシャを見つめる)
ミ:(ちょっと赤くなって)ジョンア先生の研究所行き、聞きました?
パ:もう聞いたよ。


ミ:なあんだ。真犯人が消えましたね。
パ:マズイ消え方だな。
ソ:逃がしませんよ。




ヨンジョン、パク、ミンシャがソンジュンを見る。




ソ:そうでしょう? ヨンジョンさんを苦しめておいて・・・。
パ:まあ、そうだが。
ソ:許せません・・・。



皆がその口調に驚く。



ヨ:あ、先生。私も時間なんで、まだ電話ででも相談に乗ってください。
パ:そうか。また、スワン君の件は電話するよ。
ヨ:よろしくお願いします。(頭を下げる)


ソ:ヨンジョンさん、お元気で。また、お会いしましょう!
ヨ:ええ、そうですね。ソウルへはお訪ねください。
ソ:はい! (しっかりと見つめる)





ヨンジョンが去った後、ソンジュンはドアをじっと見つめていたが、席に戻り、PCを開いた。




「真犯人を隠蔽しました。こうした大学の体質や、理事長のスキャンダルへの回避は・・・・」



ソンジュンが恐い顔をして、エンターキーを押した。





続く・・・




ソンジュンたら・・・・vv




2009/08/03 23:26
テーマ:【創】「アマン」第1部 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】「アマン」23





BGMはこちらで^^




BYJシアターです。

お元気でしたか?
本日は「アマン―夏の恋人」23部です。






ではお楽しみください。







母さんは言った。

スワン、幸せって実は私たちのすぐ近くにあるものよ。

父さんと母さんはね、幼なじみでいつも一緒だったけど、
そこに愛があることに気づかないでずいぶん長い間、回り道しちゃった・・・。

でもね、よく見たら、すぐ目の前に幸せがあったのよ。

おかしいわね。


あなたは夢が大きいから、いつも遠くばかり見ているけれど、
たまには、近くも見たほうがいいわ。

遠くばかり見ていても探せないこともあるのよ。






ぺ・ヨンジュン
チョン・ドヨン主演
「アマン―夏の恋人」23





ス:うう~ん、うう~ん・・・。
ヨ:大丈夫?


朝のトイレで、スワンは、便器の前に座り込んで、ずっと唸っている。
少しつわりのむかつきがあって、軽い気持ちで吐いたら、胃が痙攣したように、吐き気が治まらない。

朝だから、お粥程度で、吐くものなんてないのに、吐き気は止まる事を知らない。
そんなスワンに、洗面所にやって来たヨンジョンが気がついて、トイレのドアを開けた状態で背中を擦っている。



ヒ:おはよう・・・。どうしたの、お母様。(驚く)
ヨ:うん? 吐き気が止まんなくなっちゃったんだ。
ヒ:・・・。昨日も食欲なかったよね。
ヨ:ああ、そうだったね・・・疲れたんだろ。ここのところ、いろいろあったから・・・。

ヒ:・・・。
ヨ:どうする・・・今日はスワンがこんなだから、医者に連れていかなくちゃならないし・・・小学校への挨拶は明日にして、今日は普通に学校へ行くか?
ヒ:うん・・・。まだ、辞めるとか、先生にはぜんぜん言ってないよね?
ヨ:うん、まだこれからだから。
ヒ:じゃあ、普通に学校へ行ってくる。お母様、大丈夫? (心配そうに覗く)

ヨ:治まったら、医者に行くから。
ヒ:うん。お父様も一緒に行くの?
ヨ:車で送ったほうがいいだろ?
ヒ:そうだね。それで、安心かな・・・。じゃあ、学校へ行ってくるね。

ヨ:行ってらっしゃい・・・ああ、ヒョンス、変な噂が流れていたら、学校が途中でも帰っておいで。根も葉もない噂で苛められたら、たいへんだ。
ヒ:うん。そうする。
ヨ:カギはちゃんと持っていけよ。何かあったら、お父さんに電話を入れろ。
ヒ:うん。じゃあ・・・お母様、お大事に。ちゃんとお医者さんに行ってね。

ス:うん・・・。



最後に緑色の胃液まで吐いて終わった・・・。





ス:喉が焼けて痛い・・・胃も重いし・・・。


ヨンジョンが温いゆず茶をスワンに渡す。


ヨ:落ち着いたら医者に行こう。
ス:一昨日、行ったばかりだもん・・・。
ヨ:でも、吐き気を止めるとか・・・なんとか手立てがあるんじゃないの? 少なくても今、胃が重いのを治さなくちゃ。
ス:うん・・・。



スワンは、ソファに足を投げ出して、ゆっくりゆず茶を飲んでいる。


ヨ:明日でもいいんじゃないの? ジョンア女史は。彼女は毎日研究室に来ているんだから。
ス:早く話したかったんだけどなあ・・・。本当は会いたくはないの・・・。でも、一言、言いたいのよ。
ヨ:・・・今日でも明日でも変わらないよ・・・。それより、吐く時は抑え目に吐かないと、今日みたいになるよ。
ス:うん・・・。ヨンジョン・・・悔しくないの?
ヨ:大学には言うだけのことは言ったし・・・。後は、今後の自分たちの生活を大事に考えよう。
ス:そうだけど。このままだと、気持ちが収まらないの。


ヨンジョンがスワンの横に座った。


ヨ:スワンの気持ちはうれしいよ。オレについての誤解を正したいって気持ち・・・。でも、あいつと話して何が変わるかな。大学は、決定を変えるわけにはいかないし。それにオレたちだって、ここにずっといたいわけじゃないんだから。これからは、明日のことを考えようよ。
ス:・・・でも、私はいや。私は、ヨンジョンのこと、愚弄するやつなんか、許さない。
ヨ:・・・。わかった。自分の思ったことを話してくればいいよ。それで、スワンが納得するなら・・・。
ス:納得させる、ジョンア先輩に。自分のしたことがどんなに浅はかなのか。それは、ただの嫉妬に過ぎないのよって、わからせてやる。
ヨ:ホント、元気だなあ。(呆れる)
ス:でもねえ、喉も胃も痛いの・・・。(ちょっとシオラしい目をする)
ヨ:まったく!(笑う)









ヒョンスがランドセルを背負って、家族用の教員住宅を抜け、単身者用の寮の前を行き過ぎた。


ジ:ヒョンス君! ヒョンス君!


ヒョンスが後ろを振り返ると、後ろからジョンアが歩いてきた。


ジ:おはよう。(笑顔を作る)
ヒ:・・・。(ただ見つめる)
ジ:あら、どうしたのかしら、お口は。
ヒ:・・・おはようございます。


ジョンアが微笑んだ。


ジ:お父さんとお母さん、どうしてる? お母さんとは、まだ呼べないのかな?
ヒ:なんで、そんなことを聞きたいんですか?
ジ:・・・いきなり、2人とも大学を辞めちゃったから・・・・。あなたも知ってるわよね?

ヒ:・・・。(ドキドキして心配そうな顔をする)
ジ:私も心配してるの・・・。辞めるようなことじゃないのに・・・急に辞めちゃったでしょ? どうしたのかと思って・・・。


ヒ:・・・辞めさせたんじゃないんですか? (睨みつける)
ジ:・・・。
ヒ:・・・僕にはよくわからないけど、スワンさんが僕のお母様になってくれただけなのに・・・。
ジ:・・・。そうよね。それはおめでたい話よね・・・。(微笑む)

ヒ:それなのに・・・。喜ばない人がいたんでしょ?
ジ:・・・喜ばないなんて・・・。(ちょっと困る)

ヒ:だって、お母様が楽しみにしてた留学もなくなっちゃったし・・・。
ジ:・・・楽しみにしてた?
ヒ:お母様の夢だったのに・・・。(じっと見つめる)
ジ:・・・。(見つめる)
ヒ:お父さんも僕も一緒に楽しみにしてたのに・・・。かわいそうです。
ジ:・・・・。(唇を噛む)


ヒ:大学の人は意地悪です・・・。
ジ:・・・ホントね・・・。
ヒ:あなたもそう思いますか?
ジ:・・・そうね・・・。


ヒ:お父さんだって、皆に勉強、教えられなくなっちゃったし・・・。
ジ:・・・。それは・・・。
ヒ:お父さんは、僕にお母さんをくれただけです。
ジ:・・・・。
ヒ:ひどい人の集まりです。
ジ:・・・・。ヒョンス君・・・大人の世界にはいろいろあって・・・。
ヒ:あなただって、お父さんやお母様とお友達なら、助けてくれてもよかったはずです。
ジ:・・・それは・・・。

ヒ:学校へ行くので、失礼します。


ヒョンスが走っていく。


ジ:ヒョンス君! スワンは今、家にいるわよね?
ヒ:(立ち止まって)・・・でも今、具合が悪いんです・・・。お父さんが大学を辞めてから、具合が悪いんです。
ジ:・・・そうなの?
ヒ:・・・お父さんが、疲れが出たんだろうって・・・。
ジ:・・・。そう・・・。
ヒ:じゃあ。



ヒョンスは走っていってしまった。




ジョンアは、今回の件は二人にお灸を吸えるつもりだったのに、二人ともあっさり大学を辞めてしまった。

そんなに大事にしなくてもよかったのに・・・。

ヒョンス君のために結婚したのかしら・・・。
急な結婚、その真意って、それ?



ジョンアは、来た道を引き返して、家族用教員住宅のほうへ向かった。確か、チェ先生の家は、この先の棟だった。
ちょうど、ジョンアがヨンジョンたちの棟に差し掛かると、建物からヨンジョンに付き添われた、スワンが出てきた。

つい最近見かけたスワンに比べて、ちょっと青ざめて痩せている。
スワンの横をヨンジョンが支えるように歩いている・・・。




ショックだったのかしら・・・留学のこと・・・。
だって、あなたは結婚したのよ・・・。
いい気味って思ったけど・・・あんなに憔悴しちゃうなんて・・・。



ヨンジョンに抱き抱えられるように駐車場に行ったスワンは、ヨンジョンに車に乗せてもらい、出かけていった。




医者でも行くのかしら・・・。
これで、寝込んじゃったりしたら・・・私のせい?

違うわよね。
あの人たちの、身から出た錆よね・・・。


身から出た錆・・・。

スワンがしたこと・・・ヨンジョンと結婚したこと。
ヨンジョンがしたこと・・・スワンと結婚したこと・・・。


どこがいけなかったのかしら・・・。

私に何も言わなかった・・・。
それだけだったかしら・・・うううん、もっと理由があったはず・・・。
もっと、理由があったわよ。

じゃなくちゃ・・・じゃなくちゃ・・・私はどうしたらいいの・・・。
理由はいっぱい、あったはずよ。

思い出さなくちゃ。
たくさん、思い出さなくちゃ!










ス:なんかちょっと大げさね。(ヨンジョンを見て微笑む)
ヨ:でも、腹が減って歩けないだろ?
ス:まあね。歩くと、ちょっと胃が痛いの。
ヨ:医者で、つわりの対処の仕方とか、吐き方とか聞いてきたほうがいいよ。じゃないと、これからいつもこうなるよ。
ス:そうね。ああ、喉が痛い・・・。でも、ゆず茶でちょっとよくなった。(笑う)
ヨ:(スワンの顔を見て)・・・。君はノンキだね。(笑う)行くよ。


二人を乗せた車は隣町の産婦人科へと向かった。








昼、隣町の食堂で、スワンとヨンジョンがお粥を食べている。


ヨ:これで、普通って驚いたよ。つわりの重い人なんて大変だね。女に生まれなくてよかったよ。
ス:でしょ? (笑う)もう、2人の女に子供を生ませるんだから、あなたは罪な男よ。
ヨ:やな言い方だね・・・。その薬、漢方?

ス:みたい。でも、今日は点滴もしてもらったから、よかったわ。ヨンジョン、ありがとう。やっぱり、お医者さんに行ってよかったわ。なんか元気が出てきたみたい。
ヨ:・・・。いつだって、君は元気じゃない。
ス:まあね。でも、この喉の痛さは少しの間、我慢しなくちゃだめだわ。
ヨ:うん・・・。


ス:今日は休んで、明日、ジョンア先輩のところへ行くわ。ヨンジョンへの誤解はちゃんと正さなくちゃ。
ヨ:留学についてはいいの?(料理から顔を見上げる)
ス:う~ん、それはね・・・。結局、私も赤ちゃんがいるから・・・あんまり先輩を責められない・・・。それに、あっちへ行けば、お父さんがスポンサーで、大学院に行かせてくれるそうだから、そっちのほうが自由でいいかな。

ヨ:そうだな・・・。自分の生活に合わせて、学べるからね・・・。


ス:うん・・・そうやって考えると、私って幸せよね。(笑う)
ヨ:うん・・・。(料理を食べる)


ス:だって、夢だったことが、ヨンジョンと知り合ってどんどん実現していくから。恋人もいなくて、留学の夢もなかなか実現しなくて・・・ちょっと行き詰っていた感じだったのに。・・・私ね・・・。ソウルからこっちへ帰ってきた時・・・。ヨンジョンに言伝してこなかったこと・・・ものすごく悔いたんだ・・・。(ちょっと下を向く)あのまま、ヨンジョンが大工さんでも、私は好きだった・・・。それはね、こっちへ一人で帰ってきた時、気がついたの・・・。夏を一緒に過ごしたのに、あなたの連絡先もわからなくて、ちょっと気持ちが疑心暗鬼になったけど・・・。ヨンジョンと連絡がつかなくなって、やっと気づいたの。ヨンジョンの職業とか、そんなことは関係なく・・・あなたが好きで好きでたまらなかったんだって・・・。あなたには、謎めいたところがあったけど・・・私はあなたが好きで仕方がなかったんだって。だから・・・この恋を捨てちゃいけなかったんだって・・・とっても悔いたの。
ヨ:・・・そう・・・。(顔をじっと見る)


ス:だからね、今の状況を考えると、とんでもなくハッピー。(笑う)
ヨ:・・・うん・・・。でも、相手が殺人鬼じゃなくて、よかったなあ。(笑う)
ス:ホント!

ヨ:君は一直線でいいけど、そういうとこ、危ないよね。
ス:でも、もういいでしょ? もう他の人を探さなくていいんだから。
ヨ:まあね。(笑う)





スワンは一日ゆったりと休み、翌日、ジョンアの研究室のドアを叩いた。


ジ:はい。
ス:スワンです。
ジ:・・・どうぞ・・・。


スワンが中へ入っていく。


ジ:こんにちは。
ス:こんにちは。
ジ:なんか、体調が悪いらしいって聞いたけど、もう大丈夫なの?
ス:ええ。ちょっと、胃の具合が悪かっただけです・・・。仕事がなくなったおかげで、ゆっくり休めたので、元気になりました。
ジ:そう・・・。それはよかったわ・・・。今日はどうしたの? 残務整理?
ス:それもありますけど・・・先輩とちゃんとお話がしたくて。

ジ:何かしら。
ス:先輩・・・ホントのこと、教えて。
ジ:なあに?

ス:今回の本当の理由。私の留学が取り消しになって、ヨンジョンが研究所送りになった理由。
ジ:そんなこと、私に聞かれても・・・。
ス:変じゃないですか? とっても。ただ結婚しただけなのに。特に、ヨンジョンの授業は人気もあったし・・・。そんな先生が結婚したって、ホントは喜ばしいことなのに・・・私と結婚したばっかりにこんなことになっちゃって。
ジ:・・・。

ス:先輩。おかしいと思いませんか? 大学に迷惑なんて、かけてませんよ。
ジ:・・・。
ス:ねえ!

ジ:上の方が決めたことでしょ。私にはわからないわ・・・。
ス:そうなの?
ジ:・・・ええ・・・。


ス:教務課では、ヨンジョンの前の結婚と、今度の私との結婚の話題で持ちきりですよ。
ジ;そうなの?
ス:ええ・・・。
ジ:・・・知らなかったわ。


ス:なんか・・・ヨンジョンが一歩間違えると、変な男みたいな言い方で・・・。彼、前の奥さんもレイプなんてしてませんよ。
ジ:スワン!


ス:あなたが流した噂はそういうことです。彼をそういう男に仕立てあげているのよ。
ジ:スワン!


ス:ひどい人だわ。
ジ:私じゃないわよ・・・。

ス:先輩は、彼が好きだったんでしょ? だったら、なぜ、そんな彼の人格に問題があるような発言をするんですか! 学生たちが聞いたら本気にします・・・。彼の未来を壊して楽しいの?
ジ:私じゃないわ!


ス:へえ・・・違うんだ・・・。
ジ:・・・。

ス:でも、私は先輩の噂は、本気にしましたよ・・・たぶん、学生たちもね。
ジ:噂? (なあに?)

ス:そう・・・。実は理事長とは深い関係にあって、先輩が気に入らない人は皆、左遷されちゃうっていう噂。・・・確かにそうね・・・。ヨンジョンも、私もそうだもの。その噂はホントね。
ジ:そんなヒドイ! そんなこと、うそよ。

ス:・・・でも、私は信じますよ。今まで先輩が一人だったというのは、そういうことだったんだなって。だから、男の人は手を出さない・・・。
ジ:うそよ、そんなの、うそよ!
ス:でも、事実、先輩が理事長に電話して、ヨンジョンは教職から外されたのよ。それも、先輩がヨンジョンに振られたから、告げ口したってことになってますよ。
ジ:スワン!

ス:ほら、見た通り、事実でしょ?
ジ:・・・・。
ス:噂というものは、そういうものです。この話、誰が言い出したかは知りません・・・。でも、今日、教務課に行ったら、皆、その噂で持ちきり。先輩が私たちを嫉妬して、彼氏に頼んで、辞めるように仕向けたって。

ジ:もう! ヒドイわ!

ス:だから、人を陥れるものではありません・・・。自分の足をすくわれるわ。
ジ:スワン・・・。


ス:私、先輩に会って、ちゃんと結婚の挨拶をしたかった・・・。私をここの大学に呼んでくれたのも先輩だし・・・ヨンジョンだって、子供を抱えて、建築家としての生活の多忙さに頭を痛めていた時、ここの大学の話があって、心機一転、ゆっくり子育てをしながら、教職につくのもいいかなと思って、ここまでやってきたのよ・・・。だから、先輩には恩義があったのに・・・。
ジ:・・・。

ス:全部、壊れちゃったわ。
ジ:・・・スワン・・・。

ス:お元気で。
ジ:スワン・・・。
ス:お世話になりました・・・。
ジ:・・・。
ス:でも、ヨンジョンのことは、許せません・・・。あの人は、とてもやさしくて思いやりのある人です。そんな変な男なんかじゃありません。彼の噂が広がり続けたら、私たち、先輩や大学を告訴します。
ジ:スワン!
ス:それくらいのことをしたのよ。・・・先輩だって、理事長の二号さんのままでいいの?
ジ:私は違うわ。

ス:悪意のある噂はそんなものです・・・。先輩は優秀で、ここではエリート、幹部候補生だけど・・・それと同時に、二号さんでもあるのよ・・・。人は先輩の血のにじむような努力よりそっちのほうに興味がいくものよ・・・。
ジ:スワン!

ス:私たちはもう、ここから出ていくけど、先輩は、これからここで戦っていくのね。頑張ってね。
ジ:・・・。



スワンは、じっとジョンアを見つめた。
ジョンアは何かいいたそうな目をしたが、それを振り切るように、部屋を出ていった。




スワンは去っていってしまった。

ジョンアは一人残された・・・。
考えてみれば、ジョンアにとっての友人・・・それは、スワンだったのに・・・。

こんな田舎の大学で、周りはジョンアより出来の悪いやつばかり・・・。
その愚痴を聞いてくれたのが、スワンだったのに・・・。


自分の嫉妬から、スワンを失ってしまった・・・。


そうね・・・あなたたちはただ結婚しただけよ・・・。でも、チェ先生は、私の好きな人だったの。
まだ、チェ先生が選んでくれたスカーフを捨てられないの・・・。

よく私に似合っているのよ・・・何気なく、選んだものだけど、とても似合っている・・・
彼は、ちゃんと私を見てくれたのよ。

私の嫉妬さえなければ、もしかしたら、あなたたち夫婦と素敵な友人になれたのかしら・・・。


理事長さんの愛人なんて・・・そんなの、私じゃない!
・ ・・チェ先生、ごめんなさい・・・やっぱり、あなたはいい人だったのに・・・。




ジョンアがガックリして、イスにもたれていると、電話が鳴った。


ジ:もしもし。
教:ジョンア君。たいへんなことになったよ。
ジ:なんですか?
教:大学審議会のパワハラ・セクハラ調査会からの呼び出しが学長のほうにあったんだよ。
ジ:なんですか?
教:・・・チェ先生の不当な人事異動についての調査だそうだ。
ジ:・・・。
教:内部告発があった・・・。この学内に報告したものがいるんだよ。
ジ:チェ先生ですか?
教:いや。あそこは、記名式だから、本人ではないことはわかっている・・・。
ジ:そんな・・・。
教:理事長と君の関係も、調べるらしい・・・。
ジ:先生! 私は、理事長とはなんでもありません!
教:わかっているが・・・マズイ事になったよ。









ス:ねえ、ヨンジョン・・・。かなり、意地悪なこと、言っちゃった。
ヨ:反省するぐらいなら、言わなければよかったのに・・・。


シャワーから出たヨンジョンがベッドに入ってきた。


ス:うん・・・。でもね・・・。先輩の噂も、先輩の耳に入れておかないと、先輩だって困るでしょ?
ヨ:まあね・・・。(仰向けに寝る)
ス:ヒドイ噂だけど。あの人は、仕事一筋で生きてきたのに、ちょっとかわいそう。皆からちょっと恨まれていることも確かだから、どうするのかな・・・。
ヨ:助けるの? (スワンを見る)
ス:助けようがないのよ・・・。でも、ここでやっていくのは、先輩もちょっと辛いかも。


ヨンジョンがスワンを引き寄せるように抱きしめた。
スワンの顔を見て、にっこりとした。


ヨ:でも、ありがとう。オレのことを言いに行ってくれて・・・。奥様はやさしいね。(髪を撫でる)
ス:でしょ?(微笑む)

ヨ:ふ~ん。

ヨンジョンがスワンをキュッと抱きしめて、キスをした。
そして、頭を撫でていた手が胸の辺りを触った。


ス:・・・。
ヨ:・・・。(にっこり)
ス:だめよ・・・。もうお腹に赤ちゃんがいるんですもん・・・。無駄な努力はしないで。
ヨ:・・・わかった・・・。


ヨンジョンがスワンを放して横に寝転んだ。
あまりにあっさりヨンジョンが引き下がったので、スワンは物足りなくなる。


ス:お父様・・・。
ヨ:いいよ、もう無駄な努力はしないよ。

ス:何よ。家族のためなら、無駄だと思っても努力して・・・。
ヨ:どうしたいの? (どっちだよ)

ス:やっぱり、来てほしいの。
ヨ:ふ~ん・・・。(横目で見る)
ス:ヨンジョンお父様・・・。
ヨ:・・・。
ス:すねたあ?
ヨ:そりゃ、そうさ・・・。
ス:・・・わかった・・・もう寝るわ・・・。


ヨ:ずいぶん、あっさりしてるじゃない?
ス:だって、努力を惜しんでおいでだから・・・。

ヨ:君、ちょっと意地が悪くなったね。
ス:そうかしら・・・。
ヨ:かわいげがなくなったね・・・。(後ろを向いて寝る)


ス:ヨンジョン・・・。ねえ、ヨンジョン・・・? ヨンジョンたら!
ヨ:その気になった? (顔だけスワンを見る)
ス:なってるわよ。
ヨ:そう・・・。


ヨ:じゃあ、家族のために頑張ろう!(体の向きを変える)
ス:そうよ。お父様はエライわ。

ヨ:お母様もやさしいねえ。
ス:そうでしょ・・・あなたの子供たちにはやさしいのよ・・・。
ヨ:・・・。(笑う)


ス:でも、ヨンジョン・・・。私は、あなたが一番、好き・・・。


ヨンジョンは幸せそうに笑って、スワンを抱きしめた。






翌日、スワンのもとに電話が入った。


ス:もしもし。
ミ:先輩。ミンシャです。なんか、工学部、たいへんなことになっちゃいましたよ。
ス:どうしたの?
ミ:なんか、大学審議会っていうところから、学長から教授からお呼び出しがあって・・・。来週、皆ソウルへ行くらしいです。
ス:ふ~ん。なんのために?
ミ:パワハラ・セクハラ調査会からの呼び出し。
ス:ふ~ん・・・。
ミ:先輩たちのことですよ。チェ先生の不当人事異動及びスワン先輩の留学取り消しについてですって。
ス:ええ! 誰が連絡したの!




2人のことが大きな事件になった。
ヨンジョン、スワン・・・そして、ジョンアの運命は。









続く。



2009/07/31 00:14
テーマ:【創】「アマン」第1部 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】「アマン」22





BGMはこちらで^^



BYJシアターです。
本日は「アマン―夏の恋人」22部です。



ではお楽しみください。

(今度の土日はブログをお休みしますので、続きは、月曜日となります^^)





母さんは言った。

スワン、幸せって実は私たちのすぐ近くにあるものよ。

父さんと母さんはね、幼なじみでいつも一緒だったけど、
そこに愛があることに気づかないでずいぶん長い間、回り道しちゃった・・・。

でもね、よく見たら、すぐ目の前に幸せがあったのよ。

おかしいわね。


あなたは夢が大きいから、いつも遠くばかり見ているけれど、
たまには、近くも見たほうがいいわ。

遠くばかり見ていても探せないこともあるのよ。





ぺ・ヨンジュン
チョン・ドヨン主演

「アマン―夏の恋人」22






ス:もう・・・勝手に・・・。(まいった・・・)
パ:まあまあ、怒りなさんな。男にはそういう時があるもんだ。
ス:どういう時ですか?
パ:勝負しなくちゃならない時がある。こっちへ向かってるんだろ?
ス:ええ。とりあえず、ここで話そうということになって・・・。
パ:そうか。


研究室のドアが開き、イ・ソンジュンが入ってきた。


ソ:こんにちはあ。あれ! スワン先生!
ス:お久しぶり!
ソ:ここにいたのかあ・・・。
ス:なんで?
ソ:先生、今、教務課で話題の人ですよ。ご主人がいきなりやって来て、二人とも退職しますって言ったって。
ス:ええ! 教務にまで行っちゃったのお・・・もう、駄目だ。

パ:まだ、未練があったのか?
ス:というより、もっと穏便にできないのかしらって・・・。ふ~。
ミ:先輩も大変ですね。


パ:それにしても、一日で手の平を返したように、左遷するなんて、これは大問題だぞ。我々だって、誰かが理事長に気に入らんて、直談判したら、この席にはいられないわけだから・・・。
ミ:ホントですね・・・。



イ・ソンジュンは、皆の話を聞きながら、自分の席に着く。

しばらくすると、ヨンジョンがやってきた。




ヨ:失礼しま~す。(ドアを開けてニコやかに入ってくる)
ス:ヨンジョン! もう!


スワンが怒ったような心配したような顔で、入ってきたヨンジョンを見つめた。


ヨ:・・・ごめんな。
ス:・・・バカ・・・。


パ:まあまあ、スワン君も感情的にならないで。とにかく、これはヨンジョン君には・・・。あ、挨拶がまだだったな。パク・ヘソンです。
ヨ:あ。チェ・ヨンジョンです。スワンがいつもお世話になってます。
ミ:スワン先輩の大学の後輩の、ハン・ミンシャです。ここの助手です。
ヨ:どうぞ、よろしく。



ソ:あのう・・・僕もご挨拶を・・・。
ス:あ、ヨンジョン、こちら・・・。
ソ:イ・ソンジュンです。
ヨ:あ、いつもお話はスワンから・・・。
ソ:え、そうなんですか? いやあ、どんな? (ちょっと赤い顔をする)


ヨンジョンは、ソンジュンを見て噴出しそうになった。



もう、あんな変わり者に、パク教授の後釜を取られちゃったのよ・・・あいつ、ドクターは持ってるけど、ものすごい変わり者だもん・・・ハンサムなんだけど・・・なんか、雰囲気がね・・・それでも、出世コースだもん・・・。



ソンジュンはどんな言葉が出てくるか期待して、ヨンジョンの目を見つめた。


ス:ヨンジョン!(キツイ目で横から睨む)
ヨ:(笑うのをやめて)や、失礼! とても優秀な方だとお聞きしてたものですから・・・。あなたがそのイ先生なのかと思って。今、お顔を拝見してちょっとうれしくなって・・・。
ソ:(顔を赤らめる)そうですか・・・スワン先生、ありがとう・・・。(スワンの方を見る)

ス:・・・どういたしまして・・・。


スワンがソンジュンの顔を見ると、トロケちゃいそうな瞳でヨンジョンの目を見つめて、ソンジュンはにんまりとした。
ヨンジョンのほうはというと、そんなソンジュンに向かって今にも噴出しそうに、ニコニコと笑っている・・・。

スワンとパク教授と、ミンシャが見つめ合う・・・。


もしかして・・・ソンジュンて・・・。


パ:君のご主人は人気があるなあ。(笑う)
ス:ええ、まあ・・・。(バツが悪そうに笑う)


パ:で、どうするんだ? これから。(ヨンジョンを見る)
ヨ:ええ。


二人の会話にスワンが割って入る。


ス:もう、ヨンジョンたら。急に辞めるって言っても、ヒョンスの学校は、どうするつもり?


スワンが咎めるように、ヨンジョンを見つめた。


ヨ:学校があるから、ぐずぐずできないだろう? 学校の噂っていうのがあるから・・・。前だって、オレとジョンア女史の噂が流れてたし。
ス:まあね・・・。でも、大学を告訴なんてしないでしょう? (心配そうに見つめる)
ヨ:さあ・・・。(首をかしげて、スワンをじっと見る)まあ、そんなことにお金を使うのは、勿体無い・・・。でも、はい、そうですかとは言えないだろう。ちょっと、脅かさないと・・・。
パ:その通りだ。チェ君・・いや、ヨンジョン君、こっちに座りたまえ。君たちはなかなかいいカップルじゃないか。爽やかな感じがするぞ。
ス:ありがとうございます。(ヨンジョンを見てうれしそうにクスッと笑う)






ソンジュンはじいっとヨンジョンを見つめてから、自分のデスクに戻り、PCのホームページを開く。


大学審議会・・・。

会員番号2089 イ・ソンジュン

エンター。

パワーハラスメント・セクシャルハラスメントについて・・・。

実体報告及び調査依頼の項目を開き、書き入れる。


●●市●●大学工学部建築学科 チェ・ヨンジョン助教授に対する大学側の不当な人事異動について。

氏が同大学講師と再婚した件につき、不当な人事異動がなされました・・・。
かねてより、交際があった講師との再婚の結婚届を提出後、同氏は助教授の席を追われ、研究所勤務を申し渡されました。両人は、大学奉職以前よりの付き合いで・・・・・・。これは、同建築学科同助教授ジョンア女史の嫌がらせに端を発していることは明らかであり、同女史は、チェ氏に対して同僚以上の好意を持ち・・・・チェ氏を中傷・・・理事長という権力に・・・。また、再婚した同講師も大学のスカラシップを・・・・。

以上、同学部内において、パワーハラスメント・セクシャルハラスメントが公然を行われたことをお知らせします。


エンター。

OK・・・・。







ソンジュンはPCを閉じてまたパク教授の横に行って座り、肯きながら教授の話を聴く男のキレイな横顔を見つめた。


ス:すぐに引っ越すの?
ヨ:教務課で聞いてたら、今月中はまた教員住宅を借りてていいって。だから、必要なものだけを持って、後は引っ越し業者に頼もう。(スワンを見る)
ス:だって、高いじゃない・・・。
ヨ:でも、オレ一人ではムリだよ。スワンの部屋もあるし。
ス:私だって・・・。
ヨ:今はあまり力仕事しないほうがいいよ。(スワンに言い聞かすような目をする)
ス:・・・。



ミンシャがヨンジョンと一緒にスワンを見た・・・。


パ:そうだな・・・。この際、早めに出ていったほうがいいかも知れんな。そのほうがヒョンス君の為かもしれない。ここは狭い街だから。ヨンジョン君、こっちのアメリカの大学のほうの返事はまだなんだ・・・。まあ、善処してくれるとは思うが・・・。
ヨ:ありがとうございます。全てが思い通りにうまくいくなんて、そんな虫のいいことを考えてはいけませんが・・・もしもの時はアメリカに行ってから、もう一度出直してもいいと思っています。 な、スワン?
ス:そうね・・・。

パ:スワン君、いいダンナだ。しっかり付いて行きなさい。うん。
ス:はい・・・。(パク教授を見る)


ミ:先輩・・・体調が悪いの・・・?
ス:・・・うううん・・・別に。大丈夫。
ミ:・・・そう・・・。

パ:じゃあ、壮行会をするか! ヨンジョン君とスワン君の。いや、結婚を祝う会だな。じゃあ、皆で飯を食いに行くか! (立ち上がる)

ソ:先生! 僕もお供します。
パ:(一瞬驚くが)そうか・・・じゃあ、皆で行こう!


ソンジュンは、皆とツルむというのが苦手の上、特別スワンとも仲がよかったわけではないから、正直、パクもスワンもミンシャも内心驚いた。







研究室を出て、レストランへ行くまで、ソンジュンは、教授とヨンジョンにぴったりくっついて歩いている。


ミ:(3人の後ろ姿を見て)先輩・・・。変ですよねえ。ソンジュンって、あっちの方面の人だったのかしら・・・。
ス:かもねえ・・・。

ミ:チェ先生、ソンジュンに対しても笑顔ですね・・・。わかってないのかな。
ス:ホント。
ミ:そっちの気、ありですか?
ス:・・・。ミンシャ・・・もう、セクハラで傷ついてるんだから、それ以上言わないでよ。(ちょっと睨む)
ミ:ごめんなさい。
ス:ふん。(笑う)でも、そうだったりして・・・。
ミ:せ~んぱい!(笑う)







レストランでも、ソンジュンはヨンジョンの隣に陣取って座っている。 スワンとミンシャが前の席からヨンジョンたちを監視している。

横からミンシャがスワンを突く。
二人は、ヨンジョンとソンジュンの様子に目が釘付けで、料理は食べているものの、目は両者をじっと見つめている。



ミ:やっぱり、取られましたね・・・。
ス:・・・うるさい!
ミ:あいつって・・・そうなのかなあ・・・なんか、興味が沸いてきちゃった。
ス:やあね。そんなことに興味なんて持たないの。バカみたい・・・。もう・・・。(そう言いながらじっと見つめている)


ヨンジョンがそんなスワンの視線に気がついて、笑ってスワンを見た。


ヨ:もっと栄養のあるものを食べたほうがいいよ。
ス:勝手でしょ。(小さな声で囁く)

ミ:(耳元に囁くように)なんか、お父さんみたいですね。保護者みたい。いいなあ。(笑う)
ス:もう、やだあ。

ミ:妬ける?
ス:・・・すごく・・・。
ミ:やっぱり・・・。


パ:おお、スワン君。そんな目で新婚のダンナを見るもんじゃない。ヨンジョン君、君たちは新婚なんだ。仲良くしなさい。
ヨ:(笑う)はい。
パ:スワン君もね。怖い顔してるよ。
ス:ふ~ん。


パ:まあ、とにかく、少しは脅しを使ったほうがいいだろうな。実際、へんなデマを信じてしまう人間というものはいるものだ。
ソ:でもやはり、こういうことはちゃんとしたほうがいいですよ。これは、パワーハラスメント、プラス名誉毀損です。
ヨ:そうですよねえ・・・。(肯く)
ソ:そうです。ヨンジョンさん。(なぜか名前で呼んでしまう)ここは毅然としたほうがいいです。(しっかりと見つめる)
ヨ:あ、はい。



ミ:ヨンジョンさんて呼びましたよね?
ス:・・・呼んだ・・・ふ~。


ヨ:スワン、どうしたの? (スワンの顔色が浮かないのに気づく)君のチームの皆が励ましてくれてうれしいじゃないか。
ス:ホント・・・。(気のない言い方)

パ:スワン君。これから二人の人生の旅が始まるわけだ。全く、ロマンチックだ・・・。好きな人と、世界を股に人生の旅を続ける・・・。素敵な結婚生活を送りたまえ。
ス:はい・・・。
パ:しかし、ヨンジョン君はいい男だな・・・。やさしくて、力持ち。男も惚れそうだ。なあ、ソンジュン。
ソ:まさに、その通り。(肯く)


ミンシャが噴出した。










教員住宅のヨンジョンの部屋で、ヨンジョンは夕食の準備をしている。



ヨ:食べたくないって、なんか食べなくちゃだめだよ。
ス:でも、もうお昼でお腹いっぱい。それに、このレモン漬けがあれば十分。(笑う)
ヨ:少しでも、身になる物を食べたほうがいいよ。
ス:じゃあ、チゲのお豆腐だけは?
ヨ:(スワンの顔を見る)まあ、いいか。


ヨンジョンはどんどん野菜を切ったり煮炊きの準備をしている。
スワンはちゃっかりキッチンに背の高い椅子を持ってきて座っている。




ヨ:今日の昼はどうしたの? ずいぶん怒った顔してたじゃない?
ス:だって・・・ソンジュンと仲良く話してたでしょ?
ヨ:それが?
ス:なんかねえ・・・。
ヨ:なんだよ。
ス:あいつがさあ・・・ヨンジョンにちょっと気がありそうだったから。
ヨ:・・・バカ。男だよ。
ス:そんなことはわかってるわよ・・・でもね。
ヨ:(笑う)おかしいよね、君は、ホントに。




ス:ヨンジョン・・・ごめんねえ。もう少ししたら、ちゃんとやるから。ちゃんと家事をするから。
ヨ:これからは時間があるからね。どんどんやってください。(野菜を切っている)
ス:わかってるって。(笑う)でも、今日は、洗濯はやったから許して。
ヨ:わかった・・・。でも、アイロンはオレがかけるんだろ?
ス:やります! やるって!
ヨ:襟を上手にかけてね。
ス:OK!
ヨ:・・・やっぱり、シャツは自分でかけるよ。
ス:信用してないわねえ・・・。
ヨ:まず、自分ので練習してから、オレのをかけて。(笑ってスワンを見る)




ス:もうすぐここも出ていくのね・・・。なんか寂しいな。
ヨ:そうかい? (話しながらも手は動いている)
ス:うん。初めて・・・ヨンジョンと一緒になったところだもん・・・。
ヨ:そうだね。・・・あれから、ジョンア女史と話、した?
ス:うううん・・・なんか話す気にもなれなくて・・・酷すぎて・・・。でも、自分でやってることがわかってるのかなって、ちょっと思ったりするの・・・。全体が見えてないような・・・。大学のことを考えると、こんな学期の途中で担任が変わってしまうなんて、学生には困ったことでしょ? 全て私たちだけのせいにもできないんじゃないかな・・・。他の先生たちはどう思ってるのかしら。


ヨ:さあね。そのうち、全体会議で、問題になるんじゃないの。(冷蔵庫からキムチを出す)
ス:あ、そのキムチ、食べたい!
ヨ:・・・。そういうことには目が早いね・・・奥さんは。
ス:うん・・・。(キムチをもらう)


ヨ:大学を訴えるかどうかは、ソウルに帰ってから決めようと思ってるんだ。
ス:え! 本気なの?
ヨ:名誉毀損の部分をね・・・。まあ、大学時代の友達に聞いてみるよ。ただ、時間がかかることや、お金がかかることはあんまりしたくないけど・・・。
ス:うん・・・。ヒョンスの学校はどうするの?


ヨ:そうだなあ・・・。(手を止めて考える)ソウルに帰ったら、アメリカンスクールを探してみるか。どうせ、短い期間だし、そんなところへやってもいいだろう・・・。家でちゃんと英語、教えてやってよ。それはお願いね。
ス:うん、わかった。任せなさい!


ヨ:オレの仕事の話も煮詰めないとね。でも、幸い、パク先生の言ってた大学なら、場所的にはピッタリだから、ジェイムスの会社に勤めても、同じ所に住めるし。その大学が駄目なときは、今度住む家から通える大学を探して。それでいいよね?
ス:うん・・・大学は選べないってことね?
ヨ:仕方ないじゃない。君は、ヨンジョン・ブランドを選んじゃったんだから。
ス:うん・・・。
ヨ:いいよね?
ス:いいよ。・・・ヨンジョンと一緒が一番だから・・・。ずっと一緒がいいから・・・。

ヨ:(笑う)さあ、炒め物をするからどいて。
ス:わかった。
ヨ:キムチばっかり、食べてるんじゃないよ。全く、偏食だなあ・・・。
ス:だって、そういう気分なのよ・・・。


ヨ:つわりが治ったら、普通の料理が出てくるんだろうな・・・ちょっと心配・・・。(笑う)
ス:もう! ソウルに引っ越したら、母さんに習うから。ね! ね! それでいいでしょ? ねえ?




ヒ:宿題、終わりました。お父様、お母様。
ス:お疲れ様です。ねえ、座って、英語の勉強でもしてようか。お父様が夕飯の支度をしている間。
ヒ:あ、それ、いいかも。お母様が教えてくれるの?
ス:YES!
ヒ:じゃあ、教えてください。(笑う)

ス:お父様、二人で英語の勉強をしてきますね。
ヨ:お願いします。(笑う)








3人で夕食を取っているが、スワンはチゲの豆腐しか食べていない・・・。


ヒ:お母様、こっちのもおいしいよ。
ス:うん・・・今日はこれでいい・・・。


ヒョンスが心配そうにスワンを見る。



ヨ:ヒョンス。今日は、おまえに重大な話があるんだ。
ヒ:何?

ヨ:うん・・・。2つあるんだけどね。一つは、今日、お父さんは大学を辞めたよ。
ヒ:え? (驚く)
ヨ:スワンもね。
ヒ:なんで・・・だって、3月にアメリカへ行くんじゃなかったの?
ヨ:それがね・・・お父さんたちの結婚に反対する人たちがいて・・・今まで通りの仕事が続けられなくなったんだよ。

ヒ:なんで?
ヨ:う~ん・・・大学の中では、簡単に結婚しちゃいけなかったみたいなんだ・・・。
ヒ:・・・そんなあ・・・。

ヨ:だから、大学は辞めた。オレたちにはアメリカへ行くという夢があるからね。それが早く実現するだけだよ。
ヒ:でも、スワンさん・・・お母様の留学は?
ヨ:それも・・・意地悪をされちゃったんだ。留学するのに結婚するなんてって・・・。それで、ちょっと行く場所が変わった。大学の紹介の所じゃなくて、スワンの文学部の時の教授の紹介してくれる大学になりそうなんだ。
ヒ:でも、留学はできるんだ。よかったね、お母様。
ス:うん・・・たぶんね・・・。


ヒ:大学って意地悪な人がいるね・・・。
ス:・・・うん・・・。
ヒ:・・・僕の学校も変わるってことだね?

ヨ:うん・・・ごめんよ。おまえにはホントに悪いと思っているんだ・・・。


ヒ:いいよ・・・。ここは・・・同じ大学に勤めている人の子どもばかりで・・・暮らしにくかったから・・・。
ヨ:・・・・。(驚いてヒョンスを見つめる)
ス:そうだったの? (驚いてしまう)


ヒ:うん・・・成績が出ると、皆で噂し合う。誰が一番かって・・・。面倒くさい。
ヨ:そうだったのか・・・。知らなくて、悪かったな。なんで今まで言わなかったんだ。
ヒ:言ったところで、引っ越せるわけじゃないでしょ? 
ヨ:・・・それで、いじめとかあったのか?

ヒ:いじめられはしなかったけど・・・後から来て、成績がよかったから・・・。なんとなく、皆と付き合いにくかったんだ。
ヨ:ふ~ん・・・そうか・・・。ここもいろいろあったなあ・・・。

ヒ:でも、悪いことばかりじゃないよ。
ス:そうお?
ヒ:だってまた、スワンさんと会えたじゃない? ここに来なかったら、会えなかったよ。

ヨ:うん。そうだな・・・ここはスワンに会うために、神様が来させたんだ、きっと。そういう運命にあったんだな。
ス:(微笑む)そうだね。
ヨ:そう・・・そのために、ここへ来た。
ヒ:そうだよ。だから、それで良しとしようよ。
ヨ:ヒョンス。おまえ、大人の口をきくなあ・・・。でも、そうだ。それで良しとしよう。


ヨ:しばらく、残務整理をして、いよいよソウルを目指すか。ソウルのマンションが結構活躍するなあ。このまま、売らないで持っていたほうがいいかもしれないね。
ス:そうね。あそこも、思い出がいっぱいだし・・・。残しておこう。
ヒ:お母様もこの間、泊まったもんね。
ス:うん。


ヨンジョンと二人で、ソウルのデートを楽しんだ日。
二人で初めて風呂に入った・・・。



ス:ヒョンス。今日、私の文学部時代の先生がね、これから人生の旅が始まるんだよって。世界を股にかけて旅をする・・・ロマンチックだねって。
ヒ:ふ~ん・・・。でも、僕はまず、学校に慣れなくちゃ。
ス:そうだねえ・・・。ヒョンスが一番大変だね。応援するよ。助けられることはなんでもするからね。
ヒ:・・・うん・・・。



そうだ。ヒョンスはまだ子どもで、これから多感な時期を過ごすのに、学校をしょっちゅう変わって・・・。
応援する・・・でも、結局は、自分で乗り切ることだね・・・。

君はもうそんなことは知っているんだ・・・。
だから、私もお為ごかしは言わない・・・自分で、切り開く・・・それをもう、ヒョンス、君は知っているんだね。




ヨ:じゃあ、明日、小学校には、お父さんが挨拶に行って、ここの学校ともお別れだ。
ヒ:・・・。うん・・・わかった。






夜のベッドの中で、二人はヒョンスのことを思った。


ス:ヒョンスにはたいへんなことだね・・・。ソウルで就職してもいいよ。そのほうがよければ。
ヨ:・・・スワン、ここまでやってきたんだ。ボストンには行こう。確かに、今、ヒョンスは辛いだろう。でも、オレたちがついてるじゃないか。将来、あいつのためになったって思えるように、オレたちだけの我儘に終わらないようにしてやろう。その為には、これからはヒョンスのためになるかどうかをよく考えて行動しよう・・・いいね?
ス:うん。私たちは二人でいて幸せなんだもん・・・ヒョンスが少しでも幸せを感じられるように考える。
ヨ:うん・・・。


ス:ヨンジョン。いつ言う? 赤ちゃんのこと。言わなくちゃね、ヒョンスに。ウソを突き通すなんてできないから。
ヨ:スワン・・・ソウルに行って、落ち着いたら。それまで待って。今は・・・まだやめよう。
ス:うん・・・。まずは、ソウルに引っ越してからね。
ヨ:うん・・・。ごめんよ。大事な時期なのに・・・。
ス:うううん、いいの。



ス:ヨンジョン・・・明日、ジョンア先輩に会ってみるかな・・・。研究室の整理もあるし。
ヨ:何を話すの?
ス:私たちは、ジョンア先輩のことを裏切ろうなんて考えたことなんてなかったって・・・。
ヨ:・・・。
ス:それから・・・。・・・。
ヨ:・・・。なあに?


ス:こんなふうに、ヨンジョンを傷つけるなんて・・・許せないって・・・。
ヨ:スワン・・・。
ス:だって、ヨンジョンとアメリカへ行って、あなたのこと、知ってるはずでしょう? どんな人なのか。
それなのに・・・。ヨンジョンを中傷するようなこと、簡単に口にして・・・。それがどんなことなのかも気づいていない・・・それが、どんなに人の心を傷つけることなのか・・・。その人の未来を台無しにすることなのか。・・・私は許さないわ・・・。簡単には許さない・・・。
ヨ:・・・・。







続く



では、皆様、月曜日までご機嫌よう!


2009/07/30 00:48
テーマ:【創】「アマン」第1部 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】「アマン」21





BGMはこちらで^^


BYJシアターです。
本日は「アマン―夏の恋人」21部です。



ではお楽しみください。






母さんは言った。

スワン、幸せって実は私たちのすぐ近くにあるものよ。

父さんと母さんはね、幼なじみでいつも一緒だったけど、
そこに愛があることに気づかないでずいぶん長い間、回り道しちゃった・・・。

でもね、よく見たら、すぐ目の前に幸せがあったのよ。

おかしいわね。


あなたは夢が大きいから、いつも遠くばかり見ているけれど、
たまには、近くも見たほうがいいわ。

遠くばかり見ていても探せないこともあるのよ。




ぺ・ヨンジュン
チョン・ドヨン主演

「アマン―夏の恋人」21





ス:もしもし・・・ジョンア先輩? スワンです。
ジ:ああ、スワン・・・。そういえば、ご結婚おめでとう。
ス:あ、ありがとうございます・・・。先輩に先に話してからと思っていたんですけど・・・時間がなくて・・・。
ジ:なんで、時間がなかったの?
ス:婚姻届ができちゃったんで・・・すぐに出したくなっちゃって・・・。
ジ:ずいぶん急いでいたのね・・・。

ス:早くこちらで一緒に住みたかったから・・・ヒョンス君とも早く仲良しになりたくて・・・。
ジ:・・・。そう。それで、お引っ越しは?
ス:大学に問い合わせたら、留学するまでの期間、家賃を払えば私の寮のほうも使っていいって。

ジ:あら、そんな事言ってた? そう・・・。でも、留学は無くなったわよ。
ス:・・・え?
ジ:だって、留学している場合じゃないでしょ? 夫も子どももできて・・・。それに、同居したら、また赤ちゃんができちゃうかもしれないじゃない? それでは、アメリカの大学のほうに、こちらの大学の顔が立たないわ。他の先生が行くことになったから。

ス:・・・どうしてですか?
ジ:どうしてって。
ス:今までも男の先生は既婚者もいたはずです。
ジ:・・・。だって、あなたは・・・女でしょう?
ス:それ・・・セクハラですよ・・・。女子の場合の但し書きなんてありませんでした・・・。
ジ:そう? でも、今回は諦めなさい。

ス:それって・・・どなたの指示ですか?
ジ:・・・・教授よ。
ス:そうですか・・・明日、話してみます・・・。


ジ:でも、もう次の人に話は行っちゃってるからね。スワン、結婚生活を大事にしなくちゃ駄目よ。
ス:・・・。

ジ:あなたみたいにかわいい人は、家庭を大事にしなくちゃ、ね。
ス:・・・。先輩・・・私のことを・・・怒ってる?
ジ:・・・何が?


ス:ヨンジョンとは、彼のソウル時代からの付き合いなんです・・・。
ジ:・・・だから?
ス:・・・ここへ来て知り合ったわけじゃないんです・・・。でも、最初、それを言うのが恥ずかしくて、ヨンジョンを知らない振りをしてしまいました・・・ごめんなさい・・・。
ジ:・・・そうだったの・・・。
ス:ここは・・・とても小さな街だから・・・二人が付き合っていることをあまり大っぴらにしたくなかったんです・・・。


ジ:チェ先生の奥様が亡くなって、一年も経っていないんですもの。皆にあなたたちが恋愛しているとは言えなかったわよね。
ス:・・・でも、私たちは、ユンア先生が亡くなった後知り合ったんです・・・前の奥さんのことは関係ありません。

ジ:まあ、いいわ。・・・彼ってそういう人なのね。
ス:・・・どういうことですか・・・「そういう人」って・・・?
ジ:う~ん・・・なんていうか・・・つまり、女なしには生きられない? そんな感じ?
ス:・・・・。


ジ:スワン?
ス:先輩。言ってることの意味、わかってるの?
ジ:え?
ス:彼を、侮辱してるの、わかってる? そして・・・私も。
ジ:・・・あら・・・。


ス:これは、大学という組織の中の縦の関係の話ではありません。一個人として、先輩は、彼を侮辱してます。
ジ:・・・ごめんなさい・・・スワンとは、長い付き合いだから、つい口が滑っちゃって・・・。
ス:つい口が滑って、どなたに進言したんですか?

ジ:どなたにって・・・?
ス:先輩。私が教務に結婚届を出したときは、留学についても問題ありませんでした。なのに、それが駄目で、彼にも・・・もしかして・・・皆が誤解するような噂が流れたら・・・困るわ・・・。
ジ:あなた、私を疑っているの?


ス:・・・でも、私の留学が無くなったのだって変です・・・こちらから辞退するならともかく・・・。
ジ:だから、教授が・・・。
ス:教授はご存知でした・・・。先輩とヨンジョンがアメリカへ行っている間、私にヨンジョンと付き合っているのかと尋ねられたぐらいだもの・・・。
ジ:・・・。
ス:教授は、二人が付き合っていたのは知ってました。もし、留学に結婚するのがまずかったら、その時に言ってくれてたはずです・・・。
ジ:・・・・。
ス:・・・。




ヨンジョンの書斎のドアが開いた。



ス:明日、大学でよく話を聞いてみます。では。
ジ:スワン・・・。


スワンは電話を切った。



ヨ:ん? どうしたの?
ス:今、ジョンア先輩に電話したの。
ヨ:そう。それで?
ス:留学は無くなったって。
ヨ:なんで?

ス:もう、悔しい! きっと潰したのよ。


スワンがちょっとむくれた顔をした。


ヨ:まあまあ、気を落ち着けて。ビールでも飲むか。
ス:なんで怒んないの?
ヨ:落ち着いて次の策を練ったほうがいいだろう?
ス:自分のことじゃないから、ノンキね。



ヨンジョンが笑って、冷蔵庫からビールを取り出す。
スワンは、ダイニングテーブルの上に広げてあった自分の勉強道具を片付ける。


ヨ:あ、そうか。奥様はビールは飲めなかったねえ・・・。じゃあ、君はお茶だね。
ス:自分だけ飲むの?
ヨ:飲ませてよ。
ス:ふ~ん。

ヨ:機嫌が悪いね。
ス:だって・・・なんか解せない・・・留学のこと・・・。ヨンジョンのほうには被害がいってないかなあ・・・。
ヨ:まあ、明日、大学に行けばわかるだろう。
ス:ふ~ん。
ヨ:でも、いずれにせよ、その留学は断るかもしれなかったんだから、いいじゃない。
ス:まあねえ・・・でも、パク教授のほうの返事もまだ来てないから・・・。


ヨ:でも、その留学が無くなると・・・別にアメリカへ行かなくてもいいわけだ。
ス:ええ~! (そんなあ~)
ヨ:そうだろ? お茶飲むか?
ス:うん!


ヨンジョンがスワンのためにお茶を入れる。


ス:ダンナ様はやさしいね。
ヨ:はい、どうぞ。
ス:ありがとう・・・。(うれしそうにヨンジョンを見る)
ヨ:どういたしまして。
ス:ふふ~ん、これ、ご機嫌取り?
ヨ:まあね。(笑って、自分は缶ビールを飲む)


ス:アメリカへ行かないでどうするの?
ヨ:すべて、何もないところから考えればいいんだよ。自分たちがどう暮らしたいかね。
ス:ふ~ん・・・。ヨンジョンは?

ヨ:オレは・・・まず、大学は辞める。学生に教えるのは好きなんだ。でも、つまらないことがずっとひっかかったまま進むことになるから・・・また、設計に戻る。これは、どこでもできるな・・・。スワンだって、ソウルの大学院で、学位を取ってもいいじゃないか。赤ちゃんが生まれたら、お母さんだって、手伝ってくれるだろうし。そのほうがラクかも。
ス:学費は?
ヨ:出してやるよ。今より稼げるようになるだろ。奥様の学費くらい、出してやるよ。
ス:う~ん。


スワンが唇を尖らせた。


ヨ:その案はいや?
ス:だってえ・・・アメリカに留学するのは夢だったんだもん。それを後回しにすると、たぶん、一生行けない・・・。それはわかるわ。子どもの手が放れたらとかいっていたら、自分自身が勉強しづらいようになっていくと思う。

ヨ:じゃあ、行くんだな?
ス:・・・いい?
ヨ:・・・。君が行きたいっていうなら、アメリカの友人の会社のパートナーになるよ。ホントに行っていいんだね?
ス:いいの?
ヨ:オレはどこでもいいよ。どこでもやっていけるし。お父さんはそれだけ、力があるんだよ。(笑う)
ス:ありがとう、お父さん・・・。我儘、いいます。(頭を下げる)


ヨ:ただし、パク先生の留学の話が流れても、まずは、仕事を確保しなくちゃならないから、ボストンには行くよ。そこで、赤ちゃんを産んで、それから、大学院にチャレンジだな。いいね?
ス:うん・・・。
ヨ:わかった・・・。(ビールを飲む)





ヒョンスが自分の部屋から出てきた。


ヒ:お父様、お母様、勉強が終わったので、もう寝ます。お休みなさい。(頭を下げる)


スワンが驚いて、ヒョンスを見る。


ヨ:では、お休み。(ヒョンスに言う)
ス:・・・お休みなさい・・・ヒョンス・・・。



ヒョンスが部屋へ戻っていった。


ス:どうしたの?
ヨ:え? オレのマネをしてるだけ。直に飽きるよ。(笑う)
ス:・・・。
ヨ:お父さんは子どもの頃、どうやって挨拶してたの?って言うから、お父様、お母様、お休みなさいって挨拶してたって言ったんだ。
ス:へえ・・・でも、これで、私との関係が崩れたりしないわよね?
ヨ:大丈夫だよ。遊びだから。
ス:え、でも、心配。見てくるね。



スワンがヒョンスの部屋をノックして、ベッドに入ったヒョンスの顔を見る。


ヒ:どうしたの、お母様?
ス:やだ、ヒョンス。普通にしてね。
ヒ:わかりました、お母様。(笑う)
ス:なんか変よお。(困った顔をする)

ヒ:結婚、おめでとう。
ス:(笑って部屋へ入る)ありがとう。
ヒ:だから、今日はお父様とお母様の邪魔をしないで寝ます。(笑う)
ス:そう? うん・・・でも、その話し方、これからも続くの?

ヒ:結構気に入ってるんだ。
ス:そうなの? なあ~んか変よ。かしこまっちゃってて・・・。

ヒ:実はこれいいんだ・・・。(スワンをじっと見る)
ス:どこが?

ヒ:これで、話すと・・・簡単にスワンさんのこと、「お母様」って呼べるんだ。恥ずかしくなく・・・だから・・・。
ス:・・・。そっか・・・。
ヒ:だから、しばらく、これで話すね・・・話しやすいから・・・。(スワンを見る)
ス:うん・・・。わかった。では、かわいい私の息子のヒョンス、お休み・・・。
ヒ:お休みなさい、お母様。



スワンが幸せそうな顔で、リビングに戻ってきた。


ヨ:どうした?
ス:うん、あれで話すとね、簡単に「お母様」って呼べるからいいって・・・。今日は結婚した日だから、邪魔をしないで寝ますって。
ヨ:(笑う)そうか。



スワンがダイニングテーブルに座って、ヨンジョンを見る。


ス:いい、結婚プレゼントになったわ・・・。(幸せそうな目をする)
ヨ:そうだね・・・孝行息子だな・・・。結婚記念日に毎年、思い出すことが増えたね。
ス:うん・・・。え? あとなんかあったっけ?


ヨ:あとはあ・・・(スワンから目を外して缶ビールを見て笑う)新婚旅行の海辺のホテルで、裸で窓に向かって手を振っていたこと・・・。(笑ってスワンを見る)
ス:ひどい・・・それは忘れてよ。

ヨ:駄目だよ、強烈に覚えているんだから! ああ、こういう人と結婚しちゃったんだなあって・・・。(一人で頷いている)
ス:何よ、それ・・・反省したの?
ヨ:そう。(笑う)

ス:もう、嫌なことだけ、覚えてるのね。
ヨ:そうだね。初めて会った日の昼も・・・。(笑う)寝ぼけてソファから落ちたよね。(ニコッとしてスワンを見る)
ス:もう、どおうして、そんなことばかり、覚えてるの。やだ。いいところだけ、覚えてて!


ヨ:どんな?
ス:どんなって・・・う~ん。(自分でも思いつかない)

ヨ:ああ、そうだった・・・。ソファから落ちたときもスラっとした足がキレイだった・・・。
ス:いいわね。(うれしそうにヨンジョンの顔を見る)

ヨ:海辺のホテルも・・・キュっと締まったヒップに長い足が魅力的だった・・・。
ス:それ、いいわね。そこの部分だけ、覚えておいて。

ヨ:わかった。初めて会った日のダブダブのズボンも黒縁のメガネも忘れる・・・。(目を瞑る)海辺のホテルも長い足だけを思い出すように・・・。


ス:どうお? 記憶を入れ替えた?
ヨ:できた! (目を開ける)


スワンがうれしそうにヨンジョンの顔を見る。
ヨンジョンが缶ビールを持って、立ち上がった。



ヨ:でも、そうすると、顔が、キーラ・ナイトレーになっちゃうんだよねえ。うちの奥さんはキーラ・ナイトレー。いいなあ・・・。(独り言のように言う)

ス:ヨンジョン! 何よそれ!
ヨ:ほら、この間、3人で一緒に見た「パイレーツ・オブ・カリビアン」。あの人、キレイだったじゃない。


ヨンジョンはそういいながら、寝室に入っていく。


ス;もう! なにい! 結婚すると、ホントに男って変わるのねえ・・・。ものの見事に、一夜にして変わったわ!(呆れる)


スワンも追うように、寝室へ入る。
ヨンジョンがちゃっかりベッドに入っている。


ス:もう・・・。
ヨ:まだ、怒ってるの? 今日、結婚したんだよ。おいで。
ス:だってえ・・・昼もしたわよ。
ヨ:新婚だよ・・・。(笑う)
ス:(笑う)・・・もう・・・。



スワンがベッドに入る。


ヨ:君に渡したいものがあったんだ。
ス:なあに?
ヨ:これ。


サイドテーブルの引き出しから出す。


ヨ:これね、元祖ヨンジョンさんが、お祖母様と結婚した時にあげた指輪。


ヨンジョンが小さなダイヤの指輪を出した。


ヨ:つけてごらん・・・。お祖父ちゃんが、好きな人ができたらあげなさいってくれたんだ。
ス:・・・。ユンアさんにはあげなかったの?
ヨ:・・・。うん・・・持ってた・・・。なぜ、あげられなかったんだろうね・・・結婚したのに・・・。
ス:・・・。(ヨンジョンを見つめる)
ヨ:君には、すぐあげたいと思ったのに。(スワンを見つめる)


ス:ヨンジョン・・・。(見る見る目が赤くなる)
ヨ:スワン・・・。ずっと仲良くやっていこうね。
ス:うん・・・。これ、大切にする・・・。つけて。


スワンは、ロイヤルブルームーンストーンのリングを外して、左手を差し出す。


ヨンジョンがスワンの薬指にはめる。
スワンの指には少し太かった。


ヨ:少し大きい?
ス:うん、でも大丈夫。これから太くなっちゃうもん・・・。キレイだね・・・。
ヨ:似合うね。
ス:・・・。(ヨンジョンを見る)


ヨ:何?
ス:なんでもない・・・。これもうれしい思い出になるね・・・。



スワンは、「ヨンジョンばっかり、ズルイ」と言おうと思ったが、言わなかった。

スワンの中に思い出されるヨンジョンは、いつもロマンチックで素敵だ・・・。
ヨンジョンの中に、蓄積していく自分の思い出は、少しファンキーだ・・・。

もう・・・!


ヨンジョンがスワンの肩を抱いて自分のほうへ引き寄せる。
スワンの顔をじっと見て、髪を撫でた。



ヨ:今日は・・・言っておこう・・・。二人の思い出に。
ス:・・・。
ヨ:オレの愛しいスワン。君を好きになって、オレはとても幸せになりました。君がいつもオレをまっすぐ見つめてくれるから・・・オレもまっすぐ、君を見つめられる・・・。君の愛がオレの心にどんどん響いてくるよ・・・・。ちょっとおっちょこちょいだけど、オレには、君がかわいい・・・。かわいいくせに・・・大胆で、やさしくて・・・。
ス:・・・大好きなヨンジョン・・・。ヨンジョン以外の男の人なんて考えられない・・・。いつまでも、私を包んでいて・・・。
ヨ:うん・・・。スワン、君も・・・いつまでも、オレを包んでいて・・・。
ス:うん・・・。


ヨンジョンがスワンをベッドに寝かせる。

スワンがヨンジョンを大きな目で見つめる。


ス:素敵な日になった・・・。すべてが素敵・・・。ヨンジョン、ありがとう・・・。これからもあなたをずっと愛するわ・・・。
ヨ:(微笑む)


ヨンジョンが覆いかぶさるように、スワンに熱いキスをした・・・。












翌日の午後、スワンは、文学部のパク教授の研究室に来ていた。



パ:結婚おめでとう。よかったなあ・・・ハッピーエンドだ。(笑う)
ス:それ、希望します。(笑う)

パ:しかし、いい男を捕まえた。それで、大学のスカラシップは剥奪されたわけだ。
ス:そうなんです。たぶん、ジョンア先輩の横槍だと思う・・・。
パ:う~ん、その実体はわからないなあ・・・。まだ、こっちも返事が来てないしな。何が何でも、留学したいわけだ。
ス:というか、このチャンスを逃すと、留学しづらくなるでしょう? 


パ:まあね。それにしても、ヨンジョン君は頼もしい彼じゃないか。
ス:ええ・・・。
パ:幸せモノだ、君は。ホントのスワンになったな。(優しい目で見つめる)




研究室のドアが開き、ミンシャが入ってきた。



ミ:お待たせしました。
パ:どうだった?
ミ:やっぱり!
パ:うん・・・。
ス:何が?


ミ:やっぱり、建築学科のほうで動きがあるんです。
ス:どんな?
ミ:それが・・・誰が流したかわからないけど・・・チェ先生にはちょっと問題があるって・・・。
ス:何?

ミ:前の結婚が助教授を妊娠させちゃって・・・ごめんね、スワン先生・・・でも、こういう噂・・・大学院を追われて、アメリカで学位を取ったって。それで、今度は隣の研究室のスワン先生に手を出して・・・。

ス:ひどい! 私たち、ソウルで知り合ったのよ。ここで、知り合ったんじゃないわ。
ミ:でも、そういう話になってるの・・・。
ス:それに・・・前のユンアさんは・・・ヨンジョンの子どもがほしかったのよ・・・。それで・・・。ひどいわ。


パ:噂というものはそういうものだよ。事実だけ見ると本当に見える。しかし、その内情は違う・・・。
ス:でも、それで、ヨンジョンはどうなるの?
ミ:なんか・・・研究所勤務に変えられるみたい・・・。
ス:なんで?

ミ:人前に出せないみたい・・・。
ス:首にはしないのね?
ミ:だって、できないでしょ? スワン先輩とは、一応幸せな結婚をしているわけだし、前の奥さんは亡くなられているわけだし・・・。
ス:一応って。ホントに幸せよ。(睨む)

ミ:ごめん・・・。
ス:・・・私もごめん・・・。


パ:授業はどうする? この間、編成を変えたばかりなのに。
ミ:また、代講みたい・・・。こんなことやってると、生徒が来なくなりますよね・・・。
ス:私だけで済まなかったのね・・・。

パ:どうする?
ス:どうするって・・・。
パ:もう、スパッと大学を辞めるか?
ス:・・・。う~ん・・・。それでもいいけど・・・。まずは、ヨンジョンの意見を聞かなくちゃ。ただ、変な噂だけ残るのは困ります。彼の将来のためにも。
パ:そうだな・・・。そこはなんとかしよう。

ス:どうなんとかするんですか?
パ:あっちの教授に話してみるか・・・。
ス:お願いします。このままでは、ヨンジョンには韓国は針のムシロだわ・・・。(泣きたくなる)

ミ:それにしても、ジョンア先生ってやなやつですね・・・。あの人のせいで、うちの学校が地に落ちそうだわ。
ス:ふ~ん・・・。










トントン!

建築学科の教授の研究室のドアがノックされた。


教:はい。
ヨ:失礼します。
教:入りたまえ。



ヨンジョンは教授の研究室の応接セットに座る。


教:もう君の耳に届いているのかね?
ヨ:はい。人事異動ですね?
教:ああ。
ヨ:なぜでしょう。授業のほうも順調ですし、何をしたって・・・僕が結婚をしたからですか?
教:まあ、平たく言うとそういうことだね・・・。


ヨ:スワンとは、ここへ来る前からの付き合いで、隣の研究室になったから、手を出したとかそういうことではありません。それに、彼女が文学部のままなら、なんの問題もなかったわけですよね?
教:そうなるかな・・・。

ヨ:教授は、僕の教員としての資質をどうお考えなんでしょうか?
教:私は、非常にかっていたんだが・・・。

ヨ:それでも研究所へ行けという判断は、先生がなさったのですか?

教:チェ君・・・君を守りきれなくて、すまなかった・・・。
ヨ:・・・・。
教:今回のことは、私の耳に入る前に・・・理事長のところへ噂を流した者がいてね・・・。つまり、君の前の結婚が、学生の君が当時の助教授を妊娠させたことへの責任取りだったということ。そして、そのことで、大学院を追われて、アメリカで学位を取ったということ。それが今度は、隣の研究室のスワン先生に手を出して・・・。とまあ、実しやかに忠言した人間がいたんだ。

ヨ:それで・・・?
教:それで、君を現場に置くことはマズイということになって・・・。
ヨ:僕たちが結婚してたった一日でこんなことになったんですか・・・。

教:うん・・・。そう・・・。ずいぶん、事態が急変して驚いているんだ。私のところに、君たちの結婚についての報告をもらった時には、もう理事長に電話をした後だということだったから。彼女には、先に相談をしてほしかったよ・・・。
ヨ:・・・。(彼女・・・ジョンアか・・・)

教:チェ君。私は、前の君の奥さんをよく知っているんだよ。学会で何度も会ったからね。だから、彼女の気性もよく知っている・・・。建築学科のある年齢のものは、君の奥さんのことを知っている・・・。つまり、君の前の結婚が彼女の同意がなければ、決してありえないことはよくわかってるんだ。だから、そんな噂は気にしない。それに、この前、スワン君に君のことを尋ねたら、ソウル時代からの付き合いだと言っていたし、君たちを、私は信じている。しかし、理事などは、その辺がわからないからな・・・。噂で変な助教授がいると流されたらと保身に回るわけだ・・・。つまらん・・・。私もすっかり嫌になったよ。



ヨ:先生。僕たちは結婚しただけです・・・ただ好きになって結婚しただけです。スワンの留学も取り消し・・・。これは明らかにセクハラです。
教:チェ君!

ヨ:これを事件にしたら、この大学はたいへんなことになりますよ。僕は好きな女と結婚をした。そして子どもを育て、また結婚した。それだけです。それに対しての僕たちへの大学の取った処置には驚きました。
教:チェ君。

ヨ:このことで訴えるかどうかは、よく考えてみます・・・。でも、もうこちらから、僕もスワンも大学を辞めさせていただきます。
教:チェ君!


ヨ:こちらから辞退します。このことは、よく覚えておいてください。このようなセクシャルハラスメントをするような大学には、未来はないと。
教:チェ君、どういうことだ。
ヨ:とにかく、もうこれで縁を切ります。先生にはお世話になりました。失礼します。
教:チェ君!




ドアのところへ行って、ヨンジョンが振り返った。


ヨ:先生、ここは・・・たった一人の嫉妬のために、大学を陥れるんですか? 僕はたった一人の女性を守ってここを辞めます。でも、この事実は、ソウル大時代の友人の弁護士に相談してみます。
教:待ってくれたまえ。



ヨンジョンはそのまま、部屋を出た。

ジョンアが研究室を出てきた。
驚いた顔で、ヨンジョンを見つめた。

ヨンジョンには、いつものやさしさはなく、冷たい氷のような表情で彼女を見つめた。


ヨ:あなたは、ずいぶんな人ですね・・・。



そういって、ヨンジョンは自分の研究室へ戻っていった。










文学部に遊びに来ているスワンの携帯が鳴った。


ス:もしもし、ヨンジョン? え! 辞めたって? 二人とも大学を今辞めてきた?!



近くにいたパク教授とミンシャも一緒に驚き、スワンを見つめた。







続く・・・




2009/07/29 00:16
テーマ:【創】「アマン」第1部 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】「アマン」20





BGMはこちらで^^



BYJシアターです。
本日は「アマン―夏の恋人」20部です。


ではお楽しみください。





母さんは言った。

スワン、幸せって実は私たちのすぐ近くにあるものよ。

父さんと母さんはね、幼なじみでいつも一緒だったけど、
そこに愛があることに気づかないでずいぶん長い間、回り道しちゃった・・・。

でもね、よく見たら、すぐ目の前に幸せがあったのよ。

おかしいわね。


あなたは夢が大きいから、いつも遠くばかり見ているけれど、
たまには、近くも見たほうがいいわ。

遠くばかり見ていても探せないこともあるのよ。





ぺ・ヨンジュン
チョン・ドヨン主演

「アマン―夏の恋人」20






スワンとヒョンスは、スワンの実家の2階の元彼女の部屋でアルバムを見ている。


ヒ:へえ、これがスワンさん・・・痩せてたね。
ス:うん、だって高校生だもん・・・ねえ、この人、わかる?(アルバムを指差す)
ヒ:う~ん・・・あ、あの先生だ!

ス:そう!(笑う)あの先生! 
ヒ:へえ・・・あの先生は・・・・昔からあまり変わらないね・・・。
ス:そうかな・・? うん、でもやっぱり、若かったよ。(笑う)


部屋がノックされた。


ス:はい?


ヨ:ここ?(ドアを開ける)
ス:あ、ヨンジョン。今ね、ヒョンスと一緒に、昔のアルバム、見てたの。
ヨ:そうか。ヒョンス、お祖母ちゃんがお呼びだ・・・スワンのお母さんが。
ヒ:僕?

ヨ:うん、一緒に夕ご飯の支度を手伝ってって。
ヒ:ふ~ん。
ス:私も行く?
ヨ:いや、ヒョンスと二人がいいらしい・・・。

ス:そう・・・。
ヨ:ヒョンス。(行きなさいという顔をする)
ヒ:うん・・・じゃあ行ってくるね。


スワンが心配そうにヒョンスとヨンジョンを見た。



ヨ:ただ、ヒョンスと仲良くなりたいだけだよ。行きなさい。
ヒ:うん!


ヒョンスは立ち上がって、部屋を出ていった。


ス:大丈夫かしら?
ヨ:大丈夫だよ。ヒョンスに・・・あいつの本当の気持ちを聞きたいらしいんだ。
ス:本当の気持ち?

ヨ:うん、スワンやオレには、悪くて言えない気持ち・・・。大丈夫だよ。
ス:そう・・・。母さんになら話すかしら・・・。
ヨ:君のお母さんはやさしい人だもん・・・何かあれば話すかもしれない・・・。
ス:うん・・・。



ヨンジョンは、入り口のドアの建具のところに寄りかかってスワンを見ている。
スワンがヨンジョンのところへ行き、正面から腰に腕を回して、ヨンジョンを見上げた。


ス:私たちに言えない気持ち、あるかもね・・・そういう気持ち、あるよね・・・遠慮して言えないこと・・・。


胸に顔を埋めるように、しっかりと抱きつく。


ヨ:どうしたの?
ス:抱いて、ちゃんと・・・。


ヨンジョンがしっかりと抱く。


ス:ふ~ん・・・。
ヨ:疲れた?
ス:うん、少しね・・・。
ヨ:寝てれば? 夕飯ができるまで。

ス:でも・・・。こうやって、ヨンジョンに抱かれてるほうがいい・・・。
ヨ:スワン・・・。(顔を覗きこむ)
ス:なあに?
ヨ:座ろ。オレも疲れたから。(笑う)
ス:なあんだ。(笑う)



二人で小さな二人掛けのソファに座る。

スワンがヨンジョンの肩に寄りかかる。



ス:母さん、なんか言ってた? あなたとも二人だけで話したいなんて・・・。一人ずつ面接してるみたい・・・。

ヨ:前の結婚の話をしたんだ。スワンがいると、前の奥さんへの気持ちが話せないだろうって。
ス:それで?
ヨ:ヒョンスができて結婚した件を話したよ。その後のことも全部・・・。
ス:辛かったね・・・。
ヨ:聞くほうが辛いかもしれないね・・・。

ス:うん・・・。でも、ヨンジョンが頑張ったことは、きっと母さんもわかったと思うよ。
ヨ:だといいけど。


スワンがヨンジョンの胸に顔をつけた。


ヨ:どうしたの?(顔を覗く)
ス:ちょっと甘えさせて・・・。

ヨ:(笑う)お母さんが、あの子はちゃんとやってるんでしょうかって聞いてたよ。
ス:なあに、それ? (顔を上げる)
ヨ:だから、よく歯軋りや寝言を言ってますよって言っておいたよ。(笑う)
ス:うそ! 一緒に寝てるなんて、言っちゃだめよ!・・・ああもう、うそついたわね!


ヨ:(笑う)お母さんがふつつかな娘ですが、よろしくって。
ス:そう言ったの?(ちょっと胸がいっぱい)
ヨ:うん。
ス:よかった・・・。完全に許してくれてるね。後は、ヒョンスだけ・・・。






母:ヒョンス君は、ハンバーグ、好き?
ヒ:うん。
母:じゃあ、これを一緒に丸めて焼こうか?
ヒ:これがハンバーグの素?
母:そうよ。スワンはまだハンバーグを作ったことないのかしら?
ヒ:うん、まだ。


ヒョンスは、スワンの母親に手を取られて、一緒にハンバークの形を作っている。


母:あ、上手ね・・・。ヒョンス君はスワンの料理は何が好き?
ヒ:オムライスかな・・・。中のライスの味は母さんの味付けだって。
母:そう言ってた? (うれしそうにヒョンスを見る)でも、卵がうまくできなかったはずだけど・・・。
ヒ:それは、お父さんがやったんだ。「オレで愛で包んでやろう」って。(笑いながら言う)

母:・・・そう・・・楽しくやっているのね?
ヒ:うん。(ハンバークを作りながら、頷く)

母:お母さんが亡くなって寂しいでしょう?
ヒ:それはね・・・ホントのお母さんだったから・・・。でもね・・・。
母:でも?
ヒ:お父さんも、今日会ったお父さんのお祖父ちゃんも、あ、この人とお父さんと同じ、ヨンジョンて言う名前なんだよ。二人とも、ママの思い出は大切にとっておいて、新しいお母さんとの生活を楽しみなさいって。
母:ふ~ん・・・それでいいの? それで納得したの?
ヒ:・・・じゃあ、他にどうしたらいいの?
母:・・・。

ヒ:僕は子どもだから・・・自分じゃ選べないよ・・・。でも、スワンさんが好きだから、よかった。嫌いな人がお母さんにならなくて・・・。
母:・・・。

母:韓国を離れてもいいのね?
ヒ:お父さんが、アメリカで勉強することは将来役に立つって。それに、スワンさんも言ってたけど・・・お父さんは韓国の大学にいると、皆、ママのことを知ってるから、思い出して寂しくなっちゃうんだって。だから、僕は二人と一緒にアメリカへ行く。ママのお祖父ちゃんやお祖母ちゃんも心配したけど、お父さんたちと行くよ。だって、僕たち、家族だから・・・。


母:そうか。ヒョンス君は気持ちを決めてるんだ。だったら、おばさんも、言うことないわ・・・。これからは、お祖母ちゃんね。ヒョンス君、私はあなたのお祖母ちゃんよ。よろしくね。(見つめる)
ヒ:・・・はい・・・。







ス:手伝いに行こうかな?
ヨ:いいんじゃない? 二人で話しながら、やってるよ。それに、今、行くとバレるよ。キッチンのニオイが駄目だろ?
ス:そうね・・・。あ、ハンバーグの焼いてるニオイがする・・・。前は母さんのハンバーグ好きだったけど、今日は食べられるかな・・・ちょっと、心配。
ヨ:お母さんに話したらどう? やっぱり、女親のサポートは必要だよ。
ス:うううん、やれるとこまでやってみる・・・。できちゃった婚だって、思われたくないの。ホントにヨンジョンが好きで結婚するのに。
ヨ:わかった、強情だなあ。(笑う)
ス:食べるの、手伝ってよ。残せないから。(笑う)






母とヒョンスの作ってくれたハンバーグを前に、4人は和やかに夕ご飯を食べている。

母は、スワンがヨンジョンといて幸せそうであること、何よりヨンジョンがしっかりと、スワンとヒョンスを携えている感じがして、とても頼もしい。

母が食事の途中、お茶を入れにキッチンに立ち、戻ってくると、ちょうどヨンジョンがスワンの耳元で囁き、スワンがちょっと顔をしかめて、首を振っているところだった。
その顔を見て、ヨンジョンがスワンの皿から、ハンバーグを取って、自分のほうへ移した。
「これは?」というように、アッサリめのおかずを指差すと、スワンがにこやかにヨンジョンを見て、ヨンジョンがそれをスワンのほうへ回した。


やっぱり・・・。


でも、ヨンジョンもスワンもそれについては、全く口に出さなかった。

ヒョンス君のことがあるからかしら?


二人は、どのように、ヒョンスにそのことを打ち明けるのだろう・・・。








ヨ:ご馳走様でした。(頭を下げる)


3人が玄関に並んで帰り支度をしている。


ス:母さん、ご馳走様。また、来るね。
母:ええ、いつでもいらっしゃい。ヒョンス君もスワンと一緒にいらっしゃいね。
ヒ:はい。

ヨ:婚姻届を来週中には出そうと思っているんです。そうすれば、教員住宅で一緒に暮らせるし、大っぴらに三人で出歩けるので。
母:そうね。そうした方がいいわ。早いほうがいいかもしれない・・・。スワン、あなた、具合悪くないわね?(心配そうな顔をする)
ス:うん、大丈夫よ。(微笑む)


母:これね・・・レモン漬け。柚子茶よりさっぱりしているから・・・食べてごらん・・・。
ス:・・・・。(母が差し出した袋を見つめる)
母:ミンスのために漬けたんだけど、たくさん漬けちゃったから。よかったら、食べなさい。
ス:・・・。

ヨ:ご馳走様です。
母:ヨンジョンさん。スワンをよろしくお願いします。これから二人がどんな生活を選んでいくのか、私にはよくわからないけど・・・でも、あなたもスワンもきっとうまくやっていけると思うので、蔭ながら応援するわ。
ヨ:ありがとうございます。
ス:・・・ありがと・・・。(目を合わさずに言う)

母:じゃあ、道中が長いから、もう行きなさい。気をつけてね。
ヨ:はい。
母:じゃあね、ヒョンス君。
ヒ:さようなら。





三人は車に乗り込み、母親に手を振って、別れた。




ヨ:どうしたの?
ス:母さん、気づいてた・・・。
ヨ:・・・。
ス:妊娠している妹のミンスのために、漬けたんだよ、このレモン・・・。つわりがひどい時に食べるように・・・。(泣きそうな顔で袋の中の瓶詰めを見る)
ヨ:・・・。
ス:それなのに、何も言わないで来ちゃった・・・。
ヨ:・・・大丈夫だよ。きっとお母さんは許して下さるよ。
ス:・・・うん・・・。親不孝だね・・・。
ヨ:スワン、これから孝行すればいいよ。
ス:・・・。(ちょっと目が潤む)



ヨ:ヒョンス?


スワンが後ろを振り向く。
ヒョンスは一日の疲れが出て、後部座席で寝息を立てて寝ている。


ス:寝ちゃったね。
ヨ:うん、疲れただろう。明日はまず、病院へ一緒に行って、あれ、見るだろう?
ス:一緒に見てくれるの?
ヨ:うん、楽しみじゃない。
ス:ありがとう。
ヨ:その帰りに、婚姻届を提出して、大学に届けを出す。それで様子を見てみよう。

ス:うん・・・二人とも首になっちゃったりして・・・。(笑う)
ヨ:そんなことはないだろう? 変なところは・・・君が留学する前っていうとこだけだろ?
ス:まあ、そうね。


ヨ:それとも、オレの噂で・・・オレが首になるか・・・。
ス:大丈夫よ。なんか言われても。後少しだもん・・・。とにかく、二人で乗り切ろう。
ヨ:うん。





結局、その日も、スワンはヨンジョンたちの部屋へ泊まった。
もう一人でなんて寂しくて暮らせない・・・。


翌朝、学校へ行くヒョンスを送り出すと、早速二人は計画通りに行動した・・・。








午後の授業に出るため、ジョンアが教務課へやってきた。
教務課の中がざわめいた。


ジ:どうしたのお? 何かあったの?
女:先生は知ってましたよね?
ジ:何が?
女:スワン先生のこと。
ジ:何? ああ、留学することね、もちろん、知ってるわよ。
女:そうじゃなくて、結婚したこと・・・。


ジ:結婚!! (驚く)
女:やっぱり・・・。
ジ:聞いてないわよ。どうしたの。なんで知ってるの? (目を見張る)
女:本日、11時20分に、結婚届けの提出がありました。

ジ:急ね・・・。何があったのかしら・・・。だって、留学するわけでしょう、あの子・・・。
女:それまでの期間、一緒に暮らしたいからだそうです・・・。
ジ:へえ・・・熱愛ね・・・。(出席簿を取る)


女:そう思います?
ジ:そうじゃない? 熱愛以外、考えられないじゃない。何も留学前じゃなくても。帰ってきてからのほうがいい男が捕まるのに・・・。(30の誕生日を迎えた時が一番、焦るのよねえ・・・)



ジョンアが「まあまあ・・・」と言いながら、教務課を出ようとすると、教務課の女の子が意味ありげにジョンアを見ている。


ジ:なあに? まだ何かあるの?
女:先生・・・相手の方、知ってますか・・・?

ジ:相手? 知らない。 私たちの知ってる人?
女:ええ・・・とても・・・。

ジ:誰かしら・・・文学部の同じ研究室のあの男の子?
女:いいえ・・・。(隣の職員を見る)


教務課の皆が知らん顔を決め込んだ。


ジ:あと、誰がいったっけ? あの丸顔の教務課の・・・。
女:違います・・・。

ジ:誰?!

女:お隣の・・・。
ジ:お隣?
女:お隣の研究室の・・・。


ジ:お隣って言ったら、チェ先生しかいないじゃない? (考える)


女性職員はそこまで言って、仕事に戻る。



ジ:チェ先生でしょ? その他のお隣って何よ・・・。ねえ、だあれ!?


女性職員の顔の横に顔をつけて、聞く。


ジ:じゃ、だあれ?
女:・・・チェ先生・・・。

ジ:チェ先生? ふ~ん・・・え!! チェ先生! (驚く)チェ先生はどこ!
女:先生たち、新婚旅行代わりに、今日は海へ行きました・・・。
ジ:海?

女:ええ、チェ先生の坊ちゃんがスイミングスクールから戻るまでの時間しか、二人の自由な時間が作れないからって。
ジ:やだ! イヤらしい! 昼間っから!(眉間に皺を寄せる)

女:? 先生、海を見に行っただけですよ。記念日になるからって・・・。おいしいランチを食べるって・・・。
ジ:あら・・・あら、そう・・・そうなの?

ジョンアは顔を赤くして、くるりと回り、一直線に出口を目指す。


ジョンアが出て行った後、教務課で皆が一斉に笑った・・・。








ス:静かねえ・・・。波の音だけ聞こえて・・・。
ヨ:うん、いい感じだね・・・。お天気もよくて・・・。
ス:結婚しちゃったね。
ヨ:ホント!(笑う)
ス:なんか、夢みたい!

ヨ:だね。海で、好きだって告白して、海に新婚日帰り半日旅行。まあ、いいか!
ス:うん・・・。


ヨ:赤ちゃん、かわいかったなあ・・・。
ス:うん。ちゃんと人の形してたね。マッチ棒みたいに、細くて小さかったけど。
ヨ:でも、元気よかったじゃない。飛び跳ねてて。
ス:ホント! お腹の中でダンスしてた。(笑う)


ス:ねえ、写真、もう一度見る?
ヨ:うん。


スワンが起き上がって、ベッドから降り、バッグから手帳を取り出す。
何気なく見た窓の外で、子どもたちが手を振っている。

スワンもそれに答えて手を振る。


ヨ:スワン。何してるの?
ス:うん? あっちで手を振ってくれてるから・・・。
ヨ:・・・スワン・・・見えてるの? あっちから・・・?
ス:じゃないの? (ノンキに言う)


ヨ:今の自分の格好、思い出してね。
ス:え? 何がぁ? (ヨンジョンのほうを振り返る)あっ・・・・。
ヨ:早くおいで!



スワンは走って、ベッドに飛び込む!



ヨ:君、大丈夫? (怪訝そうな顔)
ス:忘れちゃったのよ。

ヨ:忘れるはずないじゃない。服を着ているかどうかくらい、普通はわかるよ。
ス:忘れちゃうときもあるのよ!
ヨ:そんなあ・・・。
ス:・・・いじわる・・・。


ヨ:・・・・。
ス:・・・・。

ヨ:こんなことで、別れるの?
ス:まさか・・・。

ヨ:(微笑む)じゃあ、仲直り・・・。
ス:(微笑む)うん・・・。


ヨ:でも、普通は気がつくよね。
ス:・・・。
ヨ:そうだろう?
ス:・・・。意外と・・・。
ヨ:意外と、なあに?

ス:意外とネチネチ言うのね・・・。
ヨ:・・・こんなことくらいで、そんなこと言われるなんて心外だなあ・・・。


ス:もう、結婚した日にケンカね・・・。
ヨ:ケンカというほどじゃないだろ?
ス:・・・。
ヨ:スワン・・・。仲直りしよう・・・。


ヨンジョンがスワンを抱く。
二人で顔を見合って笑う・・・。


ヨ・ス:でも、普通は気がつくよね!


ヨ:そうだろ?

ヨンジョンがスワンをぎゅっと抱きしめて、スワンの上に乗った。


ス:気がつかない時もあるわよ!

スワンはうれしそうに笑い転げた。









研究室の中で、たった一人ぽつんとジョンアが座っている・・・。



なんで・・・。
なんで、スワンなの?

やっぱり、あの食堂の前で一緒だった時には、二人はできてたのね!


でも、そんな早くに・・・。
こっちへ来る前からの知り合いだったのかしら・・・。

それにしても、間抜けな話・・・。


アメリカへ行くまで一緒に暮らしたいなんて・・・何、考えているのかしら・・・。

他に理由があるはずよ・・・。


あの夜中に、彼がスワンの部屋から出てきたのも・・・やっぱり・・・。


男と女が急いで結婚しなくちゃならない理由って何かしら・・・。

それも、大した女じゃない女と慌てて結婚する理由・・・。


それって、一般的には「できちゃった婚」とか「親の死に目に会わせたい婚」とか・・・「転勤婚」とか・・・。

「スワンがアメリカへ行っちゃうから婚」か・・・。

そんなことして、チェ先生には、利益なんてないじゃない・・・スワンぐらいの子なんて、たくさんいるんだから・・・。

スワンがアメリカへ行っちゃったら、次を探せばいいんだし・・・。

ま、男は優秀な女より、自分より劣る女が好きよね・・・。

それにしてもねえ・・・。

慌てる理由・・・出来ちゃったのかしら・・・スワンに? あのスワンに?
結婚するぐらいだから・・・そんなこともしちゃうんでしょうけど・・・あのスワンと・・・あんな平凡なスワンと・・・。


出来ちゃったらどうするのよ!

留学は!

そんな時期でも子どもを作っちゃう、あのチェ先生て何・・・?

前の結婚も子どもが先だったような・・・彼って、アブナイ男だったのかしら・・・。

やだ・・・。

これって、問題よね・・・。大学内の風紀を乱す・・・。

籍を入れれば済むと考える男の浅はかさ・・・。
そんなやつだったのかしら・・・。

野獣ね・・・。

さて・・・あの人って、ホントにアブナイ人なのかしら・・・。







ス:ハァックッション!

ヨンジョンの車の中で、スワンがくしゃみをした。



ヨ:風邪引いた? 温かくしてたほうがいいよ。今は風邪薬飲めないんだから。
ス:うん。

ヨ:ハァックッション!
ス:お大事に!(笑う)

ヨ:あの部屋、そんなに寒くなかったよね?
ス:うん。今日、帰ったら、ジョンア先輩と話をしなくちゃ。先輩には、ちゃんと二人がここへ来る前からの付き合いだったって言わないとね。
ヨ:そうだな・・・君が話す?
ス:うん。高校時代からの付き合いだもん・・・。
ヨ:うん・・・。じゃあ帰ろう!


ヨンジョンが、車を発進した。







トントン!



教:どなた?
ジ:ジョンアです。(ドアを開ける)

教:何か用かな?
ジ:ええ、ちょっとお話が・・・。
教:そう・・・じゃあ、ドアを閉めて。


ジョンアが教授の研究室のドアを閉めた。






続く・・・



ジョンアさん、何を考えているんでしょうか・・・。


2009/07/28 00:37
テーマ:【創】「アマン」第1部 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】「アマン」19





BGMはこちらで^^


なんと!
77777の切り番、踏んだ人レスください!^^


BYJシアターです。
本日は「アマン―夏の恋人」19部です。


ではお楽しみください。






母さんは言った。

スワン、幸せって実は私たちのすぐ近くにあるものよ。

父さんと母さんはね、幼なじみでいつも一緒だったけど、
そこに愛があることに気づかないでずいぶん長い間、回り道しちゃった・・・。

でもね、よく見たら、すぐ目の前に幸せがあったのよ。

おかしいわね。

あなたは夢が大きいから、いつも遠くばかり見ているけれど、
たまには、近くも見たほうがいいわ。

遠くばかり見ていても探せないこともあるのよ。






ぺ・ヨンジュン
チョン・ドヨン主演

「アマン―夏の恋人」19





スワンとヒョンスは運転手に案内されて、応接間に入った。
ヨンジョンが母親と一緒に座っていた。


ヨ:どうしたの?(二人に驚く)
運:先生がこちらへお通しするようにと・・・。
ヨ:そうですか・・・それは、ありがとうございます。
母:まあ・・・。


母は、ヒョンスとスワンを感慨深げに見つめた。


母:(立ち上がる)さあ、こちらへお入りなさい。


ス:失礼します。
ヒ:・・・。


ヒョンスはスワンの横にチョコンと立って、スワンが母親に頭を下げると、自分も一緒に頭を下げた。


母は、ヒョンスの仕草に、愛しそうに、孫の顔を見つめて微笑んだ。



ヨ:(立ち上がる)お母様、こちらが今度結婚するキム・スワンさん。それと、息子のヒョンスです・・・。
母:そう・・・。よろしく・・・。ヒョンス・・・あちらのお父様のお名前からつけたのね?
ヨ:はい・・・。
母:そうなの・・・。まあ、二人ともお座りなさい。


二人はヒョンスを真ん中に、ヨンジョンの横にピッタリと寄り添うようにして座った。
母親には、ヨンジョンが既に、この3人の中では家長として存在していることがはっきりとわかった。


母:そう・・・ヒョンス・・・。あなたのお父さんのヨンジョンはね、お祖父様と全く同じ名前なのよ。お祖父様がそのまま名前を下さって・・・とてもかわいがって下さって・・・ね、ヨンジョン。
ヨ:ええ・・・。お母様・・・・お祖父様は・・・。



その時、ドアが開いて、ヨンジョンの父親が入ってきた。
背の高い恰幅のよい男で、少し睨むように3人を見た。

3人は立ち上がった。



母:あなた・・・。ヨンジョンの隣が、息子のヒョンス・・・。それに、今度、結婚されるキム・スワンさん・・・。
父:うん。(頷く)ヒョンスか・・・。まあ、座りなさい。


父:再婚するのか?(ヨンジョンを見る)
ヨ:はい。ヒョンスの母親は、胃がんで亡くなりました。
父:・・・そうか、そうだったのか・・・。

母:ヨンジョンは今、大学で教えているんですって。それで・・・。(息子の成長がうれしい)
ヨ:それで、今度結婚したら、アメリカへ行く予定なんです・・・。
父:何をしに?
ヨ:アメリカ留学時代の友人の会社を手伝いに・・・。また、もとの建築家に戻ります。
父:うん・・・。(じっと息子の様子を見る)


しばし、沈黙があった。


父:今日は結婚の許しを取りに来たのか?
ヨ:それもありますが・・・アメリカへ行ってしまったら、お父様やお母様にお会いする機会もなくなるので・・・。
父:うん・・・。婚姻届は持ってきたのか?
ヨ:あ、はい。


ヨンジョンが胸からスワンとの婚姻届を出した。
スワンはそんなものをヨンジョンが用意してくれていたことに驚いた。

父親はそれを見て、ただ黙って、ペンを出し、サインをする・・・。


スワンとヒョンスは、その姿を不思議そうに見つめた。

この父親は、自分にも、初めて会うヒョンスにさえ、まともな視線も言葉かけもない・・・。


ヨンジョンは父から、婚姻届の用紙を受け取った。


ヨ:ありがとうございます。
父:うん・・・。(立ち上がろうとする)

母:あなた、待ってください。孫を見てやってください・・・。それに、こちらの方のお話も伺いたいわ。(スワンの方を見る)
父:おまえが聞いたらどうだ。
母:あなた。ヨンジョンがここまで来てるのよ・・・。ちゃんと、見てあげて。



父親は、ヨンジョンの顔を見てから、ヒョンスの顔をじろっと見る。

ヒョンスは緊張して、祖父を見つめた。

父親はスワンもじっと見た。
スワンも負けじとしっかりと見つめ返した。


父:まあ、幸せにやっているようだな。おまえの顔を見ればわかる・・・。それで、いいだろう。(頷く)そのまま、頑張りなさい・・・。


そういうと、父はさっさと部屋を出ていってしまった。
残された母親が残念そうに、息子たちを見た。


母:・・・ごめんなさいね・・・。せっかく来てくれたのに・・・。
ヨ:いいんだよ。お父様は、僕たちの結婚を許してくれたし・・・それで十分だよ。(母を見つめる)
母:・・・そうね・・・。きっと、あなたの立派な姿を見られて安心したと思うわ。
ヨ:・・・。

ヨ:お母様。スワンさんは、今、僕と同じ大学で英語を教えているんだ。
母:そうなんですか・・・それで、アメリカへは一緒に行ってくれるのね?
ス:はい・・・。
母:そう・・・。ヨンジョンたちをよろしくお願いしますね。(スワンを見つめる)
ス:はい。(見つめ返す)


ヨ:お母様。改めて紹介するよ。孫のヒョンスだよ。ヒョンス・・・お祖母様のところへ行ってあげなさい。
ヒ:・・・うん・・・。


ヒョンスが立ち上がって、母親の横へ行き、顔を見せる。


母:(目を輝かせて)あなたがヒョンスね・・・。大きくなったのね・・・ヨンジョンに、そっくり。目も鼻も口元も・・・小さい頃のあなたのお父さまにそっくりよ。
ヒ:・・・。
母:この子は利発ね・・・そうでしょう? 顔を見ればわかるわ・・・。それに、新しいお母さまも大好きね? この子の目を見ればすぐわかるわ・・・。


母は孫のヒョンスをじっと見つめる。


ヨ:ヒョンス。お祖母様に何か言ってあげなさい。

ヒ:・・・お祖母様・・・。(少しかすれたような声で呼ぶ)
母:そうよ、私がヨンジョンの母です・・・。あなたのお祖母様よ・・・。お祖母様には、あなたのお父さまは、今でも自慢の息子なのよ・・・。お父さまのこと、忘れたことなんてなかったわ・・・。でも、あなたに逢いにいけなくて、ごめんなさい。あなたを今まで抱いてあげられなくて、本当にごめんなさいね・・・。(愛しそうに、息子にそっくりな孫の目を見る)
ヒ:・・・。


ヒョンスもじっと母親を見つめた。
この人の目はとてもやさしい・・・。



母:いい子に育ったのね。あちらのお祖父様、お祖母様はあなたをかわいがってくれる?
ヒ:はい・・・とても・・・大事にしてくれます。


母は涙が出てきてしまった。

この子は利発で言葉を選んで答えている。
でもきっと、あちらの家では、ふつうに子どもらしく過ごしているのだろう。
初対面の自分とは、そんな風にはできないし、こちらにもまだ遠慮があって・・・。



ヨ:じゃあ、僕たちはこれでお暇するよ。(立ち上がる)
母:ヨンジョン。(寂しそうに見上げる)

ヨ:お母様もお元気で。
母:ヨンジョン・・・。
ヨ:ごめんよ、ここには長居はできない・・・お父様がいるからね。でも、結婚を許してもらえてよかったよ。

母:ヨンジョン・・・元気でね。
ヨ:ええ。お母様もお体を大切にしてください。(見つめる)


ヨ:さあ、行こうか。

スワンとヒョンスを促して、玄関へ向かう。



玄関を出たところで、母親が追いかけてきた。



母:ヨンジョン!


ヨンジョンが振り返って、母を見た。


母:ヨンジョン! あなた・・・お祖父様に逢いたいでしょう?
ヨ:お祖父様は生きているの? (驚く)
母:ええ。心配してたわね・・・きっと、あなたが心配していると思った・・・。
ヨ:・・・。

母:お祖父様のところへ届く手紙の文字が、名前は違っていてもあなたの字に似ていたから・・・きっと、あれはヨンジョンからの手紙だと思っていたの・・・。
ヨ:・・・。(母を見つめる)

母:でも、私にはお祖父様に聞けなかった・・・この手紙は、本当はヨンジョンからのものですか?って。早く聞けばよかった・・・そうすれば、あなたやヒョンスにも逢えたのに・・・。
ヨ:・・・。(愛しそうに見つめる)

母:一年前に、お祖父様は脳溢血で倒れて、ずっと丘の上の大学病院の施設にいるのよ・・・。
ヨ:お母様・・・。
母:心配したわね・・・返事がなくて・・・お祖父様からの返事がなくて・・・。


ヨンジョンは泣きそうになった。


母:お元気よ。とてもお元気。体はもう半身不随だけど、頭はとてもしっかりされているの。
ヨ:施設に入れたままなの?
母:お祖父様がこっちには戻りたくないって・・・。もうお父様とは暮らしたくないって。それに、お父様の代わりにいろいろな会合に顔を出さなくちゃいけない私がかわいそうだって。私に負担をかけたくないって、おっしゃって。


母:ヨンジョン、逢いたいでしょ? 行ってあげて。お祖父様のいる施設はとてもちゃんとしたところだから、安心してちょうだい。その様子も見てくるといいわ・・・。
ヨ:うん・・・。

母:元気でね、あなたも、ヒョンスも、スワンさんも。(3人の顔を順に見る)3人で幸せにおなりなさい。
ヨ:・・・お母様もお元気で・・・。お体を大切にしてください。・・・また、いつかお会いしましょう。



母は涙が出てしまう。

ヨンジョンは「また来るよ」とは言わなかった。
その代わり、「また、いつかお会いしましょう」と言った。


それでもいい・・・自分たちがしてしまったこと・・・夫と一緒に、自分も最愛の息子を捨ててしまったのだから・・・。





ヨンジョンたちが車に乗り込んだ。


母は助手席のスワンに向かって言った。


母:幸せになってね。あの子は、ヨンジョンは、とてもやさしい、いい子ですから・・・。
ス:はい。私もヨンジョンさんのために頑張ります。
母:うん。(頷いて笑った)


ヨ:じゃあ。(顔を母親のほうに向けて車を発進する)



母はヨンジョンたちの車が見えなくなるまで、見送った。




ス:なんか、お母さん、かわいそうだったね・・・。
ヨ:・・・・。
ス:あれでよかったのかな・・・。
ヨ:・・・また・・・時間を空けてくるよ・・・。父が頑な人だから、今のところ、母も従うしかないんだ。もう少し、様子をみよう・・・でも、結婚は賛成してくれたじゃないか。それだけでも進歩だよ。よかったよ。
ス:うん・・・。(ちょっと切ない・・・)






ヨンジョンたちの車は、丘の上の大学病院の付属老人施設の駐車場に入った。

そこは緑の多い作りで、なんとも和やかで、ゆったりとした風情があった。


受付で、「チェ・ヨンジョンを訪ねてきた孫のチェです」と告げた。

受付からの呼び出しで、中からナースが一人出てきた。



ナ:チェ・ヨンジョンさん?
ヨ:はい。
ナ:(笑う)やっぱり。お祖父さんと同じ名前の、自慢のお孫さんね。どうぞ、こちらへ。



ナースに案内されて、彼らは一階の一番奥の部屋へ入った。


ナ:ヨンさ~ん。お孫さん一家がお見えですよ。
爺:なんて言った!

ナ:今日は豪華よ。お孫さん一家よ。
爺:え?


窓辺で車椅子に座っていた祖父が入り口のほうを見た。

懐かしいヨンジョンが子どもと若い女性と一緒に入ってきた。


爺:ヨンジョンか!(うれしそうな声を出す)
ヨ:おじいちゃん!


ヨンジョンが泣きそうな顔になって、祖父の近くに走り寄る。


ヨ:心配したよ。
爺:元気だったか・・・。倒れちまったからな・・・おまえに連絡の取りようがなくて、悪かったな、心配させて・・・。でも、こうしてちゃんと生きとるぞ。
ヨ:よかった・・・。


ヨンジョンは涙を貯めて、祖父を見つめ、痩せて小さくなった祖父の頭を撫でる。


爺:痩せて小さくなっちまっただろう・・・髪もスカスカだ・・・。
ヨ:でも、素敵なままだよ。(微笑む)



祖父は、清潔な感じのおしゃれな部屋着を着ていた。
そして、その人柄が思わせるやさしくてほがらかな笑みを浮かべた。


爺:ほらほら。そっちのかわいいひ孫や別嬪さんを紹介してくれ。
ヨ:二人ともこっちへおいで。


スワンとヒョンスが祖父に近づく。


ヨ:おじいちゃん、これがオレの子だよ。
爺:ヒョンスだ。
ヨ:よく覚えてるねえ・・・。(感心する)

爺:頭はいかれてないんだ。体はちょっといかれちまったが。(笑う)ヒョンス君、かわいいなあ。ヨンジョンの小さな時にそっくりだ。しっかりした感じの子だねえ。
ヨ:うん。こっちが、今度結婚するキム・スワンさん。
ス;よろしくお願いします。(頭を下げる)

爺:ううん・・・そうか・・・。最後に読んだ手紙では、ヒョンス君のお母さんが病気だと書いてあったな・・・そうか。それは、ヨンジョンもヒョンス君も苦労したな・・・。しかし、よかった! こんな別嬪さんで!


ヨンジョンたち3人が笑う。


爺:ヨンジョンはわしの名前を取っただけあって、わしと好みが一緒だから・・・。うん、いいぞ、なかなか。この別嬪さんは。


ヨンジョンが照れて笑った。


爺:明るそうなお嬢さんでよかった。ヒョンス君、君もこのスワンさんが好きだろう?
ヒ:・・・はい・・・。
爺:うん・・・血筋は争えないな。いい目をしてるぞ。




そこへ、ヘルパーのホンさんが入ってきた。



ホ:ヨンさん、今日はよかったねえ。若いヨンジョンさん一家が来たんだって。
爺:よくわかったなあ。ほら、見てごらん。わしの若い頃によく似たハンサムだろう?

ホ:う~ん・・・こちらさんがハンサムなのはわかるけど、それで、ヨンさんまでがカッコよかったかわかんないわよ。(笑う)どうするの? 皆で散歩にでも行ってきますか?

爺:君はホントにいつも頭が回るなあ。
ホ:じゃあ、ご用意しますね。


ホンさんが棚から、カシミアの赤いタータンチェックのひざ掛けをとり出す。


ホ:これ、大事なお客様用ね。(ヨンジョンたちの顔を見る)


今かけているひざ掛けを外し、かけ直す。
髪をくしで撫で付ける。
そして、お気に入りのモスグリーンのマフラーをする。

それをヨンジョンがじっと見つめている。



ホ:ああ、このマフラーって、お孫さんがアメリカに留学してたときに、送ってきたやつだったわね・・・。もしかして、あなた?
ヨ:ええ・・・。(胸がいっぱいになる)


爺:スワンさん、これがわしのお気に入り。ほら、センスがいいだろう? おしゃれ。そこがお気に入りの要素。(笑う)
ホ:まあね、お孫さんの愛もたっぷりだけど。この人、爺さんのくせにおしゃれなの。(笑う)で、部屋着はデパートの通信販売でお取り寄せなんだから。(笑う)

爺:そのくらいの贅沢をしないとここでは生きていけんだろう。
ホ:まあね。他になんの変化がないもんね。じゃあ、お祖父様、行っていらっしゃいませ。(頭を下げる)






ヨンジョンが車椅子を押しながら、4人で庭を散歩する。


ヨ:ここはキレイなところだね。街が一望できるし、緑は多いし・・・。
爺:だから、帰りたくなくなった。(笑う)あの苦虫を噛み潰したような息子の顔を見るより、こっちのほうが清々する。そこのベンチが一番眺めがいいぞ。

ヨ:ここ?
爺:そう、そこ。皆、お座り。



スワンとヒョンスが並んで座る。
ヨンジョンが祖父の車椅子を止め、近くに座る。



爺:スワンさん、ヒョンス君。あのオヤジさんと会ったね。
ス:はい。
爺:うん。ヨンジョン、なんか話をしたのか?
ヨ:いえ、ただ結婚の許しをもらっただけです・・・でも、それで、お父様の気持ちはわかったよ。


爺:うん。まあ、よかった。あいつも心中は、おまえがかわいいんだ。スワンさん、ヒョンス君、あいつはソウル大学を落ちてから、あんな調子だ。気にせんでいい。根は気のいいやつだが、受験の失敗で少し劣等感を持った。それが尾を引いて、生き方が少し窮屈で厳しいんだよ。
ヒ:・・・。


爺:ヒョンス君、お父さんが若くて結婚しちゃったことが気に入らなかったのさ。もっとエラくなってから、結婚してほしかったから。
ヒ:でも、今はお父さんも大学の先生で、エライんだよ。

爺:そうか・・・それはよかった。お父さんみたいにちゃんと生きられる人は、途中何があっても、結局はしっかりした人生を歩むもんさ。あのオヤジはそれが待てなかったんだよ。ヒョンス君は、いい子のようだから、この爺も安心しているよ。


祖父がヒョンスを見て微笑んだ。
ヒョンスも祖父を見て、スワンを見て微笑みを返した。



ヨ:おじいちゃん、今度結婚したら、アメリカの友達の会社を一緒にやっていくんだ。だから、しばらくは逢えないんだ・・・。
爺:うん・・・それはよかったな。おまえは優秀だから、自分の信じた道を進めばいいんだよ。そうか、逢えんか・・・。まあ、いつかまた逢えるだろう・・・。今日は元気な顔を見られただけ、よかった。


ヨ:うん・・・。(頷く)スワン、ヒョンス。このおじいちゃんはね、お父さんが留学する時に、密かにお金を届けてくれたんだよ。
ス:・・・。(胸が熱くなる)


爺:そんなこともあったなあ・・・おまえに会いに行った・・・。あの日は5月だというのに寒かった。二人で食事をして・・・おまえを送り出したんだ・・・。ずいぶん、昔のような気もするし、昨日のような気もする・・・。
ヨ:・・・ありがとう・・・。(祖父の手を握る)


爺:もう十分、自分の足で立てる男になってしまったな。いい男になった。顔でわかるぞ。
ヨ:・・・。(微笑んで手に力を入れて握る)


爺:また・・・お母さんには逢いに来てやれ・・・あれは、お父さんに口答えが出来ない人だから・・・。
ヨ:・・・はい・・・。
爺:お父さんが議会に出ている時は、地元をしっかり守っているぞ。皆に腰を低くしてな。

ヨ:・・・わかったよ・・・。
爺:それくらいかな・・・言い残すことは・・・。
ヨ:おじいちゃん・・・。
爺:大丈夫。まだ、生きるよ。おまえに逢えたわけだし、また、生きる楽しみが増えた。ヒョンスの成長も見守りたいしな。
ヒ:・・・。


爺:そして、スワンさんと幸せになるところも見守りたいしな・・・。ヒョンス君、若いお母さんが出来てよかったな。
ヒ:・・・はい。
爺:だいたいの人は、母親は一人しか出会えないものだが、君はラッキーだった・・・。だから、本当のお母さんのことはいい思い出として、大切にしまって、これからは若いお母さんと楽しく生きなさい。
ヒ:・・・はい。お父さん、おじいちゃんはお父さんと同じようなことを言うねえ。

ヨ:そうか?
爺:そら、おまえの親父さんは、わしの弟子だからな。
ヨ:孫だよ。(笑う)
爺:そうだ、孫だ。(笑う)3人で幸せになりなさい。そうか・・・。お父さんもお母さんもまだまだ若いから、ヒョンス君。君は10人兄弟のアニキになる可能性もある!
ヒ:え!


爺:それも人生の不思議だよ。おもしろい誤算だ。楽しみなさい! いいね。(ヒョンスの顔を見る)
ヒ:はい!


ヨ:おじいちゃん、部屋に入ろうか、寒くなってきたから。
爺:そうだな・・・。ベッドに寝ながら、おまえの顔を見させておくれ。ゆっくりおまえを眺めていたいから。
ヨ:いいよ。じゃあ、中へ入ろうね。









帰りの車の中で、スワンがヨンジョンの顔を見た。


ヨ:なあに?
ス:うん? いいおじいちゃんだったと思って。
ヨ:そうだろう・・・いつも楽しくて、こっちを幸せにしてくれるんだよ。
ス:うん・・・ヨンジョンによく似てるよ。
ヨ:・・・。それに、いつもオレを蔭で援助してくれた人なんだよ。
ス:スーパーおじいちゃんだね。


ス:ヨンジョン、私、なんか、勇気が沸いてきたわ。
ヨ:どんな?
ス:人って、親じゃなくても、その人をちゃんと見守ってくれる人がいれば、グレないで生きられるんだなって。ちゃんと幸せになれるんだなって。
ヨ:・・・うん、そうか。
ス:だから、私も、ヒョンスをちゃんと見守るわ。ママじゃなくても、育ての親のおじいちゃん、おばあちゃんじゃなくても、ちゃんと対峙して育てれば、うまくいくって。そんな自信を今日、もらった気がする・・・。


ヨ:うん・・・。それで、10人兄弟のほうの計画はどうする?(笑う)
ス:やあだあ・・・それは乗らないわよ・・それはやだ。
ヨ:そうかな・・・それに一番、感動したけどな。(笑う)
ス:やあよ。それはや。その計画は没。だめよ、そんなこと、考えちゃ。だめだからね!



ヒ:どうしたの?


後ろで、ヒョンスが起きた。


ス:お父さんがね、おじいちゃんの10人兄弟計画が気に入ったって。でも、やだって言ったの。ムリだもん。ヒョンスだって、やよね?
ヒ:僕は・・・3人くらいがいいな・・・弟と妹がほしい・・・それもいいなって今日、思ったよ。



スワンは胸がいっぱいになった。

やっぱり、元祖ヨンジョンは人生の達人だ。
人の心にやさしく語りかけてくる・・・。

あの人は、老人だったけど、いいニオイがした・・・。ちっとも感性が古びていなかった・・・。




ヨ:さ、一気に大学まで帰るぞ!と思ったけど・・・スワンの家へ寄って行こう。
ス:なんで?
ヨ:婚姻届にサインをもらおう。
ス:・・・。
ヨ:それに、まだヒョンスを紹介していなかったし。ちゃんと3人で行ってお許しを頂こう。
ス:・・・。うん。そうだね。母さんに電話してみる。ちょっとだけ寄りますって。・・・早くしたほうがいいよね・・・。それで、皆で一緒に暮らそう。(後ろを見る)ね、ヒョンス!
ヒ:うん!



ヨンジョンたちの車は方向を変えて、一路、スワンの母のもとへ向かった。




二人の結婚の準備はできた。

あと少しでゴールだ・・・結婚の。


婚姻届を出したら、大学に届け出て、今後の方向を決めよう。

私たちはもう家族だもん。







続く・・・




2009/07/27 00:24
テーマ:【創】「アマン」第1部 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【創作】「アマン」18





BGMはこちらで^^


なんと!
77777の切り番、踏んだ人レスください!^^

BYJシアターです。
本日は「アマン―夏の恋人」18部です。


ではお楽しみください。








母さんは言った。

スワン、幸せって実は私たちのすぐ近くにあるものよ。

父さんと母さんはね、幼なじみでいつも一緒だったけど、
そこに愛があることに気づかないでずいぶん長い間、回り道しちゃった・・・。

でもね、よく見たら、すぐ目の前に幸せがあったのよ。

おかしいわね。


あなたは夢が大きいから、いつも遠くばかり見ているけれど、
たまには、近くも見たほうがいいわ。

遠くばかり見ていても探せないこともあるのよ。






ぺ・ヨンジュン
チョン・ドヨン主演

「アマン―夏の恋人」18





ヨ:スワン? スワン!
ヒ:スワンさん? あれ、どこ行っちゃったのかな?


夜も10時を回って、ヨンジョンとヒョンスがユンアの実家から帰ってきた。
二人はマンションのドアを開けるか否や、スワンを探している・・・。


だって・・・出迎えてくれないから・・・。


今日は、ヒョンスの祖父母のヒョンジュンたちに、ヨンジョンの結婚を許してもらい、二人の新生活へのはなむけに、食事をご馳走になった。

これで孫との縁も遠のくであろうと感じたヒョンジュンが、最後にヒョンスに花札を教えると言い出して、二人は帰りが遅くなった。
でも、ヒョンスにとっては、ずっと育ててくれた祖父との思い出がまた一つ増えたわけで、ヨンジョンも一緒になって、ヒョンスとヒョンジュン夫妻との時間を名残惜しそうに過ごした。


スワンには、ヨンジョンから、「うまくいったよ。夕飯はこっちでご馳走になっていくから」というメールを送ったので、スワンは帰りが遅くなることは承知している。

それにしても、スワンはどこへ行ったのやら・・・。


ヨンジョンの寝室のドアを開けると、スワンがベッドで読みかけの本を横に熟睡していた。


ヨンジョンとヒョンスは顔を見合わせて笑った。

ヨンジョンがベッドサイドの明かりを小さくして、スワンの肩まで布団をかけた。



ヒ:寝ちゃったね。(小さな声で言って笑う)
ヨ:こっちは風呂でも入るか!
ヒ:うん!



スワンは、二人が遅くなるだろうと思い、シャワーを浴びて、ベッドで本を読んでいるうちにうとうと寝てしまった。

ホントは起きて待っていたかったのに・・・。
二人の報告を聞きたかった・・・待ちきれない気分を、我慢して我慢して待っていたのに・・・。

突然やってきた睡魔に襲われて・・・今は、二人のことなど、すっかり忘れて眠っている。





ヒョンスを寝かせ、寝室にやってきたヨンジョンがベッドに滑り込む。
スワンの枕と首の間に左腕を滑り込ませ、後ろから抱きしめた。


ヨ:スワン?
ス:・・・・。


ヨンジョンは上半身を少し起こして、スワンの顔を覗く。


ヨ:スワン?
ス:・・・。(スースーという寝息が聞こえる)


ヨンジョンはまた寝る態勢に戻って、後ろから、スワンのTシャツの中に手を入れ、胸を触る。


ヨ:スワン?
ス:・・・う~ん・・・。
ヨ:ふ~ん・・・。ねえ・・・。



ヨンジョンの手が下がって・・・下着の中へと手が下りていく・・・。


ヨ:ねえ、スワン・・・。
ス:う~ん・・・待って・・・。(ちゃんと答えているのか、寝言なのか・・・)
ヨ:ねえ・・・。ねえ、スワン。
ス:う~ん・・・。


ヨンジョンが触って、少しスワンの体は反応したが、スワンは「う~ん」としか言わない・・・。


ヨ:だめなの?
ス:・・・。


ヨンジョンがまた起き上がって、顔を覗きこむ。


ヨ:ふん。(笑って)泥棒だよ。
ス:・・・わかってるって・・・。(わかっているのか、わかっていないのか・・・)
ヨ:ねえ・・・。


顔を見つめるが、スワンは気持ち良さそうに寝ながら、答えているだけだ・・・。


ス:・・・。
ヨ:オヤスミ。(きっぱりと言う)


ヨンジョンは諦めて、スタンドの明かりを消し、眠りについた。






真夜中・・・。

雷の音がして、スワンは、目を覚ます。
隣にヨンジョンが寝ていた。


ス:あら・・・。ヨンジョン? (なんだあ。どうして、起こしてくれなかったの?)
ヨ:・・・。
ス:ヨンジョン?
ヨ:・・・。


報告、聞きたかったのに・・・。
待ってたのよ、ずっと。


ヨンジョンはスワンの上に折り重なるようにして、寝息を立てて寝ている・・・。


ヨンジョンたら・・・。





ヒ:・・・お父さん・・・。

ドアの向こうでヒョンスの声がした。
スワンは、重いヨンジョンの腕を押しのけてベッドから起き上がり、ドアを開けた。


ス:(小さな声で)どうしたの? (顔を見る)
ヒ:・・・。
ス:なんかあったの?
ヒ:雷の音がして・・・。

ス:(ちょっと微笑んで)怖かった?
ヒ:うん・・・。
ス:(後ろを振り返って、小さな声で)お父さんはよく寝てるから・・・私と一緒に寝よう。
ヒ:・・・。
ス:子ども部屋で一緒に寝よう。行こう・・・。(ヒョンスの背中を押すように歩く)





スワンとヒョンスは今、ヒョンスのシングルベッドで並んで寝ている。
二人の目は斜め上の天井を見ている。


ス:(囁くように)怖かった?
ヒ:うん・・・。
ス:私も小さい頃は怖くて・・・姉の布団や母さんの布団に潜り込んだわ。
ヒ:・・・そうなんだ・・・。あの家のお姉さん?
ス:そうそう、あの家のお姉さん・・・。ヒョンスより小さい男の子がいるのよ・・・。
ヒ:お姉さんと、年が近いの?
ス:姉とはね・・・7歳違うの。妹とは2つ違い。姉と私の間に、本当はもう一人いたんだけど、生まれてすぐ死んじゃった・・・。だからちょっと、母さんもショックで、私と姉の間の年が空いてるんだ・・・。
ヒ:へえ・・・。

ス:だからね。姉は私や妹にとっては、小さなお母さんだった。小さい頃の7歳って凄い差だからね。

ヒ:ふ~ん・・・。僕にも、兄弟ができるのかな・・・?

ス:・・・。どうかな・・・。それは神様だけが知ってるよ。私たちが・・・もっと幸せになりたいと望めば・・・。(そう言っていいのだろうか・・・)
ヒ:望めば?
ス:神様がくれる・・・。でもね、仲良しの家族でも、それで良しと思えばもう来ない・・・。どんなに仲のよい家族でもね。それって、人間が決めるんじゃないんだ。
ヒ:へえ・・・そうなんだ・・・。


ス:今日はどうだった? おじいちゃんたち・・・寂しがったでしょう・・・。
ヒ:うん・・・。僕がお父さんたちと一緒に、アメリカへ行くって言ったから・・・。

ス:そうなの? お父さんから聞いたのね?
ヒ:うん・・・。行きの車の中で。

ス:そうか・・・。ごめんね・・・私たちの都合でいろいろ連れ回しちゃって・・・。
ヒ:・・・お父さんもそう言ってたよ・・・。


ス:うん・・・。大学にいるとね・・・お父さんも辛いんだ・・・本当は。
ヒ:あの先生と噂されてるから?
ス:う~ん・・・それよりね・・・ヒョンスのママも立派な先生だったでしょ? ママを知っている人がいっぱいいるから、いつも、思い出して悲しくなっちゃうんだ・・・。
ヒ・・・そうなんだ・・・。


ス:わざわざ、ヒョンスとの時間を作るために、大学に勤めたのにね・・・忙しくて・・・その上、ママを思い出しちゃうから・・・お父さんも韓国の大学にいるのが辛いんだ、今は。
ヒ:・・・・。


ス:だから・・・もっと違うところで、ラクな気分で暮らしたいんだよ、お父さんも・・・。
ヒ:・・・そうなんだ・・・。
ス:それもあって、一緒にアメリカへ行こうって。



ヒョンスが隣に寝ているスワンの横顔を見た。


ヒ:スワンさんも大変なの? なんか・・・痩せたね・・・あの先生のせい?



スワンはまだ本当の理由は言えない・・・。



ス:あの先生はね・・・私の学校の先輩なんだよ。
ヒ:へえ・・・。

ス:あの先生がね、あそこの大学を紹介してくれたんだ・・・。お父さんにもね。
ヒ:そうなの?
ス:そう・・・だからね、ジョンア先輩に、お父さんと私が結婚するって言うのが・・・なんか悪くて言えないんだ。
ヒ:・・・。


ス:でもね、お父さんは一人しかいないし・・・私たちが幸せになるためには・・・言わなくちゃいけないよね?
ヒ:・・・うん・・・かわいそうだけどね。
ス:そうだよね・・・。だから、あっちへ帰ったら、ちゃんと話さなくちゃ・・・傷つけないように・・・。それに、お父さんも来年になったら、大学をやめちゃうから・・・それも話さなくちゃ・・・。

ヒ:たいへんだね・・・。
ス:うん・・・。明日、ヒョンスも、初めてお父さんのご両親に会うんだね。
ヒ:うん・・・怖い人たちかな・・・今までずっと会わなかったなんて・・・。

ス:わからない・・・。でも、お父さんのご両親だもん・・・悪い人じゃないよ、きっと。
ヒ:なんで、お父さんと会わなかったのかな・・・。

ス:・・・。人ってさ、なんか誤解しちゃうことがあるんだよね・・・。相手のことを間違えちゃう・・・ホントはいい人なのに、悪い人だと思ったり・・・だから、ちょっとした誤解なんだよ、きっと・・・。


ヒ:仲直りできるかな?
ス:お父さんを助けてあげよう・・・仲直りできるように。
ヒ:うん・・・。


ス:ヒョンス・・・。私たちは、お互いを誤解しないようにしようね。
ヒ:うん。
ス:たとえ・・・どんなに辛い時でも、ちゃんと気持ちを話し合おうね。
ヒ:辛い時も?

ス:そう・・・。辛い時って話したくないから・・・誤解することが多いよ・・・だから・・・。
ヒ:お父さんもそうだったのかな?
ス:そうかもしれないね。


ヒ:そうなのかな・・・。
ス:明日は、頑張ろうね。
ヒ:うん・・・。
ス:もう、寝ようか。もう遅いから。
ヒ:うん・・・。


スワンは、ヒョンスの手を取って、二人は手をつないで眠りについた。






翌朝、ヨンジョンが目を覚ますと、ベッドの中にはスワンはいなかった。

起き上がって洗面所へ行き、トイレの帰りに、子ども部屋を覗く。

スワンは、ヒョンスと一緒に寝ていた。



ヨンジョンがスワンの肩を揺らす。


ヨ:(小さな声で)スワン、スワン。
ス:(目を開ける)ヨンジョン? ああ・・・。(隣のヒョンスを見る)
ヨ:おいで・・・。
ス:うん。(静かに起き上がる)


ヨンジョンとスワンは寝室へ戻った。


ヨ:どうしたの?
ス:夜中に雷が怖いって。
ヨ:そうか。
ス:今、何時?
ヨ:えっと・・・6時。
ス:そう。


ヨンジョンが笑う。


ス:なあに?
ヨ:昨日はよく寝てたね。
ス:あなただって、グーグーよく寝てたくせに。(笑う)
ヨ:そう。(スワンをベッドに引っ張る)君なんか、泥棒に触られても、わからないくらい、寝てたよ。
ス:変なことしたの?
ヨ:してないよ。おいで・・・もう少し寝よう・・・。


スワンが笑った。


ヨ:なんだよ。
ス:私って人気者ね。
ヨ:ふん。(笑う)今のところはね・・・。
ス:ひどい!


ヨンジョンは目覚ましをセットし直して、また二人は眠りにつく。

今度こそ、二人はうれしそうに抱き合って・・・。






午前10時を過ぎて、今、三人はヨンジョンの車に乗って、彼の実家へ向かっている。

ヨンジョンの家は、ソウル郊外にある。


父親は長く役所に勤め、今は地元から立候補して、市会議員をしている。

ヨンジョンは、父はとても実直な人だと言った。
真面目に働いて、その功績で現在があると・・・。

最高学府に入学を許されたヨンジョンは、当時は自慢の息子であり、家族の期待の星だった。

母も真面目な父によく尽くした人であった・・・。
だから、大学の先生であるユンアを妊娠させ、学生の身分で結婚という顛末を受け入れた息子を、父が失望して、結婚の承諾だけはしたものの、勘当を言い渡した時、母もそれに従った。


ス:よく晴れてるねえ。
ヨ:そうだなあ・・・。
ス:ここへ来るのって11年ぶり?
ヨ:うん・・・。


あともう少しでヨンジョンの家が見えてくるはずである。



ヨ:ずいぶん、家が建ったなあ。昔はこの辺てススキの原だったよ。
ス:そう・・・。キレイな新興住宅地に変身しているのねえ。
ヨ:うん・・・。


ス:ヨンジョン、まずはヨンジョンだけで会ったほうがいいね・・・。ヒョンスは私が見てるよ。
ヨ:そうだな・・・。



後ろの席で、ヒョンスは窓の外を眺めている。しかし、この父とその両親の間に何があったかわからないが、今日という日が父親にとって重い日であることはよくわかる・・・。



ヨ:ついたよ。車を庭に入れられるかな。


車を門の中まで入れて、家の前に止める。


ス:大きな家だね・・・。(車の助手席から覗く)
ヨ:古いだけだよ。昔、じいさんの代までは、ここの名士だったから・・・。
ス:今もそうじゃない。
ヨ:まあ、そうか。でも、父は勤め人になったから、実際にはずいぶん暮らしぶりは変わったと思うよ。だから、じいさんと父では、かなり性格が違ったよ。
ス:ふ~ん、ヨンジョンは誰似?
ヨ:じいさん。(笑う)いつも一緒にいたからね・・・。ヒョンス、おまえと一緒だよ。(そういって、ヒョンスを見た)


ヒョンスは、ちょっと笑ったが、家の様子を見ている。



ヨ:じゃあ、まずはオレ一人で行くよ。
ス:うん・・・うまく話ができるといいね。
ヨ:・・・。



ヨンジョンが広い玄関に入っていった。






スワンとヒョンスは所在無げに黙っている。中で、ヨンジョンはどうしているのか・・・。




応接間にヨンジョンが座っている。

母親がお茶を入れてきた。


ヨ:すみません・・・。
母:いいのよ・・・。
ヨ:お父様はまだ?
母:ええ、今、こっちへ向かっているわ・・・。ずいぶん、立派になったのね・・・。



母は感慨深げに、ヨンジョンを見つめた。
母は髪が白くなった・・・別れた時は、年より若く見えたのに・・・今でも、60過ぎにしては若いけれど、嘗ての溌剌とした感じはなかった・・・。



母:今日は一人?
ヨ:いえ、3人で。
母:そう・・・あの方も見えたのね?


ヨ:お母様、彼女はもう亡くなったんだよ。
母:え?
ヨ:胃がんで亡くなりました・・・。今日は、息子と・・・今度結婚する人と一緒に来たんだ・・・。
母:まあ、そうだったの・・・。(少し目を落とす)それは・・・お悔やみも言わないで・・・あちらのお宅に失礼してしまったわねえ・・・。

ヨ:いいですよ。僕は勘当されているわけだから・・・。
母:(胸が痛い)・・・。それで、今日は、今度の結婚の承諾がほしいの?
ヨ:・・・実は、結婚したらアメリカへ行くので・・・また会うチャンスを考えたら・・・今を逃してはいけないと思って・・・。

母:アメリカへ?
ヨ:ええ。結婚したあと、アメリカへ留学したんです・・・そこで、学位を取ったから。その時の友人の会社を手伝うことになって。
母:そう・・・建築の仕事をしているのよね?
ヨ:今は、大学で教鞭を取っているんです。結婚を機にまた設計の仕事に戻ろうと思って・・・。
母:そうなの・・・。立派に生きているのね・・・。





スワンたちの待っている車の横に、黒塗りの車が止まって、中から恰幅のいい男性が出てきた。
運転手に見送られ、玄関近くに来て、何やら運転手に指示して、中へ入っていった。



運:あのう・・・。
ス:はい。
運:先生のご子息の関係のかたですか?
ス:ええ。
運:先生が中へ入るようにと。

ス:あ、でも・・・。今はここで待つと・・・。
運:中へ入ってください。先生が中でお待ちです。


ス:あ、はい。ヒョンス、降りよう。
ヒ:うん。



スワンは、小さな飴を口に入れて、助手席の車の鏡で顔をチェックした。
そして、車から降りた。
後ろから降りてきたヒョンスの全身をチェックする。


ス:行こう。何があっても、私たちはお父さんの味方だよ。お父さんがご両親と仲直りできるように、頑張ろうね・・・。
ヒ:うん・・・。



二人は、緊張した面持ちで、運転手の案内で、ヨンジョンの実家の玄関へ入った。










続く・・・



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