2011/04/25 01:54
テーマ:【創】キコはん カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

キコはん23「いつも一緒に・・・」






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こんばんは^^

BYJシアターです。


昨日(24日)もプサンへ行って、プサンに何があるんでしょうね?^^
先日、プサンの駐車場でフェラーリを花壇に擦ってしまったからか、
今回は、ランドローバージープだったそうで・・・。
車、大切にしてください^^

では、

今日はキコはん23「いつも一緒に」です。

これは、2008年「離れていても」のイベントの後日談です^^






ではお楽しみ下さい^^






~~~~~~~~~~~~~







「お帰り!」

「ただいま。・・・。よく来てくれたね」
「・・・うん・・・」







キコはんシリーズ23
「いつも一緒に・・・・」
2008/12/26作品





それは、12月15日のことだった。



14日の横浜アリーナのペ・ヨンジュン「離れていても」のイベントに出たキコはんは、新横浜駅のコインロッカーからボストンバッグを取り出した。


「キコちゃん、お姉ちゃんと夕飯だけでも食べていき~」
「う~ん・・・。そやなあ・・・そうするか」
「あんた、こんな大切な日ぃに、なんで出かける約束すんねん」
「そやけど、仕方ないやろ。仕事なんやもん」
「仕事て言うたかて」
「仕方おへん。うちに出資してくれてるお偉いさんがソウルまで来や~って言うてるやもん」
「なんか、変なこと、せえへんやろか・・・」
「(そら、してもらわんと・・・) そんな! ものすごい爺ちゃんなんやで」
「そうか?」


姉は驚いた顔をして、キコの顔を覗いた。
ご存じの通り、大磯に住む姉もペ・ヨンジュンの家族である。


「うん。もういい年のお爺ちゃんでな、うちの仲居の姿に惚れたんよ」
「そうかあ」
「そんで、あんたのために、キムさんを貸そうて」
「へえ・・・いい人なんやねえ・・・。私も会うておいた方がええのやろか?」
「そんなんせんでえ。うちが一人でやってると思うてるから、力貸してくれてるのや。お姉ちゃんが手伝うてるなんてバレたら、ヤバいわ」
「・・・そうかあ・・・」


ヨンジュンさんてバレたら、エライこっちゃ・・・。


「何、食べよか」
「何でもええよお・・・あ、でも、韓国もんはやめとこ。お爺ちゃんと食べるさかい」
「そやな。あ、アリーナの帰りがけにギョウザのお店があったなあ。あそこにするか?」
「また戻るんか? まあ、ええけど」

「あんた、明日は何時の便や?」
「7時半」
「早いなあ」
「そやから、今晩は新橋のホテルに泊まるのや」
「もっと遅い便で行けばええのに」
「相手がお爺ちゃんやろ? 早起きなのや。だから、朝から会いたいて」
「ふ~ん。まあ、仕方ないけど、こういっちゃなんやけど、我儘なお人やな」
「まあねえ・・・」
「ヨン様やったら、そんな我儘言わへんよね。人の気持ちに立って・・・」
「なんでヨン様なんよ? さあ、お店へ行くで」
「なんで、あんたはそんなに冷たいのや。今、中継でヨン様に会うて心がホクホクしてるとこなのに。ヨン様の話をしたいのや!」
「ああ、そうやったね。(笑) ホンマにそうやな。元気そうでホッとしたわ」
「ん? ホッとした? ・・・。う~ん、まあ、そうやね。うん、ホッとした^^」



お姉ちゃん、ヨン様かて、ホンマは少し我儘やで。









「ええ? 15日?!」
「うん。その日がオフだから」
「でも、前の日に、イベントにうちもお姉ちゃんと一緒に行くんやで」
「こっちで会えるのに、なんで行くの?」
「そう言われるとなあ・・・」


これは家族の習性としか言われへん・・・。


「15日は朝から空いてるからさ」
「う~ん・・・朝て言われてもなあ・・・」
「ええと・・・7時半羽田発でチケット取るよ」
「そんな早く!」
「ええと、新橋のホテルはもう取ったから」
「ええ!」

「ねえ」
「何?」

「キコのお店が月曜日定休だから、こっちも月曜日空けたんだよ・・・」
「ああ・・・」

「年末は来られないだろ?」
「うん、そやな・・・」


というわけで、急遽、ソウルに行くことになった・・・。
そして、マンションの鍵と秘密の暗証番号をもらった・・・。



ソウルの金浦空港に着いたキコの携帯にメールが入った。


「ミアネ…。1件だけ、仕事が入っちゃった。
ホントにごめんね。でも、お昼は食べないで帰ります。
絶対に途中寄り道しないで帰るから、家で待ってて」

なんや・・・。
早起きは三文の損や・・・。


キコがマンションに着くと、部屋はキレイに片付いていた。病気で動けなかった時は何か雑然としていたが、今日はスッキリと片付いている。


元気になったのやなあ。寅ちゃんはキレイ好きやもん。
ええと!
あん人、ご飯食べないで帰るて言うてたもんね。
ということは、「作れ」ていうことやろ?
仕方ないなあ・・・なんて、もう材料買うてるもん^^
二人で食事するのも久しぶりや・・・。





ピンポ~ン!


寅ちゃんやろか・・・?


静か~に、インターホンを覗く。


寅ちゃんや!


「お帰り!」
「ただいま。・・・。よく来てくれたね」
「・・・うん・・・」


ヨンジュンはにっこりと、キコを見つめた。
昨日、スクリーンで見たばかりの寅だが、久々に顔を合わせると、キコは少し照れくさくなった。


「あ~今ねえ、お昼ご飯の支度、してたところ」
「へえ、今日は何かな・・・」


ヨンジュンはうれしそうにキコの両肩に両手を置いて、彼女の後ろを歩く。キコは、その肩に置かれた手から寅の温もりと愛情を感じて胸がいっぱいになった。

キッチンに入ると、おいしそうなニオイがしてきた。


「なんだい? 鍋? チゲ?」
「寄・せ・鍋! うちが来て、こっちのもん、作って食べてもつまんないやろ?」
「そんなことはないよお。キコが作ってくれたら、うれしいよ」
「そおかあ・・・ふ~ん、まあ、ええけど」
「今日は、朝早くに発たせて悪かったね」
「そうや。あ、そうだ! お姉ちゃんがな、そんな朝早くから呼び寄せるスポンサーは我儘だって。(笑)」
「ええ?」

「うちのお店のスポンサー。お金持ちの韓国のお爺ちゃん。(笑) この人、朝早起きやから、仕方ないんやと言うといた」
「ひどいなあ」
「でも、何年かしたらそうやろ?」
「かな?(笑)」
「そうや。(笑)」

「なんか、ちょうだい」
「子供みたいやね。ほな・・・はい、これ!」


キコは近くにあったプチトマトをヨンジュンの口に入れた。


「あ! いかんわ!」
「なんで? おいしいよ」

「まだ、うがいも手洗いもしてないやろ? ダメや、ちゃんとうがいして来な」
「大丈夫だよ」
「インフルエンザにでもなったら、どうする? 外から帰ったら、うがいと手洗い」
「わかった、わかった、わかったよ!」


寅は素直にキッチンから洗面所へ行った。
キコは土鍋を火にかけて、寄せ鍋の準備をする。
今日は20時35分の飛行機で帰る予定だ。
このランチが本日のメイン料理となるわけだ。


「ああ、スッキリした」
「うがいしたんか?」
「うん、歯も磨いちゃった」
「へえ・・・」
「これから、温めるの?」
「うん、もう材料は準備でけてるし、お出汁もでけてる。後はあっためるだけや。他にもいろいろね、冷蔵庫に入ってる」
「へえ、楽しみだね・・・。お鍋がまだなら・・・まだ、食べなくてもいいよね?」
「なんか、食べてきたの?」

「違うよ・・・こっちのほうが食べたいの・・・」


寅がキコを後ろから抱きしめて頬に顔を寄せた。


「もう・・・。そんな・・・」
「待てない時もあるよ・・・・」
「・・・う・ん?」
「わかる・・・?」

「なんかあ・・・」
「・・・・。(笑)」
「ややな・・・あんたの・・・」
「ねえ・・・」
「・・・うん・・・」


キコはレンジの火を消した。


「もう・・・せっかちやなあ・・・」


キコは嫌々のような素振りだが、実は全然嫌ではない。


「だって、久し振りじゃない・・・」
「まあな(笑)」
「いいだろ?」
「うん・・・」

寅は軽くキコの頬にキスをした。



二人はキッチンを出て、リビングを通った。


「あれ?」
「何?」
「ポスター?」

リビングに置かれたキコのボストンバッグの横に、ポスターが2本置かれている。


「あ~あ、お姉ちゃんがFace Shopでポスターもらってきてて言うから。二人分ね」
「・・・」


驚いたような、不思議そうな目をして、寅がキコの顔をまじまじと見た。


「キコの分も?」
「そら、そうや」
「・・・。いつも不思議なんだよねえ・・・。なんで、本人に会ってるのに、ポスターとかいろいろ集めたりするわけ?」
「それが家族や」
「恋人だよ。(笑)」
「それでもほしいの!」
「ホントにその辺、わからない・・・」
「ええやんか、趣味なんやから!」
「ふ~ん」

「なあ、ソファの上でていうのもあるでえ(笑)」
「なんで?」

「え? ちょっと情熱的やろ?」
「でも、もうそこがベッドだよ」
「まあなあ。でも、ドラマでもあるやん?」
「ベッドのほうがいいじゃない」
「まあねえ。でも、情熱が迸るて感じするやろ?」

「掛け布団があったほうがいいだろ?」
「それはそうやけど・・・」
「寒いじゃない」
「それもそうやね・・・」

「どうしたの?」

「ううん。寅ちゃんのそういうこと、好きい(笑)」
「どういうとこ?(笑)」
「わからへん?(笑)」
「わからへん(笑)」
「う~ん・・・そこがええとこ!」
「わかんないよ。なんか、キコの頭の中にはわからない部分がある(笑)」
「寅ちゃんみたいに合理的にでけてないねん。でも、そこが好きやろ?」
「そこが謎だ(笑)」
「もう、ええから!ベッドね」
「うん! なんか積極的だね!(笑)」


寅はうれしそうにキコの肩を抱いた。




「う~うん・・・」


キコの唇から唇を放し、寅が顔を起こした。キコの顔をなめ回すように見つめると、にこっとした。

「満足した?」
「なんやの、それ、寅ちゃんのほうやろ?(笑)」

「そう!(笑)」

「ふん。(笑) 寂しかった?」

「たまに、誰かとキスしたくなっちゃうんだ」
「なんでやの? 男の人としたら、あかんよ」
「そうだね。(笑) それに、急に誰かを抱きしめたくなる・・・」

「・・・・うん・・・。それはうちもある・・・。時々・・・急に、あなたに抱きしめてほしくなる・・・」
「・・・・」
「なんでもない時に・・・。変やろ?」
「僕も・・・。なんでもない時に、いきなり、会いたくなる・・・」


「でも・・・こんなん、いっぱいキスすると、唇が腫れそうや。(笑)」
「そうかなあ」
「うん・・・」


寅がキコの髪を撫でた。


「でも・・・もっとしてえ・・・」
「うん・・・」


寅はそういいながら、キコの股の間に割って入った・・・。


「たくさんしてえ・・・」
「うん・・・」
「なあ・・・もっとしてえ」
「やっぱり、キコのほうがしたがってる」
「違うて! でも、してや」
「ふふふ。うん。(笑)」



二人でいると、今まで離れていたことを忘れる・・・。
ず~っとず~っとそばに一緒にいたような錯覚に陥る・・・。
あんたは、いっつもそうや・・・。
なんでやろ・・・。
一人で寂しがってたことなんて、全然なかったみたいに。




「この間・・・電話の途中で・・・話すのやめたでしょ?」
「そうやった?」
「うん・・・」
「そうか・・・忘れてもうた・・・」
「忘れた?」
「・・・うん・・・」
「そうお?」
「・・・」
「電話を切って、気がついたんだ・・・。君は、いつも元気って言うけど・・・。ホントはあの時・・・」
「・・・」
「泣いてたんだって」
「泣いてなんか・・・」
「でも、ちょっと鼻がつまってたよ・・・」
「・・・」

「いつも・・・一人にさせて、ごめん・・・」
「そんなん・・・謝らんで」
「でも、こっちから簡単に訪ねて行けないから…申し訳ないよ」
「そんなことない・・・謝ったらいやや・・・勝手に、一人でいるのや・・・」
「・・・」
「謝らんで・・・そんでも、幸せなんやから・・・」
「・・・」

「それで…心配して呼んでくれたん・・・?」
「・・・」
「・・・」
「違うよ。逢いたかっただけ、僕が。キコの温もりがほしかっただけ。電話だけじゃ寂しいから」
「・・・」
「来てくれてありがとう」
「いつも言ってるやろ。寅ちゃんはプライオリティ一番やって」
「だと、うれしい。(笑)」



僕の想いはわかってるよね?
君の想いは、痛いぐらい知っているよ・・・。
少し離れていると、心が騒ぐんだ。
君はいつも元気だと言うけど、大丈夫だと言うけど。
私を信じていてというけれど・・・。
でも、そんな君がけなげで、恋しくなる。
君を想うと懐かしさで胸が痛くなる・・・いつも、この胸で抱きしめたくなるんだよ。



「寅ちゃん。こうしていると、離れて暮らしてることがうそみたいに思える・・・。あんたといっつも一緒にいるような気がする・・・」
「・・・」
「だから、心配せんでええんよ」
「・・・ホントだ・・・。いつも一緒にいるね・・・」
「うん・・・」




お互い、忙しい毎日の中にいると、時々、何のためにこうしているんやろと思うけど。

でもね、寅ちゃん。

こうしてあんたといると、うちは、あんたとこうして出会うために、毎日を積み上げているのやと確信するのや。
こうやって、二人の時を大切にでけるように、きっと神様がうちに時間を与えているのや。
こうやって、幸せを感じるためにね・・・。




「あ~あ! 今何時? もうご飯食べな。時間がないで」
「そうだね。キコの料理を食べなかったら、何で呼び寄せたのかわからない。(笑)」
「え~え!」
「さあ、起きて」
「やっぱり、このままでもええ・・・」
「ダメダメ!」
「もうお」

「それに・・・」
「なあにい?」
「クリスマス・プレゼントだってあるんだよ」
「ホンマ?!」
「うん!」

「寅ちゃん!」
「何?!」

「もう!好っきや!」


たまに会えるだけでも幸せや。

年末もお正月も会えんけど、でも・・・その分、い~っぱい、愛をもらってるさかい・・・。


寅ちゃん、

あんたもそうやろ・・・?









The End of 23.



2011/04/06 23:14
テーマ:【創】キコはん カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

キコはん22「ホリディ イン ソウル」

Photo





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こんばんは^^

BYJシアターです^^

お元気でしたか?

ちょっと間が空いてしまいましたvv


今日も「キコはん」です。

テサギの後、寅ちゃんの肩の手術があった頃のお話です。
キコはんは、どのように過ごしていたのでしょうね。




ここより本編。
お楽しみください^^











「気がつきはった?」
「・・・?」

「まだ、ぼうっとしてはる? 寝ててええよ。うちはずっとここにいるさかい・・・」
「・・・」





キコはんシリーズ22
「ホリディ イン ソウル」
2008/09/09作品 )





「やっぱり・・・キコだ・・・」

「やっと気がつきはったん?」

「あれ・・・? ここって・・・ソウルだよね?」
「そうや。忘れてしもたの?」
「いや・・・。そう・・・。そうだよね・・・」
「そうや。(笑)」

「・・・。どのくらい寝てた?」
「なあんも覚えてへんのん?」
「・・・」

「手術が3時間近くかかったやろ。それから、2時間くらいしたら、主治医の先生が来はって、『ヨンジュンさん、うまくいきましたよ』って言うたら、あんた、『ありがとうございます』て言うて、答えてはったやんか・・・」
「へえ・・ぜんぜん覚えてないや・・・」
「ふ~ん、そうかあ・・・。やっぱり、全身麻酔やと、ぼうっとするのやろか・・・。でも、気いついて、よかったあ。起きんかったらどないしようて思うたから」
「・・・大丈夫だよ・・・」
「そやけど・・・たまにそういう人いるで・・・。ホンマによかった・・・。成功してよかったわ」
「うん・・・」


キコが手を差し伸べると、寅は、その手をしっかりと握った。


「よくここの病院がわかったね。心配するから、誰にも言わないでって言っておいたのに」
「カンや。うちのカン・・・。あんたのことなら、なんでもわかるで」
「ええ~、そうなの!?」

「な、うそやあ。(笑) ホンマはな、昨日、夕方近くになって、急にキムはんが、『ソウルへ行きますよ!』なんて言うのや。そんで、着の身着のままで、ここまで来てしもた・・・」







『キコはん! 夜の便取りましたから、ソウルへ行きますよ!』
『な、な、何? 何やのん? 急に!』

『とにかく、行きます! 緊急事態です!』

『え? 何で? こんなん忙しい時に・・・・。あんた・・・まさか・・・寅ちゃんが・・・死んじゃったとか・・・vv』
『・・・』
『・・・・。そ、そ、そうなん!・・・?』
『なわけ、ないでしょ!』

『ああ~、よかったあ! 今、一瞬、死にそうになったで!』(ホッ!)

『とにかく、緊急事態ですから』

『なあ、理由を教えて! あん人、元気に帰ってきたやんか』
『寅さんが明日、肩の手術をするそうです』
『はあ・・・?』
『全身麻酔だそうです』

『全身麻酔て? そら・・・そら、あんた・・・行かな・・・行かなあかん! うち、行くでえ~vv』







「それは、大変だったね。驚いただろ?(笑)」
「もう心臓バクバクやで。(笑)全身麻酔なんて言うさかい・・・。あんた、前に、もっと簡単な手術みたいに言ってはったやんか」
「まあね。だって、あんまり細かい話をしたら、心配するだろう?」
「そら、そうやけど」

「ごめんね。でもお・・・」
「何?」

「全然・・・着の身着のままじゃないね。(笑)」
「ええ? まあね。ホンマに着の身着のままやったら、あんたも恥ずかしいやろ? 少しはキレイにしてな」
「ふふふ。(笑) まあ、そうだけど。でも、忙しかったんだろ?」
「それはええのん。緊急事態の時は、寅ちゃん優先! プライオリティ一番やさかいね」
「・・・・」


「なあ・・・なんか、飲む?」

「そうだね・・・。お茶」

「ええよ。今入れたげる。五味茶も持ってきたで。甘いのん好きやろ?」
「あ、それがええなあ!(笑)」
「な、それがええね!(笑)」


キコは、個室についている小さなキチネットで、お茶の準備をしている。


「こういう病室って初めてや・・・。やっぱり、VIPは違うなあ。さっきトイレに入ってみたけど、ウォシュレットの仕掛けがすごいなあ・・・」

「そうかい。どっこいしょっと!」

「寅ちゃん、あんた、何してんのん!」

「ちょっと起き上がりたい・・・」
「やるがなあ・・・。そんな、自分でなんか起き上がらんでよ。このベッドは、ベッドが動くんよ。上半身が起き上がるんやでえ・・・」


キコは寅のベッドのサイドテーブルに置かれたリモコンのスイッチを入れた。


「ああ、そうなんだ。いいねえ。快適」
「そうか? こんくらい?」
「うん、あと少し」
「これでええ?」
「うん。これ、楽だね」
「そやろ?(笑) そこがVIPルームや。ほな、お茶持ってくるさかい・・・」


キコはお茶を入れたマグカップを載せたお盆をサイドテーブルの上に置いた。


「マグカップなら、持てるやろ。はい」


「少し、フーフーして。熱そうだから」

「うふ。(笑) ええよ。フーフーフー・・・。右手が使えんからねえ・・・。左手で持てる?」

「うん」



寅は動かせる左手で、マグカップを受け取って、フーフーと息をかけながら、五味茶を飲んだ。


「あ、おいしい・・・」

キコを見て、にっこりと笑った。


「そうか。それて・・・お母さんの味なんやろね・・・」
「ん?」
「五味茶やゆず茶て、韓国のお母さんの味!ていう気がするわ」
「そうかも。うん・・・おいしい・・・」

「早く元気になるとええなあ・・・。リハビリ、6か月って言うてたけど」
「そうだね。。だから、今手術しないと、間に合わない」

「・・・。もっと早よにすればよかった・・・。でも・・・ニューヨークに行けてよかったかな?」
「そうだね」
「いつも肩が痛いて言うてたやろ。心配してたんよ。これで、足も治るとええなあ・・・」

「うん。肩、今は・・・そんなに痛くないね・・・というか、どこが患部だったのって感じだな・・・」
「そうか? それはよかったなあ」

「その代わり・・・今は腰が銃で撃たれたみたいに、ドンヨリと痛い・・・というか・・・重い・・・持ち上がらない・・・」
「そんなん。今は、持ち上げんでええのんよお。術後なんやから・・・。肩は点滴の痛み止めが効いてるから、痛くないんやろけど・・・。腰ってなんやろね・・・」

「うん・・・。あ、そうか」
「何?」
「腰」
「腰? 腰の痛み?」

「うん。麻酔のために、太い注射したんだ。腰に」
「へえ・・・見た?その注射」
「うううん。でも、『見ますか?』なんて聞くんだよ」
「そうか? 医者の役やる時に役立つやない」
「でも、やだよ」
「撮影中は自分で点滴してたくせに」
「あの時はね、一生懸命だったから」
「でも、今、あれをやれって言われたら、もうできないな」
「そうか・・・」

「その麻酔のための注射ね、それを打ったら、口の中が乾いてきて・・・呂律が回らなくなって、ああ、手術するんだって思ったよ」
「ふ~ん・・・」
「それのせいで、腰がドンヨリ重いのかなあ・・・」

「まあ、とにかく、今日は絶対安静や。明日からは動いて、少しずつリハビリするみたいなことを先生が言うてはったよ」
「そう。意外に早く起きられるんだね」
「うれしいやろ?」

「まあね」
「早、自由になりたいって顔してるで」
「うん。ああ、そういえばね、手術室の中って、思ってたより深刻じゃなくて、結構雰囲気があっけらかんとしてるんだよ」
「ホンマ?」
「うん。ストレッチャーで手術室へ入るじゃない。若い医者がいて、X線写真を見せて、『ヨンジュンさん、おはようございます。この写真のここの部分が患部です。手術すれば、すぐに治りますよ』なんてにこやかに言うんだ。そこに、主治医が入ってきて、『じゃあ、寝ててくださいね。その間にやっちゃいますから』なんて言ってさ。『治ったらここにサイン貰おうかな』なんて言っちゃって。麻酔の医者も、『ではいきますね。ぐっすり寝ててくださいねえ』なんて、小学生に言うみたいに言うし」
「へえ・・・。それで、ぐっすり寝てるうちに、終わってしもたのか。(笑)なんや、外で心配してたうちがバカみたい」
「そんなことはないよ。・・・心配かけたね」
「・・・」
「おかげさまで元気になりました」
「ふん。(笑)」
「ああ、なんか、腹減ってきちゃったな・・・」

「そうか・・・。夕飯は5時て言うてたけど・・・。あと少しや。我慢して」

「うん・・・。少し休むかな」
「そやね」

「ところで、いつまで・・・いられるの・・・?」
「・・・」

「寝てる間に、帰らないでよ」
「・・・帰らへんよ・・・」

「・・・いつまで?」
「治るまで・・・」

「・・・」

「そう言いたいけど、1週間ぐらいかな・・・」

「なあんだ」

「そら、そうやろ? うちかて、仕事もあるさかい。あんたの手術が無事に終わったら帰ってもよかったんよ」
「・・・でも、いてくれるんだね?」
「うん。これ、サービス!」
「おおきに!」

「退院するまではちゃんといるさかい」

「でも、そこまでなんだ」

「さあ、寝ておくれやす!」
「・・・」
「寝て、早治して!」
「・・・」
「はよ!」

「じゃあ・・・手は握っててね」
「・・・ええよお。(笑)」
「よかった。しっかり、握ってよ」
「もう。(笑)」

「そのまま、いてね」
「うん」
「ねえ・・・」
「夕飯がきたら、起こすさかい」
「じゃあ・・・よろしく」
「おやすみ!」


寅はキコの手をギュっと握りしめると、ふ~っと息を吐いて目を瞑った。
目を瞑った寅の髪をキコが撫でると、寅は幸せそうに微笑んだ。










「ねえ、まだ、やるのお?」
「やるよ。ええとねえ・・・。あ、ここ書いてみて」
「どこ?」
「ほら、ここ。わかりやすいよ。よくヒントを読んでごらん」
「もう、ハングルのクロスワードパズルなんてずるい。今度は、日本語か英語でやろな」
「勉強になるじゃない。やってごらんよ」
「あ~あ・・・。うちにはハンデが大きすぎるわ」
「ふふふ。(笑)」
「ここかあ・・・」
「うん・・・」
「う~ん・・・」



トントン!!


「ネ~!」


キコが答えると、病室のドアが開いて、キムさんが覗きこんだ。


「キコはん、ちょっと」
「入ってきたらよろし」
「いや、ちょっと」
「どないしたん?」
「あ、ヨンジュンさん。後ほどまた顔を出します。早く!」

「なんやのん・・・。ちょっと出てくるな」
「うん」


ドアのところまで、キコが行くと、キムさんがギュッと腕を引っ張った。


「何やの、あんた?!」

「いや、急なお客さんがもうすぐそこまで見えてるんで」

「う~ん・・・そうか。ま、うちがいて見つかっても、付添いさんにしか見えんやろ?(笑)」
「そんなあ…まったく見えませんよ」
「そうかあ・・・。まあ、愛のマジックやな。(笑)」
「そ、そんな・・・」

「なんで、あんたが赤くなるねん」
「え?」

「うちが馬子にも衣装やって言うことやろ?」
「あ、ああ・・・」

「? 誰が来はるの?」
「・・・」

「あ・・・」



キコの目に、キムさんの後ろに見ているエレベーターホールが見えた。そこから、背の高い女性がやってきた。
その顔には見覚えがあった。

キコとキムさんはそっと場所を移して、窓のある通路側のベンチに腰かけ、その女性の姿を見つめた。


サラサラとした長い髪をなびかせて、大きな見舞い用のフルーツバスケットを抱えている。
彼女は大胆にもミニスカートで大股に歩き、ヨンジュンの部屋の前に立った。
そして、ノックをして中へ入っていった。


「オッパア~」という彼女の声が聞こえた。




「ホンマにキレイな人やね」
「・・・」
「実物のほうが写真より全然ええわ・・・」
「・・・」
「歩き方もモデルみたい・・・」
「・・・」


「・・・」
「ちょっとコーヒー買ってきます・・・」
「・・・」






キムさんは自動販売機にコーヒーを買いに行って戻ってきたが、見ると、キコはさっき座っていた姿勢のまま、じっとドアの方を見たままだった。


「はい、コーヒーです」
「ありがとう」
「・・・」


キムさんは黙ってキコの隣に座った。


「・・・」
「長いなあ・・・長いと思わへん?」
「・・・」

キコは、溜息を軽くついて、コーヒーを開けた。


「連絡したのやろか・・・」
「・・・・さあ・・・」
「せんでも、来るよね・・・。前も来たやろ・・・」
「・・・」
「そやけど、今回は一人で来はったんやね・・・」
「・・・」

「まあ、しゃあないな・・・。あっちには、まだチャンスがあるわけやから・・・」

「・・・な、何のですか・・・?」


キムさんはちょっと声を震わせて、キコの顔を見た。


「ん? 別に・・・」


そう言って、キコはコーヒーをゴクンと飲みこんだ。




「あ、帰られますね」
「・・・」



寅の部屋のドアが開いて、彼女が出てきた。
そして、颯爽と帰っていった。





「長かったなあ・・・」
「ああ・・・20分いましたねえ」
「20分か?」
「ええ、20分」

「そうか・・・」
「・・・」

「あんた、仕事で来たのやろ?」
「あ、そうです」
「なあ、寅ちゃんと話していったらよろし・・・うちは、ええと・・・」


キコは立ち上がって、エプロンのポケットに手を突っ込んで探し物をしていたが、キムさんに手を差し出した。


「5000ウォン貸して」
「なんですか?」
「ちょっと購買に行くさかい」
「ああ。待ってください。5000ウォンね」


「おおきに!」


キコはそう言って笑うと、さっさと購買のほうへ歩いていってしまった。









それから、しばらくして、キコが病室へ戻ってみると、もうキムさんはいなくて、あの大きなフルーツバスケットも部屋のどこにも見当たらなかった。



「お帰り」
「ただいま。キムはんは?」

「もう帰ったよ。書類を届けにきただけだから」
「そうか」
「どこ、行ってたの?」
「購買」
「何買ってきたの?」
「アイス」
「ふ~ん」


寅が見ていると、キコは棒アイスの箱を冷蔵庫にしまって、一つだけ取り出すと開けながら、寅の隣ではなく、横の応接セットに座ると、一人で食べ始めた。


「僕にはくれないの?」

「自分のために買ってきたのや」
「それでもいいじゃない・・・」
「ミルクやないで。チョコレートやで」
「それでも・・・いいじゃない・・・」
「太るで」
「・・・」



そう言うと、黙々と一人で棒アイスを食べている。


「・・・くれたって、いいじゃない」
「・・・」

「ケチだな」
「たまには、ケチになる・・・」
「・・・」

「ホンマにほしいの?」
「うん・・・」


キコは少し強ばった顔をして寅を見たが、立ち上がって、寅の横へ来た。


「はい」


今食べかけのアイスを差し出した。

寅は、瞬間そのアイスに戸惑ったが、すぐに微笑んで、そのアイスを受け取った。
そして、それを食べた・・・。


「おいしいね」
「そうか・・・」



キコは、ちょっと寂しそうな笑みを浮かべて、ベッドの横の椅子に腰かけた。




「あ、そうだ」
「何?」

「明日、退院することにしたよ」
「・・・なんで? 明日って手術してまだ5日目やない」
「うん、だけど・・・もう退院する」

「んでも・・・まだ治ってないのやろ?」
「治るには時間がかかるだろ。それに・・・。ここにいると、いろいろと見舞の客が来ちゃうからね。こっちも気を使ったりで、ゆっくり休めないんだ」
「・・・」
「自宅のほうがゆっくりできるし。キコも一週間しかこっちにいられないんだったら、残りの時間を、自宅で二人で過ごそうかなと思って」
「・・・」
「その方がいいだろ? 先生に聞いたら、いいよって」

「・・・。ホンマにええのん?」
「うん・・・」
「・・・」


キコが突然立ち上がって、寅の持っているアイスを取り上げた。


「これはうちの。あんたには・・・新しいの、あげるわ・・・」


寅とキコは、ちょっと見つめ合ったが、キコは今のアイスを口に入れると、冷蔵庫のほうへ行ってしまった。



ほんのちょっとの気まずさ。
なんとも言えないイケズな態度・・・。

胸の奥で渦巻いていたものが、胸に痞えて、キコには素直な態度が取れなかった。
そんな自分に対しても、寅は嫌な顔をしないで、キコが言葉にするよりも先に、さっさと彼は解決してしまった・・・。



冷蔵庫の中から、棒アイスを取り出しながら、キコの頭の中を一つの想いが浮かび、そして、通り抜けた。


この胸の中でざわめく虫は、寅ちゃんが齎したもんやない・・・。
ましてや、あん人が齎したもんでもない・・・。
うちが・・・たぶん・・・自分で決めたことへの代償やな。
あんたは、他所の国の人とは結婚なんかせえへんて。
そう、うちが思うていることへの代償や・・・。

あんたのせいでもなんでもないねん・・・。
寅ちゃんはいつも誠実な人やもん・・・。

この虫を飼い始めたのはうちや、自分自身や・・・。









「はい!」

「お、ありがとう」
「・・・」

「鎌倉のアイスもおいしかったな」

「食べ物のことは忘れんのやねえ」
「そりゃそうだよ。(笑)」
「だったら、謝っておくわ。さっきは意地悪して、ごめんね・・・」
「・・・」
「それから・・おおきにね・・・」
「・・・何が?」
「ん? いろいろ・・・」
「・・・うん・・・」
「・・・おおきに・・・」

「もういいよ・・・」
「・・・」


「それより、もう退院だからね。荷物片付けてよ」
「ホンマに人遣いが荒いな」
「そりゃそうだ。僕は病人なんだから」
「もう・・・仕方ない。荷造りするか。うちしかやってくれはる人がおらんのやろ?」
「当たり! そうだよ」
「わかった~」



あんたは・・・うちがあんたを憎んだり嫌になったりする隙を与えない・・・。
好きという気持ちから放れさせない・・・。
それは、あんたもうちを同じように好きやからやね?
そうやろ・・・?







結局、寅ちゃんは5日間だけの入院で退院してしもた。

まあ、病院の回りに、家族が来ていたこともあったのだけれど・・・。



「なあ、寅ちゃん。髪をもっと短くしておいたほうがよかったんやない?」
「自分で洗えないのは一緒だよ」
「でも、短いほうが扱いやすいで」
「そうすると、次のドラマの時が劇的な変身にならないじゃない」
「うんまあなあ・・・。シャワーかけるで~」


寅の自宅に、洗髪用のシャンプー台が備えつけられた。

一応、1か月というリース期間だが、寅はきっと1か月も使わないだろう。



「これ、気持ちいいよね」
「でも、たぶん。1か月も使わんと思うわ」
「そうかな」
「だって、洗う人が必要やろ? 誰でもええというわけにはいかんでしょう」
「まあね」
「お母さんとか・・・限られちゃう」
「キコが帰ったら、美容院へ通うからいいよ」
「そうか・・・」


「はい、おしまい。タオル巻いたまま、起きるで」

「うん」

「あ、少しお顔についたか。拭くね・・・」

「ありがとう」

「ブローしような」



「毎日、こんな暮らし、いいねえ」
「そうはいかんよ」
「まあねえ。ああ、やっぱり、旅行の本にする」
「そうかあ^^」
「今、一番書きたいものだからね。それに写真も載せられるし」


「ああ、そうやね。それがええねえ・・・。でも、あんまり欲張らんで書いたほうがええで」


キコがドライヤーで寅の髪をブローしながら、言った。


「なんで?」

「完璧はないさかい」
「・・・」

「完璧な旅の本なんてないやろ。地球は広いで。(笑)韓国も広い・・・。寅ちゃんちの周りを書いただけでも、丁寧に書いたら書き切れんやろ?」
「わかってるよ、お姉さん!(笑)」

「なあ。でも、寅ちゃんの書いた本なら・・・寅ちゃんの心と一緒に旅がでけるさかい・・・。全てを満たすというより、家族の人は、あんたの言葉で、あんたの心と一緒に旅をしたいのや」
「うん・・・」
「だから、寅ちゃんが感じたこと、仰山書いてくれるとうれしいがな」
「うん・・・。キコ、心配はいらないよ。完璧なんてないって、もうわかってるからね。これからは、ただ、最善を尽くすだけにしておくよ」
「うん・・・最善を尽くして、最良の本・・・それがええね」
「うん!」
「ね!」



「はい! キレイにブローでけました」
「ほんとだ」
「・・・後ろ縛る?」
「そうだねえ・・・」


キコが寅の前髪を頭の天辺で縛るマネをしたりして遊んでいると、それを見上げた寅の目がキコの目と合った。
二人は鏡の中で見つめ合った。

キコが、寅を後ろから覆いかぶさるように抱き締めて微笑むと、寅はキコの方を振り返り、ちょっと顎をしゃくり上げて、キスをせがんだ。キコは笑って、寅の頬を撫でると、寅に甘いキスをした。






二人で過ごす時間は残り少ない。

肩のリハビリも、足の全快という課題もあるけれど、二人には今のこの時間が愛おしい。

今の寅は自由だ。
今まで自分の中で貯めてきたことを、彼は自分の好きなように表現できる。
それも、この大きなケガが彼に少し「ケセラセラ」の精神とゆとりと、新たなる自分発見の時間をくれたのだ。

彼は完璧に過ごすことから最良な時を過ごすことに意識を変えた。


もしかしたら、寅は、キコに出会った時から、もう「完璧な恋人」というものは存在しない。そして、他人からの見た目ではなく、自分が満足すればそれが最良なのだと気付いていたのかもしれない。





「ちゃんと綴りを覚えないから、間違えるんだよ。音と意味と連動して覚えないと、書けないよ」
「わかってるがな・・・。でも、寅ちゃんみたいには、ドンドン入力でけんよ」
「・・・」
「自分で書くか?」
「いや・・・できるようになるのを待つ」
「おおきに。うちが右手の代わりになってあげられるようになるさかい・・・」
「おおきに。その前に治っちゃいそうだよね」
「もう!」(笑)

「はい。次はね。『私は・・・』」
「わ・た・し・は・・・」
「いいよお。『寅ちゃんが・・・』」
「ええと、と・・・ら・・ちゃ・・・ちゃ・・・ちゃ・・・ちゃはこうやね? んが・・・」

「『好きです』」
「ふん。(笑)サランへにするか。チョアへにするか・・・う~ん」
「・・・なんで、悩むの?」
「ええと・・・違う時は、アンをつけるんでええのやろ?」

「・・・なんで?」

「ただの勉強や! こんなん答えは決まっているやろ? か・ん・た・ん!」
「・・・」

「ええと・・・。ほら・・・」
「・・・だね。正解!」
「な。(笑)」




心を震わすものも、心を温めるものも、心を癒すものも、心を奮い立たせるものも、全て自分が愛しいと思うものから発している。
愛しいものには、決まった形などなくて・・・なぜか心を揺さぶられて、気がついたら、しっかり心を盗まれている・・・。
自分の作り上げる最良の時は、そうした愛しいものと一緒にある時だ。



「ねえ、キコ。僕たちって幸せ者だよね」
「・・・」
「お互いに想いあえて・・・」

「もちろんや・・・。あんたがいるから・・・。毎日が楽しい」
「うん・・・」

「ホンマ?」
「ホンマ」
「ホンマね?」
「愛してるよ」



全ては心のままに・・・。









THE END of 22



2011/03/26 09:12
テーマ:【創】キコはん カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

キコはん21「キミの街へ」

Photo
おはようございます^^

BYJシアターです。




まずは、こちらにいつもの義捐金を載せていただきます。

昨日、ヨンジュンの公式でも
義捐金のご案内がありましたので、公式Newsもご覧ください。

この他、こちらのブロコリ村義援金、
地元の地方自治体の義援金、
郵便局から直接振り込める日本赤十字募金、
クレジット決済なら各クレジット会社などの義援金などがあります。



【【大震災義捐金】】受付先リスト

主なところだけですが、しばらくブログに貼らせていただきます。kiko3



●ヤフーインターネット募金
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ヤフーウォレットを持っている人はより簡単です。
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"SHOW YOUR HEART" 基金 ガクト
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"SHOW YOUR HEART" 基金 幸せの中で暮らしている僕たちには、すべき事がある。 動ける力を身につけた僕たちには、大切な人を支えることが出来る。
だから、今、僕たちが出来ることから・・・はじめよう!!
「SHOW YOUR HEART」では、東北地方太平洋沖地震被災者へ向けての 義援金へのご協力を受け付けています。
ぺ・ヨンジュンのメッセージもあります。
こちらは、全額日本赤十字への義捐金です。
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●テレビ朝日ドラえもん募金
http://www.tv-asahi.co.jp/doraemonbokin/

テレビ朝日では「東日本大震災」による被災者を支援するため、
「ドラえもん募金」を行っています。
送り先:日本赤十字・被災地域の自治体・活動しているNPO・NGOなど
幅広い支援の場を設けています。
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●<フジネットワーク募金> 緊急募金
http://www.fujitv.co.jp/kokuchi/110313.html

フジテレビをはじめFNS系列28社では、被災者救援のためにフジネットワーク募金を開始いたしました。
皆様からの寄付金は、義援金として日本赤十字社へ送られ、被災者の皆様の生活復興のために使われます。
みずほ銀行本支店のATMからは手数料無料




●国境なき子どもたち
http://www.knk.or.jp/index.html

こちらはほほえみプロジェクトでおなじみの団体です。





●Think the earth (現地で活動するNPO・NGO支援募金)
http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/emergency/


NPO関係の災害募金となります。
国境なき医師団など各団体の活動が出ています。
NPO・NGOはそれぞれ、被災地域を限定して活動しています。
DATVの募金の「CIVIC FORCE 」が気仙沼市で活動しているように
それぞれが地元に直結しているので、
自分の希望する地域を選んで募金も考えられます。




●DATVほほえみプロジェクト

http://justgiving.jp/c/4675(募金先)

「東北地方太平洋沖地震救済支援」募金について
DATVのほほえみプロジェクトがチームになって募金を募集しています。
目標は500万円です。
送り先は、緊急時支援の団体「CIVIC FORCE 」です。
こちらのNPOは主に、気仙沼市で活動していますので、
気仙沼への支援となると思います。

DATVほほえみプロジェクト

こちらは、従来の国境なき子どもたちへの募金です。













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BGM:Page「ネガ アヌン クデン」(私が知ってるあなたは・・)






本日は、

2008.6.10 ペ・ヨンジュン鎌倉来訪記念^^
キコシリーズ21「キミの街へ」をお送りします。


キコはんシリーズでは、
寅ちゃんがキコはんの鎌倉の店を訪ねる「渚にて」を連載開始したのが、2007.6.10でした。

それから、ジャスト一年後、まさに、6月10日に本物のヨンジュンさんがこの鎌倉を訪ね、キコはんとともに遊んだ海を見ました・・・。

ということで、本当にうれしい偶然があったのがこの2008年の6月です。

そして、眼鏡市場のBGMに、寅次郎のテーマが使われて・・・

寅ちゃんファンには楽しい時期だったんですよ^^



では、これより本編。

お楽しみください!









ペ・ヨンジュン鎌倉来訪記念^^

キコはんシリーズ21「キミの街へ」
2008.6.20









♪~
愛、さんさんと~
この身に降って~
忘れかけてた
寅ちゃんの愛を一人占めします~~~^^

人は美しい~~~美しいものですね~~^^

あなたがいれば
それだけで、私は幸せよ~~^^





ピンポ~~ン~^^





「へえ~。誰やろ?」



何気なく、ドアを開けたら・・・寅ちゃんがいた・・・。




「!」

「どうしたの~? 挨拶ぐらいしてよ」

「どないした・・・」
「来日したの」
「知ってるがな。大阪も行ったやろ」

「ふん。(笑)上がるよ」

「どうぞ・・・」

「今日は近くまで来たからね」
「ああ・・・さっきまでテレビでサッカー見とったよ・・・」

「そ?」


寅は振り返って、満足そうな目をした。



「来てくれたら、ええなあ・・・とは思うたけど・・・。一人やないのやろ? そやから・・・」

「うん。すぐ帰るよ。トイレ借りるね」

「なんや! トイレ、借りにきたん?」
「・・・そう」


「なんだあ・・・。でも、お茶ぐらい飲んでいく時間はあるやろ?」

「・・・うん・・・」


「日本茶でええねえ~?」

「・・・うん・・・・」


なんや。トイレだけかいな・・・。




「あ、おかきもあるよ。食べはる~?」

「・・・ん・・・」


「何してはるのお?」

「・・・顔、洗ってる・・・・」



「はあ・・・。ほな、おいしいお茶とおかきがあるさかい。と・・・。ところで、皆、車で待ってるのかいな」


窓を覗こうとすると、あんたが洗面所から出てきた・・・。


「皆、帰ったよ」

「・・・・」


「なんか、懐かしいねえ・・・ここ」
「・・・」

「去年の夏にオープンしたんだったよね」
「そうや・・・。あんたを待ってると一年があっという間や・・・」
「うん・・・」

「足、疲れたやろ?」
「うん。最後の、ここの階段がきつかった」
「だよね・・・。大丈夫か?」

「だから、少し休むよ」

「ええけど・・・」


寅はキコのことなど、見もしないで、さっさと寝室の中へ入っていってしまった。





「なあ・・・寅ちゃん・・・」

「あれ? これと寝てるの?」


寅がベッドの上でタム・ベアを抱いて笑った。



「うん。かわいいやろ」
「そうだね」



そして、何か意味ありげに、キコをじっと見つめた。



「・・・寂しかった?」

「・・・う~ん・・・」



「おいで・・・」

「寂しくなんてなかったけど・・・忙しかったから・・・」

「ホンマ?」

「ホンマ・・・」


「もっと近くへおいでよ・・・」

「うん・・・」

寅が仰向けに寝そべった横にくっつくように、キコが寝転んだ。





「う~ん・・・。なんかここへ来ると、家へ帰ってきたって気がするな・・・」

そういって、寅はキコの頭に腕枕をした。



「そうかあ・・・?」
「うん・・・」

「イベントも成功でよかったな・・・」

「うん・・・。お姉さんと一緒に来たの?」
「そうや。二人で行って楽しかったけど。あん人なあ、アリーナ席で、近くで見られてよかったて。うちなんか、スタンドの上段・・・」

「で?」
「残念やった・・・」

「ふん。(笑)こんなに近くで見られるのに?」



そう言って、キコの顔を覗き込んだ。
キコは、ちょっと・・・呼吸が苦しくなった・・・。


「うん!(咳払い) うちは、タムドクのファンさかいね。衣装着てるのをもっと近くで見たかっただけや」
「へえ・・・」

「でも、すごくよかった・・・。重かったやろ? 鎧が・・・。最初から泣けてしもた・・・」

「・・・」

「体だけは・・・大切にしてくれはらへんと」

「・・・うん」

「駄目やで」

「うん・・・」



「ほな、ゆっくり休んでって」
「うん・・・」


あんたはゆっくり深呼吸して目を瞑った。




「あ、でも。せっかく来たんだからね!」


寅は目を開けて、にっこり笑った。




「そうだろ?」
「・・・」
「だろ?」
「・・・」
「だろ!」

そういって、キコをちょっと睨んで笑った。



「うん・・・そうやね・・・」



寅は体の向きを変えて、キコの顔を覗き込んだ。




「逢いたかったよ」

「うちもや・・・。声だけでは、やっぱり・・・寂しい・・・」



寅はうれしそうな目をして、腕を大きく回して、キコをしっかりと抱きしめた・・・・。






あんたの唇が・・・うちを融ろかす・・・。

寅ちゃん・・・・

あんたは、
たまにしか来んくせに・・・

なんで、こんなに、簡単に・・・
うちを幸せにしてくれはるの・・・?











二人は抱き合って寝ころんでいたが、寅はここのところの疲れが溜まっていたのか、スヤスヤと寝息を立てて、気持ち良さそうに寝ている。
キコはそっと起き上がって、寝顔を眺めた。

久しぶりに見る寅は本当に幸せそうな顔をしている。

いつもやさしく円満な寅ではあるが、今回は時折見せる寂しそうな表情が見当たらない。




ホンマに充実してはるんやね・・・。それとも・・・強くなったんやろか・・・。



「う~ん・・・ああ・・・。今、何時?」

「今、8時半。お腹空いた?」

「食事はいいよ。夜の約束があるから」
「そうかあ・・・。泊まれへんのね?」
「うん」
「そうかあ・・・」

「ごめんよ」
「ええけど・・・」

「公式に日本へ来てる時は、警察に居場所を届けなくちゃならないから・・・。内緒の行動は、あんまりできないんだ」
「そうかあ・・・」

「ごめんよ」
「うううん・・・それでも、寄ってくれはったんやもん。うれしい・・・」
「・・・」





「でね。あ、そうだ!」


寅が急に用を思い出したように、とび起きた。


「どないした?」

「うん・・・。それで、キコに渡しておかないといけないものがあったんだ・・・」

「何?」
「何だろうねえ・・・。(笑)」


寅は、鴨居にかけてあるジャケットの内ポケットを探った。


「なんか、ややなあ・・・。手切れ金なんて・・・いらへんで・・・」


「え? なんでわかったの?」


「ホンマ!?」



キコが驚いて、飛び起きた。



「ふ~ん。な訳ないだろ?」

「あ~、驚いた・・・」


「でも、これはちゃんと受け取ってほしいんだ」


「何?」


大きさ的には、まさに手切れ金が入っていて、いい大きさだ・・・。


「なんか、怖いなあ・・・」

「あ、そうだ。キムさんね」
「ん」

「BOFから出向一年ていうことだっただろ?」
「そうなんやあ・・・。そんでな、頭が痛いんや・・・」

「だと思って、本人の意思を確認したんだ。そうしたら、まだこの仕事を続けたいって言ってくれてね」
「ホンマ?」
「うん・・・。なんかね、将来、輸入業務をしたいそうだ。それでね、キコ・コーヒーの輸入のほうをね、もう少し本腰を入れてやりたいって」
「そうかあ・・・。それはありがたい・・・と、同時に、それも難儀やなあ・・・。キムはんがいなくなったら、うちだけではでけへん・・・」
「まあ、その時はその時で」

「そうはいかんやろ?」
「誰か手伝わすよ」
「そしたら、ず~っとあんたの世話にならんといかんやろ?」

「・・・。それじゃあ・・・駄目なの・・・?」

「・・・。そんなことはないけど・・・」


「先のことは・・・わからないよ。僕だって、こんなケガをしてしまうなんて思わなかった・・・」
「・・・うん・・・」

「まずは、今、最善だと思うことをしよう・・・」
「ん。おおきにね、寅ちゃん・・・」

「お礼はキムさんにしてね。僕へのお礼は、これから。(笑)」
「ん?」

「開けて見てよ」

「なんか、ドキドキする・・・」


キコは寅から受け取った封筒を開けた。中には、航空券が入っていた。


「これ・・・」

「ニューヨークまでの往復チケット」
「・・・」

「来てくれるね?」

「来てって・・・」


キコは顔を上げて、寅の真意を探るように、寅の目をじっと見つめた。


「それ、日付はオープンになってるんだ。だから、キコが来たいときに、来ればいい・・・」

「寅ちゃんは、いつから行くん・・・」

「実は、日本の帰りに行っちゃうんだ」
「ええ!?」

「ソウルには戻らない・・・」
「そうかあ・・・」
「ショック?」
「・・・う~ん・・・遠いなあと思うて・・・」


「だからね、これをキコにあげたかったんだ」

「・・・ええの・・・?」


「うん。(笑) 本当は、ず~っと一緒に来てって言いたいところだけど、キコはお店もあるし、そんなことはできないだろ?」


寅がちょっと俯いた。
キコは胸が痛くなった。


ホントはず~~~っと一緒に行きたいねん・・・。
でも、それでは、うちも食べてけん・・・。



「それに、僕も本格的に体を治すつもりだし・・・」
「・・・」

「ホントは一緒にいてもらいたいんだ。でも、そう思う反面・・・その時は、一人で頑張りたい気もするんだ・・・」

「一人て・・・あんた、一人?」


キコは、思わず涙がこみ上げてきて、泣きそうになった。



「もちろん、ブライアンは、近くにいてくれるよ。でもさ・・・キコとか近くにいると、なんか・・・弱音を吐いて、当たりそうな気もするんだ」
「そんなこと、ないて・・・」
「いつも近くにいて、手を握っていてほしいような・・・でも、それじゃあ甘えちゃうから、一人でいたいような・・・」


「・・・寅ちゃんは、人に当たったりなんてせえへんよ・・・。うちがあんたのこと心配して、泣くと思うてるのやろ・・・?」

「キコは、泣かないだろ? 心が強いから・・・。泣くのは、僕だよ・・・」
「・・・」


「いずれにせよ、このチケットを使って、ニューヨークに来てほしい。キコが時間を作れる時にね。キムさんにもお願いしておくから」

「・・・。ええの? それで? 辛い時は呼んでほしい・・・。あんたが近くにいてほしい時は、呼んで」

「うん・・・・。そうするよ」
「必ずやで。我慢なんてせえへんでね」
「うん・・・」
「うちかて、ホンマは、いつだってあんたのそばにいたんや・・・」
「うん・・・」

「でも、おおきにね・・・。おおきに。これ、いつもバッグに入れておくわ。パスポートと一緒に。いつでも飛んでいけるように・・・。これがあるだけで、あんたとつながってる気いがするもん・・・」

「うん・・・」




「ああ、もう時間だ」
「もう帰る準備せなあかんの?」
「うん、そろそろ・・・」
「そうか・・・」


キコは、寅のジャケットにブラシをかけた。
今日のキコは幸せになったり、どん底に落ちたり、自分でも不思議なほど心が揺れている。



ニューヨークは、遠すぎる・・・。




「そうだ、キコ。今回は公式な日程が終わったら、鎌倉巡りをする予定なんだよ」
「ホンマあ? ホンマに? それ、ええなあ」


キコの心が少し晴れてきた。



「前回、逗留した時は、秋から冬だっただろ。だから、あじさいの季節はまだ見てないんだ」
「ホンマやね。去年来た時も、ここで庭作ったり、夜中の海、見に行ったりしかしてへんもんね」
「うん、だから、キコの住む街をちゃんと見たいんだ」
「うん! それがええ。 成就院のあじさいがええよお。ホンマに見事やで」
「ふ~ん」

「坂があるけどな。あと、長谷寺。あそこは階段見てから上ったほうがええよ。結構きついで」
「ここは坂が多いからねえ」
「うん。あじさいは・・・成就院のほうがすごいかな・・・。長谷寺のほうが咲くのが遅いような気がする」
「同じ気候だろ。(笑)」

「ふん。(笑) そうなんやけど、なんか、成就院のほうが、花が早いような気がするのや。あそこのあじさいの坂を下ると、そのまんま、海に入っていくように見えるのやで」
「へえ・・・それはすごいなあ・・・」
「まあ、楽しんできて」
「うん」




寅は身仕度を済ませ、車を待つ間、お茶を啜っていると、ふと思い出したように、キコを見た。



「そうだ。あの蓮の花。どうした?」
「え?」

「開店の時に贈った」
「ああ、寅ちゃんの蓮ね」
「そう、トラ入りの蓮」

「下のデッキのところにあるがな。元気に育ってるで。中のトラさんも元気やで」
「へえ」
「まだ、お花には早いな。7月半ば過ぎんと蓮は花をつけへん」
「そうかあ・・・」
「あ、でもね。ちょ~っと楽しいことになってるのや」

「どんな?」

「見たいか?」

「うん。でも、暗いかな、外が・・・」

「デッキの電気つけて、懐中電灯当てたら、見られるで」
「なんかおもしろそうだなあ」

「見てみるか?」
「うん」


自宅のある二階から、キコは、寅の手を引いて、ゆっくりと外階段を下りた。

店のカギを開け、電気をつける。


「少し変わったかな?」
「そうかあ? 特に変わってないと思うけど」
「なんか、雰囲気が店らしく落ち着いてきたね」
「そうかあ。それはよかった」


店からデッキへ出る戸を開け、デッキのライトをつけた。


「やっぱり、これだけでは暗いなあ。懐中電灯が必要や」
「ああ、あそこにあるねえ。先に行って見てるよ」

「うん、今、懐中電灯持ってくさかい」



寅は、店のデッキに立って、大きく伸びをした。
ここは、空気も清々しくて、寅は深く深呼吸をした。
薄暗い庭に、キコと買った「ぶた」が並んでいるのを見て、うれしくなって思わず噴き出した。



蓮の水盤を見ると、長く伸びた茎に大きな葉はついていたが、まだまだ花をつけるところまではいっていなかった。

その水盤の水の中は真っ暗で、寅の「トラ」の姿も見えなかった。




「お待たせ!」
「水の中は見えないねえ」

「ちょっと照らしてみよな」


キコは、持ってきた懐中電灯で水の中を照らした。二人は、水盤の中を屈み込むようにして覗き込んだ。
深い水の世界で、土の中に埋もれたトラが顔だけ出していた。

「いた、いた。いたねえ」
「いつも土に埋まってしまうさかい、顔が出るように、たまに持ち上げてあげるんや」
「それは、おおきに。(笑)」
「ふん。ね、見てて・・・・」
「・・・」
「ほら!」

「あ!」


大きな蓮の葉の間から、メダカが出てきた。


「へえ・・・。かわいいねえ・・・」
「トラさんも仲間がいてええやろ?」
「うん」

メダカが3匹ほど変わりばんこに顔を見せた。

寅はうれしそうに、隣で覗き込むキコの肩を抱きしめた。



「ああ・・・来てよかったよ」
「・・そう?」
「うん・・・ありがと」
「・・・」


寅がキコのほうを向いて、軽くキコの唇にキスをした。


キコの持っていた懐中電灯が下を向き、デッキのライトの下、二人は見つめ合った。
キコが口を開こうとすると、裏木戸の開く音がして、二人には、それが寅の迎えだとわかった。迎えの車が来たのだ。




「じゃあ、行くよ」
「うん・・・」



寅は膝を押さえながら、ゆっくりと立ち上がった。 






とうとう、帰る時間となった。

店のドアに手をかけると、後ろにいるキコのほうを振り返った。


「ニューヨークで会おう」
「・・・」


キコは、2度ほどしっかりと頷いた。でも、言葉が出なかった。
声に出そうとすると、涙がこぼれそうになったから・・・。





それでも、いよいよ寅が裏木戸を開けて、出て行こうとした時には、キコは、寅の後ろから、少し涙声で声をかけた。


「体に気いつけてや・・・。なんかあったら・・すぐに飛んでくさかい・・・」




寅の動きが一瞬止まって、キコのほうをおもむろに振り返った。



「やっぱり、泣くのは君だね」



そう言って、一瞬泣きそうな目をしたかと思うと、にっこり笑って、ドアを押しあけた。
そして、手を振って、車に向かって歩き出した。






寅ちゃんは行ってしまった・・・。



でも、キコのもとには、ニューヨーク行きのチケットがある。




行くさかい。

あんたのところへ行くさかい。




それまで、元気にしててや・・・元気になってや・・・。


な、寅ちゃん!








The End









kiko3





2011/03/25 01:47
テーマ:【創】キコはん カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

キコはん⑳「春の声」

Photo
こんばんは^^


BYJシアターです。




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気仙沼への支援となると思います。

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↑彼の大好きなジャケットとカーデ^^ ジャケットは「ドリームハイ」の理事長さんが^^ 
穴あきカーデは「ハナヨ」の取材の時に活躍しました^^物持ちがいいよね~^^v

忘れちゃってる人のために^^ 一番左のフォトは、初めて松葉杖を取って、病院から出てきたところです。

この時期から、愛用しているジャケットとカーデです。




BGMはこちらをクリック

BGM:Page「ネガ アヌン クデン」(私が知ってるあなたは・・)







さて。



本日は、キコはんシリーズ⑳「春の声」です^^
2008/03/30(公式発表)の作品です。


いつも古い創作を取りに公式へ向かうのですが、
あそこで流れるBGMを聞くと・・・

ああ、いつか、ヨンジュンさんもたった一人のものになってしまうのだな~
と、ちょっぴり寂しい気分になります・・・。

いい曲だな~^^と感心しないところがへそ曲がりですvv





そういえば、

公式にあるヨンジュンさんの震災へメッセージ。
あそこには、ハングル版もありますね。

先だって、サークルでハングル版をアップしたところ、
友人が日本語に訳してくれました。



「公式翻訳」
過去にもこのような困難な状況にあっても、
すばやく冷静に乗り越えられてきたことと思います。

となっているところ。

原文では・・・


우리는 과거에도 어려운 일이 있을 때마다
신속하고 차분하게 힘든 상황들을
극복했던 기억이 있습니다.

私達は 過去にも 困難な事があるたびに
迅速に落ち着いて 困難な状況を
克服した記憶があります


とあります。

これって・・・ヨンジュンさんの気持ちを考えると
大きな違いがあるように思います。



우리는 私たちは・・・

この言葉を抜かしてはいけないと思いました。

私たち日本人と心を一にして書いているのに、
公式翻訳では、ちょっと他人事です・・・。

いつもそうですが、
翻訳とともに、翻訳機でも原文に当たると
より彼の発言の深さややさしさに触れることができますので、
是非、原文も読んでみてくださいね^^v

まあ、どっちでもよいのかもしれないけど^^;

いつも言葉を大切に選びながら、表現しているヨンジュンさんを思うと、
一語一語の重さを感じてしまうのです。

ヨンジュンマニアだからね^^v







では!

ここは創作の世界!

我らが寅ちゃんの世界に浸りましょう^^




ではここより本編
お楽しみください^^














「もしもし?」
「もしもし? 今、忙しいんや」

「なんで~」

「もう少ししたら、電話して」
「・・・」



ママ~、お水ちょうだ~い^^

  

「ほらね。誰かさんの家族・・・・」
「じゃあ・・・また電話する」
「10分後ね!」



キコは、携帯を切って、店の客に水のピッチャーを運んだ。



「もしもし?」
「もしもし? もう大丈夫。少し休める」
「よかった」
「今、どこ?」


キコは電話しながら、店のデッキに出て、五分咲きの桜の花を見ながら話している。

  
「美容院」
「しょっちゅう行くな」
「まあね、他に出かけるところがないからさ」
「う~ん。ホンマはこっちへ来られるとええなあ・・・・」
「うん。お店混んでるの?」
「いつものヨン様家族がな、集まってんねん。ああ、今日はキムはんが渋谷へ行かはった」
「ああ、そうだった・・・。一応、BOFiに挨拶に来るって言ってたな。でもね、東京にBOFはできたけど、キムさんはこっちから出向の形のままにしてあるんだ。その方が僕と直接やりとりができるから、便利だろ?」
「そう?  よかった」
  
「じゃないと、経営不振で、カフェ・ド・キコは切られちゃうかもしれないから」(笑う)
「そんな! ひど~い。うちかて頑張ってるがな」

「わかってるよ。それで、こっちへ来ないんでしょ?」
「・・・行きたいんやけどな・・・。もうすぐお花見の季節やろ・・・。もう痛し痒しや」
「え?」
「心が痛くて痒いねん」
「プッ!(笑う)」

「美容院で何してるのん?」
「今日はね・・・。トリートメント」
「へえ・・・」

「で。あ、ネエ・・・・コマスミダ」

「え?」
「いや、コーヒー入れるかって」
「ああ」
「で。全然来られないの?」
「・・・う~ん・・・。キムはんに相談やな。あん人、うるさいから。ソウルへ行くて言うと、また、遊びに行くの?って顔するさかい・・・」
「ふ~ん・・・」
「でも仕事は一生懸命してくれはるのや・・・。コーヒーの輸入のほうは伸びてんねん」
「ああ、報告書見たよ。凄いね」
「そやろ? それだけに頭が上らんのや・・・。でも、寅ちゃんあっての、うちらやもんね」
「ふん。うれしいこと言ってくれるね」
「でも、そうや」

「じゃあ・・・キムさんに、キコをソウルに来させてくださいって言っておくよ」
「そうして。(笑う) 恐い言い方はせんでよ」
「わかってるよ」

  

ママ~^^



「あ、呼んでる」
「忙しいね」

「だって、ヨン様家族あっての寅ちゃんやろ? 寅ちゃんあってのうちや」

「じゃあ、行っておいで。おきばりやっしゃ!」
「へえ!」

  

寅の電話は切れた。



足が不自由で、時間を持て余しているのやろな・・・。
実業家さんは着々やけど・・・それだけじゃ、寂しいやろ・・・。



キコがデッキから店に入ると、また電話がなった。

  

あ、電話。

  
「もしもし?」
「今、渋谷の帰りです」
「お疲れ様」
「お店は?」
「まあまあ」
「今、寅さんから電話があって、キコはんにソウルへ来るようにって」
「早っ」

「仕事かな・・・。でも、誰かに会いたいんですよね。暇だから」(笑う)


キムはん、ご機嫌やな・・・。


「で・・・」

「で、これから、チケット取ります。月曜日出発ということで、いいですよね?」
「はあ・・・おおきに・・・」
「いやあ・・・。寅さんから、コーヒーの輸入が伸びてるねって誉められました」
「よかったな。やっぱり、あん人はちゃんと見てるな」
「ええ。ということで、キコはんは遊びに行ってあげてください。スポンサーを寂しがらせてはいけませんからね」
「うん・・・・」

「僕はこれからチケットを取って、帰ります」
「うん^^ ほな、気いつけてな」
  


ふん、よかった^^
うん・・・来週は、ソウルや・・・。

  

ママ~^^
ママ~^^

  
「へえ!」











キコはんシリーズ⑳「春の声」

2008/03/30の作品









「寅ちゃ~ん、寅ちゃ~ん。ヨンジュンはん!」


キコが寅のマンションのドアを開けて、中を覗いても寅がいない・・・。


あれ~・・・。

  
「待って~。今、トイレ・・・」

「あ~あ・・・。ゆっくり、どうぞお。冷蔵庫借りるでえ」



キコは、金浦空港からマンションへ来る途中で食材を買ってきた。


「お待たせ」


寅が松葉杖なしでゆっくりゆっくり歩いてきた。


「やあ、歩けるようになりはったの!」


キコがうれしそうに寅を見て微笑んだ。


「ゆっくりならね」


寅は恥ずかしそうに笑って、テーブルの上に置かれた買い物袋からトマトを一つ取り出した。

  
「洗ってから、食べてや」
「う~ん」
「食べる?」
「いや、いい」
「そうか」


キコはそれを受け取って、冷蔵庫にしまった。
  

「どうしたん?」
「まるで、母さんみたい」
「やだ。お母さんはいやや」


そう言うと、キコは寅のところに行き、両手を腰に回して抱きついて、顔を見上げた。


「母親代わりはいやや」
「僕も母さんはいらない」(笑う)
「ふん」(笑う)

「なあ、今、一人で住んでるのん?」
「ん? 母さんが実家と行ったりきたり」
「そうか・・・。お母さんも大変やなあ・・・」
「うん」
「今日は?」
「もちろん、来ないよ。友達が泊まりに来るって言ってあるから」
「そうか・・・うん」
  
「いつも忙しそうにしてるね」
「寅ちゃんが暇やから、そう思うだけやろ?」
「かも」


そう言って、寅がキコを見下ろして、軽くキスをした。


「あ、ペパーミントの味・・・」
「・・・」
「たばこの吸いすぎは、体によくないで」
「なんでそうなるの?」
「歯あ、磨いてたの、バレバレや」
「なんだよ」
  


寅はちょっと下心がばれて顔が赤くなった。キコはにんまりとして、寅をダイニングに座らせ、自分も席に着いた。

  

「膝においで・・・とは言えないか」(笑う)
「うん・・・。お気持ちだけありがたく頂いとくわ」(笑う)

「久しぶりだねえ・・・」
「そやね・・・。この前に比べると、ずいぶん動けるようになったな。顔色もええよ」
「うん・・・。まだまだだけど・・・」
「・・・。あせらんでええよお・・・。お茶入れよか?」
「うん」
  

キコが立ち上がってお茶の準備をする。



「なあ、今度、声優やりはるんやて?」
「そう」
「へえ・・・。韓国語だけ?」
「それはそうでしょう」
「日本語の吹き替えも自分でやればええのに」
「ええ~!」
「どうせ、時間はあるのや。この際、勉強を兼ねてやればええのに」
「ふ~ん」
「ダメ?」
「さあ」
「24話やった?」
「うん、セリフが多いだろ?」
「まあね。でも。・・・。タムドクのセリフよりは簡単やないの?」
「でも、読むのが難しい・・・」
「できるって、寅ちゃんなら^^」
「何言ってるんだか」
「そやろ?」
「でもねえ・・・」
「話せるんやから、あともう少し・・・」
「う~ん・・・」

「まあ、ええわ・・・。はい、お茶」
「ありがとう」

「・・・。あ、そうや! 寅ちゃんの好きな美如庵の塩饅頭、買うてきたで。食べよ」



キコはスーツケースを開けて、お饅頭の包みを取り出した。



「5箱、買うてきた。真空パックになってるさかい。少しずつ食べてや」
「うん」


寅が一つ、開けると、白い饅頭が並んでいる。


「寅の焼印はないの?」


寅が少しがっかりした。


「今回は急いでたからね。膝が全快したら、皆に配れるように、「寅」と「祝」て入れよか、な」
「・・・・そうだねえ・・・。うん・・・やっぱりおいしい・・・」
「よかった・・・」

「ここのは、皆に好評だったよ」
「そうか。(笑) ・・・少し掃除せなあかんなあ・・・」
「そうかい? キレイじゃない」
「まあ、そうやけど・・・」

「一つ食べたら?」
「うん・・・」



二人は、ゆっくりお茶を飲みながら、お饅頭を食べる。
キコはちょっとお饅頭が喉に詰まった。



寅は元気だが・・・なぜか見ていると、胸がいっぱいになってくる・・・。



「どうしたの?」
「ん? 別に・・・。事業のほうは・・・。うまくいってるみたいやね・・・」
「うん、そうだね。始めちゃったものはどんどん進めていかないとね・・・」
「あとは・・・足が完全に治ればええだけやね?」
「うん・・・そうだね・・・」
「そやね・・・」

「料理の材料、結構買ってきたね」
「うん・・・。好きなもん、作ってあげるさかい・・・」
「うん・・・。わかめとお豆腐も?」
「うん・・・。納豆も」
「ありがとう・・・」


二人はなんとなくしんみりとした・・・。



わかってるがな・・・寅ちゃんの気持ち・・・。
今夜は一緒に寝ような・・・。



「最近ねえ」
「ん?」
「泡風呂、入ってるんだ」
「へえ・・・」

「浸かってさ、スポンジでこするだけでいいじゃない。座ったままでいいからさ」
「あ~あ、そうやね。簡単に洗えるってわけか。今日は・・・洗ってあげる・・・」
「うん・・・」
「背中もゴシゴシしてあげるで」(笑う)
「うん。痛くない程度にね」(笑う)
「うん、まあな」
「なんか・・・目が怖いな」
「そ~んなことはないでえ」
「ホント?」
「うん! ゴシゴシ^^」
「ふん」(笑う)



「爪は?」


キコが寅の大きな手を取る。寅の手をやさしくさすってから、指先を見た。

  
「ふ~ん、キレイにしてはるね」
「・・・」
「足はどうやろ? あとで見て、爪切ってあげるわ・・・」
「・・・」
「なあに?」
「あと、マッサージもね」
「うん」

「あとは・・・」
「まだあるの?」
「いろいろあるなあ・・・」
「そんなに?」
「うん・・・いろいろね・・・。ここのところ、逢わなかったから」
「そうか・・・。ほな、いろいろね」
「うん・・・いろいろね」(笑う)

「二人で桜も見たいね・・・まだちょっと早いけど・・・」
「そうやねえ・・・。鎌倉はもう満開や。キレイやで・・・。鎌倉の桜の写真も持ってくればよかった・・・」
「いいよ・・・今度見るよ。来年は行けるかな」

「・・・。ここの窓からお花見、でける?」
「うん」
「ほな、明日、昼間見よか」
「そうだね」
「窓辺でワインを飲みながら」
「いいねえ」


「ほな! まずは料理や。ヨンジュンはん! 手伝うてや」
「いいよお」
「じゃあ、ここで・・・ジャガイモの皮剥きして」

「え! もう始まるの?」
「もちろん!」
「人遣い荒いなあ」
「ふん」(笑う)





久しぶりに、二人で向き合う時間・・・。

見つめ合っては微笑んで、それでも何事も平常心の振りをして・・・揺れ動く心をお互いに隠す。
それでも、時々触れ合う指先に、ふと手を止める。
お互いの想いが指先から流れ出てくるように感じるから・・・。
そして、静かに、はにかんで笑う・・・。



やっぱり大好きや・・・寅ちゃん・・・。




バスタイムになって、キコは風呂に湯を張った。


「寅ちゃ~ん、バブルバスって書いてあるのでええのお?」
「どれどれ」


寅が下着一枚で、ケンケンで浴室へやってきた。


「寅ちゃん、滑ったら危ないで」
「よく滑ってるよ」
「やだあ」
「でも、これが速いだから」
「もう。 ねえ、これ?」
「あ、そうそう」
「ふ~ん・・・これってブドウでできてるの?」


パッケージにはブドウの絵がついている。


「ブドウって言うより、ワインだよ」
「へえ・・・すごい!」
「おもしろいだろ」
「うん」
「おもしろいだけじゃないんだよ。ポリフェノールたっぷりだから肌にいいんだ」
「へえ・・・すごいねえ・・・。寅ちゃんは全身ワイン尽くしやなあ」

「一緒に入ったら?」
「え?」
「いいじゃない・・・。体にいいよ・・・お肌つるつる^^」
「まあ・・ねえ・・・」
「だろ?」

「うん・・・。これどのくらい入れるの?」
「ふた一杯分」


キコがふたで量を測っている・・・。


「これでええ?」
「うん。中に入れて、お湯をかき混ぜて」
「うん」


キコは、お湯の中に粉を入れて、手を突っ込んでお湯をかき混ぜる。


「ねえ、寅ちゃん、これでいいのん? 泡が出てきたでえ・・・。ねえ、寅ちゃん? あん!」

  
キコは、寅に後ろから襲われて、一緒に湯船に落ちた。


  
「何すんのや・・・」
「ふ~ん」
「もう・・・」
「ふふふ」(笑う)

「あんたあ・・・ケガするでえ・・・大丈夫?」
「大丈夫だよ、そのくらいの運動神経は残ってるよ」

「服がびしょびしょや・・・」


キコは体から剥ぐように、カットソーを脱ぐ。


「ついでに洗ったら?」
「イケズ…」
「なあに?」

「もう・・・寅ちゃんのとこ来る時は、ええもん着て来てるんやから・・・。これも高かったんよ!」
「あ~」
「普段着に見えて、普段着やないねん・・・」
「う~ん・・・」
「もう、これ、レーヨンも入ってるのに・・・」
「ごめん・・・」
「・・・」
「でも、かわいかったよ・・・」
「だけ?」
「似合ってた・・・・。ごめん」
「・・・」

「ごめん・・・」

「・・・もうええわ」
「キコ・・・」

「もうええよ・・・。手え貸して洗うさかい・・・」
「・・・」
「はよ、スポンジ貸して」

「手を出して」


寅がそう言うので、キコが右手を差し出すと、寅はスポンジでキコの手と腕を洗った。



「・・・」
「いつものお返し・・・」
「・・・」
「いいだろ?」

「・・・」
「まだ、怒ってるの?」

「・・・・もっとゴシゴシやって」
「こう?」

「そう。はい。左も」
「うん・・・」
「・・・・」

「後ろ向いて。背中を洗うから」
「うん・・・」

「・・・」
「ゴシゴシして・・・」
「・・・・」

「なあ・・・もっと・・・」
「・・・・」

  

寅が後ろから抱きしめた。



「仲直りしよう・・・。悪かったよ」
「・・・」

「ねえ」

「ええよお・・・」

「じゃあ、今日も一緒に寝よう」
「うん・・・」
「ず~っと一緒だよ。いつもみたいに暑いなんて言わないで」
「ふん。(笑う)」
「パジャマなんて着ないで・・・」

「でも、足が痛いのやろ?」

「それとこれとは別だよ」
「そうか?」
「うん」
「なら・・・ええよ・・・」
「じゃあ、抱き合って寝よう」
「うん・・・」



キコが背中に手を回して、寅のお腹に触れる・・・。


  
「あ、お腹の肉がやらかい・・・。前よりモチモチしてる」(笑う)
「そうお? ホント?」
「うん。モチモチ^^」

「もう少し腹筋したほうがいいかな」

「今もやってはるの?」
「もちろん。回数減らしたからね・・・。足りないかな・・・」
「このほうが好きや」
「や、気になるな・・・。もう少し腹筋するよ」
「もう、冗談やて。冗談」


キコが寅のほうを振り返る。


「でも、やっぱり・・・マズイよ、それは・・・」
「ええよ。これで・・・。これがええ・・」
「・・・」
「これでええて・・・」
「でもねえ」

「うちはこれが好き!」

「ふん」(笑う)

「ね?」

「うん・・・・。でも、あとで腹筋の手伝いしてね」
「もう、寅ちゃんたら!」(笑う)

「ね!」

「腹筋より、うちへのサービスしてください」
「・・・うん」

「ホンマやで。いろいろ・・・・」
「いろいろね」
「うん・・・」

「じゃあ、まずは背中の続きだね」
「うん」

  

今夜も二人の時間は続く。


寅ちゃんのマッサージして・・・足の爪切って・・・ああ、腹筋・・・。
  

それに・・・。





「キコ、もうそろそろベッドへおいで」
「うん」

  
「そうだ。日本語のテキスト、見てもらおうかな?」

「え?」


「明日ね」

「またあ・・・」

  
「早く来て・・・」
「・・・・」

「もっと近くへ来て。こっちは動けないんだから」
「こんな時だけ、病人・・・」
  

「もっとそばに来て・・・。座っていいから・・・」



ベッドの背にもたれている寅の太腿の上に座る。
  


「大丈夫?」
「もっと密着して座れば大丈夫」

「・・・」
  
「キスしてくれれば大丈夫」
「・・・」
  
「・・・もっと抱いてくれたら・・・大丈夫」

「このくらい・・・?」

「うん・・・好きだよ・・・」

「うちも・・・好きや・・・」


「もっとキスして」

「うん・・・」
  
「首も・・・」

「うん・・・」

「胸も・・・」

「・・・」
  

「はあ・・」
「やや・・・」

「ふん」(笑う)

「・・・」

「もっとキスして・・・好きだって言って・・・」

「うん・・・好き・・・大好き・・・・サランへ・・・」



今夜は、うちがやさしくしてあげる・・・。


明日は・・・寅ちゃん・・・あんたの番やで・・・。






THE END



  






2011/03/24 02:36
テーマ:【創】キコはん カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

キコはん⑲「カウチ・イン・ソウル」


こんばんは^^


BYJシアターです。




まずは、こちらにいつもの義捐金を載せていただきます。

この他、こちらのブロコリ村義援金、
地元の地方自治体の義援金、
郵便局から直接振り込める日本赤十字募金、
クレジット決済なら各クレジット会社などの義援金などがあります。



【【大震災義捐金】】受付先リスト

主なところだけですが、しばらくブログに貼らせていただきます。kiko3



●ヤフーインターネット募金
http://bokin.yahoo.co.jp/donation/detail/1630001/index.html

ヤフーウォレットを持っている人はより簡単です。
鳥山明さんの孫悟空とアラレちゃんの激励壁紙購入で募金できます。
日本赤十字への義捐金です。
振込み手数料なし


"SHOW YOUR HEART" 基金 ガクト
http://static.hangame.co.jp/hangame/extra/showyourheart/index.html

"SHOW YOUR HEART" 基金 幸せの中で暮らしている僕たちには、すべき事がある。 動ける力を身につけた僕たちには、大切な人を支えることが出来る。
だから、今、僕たちが出来ることから・・・はじめよう!!
「SHOW YOUR HEART」では、東北地方太平洋沖地震被災者へ向けての 義援金へのご協力を受け付けています。
ぺ・ヨンジュンのメッセージもあります。
こちらは、全額日本赤十字への義捐金です。
振込み手数料必要



●テレビ朝日ドラえもん募金
http://www.tv-asahi.co.jp/doraemonbokin/

テレビ朝日では「東日本大震災」による被災者を支援するため、
「ドラえもん募金」を行っています。
送り先:日本赤十字・被災地域の自治体・活動しているNPO・NGOなど
幅広い支援の場を設けています。
振込み手数料必要


●<フジネットワーク募金> 緊急募金
http://www.fujitv.co.jp/kokuchi/110313.html

フジテレビをはじめFNS系列28社では、被災者救援のためにフジネットワーク募金を開始いたしました。
皆様からの寄付金は、義援金として日本赤十字社へ送られ、被災者の皆様の生活復興のために使われます。
みずほ銀行本支店のATMからは手数料無料




●国境なき子どもたち
http://www.knk.or.jp/index.html

こちらはほほえみプロジェクトでおなじみの団体です。





●Think the earth (現地で活動するNPO・NGO支援募金)
http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/emergency/


NPO関係の災害募金となります。
国境なき医師団など各団体の活動が出ています。
NPO・NGOはそれぞれ、被災地域を限定して活動しています。
DATVの募金の「CIVIC FORCE 」が気仙沼市で活動しているように
それぞれが地元に直結しているので、
自分の希望する地域を選んで募金も考えられます。




●DATVほほえみプロジェクト

http://justgiving.jp/c/4675(募金先)

「東北地方太平洋沖地震救済支援」募金について
DATVのほほえみプロジェクトがチームになって募金を募集しています。
目標は500万円です。
送り先は、緊急時支援の団体「CIVIC FORCE 」です。
こちらのNPOは主に、気仙沼市で活動していますので、
気仙沼への支援となると思います。

DATVほほえみプロジェクト

こちらは、従来の国境なき子どもたちへの募金です。







東京にも水の問題とかいろいろ出てきましたが、
なんとか皆で乗り越えましょう^^

当面は、計画停電と仕事の時間変更などなどに
追われていますが・・・これも、なんとか切り抜けましょう!


先日、うちの方の停電中にちょうど職場に向かったのですが、
今まで停電していなかったところも停電で、

何が怖いって、信号機の停電。

ホントにそろそろと走りましたvv

停電中の夜の運転は気をつけてね。

というより、やめたほうがいいです。

日のあるうちでも、怖かったですから。


では、キコはんです^^









BGMはこちらをクリック

BGM:Page「ネガ アヌン クデン」(私が知ってるあなたは・・)







さて。


本日は・・・キコはん19話「カウチ・イン・ソウル」です。
2007/12/16の作品です。
 テサギを終えて、ケガと戦っていたころです。





ソウルの自宅の長イス(カウチ)で寝そべる寅ちゃん。

日本で心配しているキコはん・・・。
そんなキコはんの想いを知ってか、キムさんが一肌脱いでくれます・・・。


ではここより本編。
お楽しみください^^








キコはん⑲「カウチ・イン・ソウル」

2007/12/16の作品








「ねえ、背中掻いて~^^」
「孫の手があるやろ~」

「ねえ! どこにいるの?」
「今、洗濯物取ってる・・・・」



キコが洗濯を終えた洗濯物を入れたかごを持って現れた。



「ちょっと干してくるさかい」
「うん」
「あ、下着は乾燥機に入れたで。Tシャツやシャツは干したほうがええやろ?」
「うん。ちゃんと伸ばして干してね」
「わかってるがなあ。まあ、気温が低いさかい、部屋干しやけど・・・・」


そう言って、また寅の前を通って奥の間へ消えた。





「ねえ、お茶が飲みたいんだけど」
「目の前にジャーがあるやろ?」


「ねえ、何してるの?」
「今~? シーツ換えてたさかい・・・」



キコが取り換えたシーツを持って現れた。



「夕飯、何にする?」
「何がいいかなあ・・・」
「やっぱり、牛スジやろか・・・」
「ええ~?」


「筋を痛めてはるさかいねえ・・・」
「なあ~んだ・・・・短絡的」
「ふん。(笑)やっぱり?」

「全く。(笑)なんかあ・・・鍋がいいなあ・・・」

「鍋ね・・・。あ! この間、キムさんと憧れのゴシレ行ってきたえ」
「へえ・・・」

「そんでな、メニューに海鮮鍋があったけど・・・あれ、うちの味と同じやったわあ・・・」
「あ~あ」
「オモニの味より・・・」
「キコの味ね。この間、食べておいしかったから、あれは、キコの味にしてもらった」
「やっぱり! そう!」


キコは手に持っているシーツを丸めて、うれしそうに寅を見た。



「ねえ、少しは落ち着いて座ったら?」
「う~ん・・・まだやることがあるんやけど・・・。そうやね・・・ほな、お茶入れまひょ」
「ふん(笑)」


キコが日本茶を入れて寅に差し出した。



「ありがとう・・・・ふ~、おいしい・・・」
「早くよくなるとええなあ・・・」

「うん・・・・」


寅が寝そべっているカウチの前の床にキコも座って、一緒にお茶を飲む・・・。

「ここに寝てるとええなあ。テレビは目の前にあるし、お茶のセットも置いてあるし、本もあるし・・・これで、ポテトチップス食べたら、カウチ・ポテトや」
「僕は太らないよ」
「どうだか。(笑)」

「少し、サプリメントも多めに飲んだほうがええよお」
「うん、まあねえ・・・」

「それにしても、随分もろうたなあ」
「皆、同じこと、考えるんだよね」
「ま、寅ちゃんに早く元気になってほしいさかいな」


キコがリビングテーブルの上から、サプリメントの入ったバスケットを取り、中を見ている。


「これはなんて書いてあるの?」

寅に渡す。


「どれ・・・ああ、コラーゲン」
「じゃあ、これも?」
「そうだね」

「同じコラーゲンでもペプチド化されてないと意味ないで」
「そうなの?」
「分子が大きいと飲んでも吸収されんで、排泄されてしまうねん」
「へえ・・・。ああ、こっちがコラーゲンペプチドって書いてある」

「ほな、それを飲も」
「あ、これは、コンドロイチンだって」

「それも体にええから、飲んで・・・これは、ビタミンCやから飲むやろ・・・それから・・・」
「そんなにいらないよ」
「ダメや。体にええもんは取らな」


キコは寅を睨んでから、また、新しいサプリメントを探す。


「わかった。飲むよ(笑)」
「うん。うちが日本に帰っても、続けて飲むのやで」
「わかったよ」
「ホンマやで」
「わかった」
「チョンマル ヤクソケヨ」
「アラッソヨ」
「うん^^」



「あ、もうこんな時間・・・。夕飯の支度せな・・・」
「いいよ、まだ。お腹も空いてないし・・・少しここにいて・・・・」
「・・・」
「ね」
「ええよ・・・」


寅がキコの手を取った。



「顔を撫でて・・・」
「うん・・・・」


キコがやさしく、寅の頬を撫でた・・・。


「反対側も・・・・」
「うん・・・」


キコは、寅のカウチに坐り直して、寅の頬を撫でる・・・。

二人は見つめ合った・・・。



「来てくれてありがとう・・・」
「うん・・・。退院してきて、部屋を開けて驚いたやろ?」
「うん。ちょっと目を疑ったというか、驚いた。(笑)」
「うん・・・」
「・・・」




松葉杖を突きながら、マンションのドアを開けると、中にキコが座っていた・・・。
スタッフは、荷物だけ玄関に置き、何も言わず、ドアを閉めて帰っていった。

二人はじっと見つめあったが、寅がキコを呼んだ。


「こっちへ来てよ」
「うん」

寅はちょっと泣きそうな目をして、キコを力いっぱい抱き締めた。







「でも、元気でよかったあ・・・」
「・・・・」
「どうしようか、迷ったけど・・・来てよかった・・・」








寅が撮影中に負傷して、満身創痍で撮影を続行していると聞いても、キコには韓国まで飛んでくる勇気がなかった。
毎日、毎日、お不動さんに通って、寅の無事を祈るしかできなかった・・・。



クランクアップして、「これから入院するよ」という電話をもらった時は、本当に心底ホッとした・・・。
これで、寅ちゃんの安全が確保されたと・・・。


でも、精密検査は受けたものの、ファンが押し寄せるという事態になって、退院を余儀なくされていると言う話が出てきた。


「大丈夫だよ。膝にはギブスをしているから」
と寅ちゃんは言ったけど、病院の中にいたほうがどれだけ安心だろう・・・。



それに・・・。

前の恋人も看病に来ていたし、韓国語のできないキコはんには出ていく場面などどこにもない・・・。




そんな心の中で悶々としていた時、キムさんがキコはんに言った。


「精密検査が終わったら、退院するそうですよ」
「そうやてなあ・・・」
「いやあ・・・テレビでも入院した病院の映像が流れてしまったし、一部の家族の人が押し寄せたって・・・」
「ホンマに・・・。こんな大変な時に・・・ヨンジュンはんの体の心配より自分なんやろか・・・」
「それで、膝もギブスで固めたので、いったん退院されて様子を見るそうです」
「うん・・・」


「キコはん、一度ソウルへ行ってきたら?」

「・・・」

「心配されてるのは、わかってるんです。一度、顔だけでも見てきたら?」
「でもなあ・・・。あんたも知ってる通り、ちゃんと看病してくれはる人がいるやろ? そんなとこにどうやって顔を出すのや?」
「・・・」
「マズイやんか・・・」

「キコはん・・・」
「どうしたらええのやろ。やっぱり、遠くで見守っているしかないのやろか・・・」


キコはんはちょっと寂しそうに笑った。




自分で言うたのや・・・。
2号さんでええよって・・・。

うん・・・それは仕方ない・・・うちがあん人のところへお嫁に行くという選択はないさかい・・・。
でもなあ・・・。

それでも・・・辛いねん・・・。

行って・・・大変やったなあって抱きしめてあげたい・・・。行って・・・こんな無理せんでもよかったのにて、あん人の胸を叩きたい・・・それは、うちの我儘やけど・・・。

頑張れて言うてて・・・そんなにせえへんでもよかったのになんて言うたら、怒るやろか・・・。

でも、それが偽らざる心境や・・・。


電話だけで、うちの気持ちは伝わっているのやろか・・・。





「キコはん! 明日発ちましょう!」
「え! そんな急に!」
「急にしか行けませんよ。それしか時間がないんです。その代わり、4日間で帰ってきますよ。この年の瀬に店を閉めっぱなしでは潰れちゃいますからね」
「まあなあ・・・そやけど・・・」
「僕も行きます」
「・・・・」
「そうじゃないと、逢えないでしょ?」
「・・・・」
「・・・」

「ええの・・・?」

「ええ」

「おおきに・・・キムはん・・・」


あの時のキムはんは、うちの気持ちを心配してくれて、寅ちゃんのことで頭がいっぱいになっているうちを怒ったりせえへんかった・・・。
寅ちゃんを想って、悶々としているうちを助けてくれはった・・・。








「どう? こうして会ってみれば、そんなに心配するほどじゃないだろう?」
「まあな・・・でも、ほんのちょっと、ほんのちょっと、かわいそ・・・」
「ほんのちょっと?」

「うん・・・」
「そうお?」

「まあ、指はなんとか大丈夫そうやけど・・・」


寅の右手の靭帯が切れた人差し指を撫でる・・・。




「足も・・・自分で着地に失敗したのやから・・・仕方ないけど・・・」
「・・・・」
「もっと・・・もっと、うまく飛び下りればよかったんよね・・・」
「・・・・」

「もっと、寅ちゃんはかっこいいはずなのに・・・そんな失敗しはって・・・」
「・・・」
「かっこ悪・・・」
「うん・・・」


寅は空いている左手でキコの腰を抱いた。


「みっともないでえ」(顔を見る)
「うん・・・」(ちょっと気恥ずかしい)


「でも、体が疲れてはったんやねえ、きっと」
「・・・」
「いつもの寅ちゃんやったら、バッチリキメはるもん・・・」

「・・・」
「体の限界まで頑張りすぎるさかい・・・」


キコが寅を見てゆっくり微笑み、見つめ合って、二人は笑った。



「せっかく来てくれたのに、家のことばかりさせてごめん・・・」
「うううん・・・・」(寅の指を撫でる・・・)

「もっとやってあげたいこともあったのに」
「・・・なんやろ?」
「いろいろ・・・」(にっこりする)
「ふ~ん・・・・」

「今日も一緒に寝てくれる?」
「うん・・・。また、抱っこしてあげる・・・」




寅の頬を撫でて、キコが微笑む・・・。


「せっかく来てくれたのに・・・できないのは残念・・・」
「・・・?」


寅がキコの胸を触った・・・。


「なんや・・・・」
「ふん(笑)」

「・・・元気やなあ・・・」
「うん」
「もう・・・」
「ふん。(笑)」


「中秋の時に会えて・・・よかったなあ・・・」
「ああ、そうだったねえ・・・。あれはよかった。(笑)」

「寅ちゃんが、うちの夢見たて言うた夜ねえ・・・・。実はうちも見たんよ、寅ちゃんの夢・・・」
「へえ・・・」
「うん・・・」


「どんな夢?」
「それがな・・・」
「うん」
「あんたが鎌倉の円覚寺に来てるんや」










「ああ、やっぱりここの山門はいいなあ」

寅ちゃんが、北鎌倉にある円覚寺の山門を見て言った。


「趣きあるよねえ」
「うん。前に鎌倉に逗留してた時、何度も来たんだ」
「そうかあ・・・」



二人で、手をつないで、山門前の階段をゆっくり上がる。



「今日は風もひんやりして気持ちええなあ」
「ホントだね・・・」


二人で広い境内をそぞろ歩く。



「石垣の苔生しているのもいいねえ」
「ホンマや」


広い境内にたった二人・・・手をつないで歩く・・・。



「今日は空いてるなあ・・・だあれもいてへん・・・」


「いいじゃない。のんびりして・・・久しぶりの休暇にぴったり・・・」

「まあ、そうやけど・・・おかしくない?」



「座禅でもしたいなあ・・・」
「ホンマ、ちゃんと足組めるんか?」



二人はいたずらっぽく見つめあい笑った。





・・・電話だよ♪ 電話だよ♪ 電話だよ♪ 電話だよ♪・・・・




『そん時に、携帯が鳴ったんよ・・・。そんでな、目が覚めた・・・。夢やったあ・・・。でもなあ・・・その電話が、寅ちゃん、やったんやあ』






「もしもし・・・」
「寝てた・・・?」
「え?」

「寝ぼけてる」

「もう・・・今、何時やあ・・・。まだ、3時やない・・・」

「じゃあ、切るよ」


「・・・え! 寅ちゃん?!」

「ふふふ・・・」

「寅ちゃん!」

「やっぱり寝ぼけてる。(笑)」



「だって、あんたあ、何時やと思うてるの。普通の人は寝てるでえ・・・まだ、仕事?」
「うううん・・・ちょっとねえ」

「ちょっと?」

「今さ、寝てたら、夢見たから」

「夢?」

「う~ん、チェジュのセットにキコが来てて、中を案内してるんだ・・・。でも、だあれもいなくて、不思議だなと思ったら、夢だった・・・」
「ふ~ん・・・」

「だから・・・どうしてるかなと思って・・・」
「ふ~ん・・・」





『おんなじ時間に逢うてたのやなあ・・・』
『なんであの時、教えてくれなかったの?』
『そやね。たぶん・・・ちょっと気恥ずかしかったのかもしれへん・・・』






「寅ちゃん。テレビ始まったなあ・・・PCで見てるよ。映像は時々ぼろぼろになるけど・・・おもしろい・・・」
「そうか」(寅ちゃんも関西弁)


「うん・・・でも、もっとハングル勉強しておけばよかった・・・あんたの台詞がもっと直にわかったら、よかったのに・・・」


「ストーリーはわかる?」

「うん。それはね。ストーリーが書いてあるサイト回って見てるもん・・・」
「そんなの、あるんだ」
「うん・・・でも、MBCはんに言ったらあかんよ・・・皆密かに楽しんでるのやさかい・・・」

「うん・・・・今、忙しいの?」
「うん、今観光シーズンやろ。結構賑わうのや」

「そうか・・・」

「何?」

「う~ん、せっかくの中秋だからね。よかったら・・・一緒にテレビを見たいなと思って」
「・・・おうちには帰らへんの?」
「一日は家族と・・・・一日は、キコと一緒に見たいなと思って・・・」
「うん・・・・」




『それで、来てくれたんだよね?』

『でも、ホンマは悩んだのやで』
『なんで?』
『だって、観光シーズンやもん。そんな時期に、鎌倉を離れることはでけんて・・・。でもなあ・・・あんたに会うために、鎌倉へ引っ越したのやもん・・・。 それで、いかんでどうするて・・・』
『・・・・』




「・・・・」
「行ってもええの?」
「・・・」
「うちが行ってもええの?」
「いい?」
「うん・・・行きたい・・・」
「じゃあ・・・おいで・・・」
「うん・・・」




『そんで、お店のことはおいておいて、 あんたとの時間を優先したのや・・・・』

寅がキコの肩を撫でた・・・。



『それで来てくれたんだ』
『そうお・・・。あ、でも! あの時もおさんどんしてたわ』









「炊飯予約・・・と。OK!」
「OK? サンキュ^^」
「これで、朝ご飯はOK^^」


寅がタイマーのスイッチを入れて、炊飯器の予約ができた。



「じゃあ、寝るか!」
「うん」

「明日の味噌汁は、豆腐とわかめにしてね」
「ええよお。ちゃ~んと自分の食べたいものだけは買うておいてくれはるんやね。おおきにねえ^^」

「うん^^どういたしまして」

「全く^^調子ええよお」

「今日のパエリヤもおいしかったし・・・キコが来るといいねえ。おいしいものが食べられて」
「ふ~ん、それだけ?」

「え? うん」

「もう^^」





『それで、二人でベッドに寝そべってたら・・・そうだ。キコが物ほしそうな目をしたんだよね?』
『何言うてるのや・・・自分に都合がええように解釈してるなあ』
『違った(笑)』
『もう!そうやって記憶の改ざんしたらあかん!』







寅が寝ながら、キコを引き寄せる。


「一緒にご飯食べてえ・・・一緒にテレビ見てえ・・・一緒に眠る。最高だね」
「まあな」
「う~ん」


寅がキコを後ろから抱くようにして眠る・・・。
キコが寅の抱いている手を掴んだ。



「手え、貸して」
「うん?」

「揉んであげる・・・」
「ん・・・」

「まずは、右手・・・。ずいぶんマメがでけてるなあ・・・」
「この手で撫でたら痛い? どう? ほら」

「大丈夫・・・」
「ん・・・」

「お仕事頑張ってはるからねえ・・・」

「・・・キモチいい・・・」

「オオカミさん・・・あなたの手はなんでこんなに温かいのでしょう?」

「う~ん・・・それはね・・・。おまえのほっぺたを温める為だよ・・・どう、あったかい?」

「ふふっふ。反対の手え~」
「はい」


「オオカミさん・・・あなたの手はなんでこんなに大きいのでしょう?」

「それはね・・・・う~ん・・・」

「なんでや?」
「それはね・・・。おまえの胸を包む為だよ!」

「あははは、ははは・・・寅ちゃん!」



寅ちゃんがキコの上に被さるようにして、顔を覗きこんだ。


「そうだよね。遊びにきてもらって、これで帰したらいけないよね?」
「なあに?」
「ちゃんと接待しなくちゃ・・・」
「まるで・・・うちがしてほしいて言うてるみたい・・・」

「違った?」

「違うでえ・・・。あんたがしたいだけやろ^^」

「そうだよ^^」
「ふふふふ・・・」
「ふふふ・・・。二人だけの時間だもん・・・大切にしよう・・・」


「そやね・・・オオカミさん・・・」
「寅じゃないの?」

「ふふふ・・・寅ちゃん・・・」
「・・・」

「もう・・・好っきや! 寅ちゃん!」
「ふふふ・・・」







『あの時、圧し掛かってきたのは、キコだよ』
『もうそんなことだけ覚えてる・・・』
『でも、そうだよね?』
『全く! でもなあ、あん時は、やる気満々やったのは寅ちゃんやで』
『まあ、いいじゃない』
『もう!(笑) そやけど、あん時は、ここへ来るて言うたら、キムはんが大目玉やったんやで』
『ホント?』
『うん、鎌倉を出るときは・・・ちょっと、キムはんに叱られた・・・』







「こんな時期に行くんですか!」
「でも、木曜日やもん・・・ええやろ?」
「でも、金曜日まで行くんでしょ?」
「まあなあ・・・」

「僕だって・・・中秋の休みを取らないのに・・・」
「取っても・・ええよお・・・」
「そんな勝手な言い方・・・」
「なあ・・・キムはん・・・」





『それで、なんて言って説得したの?』
『うん・・・それは・・・内緒』
『どうして?』
『・・・』





「行かせて・・・行きたいねん・・・」
「・・・」
「いつまで、続くか、わからへんけど・・・今は・・・あの人に、逢いたいねん・・・」
「・・・」
「ごめんなあ・・・」
「・・・」
「わがままで・・・」

わがままやけど・・・幸せを大切にしようと思うたんよ。






『ねえ、なんて言ったの?』
『まあ、ええわ・・・。とにかく、今回は、キムはんがあんたのスケジュールを調べてくれて、根回ししてくれはったから・・・お礼を言わないとあかんよ』
『うん』




「さ!ホンマに、もうご飯の支度せな!」


キコが寅の手を振り解いて、カウチから立ち上がり、キッチンへ向かった。



「ねえ! なんて言ってきたんだよ!」
「え~え?」


「ねえ!」

「もうくどいなあ」


キコがキッチンの入口から顔だけ出した。



「ねえ」
「・・・」
「教えろよ・・・」

「そんなに知りたいんか?」
「うん」


「そうおかあ・・・」


キコが寅をじっと見つめてから、淡々とした口調で言った。


「キムはん、行かせて。行きたいねん。いつまで、続くか、わからへんけど、今は・・・あの人に、逢いたいねん」
「・・・」

「ごめんなあ。わがままでって。でも・・・全てに優先したい時ってあるやろ?^^ そう言うこっちゃ!」
「・・・・」
「夕飯の支度、するね!」



キコがキッチンに消えた・・・。

寅は、胸がいっぱいになって、泣き出しそうになった・・・。









THE END





2011/03/22 00:58
テーマ:【創】キコはん カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

キコはん⑱「もう少しだけ・・・」


こんばんは^^


BYJシアターです。




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【【大震災義捐金】】受付先リスト

主なところだけですが、しばらくブログに貼らせていただきます。kiko3



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「SHOW YOUR HEART」では、東北地方太平洋沖地震被災者へ向けての 義援金へのご協力を受け付けています。
ぺ・ヨンジュンのメッセージもあります。
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テレビ朝日では「東日本大震災」による被災者を支援するため、
「ドラえもん募金」を行っています。
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幅広い支援の場を設けています。
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●<フジネットワーク募金> 緊急募金
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フジテレビをはじめFNS系列28社では、被災者救援のためにフジネットワーク募金を開始いたしました。
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●国境なき子どもたち
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●Think the earth (現地で活動するNPO・NGO支援募金)
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NPO関係の災害募金となります。
国境なき医師団など各団体の活動が出ています。
NPO・NGOはそれぞれ、被災地域を限定して活動しています。
DATVの募金の「CIVIC FORCE 」が気仙沼市で活動しているように
それぞれが地元に直結しているので、
自分の希望する地域を選んで募金も考えられます。




●DATVほほえみプロジェクト

http://justgiving.jp/c/4675(募金先)

「東北地方太平洋沖地震救済支援」募金について
DATVのほほえみプロジェクトがチームになって募金を募集しています。
目標は500万円です。
送り先は、緊急時支援の団体「CIVIC FORCE 」です。
こちらのNPOは主に、気仙沼市で活動していますので、
気仙沼への支援となると思います。

DATVほほえみプロジェクト

こちらは、従来の国境なき子どもたちへの募金です。


 





さて!


本日のキコはんは、【キコシリーズ⑱】「もう少しだけ・・・」です。


これは、2007.11月の作品です^^

当時、テサギの撮影でケガをした寅ちゃんとキコはんの電話でのやりとりです。


とっても、短いですが・・・二人の心のふれあいをどうぞ。


ではここより本編。
お楽しみください。










BGMはこちらをクリック

BGM:Page「ネガ アヌン クデン」(私が知ってるあなたは・・)












ヨンジュンはん、

ケガしなはったって・・・。

でも、大丈夫や・・・うちがついてる・・・。






【キコシリーズ⑱】「もう少しだけ・・・」

(2007/11/17 作品)






「もしも~し? もしも~し?」


「ふふ。(笑う)聞こえてるよ」

「どうしなはった? また、ケガしはったんか」

「冷たい言い方だな・・・」(ちょっとふくれる)


「でも、そうやろ? どうお、具合は・・・?」
「うん・・・この間よりちょっと重いの」

「う~ん、そうかあ・・・。実はニュースで見たで」
「そう・・・」


「今回は電話してこんかったさかい、重いんやろなあって・・・」
「そう思った?」

「うん。あんたの気持ちはわかるさかい。軽い時ほど、よく話すもん・・・」
「うん・・・」



「重い鞭うち症って感じやろか?」
「だね」
「首や肩が重たいのん?」
「うん」



「そうか。でも、仕事は続けるのやろ?」

「あと少しだからね。今休むわけにはいかないよ」





「うん・・・。まあ、声が元気そうでよかった・・・」
「・・・まあねえ」

「休み時間は少しでも体休ませなあかんよ」
「うん」

「休憩時間だけでも、首にギブスみたいのして固定してたらええのに」
「衣装着てるだろ?」

「うん・・・。ご飯は食べれる?」
「まあねえ」

「まあねえか・・・。なんか作ってあげたいけど、そうもいかんしな」
「まあ、なんとか食べてるよ」

「流動食でええんやから、どんどん食べなあかん。体力つけな」
「とは、言ってもね」

「あんた、神経質やから、あかん。食事は考えて食べるんやないで。ただの燃料やと思うて、どんどん体の中に取り込まな」

「そお~んな。そうは言ってもさあ」


「う~ん。そうや。おいしい出しの素があるのや。化学調味料は一切入ってないから、明日、送る」

「それでどうするの?」

「ゼリーの素も送るさかい、魚や野菜を煮て、ゼリー寄せにして冷やして食べたらええ。喉越しがええさかい」

「うん・・・」

「一工夫や・・・」

「うん・・・」

「明日、送るさかい・・・。作ってもらいい」
「わかったよ」






「もう寝たほうがええ・・・」


「眠れないから、電話してるんだからさ・・・。なんか、話して」

「痛くて眠れんのん?」

「というわけでもないけど・・・なんか話して・・・」

「なんかてなあ・・・」

「じゃあ、羊を数えてくれる?」
「ええ?(笑う)・・・そな、電話、一度切って。うちからかけるさかい」

「なんで?」

「あんたがいつ寝てもええように・・・」
「いいよ」



キコはいったん電話を切って、すぐに自分のほうから折り返し電話をかける。





「もしも~し? 寅ちゃん?」
「いるよ」
「ふふふ・・・」

「僕しかいないだろ?」
「まあな」


「じゃあ、羊を数えて」

「ええよ。では始めます」

「ふふふ・・・」

「ええと・・・。羊~が1匹、羊~が2匹、羊~が3匹・・・羊~が15匹」
「うん・・・」

「そこに、羊のお母さんが来て、『これから、ピクニックに行きましょう』と言いました」
「へえ」

「そしたら、羊のヨンさんの家族も参加しました」
「へえ(笑う)」

「それが、183人ね」
「へえ・・・」

「でも、ピクニックへ行った先に、オオカミの団体がやって来たので、羊は15匹食べられてしまいました」

「なんだよ、それ・・・。ヨンさんの家族は大丈夫だったの?」
「もちろん・・・・最初に食べられました」
「それは困るなあ・・・」

「じゃあ、子供が食べられたい?」

「う~ん・・・なんかやな感じだなあ。それで?」


「では、残りは何匹でしょう?」


「なんだよ、それ・・・待って。もう一度言って。書き取るから」
「もう、そんなん書き取らんでも・・・」
「いいよ、言って。さあ」

「そんなん、適当に言ってるだけやさかい・・・」

「なあ~んだ」

「だって、普通は面倒くさくなって、寝てしまうやろ?」

「寝ないよ」



「もう、負けず嫌いやさかい・・・」

「・・・何だよ・・・」


「強がりだし・・・」
「・・・」


「痛いのやろ?」

「・・・」

「痛くて眠れないて言うたらどうや」

「・・・まあねえ・・・」

「ほな、言うてみい」
「痛いよ」

「一人じゃ、ちょっと苦しいって言うてみい」
「まあねえ・・・」



「寝がえりが大変?」

「寝ちゃうとさ、患部が下へ来るじゃない。そうすると、そこがド~ンと重いんだよね・・・」
「ああ、わかるような気がする・・・それは寝づらいなあ・・・。少し工夫して寝んと」
「うん・・・工夫してる」

「そうか・・・」

「うん・・・」

「でも、あと少しやもんね・・・。夢中にしてれば、2週間なんて、すぐ過ぎるやろ・・・」
「そうだね・・・」
「うん・・・」




そう思おう・・・。
そう思うことにする・・・。





「ねえ、寝られるお話して」

「なんやろねえ・・・。何がええかな・・・。ああ。この間、韓国サイトで読んだんやけど、本もんの広開土大王はんはやっぱり立派なお人でな、国や民のために、日夜、労を惜しまず、力を尽くしたあげく、惜しくも40歳になる前に亡くなったて。たくさん心を労し、気持ちを碎いたので、40になる前に髪は真っ白になり、額にはしわが一杯だったて」

「ああ、そうだろうな・・・あの人は」

「あんたはそうなったら、あかんよ」
「・・・」

「長生きせな・・・」
「・・・うん」

「うんなんて、口約束だけやない」
「先はわからないだろ?」

「でも、長生きせんとあかん・・・」

「キコもね」

「うん・・・」




「ああ、なんか眠くなってきたなあ・・・」

「寝てええよ」

「なんか話してて」

「うん。寝やすい格好しはったら?」

「うん・・・待って。よいしょ・・・。よし。したよ」



「ほな、話すでえ・・・。あるところに、王様がいました。こん人、ハンサムやったんやて」
「うん」

「そんでな、こん人、つまらないギャグが好きでな」
「へえ・・・」

「ある日、お忍びで温泉へ行ったんやて」

「へえ・・・」

「そしたらな・・・素敵な仲居さんに会うたんやて・・・」


「・・・へえ・・・」


「そんでな・・・寅ちゃん?」


「・・・・ん?」


「ここからが、ええ話なのや」


「・・・・(スー・・・)」


キコの耳元に、少し寝息が聞こえる・・・。



「ここから、大恋愛の始まりや・・・」

「・・・・」
  

「寅ちゃん、ここから真剣に聞かなあかんよ。ん?」


「・・・・ん・・・・・」


「・・・・。それでな・・・・」



「・・・・・(スースー)・・・」



「・・・王様は・・・気持ちよく寝なはったて・・・・」



「・・・・」


「おやすみ・・・・」






キコは電話を切った。






ふ~ん・・・。
少しでも、ぐっすり寝られるとええなあ・・・・。

応援してるさかいに・・・。



あ!

そや!

お不動さんに、願掛けに行こ。



うちが
寝てる場合やないわ!


もう一頑張り、うちもするさかい・・・。


あんたは、ちゃんと寝るのやで!
  

おやすみなさい、寅ちゃん・・・。

うちは出かけてくるさかい!








ああ、さぶ・・・。


どうか、
今年の冬は寒くなりませんように・・・。

お願いします・・・。









THE END








ふ~ん・・・
今もその痛みに耐えるヨンジュンさんですが・・・vv



↓どんな時もきちっと^^ちゃんと^^靴下を履いている寅ちゃんです^^v
この笑顔は最高です^^





2011/03/21 00:57
テーマ:【創】キコはん カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

キコはん⑰「祭りのあと」


こんばんは^^


BYJシアターです。




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この他、こちらのブロコリ村義援金、
地元の地方自治体の義援金、
郵便局から直接振り込める日本赤十字募金、
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【【大震災義捐金】】受付先リスト

主なところだけですが、しばらくブログに貼らせていただきます。kiko3



●ヤフーインターネット募金
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"SHOW YOUR HEART" 基金 幸せの中で暮らしている僕たちには、すべき事がある。 動ける力を身につけた僕たちには、大切な人を支えることが出来る。
だから、今、僕たちが出来ることから・・・はじめよう!!
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ぺ・ヨンジュンのメッセージもあります。
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●テレビ朝日ドラえもん募金
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テレビ朝日では「東日本大震災」による被災者を支援するため、
「ドラえもん募金」を行っています。
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●<フジネットワーク募金> 緊急募金
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フジテレビをはじめFNS系列28社では、被災者救援のためにフジネットワーク募金を開始いたしました。
皆様からの寄付金は、義援金として日本赤十字社へ送られ、被災者の皆様の生活復興のために使われます。
みずほ銀行本支店のATMからは手数料無料




●国境なき子どもたち
http://www.knk.or.jp/index.html

こちらはほほえみプロジェクトでおなじみの団体です。





●Think the earth (現地で活動するNPO・NGO支援募金)
http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/emergency/


NPO関係の災害募金となります。
国境なき医師団など各団体の活動が出ています。




●DATVほほえみプロジェクト

http://justgiving.jp/c/4675(募金先)

「東北地方太平洋沖地震救済支援」募金について
DATVのほほえみプロジェクトがチームになって募金を募集しています。
目標は500万円です。
送り先は、緊急時支援の団体「CIVIC FORCE 」です。

DATVほほえみプロジェクト

こちらは、従来の国境なき子どもたちへの募金です。


 





さて!


本日のキコはんは、キコ⑰「祭りのあと」です。


これは、2007.8月のお誕生日のときです^^


ではお楽しみください!








BGMはこちらをクリック

BGM:Page「ネガ アヌン クデン」(私が知ってるあなたは・・)







「もしもし!」

「15分遅刻や・・・」
「ごめん」

「お誕生日おめでと」
「ふん。ありがと」

「遅れたわけは?」

「スタッフの皆がね、バースデイケーキを用意してくれたから」

「ほな、行かなあ」

「うん、もう行くけどね。ちょっと声を聞かないとね」
「うん・・・。うちは、キムさんとあんたの誕生日のイブを祝ってたのや」
「ホント? 電話なんかするんじゃなかった・・・」

「うそやあ・・・」
「・・・」

「もうすぐ、キムはんがそっちに着くで」
「・・・」
「うちが作ったお料理持って、飛行機に乗ったのや」
「ええ?!」
「驚いた?」
「そんなことまでしちゃって・・・」

「大丈夫。あん人が夏休み取りたいて言うてたから、ついでに持っていってもろたの」
「ふ~ん・・・」
「真空パックにしたから、大丈夫やと思うけど」
「へえ」

「なあ。うちが、うまくナムルが作れないて言うたらな、キムはんが一緒に韓国にくれば、お母さんが教えてくれるて言うた・・・」

「それはダメだよ・・・」
「って、寅ちゃんが言うかなと思うて断った・・・」
「そう?」
「うん・・・」

「家ごとに味が違うからねえ・・・よそのうちの味になっちゃう・・・」
「って、言うかなと思うた」
「よくわかったねえ」
「わかるがな・・・」

「あ、そろそろ、行かなくちゃ」
「そうやな。キムはんも着くやろ・・・。お夜食にどうぞ・・・。冷蔵庫に入れて明日の朝でもええな」

「何作ったの?」
「なんかおせちみたいになってしもた。日持ちするもんて思うたから・・・」

「それもいいね」
「ほな・・・。寅ちゃん、35歳の誕生日、おめでとう。これからもええ仕事してください。まあ、太王四神記は成功することはわかってるけど、(笑う)無事にクランクアップでけるように・・・」
「うん・・・」

「そして・・・」
「・・・」
「そして、また、うちを訪ねてくれはるように・・・」
「・・・うん・・・・」
「あんた、もう、早、行かなあかん・・・。いつでも心で思うてることはあんたの幸せ・・・それは変わらへんから」
「キコの幸せもね・・・」
「うん・・・」




ヨンジュンさ~~ん~




「呼んではるよ」
「じゃあまた、電話するよ。お腹を壊したって」(笑う)
「なあ! ホンマに変やったら、食べんでね。皆に迷惑かけることになるさかい!」
「わかった!」

「ほな・・・」
「お休み、キコ。ありがとう」
「うん・・・おきばりやっしゃ・・・」




寅ちゃんは幸せそうな声やった。

仕事が充実してるのやな・・・。






あ、電話!


「はい!」
「あ、キコはん! 今着きました。これから、ヨンジュンさんのとこ、届けます」
「おおきに。キムはん、あんたもええ夏休みをね。ほな、寅ちゃんによろしく」



ああ、これで安心・・・。


今日はいい夢見られそうや・・・・。







キコはんシリーズ⑰「祭りのあと」
(2007/08/30作品 )






人はニオイ一つでも幸せになるなあ・・・
寝る前に髪を洗ったら、あんたのニオイがした

それだけで、幸せになった


あんたが気に入ったと言うたココアを入れて飲む・・・

それだけで、幸せになった


あんたが気に入ったと言うた枕に頭を乗せて眠る・・・

それだけで、切のうなった


それだけで、恋しさが募ったよ

寅ちゃん・・・










「おはようございます」

「ママ、今日はお世話になりますう」

「どういたしまして。いつもの奥のテーブルにテーブルをくっつけて、15名様」
「ありがとう。ねえ、皆、こっちよ」

「今日はちょっとお天気がぐずついて・・・」
「そうなの。ヨン様のお誕生日でしょう。それに、ちゃんとお仕事できるか心配」

「でも、あちらはソウルでっしゃろ?」
「(笑う)そうね」



今やキコの店の常連となったヨン様家族のおば様方が、今日は、ここでヨン様のお誕生日会+オフ会をやるという。ここの店としては、ほとんど貸切状態である。




「お待たせしました。今日は大勢さんでお越しやして、おおきに・・・。狭くて申し訳おへん」
「いいのよ」
「では・・・お茶回せてくれはりますか?」
「あ、いいわよ。ママ、ゴシレに行ってみようかとかいろんな意見があったんだけど、ここがなんか、しっくりいくのよね。それでここでお誕生日会」

「そうだすか。今日は何かサークルとかのお集まりですか?」
「ええ、サークルの湘南支部のオフ会」

「そうだすか。では今日は皆さん、ごゆっくり、楽しんでおくれやす」
「ありがとう」




キコは、ランチの準備にカウンターに入った。

今日は水曜日で、この辺では水曜の昼はあまり客が入らない。
でも、今日はヨン様のおかげで、ランチの予約が15名入った。それも、いつもより少し豪華にして3000円のコースでという。



ホンマにヨン様のおかげ・・・。
寅ちゃん、おおきに・・・。




料理の仕度をしていると、おば様方の話が聞こえてくる。



「そうなの! 見たでしょ? 『セクションTV』の番宣、私も笛になりたい・・・」
「やあだ~。(笑う)でも、あの顔がたまらないのよね」
「指もいいのよ!」
「やだあ~」

「もう、ホントに10月放送よね」
「じゃないの?」
「そうよね、もう待てないわ」
「あ、公式にお祝い入れてきた?」
「入れたわよ。サランへって書いちゃった」
「やったわね!(笑う)書くんじゃなくて、言いたいわね。正面から」
「それいい~」





皆が盛り上がっている。

キコはにんまりしながら、向こう付けを盛る。





「お待たせしました・・・」
「あ、少し韓国風。うれしいわあ・・・」

「あら。氷の上に豚しゃぶとほうれん草に揚げなす・・・。涼しげねえ」
「ああ、こちらは・・・ちょっと。今年は暑かったですからね・・・。メインではないんですけど、少しだけ涼やかに・・・」

「いいわあ。豚ってビタミンB群がいっぱいだから、夏にはいいのよね。体が癒されちゃう」
「癒し?(笑う)それを言うなら、ヨン様でしょ?」
「あははは」

「どうぞ、ごゆっくり。あとでデザートもありますので」




そう、豚しゃぶはヨン様のお誕生日には欠かせないのや・・・。


あん時は、常夜なべやったけど・・・。
寅ちゃんは、豚さんが好きやから・・・。








「どないしたの? こんな時間に電話してきて。撮影中やろ?」
「う~ん、暑いだろう。急に、豚しゃぶが食べたくなって」
「食べたくなって?」
「キコを思い出した(笑う)」
「なんやの。(笑う)」

「いいじゃない」
「ええよお・・・まだ、記憶の中にあるんやから・・・。でも、韓国でもあるやろ?」

「キコのが食べたくなっちゃったからさあ・・・」
「ホンマ? ほな、今度な、今度、また作ってあげるで・・・」


「お店はどう?」
「今、夏休みやろ? 結構、お客さん入るねん。ついこの前までは、梅雨で閑古鳥やったけど・・・まあ、なんとかやってます」
「そっか・・・それじゃあ、こっちには来られないねえ」
「うん・・・ごめん・・・」

「じゃあ、どこかお店で食べるよ」
「うん・・・。ああ・・・そうや。記憶で思い出したけど」
「うん?」

「昨日なあ、おかしかったというか、困ったというか^^」
「どうしたの?」

「ほら、ヨン様家族のお客はんがよく来てくれるて言うたやろ?」
「うん」
「あの中のな、一人の人に聞かれたんよ・・・」
「ん?」
「ここのキムさんて人、韓国の元BOFに勤めていませんでしたかって」

「なんで?!」
「あんたに会いたくて、以前のBOFに訪ねたときに、日本語の通訳で出てきた人に「そっくり」なんやて・・・」

「それで?!」
「さあ、うちはその辺はよう知らんのですわ・・・。でも、とても優秀なお人で、ここのコーヒーの輸入を手掛けてるんです・・・って言うといた・・・。他になんて言うたら、よかったのやろ?」

「そう・・・」
「ホンマに、ヨン様の家族は、ヨン様関係の記憶はええからなあ^^恐るべし、ヨン様家族や」

「キコも?」
「もちろんや」

「へえ・・・」
「今、疑った?」
「ちょっとねえ・・・」

「なんで疑うのん?」

「だって・・・豚しゃぶで何にも思い出さないなんて」
「豚しゃぶで?」

「この間、一周年記念だったよ」
「え? 何の?」

「あ、忘れてる・・・」
「ああ・・・」

「わかったふり・・・」

「覚えてるがな・・・。うちの手料理を初めて食べたのが豚しゃぶで、去年のゴシレのオープンの時や」

「そう・・・だから?」
「だから?」

「だから?」

「だから・・・。だから・・・初めて・・・キスしたんやった・・・」
「・・・覚えてたんだ」

「そら、ヨン様の家族は記憶がええから・・・」

「合格!」


「なあ・・・。あんたが、今日は帰りたくないって言うたのや・・・」

「そうじゃないだろ? キコがめずらしく、『オヌルン・・・ポネゴ シプチアナヨ』(今日は帰したくない)ってゆうたのや!」

「え? うちが誘ったみたい・・・」
「違った?(笑う)」
「違うがな・・・記憶喪失!」

「あ、ごめん、今、呼ばれたよ。また、電話するね」
「うん・・・・。体に気いつけて、頑張ってや!」
「キコもね!」


「寅ちゃん!」
「何?」

「サランへ・・・」
「・・・」
「ほな、また」
「うん・・・サランへ」
「じゃあまた!」











「ママ~! ママ~」

「・・・あ・・・」


キコはカウンターの中で、ぼうっと、あの時の電話を思い出していた。
二人だけの思い出の会話・・・。



「あ、すんまへん。何ですか?」

「お茶、いただけます?」
「へえ・・・。新しいのと替えますさかい・・・」





キコは、お茶と一緒に鎌倉の和菓子屋で作ってもらった薄皮饅頭を皿に並べる。




「お待たせしました。今日はヨン様のお誕生日でっしゃろ? これはデザートとは別に召し上がってください。うちからのお祝いだす」

「あら・・・『祝』ってなってる・・・」

「へえ、『美如庵』で特別に作ってもろたものなんです・・・」

「へえ・・・おいしそう・・・。『祝』と『寅』・・・この寅って?」

「これなあ・・・。お客さんもご存知でしょう。あの庭の水盤の中にトラさんがいるのを。あれを下さった方もお誕生日で・・・。一緒に祝ってあげてくれますやろか?」

「ああ、そういうこと・・・。お誕生日のおすそ分けね・・・。でも、ヨン様も同じ日だからいただくわ」

「そうですか・・・おおきに・・・」



『美如庵』さんで特製で作ってもらった薄皮饅頭。
小さめに食べやすく、皮は塩味でさっぱりと、中は寅ちゃんがお気に入りだった漉し餡で・・・。
そして、「祝」と「寅」の焼印を押してもらった。
真空パックで作ってもらい、12個ずつ化粧箱に入れてもらった。



数が足りたやろか・・・監督さんやスタッフ・・・身近な俳優さんに配れるとええけど・・・。
それに、寅ちゃんはあのお饅頭はきっと気に入るはずやから、いくつか手元に残したいやろ・・・。

もっと持たせればよかったかな・・・。



ヨン様家族のおば様は、それをヨンジュンさんも食べているのを知らない・・・。


でも、キコはうれしい。
皆で祝ってくれはって、一緒に食べてくれはって・・・。




「ママ~。これ、おいしいわ~」
「そうですか? よかったあ」



お茶を入れ替えて、キコはデッキに出た。今は、晴れている・・・。



ちっちゃい寅ちゃんは、元気かな・・・。


蓮の花の入った水盤の中を覗く。花は終わってしまったけど、ここには寅ちゃんがいる。

細長いシャベルでちょっと土をよける。
寅ちゃんがいた。



元気やった? 
もうお祝いのお料理は食べた?

お饅頭はどうした?

一口でも食べてくれはるとうれしいけど・・・。


あんたも食べられるとええのにね・・・ミニ寅ちゃん・・・。




携帯電話が鳴った。



「はい」
「あ、キコはん。キムです。ヨンジュンさんは朝ご飯にお料理召し上がりました」
「そうか!」(うれしい)

「おいしいって言ってましたよ」
「そうか、よかった」


「ヨンジュンさんが・・・。(笑う)」
「なあに?」

「時間が経ってもお腹が痛くならなかったら、キコはんにお礼の連絡してって。(笑う)お元気です」
「ふふふ。(笑う)ホンマに・・・アホな人や・・・」
「いえ、実に賢明です。お饅頭も周りの方に配りました。皆さん、おいしいって。監督が、これは味が洗練されてるねって」
「ホンマ? 『美如庵』に頼んで正解やったなあ」
「それに、ヨンジュンさんは、ホントに気に入っちゃったみたいです」
「よかった・・・」

「よかったですね・・・」

「うん。おおきに・・・。キムはんもそっちでゆっくり過ごしてきてや」

「ええ。でも、なんか・・・もう帰りたい気分です・・・。まあ、実家で2、3日羽を伸ばしてきます」

「そやね。忙しい時は、お姉ちゃんが来てくれるし・・・。それに、こっちも9月の連休に入ったら忙しくなるさかい、今のうちにゆっくりするとええよ」

「はい。ではまた。あ、ヨンジュンさんの食べてるところ、写メールしますね」

「おおきに! ほなな」





キコは電話を切って、ふと2階を見上げた。


雨の日も、水盤の中にいる寅に会いにくるキコを2階からじっと眺めていたキムさんを思い出した。

水盤に傘をかざして、中の寅ちゃんに話しかけて、ふと見上げた2階の窓に、キムさんはいた。

キコが微笑みかけると、キムさんは微笑み返した。




「おおきに・・・」





キコがデッキから戻ろうとすると、携帯が鳴った。

キムはんからのメールだった。
寅ちゃんが料理を食べている写真だった。
食べながら、寅が微笑んでいた。


寅ちゃん・・・。





それから、間髪いれず、寅からメールが入った。


「お腹を壊しました・・・」


「パアボ!」


返信!



「もうバレてるがな・・・あんたがうれしそうに食べてたの、知ってるで!」


返信!





「おいしかったよ・・・おかげで元気になったよ。
お饅頭は・・・・皆に評判よかったけど、僕が3箱もらいました^^」




もう・・・^^



「それはそれは・・・(^-^)(__)」


返信!



「ありがとう。あなたの寅より(^-^)(__)」




キコはそのメールをじっと見つめた。




「どう致しまして。しっかりお仕事してな。

あなたの、キコより・・・(^-^)(__)」



送信!







「ママ~」
「あ、今、行きます!」




キコは幸せそうに店に戻った。







THE END






いつものkiko3のうれしい話です^^

これはもう3年半以上前に書いたものですが、

その後に読んだ記事で、

マネジャーのヤンさんに
ヨンジュンさんが作ってあげた料理が
うどんと豚しゃぶというのがありました^^

やっぱり・・・

ヨンジュンさんは寅ちゃんです^^

読者なんでしょうか・・・爆^^


これもキコはんの楽しみ方の一つです^^





2011/03/19 23:21
テーマ:【創】キコはん カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

キコはん⑯「七夕は開店記念日」(2007.7月)

Photo
こんばんは^^


BYJシアターです。



こんな大変な時に!

そうです・・・・。

でも、

そんな時だからこそ
われらが寅ちゃんの愛を感じてもいいでしょう^^


それにこの主題歌を聞いているとめちゃくちゃ癒される私です^^v


現実のヨンジュンさんは
日本に大きな愛を与えてくれました。

その気持ちに感謝するとともに
私たちも明日へつながる歩みを続けなければなりません・・・。



まずは、こちらにいつもの義捐金を載せていただきます。

この他、こちらのブロコリ村義援金、
地元の地方自治体の義援金、
郵便局から直接振り込める日本赤十字募金、
クレジット決済なら各クレジット会社などの義援金などがあります。



【【大震災義捐金】】受付先リスト

主なところだけですが、しばらくブログに貼らせていただきます。kiko3



●ヤフーインターネット募金
http://bokin.yahoo.co.jp/donation/detail/1630001/index.html

ヤフーウォレットを持っている人はより簡単です。
鳥山明さんの孫悟空とアラレちゃんの激励壁紙購入で募金できます。
振込み手数料なし


"SHOW YOUR HEART" 基金 ガクト
http://static.hangame.co.jp/hangame/extra/showyourheart/index.html

"SHOW YOUR HEART" 基金 幸せの中で暮らしている僕たちには、すべき事がある。 動ける力を身につけた僕たちには、大切な人を支えることが出来る。
だから、今、僕たちが出来ることから・・・はじめよう!!
「SHOW YOUR HEART」では、東北地方太平洋沖地震被災者へ向けての 義援金へのご協力を受け付けています。
ぺ・ヨンジュンのメッセージもあります。
振込み手数料必要



●テレビ朝日ドラえもん募金
http://www.tv-asahi.co.jp/doraemonbokin/

テレビ朝日では「東日本大震災」による被災者を支援するため、
「ドラえもん募金」を行っています。
振込み手数料必要


●<フジネットワーク募金> 緊急募金
http://www.fujitv.co.jp/kokuchi/110313.html

フジテレビをはじめFNS系列28社では、被災者救援のためにフジネットワーク募金を開始いたしました。
皆様からの寄付金は、義援金として日本赤十字社へ送られ、被災者の皆様の生活復興のために使われます。
みずほ銀行本支店のATMからは手数料無料




●国境なき子どもたち
http://www.knk.or.jp/index.html

こちらはほほえみプロジェクトでおなじみの団体です。





●Think the earth (現地で活動するNPO・NGO支援募金)
http://www.thinktheearth.net/jp/thinkdaily/emergency/


NPO関係の災害募金となります。
国境なき医師団など各団体の活動が出ています。




●DATVほほえみプロジェクト

http://justgiving.jp/c/4675(募金先)

「東北地方太平洋沖地震救済支援」募金について
DATVのほほえみプロジェクトがチームになって募金を募集しています。
目標は500万円です。
送り先は、緊急時支援の団体「CIVIC FORCE 」です。

DATVほほえみプロジェクト

こちらは、従来の国境なき子どもたちへの募金です。


 


さて!


本日のキコはんは、七夕です^^;って季節が全然違いますが^^;

2007年7月7日って・・・すごいでしょ?^^


七夕のこの日、
キコはんのカフェ・ド・キコは開店となりました。


そして・・・・

後に私がうれしくなったのは、
ここで寅ちゃんを象徴する花です・・・。


このあと、BOFIではこの花がヨンジュンの印になっていくので、
キコはんマニアとしてはうれしいにつきます・・・^^v




それでは、キコはん16「七夕は開店記念日」です。

当時の状況を忘れてるといけないので、注も入っています^^v

ではお楽しみください!









>


BGMはこちらをクリック

BGM:Page「ネガ アヌン クデン」(私が知ってるあなたは・・)







  
キコはん16「七夕は開店記念日」
(2007/07/07作品 )







「おはようございま~す。すみませ~ん」
「なんでっしゃろ?」


「お花のお届けです」
「はあ・・・」

「こちらの開店祝いの」
「はあ・・・どこからだす?」

「ええと、タイガーネクスト様からです」
「はあ・・・知らんなあ・・・」

「でも、ほら、こちらに、「カフェ・ド・キコ開店祝い」って書いてありますよ」
「あ、ホンマや・・・」


「置かせていただきますよ」

「ええ、まあ、どうぞ・・・」


それは、大きな植木鉢にオリーブの木を中心に寄せ植えされたものと、これまた、大きな水盤のような鉢に蓮の花が入っていた。

  

「ずいぶん、大きいな・・」
「ええ、普通の方では持てませんよ。こちらも二人がかりですよ」

「さて。どこに置くかな・・・」
「それはもうご指示を伺っておりますから」

「伺ってるて・・・。どういうこと・・・。あ、キムはん、おはよう。ちょっと、早よ来て! あんたが来てくれてよかった。なあ、大変なんや。祝いのお花が届いたんやけど・・・」
「それが?」

「タイガーネクストて言うところからやて」
「はあ・・・」

「置く場所もな、指定してきはるんやて」
「はあ。(笑う)」
「笑ってる場合やないで」



その大きな寄せ植えの鉢は、店の入り口右、蓮の入った鉢は庭のデッキ横に置かれた。



「庭の水道はどちらですか?」
「あ、こっちやけど・・・」


花屋はさっさと植木に水をやり、蓮の入ったテラコッタの鉢に水を張った。


「終わりました。こちらの蓮は、このままで大丈夫ですから。気がついたら、水を足してやってください」
「へえ・・・」

「こちらに、責任者の・・・ええと、林キコ様のサインを」
「あ、うちや・・・。へえ。どうもお世話様だす」

  

花屋の宅配便が帰って、キコがその大きな鉢植えを見る。


「大きいなあ・・・」


名前が差してある。


「カフェ・ド・キコさん江  Tiger Next (^-^)(__)より・・・・ふ~ん」

「キコはん、まだわからないんですか?」

「Tigerやろ・・・トラの次のにっこり・・・」

「ふふふ・・・」

「寅・次・郎か!」

「そうですよ、今日はカンが冴えないな」
「ホンマ!(笑う) 寅ちゃんからか・・・。それで、場所まで指定してきはったんや・・・寅ちゃんたら・・・」



キコはうれしそうにお祝いの鉢植えを眺める。



「う~ん、そうかあ・・・。ええな。バッチリや。なあんかスッキリした」
「なんで?」

「え?」

「スッキリしたって?」

「うん、ええのんよ。これで、元カノが出てきても平気や・・・。まあ、こっちは2号さんやけど・・・」

「はあ? 2号って?」
「鉄人2号て知らんの?」
「あれって、28号でしょう?」

「そうか? そうやったあ? よく知ってはるやんかあ!^^」


キコは笑ってどんどん店の中へ入っていく。



「それにしても、場所指定てな・・・」
「この間来た時、携帯でお店の前の写真撮ってましたからねえ・・・」

キムさんが後ろからそう言ってついてくる。


「そうか、それで? あ~ん、お礼のメールに写真つけな、あかんな。ちゃんと寅ちゃんがお願いした通りに配置されましたって」



キコがデジカメを持って、また店の外へ出る。キムさんは、キコが行くところ後ろからついてくる。



「あんたも一緒に写るか?」
「キコはんが写ったほうがうれしいんじゃないですか?」
「そうやね、そうする! 撮って!」


キコが鉢植えの横に立って笑顔を作った。


「サンキュ。それから、全体が見える写真も必要やね。なにしろ、完璧主義者やから・・・」
「本気で言ってます?」
「半分冗談。(笑う) まあ、ええんやない?」


キコが真面目な顔をして、構図を決めて玄関の写真を撮った。




「そういえば、この間、小さいブタを2つ買うて、寅ちゃんのブタの後ろに並べた写真送ったやろ?」(注:前回、寅ちゃんが庭に大理石のブタを置きました)

「喜んでたでしょ?」

「それがなあ・・・。電話がかかってきて、なんでああいうものを買うたのやて、怒られてしもたがな」
「ええ?!」

「電話取るなり、『ブタだけど』って、名前も名乗らんで言うのや。あん人の頭の中にはブタしかないのんか」
「それで? なんで駄目なんですか? かわいいのに」

「寅ちゃんの後ろに『ちっさいの、2つ置いたで、かわいいやろ』って言うたら・・・」
「なんですって?」

「それがな、うちとキムはんが並んでるみたいに見えて、嫌やて。大きいのをもう一つ買うて、並べてくれて言うのや」

「買うんですか?」

「うん。もう注文した。今な、他の支店から取り寄せてもろてるのや・・・バカみたいやろ?」
「かわいいじゃないですか?」

「そうか?」
「ホントに、ヤキモチ焼きですね」

「ホンマ。あん人はうるさいわ・・・」
「ホントに?」
「ホントに。でも・・・好きや^^」

「そうですよね」

「うん・・・。後、蓮の花も撮らんと・・・。あれ、キレイやねえ」
「なんか、水が張ってあると、涼やかですよね」

「うん。どうやって撮ろう・・・花のアップと。引いて撮った写真がええかな・・・」



「あれ・・・」

「どうしました?」

「これ、見て!」


キコが指差すところを見ると、水盤の底にトラの置物がいた・・・。



「凝り性ですね・・・」
「ふん。(笑う)凝り性プラス『これ見て、驚いた?』って喜んではるのや。(笑う)二人で驚いてあげよ」
「そうですね。(笑う) あ、これも、キコはんが驚いてる写真が必要ですね」
「ホンマ!」



キコは嫌そうなうれしそうな顔をして笑った。
そして、水盤の中を指差して、驚いた顔の写真も撮った。





「これで、OK !  ホンマに手のかかるスポンサーや」
「ホンマです。いよいよ明後日、開店ですね。開店のチラシも入れたし・・・」


「始まってしもうたな」
「ええ」
「なんとか頑張るしかないな。店の儲けは大したことはないから、あんたの通販の売りにかかってるわ」
「ホンマです!」
「ホンマ!(笑う)」



キコは店内に戻り、コーヒーや紅茶の飾りつけをして、要所要所をデジカメで撮ると、それを寅にメールで送った。





「なあ、お弁当2000円は高かったやろか」

「う~ん・・・。でも、手がかかってますからね。それに、コーヒーもつくし、まずはそれでいって駄目なら値下げすることにしましょう。他のトースト類はいいでしょう・・・。オープンの七夕と翌日は、コーヒーにプチケーキもつけるし、いいんじゃないでしょうか」

「そやね。まずはこれでいこ」




話していると、電話が鳴った。




「はい、カフェ・ド・キコでございます」
「もうお客さんですか?」


「うううん、お姉ちゃん」
「はあ」



「ああ、お姉ちゃん。うん、なんとか準備はOKや。あとは、開店の日が晴れてくれるとうれしいんやけど」
「な、前の日から泊りがけでいこうか?」
「そんな、せえへんでいいがな。第一、泊まるとこがないで」


キムさんの耳が動いた。


「(危ない!)そら、客布団はあるけどな、うん、一組だけね。でも、開店日の朝、来てくれたら、それでええがな」

「なあ、手伝うてくれてはる人て、どんな関係の人や? ちゃんと挨拶せなあかんやろ?」

「ああ。前、仲居してた時のお得意さんがな、一年だけ、うちを助けてあげたいて言うて、人を貸してくれたのや。優秀な人なんやで。そのおかげで、コーヒーのインターネットの販売も始められたし」

「そうかあ・・・。その大元さんに、挨拶にいかな、あかんなあ・・・。7日の日には、顔出してくれはるの?」
「うううん、それが忙しいお人でな・・・。お姉ちゃん、そっちのほうの心配はせんでええよお。うちがちゃ~んとお礼するさかい」

「なあ・・・キコちゃん」

「何?」

「うちのパパがな、とっても心配してはるんやけど・・・。その、スポンサーとあんた、変な関係やないやろな?」
「変て?」


ホンマは変やけど・・・。


「そのう・・・(声を潜める)2号さんとか・・・」



「そお~んなことあらへん。あちらはビジネスとして賛同してくれはったのや。アメリカのサンフランシスコでな、人気のコーヒー店の豆を日本で扱う第一歩なんやで。お姉ちゃん、勘違いせんで! ひどいわ」
「わかったがな・・・。そんなに怒らんでも・・・。なら、大丈夫やね?」

「そんなこと言うんやったら、来なくてもええがな」
「そんな、怒らんでえ。あんたはうちの大切な妹やから。パパもな、それで心配してるだけやから。キコちゃん、開店おめでと。あさって、手伝いに行くさかい。な」

「うん・・・。おおきに・・・」

  

キコは電話を切って、ため息をついた。


姉の心配は全く的を外しているわけではない・・・。

でも、チャンスをくれたヨンジュンはんのためにも、ここで、事業を自立させていくことが当面の目標だ・・・。


  


「キコはん、お姉さんは・・・」

「うん。開店当日、手伝いにくるて。そんときはよろしくな。お姉ちゃんには、あんまり話したくないねん。今、本当の成り行きを話すわけにはいかんさかい。キムはんについても、説明が難しい・・・。ごめんな。こんなに一生懸命やってくれはってるのに・・・」

「いいんですよ。いつかわかってもらえる時がきますよ」
「そやね・・・。そや。さあ、頑張ろ!」



今度は携帯が鳴る。




「へえ・・・」

「見たよ。いいじゃない」

「なあ、名を名乗れ!」

「Tiger Nextです」

「今日はホンマにおおきに。キムはんと二人で、蓮の花の下のタイガーさんには驚いたで」
「ホンマ?」

寅ちゃんはうれしそうな声を出した。


「ホンマや。すごく素敵やで! 寄せ植えも気に入ったけど、蓮の花がええわ・・・。なんか、見ていると涼やかで心が洗われる」
「そう。」

「撮影は、忙しいんと違う?」
「これからね、チェジュに向かうんだ」 (注:テサギの撮影です)
「気をつけてね」
「うん」
「ほな、行ってらっしゃい」
「じゃあね。あ、また7日に電話入れるよ」

「どうぞ。混んでて、電話に出られへんかもしれへんけど」
「いいよお、それでも。(笑う)そのくらいだといいねえ」

「うん・・・。ちょっと、お天気が心配なんやけど。曇りか小雨程度で終わってくれると、うれしいのやけどな」
「じゃあ、テルテル坊主だけでも作ってみるよ」
「ホンマ? チェジュやのうて、鎌倉が晴れますようにて願うのやで」
「うん」

「おおきに・・・ほな、さいなら」




寅ちゃんが、開店心配してくれてはる・・・。


どうか、晴れますように。
うううん、晴れんでも、大雨が来んように・・・。

ああ、チェジュの撮影がうまくいきますように・・・。

願い事て、一つだけしか叶わないのやろか・・・。








7月7日土曜日。

少し空模様悪し。
でも、願ったように雨もぽつぽつ程度だ。

開店10時を過ぎてもなかなか人が入らなかったが、12時近くになって、地元のオバサマの団体がやってきた。


「いらっしゃいませ。どうぞ、奥へ。こちらは本日、開店しました。どうぞ、よろしくお願いします」
「チラシで見たお弁当ありますか?」
「へえ」

「じゃあ、6つ」

「おおきに! デザートは、パンナコッタに本日開店祝いのプチケーキをサービスさせていただきます」
「あら、いいわねえ」




「キコはん、よかったですね」
「うん。お客さんが入ってると、次の人が入りやすくなるさかい」
「そうですね」




「ここはサービスがいいわねえ・・・」


キコが料理を並べると、一人のオバサマが話しかけてきた。


「そうどすか? こちらは、カフェどすけど、料亭の味も楽しんでいただけます。どうぞ、ゆっくりお過ごしください」
「ホント、キレイな盛り付け」
「目で楽しんで、舌で味わって・・・。外の景色も楽しんでくださいね」
「ありがとう」



キコがカウンターに戻ると、オバサマ方の大笑いが聞こえてきた。

「・・・そうなのよ、ホテリア、通っちゃったのよ・・・」 (注:「ホテリア」が六本木TOHOシネマズで上映されていました)
「あなたも!」



キコとキムさんは、顔を見合わせてクスッと笑った。



そこの花はヨンジュンさんが植えたんですよ。
あの庭の水盤は、ヨンジュンさんが選んだ蓮の花です・・・きれいでしょ?

玄関の寄せ植えも・・・。


キコは幸せな気分になった。





奥まった所にある店だが、土曜日であることやチラシが効いたのか、思ったよりは客が入った。
といっても、ポツンポツンだが、店には2、3人の客が常にいる状態である。

今後、客が続いていくか、それはわからないが、初日はこのくらいでも良しとしよう。


3時ちかくになって、姉は2階へ休みにいった。



キコの携帯が鳴った。


「どう?」
「心配性やね。まあまあや」

「まあまあって?」
「だから、まあまあや。お客さんは途切れず入ってくるけど、まあ3人はいるかな」
「3人!?」
「うん」

「そうかあ・・・」
「ゴシレやないもん・・・。まだ初日やから、場所も知られてないやろ?」
「そうだね」

「なあ、トラちゃんは安心して仕事して」
「うん」
「ほな」


キコは電話を切った。



すると、ティータイムの時間にはいったからか、客が次々に入ってきた。


「キコはん。やっぱり、時間に波があるんですね」
「そやね・・・この辺り、他に喫茶店がないから・・・。通りに置いた看板、わかったのやね」

「ええ、そうですね。注文とりにいきます」



土曜日の午後、この辺を散策するカップルが多いのかもしれない。


「ブレンド2つにキャラメル1。コーヒーフロート2つ」
「OK !」


キコはコーヒーをセットしながら、客を見る。


「なあ、キムはん。ちょっとメニューを足してくれない?」
「何をですか?」

「カップルが多いやろ?バニラアイスのエスプレッソがけ・・・それから・・・う~ん・・・コーヒーパフェ」
「それやるんですか?」

「ちょっとおもしろいやろ? 若い人が頼むか、やってみよ。コーヒーゼリーは作ってあるから、パフェ用のフレーク買ってきてくれる?」
「・・・いいですけど」

「皆、ここでちょっと休んで話をしたいんよ。サンドイッチより、そういうもののほうがええのかも知れへんね」
「はい」

「ほな、すんまへん。それから、2階のお姉ちゃんに降りてくるように声かけて」
「わかりました。では急いで行ってきます」
「よろしく!」




うん、そうや。

少し方向転換。
今日、明日はいろいろ実験してみるのがええかも知れへん!







「ヨンジュンさん、スタンバイお願いします」
「あ、はい」

寅は、胸元から出したスワトーのハンカチを見ていた。

寅はそのハンカチをやさしく撫でて、衣装の胸元に忍ばせた。
そして、軽く胸に手を当て目を閉じた。



お店がうまくいきますように・・・。
キコ、頑張ってね。

僕も頑張るから・・・。




そして、イスから立ち上がった。








「お姉ちゃん、今日はありがと。助かったわ」
「明日も忙しいだろうから、今日は泊まるね」
「いいの?」

「うん。そうしてあげたいんや」
「おおきに」

「キムはん、いい日やったね。明日もよろしく」
「ええ。頑張りましょう」

「明日、店閉めたら、皆で盛大にご飯食べにいこう」

「そうですね。じゃあ、僕はこれで」
「お疲れ様」

「お姉ちゃん、先に上がってて。うちはあとから行くさかい」

「そうか? じゃあ、ご飯の用意でもしてるわ」
「うん・・・」






キコは店の点検をして、電気を落とした。

庭のデッキに置いてあるソーラーのスタンドだけが明るい。

少し濡れたデッキに出て、蓮の花を見る。




なんとか、切り抜けたで。
明日も頑張るさかい。


あんたは、やっぱり詩人やなあ・・・。

この花が、今のうちにはピッタリや・・・。
心が和む。





携帯が鳴った。



「どうだった?」

「うん・・・寅ちゃんの電話の後からな、結構お客さんが入ったで。喫茶店て、時間に波があるなあ・・・。皆、ティータイムには、休みたがるものなんやね」
「そうか・・・よかったねえ」


「今、何してはるの?」
「夕飯のお弁当食べてる」


「9時半やで」
「うん。キコは?」


「今なあ、デッキに出て、寅ちゃんがくれた蓮の花、見てるの。心が和んで疲れが取れるわ」

「そうか、よかった・・・」

「今日は、天の川は曇って見えへんけど、こうして、あんたと電話で話せて・・・幸せ」

「うん・・・」

「今日、ヨン様のファンのお客さんが来てな、なんか楽しかったわ。あんたのこと、教えてあげたいぐらい。(笑う)」

「へえ」

「今日は無事終了・・・。明日も頑張るさかい。寅ちゃんも、明日がいい日やとええね」
「そうだね、じゃあ、ゆっくりオヤスミ」

「うん・・・ほな、オヤスミ・・・あ、寅ちゃんはお仕事、頑張って」
「(笑う)そうだね、じゃあ」




キコは携帯を切った。




遠い空の向こう・・・寅ちゃんも頑張ってはる。

今日は、ホンマにええ日やった。

あんたのおかげ・・・あんたがくれた幸せや。



キコの心の中に清々しいものが流れ込んだ。  





「キコちゃん、あんた、いつまでそんなとこにいるの? 夕飯でけたで~」

「あ、今、行く!」



姉の声にも、キコは元気に答えた。








THE END









追記:

ハスの花はれんげ(蓮花)と呼ばれ、7月の誕生花であり、夏の季語。
七十二候の小暑(7月7日ごろ)には、次候に「蓮始開(蓮の花が開き始める)」とある。
花言葉は「雄弁」だそうです。

早朝に咲き始め、午後3時頃には閉じてしまう。
これを3日ほど繰り返し、4日目には花を落とします。

↑睡蓮と花が咲く時間が違うね^^ 実も食べられるし^^


普通の花はまず花が咲いてから実をつけるものですが、
蓮は花をつけると同時に実を中に詰めた苞が出てくる。

このことから蓮は、過去・現在・未来を同時に体現しているとされています。

ということで、仏教ではお釈迦様が座ってます^^

泥の中で成長し、根を張り、清楚で美しい・・・。
そして、雄弁・・・。

ヨンジュンさんに似ているかも知れません・・・。


そうそう、見ごろは7~8月です。

花の大きさはいろいろあるけれど、ヨンジュンさんが送ったのは、小さいお花です。
直径12センチぐらいの・・・ということに、しています^^


咲くときの音はごくまれだそうです・・・
でも、それが聞こえた人は幸せになれるそうです^^
という音の話は蓮畑の近くで育ったという方からいただいたお話です^^

(2007.7.7)




なんて当時書いていました^^

そして、

今、ぺ・ヨンジュンさんのお印も蓮の花になっていますね^^v

ラッキー^^v

(2011.3.19)



2010/12/13 00:53
テーマ:【創】キコはん カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】キコはん15「渚にて」4終


 



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これはキコはんのテーマで5年やってます^^;








BYJシアターです^^


とうとう来日しましたね~

羽田空港内に入れなかった家族にも車から降りて
笑顔を見せてくれたjoon。

ホントに幸せそうな笑顔でよかったです^^













では、本日は、キコ⑮「渚にて」4部(最終回)です。

これでしばらくは来日話で創作はお休みです。




ではこれより本編。
お楽しみください!











真夜中の暗い海岸の砂浜で、寅とキコは、じゃれてふざけ合って笑った。
月明かりだけが彼らを映し出している・・・。

それでも、
二人の目には、愛しい恋人の姿が鮮やかに映っていた・・・。






キコはん⑮「渚にて」4(終)






「日が昇る前に帰ろう」
「そう? まだいいじゃない」
「だって・・・。やっぱり、帰ろう。寅ちゃんがここにいるのはマズイわあ」

「そうかな・・・。誰も僕がここにいるとは思わないよ」
「でも、あんた、キレイやさかい、バレるよ、こんな・・・キレイな男の人でめずらしいもん・・・」
「・・・そう? キコの目にはそう映るんだ。(笑う)」
「当たり前や」



「じゃあ、帰りはキコが負ぶって」


寅がふざけて体重をかけて、キコの背中に抱きつく。


「もう、重いやんかあ」


キコも笑って、背負う。実際には、背の高さが違いすぎて背負うことはできない。


「あれ? 無理?(笑う) 僕が病気になったら、どうする? 背負えないね」
「そしたら、引きずってく。あ、そうだ! 今も引きずっていけばいいのや。(笑う) 寝て!」
「全く。危ない、危ない!」


寅は、キコの背中から離れた。




「それにしても、ここは自由だねえ・・・」
「・・・」

「もっとどこか行きたいなあ」


寅が大きく伸びをした。




「夜中やろ・・・どこてなあ・・・。ああ、この間なあ・・。鎌倉に、報国寺ていう古いお寺があるんやけど、昔の有名な人がデザインしたお庭があってな。 それが竹林なんよお。竹の間を歩いて・・・上を見上げたらな、ほら、寅ちゃんがスキャンダルの撮影の合間に撮った竹林の写真・・・。あれとそっくりなんよ・・・。瞬間、あんたが感じた風や、光を、うちも感じた気がした・・・」
「・・・」

「う~ん・・・素敵な瞬間やった・・・」
「うん・・・」


寅は黙って、キコの肩をギュッと抱き寄せた。
二人はお互いの体に回した手をギュッと引き寄せた。






一歩ずつ、ゆっくり車のほうへ歩く。

寅は海のほうへ振り返った。


「いい時間を過ごせたね・・・」
「・・・」




そして、二人はまたキコの車に乗り込んだ。
帰りは、寅と出会った鶴岡八幡さまの前を通り、寅がキコに声をかけた鎌倉彫の店の前で止まった。


「ここだったね・・・」
「ホンマ。あん時、よう声かける気になったなあ」
「ふん。(笑う) なんでだろうね。(笑う) なんか引き付けられたよ」
「運命やな(笑う)」




キコは笑って車を発進させた。


極秘で来日していた2005年の11月。
まだあの時は、今より寅はずっと自由だった。流鏑馬を習いに来たここ鎌倉の街を彼は自由に歩いていた。
そして、キコと再会して楽しい時を過ごした。



「そうだね。運命の街だ、ここは」
「ふん。(笑う)」

「・・・人生っておもしろいね」
「うん・・・」

「いい出会いをしたよ」
「・・・」
「神に感謝だ」
「・・・そやね・・・」



そやから・・・うちはここに住むことにしたのやで・・・。
そんなん、あんたにはわかりきってることやけど・・・。







キコの借りている駐車場に戻り、二人は車から降りて、家の周りを、手を繋いで散歩した。

誰もいない静かな住宅地。

心地よい風だけが吹いている。
二人は黙って、街並みを見ながら歩き回った。時折、お互いを見て微笑んで・・・。









「やっぱり、潮風に当たると、体が少しベトベトするなあ」


二人は家の中に入った途端、体が潮風でべとついていることに気づいた。


「そうだね、シャワーを借りるよ」
「どうぞ」



寅がシャワーを使っている間に、キコは洗面所へ行き、寅の着替えを置く。
脱いだものは昨日のものと一緒に洗濯機にかけた。


ハンガーにかかっている、着てきた上着に、シュッシュとニオイ消しをかける。

ベッドのシーツをキュッと伸ばして、布団を掛けなおす。


そんなことをしていると、寅がシャワーから上がってバスタオルを巻いたまま、キコの仕事をする姿を見ていた。




「あ、上がったの?」
「うん」
「着替え置いてあったやろ? 今、脱いだもんは洗ってるさかい。なあ、少し休んだほうがええよ」
「うん・・・キコも休む?」
「うん。シャワー浴びたらね。寝てて」
「うん・・・そうするよ」




寅は着替えてベッドに入った。キコが上がるのを待っていたが、自然にマブタが落ちてきて、眠ってしまった。

キコはシャワーから上がると、洗濯物を干して、寝ている寅の横にスッと入って、静かに眠りについた。









翌朝6時過ぎ、眠りから覚めたキコが寅を見ると、寅はまだぐっすりと寝ていた。気持ちよさそうに眠る寅の顔を撫でて、キコは幸せになった。
鼻筋を人指し指で行ったり来たりしていると、寅が眠そうな声で言った。


「もう少し寝かせて・・・」
「ふん、わかった・・・」



寅が寝ながら、腕を伸ばしてきたので、キコはその腕の中に入って寅の肩に顔をつけてまた眠りにつく・・・。
でも、もう一度起き上がって、携帯を取り出した。



「キムさん、おはようございます^^

ヨンジュンはん、疲れているみたいやから、
今朝は寝かしておこう。

お昼にお弁当を出そうと思うので
その後・・・2時すぎにでも、電話かメール、ちょうだい。

キコ」


送信・・・。




これで、安心して、ゆっくりでける・・・。



キコはまた寅の腕の中に入り、気持ちよさそうに、肩に頭を乗せ、寅の顔をじっと見つめた後、自分も深い眠りに落ちた。








結局、9時過ぎまで二人は眠ってしまった。
キコは寝ている寅を置いて、静かに起き上がり、食事の用意を始めた。
寅もしばらくして包丁がまな板をトントン叩く音で目覚めた。



「おはよう」
「おはよう。顔洗ってきはったら?」
「うん・・・」


寅が洗面を済ませにいく。


キコが料理を作っていると、後ろから寅が覗き込んだ。


「それ、なあに?」
「これは生麩」
「ふ~ん・・・」

「なんや?」

「別に」


寅が後ろからキコのウエストに腕を回して、キコの料理する様子を覗き込んでいる。


「そこのナス、煮たの?」
「これ? うん。 煮浸し。あ、ナス好きやったねえ。次回は、ナスのナムルに挑戦してみるで」
「そう? ねえ、それ、食べたい」

「あとでちゃんと盛り付けてから」
「一口だけ、ちょうだい」
「もう・・・仕方ないなあ」


キコが菜箸でつまんで、寅の口の中に入れる。キコが寅の顔を見つめていると、寅は幸せそうな顔をした。


「おいしい」
「当たり前や。(笑う) うちが作ってるんやもん。ナスの田楽もええけどな。今回は焼き鳥を味噌田楽風にするさかい、今日のなすびは、これ」

「焼き鳥の味噌田楽? それもおいしそうだね」
「そやろ? あとねえ・・・長芋の梅酢がけやろ、ごぼうのチヂミも作るで」
「なんか、全部おいしそうだな」
「な? そやから、いい子で座って待ってて。ママさんの邪魔せんと」


キコがそう言っているのに、寅はキコを後ろから抱いたまま、覗きこんでいる・・・。
寅の体がキコにとても・・・密着している・・・。



「うん? 寅ちゃん?」
「・・・」
「あんたの目的は・・・料理やないのん?」
「ふ~ん」


寅が耳元で笑った。



「ふ~ん。そんならあ・・・片付けな、あかんな・・・」


キコは、ナスの煮浸しなど調理したものにラップをかける。


「どうするの?」
「冷蔵庫にしまうのや」
「・・・」
「出しっぱなしにでけんやろ?」






キコは背中に寅をくっ付けたまま、料理を冷蔵庫にしまって、後ろを振り向く。


「お待たせ・・・」
「・・・」
「ふ~ん・・・」


顔を見上げる。


「・・・」


寅がキコにキスをして、微笑む。


「ここ? テーブル?」


キコが聞く。
寅がテーブルを見る。


「やっぱり、あっち」
「・・・保守的・・・ふん。(笑う)」

「だって、こんなところに寝たら痛いだろ?」
「・・・」


キコが笑って、寅の腰に腕を回して抱きつき、寅を見上げた。



「寅ちゃん、好きや。あんたはやさしい! そうや、痛いよ、こんなとこで寝たら」


「う~ん・・・そこが駄目かな?」
「なんで?」

「スリルがなくて物足りない?」
「・・・ええよ。そんなとこが好きなんやもん・・・」
「・・・ふん。(笑う)」










二人は寝室のベッドに倒れ込んだ。



寅がキコを見下ろした。


「ここは楽しいね。のんびりできて・・・気持ちが開放されてさ・・・」

「・・・それは、ここがうちの家やからや・・・。誰にも邪魔されへんもん・・・。あんたのためにしてあげたいことも、自分の家やから、なんでもでけるし・・・あんたも楽やろ?」

「いいねえ・・・うちは」
「・・・うん・・・」


寅はキコを見つめて、熱いキスをした。




「ずっとここにいたいな」
「うん・・・うちも寅ちゃんがいたら、うれしい」


キコのセミダブルサイズのベッドは二人にはピッタリのサイズだ。
広すぎず、狭すぎず、しかも、体はいつも密着している・・・。



二人だけの気の置けない場所・・・気の置けない時間・・・。



寅の愛し方さえ、自由になったような気さえする・・・。

二人には羽が生えて、愛し合うことがとても楽しくて、情熱的で、それは幸せな喜びだけを充たしてくれる・・・。キスすることも抱き合うことも、今、とても自由に、朝の日差しの中で、二人は笑いながら、お互いを求め合った。











キコが紅茶を入れていると、寅がボクサーパンツだけはいて、窓の外を眺めている。



「庭に、デッキを置いたんだ」
「うん、狭いけど庭も楽しめるようにな。コンクリートは張れんでしょ、借りてる家やから」
「そうか、少し花も植えるといいんじゃない?」
「そのつもり。サルビアが好きやから・・・後で買うてきて植えるわ。今な、宿根のがあるから、一度植えればええねん。サルビアは長く咲くから好き・・・赤い色がええねん・・・」


そう言って、キコが窓のほうを振り返ると、寅がパンツしかはいてない。


「寅ちゃん!」
「何?」


寅が振り返った。


「そんな格好で窓から覗いたらあかん!」
「なんでだよ?」
「困るがな・・・人に見られたら・・・」
「ふん。いいじゃない」

「うちがふしだらに思われる・・・お嫁にいけんようになる・・・」
「まだ、行きたいの?(笑う)」

「当たり前やろ? 紅茶入ったえ」
「ありがとう」





寅がテーブルに来た。


「いい香り」
「このフレーバーティも置くの。オリジナルやないけど。これはローズヒップが入ったバージョン。二人でお肌つるつるになろうな」

「ふん、いいねえ。あと、どんなのがあるの?」
「ええとねえ・・・レモンライムとか・・・カモミールとか。もちろん、基本のアールグレイとアッサムはあるで」
「ふ~ん・・・おいしい」

「そうお? ここに持ち帰れるように袋に入れたさかい、帰ったら、いろいろ試して」
「うん。コーヒーも」
「うん。一緒に入れておく。寅ちゃんの好きなキャラメル味やヘーゼルナッツもあるで」
「それはいいなあ」
「でしょ? あんた・・・その格好は食事に向かんよ」



キコがTシャツとパンツを持ってくる。



「ちゃんと正装して食べてや」
「正装ね・・・(笑う)」
「うん・・・」





キコがお気に入りの伊万里焼の器に調理したものを少しずつ盛り付け、お盆に載せて、寅の前へ出した。


「キレイだね」
「そやろ?」


キコは自分の分を寅の向かいの席に置く。


「盛り付けがいいねえ」
「さすが仲居さんやろ?」
「うん」
「日本の料理は中高に盛り付けると、お品がええのや。今、お吸い物を入れるで・・・」



「はい。今日のご飯は梅とちりめん山椒で和えた」


「これが生麩?」
「そう、キレイやろ?」

「味噌汁より、お吸い物がいいの?」
「格が違うのや。こっちのほうが上やで」

「ふ~ん・・・あ、おいしい・・・」
「そう? 一番だしが難しいところや・・・。あ、でもな、実際のランチは味噌汁かもしれへん。(笑う) 値段によってな、あんまり贅沢はでけんから・・・」
「うん・・・」



寅とキコは向かい合って座り、見つめ合ってから、食事を始めた。

キコが作った料理があまりに繊細だったので、寅もさっきまでと打って変わって、真面目に食事をしている。


「いいねえ・・・こんなのがランチに出てきたら・・・。器もよかったじゃない」
「そやろ? これ、ただやもん。(笑う)」
「ずいぶんキレイな器だけどね」

「うん。でも、きっと普段使いにしてはったから、置いていったのやろ・・・たくさんあったから、しまうのも場所を取るしな」
「それで、キコのところへお嫁に来たわけだ」
「そう」


「あ、茶碗蒸しがでけた」


キコが蒸し器を止めて、中から器を出す。


「熱いさかい、少しこっちへ置いておこうな」
「うん」


「これ食べたら、お店の中見て」
「そうだね」

「結構、素敵やで」
「うん・・・後でお花の苗でも買いに行こうか」

「・・・あんたも?」
「一緒に植えようよ」
「植えるのはええけど・・・一緒に買いにいくの?」
「そのくらい、大丈夫だろ?」
「・・・なんか心配や・・・うちが買うてくる・・・でも、一緒に植えて・・・」
「・・・わかった・・・」




二人は食事を済ませ、外階段から一階に下りた。
裏の勝手口のカギを開け、二人は中へ入る。


「このスリッパ、履いて」
「うん」



今日は内装工事が休みの日なので、ゆっくりと二人で中を見て回る。



「へえ、吹き抜けがいいねえ。ここは・・・北向き?」
「そうなんよ。南やないから、あんまり借り手がなくて。でも、その代わり、天窓があるねん・・・。喫茶店にはええと思うよ。2階のベランダは逆に南やろ?洗濯物がよく乾く。たぶん、2階は、夏になったら、暑くなると思うけどな。店の玄関からは干し物も見えへんしな、ちょうどええのんや」


寅が天井を見上げる。


「天井もええ感じやろ? ここはな、画家さんのアトリエだったんや。晩年、お子さんのご夫婦が2階に住まはったから、2階にもキッチンや風呂場があるねん。そんで、外階段があるのや・・・。内側の階段は潰してあったから・・・その辺はなんかあったのかもしれへんね・・・」

「ここは、土足じゃないの?」
「うん。土足にするには、床を全部張り替えんといけんのやて。結構床材もするからな、このまま、スリッパで上がるようにしたのや。だから、玄関脇に大きな下駄箱があるんや」
「へえ」
「見て。驚くで!」




キコは寅の手を引っ張って、玄関へ行く。


「これ」
「これ?おしゃれじゃない」

「寅ちゃん、これ、洋館の和室にあった鴨居なんよ。 この引き戸のここ。鴨居をここの格子の部分に嵌めて、下駄箱の引き戸にしてる。ええやろ?」
「うん。下駄箱って感じじゃなくて風情があるね」
「そやろお」
「なんか匂うね・・・」


キコが下駄箱を開ける。


「中がヒノキ。贅沢やけど、床を全部張り替えるよりは安い。これで、靴が臭くてもOK。(笑う)」
「ホント。(笑う) へえ、それにしてもよくできてるねえ」
「そやろ。さ、中へ戻ろ」



寅はまた天井の梁を見上げて、キコににっこりと微笑んだ。
そして、二人でカウンターの中へ入り、キッチンを見ている。



「これに、テーブルやイスを入れてもろて。もちろん、照明もやけど。あ、全部、カタログあるのや。見て」


「ふ~ん、いいねえ・・・おしゃれだな・・・和洋折衷? いいよ」



寅は掃きだし窓のほうへ歩いて行く。


「それで、ここからデッキに出るんだ」
「そう・・・」
「やっぱり、花を植えよう。一緒に買いに行くよ」
「・・・」

「そのくらい、選ばせて、スポンサーに」
「・・・うん・・・」


寅はもう一度、喫茶店の中を見る。カウンターの横に凝ったデザインの階段の手すりがある。


「あれは?」
「ああ、あそこは騙し絵みたいなもん。ホンマの階段やなくて、あそこにちょっと商品のディスプレーして、裏側は倉庫。コーヒーと紅茶は販売もするから」
「ふ~ん・・・」



「ええか?」

「うん、ええよ。お金の出し甲斐があったね」

「そうか・・・」
「さ、お花を買いに行こう」


キコが寅の服装を見る。
キコの買ったTシャツとパンツ・・・。


「そんなら・・・行くか、二人で・・・。眼鏡かけてへんから、わからないかな・・・ただの似てる人・・・ということで」
「ということで・・・」


二人は笑った。








キコの車で大きなガーデニングの店へ行った。
昼間なので、キコは少々ドキドキしたが、平日だったので、そんなに混んではいない。


「さっさと買うで」
「そんな焦らなくても。ゆっくり選ばせてよ」


寅は、ゆっくりといろいろな花を見ている。キコだけ、周りを見ながらドキドキしている。
寅が花のポットをかごに入れていく。


「もうええ?」
「まだだよ。これだけじゃ足りないだろ?」
「そうか・・・」


キコは早く終わらせたくて、少しイライラしている。
それを見て、寅が笑って・・・また、ゆっくりと店内を見て回る。




「ねえ、これ、置こうよ」


ガーデニングの置物売り場で、寅がブタの置物を見つけた。


「ええ?!」
「いいよ、これ。今年はブタ年だし、いいよ。これから店が繁盛するようにさ」
「うん」


それは、白い石でできていて、重厚感がありながら、とてもファニーだ。まるで、マザーグースの世界から抜け出たような顔をしている。

キコは値段を見た。

イギリス製でとてもおしゃれだが、5800円もした。



「高いがな・・・」
「僕の経費につけといて」
「・・・お金も持たんで、あんたは暢気や」


そういいながらも、キコもそのブタを気に入って、かごに入れた。


そのほか、土や肥料、スコップ、寅のための手袋を買って、二人は店を後にした。









「店員さん、何回も寅ちゃんの顔を見てたな」
「そう?」
「うん。でも、しゃべらんでよかった。しゃべったら、すぐにバレてまうがな」
「ふん。(笑う)」
「楽しくないで!」


笑っている寅を睨みつけて、キコは車を走らせた。





そやな・・・こんな時間なんて、そうそうないのやから、楽しまなあかんな・・・。
でも、うちのほうはドキドキや・・・。

生きた心地がせんで。

なんで、あんたは笑ってられるの?

アホ!








二人は家に戻って、花を植える。

寅の爪が汚れないように、キコは寅にガーデニング用の手袋をつけさせ、日焼けをしないように、帽子を目深に被せた。






二人が一生懸命植えていると、キムさんがやってきた。



「おはようございます」
「ああ、いらっしゃい」

「お花も植えてるんですか?」
「うん、中から見て、花がないと寂しいだろ」
「ああ、なんでも、寅さんは気がつきますね」
「寅さん?」


ヨンジュンがキムさんを見上げた。キムさんは余計なことを言って、ちょっと困った顔をした。


「寅ちゃん、寅ちゃんは日本での暗号や・・・うちらだけの。(笑う)」
「そう。(笑う)」


キムさんはキコに助けられてホッとした。


「手伝いましょうか?」
「そうだねえ・・・じゃあ、ここやって。僕はブタを置くから」

「ブタ?」
「ブタ」

「ブタ・・・」

「キムはん、ブタの置物や。縁起がええからって。それにかわいいんや」
「へえ・・・」



寅は時間をかけて、ブタの配置に拘っている。
桜の木の近くがいいか、花の中がいいか・・・。

置いては悩み、置いては下がって全体を見る。



キムさんはキコを見てクスッと笑った。


「凝り性ですよね」
「ホンマ・・・」


結局、桜の木の近くに置いた。






ガーデニングを終えて、寅はシャワーを浴び、帰り支度の服装に着替える。

キコが寅の髪をドライヤーで乾かした。
髪を梳かして、後ろで一本に結ぶが、また梳いて、三つ編みに仕上げた。








キムさんも一緒にダイニングテーブルに着き、キコがコーヒーを入れて、三人で仕事の話をした。



もう、二人の時間は終わった。




寅の顔は、いつもの顔に戻った。
ニタニタとはもう笑わない。

真面目な顔でキムさんと話す。仕事の話をする時は、とてもクールだ。



「じゃあ、それでお願いします。キムさん、うまくいくことを祈ってますよ」
「はい」

「キコはんも頑張ってね」
「へえ」


3人で、少しくつろいでから、いよいよ寅の出発の時間になった。





「では行きましょうか。僕が渋谷までお送りします。それから、羽田へ孫さんと行ってください」
「わかりました」

「なんか遠回りやね」
「キコはん、アリバイ作りですよ、パパラッチされた時の」
「たいへんや・・・。ほな、気いつけてね。バッグにコーヒーと紅茶が入ってるさかい」
「うん、ありがとう」


「では、お先に行って、車を店の前につけます」
「そやな」


キムさんが出ていった。





「もう忘れもんはないかな・・・」


キコが部屋を見回す。


「あるよ」

「何?」
「これ・・・」


寅がキコを抱いて、キスをした。





「ホンマ・・・大切な忘れもんやった・・・」
「・・・」
「うちも頑張るで、あんたも・・・自分の思うように、しっかりな」

「・・・うん・・・」



ピンポ~ン!




「戻って来はった」



「ヨンジュンさん、車、回しました」
「じゃあ、行くね。キコはんも元気でね」
「今回はおおきに・・・」


寅が靴を履いて、キムさんの前を通って外へ出る。
キムさんは、寅の後ろ髪をじっと見る。そして、キコを見て、にっこりとした。



「キムはん、ちゃんと送ってや。運転、気いつけてな」
「はい。わかってますよ。では行ってきます」




キコは外階段を一緒に下りて、家の前に立って寅を見送った。

寅はキムさんの車に乗って去っていった。










翌朝、2階のベランダで、キコはいつものように、洗濯物を干している。

少し大きめな寅のTシャツの横に、自分のカットソーを干す。



風に吹かれて、2枚のシャツが触れ合うように揺れている・・・。





また、来ることがでけるやろか・・・。





キコはじっと洗濯物の揺れる様を眺めている。








「キコはん! おはようございます!」


裏の駐車場からやって来たキムさんが、にこやかに下から手を振っている。



「おはよう! お茶、入れるで。上がってえ!」


キコはそう言ってニッコリすると、ベランダから中へ入った。




ベランダのサンダルを足で揃えるように脱ぎながら、キコは、そっと涙を拭った。








THE END




そしてちょうど一年後の六月。
ぺ・ヨンジュンはキコはんの舞台鎌倉へ来てくれました^^

「僕だって、寅ちゃんになりたい!^^」と思ったかどうかはわからないけど^^

寅ちゃんと同じ海を見てくれたね~


創作に戻って・・・

こうやってその当時の話を読んでいると、
その時々でいろんなことがあったな~と思い出します。

今の来日もまた・・・

そうなっていくんですねえ・・・。



では、ヨンジュンも家族の皆さんも楽しい一週間になりますように!

kiko3



2010/12/11 20:22
テーマ:【創】キコはん カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】キコはん15「渚にて」3


 



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Page「ネガ アヌン クデン」(私が知ってるあなたは・・)
これはキコはんのテーマで5年やってます^^;









BYJシアターです^^


とうとう、明日来日ですね^^
あと15時間^^


皆ドキドキ?^^

お出迎えの方々はもう出発したんでしょうか?^^

羽田の新しい国際線ターミナルはいい感じですよね~

フロアがフラットで、途中クネクネしていないから、
移動が楽^^

それにしても、あそこは今、休日は観光地化していますから、
家族だけでなく、それはもう、大騒ぎになってしまうんじゃないでしょうか^^


ホテルで待機の人もいるでしょうか。


どれくらい滞在できるんでしょう。

まだ、ドリームハイの撮影も残っているでしょう。

少しでも長くいてくれるとうれしいけどね^^



韓流スターペ・ヨンジュンが ‘リットルヨンサマ’ キム・ヒョンジュンとともに
8ヶ月ぶりに日本を公式訪問する.

ペ・ヨンジュンは 12日午前 9時, ソウル金浦空港で日本に出国して午前 11時頃日本の領土に足を踏み出す.
この日訪問は去る 4月, 日本ロッテシティオープン行事参加以後約 8ヶ月ぶりだ.

特に今度日本行は ‘リットルヨンサマ’と呼ばれて次世代韓流スターで脚光を浴びているキム・ヒョンジュンと連れ出国という点で
もっと人目を引いている.

ペ・ヨンジュンはキム・ヒョンジュンともう一つの所属社後輩歓喜とともに 14日日本東京ドームで進行される日本 DATVの ‘ほほ笑みプロジェクト’に参加する.
現在 MBC 一日ドラマ ‘暴風の恋人’に出演中の歓喜はドラマ撮影関係で行事当日の 14日, 出国予定だ.


一方ペ・ヨンジュンの入国消息に東京国際空港(羽田空港)はぐっと緊張する雰囲気だ.

今度行事を主観するある関係者は “空港の方でペ・ヨンジュンとキム・ヒョンジュンの入国時間が何時なのか問うお問い合わせが絶えていない.

東京国際空港も去る 10月新装を終えて初めて大型韓流スターに迎える位積極的に開放するという雰囲気だ”と言った.


mulgae@cbs.co.kr






では。

本日は、
キコシリーズ⑮「渚にて」3です^^


といっても、今の時期、創作どころではないかもしれないけど、
まあ、置いておきます^^

じゃないと、次が書けないので。





ここより本編。
お楽しみください^^






キコはん⑮
「渚にて」3








「今日は、やりたいことがいっぱいあるなあ」


ベッドで、寅はキコの肩を抱きながら言った。


「うちは、このままが好きぃ・・・ず~っとこのままがええ・・・」
「キコはね(笑う)」

そう言って、寅は、キコを抱いていた手を引き抜いて、起き上がった。


「もう起きるんかあ? まだいいやんか・・・。うちはもっと抱かれてたい・・・」


キコが甘えた目をして、寅を見上げた。


「また後でね」
「・・・」

「コーヒーも試飲しなくちゃいけないだろ?」
「真夜中やで。朝になったら、コーヒー入れてあげるさかい・・・」
「夜中だから、眠くならないように飲みたいんだよ」
「そんなことしたら、一日が狂ってしまうで。次の日にもズレ込むやろ?」
「いいよ、それでも。帰りは寝ることに専念するから。とりあえず、ここでやりたいことをしたいんだ」
「そうか。(笑う)」


「まずは、カフェインの強いのを試飲。それから・・・」
「それから?!」


キコがうれしそうな顔をした。


「何、うれしそうにしてるの?」
「だってえ・・・また、してくれはるのかなあと思うて・・・」
「それは後・・・」

「ふ~ん。(笑う) 後でもまたしてくれはるんやね?」

「ふん。(笑う)今日のキコは、リクエストが多いなあ」
「あんたかて、リクエストが多いやんか・・・」
「・・・そうだね・・・」

「さあ、後のお楽しみはおいておいて。(笑う) コーヒーを飲んで目を覚ましたら、まずは、キコたちが行った江ノ島へ連れてって」
「ええ?」

「もう車、買ったんだろ? キムさんが言ってたよ」
「そら買うたけど・・・。うちの運転で、江ノ島まで飛ばすのん?(笑う)」
「うん。そうしよう」
「ふ~ん・・・。うちを信じてるのやな・・・」
「ああ」

「怖いで、うちの運転・・・」
「ふん。(笑う)大丈夫。その点はもうキムさんから聞いてるから。隣で寝てても大丈夫だって」
「なんだ。つまらへん! でも、あん人は神経質やないからねえ・・・あんたはわからへんよ」

「さあ、早く起きて」
「なあ・・・もう少し、寝かせて・・・」
「駄目」

「だってえ・・・今なあ・・・すご~くええ気持ちなんよ・・・」
「ふ~ん。(笑う)早く」
「・・・」


キコがトロンとした目でじっと見つめている。


「起きれないの?」
「うん・・・」


ヨンジュンが掛け布団の上からバタンとキコの上に倒れこんだ。


「重いだろ?」
「でも、ええ気持ちやでえ・・・」

「なんだよ?」
「だから・・・あんたがうちを気持ちよくしてくれてるのや・・・」
「ホントに・・・。全く・・・」


そう言って、呆れて笑いながら、寝ているキコの顔を指先で突いた。



「早く仕度しておいでよ。テーブルで待ってるからね」
「あんたもなんか着ないとあかんよ。下着のままでは、お外へは行かれへんからね」
「そうだね」



寅はキコの顔を見下ろして、軽く頬に「チュ」っとして、起き上がった。



「仕方ない・・・起きるか。なあ。 うち、寅ちゃんに、Tシャツとパンツ買うといたんや。それ、着て!」
「そう?」
「うん! 普段着用にな。よそ行き用着てたら、あんたも疲れるやろ? うちが買うたもんやさかい・・・安もんやけど、着てみて」
「いいよ!」

「今、出すね」




キコは起き上がって、下着を着け、タンスの引き出しを開けた。


「これ。 着てみて」
「どうかな・・・。柄はいいけど・・・。サイズは・・・あ、ちょうどだね。パンツは、ウエストがゴムと紐なんだ・・・。ありがとう」
「よかった・・・ぴったりで」

「キムさんと選んだの?」

「うちが一人で選んだに決まってるやんか」
「ふん。(笑う)ありがとう。いいセンス」
「そやろ? あとなあ・・・サンダルも買うたのや」
「・・・」

「いつか寅ちゃんと、湘南の海へ一緒に行けたらと思うて・・・よかった、使えて」
「・・・見せて」
「うん・・・。下駄箱に入ってるから・・・」




キコは下駄箱の中から、ビニール袋に入ったサンダルを出してきた。



「合わせてみて」
「あ、これもちょうどいいね。これ、ナイキなんだ」
「そう、あんた、好きやろ? よかったあ」



キコはうれしそうに、寅を見つめた。

寅は少し胸が痛くなった・・・。
いつ来るかわからない、いつ一緒に海へ行けるかわからない自分のために、キコがサンダルや着替えを用意していてくれたことに、少し・・・胸に詰まった。





「じゃあ、コーヒーをお願いします」
「はい! カフェインが強いて言うても、あんまり強いのはなあ・・・ブレンドにしておこ」


キコがテーブルの上にコーヒーメーカーとカップを持ってきて、セットした。



「こっちへおいでよ」
「うん・・・」




寅の膝にキコが抱かれて座り、二人でコーヒーメーカーを見ている。


「寅ちゃん、江ノ島もええけど、暴走族に会わんようにせんとあかんな」
「危ない?」
「こともある・・・。最近は取り締まりが厳しいから、大丈夫やと思うけど。寅ちゃんになんかあったら、うち、困るもん」
「・・・迷惑かけちゃうかな?」

「そんなことはないけど。注意せな。ちょっとでも、変な人がいたら、帰ろうな。・・・うちも、あんたと海へ行きたいねん・・・一緒に、行こ」
「いいの?」
「うん・・・」


寅がキコをギュッと抱きしめ、体を揺らした。


「苦しい・・・」
「さっきは気持ちいいって言ったくせに」
「その時々で、気が変わるねん 」
「全く・・・(笑う)」


「もうすぐでけるね・・・」
「うん」


キコは、手を伸ばして、コーヒーカップを用意している。
後ろから抱いている寅の手がキコの胸を触った。


「もう、自分から起こしておいて、そんなん、触らんといて」
「ふん。(笑う)」
「甘えたさんや、あんたは(笑う)」



キコがコーヒーを入れる。


「ブラックでええやろ? はい、どうぞ」




キコはコーヒーを入れると立ち上がって、寅の向かい側のイスに一人で座った。
寅がコーヒーを飲むのを見ながら、大きな口を開けて、あくびをした。

あ~あ~。


「ふん。(笑う)僕は、こんな人と恋をして、寝てるわけだ」
「ごめん!」
「ええよ!」



二人は笑って見つめ合った。キコもコーヒーを飲む。




「おいしいやろ?」
「うん・・・ずいぶん薫りがいいねえ、これ」
「そやろ。これがカフェ・ド・キコ用にブレンドしてもろたコーヒー。結構、いける」

「うん、本当・・・。ところで、その名前でいいの?」
「ええよ、あんたがつけてくれたさかい・・・気に入ってるんや・・・」

「・・・ありがとう」
「・・・おおきに・・・」


「内装はもう結構できてきたんだって?」
「うん。でも、まだ、電気がつかへんからね、朝になったら覗いてみて」
「うん。着々と進んでるね」
「そやろ? これも・・・(笑う)キムはんのお蔭や」
「そうだね、本当に(笑う)」










二人は出かける準備をして、自宅の玄関を出た。
2階の外階段を下りて、裏木戸を開けると、細い道があって、そこを抜けると、広い駐車場に出た。


「ここておもしろいやろ? 抜け道なんよ」
「へえ・・・」


「あ、これが、うちの車」



そこには、赤い軽自動車があった。


「中古?」
「そう。乗って」
「うん」


寅は乗り込もうとして、後部座席に「joonベア」が乗っているのに気づいた。



「なあ、早く乗って」
「うん」


寅は助手席のイスを目一杯後ろに引いて乗り込んだ。

小柄なキコはイスを前のほうにくっつけるように座っているが、寅ははるか、後ろのほうに座っている。


「なんでそんな後ろのほうに・・・」

「仕方ないだろ? 足が入らないんだから」
「ホンマ。あんたは足が長いからなあ。頭は大丈夫? 突っかからないか?」

「大丈夫。胴は短いから。(笑う)」
「なあんか、変な感じやなあ・・・。あんた、後ろの方に行き過ぎるで」
「いいんだよ。キコの顔が見やすくて」
「ああ・・・。(笑う)あんたは、うちのファンやからね。見つめていたいんや」
「そう」







キコが車を発進させた。



「ねえ、ベア買ったの?」
「後ろのあれ? うん、お正月の福袋に入ってたんや」
「へえ・・・」

「部屋に飾るとこ、考えたんやけど、こうして、車に一緒に乗ってるのも楽しいやろ?」
「そ?」
「うん」


「ねえ、本物といるのと、熊といるのと、どっちが好き?」
「そんなん、当たり前のこと、聞かんでえ(笑う)」
「やっぱりねえ・・・」


寅は幸せそうに頷いた。


「当たり前やんか、熊に決まってる」
「・・・ふん」

「怒った?」
「いいよ、何を言っても」

「ホンマは、怒ってるんや・・・」
「そんな、熊ぐらいで・・・」

「こん車は、キムはんと一緒に買いに行ったんやで」
「そんなことは知ってるよ」
「そうかあ?」


「なんで中古にしたの?」
「うん・・・お金もなかったけど・・・ホンマに軽でええのか、わからへんからね。 これから生活して、仕事して・・・後で使いやすい車に買い替えようと思うてるのや」
「そう・・・」





「もうすぐ、国道や。・・・・ここをまあっすぐ走るのや」

「海が見えるんだ」
「わかる?」
「うん。今日は月が明るいから・・・海もキレイだよ」
「そう?」
「うん」


キコは運転しているので、あまり余所見ができない。



「ねえ、左手に線路が見えへん? 見えにくいやろか」
「ああ、見えた」
「あれが、江ノ電。あれに乗って、出かけたのや・・・。でも、もうあの洋館は取り壊されたて言う話や」
「そうかあ」


「こうやって、二人で車に乗るのも楽しいな・・・」
「そうだね。今日はキコが運転してくれて・・・」


「なあ、わかる? あれが江ノ島」
「ああ・・・」

「どこかで、止めようか・・・。どこにするかな・・・。暴走族が来ても逃げられるところ」
「怖いな、そんな言い方」
「大丈夫やて!(笑う)」






キコは、海岸に近い所に車を止めた。




「降りてみる?」
「うん、行こ」


二人は、車から降りた。


「少し歩いてみようか」
「うん・・・」




寅がキコの手を取って、砂浜を歩く。


「外はええなあ・・・」
「うん・・・」
「こんな開放的な気分で、あんたと外を歩くのは、何ヶ月ぶりやろか、ああ、もう1年以上前?・・・渋谷以来か?」
「そうかな? ・・・あの時は・・・」


寅が思い出し笑いをして、噴き出した。


「なんやの?」
「あの時は、おかしかったね・・・。まだ、こんな仲じゃなかったからね」
「そやな・・・」
「うん」


二人の心は近づいて仲良くなっていたが、まだまだ恋人なんて笑ってしまう距離だった。



「ああ。あんた、あん時、青山で、誰かにペンダント買ってはったね」
「そうだっけ?」
「そうや」

「忘れた」

「うそつき」

「いいだろ?」

「ええよお・・・忘れてしもても。 そんなこと」

「・・・」

「うちのことだけ、覚えてて」
「うん・・・そうする」
「わかった・・・」



「あん時から、太王四神記、待ってるんやもんねえ・・・長いね。うちらが知り合ってからの時間て、全てそれやろ?」
「・・・」
「あんたの準備期間から全部入れると・・・ずいぶん長い時間や」



寅はちょっと周りを見渡して、静かに息を吐いた・・・。



「月明かりがあるから、海がキラキラしてて、キレイだねえ」

「そやね。あったかくなったから、波もゆったりしてて、ええなあ」

「もうすぐ6月だもんな・・・」
「うん、早よ、6月にならへんかな」

「何か待ってるの?」

「(笑う)何言うてるの? タムはん・・・あんたを待ってるのや!」

「・・・そうか・・・」

「うん・・・」





キコが突然、ガクンと沈んだ。



「あ!」
「どうしたの?」

「サンダルのヒールが埋まってしもた」
「そんなの、履いてくるから・・・」
「だって、ヒールやなかったら、背が釣り合わんやろ?」

「そんなこと、気にしなくてもいいのに・・・。おぶってあげようか?」

「・・・」


「ほら、おいで」
「ええのお? 腰に悪いやろ?」
「大丈夫だよ、そんなに重くないだろ?」
「ややなあ・・・その言い方」

「ほら」
「では」


「あ! 重い!」
「ええ!?」

「うそだよ」

「アホ・・・」

キコが寅の背中を叩いた。







寅がキコを背負って、ゆっくりと歩き出した。


「ええ感じ・・・」
「そう?」
「うん・・・あんたの背中があったかくて・・・あんたのニオイがして・・・ずうっとこうしていたいわあ・・・」

「じゃあ、このまま、ソウルまで帰っちゃおうかな?」

「うん。それで二人羽織で生活するねん・・・。楽やなあ・・・。うちは、自分の足で立たんでええし・・・なんでもあんたがやってくれはるし・・・」

「それでもいいよ・・・。一緒にいたら、寂しくないし・・・いつでも話ができるしね」
「うん・・・」

「すぐに相談事もできるし・・・」

「・・・」

「いいなあ・・・」



「・・・何か、気になることがおすの?」

「・・・」

「何か・・・気がかりがあるのん?」

「・・・う~ん・・・」



「やっぱり、うちは・・・自分に足で立つ・・・降りるわ」

「・・・」



寅はキコを降ろした。


「手をつなごう」
「ええよ」





二人は黙って歩く。


「太王四神記・・・待ってるよね?」
「うん・・・。何か問題あるのん?」
「別に・・・」

「でも、気になってるのやろ?」

「どうだろ・・・。自分が思ってるのとちょっと違ったかなって・・・少し感じてる・・・」

「ふ~ん・・・」
「・・・」

「そんでも、どう演出するか、方向性は、最初に話し合うてるんやろ?」
「まあね」
「ふ~ん・・・」

「・・・」

「うちは役者やないから、わからへんけど・・・誰のイメージとピッタリのものがでけるかと言うたら、監督の頭の中のイメージやろ?」

「うん・・・そうだねえ」

「俳優は監督のイメージ通りにやるのと違うの?」
「・・・そうだねえ・・・」

「そんなら、監督さんがイメージした仕上がりだったら、それでええんと違うの?」
「・・・う~ん・・・」



二人は立ち止まった。




「話してみたら・・・あんたの気持ち・・・。あんたは、自分が納得のいかないことは続けられん人やから・・・」

「・・・」

「それしか、うちには言われへん・・・」

「・・・そうだね・・・」

「話し合いは大切や・・・」

「そうだね」

「なんでもええやんか、思うてること、話したら・・・。わかってほしい時は、話し合うしかないやろ?」

「そうだね」

「まだ・・・遅くないのやろ?」

「う~ん・・・ギリギリだね・・・」



寅がキコを正面から見つめた。



「こうして話してると、キコと僕の間は何にも変わってないね。いつも通り・・・気持ちが判り合える」
「・・・」

「でも、ちょっと離れて話をしないでいると・・・心が迷ったりするよね」
「そやね・・・。言葉は大事や・・・。本音を言わんといけん時もある・・・。確認し合わんと・・・」

「うん・・・。でも、言葉以外も大事だよね・・・」


そう言って、寅がキコを抱きしめた。


「うん・・・。あ、でも、監督はんと抱き合わんでよ。それはいやや」
「え? 駄目?」
「駄目に決まってるがなあ」

「でも、よくハグしてるよ」
「洋服の上からだけにして(笑う)」
「うん。(笑う)」



「じゃあ、キスは?」
「それも駄目や・・・。それはうちとだけ、するものやから・・・」
「・・・そう?」
「当たり前や」



寅が体を曲げて、背の低いキコにキスをする・・・。



「ホントだ・・・。監督のより、ぜんぜんいいねえ・・・」

「・・・」

「・・・」

「アホ・・・」


「アホで、ごめん・・・(笑う)」

「(笑う)うちは・・・こんな時間が愛おしい・・・あんたとこんなこと、言い合って・・・」




寅は答えずに、キコを抱き寄せた。


「ずっと二人でいたいねえ」
「・・・」
「キコもいたいだろ?」
「うん・・・」


寅がキコを抱いて、笑った。



「うちら、おかしいな。夜とか・・・日の当たらないとことか、人目につかんとことか、そんなとこでしか会われへん。まるで、バンパイアや」

「ふん。(笑う) う! 苦しい・・・朝日が苦しい・・・」


寅がおどけて、芝居がかって苦しがって見せる。


「うふふふふ・・・(笑う)上手。ええ感じやわ。寅ちゃん、ええ芝居やでえ~。あんたがバンパイアなら、うちを噛んで。一緒に闇の世界に生きてあげるさかい」
「うん。(笑う)」

「あんたに噛まれてしねたら本望や」
「・・・」

「ずっと夜の世界に二人一緒。・・・それでもええよ」

「・・・うん・・・」




寅は幸せそうに笑った。










続く・・・







少しはお肉がついてきていますように^^

元気なお顔を待ってるよ~~~~^^



2010/12/09 23:43
テーマ:【創】キコはん カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】キコはん15「渚にて」2


 



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Page「ネガ アヌン クデン」(私が知ってるあなたは・・)
これはキコはんのテーマで5年やってます^^;









BYJシアターです^^

ペ・ヨンジュン来日で、ブログ盛り上がってますね~^^

私はもう時間も迫って、美人にもお痩せにもなれず^^;
もうババアのまま、行くしかない!とあきらめて行っちゃいます^^

それにしても、
久しぶりの俳優ペ・ヨンジュンは素敵です~^^

そのまま、来て来て^^って言いたいよね^^



では皆さん!
これからでもお肌の手入れはバッチリ頑張りましょう~^^


さて。



本日はキコはん⑮「渚にて」の2部です。


こちらは、ペ・ヨンジュンが実際に鎌倉を訪ねるちょうど一年前に書いたものです。

それだけに大変思い出深いんですが、
それだけでなく、読み返してみると、この時期もいろいろあったなと思います。

そう、昔の彼女が出てきちゃったり・・・いろいろあった・・・。

そんなことも何気なく話の中に登場してきますので、
その頃のことを思い出しながら、読んでくださるとおもしろいと思います^^


ここより本編。
どうぞ、お楽しみください。





キコはんシリーズ⑮
「渚にて」2^^
(2007.6.15作品)







昨日の寅ちゃんの電話の声の硬さが、キコには少しひっかかったが、ひとまずは、昨日電話で話した店の内装の件について、寅にメールで報告することにした。
江ノ島へ廃材をもらいに行ったこと、そして、そのおかげで伊万里焼の器が手に入って、懐石風松花堂弁当が思いついたこと。そして、内装にかかる費用についてなどを、ヨンジュン宛に克明に記した。



「・・・・キムさんがいてくれて、ホンマに助かります。

寅ちゃん、おおきにね^^

仕事が順調だと、うれしくて、ちょっと一杯でもということになるやろ?

それで、キムさんと、おいしいて噂の焼き鳥屋さんへ行ったんよ。

ホンマにおいしかったけど、煙がボーボーで燻されてしもた^^

それにしても、あん人はホンマに話がおもしろいで^^

ランチメニューの目玉にしたい松花堂弁当は今度試作品を作ってみようと思うてます。


ではお仕事、頑張ってね^^

キコ」




送信!



OK!っと。



ええと・・・。

そうや。
キムさんが言ってたinvoiceの書き方な。
英語は苦手やけど・・・まずは、形式を覚えればええよね。
まずは、そうしよう・・・。

それから・・・。







「おはようございます!」
「あ、おはよう。昨日はご馳走様」

「いえ、どう致しまして。でも、楽しかったですね。また行きましょう!」
「ええよ! 今、寅ちゃんに内装の件と、ランチメニューについてメールした」
「そうですか。早いですね」

「そらな。あん人には、一番!にいろいろ知らせてあげたいのや」
「そうですね」

「さて。今日も勉強せなあかんことが一杯やね。輸入業務は難しいなあ」
「大丈夫ですよ。僕がいますから」


「う~ん、今はね・・・ま、頑張るわ」
「・・・」

「まずは、これからかな・・・」


キコがキムさんが書いてくれたマニュアルを見ながら、本日の勉強を開く。



「キコはん」
「・・・うん? 何?」


キコは、横に置いてあるコーヒーに一口、口をつけてキムさんを見た。


「何で、キコはんは、京大出て仲居してたんですか?」


キコは今飲んだコーヒーを吐き出しそうになった。



「ゴホン、ゴホン! う、うん! ああ。 何それ?」

「あの、ヨンジュンさんがくれた資料に、キコはんの履歴書があったものですから」
「ええ?!」

「僕がここへ出向するに当たって、会社のほうで、出向先の資料が必要だったもので。今、BOFもキーイーストの中でしょう。会社が大きくなっちゃったから、出向先の資料をキチンとするようにって言われてて・・・。ヨンジュンさんに相談したら、孫さんからもらった履歴書があったなって、出してきてくれたんです」

「ややなあ・・・。あん人がまさか、そんなん、保管してるて、思わへんかった。なんか言うてた?」
「寅さんは笑って、履歴書くれましたよ。『これでいいかな。でも、あんまりよく読まないようにね』って言って」

「やな言い方やな」
「ホンマは違うんですか?」

「当たり前や。あれは、ヨンジュンさんの京都弁講師になりたかったさかい・・・ちょっと箔をつけたのや・・・。そうや、あん時に、寅ちゃんて日本名つけてあげたんよ」
「へえ・・・」


「高校は正しいんですか? 聖母女学院って言うの?」
「実はそれもうそなのや・・・。ホンマは、聖婆高校って言うところを出たのや・・・」
「せいば?」
「うん。聖なるババアや・・・」
「へえ・・・」

「でもな、そこて地元ではものすごい有名な進学校なんよ。聖婆に進んだって言うたら、皆うらやましがるくらい」
「へえ・・・。勉強できたんですね」

「まあな、入った時はな」
「・・・」


「でもな。うちが高3の夏に、うちの父ちゃんが借金抱えてポックリ逝ってしもたから・・・それで、大学も行かれへんかった。高校卒業するのがやっとやったんや・・・。大磯に住んでるお姉ちゃん、いるやろ? あん人とうちは、年が離れてるさかい、お姉ちゃんの時は短大まで出してもろたのや・・・」

「それで、なんで仲居になったんですか?」

「うん・・・。高校出て、地元の役場に勤めたのやけどなあ。 周りの友達は、皆大学へ進むとこやったやろ。『あん子はかわいそうに、親の借金で上の学校へ進めんかった』って言われて・・・。なあんか、切なくなってしもたのや。ホンマに狭い土地やったから。皆に噂されるんも嫌やったけど、役場の受付で、笑顔でジッちゃんバッちゃんの世話してるのが・・・なんか窮屈で退屈で・・・一生こんなことやってるのかなあと思うたら、急に全てが嫌になってしもた。まだ、19やったから・・・。若気のいたりや。(笑う) そんで、思い余って、家を飛び出したんや」

「それで、仲居さん?」


「うん! 人から見たら、フーテンみたいやけどね。(笑う)誰も知らん土地で伸び伸びとしたかったのや・・・。そんで、今はこうして、こういう仕事始めようとしてる。・・・なあんか自分でも信じられへんわ」

「ふ~ん・・・。それも、外人と一緒にですからね。(笑う)」
「ホンマや。(笑う)人生、何が起こるかわからないな」

「そうですね・・・。僕もここにこうしているのがなんて不思議です」
「う~ん、ごめんなあ。うちの世話させて」

「いいんです。もともと何か起業をしてみたかったから、ラッキーでした。勉強になります」
「そうか? それならええけど」

「ヨンジュンさんはそういうキコはんの話、知ってるんですか?」

「うん、断片的にな・・・。『それで、こういうキコはんができたんだ』って感心してた。あん人っておもしろい人やろ? なんでも感動してしまうがな」
「いい人です。ちゃんと人を理解してくれて」
「・・・そやね。そや・・・」



キコはちょっと寅を思い出して、胸が一杯になった。


そうや、それで好きでいてくれるんやもん・・・。
寅ちゃんに感謝や。




「もう頑張って仕事するで! そうや! 今晩は、お弁当の試食をしよう! それが夕飯や!」
「うれしいですねえ」
「うん! さっさと勉強して、メニューを考えるわ!」
「楽しみにしています!」









キコはその晩、松花堂弁当の試作品の写真を撮って、早速、寅にメールで送った。


「味はまあまあ^^

キムさんもおいしいて言ってくれはったえ。

ホンマは、寅ちゃんと食べたかったのやけど、
仕方ないね・・・。

今日は、キムさんが説明をつけてくれた輸入業務用のinvoiceの書き方も勉強しました。
丁寧に日本語で説明書いてくれはるから、助かる^^

一つだけ、うちもラッキーなこと・・・あんたにメールをしているおかげで、
英語の伝票や手紙でも、『早打ち』だけはでけるよ^^


ではまた!

お仕事、ファイティ~~~ン!!

キコ」




送信!








翌朝、キコがPCを開くと、寅からのメールが来ていた。

開いてみると、こんなことが書いてある。



「もうお弁当の試食もしたの?
やることが速いね。

僕も食べてみたかったよ。


最近の君のメールは
キムさんのことばかりだね。

僕の入る隙間もないくらい・・・。


江ノ島へ行って、焼き鳥屋へ行って、二人でお弁当食べて・・・。

楽しく過ごしているようで、よかった。


トラ」




読んでいて、キコはちょっと切なくなった・・・。



なんやの、このメール・・・。

『最近の君のメールはキムさんのことばかりだね。
僕の入る隙間もないくらい・・・』


何、これ・・・。
あんたがうちの元へ送った人やろ?


『江ノ島へ行って、焼き鳥屋へ行って、二人でお弁当食べて・・・』って・・・。

うちら、仕事してるのやで・・・。


あんたのとこの人やから、うちは大切にしてるのや。

ランチの試食かて、一緒に店をやる仲間やから一緒に味見するのや。

遊んでるのやない。

江ノ島へ行ったのかて、仕事やで。


それに・・・
あんたは、ここにはおへんやないの・・・。


来られへんくせに、
なんでこんな書き方されなあかんの!





「寅のバカ、アホ!


あんたがうちの仕事を難しくしてるくせに
なんで、そんな嫌味なこと、書いてくるのや。

『最近はキムさんの話ばかり・・・』

キムはんはあんたが送ってきた人やで。
そやから、うちは大切にしているのや!


ほな、

キムはんやなくて、誰の話をしたらええの?


肝心なあんたはここにはいないやろ?



あ~あ、噂のペ・ヨンジュンの彼女?

そう?

うちはホンマに悲しい・・・


キコ」





もう、なんで嫌味ったらしいこと、書いてくるのや。


キコはちょっと悲しくなって、ティッシュで、鼻をかんだ。
ノートパソコンのカーソルを指でグルグル回して、「寅のアホ!」と毒づいた。

すると・・・。


今、腹立ち紛れに打ち込んだ返信が・・・送信されてしまった・・・。



あれ?
今書いたの・・・ホンマに送信されてもうた・・・。


うそやろ・・・。


このPC、アホや・・・。

どないしょう・・・。

もう送信されてしもたものは・・・削除でけんよね。


ああ! もう! ついてない!

うちはアホや・・・。

ホンマにアホや・・・。アホなんは、うちや。

どないしょう・・・。







その日は嫌な気分で一日を送った。

キムさんと仕事をしながらも、時々、マイパソコンを覗いてみるが、寅からの返事は来ていなかった。








夜になって、キコの携帯が鳴った。



寅ちゃんやったら、どないしょう・・・。
でも、そしたら、謝ろう・・・。





「もしもし?」
「キコはん?」


「あ、キムはん。こんな夜更けに何?」


「なんかあ。急に寅さんが鎌倉見に来るって、極秘来日されるそうですよ」
「ええ!? なんで・・・? 時間が空いたのやろか?」

「ええ、なんか2日間休みが入るそうで、ジムに行くのをやめて、こちらの様子を見にいらっしゃるそうです。ちょっとたいへんな事になりましたね・・・」

「・・・そんなあ・・・勝手に来日しても平気なのやろか?」
「う~ん・・・孫社長も大忙しです・・・。でも、寅さんのことです。こっちのことを放っておけないんでしょうね」
「ああ・・・大事にならんとええけど。皆が寅ちゃんの動きに注目しているさかいに・・・」



あ~ん、怒らせてしもうたかな・・・。
マズイなあ・・・。

ホンマの理由は、キムはんには言われへんしなあ・・・。




「とにかく、明々後日いらっしゃるので、こちらも報告書をまとめましょう」
「そやな、大事なスポンサーやもんな・・・」

「ではご報告まで。お休みなさい!」
「お休み・・・」



たいへんなこっちゃあ・・・。
ヨンジュンさんが動くて、世間が放っておかへんし・・・。

どないしょう・・・・。


心臓が痛いわ・・・。
あんたが来るまで、うち、生きてられるやろか・・・・。






当日。


「ホンマにここへ来て大丈夫なのやろか」
「まあ、夜、極秘に搭乗するようですし…それに目立たないようにお一人だそうです」
「ああ、心配や。一人ていうのも心配や」

「それに、孫社長が六本木のほうにホテルを取ってくれてますので、なんかあったら、あちらに御用でということにしてくださるそうで。羽田の様子ではいったん六本木へ入られて裏からこちらへ来ます」
「そんなん、たいへんなこっちゃ。ああ・・・それに、エライ出費やなあ・・・。こっちはどこへ泊まるの?」

「前に鎌倉でお世話になった旅館を押さえました」
「ああ。 あそこやったら、口が堅いし、安心やな…。キムさんも気をつけて、行っておくれやす。あんたらが帰ってくるまで、うちが生きてたらええけど…」

「(笑う)そんな言い方しないでくださいよ。大丈夫ですから。内装も結構進んだし、ちょうどいい時期かもしれません」
「…うん、そやね。開店したら、また人が来るさかい、来づらくなるし」
「ええ。寅さんもその辺を考えられてくるのかもしれませんね」



そういうことにしておこう・・・。
そやなかったら、誰も許してくれへん・・・。

はあ・・・。



キムさんは時間より早めに羽田につけるように、車で出かけていった・・・。

寅の到着が深夜になるので、キコは明日の昼に、ランチの試食ができるように仕込みをして、座り込んだ。



寅ちゃんはちゃんとここまで辿り着けるやろか・・・。
ここへは直線では来られへんやろから。


あ~あ・・・。







そして、夜遅く、玄関のチャイムが鳴って、キコはドアを開けた。
そこには寅が立っていた。


「こんばんは・・・」

キコは呆然と寅を見つめた。

寅はもう夜更けだというのに、濃いサングラスをかけて、キコを睨みつけているようにも見えた。
横から、キムさんが顔を出して、キコに挨拶をした。


「お連れしました」
「おおきに・・・キムはん・・・」


「じゃあ、キムさん、僕はここに泊まりますから、また、明日」
「え? お宿はお取りましたが・・・」

「そんな時間はないでしょ? 夜中でもやるべきことをやらないと。たった2日間の予定でこちらへ来たんだよ。時間がないでしょ? 僕はいつも24時間、働いていると思ってください」

「わ、わかりました。失礼しました。では、細かい報告書はこちらです」

「ありがとう。一応、今日はコーヒーもいろいろ試してみたいと思っているから、今晩は眠くならないと思うよ」
「そうですよね・・・ヨンジュンさんは研究熱心だから。わかりました。また明日の午前中にでも、顔を出します。飛行機は午後8時です」
「わかってる。じゃあ、よろしくお願いします」

「では。キコはん。何かありましたら、僕の携帯に電話入れてください」
「うん、おおきに・・・いろいろ、ありがとさん・・・」



キムさんが帰ると、小さなバッグを提げたヨンジュンが玄関の中へ入ってきた。








キコには、寅は一言も話さず、怒ったような恐い顔をして部屋の隅々まで見回している。

キコが話しかけても、答えない。そんな様子が胸に痛い。






「なあ、寅ちゃん、なんか言うてよ・・・」
「・・・」

「なああ・・・」


寝室の中の様子を見ていた寅のジャケットの肘をキコが引っ張って、顔を見上げると、寅はゆっくりとサングラスを外して、キコをじっと見つめた後、にんまりと笑った。

そして、キコを抱き寄せて、部屋のドアをバタンと閉めた。




部屋の明かりを消すと、寅はキコをギュッと抱きしめた。


「寅ちゃん…ヨンジュンはん・・・」



寅が大きく深呼吸した。


「寅ちゃん、この間のメール、ごめんな・・・」
「・・・」


寅が暗闇の中で、キコをじっと見つめている。


「・・・」
「キコ・・・」


そう言って、ちょっと切なそうな瞳をして、キスをした・・・。
キコは目を開けて、寅の顔を見上げた。


「怒ってたんやないのん?」
「うん」
「でも、少しはムッとしたやろ?」
「そうだね・・・キコがキムさんのことばかり言うから・・・」

「許して・・・」
「ふ~ん」


寅がちょっとため息をついた。


「・・・ごめんよ。心配かけたね・・・」


寅の目がやさしくなった。キコはさっきから痛かった胸が余計痛くなり、ちょっと泣きそうな顔をした。



「仲直りしてくれるだろ?」
「・・・」
「駄目?」
「駄目なんて・・・。あんたが忙しい時に、余計な心配かけて、うちこそ、ごめんね・・・」


キコは少し首をかしげて寅を見上げた。寅はニコッとしてキコをまたギュッと抱きしめた。

離れていた分、思いをぶつけるように・・・。


キコも寅の体を抱くように腕を回した・・・。



「離れてると、いろんな気持ちになるねえ・・・」


そう言って、キコの頭を撫でた。


「こうしていると、何も変わっていないのに・・・」
「寅ちゃん・・・」


「ずっとこうしていたいな」
「じゃあ、ずっとこうしていて」
「うん・・・」
「二人で抱き合っていよう」
「そやね・・・」



寅がキコの髪のニオイを嗅いだ。


「新しいの、買ったの?」
「わかる? ええニオイやろ?」
「うん・・・」

「寅ちゃん・・・」
「・・・」
「うちは、あんたが一番に好きなんや・・・それは変わらへん・・・。だから、安心して」
「・・・」

「なあ、信じて。いつも、あんたを思っているのや・・・。うちを信じてくれへんの?」
「信じてるけど・・・信じさせて」
「もう」


キコが寅の顔を見て笑った。


「本気だよ。信じさせて」
「全く・・・。ほな、来て。信じさせてあげるさかい」



キコが寅の手を引っ張って、ベッドに座った。そして、スタンドの電気を小さくつけた。


「あんた以外となんか・・・こんなとこに座らへんよ」
「座るだけ?」
「そう」
「もっと」
「もう・・・」



キコは寅を引っ張って倒れる。


「あんた以外となんか、こんな格好せえへんからね」
「格好だけ?」
「そう・・・」
「もっと」

「う~ん・・・。もっと近くへ来て」
「こう?」

「なあ、カットソーが脱げるくらい・・・」
「こう?」
「うん・・・」



キコは寝ながら、上から覆いかぶさるように見つめる寅のカットソーを脱がす。


「あんたも手伝うて・・・。うちの、脱がせて」
「うん」


カットソーを脱いだキコはブラジャーを外して、横へ置く。
二人は見つめ合った。


「信じてくれはるでしょう?」
「うん。(笑う)」




寅が覗き込むように顔を見つめて、キコの髪を撫でた。


「僕もこのキコのシャンプーを使おう」
「ええよ・・・。洗ってあげる、前みたいに」

「そうだ、前にお風呂で髪を洗ってくれたね・・・」
「うん。ゴルフ場のコテージやったね・・・」

「・・・二人が結ばれたところだね・・・」
「うん・・・」

「思い出した。人の頭を、キューピーにして遊んでたっけ」
「そやね・・・。でも、もうこんな長いとキューピーにはならへんな・・・」


キコが寅の髪をめちゃくちゃに掻き回した。



「もう駄目? できない?」
「う~ん、もう髪は立たんなあ」
「じゃあ、キューピーはなし・・・。その代わり、お風呂で背中、洗って」
「・・・ええよお・・・」

「うん・・・それから・・・出て来たら、いつもみたいに、マッサージしてね」
「ええよ。い~っぱい、やることがあるなあ」
「あるよ」

「忙しいなあ・・・」



「僕もいっぱいしてあげるから・・・」
「・・・」
「ね?」
「・・・うん・・・。いっぱい、いっぱいして・・・いっぱい・・・」
「うん・・・してあげる(笑う)」


そう言って、寅はキコにキスをした。





「毎日忙しすぎて、キコは・・・辛くない?」
「うううん・・・あんたは・・・あんたは・・・辛いのん?」
「・・・」

「この間の電話で・・・うちに『幸せ?』て聞いたけど・・・。あんたは、今、幸せやないのん?」
「・・・」


キコは「今、幸せ?」と聞かれた言葉が胸に引っかかっていた。
それは自分に向けられた言葉なのか、寅が自分自身を思った反語なのか・・・。



寅の首に回した腕をギュッと引き寄せた。
寅の頭がキコの胸に倒れかかった。



「抱かせて。うちに寅ちゃんを抱かせて・・・」


キコは寅を胸に抱いた。


「しばらく抱かせて・・・」
「キコ・・・」
「何も言わんで、抱かれてて」


キコの目から涙があふれた。


うちに何か言いたいことがあったの?
いつ、聞き逃したのやろ?

ごめんね・・・ごめんね、寅ちゃん・・・。





泣いているのか、キコの胸が波打っている。寅は黙って抱かれたままでいる・・・。



静かに、抱きあう時間・・・。
言葉はなくても、二人の心がつながっていく時間。









「さ、お風呂に入ろう」


寅が元気な顔になって、起き上がった。


「飛行機で来ると、なんとなくニオイがついて、さっぱりしないんだ。一緒に入るぞ」
「うん! 二人で入ったら、すぐにお湯が溜まるな」

「そうだね。さ、起きて。ほら、起きて!」
「そんなん、強く引っ張らんといて」



寅はキコを起こして、自分は先にバスルームへ歩き出し、ハッと閃いて後ろを振り向いた。




「そうだ! やっぱり、前も洗って!(笑う)」
「ええ!」

「早くおいで」

「待って。もう・・・前は・・・いややあ・・・。前は・・・。仕方ないか・・・」


キコは少し赤い顔をして、けれど幸せそうに、バスルームへ向かった。











二人でベッドに寝転びながら、顔を見合わせている。


「やっぱり、キコの髪はいいニオイだ」


寅がキコの髪を掴んで、ニオイを嗅いだ。


「ほら、あんたも同じやで」


キコが寅の髪を掴んで、寅の鼻に当てた。

「ホント。(笑う)」


「これ、買い置きがあるさかい、シャンプーとコンディショナー1本ずつあげる・・・。オーガニックのハーブで出来てるさかい、髪にええでえ。これで、うちを思い出して」
「うん・・・」

「うちは、自分の髪のニオイであんたを思い出すから・・・」
「・・・」

「いつも一緒や・・・」
「・・・」


寅がキコの髪を撫でた。



「キコといると、なんか詩人になれるねえ」
「ホンマ? じゃあ、うちをもっと詩人にして」
「うん」



寅がキコにキスをして、首筋から下へ移動していく。


「もっと」
「いいよ・・・」



「ああ・・・」



キコの吐息が漏れて、寅はうれしそうに顔を上げた。








続く・・・






↓こんなjoonに会いたいよね^^v




2010/11/28 01:19
テーマ:【創】キコはん カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】キコはん15「渚にて」1


 



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これはキコはんのテーマで5年やってます^^;









こんばんは^^

BYJシアターです。


さて。


本日はキコはんの15話です。

これは私にとって、とても思い出深い回です。

寅ちゃんが鎌倉のキコはんを訪ねるこの回を
書いたちょうど一年後。
公式にアップした日付に、ペ・ヨンジュンは鎌倉を訪ねました。

その時の「びっくり!」ってなかったし、
眼鏡市場の寅さんのBGMといい、うれしいことが重なりました^^

ということで、これを書いているときは、
まさかでしたが、
一年後のサプライズに、

私も思わず「うちもすっきや!寅ちゃん!」と言いたい気分でした~^^




さて、話を戻して~~~^^

キコはんの喫茶店はどうなっているのでしょうか。
そして、寅ちゃんとは
どうなっているのでしょう?


では、その辺をご報告しましょう^^

今回はいつもより少し長めにご報告です!



ではここより本編。
お楽しみください!




~~~~~~~~~~~~~~~~~






「あ! 寅ちゃん・・・」


鎌倉の喫茶店のために借りた一軒家の二階。
玄関のチャイムが鳴って、キコはドアを開けた。
そこには寅が立っていた。


「こんばんは・・・」

キコはそう言って、呆然と寅を見つめた。
寅はもう夜更けだというのに、濃いサングラスをかけて、キコを睨みつけているようにも見える。
横から、キムさんが顔を出して、キコに挨拶をした。


「お連れしました」
「おおきに・・・キムはん・・・」


「じゃあ、キムさん、僕はここに泊まりますから、また、明日」
「え? お宿はお取りましたが・・・」

「そんな時間はないでしょ? 夜中でもやるべきことをやらないと。たった2日間の予定でこちらへ来たんだよ。時間がないでしょ? 僕はいつも24時間、働いていると思ってください」

「わ、わかりました。失礼しました。では、細かい報告書はこちらです」

「ありがとう。一応、今日はコーヒーもいろいろ試してみたいと思っているから、今晩は眠くならないと思うよ」
「そうですよね・・・ヨンジュンさんは研究熱心だから。わかりました。また明日の午前中にでも、顔を出します。飛行機は午後8時です」
「わかってる。じゃあ、よろしくお願いします」


「では。キコはん。何かありましたら、僕の携帯に電話入れてください」
「うん、おおきに・・・いろいろ、ありがとさん・・・」





キムさんが帰って、小さなバッグを提げたヨンジュンが玄関の中へ入ってきた。


寅のサングラスをした顔がちょっと恐い・・・。
寅がじっとキコを睨みつけている。

キコはもう心臓が痛いほど、ドキドキと・・・いや、チクチクとしている・・・。




「・・・う~ん・・・ごめんな・・・変なメール送って・・・。あんたを恨んでるわけやないねん・・・」
「・・・」
「・・・どう・・・どういったら、わかってくれるの?」
「・・・」



寅はちょっと首を傾げて、玄関を上がってきた。
キコは寅を見つめながら、一歩ずつ後ずさりしていく。



「怒ってはる?」
「さあ・・・」



「ねえ・・・普通に答えて」
「・・・」
「なあ・・・寅ちゃん」



寅がどんどん恐い顔で迫ってくるので、キコは壁に手をかけながら、後ろへ下がっていく。



「なあ・・・。うち、謝ってるやない・・・」
「・・・」


「ごめんて、言うてるのに」
「・・・」
「恐いから・・・サングラスだけでも外して」
「・・・」
「なあ・・・」
「・・・」

「イケズ・・・」
「・・・」
「なあ・・・そんな意地悪い顔せんで!」
「・・・」

「あんた・・・ホンマにイケズや・・・」


寅はキコをじっと見つめてから、部屋の中を見回した。
洗面所やトイレのドアを開けて見て回る。



「なあ、お口はどうしたの?」
「・・・」
「なあ、なんか言って・・・」



納戸の戸も開けて見ている。


「なあて・・・。意地悪や・・・」


そして、最後に寝室のドアを開けて、少し中に入って部屋の中を見た。


「もう、寅ちゃん!」


キコが泣きそうな顔をして、寅の後を追って部屋に入った。


「なああ・・・」


キコが、寅のジャケットの肘を引っ張って、顔を見上げると、寅はサングラスをゆっくり外して、キコをじっと見つめた後、にんまりと笑った。

そして、キコを抱き寄せて、部屋のドアをバタンと閉めた。









キコシリーズ⑮
「渚にて」1^^








♪~

ソウル発の夜行列車下りた時から~
鎌倉駅は日本晴れ~

北へ帰る人の群れは誰も無口で~
海鳴りだけを聞いている~

さ~よなら~寅ちゃん~
私は~帰り~ます~

喫ぃ茶店の準備せんとあかんさかいに!

ああああ~~~~ソウル海峡~
寅景色~~~い~~~♪~




もう~すぐ~寅ちゃん~
マンマも~できあがり~~♪~

あんたのため、きばって作~ってみたさかいに!

ああああ~~~~ソウル海峡~
ランチメニュー~~~♪~









「今日も元気ですねえ」
「あら、キムはん、いらっしゃ~い」


昼近く、キムさんが喫茶店の2階のキコの部屋へ出勤してきた。


「外回りご苦労さん!」

「キコはんの歌声で元気度がわかりますよお」
「ホンマ?!」

「ええ。あれ、また、お弁当作られたんですか?」

「そうやねん・・・。この間うちら二人で、ランチの松花堂弁当の試食したやろ? それ、寅ちゃんにメールしたらな、すねはって」

「へえ・・・寅さんがですか?」

「そう、寅さんが・・・って、あんた、「寅さん」じゃあ、渥美清やないか! 寅ちゃんは、もおっとハンサムやでえ」
「そうでした・・・寅ちゃんでしたね」

「そ、寅ちゃん。それでなあ、あん人が一番に試食せんかったさかい、ちょっとオカンムリ。自分かて撮影中で忙しかったくせに・・・うるさいねん」
「ああ、そういうことですか」




「・・・これでええやろか・・・」

キコは、ヨンジュンにメールで送る松花堂弁当の写真をデジカメで撮っている。



「でも、これ、この間よりちょっと豪華な気がしますけど」
「そやね・・・(笑う)ふん。でも、これ、寅ちゃん仕様やさかい・・・。よし! これをメールで送ろう!っと」


キコはデジカメをPCに繋いでいる。




「なあ、キムはん、二人分作ったさかい、一緒に食べよ!」
「あ、ありがとうございます。じゃあ、お茶の仕度でもしますよ」

「おおきに! ほな。その間に、うちは寅ちゃんにメール送ってしまうわ」








「DEAREST love love 寅ちゃんへ


この間、メールに書いたランチメニューの「松花堂弁当」の写真を送ります。
これな、寅ちゃん用やさかい、ほんの少し、本物より豪華なんや。

あんたを思うて作ったさかい・・・愛情たっぷりやで。
目で楽しんでや。


この器が、先日話した伊万里焼・・・。
風情があるやろ・・・。

こんなもん、手に入ってしもたから、使いたくなった・・・。
使ってあげんとかわいそうなんて思うてしまうのや・・・。

どうお?

ええやろ?


キコ



PS:今度、こっちへ来たときに、試食してや!」








「キコはん、お茶、入りましたよ」
「ほな、食べよか!」












ちょうど一ヶ月前。
キコとキムさんは、この新緑の鎌倉で、新しくオープンするキコの喫茶店に、緑豊かな住宅地の入り口にある瀟洒な二階建ての一軒家を借りた。
そこには、小さな庭があって、高く伸びた桜の木があり、それがなんとも言えない風情を醸し出している。

建物自体は築30年ではあるが、元画家の家ということで、一階部分のアトリエが贅沢に広く作られており、その天井は吹き抜けになっていた。ここを改装すると、喫茶店にはちょうどいい大きさだ。
このアトリエのしゃれた造りや、通りから玄関に至るまでのアプローチに木々がやさしくそよいでいる風情が、なんとも言えず趣きがあって、キムさんとキコはすっかりここの家のとりこになった。

しかし、問題は家賃で、二人が予定していたものより高かった。そこで、2階をキコの住まいと事務所に使うことにして、スポンサーの寅ちゃんに写真と撮ったビデオを送り、返事を待った。他にも3軒ほどの候補写真をつけて送ったが、寅からの返事も、ここの木々に囲まれた隠れ家的アプローチとアトリエが気に入ったと書いてあって、「ここにしよう」という言葉で結ばれていた。




「キコはん、やっと場所が決まりましたねえ」
「うん・・・結構、家賃高いけどな。こんな贅沢なとこやもんね!」
「でも、いいですよ・・・築30年がきいているし、それにここの入り口の道幅も狭いから、これでも、少しは家賃が安くなっていると思うんですよ」
「うん、そやね」

「まあ、キコはんの住まいも兼ねているわけですから。寅さんも「ここがいいね」っておっしゃってくれたし、いいじゃないですか」
「うん・・・あん人は、ええもんが好きやからねえ・・・。でも、お金には限度があるさかい・・・。なんとか、うちらで頑張ろ」
「そうですね」




ヨンジュンは、キコの喫茶店のスポンサーではあるが、決してお金をくれたわけではなく、後ろ盾のないキコに、非常に低金利でお金を貸してくれたのだ。

ヨンジュンはいろいろと心配りしてくれたが、中でもキコが一番感謝しているのは、「キムさん」を送ってくれたことだ。このソウル大出のキムさんは、日本語と英語に精通していて、キコが何気なく思いつきで話したこともすぐにちゃんとした形にしてくれる人だ。
こんな優秀な人をキコが自力で雇うことなどできない・・・その年棒を考えるだけで、寅ちゃんに感謝だ。

そして、このキムさんは、ちょっと天然惚けで、とてもさっぱりした性格なので、キコはとても仕事がしやすい。キムさんもキコの一風変わっているが、楽しい性格が気に入ったみたいで、二人のチームワークはまずまずだ。


キムさんが言っていたように、ここは通りからの一軒分ほど奥まっていて、その道幅が4mを切っていることから建て直すこともできず、売るにもなかなか買い手がいない。
そこで、借り手がいるなら、喫茶店のために、家の内装をリフォームすることは家主も承諾しているので、キコとキムさんは早速、その家の内装工事にとりかかった。






アトリエの高い天井を見て、キコが内装業者の中村さんに何気なく言った。

「ここの天井に剥き出しの梁があったら、もっと雰囲気がよくなると思わへん? 素敵やろね」
「ああ、梁ですね。古い木材が手に入るといいですねえ。それだと風情が出ますね。ちょっと考えてみましょう」









こんな会話がなされてから、ある日のこと。

キムさんがキコに江ノ島に近い洋館に行こうと言い出した。


「内装の中村さんの話では、江ノ島に近い古い洋館が解体されるそうで、そこの廃材をもらえるそうですよ」
「でも、高いんと違うか?」
「それがもう廃棄しちゃうそうで、運搬料だけでいいそうなんです」
「へえ・・・行ってみるか?」
「そうですね」






キコとキムさんは、5月の晴れた日に、江ノ電に乗って、江ノ島に近いその洋館まで出かけた。
江ノ電の窓から見えるアジサイの花は今を盛りと満開に咲き誇っている。


「キレイやねえ・・・。それに、ホンマにええ天気・・・」
「海で遊びたいですね」
「ホンマ。ふん。(笑う)海も波がゆったり・・・ええなあ」


二人は江ノ島までの窓の景色を楽しんだ。





「ええ風やなあ。街がキラキラ輝いて見えるわ」
「そうですね。キコはん、ここの坂を上るんですよ」
「そうかあ」



キコとキムさんはさっきの爽快感から一転、汗だくになりながら坂を上った。
坂を上りきったところで、風がすうっと入ってきたと思うと、古びた洋館が現れた。




「あれですねえ」
「そやな・・・。へえ・・・。かわいい。庭も広いなあ」


そこにはもう住人はいない。亡くなった両親の家を東京に住む息子たちが処分するそうだ。
近くで見るとその建物は小さいながらも、懐かしささえ感じられる温かな佇まいだ。


「なんか昔住んでたような気にさせる雰囲気やな・・・」
「ホンマですね」
「な」


キコはキムさんの関西弁にニコリとして、二人で玄関のチャイムを鳴らした。



中から、内装業者の中村さんが出てきた。


「あ、お待ちしてました。どうぞ、中へ入って」
「上がらせてもらおう」



二人は中へ入った。
リビングに入って、天井を見ると、キコたちがほしがっていた梁があった。


そして、その床はよく磨きこまれていて黒光りしている。そして、階段の手すりの見事な細工。


「この手すり、すごいなあ」
「これももらいましょうか? 喫茶店に騙しの階段をつけて、裏を物置にして」
「そんなん、できますのん?」
「ええ」
「それ、ええわあ」




奥の間に進むと、和室があり、その鴨居の細工も繊細ですばらしい。


「やあ、鴨居も繊細でええなあ・・・こんな鴨居、旅館かてそうそうないで。この家壊すの勿体無いなあ」「仕方ないですよ。住む人がいないんですから。家は人がいないと駄目になりますからね」
「そやな・・・」


「こっちのダイニングも見てええのん?」
「どうぞ」






キコはダイニングへ入ると、天井から下がっているシャンデリアに驚いた。
それは決して大げさなものではなく、小ぶりなものだったが、ここの家が全盛のときはどれだけ華やかだっただろう。こんな素敵な空間にさえ、終わりの時が来る・・・それを思うと、ちょっと切ない気分になった。



ダイニングの洋風の食器棚の中には小鉢や皿など和食器だけが残っていた。洋食器はもう持ち出されたのだろうか。


「なあ、キムはん。ちょっと来て。この食器見て・・・。すごいなあ。中村はん、これ、見てええのんか?」
「ええ、どうぞ」


キコは食器棚を開けた。


「キムはん。すごいと思わへん? これ、古伊万里の風情があるでえ・・・」



キコが皿を1枚手に取って、眺める。


「古伊万里?」
「そうや。古伊万里はな、江戸時代に作られた伊万里焼や。その時代の絵つけや、これ。海外ではな、有田焼を「IMARI」て言うのや」
「へえ・・・」

「昔はな、佐賀の伊万里港から出荷したもんを「伊万里焼」て言うたのや。今でいう、有田焼も、伊万里焼も、全部一緒くたに「伊万里焼」と呼んだんや。今はそれぞれ産地の呼び名で呼んで、区別してはるけどな」
「へえ・・・」

「昔、う~ん・・・秀吉の時代にな、朝鮮から連れてこられた陶工が始めたものや・・・」
「ふ~ん」
「キムはんたちには、ちょっと辛い歴史やけどな。キムはんも懐かしいテーストがあるんやない?」
「わからないですが、これ、キレイですね」


キコとキムさんはその皿を眺めた。


「なあ・・・。これ、どうするのやろ・・・。すんまへん! この食器はどないするんでっしゃっろ?」
「それですか? 廃品業者に出すんじゃないですか? 作家物ではないからね。ここにあるものは今の家主である息子さんが捨てていったものだから」


「はあ・・・ほな、ただでいただけるんでっか?」
「ほしいの?」
「ええ・・・」

「じゃあ、どうぞ。捨てるにもお金がかかるから、いいですよ」
「おおきに!」


「キコはん、どうするんですか?」
「いただくのや。なあ、うちは旅館の仲居を長い間、ただノンベンダラ~ンとやってただけやないで。器の良さはわかる。結構いいとこの料亭旅館も見てきたさかい・・・。作家物やのうても、これはええでえ・・・。だから、ここんちの人も、こうやって食器棚に入れて使ってたんやないやろか?」

「それにしても、うちはコーヒー店ですよ」

「うん。そこで閃いた!(笑う)ここにあるお皿の数だけ、ランチで松花堂弁当みたいに盛り付けて出したらどうやろ? 毎日、限定で・・・。何枚あるかな。ひ~ふ~み~よ~いつ、むう・・・・15、16枚ずつあるやろ。小鉢も柄違いでも結構あるでえ・・・。たとえばな、キムはん。この小鉢もいろいろ盛り付けが考えられるで・・・。きんぴら、煮浸し、胡麻和えもええなあ・・・あ、長イモの梅酢和えもええし。高野豆腐でもええなあ。この細長いお皿には卵焼きや魚なんかどうや? 小さい小鉢に少しずつ盛って、お盆かお重みたいのに並べたら、素敵やと思わへん?」

「ああ、いいですねえ・・・なんか聞いてるだけでおいしそうです!」

「そやろ?! うん。なんか、うち、やる気が出てきたでえ!」
「ふん。(笑う)いいですねえ」
「なあ!」


キコがうれしそうに微笑んだ。







最近、キコは少し疲れていた。

当初、考えていた小さな街の喫茶店からは逸れに逸れて、どんどん内容が変わっていく。
寅は、ただの街の喫茶店では気に入らないのだろう・・・。
本当のところ、キコにとっては、それは少し重圧でもあった。どう考えても、特別なことなんて浮かんでこない。

ここのところで、やっとキムさんが打ち立てたコーヒーやココアの輸入会社「キコ商会(Kiko & Co.)」を立ち上げ、許可が下りて、いよいよ仕事に結びつこうとしている。
しかし、それだって、一年したら、キコが受け継がなくてはならない。

様々な重圧に心が負けそうになる。
頑張ろうとしても、気持ちが重くて動けなくなってしまう時がある・・・。




でも、今日は、ここで目にしたこの器たちがキコの心を奮い立たせてくれた。

自分にできること。
それがここにはあった。




「うち、やってみるわ。この限定ランチにコーヒーつけて・・・。そんな、小さなことからお店の特色をつけていくわ」
「そうですね!」


キコはキムさんを見てにっこりと笑った。







江ノ島に近い洋館では、梁、階段の手すり、鴨居、そして器を手に入れた。

帰りは江ノ島の風に吹かれて、新しい仕事への意欲がまた内側に漲って、キコは晴れ晴れとした気分になった。




「キコはん。なんかうまくいきそうですね」
「そやな」

「今日は一杯飲みましょうよ」
「うん! そやな。これからのうちらの成功を祝して。飲むか!」


キコとキムさんは江ノ電から見える海を眺めながら、意気揚々と帰った。











夜になって、キコがほろ酔い加減で、ベッドに寝そべっていると、電話が鳴った。



「もしもし? 寅ちゃん?」
「どうしたの? 遅かったね。何度か電話したんだよ」
「うん、ちょっとねえ・・・。携帯に電話してくれればよかったのに」
「うん・・・。何してたの?」


ああ、寅ちゃんはうちが家にいるのを確かめたかったんや・・・。



「なんか声がさ・・・。ずいぶん、機嫌がいいね」
「うん? うん。ちょっと一杯飲んできた」

「ふ~ん・・・。誰と?」
「キムはんに決まってるやん。ここには、あん人しか、うちの知り合いはいないやろ?」

「ふ~ん・・・。何、飲んだの?」
「ビール」
「どこで?」
「焼き鳥屋さん・・・。ものすごう煙い店。二人とも燻されて臭くなったさかい、笑ってしもた」
「へえ・・・」
「でも、おいしかった」
「ふ~ん・・・」

「仕事はうまくいってるでえ」
「そう」

「今日もな、キムはんと一緒に、お店の内装に必要な廃材を江ノ島まで手に入れにいったのや。江ノ電ていう電車に乗っていくのやけど、お天気やったから、線路脇のアジサイもキレイやったし、海もよう見えて、二人して「こんな日は遊びに行きたいなあ」て言ってた。(笑う)江ノ島てな、ここからちょっと行ったとこ。海の景色がええでえ。今度、こっちへ来たら、一緒に行こ。ああ、車も買う予定やから。軽自動車やけど、営業に使おうと思うてるの。それに乗って、寅ちゃんも連れてってあげる・・・」

「うん・・・」

「本日の詳しいことはメールで送るわ」
「・・・わかった」


「寅ちゃんも撮影うまくいってる?」
「うん・・・。それは大丈夫」

「そうか、よかった」
「・・・キコ・・・」
「何?」
「・・・」
「何やねん?」

「うん、まあいいや」

「何やねん。言うてえ。どうしたのん? なんか元気ないで」
「そんなことはないけど。キコは楽しそうだね」
「う~ん、まあねえ・・・」

「キコだけ、元気だ」

「そうでもない・・・。結構、頭も使うし。うち・・・寅ちゃんみたいに事業向きやないからね」
「・・・」
「どうした? やっぱり、そう思うてた?」
「・・・そんなことはないよ」
「でも・・・これでも、なんとか頑張ってるで」
「うん・・・」



「キコ?」
「何?」

「今・・・幸せ?」
「・・・う~ん、そうやねえ」


キコの声はしっとりとやさしく寅の耳に届いた。
しかし、その響きは、なぜか今日のヨンジュンにはしっくりいかなかった。



「そう」
「どないした?」

「うん? 別に。まあ、いいよ。もう眠くなってるんだろ?」
「ようわかるねえ」
「酔っ払ってるから」
「ごめんなあ」
「いいよ。じゃあまた」

「寅ちゃん・・・」
「・・・」

「明日、メール送る。明日の朝一番で、メールするから」

「うん、わかった。じゃあ」


寅はそう言って電話を切った。





キコはちょっと甘えた声で話をしていたが、寅の声は少し硬かった。
最後の言葉も不自然に硬く、キコの耳に残った。


どうしたのやろ・・・。



あんたの気分を悪くすること、言うた?


ああ・・・。





キコはちょっとため息をついたが、今はほろ酔いで、それ以上のことは考えられなかった。








続く・・・。<


2010/11/27 00:45
テーマ:【創】キコはん カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】キコはん14「途中経過報告します」


 



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これはキコはんのテーマで5年やってます^^;







こんにちは^^

BYJシアターです。

お久しぶりです^^

皆さん、お元気でしたか?

前回の頃は、ヨンジュンがいなくて寂しい~って
皆書いていたけど、

今は幸せ~っていう人が多いのかな^^


イベント、フォト関係^^ ドリームハイ製作発表会のツアと盛りだくさん^^




では、BYJシアターです^^

今日もキコはんの続きです^^



前回のホワイトデイで、
「喫茶店」を始めたいと言ったキコのその後を
心配している方もいるでしょう^^

ということで、


本日は、

キコシリーズ⑭「途中経過報告します」をお送りします。

何分、途中経過ですので・・・^^


この次の回が・・・またまた私の心に残る回です^^

でも、その前に途中経過も聞いてあげてくださいね^^







ここよりキコはんの報告です・・・。
お楽しみください。




キコシリーズ⑭
「途中経過報告します」
(2007.4.7)



「キコはん! こっち!」
「あ、キムさん! おはよう」





「今日は、ご足労いただきまして」
「うううん。あんたもたいへんやなあ。あっち行ったりこっち行ったり」

「荷物を持ちましょう」
「おおきに」

キコがキムさんを見て、にこっと笑った。



ヨンジュンが撮影のため、ソウルに戻るので、キコの喫茶店についての途中経過を聞きたいと、キムさんとキコを呼び出したのだ。

今、キムさんが運転する車は、ヨンジュンの住むソウルのマンションへ向かっている。


それにしても。
エライ事になった・・・。

それが、キコの偽ざる心境だ。

キコが喫茶店を始めたかったのは、寅ちゃんに会いに行く時間を作りやすくするためだった。だから、小さくても気持ちのいい感じのお店。たまに、お姉ちゃんが手伝いに来てくれて・・・そんな店を考えていたのに、先日の電話で、ちょっと寅ちゃんに漏らしたがために、事は大事になってきている。

電話から3日めにして、寅は、さっそくキムさんを日本に送ってくれた。そして、市場調査をさせた・・・。キムさんが日本に来て、キコを助けてくれるのは、うれしい・・・。なんといっても、男手がないから、不動産を決めるにも、姉と自分だけでは下手なものを掴まされる可能性も無きにしも非ず。

ところが、キムさんが来て、よくよく話をしてみると、「やっぱり・・・」が的中した。寅の頭の中にある構想とキコがやりたいことが決定的に違う。



「なあ、キムはん。ヨンジュンはんは、なんていったか、わからんけど、うちがやりたいのはな、ホンマに、こんまあ~いお店や。うち一人で切り盛りでける喫茶店。おいしいコーヒーと、トースト。ほら、トーストの上に、ツナやらが載ってて・・・ああ、ピザトーストもええな。それにサラダがついてくる程度の店や・・・。あん人、「喫茶店」ていう日本語がわからんのかな・・・。カフェ・レストランと間違えてるのと違うかな。な~んか怪しい・・・。ゴリラとかそんなこと、考えておへん? まず、それは無理や。うちには、それだけの資金がないよって。それに、事業を始めたいというより、ヨンジュンはんに会いに行きたいという気持ちが優先にしてるのや、うちは。わかる?」

「・・・はあ・・・」

「やっぱり。あんたも日本に送られて、困ったな」
「う~ん・・・」

「どないする?」
「う~ん・・・」

「なあ・・・」
「う~ん・・・」

「ホンマに・・・」
「う~ん・・・」

「ねえ、あんた、牛?」
「う~ん・・・え?」

キコが笑った。






キコが車の外のソウルの街並みを見ている。


「今日は、ヨンジュンはんは?」
「ロッテホテルでの撮影を終えたら、いらっしゃいます」
「ふ~ん、そうか・・・太王記やないから・・・」
「ホテリアです」
「ああ、ホテリア。成功してほしいなあ・・・うち、ドンヒョクが好きなんや」

キコが笑った。


「あ、僕もです」
「ホンマ?」

「キコはん社長、僕の報告書、見てくれましたね?」
「社長はつけんでええよ。見たけど・・・あんた、ホンマに頭ええなあ・・・」
「まあ・・・」

「ソウル大学だったりして」
「その通りです」
「・・・へえ・・・尊敬・・・」
「何言ってるんですか! 二人で頑張りましょう!」

「うん、おおきに・・・。でも、あんた、はずれくじ引いたな・・・うちに関わったばっかりに・・・BOFで、仕事でけんようになった」

「大丈夫ですよ。BOF付キコはん専門ですから・・・ほら、スターのマネージャーと同じですから」
「でも、スターやないもん・・・すまんなあ」

「そんな。軌道に乗ったら、僕はソウルに戻りますから。コンピュータの画面を見れば、いつも心はキコはんと一緒です」
「そうかあ・・・うん・・・一緒やね。心強いわ」




今回の旅費は寅が出してくれたが、この急なお呼び出しで、キコは慌しく旅館を辞めなければならなかった。
もう有給は使い切っていたし、昨年は寅と会うために、結構うそをついて休んでいたから、もうこれ以上、言い訳をして、仕事を続けていくことは心苦しい。

いずれにせよ、喫茶店が開店するまでの間、東京に出て、喫茶店経営者の講座を取りたいと思っていたし、ちょうどそれが4月の半ばに開講するので、思い切って旅館を退職することにした。

急な退職に周りの皆も驚いたが、もともと風来坊のように、旅館を渡り歩いていたので、案外簡単に辞めることができた。
旅館を去る最後の日には、仲間だったゆっこや、先輩格のゆき、芸者のしな奴、おりんと、近くの居酒屋で、夜通し飲んで送別会をした・・・まあ、始まったのが、仕事が終わって、12時を過ぎてからだったが・・・。

新たに喫茶店をやるという話に皆は頷いたが、「どこで?」というゆっこの問いかけに、「・・・鎌倉」と答えたキコに、皆一応に、「なんで~?」と驚いた。
キコは姉の家から近いからと答えたが、西日本を離れ、そんな遠い所へ行ってしまうなんて、皆感慨無量だった。

ゆっこは、近くながら旅館よりそっちを手伝いたかったと言ったし、先輩のゆきは、パンの先生の資格があるから、近くなら一緒に働いて、毎日できたてのパンを店に出したかったと語った。

仲間との別れは寂しくて、お酒の力も借りて、皆で泣いたが、キコには、もう次のステップが着々と用意されていたので、戻ることはできなかった。現実には、鎌倉には知り合いがいない・・・。姉も大磯だ。でも、ヨンジュンさんがキコのために、一年間、キムさんを貸してくれる。これに報いて頑張ろうと心に誓った。


ソウルに出発するために、急いで荷物作りをして、とりあえず姉の家に送り・・・って、そんなに荷物も持ってなかったので、引越しは
簡単だった。姉も・・・キコのヨン様グッズがやってくるのを楽しみにしていたので、喜んで荷物を引き受けた。



今、キコがソウルへ来ている目的を姉も知らない。

姉には、3日ほど休暇を取って、ソウルへ行ってくるとだけ告げた・・・今まで働きづめだったからね・・・とうそをついた・・・。姉は住まいのアパートを決めてから、遊びに行きなさいと言ったが、まあ、それが本筋なのだが、忙しい寅ちゃんのスケジュールに合わせていると、それもままならなかった。

まずは、寅ちゃんありき・・・それがキコのモットーだから。







「あ、あそこがヨンジュンさんのマンションです」
「へえ・・・」
「今、裏口に止めますから」


キムさんが小さなキコの荷物を持って、一緒に寅のマンションへ入っていく。鍵を開け、中へ入った。



「セコムのメーキングで見た通りや・・・」
「そうですか?」

「うん・・・意外に・・・狭いな」
「・・・そう?」

「だって・・・43億円の男やろ?」
「でも、一人暮らしだから・・・まあ、お付きのスタッフも泊まってますけどね」
「うん・・・」


「お茶入れます」
「すんまへん。ソウル大出のキムさんにそこまでしていただいて申し訳おへん」
「キコはん。ふざけないでくださいよ」(笑う)
「だって、そうやろ?」

「あと、ロフトのお餅、キコはん、好きだから」
「あ、おおきに。うち、ちょっとお腹が空いてたのや」
「ああ・・・なんか食事とります?」
「ええよ。そのお餅で」

「でも、ヨンジュンさんはあちらで召し上がってくると思うんですよ」
「そうかあ・・・どないしょう」



二人は冷蔵庫を開けた。


「お水と、レタスとヤクルト・・・。どう思う?」
「う~ん、レタスのヤクルトがけですか?」
「う~ん・・・覗くんやなかった・・・」


冷蔵庫を閉じる。


「見なかったことにしよ」
「ですね・・・」

「あん人、何にも買い置きしてへんのかいな」
「まあ、今はチェジュですからね」
「そやね・・・。ここ開けてみる?」
「いや・・・」
「何?」
「いや・・・どうぞ」


キッチンの上の扉をバッと開ける。たった一個隅に置かれたもの・・・。


「わ! ロッテチョコ。隠れて食べてはるのかな。かわいいな」
「キコはん!」

「こっちも開けてみる?」
「まあ・・・どうぞ」

「わ! あれ・・・これ、なあに?」
「これは、ふすま入りのコーンフレークですね」
「ふ~ん・・・まだ、食べられる?」

「ええと、7月までです。でも、牛乳がありませんよ」
「そうか・・・。あ、あとで牛乳買って来なあかんな」
「あ、そうですね」


「なんか食べにいきますか?」
「そやね。うん、あん人のところにカップラーメンがあるはずがないもんね。体に悪いもの、嫌いなんやから」(笑う)
「ですね」(笑う)

「なあ、なんか体に悪いもの、食べにいこ。あん人とは絶対一緒に食べられないもん」
「(笑う)いいですよ」
「よかった。気が合うて」(笑う)




二人は部屋に鍵をかけて、近くの食堂まで出かける。お腹を満たして帰ってくると、部屋の電気がついていた。



「マズイなあ・・・帰ってはるのかな・・・」
「ですねえ・・・。キコはんにお会いするのが久しぶりなんて、すぐ帰ってきちゃったんですね」

キムがキコを見ると、キコはちょっと赤い顔をした。


「どうしました?」
「え? なんでもない」

キコは、ちょっと寅の吐息を思い出した。耳元に息がかかったような気がした。


二人は、マンションの扉の前に並ぶ。

「やっぱりピンポンするんですよね」
「そやな・・・」
「ええ」

二人はじっとドアを見つめて、立っている。


「なあ、ピンポンして」
「いや、キコはんが」
「あんたがやって」
「いや・・・」

キコが笑った。

「うちら、あほやな。なんで、緊張せなあかんのん」


キコがチャイムを押す。

中から、寅の声が聞こえる。

「はい」(ちょっと低い声)
「キコどす」


少し間があって、ドアが開いた。
寅が顔を出し、キコを見た。

「・・・遅くなりました・・・」
「久しぶり・・・キムさんも入って」


二人は、ヨンジュンの目がちょっと恐かったので、硬くなって中へ入る。
寅の後ろをキコが追うようにして歩く。


「なあ、寅ちゃん・・・」
「荷物置いてどこ、行ってたの?」

「うちが、お腹が空いてしもたから、一緒にご飯食べに連れてってもらってたのや」
「ふ~ん」

「(小さな声で)ふ~んて、何?」



「ヨンジュンさん、では、キコはんプロジェクトの途中経過を報告します」
「キムさん、もう遅いから帰っていいですよ」
「でも・・・今日はそのご報告で」

「君からはいつも報告書をもらっているし・・・だいたいわかるので、今日はキコはん個人の進行状況を聞きます」
「そうですか・・・」
「遅くまでありがとう」

「あのう・・・キコはんをホテルまでお送りするのは・・・」
「僕がします」
「でも・・・」
「大丈夫」
「あ、はい。では・・・じゃあ、キコはん、また明日・・・」
「ほな・・・さいなら」

キムが頭を下げて、玄関へ向かう。キコが見送りに出てくる。


「キムはん、すんまへん。食事に付き合うてもろて」
「(小さな声で)なんか、怒ってます?」

「(小さな声で)さあ・・・一緒にご飯、食べたかったのかもしれへんね。それで急いで帰ってきたら、もぬけの殻で・・・」
「ああ・・・かも」(笑う)

「じゃ、また明日・・・。今日はおおきに」(笑顔)
「では、失礼します」

キムさんは軽く会釈して帰っていった。






「帰られたでえ」

奥のソファに座って、寅がキコを見ている・・・。


「なあに?」

「せっかく早く帰ってきたのに・・・いないんだもん」
「ごめんな」

「何買ってきたの?」
「牛乳とパン。冷蔵庫、借りるえ」
「うん」


キコは買い物袋から、牛乳とパンを出して冷蔵庫に入れる。

そして、寅の所へ行って、膝元に座る。


「ごめんなあ・・・ホンマにお腹がすいてたのや・・・。うちかて、あんたにすご~く会いたかったえ・・・」(微笑む)

「なんか芝居がかってる」
「そうかあ?」(笑う)

「ふ~ん、おいで」

寅がキコを抱き上げる。


「なあ、ご飯食べてきた?」
「うん」
「ならええ・・・」

「久しぶりだねえ」
「うん・・・」

寅がキコにキスをした。


「う~ん・・・お仕事の話が聞きたくて、呼んだのやろ?」
「あとで・・・」
「もう・・・違うたの?」

「あとで、聞かせて」

「うん・・・ホンマは会いたかっただけ?」
「・・・違うよ」

「そやろ?」
「・・・ふん」(笑う)


「なあ、送ってくれはるの?」
「う~ん、朝方ね」
「・・・(笑う)」

「いいだろ?」
「うん、ええよお・・・」






二人は風呂上りで、後ろで髪を縛って同じ髪型をして、ベッドに寝転んでいる。


「なあ、ベッド以外にも寝転ぶとこがあるとええなあ」
「そうだね。でも、基本的には、僕はあまり寝転ばないから」
「そうか。きちんとしてはるもんね。まるで、うちがあんたの正しい生き方を壊してるようやな」
「(笑う)それが楽しい」
「ホンマ?」(笑う)

「じゃあ、真面目な話をしようか」

「では、社長、こちらをご覧ください」
「どれ?」
「これ」
「ああ、キムさんからこの間、報告受けた分ね」

「そうか。あん人、すごいなあ。ソウル大学卒やて。日本語も英語もでけて、頭がすごくええのんよ。計算なんかパッとでけてしまうのや」

「・・・」

「でも、寅ちゃんが一番!一番やで」
「そう?」(うれしそうに笑う)

「そんでな。あんたがややこしいこと、言い出すから・・・」
「そんな言い方ないだろ?」

「・・・ごめん・・・。まあ・・・結論から言うと、うちのところは、自然食はやらへん」
「なんで?」

「だって、まず、それに準備をかけてる時間がない。プラス、日本でも自然食て、看板出してるところもあるけどな、客の入りが今一つや。いつかはやってもええけど・・・今は、まず、商売を立ち上げたいのや」
「そうか・・・残念だな」

「そんでな。はい、ここ、見て。これや。コーヒー豆の輸入を始めようと思うのや」
「どこから?」
「アメリカ。こっちのパンフレット。これは、キムさんがLAに留学してた時、飲んで感激したていうとこのパンフ。あの感激は、韓国でも日本でも今のところ、ないて。あと、こっちがあ・・・どこやったかいな・・・ええと」

「サンフランシスコって書いてあるよ、ほら」
「あ、そうそう。西海岸で人気のコーヒー店の豆ね」
「ふ~ん」

「お薦めは、LAのほうかな・・・明日の朝、飲んでみて」

「家賃が高うて、大きな店舗が借りられないこともあるけど。うちもあんたのところへ遊びに来たりして、動いてるやろ? あんまり、店の規模を大きくするのはよくないと思うのや。それでな、発想を転換して、コーヒー豆の輸入をしながら、店は細々とやっていこうということになったのや。あ、こっちはココアね。これも見本持ってきたけど、おいしいでえ」

「で、どこで売るの?」

「インターネット。店をやりながら、営業して、他の店にも卸したいと思うているのや。でも、まずはインターネットかな。ここの豆はまだ、日本からは買い付けに入ってないから、キムさんが仮に抑えた・・・。小さい会社やけど、もう創業して50年。良心的なところや。ああ、ゴリラやロフトに卸してもええよ。有機栽培やし」

「(笑う)もう仕事始めちゃうんだ」
「そう。いかがですか? ヨンジュンさん。考えてね」

「へえ・・・思ってもいない展開だな」
「そやろ? うちが思いつきで言っちゃうと、あん人が形にしてしまうのや・・・。ホンマにでける人や。なあ、大事にしてあげてや」
「(笑う)・・・」

「何?」
「へんなの」

「だって。本来なら、あんたのとこで、ちゃんとしたマネージメントの仕事するはずだったのやから、一年でもこっちを手伝うてもろうて、ホンマに悪いと思うてるのや」
「うん」

「それにな。これは、インターネットででける商売やから、あん人がソウルに戻っても手伝うてもらえるし」
「うん・・・」

「まずは投資することにした。ま、ちょっと賭けやけどな。初期投資分は、うちの貯金でなんとかなると思うし、駄目なら、またもとの仕事に戻ってもええから。喫茶店より豆の輸入を先行する形で始めようと思う。」

「・・・うん。わかった。ところで、キムさんから聞いてない?」
「何を?」

「うん、無担保・低利子で、僕がお金を貸すって言った話」
「・・・知らん・・・」

「そうか。自分で話せということかな。一応、必要経費をキムさんに計算してもらってるんだ。それで、僕がお金を貸す。これはあげるんじゃないからね。ちゃんと返して。その代わり、お得なようには、考えているから」

「・・・」

「いいだろう? キコ一人じゃあ、銀行から借りるの、たいへんだろ? キムさんも外国人だし」
「そんな、そこまで手伝うてもらうなんて・・・。実際、キムさんの人件費かて、実はすごい金額や」

「まあね。だから、成功させてください」
「・・・」
「ちゃんと、毎月、報告書、書かなくちゃ駄目だよ」
「うん・・・」
「いいね」
「うん」
「なら、いいよ」

「なんていったらええのか・・・ホンマにおんぶに抱っこやな・・・」

「嫌?」

「ホンマはね。自分ででける範囲でやりたかったのや。小さな、気軽な街の喫茶店で、お姉ちゃんに手伝いに来てもろて、儲けなんてあんまり考えへんような・・・。喫茶店には、お姉ちゃんの趣味のビーズのアクセサリーとか置いて。近くのおばはんやおじちゃんが気楽に入れるとこ・・・。決まったお客はんが毎日、楽しみで来てくれて。月に何度か、お姉ちゃんの編み物教室やって。月一ぐらいでコーヒー・紅茶の入れ方教室でも開いて・・・そんな感じの店」

「・・・」

「それが、キムはんが来て。あんたが事業として大きなもんを考えているから、それに則って、形にしていく。あん人、頭がええから、どんどん形にしてしまうねん・・・話がどんどん大きくなってきて・・・それで、気がついたのや。あんたの頭の中。うちとは違うて。それで、キムはんに話して、うちの範囲ででける最大限にいい方法を探したのや」

「・・・実は困ってた?」

「うん・・・。でもな・・・。見方を変えたら・・・まだ、うちも隠居の年やないんやから、ここで、苦労してみるのもええかなと思うて。それで、コーヒー豆の輸入を始めることにしたのや」

「・・・ホントによかったのかな? 我慢してない?」

「うん。大丈夫。喫茶店を開店するまでには、ホンマは一年か半年、ほしいとこやけど・・・ぎりぎり、4ヶ月で始めようと思う。その前に輸入のほうがでけるように準備して」

「・・・」

「うん・・・。今、走らんで、いつ、走るていうのやって、感じかな・・・座り込んで、考えてても仕方ないしな」

「大丈夫?」

「・・・男の人とうちみたいな女では、少し考え方が違う・・・。でも、寅ちゃん! 心配せんで。これで転んでも、次は、また違うところから、考え直してやってみるから」

「・・・いいの?」

「うん」

「君にかえって苦労をかけちゃったね・・・」

「苦労と思わんでやってみる。あ、ココアを飲んでみる? 一缶持ってきたのや。おいしいんやで。コーヒーは夜やから、飲まないほうがええと思うから。そうだ。JPはんと飲んでみて。よかったら、キコ商事から、買うておくれやす」

「うん」

「今、作ってあげるね。ココア」

キコがベッドから起き上がって、バッグからココアの缶を取り出す。
笑顔で寅を見ながら、キッチンへ向かう。



「なあ、ところで、名前、考えてくれはった?」
「まだ」

「そうか。まだ、時間はあるさかい。でも、『サラン』とかは駄目やで。日本では、スナックみたいなとこについてるからな。明るい、おしゃれな感じにしてや。緑の木陰みたいな感じのな」

「難しいね」

「ココア、飲みながら考えて」



キコがキッチンでココアを作っている。




「はい、どうぞ。一番最初のお客さんやね」
「ふん。(笑う)では」

「う~ん、まろやかでおいしいよ」
「そやろ?」

「へえ・・・」
「400円だす」

「そんなにするの?!」

「まさか、6、70円くらいかな。使うミルクによって値段が変わるけど」
「へえ・・・」
「へえやろ?」(笑う)
「うん」(笑う)


「明日、出かける前にコーヒー入れてくれるの?」
「うん」
「そう」


「なんか、このココアで安らかに寝られそうだな」
「ね・・・」

「それに、キコもいるし」
「・・・」(笑う)





二人はベッドに入った。


「じゃあ、初期投資をしよう。キコの学費と店と住まいの敷金。それから・・・喫茶店を始めるまでのお給料分を出してあげよう」
「そんなに」

「もちろん、貸すんだよ」
「なんだあ」

「それでいいだろう?」
「うん。それでええ・・・」


寅がキコを抱き寄せた。



「なんか気分がいいなあ・・・」

「なあ、寅ちゃん、うちも頑張るさかい・・・寅ちゃん? なあ、寅ちゃん、聞いて。もしもし?」

キコが揺り起こすが、寅はもう寝息を立てて、眠っている。

  

「全く。何時に起きるのや・・・」
「・・・送っていくよ・・・」

「何時?」

「・・・」

「寝言や・・・ふん。(笑う)遅刻しても知らんよ。5時。4時にしておくか」


キコが目覚ましをセットする。


「おやすみ」



キコは、軽く寅にキスをして、スタンドのライトを消した。






THE END



いよいよ、キコはんの仕事も動き出したようです・・・。







2010/11/07 12:50
テーマ:【創】キコはん カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】キコはん13「ホワイトデイ」


 



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これはキコはんのテーマで5年やってます^^;







こんにちは^^

BYJシアターです。

久しぶりのキコはんですが^^

キコはんのシリーズを追っているので、
本日は、2007年3月14日となります。

古いですね~~~~^^


でも、ここはキコはんの生活が変わっていく転機。

つまり、皆さんが知っている最近のキコはんに変わっていく大切なところなんで^^
「ホワイトデイ」ではありますが^^
ここにアップしますね~^^



いつもより短いですが、お楽しみください。




ここより本編。



~~~~~~~~~~~~~~






キコはんシリーズ⑬ 
【ホワイトデイ・・・】
(2007.3.14作品)








♪~~

いつも、群れ飛~おおおぶ~カモメ~さえ~~~
とうに忘れない^^恋い、なあのおにい~~~~

今夜も、寅ちゃんが、寅ちゃんが~ひとりっぽっちで泣いて~~い・い・いるう~~~

忘れないでよ、キコはんがいるわ~
連絡ちょおおだい~待つう・港~~~♪~~

  



あ~あ、疲れた!

もう11時50分かいなあ・・・。

体がシンドイわ・・・。



え~とまずは、コタツのスイッチ・・・OK!

PC、チェック!



そうや。コーヒーにキャラメルシロップを入れて・・・と!
これ今、マイブームやあ・・・ああ、おいしい!

こんな夜中でも、うまいもんはうまい・・・て・・・。

コーヒー飲んだら眠れんて?
寝たらあかん・・・^^
金さん、銀さん、今日も見るで。
(注:2007年3月、この頃はテサギのメイキングDVDがありました^^)


そうだ。

この間の鎌倉の不動産屋さんのメール、チェックせんと・・・。

ええと・・・。

ああ、北鎌倉はないか・・・。

皆、高いなあ・・・。う~ん、安くてええとこ、ないかな・・・。

  



あ、電話や。

キ:(PC見ながら) 林だす~。
ヨ:こんばんは!

キ:!
ヨ:もしもし?
キ:もしもし・・・。

ヨ:どうしたの?
キ:びっくりした。
ヨ:なんでえ?(甘い声)

キ:ちょっとな・・・あんたのこと、考えてたから・・・。元気そうやない・・・金さん、銀さん見たでえ~。
ヨ:金さん?銀さん?(笑う)

キ:日本では、皆そう呼んでるよお。それでええのんよ。前にな、百歳すぎた長寿の双子のおばあちゃんたちがいたんよ。それが金さん、銀さん。だから、おめでたいネーミングやで。
ヨ:そうか。(笑う)

キ:仕事、楽しそうでよかったな。
ヨ:うん・・・。

キ:今日なあ・・・ああ、もう昨日や。HEROのコンサート、行きたかったのやけど、もう休みすぎやろ・・・仕事休めんかった・・・。
ヨ:そうか。いろいろ休ませてごめん・・・。

キ:ええんよ・・・寅ちゃんのほうが大事やから・・・。
ヨ:うん・・・。(ちょっと考える)

キ:そうや、あんたから電話くれたのやない・・・何?
ヨ:うん? 12時すぎたから、かけたんだよ。

キ:夜中やから?
ヨ:(笑う)そうじゃないよ・・・。

キ:何? ああ・・・ホワイトデイや・・・。
ヨ:そう・・・。

キ:300本のバラでも送った?
ヨ:まさか。
キ:じゃあ何?
ヨ:(困る)この電話・・・。
キ:・・・コマウォヨ。気がついてたで。
ヨ:やだなあ・・・。

キ:ちょっと意地悪した。(笑う)
ヨ:全く。僕のこと、考えてた?
キ:うん・・・寅ちゃん、きっと寂しがってるなあと思うて。
ヨ:そう?
キ:仕事は順調でも、こういう日は、きっと思い出して寂しがってるよね・・・て。
ヨ:キコは寂しかったんだ。(笑う)
キ:それ、ホンマ・・・。
ヨ:・・・。

キ:あんたも忙しいし、うちももう仕事、簡単に休めんようになったし・・・。
ヨ:そうか・・・韓国には、しばらく来られないね・・・。
キ:うん・・・。それでな・・・今、考えてんねん。もっと寅ちゃんのとこ、通えるようにする方法・・・。

ヨ:じゃあ、自家用飛行機、プレゼントするよ。ホワイトデイだし。(笑う)
キ:それ、ええな。でも、例のプロペラ機はだめやで。昨日も、日本で事故があったさかい・・・ジェット機がええ。
ヨ:じゃあ、ジェット機の模型ね。親指姫になってね。

キ:もう。(笑う)なあ・・・うちな・・・今、考えてることがあるんや。
ヨ:何?

キ:・・・引っ越し・・・。
ヨ:引っ越し?

キ:うん、もっと 出やすいところへ引っ越す。
ヨ:仕事をやめるの? でも、仕事は大事だろ?

キ:そう、食べていく手段は持ってないとね・・・。それでなあ・・・うち、調理師の資格は持ってるのや。長く仲居しているやろ? 前いた旅館で、板長さんがな、うちが3年間修行したって証明書書いてくれてな、調理師の資格試験受けられたのや。だから、資格は持ってるのや。でも、今までは使う気なんてなかったさかい、飾りもんやったけど、これ、使えるなと思うのや。

ヨ:お店でも始めるの?
キ:うん、軽食出す喫茶店。それなら、なんとか資金も用意でけるし。自分の店なら休めるやろ?
ヨ:でも、そんなに休んでたら、潰れるよ。(真面目に言う)

キ:寅ちゃんは実業家やからね・・・中途半端な仕事は許さへんね・・・。それでな、大磯のお姉ちゃん、知ってるやろ? もう娘も結婚しちゃってるさかい、手伝おうてくれるて・・・。寅ちゃんのことは、言ってないけど・・・一緒にやってくれるて。

ヨ:ふ~ん・・・じゃ、大磯でやるの?
キ:鎌倉・・・。
ヨ:なんで?
キ:寅ちゃんとの思い出の場所やもん・・・。



大磯で行われた姉の一人娘の結婚式に出席したあと、キコは鎌倉を一人ブラブラと歩いていた・・・。その時、声をかけてきたのが、ヨンジュンだった。あれはもう、2005年の11月だから、ずいぶん前のことだ。(キコはん④「流鏑馬でござる」)




キ:寅ちゃんが日本に流鏑馬を習いに来てたとき、鎌倉で会ったやろ。
ヨ:そうだったね。
キ:あれからずいぶん経っちゃったけど・・・でも、今、太王記撮ってるんだもんね。長かったな。
ヨ:そうだね・・・大河ドラマのエキストラもやったし、楽しかったな。
キ:うん・・・寅ちゃんとの日本の思い出の場所って、ここと京都と、鎌倉と渋谷。渋谷は高くてだめやし・・・京都はお姉ちゃんがいないし。鎌倉がええねん・・・あの時のこと、思い出すと今でも楽しくなるねん。(胸も痛くなって、あんたが恋しくなるけど・・・)思い出の場所や。

ヨ:そうか・・・お姉さんも来やすいんだね?
キ:うん。お姉ちゃんはね、週2、3回お願いして、あとは自分ひとりでやる。寅ちゃんのとこ、遊びに行くときは、お姉ちゃんに頼めるし、ええやろ?

ヨ:知らない土地で、一人で寂しくないの?
キ:それは大丈夫。今までも一人でやってきたから。
ヨ:でも、仲間もいないよ。

キ:そんなん・・・恋のためやあ。(笑う)
ヨ:うん・・・(考える)なんか、一人で苦労したら、かわいそうだな・・・。

キ:寅ちゃん、うちももう独立する年頃や。このまま、一人で仲居をしていってもつまらないやろ? そやから、寅ちゃんを「ダシ」にして、考えたのや。決断するきっかけが必要やからね・・・。
ヨ:そう・・・遠くて見に行ってあげられないからね・・・。それに・・・鎌倉に僕が遊びに行くことは、もうできないかもしれないよ。

キ:それでもええねん・・・。うちがどこに住んでもあんたが遊びに来ることは、もうでけんよ・・・。うちが行く。うちが遊びに行くから!

ヨ:うん・・・。すごい決意だね。協力できることはするよ。
キ:おおきに・・・。でも、花輪ももらえんな。目立ちすぎる。(笑う)
ヨ:うん・・・。寅次郎で出すよ。(笑う)
キ:それはもっとアヤしい。
ヨ:そうだね。(笑う)



キ:あんたがホンマに元気で活躍しててくれて、うちはうれしい・・・。
ヨ:キコが元気を送ってくれるからだよ。
キ:そうか・・・そういうことにしておこう・・・。疲れたやろ? もう寝たほうがええよ。

ヨ:そんな、久しぶりじゃない・・・。でも、環境のいいところがいいよ。店を出すなら・・・。
キ:大丈夫やて。
ヨ:大丈夫じゃないよ。まずはどこに店を出すか、よく考えないと。

キ:まあな・・・一人でやるのやから、狭くてええねん・・・。静かで感じのええとこ・・・。緑がいっぱいあるともっとええけど・・・そんな場所はないから・・・折り合いのつく所やね。鎌倉の帰りは、北鎌倉から帰ったやろ? 寅ちゃんと二人で歩いた・・・。だから、北鎌倉も考えてるのや・・・。


ヨ:仕事が休めないでどうやって探すの?
キ:お姉ちゃんと不動産屋さんに頼んでるのや。住まいはアパートでええし。
ヨ:・・・。

キ:寅ちゃん?

ヨ:なんか危なっかしいね。

キ:大丈夫やて。
ヨ:駄目だよ。

キ:大丈夫やて。
ヨ:駄目だ。

キ:・・・。
ヨ:それじゃあ駄目だよ。(ちょっと怒った声)

キ:・・・。
ヨ:わかったよ。キムさんを送るから。

キ:え?

ヨ:いつものキムさん。日本にも住んでたし・・・キコとお姉さんよりずっといいよ。
キ:そんな・・・。
ヨ:彼に市場調査してもらってから、決めよう。
キ:そんな、大げさや。
ヨ:大げさでも、知らない土地だろ? 何があるか、わからないじゃないか。
キ:でも、そんな・・・ええよ、そこまでしなくても・・・。
ヨ:・・・・。
キ:・・・。


ヨ:キコ・・・ホワイトデイのプレゼント・・・そのくらい、やらせて・・・。


電話の中で、キコの呼吸だけ聞こえる。


キ:・・・。(泣く)
ヨ:・・・もしもし・・・?

キ:・・・。(ちょっとしゃくり上げる)
ヨ:・・・。

キ:(声を出して泣く)
ヨ:・・・。

キ:・・・(しゃくる)おおきに・・・。

ヨ:ちょうどいいときに電話して、よかったよ・・・本当によかった・・・。
キ:・・・おおきに・・・。


ヨ:本気だよね?
キ:うん・・・。うち、頑張るつもり。

ヨ:うん・・・できるよ、キコなら・・・。でも、こっちも忘れないでね・・・。
キ:うん、うん、忘れるはずないやんか・・・。
ヨ:うん・・・。

キ:あんたの気持ち、うちが忘れるはずないやない。
ヨ:・・・。

キ:うちは今、ホンマに、ものすごう幸せや・・・。







今日はありがとう。

すばらしいプレゼントやった・・・。


お互い、言葉にはしてないけど・・・
うちにとってはこれからずっと暮らしていく街になる場所やもんね・・・。

あんたが心配するのは、すごくわかるよ・・・。

でも、決めたからには、やるで。

見てて。

ちゃんとやっていくから!



寅ちゃんのキコはんや!

何があっても負けん!

見ててや!

キムさんが、日本へ来るの待ってるで。
うちの力になって!



ヨンジュンはん・・・。今日も仕事で忙しかったやろ?

でも、あんたが、水を得た魚のように、楽しげに頑張ってる姿は、うちの力になります。

あんたは今、ええ顔してはるよ。

うちも、あんたに負けんように・・・ううん、負けんようにやない・・・
あんたに恥ずかしくない生き方するで。

しっかりやっていくから!



寅ちゃん、ドラマが無事、クランクアップすることを祈ってます。
怪我なんか、せえへんようにね・・・。

いつも近くの八幡さんに拝んでるさかい・・・。


今日はおおきに!




愛してるで・・・・。







THE END


2010/10/17 02:07
テーマ:【創】キコはん カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター」キコはん12「キャデーさんでっか?」後編


 



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これはキコはんのテーマで5年やってます^^;






BYJシアターです^^


本日は、

キコはん⑫「キャデーさんでっか?」後編です^^



では、ここより本編。
お楽しみください!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



キコはん⑫
「キャデーさんでっか?」後編
(2006.12.31作品 時代背景も思い出してください^^)











「なあ、うちが運転したほうがええのとちゃう?」
「どうして? 僕のほうが上手でしょ?」
「だけど・・・ただ座ってるだけのキャデーさんなんて、変やろ?」


ゴルフ場内の二人乗りカートに、ヨンジュンとキコはんが並んで乗っている。


「別に・・・変じゃないよ。かわいいよ」
「何、言うてんの!」
「そういう格好も結構かわいいよ」
「そうかあ? コスプレに向いてるのかなあ?」

「着物も似合うし・・・きっとチマチョゴリも似合うよ」
「ふ~ん。(笑う)お口がうまいわあ」
「まあね」


寅がカートを止める。



「はい。キャディさん、よろしく!」
「はい。ヨンジュンはん」

「ドライバー、ちょうだい」
「ド、ドライバーでっか?」
「そうだよ」(笑って見ている)

「ふ~ん・・・どれや・・・」
「キャディさん、早く」


「いけず・・・」(呟く)

「なあに?」

「意地悪て言うたのや」
「ふん。(笑う)元気だねえ」
「・・・?」


「さっき、泣いたくせに」


そういいながら、ドライバーを選ぶ。


「泣かせてて、笑ってる・・・」(ちょっと睨む)
「勝手に泣いたんじゃない」


楽しそうに、ドライバーを振ってみる。


「もう、やや・・・」
「では、やります」
「どうぞ」

「じゃあね」



寅が大きくドライバーを振る。




「あ、上手!」
「ふふふ・・・」(笑う)

「だってえ。なんて言うたらええの? ようわからんわあ。あ、ナイス・ミートとか言うのかな・・・?」
「いい感じじゃない。キャディさん、ボールはどこ? 探して」

「ええ! うちが探すのん?」
「そうだよ。走らなくちゃ」

「ひ・ど~~~い!」

「いいよ。一緒に乗っていこう」
「当たり前や!」



また、二人でカートに乗る。



「天気がよくて、気持ちがいいねえ」
「ホンマ・・・」

「楽しい?」
「うん・・・」
「ホンマ!?」(顔を覗く)
「ホンマあ~」


キコが笑った。


「こお~んな広いとこで、二人きりなんて、最高やね」
「でしょ?」
「うん・・・」



「着いたよ」
「もう? ずっとカートに乗ってドライブしていたいわあ」

「ふふふ・・・。駄目~。ゴルフしに来たんだから」
「ホンマにゴルフが好きやね」
「まあね」

「うちとどっちが好き?」
「ゴルフ」
「・・・」

「2番目でいいって言ったのは、キコだよ」


そう言って、また、アイアンを探す。



「意地悪なことばっかり、言う・・・」
「最初に意地悪なことを言ったのは、君だからね」

「・・・」(ちょっと怒った顔をする)
「そんな顔しないでよ」

「あんた、根に持つタイプやね・・・」
「そうお? 記憶力がいいとも言うよ」
「ホンマあ・・・」



「ああ、ちょっと遠かったなあ」
「ねえ、失敗したん?」
「うるさい・・・」


寅は真剣にゴルフをやっている。



キコはちょっと口を尖らすが、真剣な寅の顔が素敵で、見入る。


「どうしたの?」
「別に・・・」

「じっと僕の顔を見てたから」
「・・・素敵やなと思うて・・・」
「ふん。(笑う)でも、また、外した」

「ホンマ? やっぱりうちと回るのって失敗やない?」
「ホントにそうだね・・・」
「・・・」

「でも、いいよ。ゴルフは付け足しだから・・・」
「うん・・・」

「ボールを取りにいかなくちゃ。ねえ、カートを運転してきて」
「うん、ええよ・・・」



寅が歩き始めると、後ろから、寅を呼ぶ声がした。




「ヨンジュン! ヨンジュン!」
「ああ・・・先輩・・・」


どうも俳優の先輩らしい・・・。


「どうだ、元気にやっているか?」
「おかげさまで」
「撮影が延びているんだって?」
「ええ、でも、順調です」
「うん、それはよかった。・・・一人でやってるのか?」
「え、まあ・・・」


「よかったら、一緒に回らないか? こっちは2人で回っているけど」
「ああ・・・。でも・・・今日はこのあと、またチェジュに戻るので・・・一人でさっと回ります・・・」
「そうか・・・。うん・・・。まあ・・・でも、一人じゃ寂しいだろ?」
「ええ、まあ・・・」



すると、キコの声がした。



「パリ・パリ、ヨンジュンッシ!」



先輩とヨンジュンで、キコのカートのほうを見る。



「新人さんかい?」
「え?」
「ずいぶん、ガサツな感じだな・・・。マネジャーに言っておくか」
「いや。僕が早く回るから、時間を見ててって言ったものだから」

「そう。(笑う)君はいつも優しいね。じゃあまた、今度一緒に回ろう」
「はい、ありがとうございます」
「忙しいところ、ありがとう」
「失礼しました・・・」


寅が先輩に頭を下げる。






「どないした?」
「先輩・・・一緒に回ろうって」
「ええ?」

寅が笑って、キコを見た。


「先輩がずいぶんガサツなキャディさんだねって。新人って」
「ごめん・・・」
「でも、よかったよ。断りにくかったから」
「そう、ならええけど」

「でも、ホント、早く回っちゃおう。誰に会うかわからないから」
「ホンマ! 危険地帯やねえ・・・」



寅とキコは、そのあと、真面目にどんどん次のホールを回る。






キコは、寅がゴルフをしている最中、カートの上にあった双眼鏡で、辺りを見回して遊んでいる。
すると、ゴルフ場の一角に、女の人の固まりがある・・・。


ええ?


キコがズームインしてみる。



あ!
ゆき姉さん・・・。



「どうした?」
「マズイわあ・・・」
「なんで?」

「ヨン様の家族が集まってるわ・・・」
「来てるの?」
「うん・・・それに・・・。うちの旅館の姉さんまで・・・」
「本当?」(笑う)

「笑い事やおへん。ああ、そうや。ほら、うちのあとに、あんたの部屋付きになった姉さんもいるのやでえ」
「それは・・・困ったね」(笑う)
「困るがなあ」



そう言って、またキコはゆきのほうを見る。
前列に立って、双眼鏡を覗いている・・・。


「参ったあ・・・」
「でも、こっちには入ってこられないからね・・・」
「でも、あっちも双眼鏡で覗いてはるのや・・・」
「・・・」
「丸見えや・・・」


「これが終わったら、切り上げよう」
「ええのん?」
「だって・・・それはマズイよ」
「・・・うん・・・」







「ねえ、ゆきさん、見える?」
「駄目だわあ。もう少し、倍率高いの持ってくるんだった・・・。失敗したわ」
「仕方ないわね。急にゴルフ場にきたんだもん」

「ねえねえ、ヨン様のチェジュ行きの便、わかったわよ」
「何時?」
「17時10分だって」
「私たちの便は一つ前だから、チェジュでお出迎えできるわね!」
「よかったあ!」

「ずいぶんたっぷり時間があるのねえ。 このあと、どこか回るのかしら・・・」
「ゴルフが好きだから、半日いるんじゃないのお・・・」
「そうか・・・」

「サウナとか入って、ヨンヨンもゆっくりしたいのよねえ」
「そうよねえ。どうする。もう少しいる?」
「いる、いる。近くに来るかもしれないから」
「そうねえ。でも、ゆきさん、残念! 今度はもっと倍率のいいの、持ってこなくちゃ!」
「ホント!」









「おっと失敗・・・」
「どないしたあ?」

「バンカー」
「バンカーなん・・・」

「嵌った・・・」
「嵌ったん・・・」


「繰り返さなくてもいいよ」
「繰り返さなくてもええのん?」

「ねえ」
「ねえ」

「キコ?」
「なあに?」
「やな感じ・・・」
「ドンマイ」(にっこりする)

「何がドンマイだか・・・」



寅はバンカーへ入っていって、ボールをあげようとするが、また嵌る・・・。





「寅ちゃん、何してるのん。遅い・・・」


キコは寅の窮地を知らないので、ノンキにバンカーのほうへ歩いていく。



「寅ちゃん? ヨンジュンッシ?」



寅が視界に入った瞬間、キコの足が滑った。


キャア!



「うむ?」


寅がボールから顔を上げて、周りを見回すが、特別に変わったことはない・・・。


真剣な顔をして、また、ボールの方向を考える。



寅ちゃん・・・・。

ヨンジュンッシ・・・。



「うむ?」


また、顔を上げる。

耳をすます。



「寅ちゃん・・・助けて・・・」

「キコ? キコはん?」


カートのほうを見るといない。


どこ、行っちゃったの?



「寅ちゃん・・・」

「キコ? キコはん?」


「あ~ん。助けて!」


やっとキコの声が聞こえた。



バンカーに足を取られながら進むと、キコが砂に埋まっている・・・。


「どうしたの?」

「わからへん・・・。急に足を取られてもうたが」
「ふふふふ・・・」(笑う)

「なんで笑えるの・・・人がこんなことになってるのに・・・」
「だあって・・・」


寅は笑いながら、キコの所へやってきて、キコを引っ張る。


「深いなあ」
「そやろ?」
「うさぎの穴かな?」
「そやね、きっと」

「ニシキヘビかもしれないね」
「や、やや! 早く、早く出して!」



寅が力いっぱい引っ張って、やっとキコは穴から抜け出した。

「ああ、よかった・・・」
「だけど・・・ふふふ・・・おかしいねえ」

「ひど~い。今、笑ったこと、ずっと記憶に留めておく・・・」
「ふ~ん・・・ええよお」
「ええねんね? わかったあ」


「ああ、こんなに砂だらけになってもうて。ったく・・・」


キコが砂を払う。

寅は笑いながら、砂を叩く。


「もう、あんたの手は借りん・・・いけずやもん・・・」
「また、泣いちゃうの?」
「あほ!」


寅が笑って、キコを見つめる。


「なんや?」
「かわいいねえ」


そう言って、さっと抱きしめた。


「あほ・・・」
「あほでも、ええよ・・・」


そう言って、キコの顔を覗き込んだ。






結局、4ラウンド残したまま、寅はゴルフをやめた。


二人を乗せたカートはコテージに向かう。





「あん人たちから、見えんかなあ・・・」(双眼鏡で、家族が集まっていた方向を見る)
「あそこは、外から見えないところだから、大丈夫だよ」
「うん・・・なら、ええけど・・・。帰る時も注意せな・・・」
「そうだね」






バンカーに落ちたキコとそれを助けた寅は、笑ってしまいそうなほど、砂まみれだ。


「ひどい状態だね・・・」
「ホンマ・・・」

二人はお互いを見回す。

そして、ちょっと笑う。




「玄関で脱ごう」
「・・・うん・・・」(ちょっと躊躇する)
「恥ずかしがること、ないじゃない」
「でもなあ。まだ、朝やんか」
「いいじゃない。(笑う)ああ、まだ、朝なんだ。時間があるね」
「・・・」
「二人の時間・・・」
「そうやね・・・」


「ここで脱ぐしかないだろう? 脱いだらバスルームへ直行!」
「寅ちゃん、お先にどうぞ・・・」
「キコはんからどうぞ・・・」


「寅ちゃんのほうがちょっとやない・・・。下着は大丈夫やろ?」
「そうだね・・・お風呂入れて待ってるね」
「・・・」

「いいじゃない・・・」
「・・・うん・・・」

「逃げようがないよ。そんなに砂まみれじゃ・・・」(見つめる)
「うん・・・。何よ。うちも後から行く!」
「うん」(笑って肯く)


寅が先に下着になって、風呂場へ入っていく。

キコは自分の服を見る・・・砂だらけだ。



寅が戻ってきた。


「はい、バスタオル」(差し出す)
「・・・おおきに・・・」(受け取る)



やっぱり、寅ちゃんは寅ちゃんの気遣いをする・・・。

キコは一人になって、全て玄関に脱ぎ捨て、バスタオルを巻いて、バスルームのドアを開けた。









「なあ、ここて、天窓があるねんなあ・・・」
「木の枝が見えて・・・新緑や紅葉の時期はキレイなんだろうね」


二人で湯船から天窓を見上げている。



「広いお風呂でええなあ・・・」
「温泉とは知らなかったね。昨日はシャワールームで損したね」
「うん。でも、こうして入れたから、ええわあ」

「もっと近くへおいでよ」
「うん・・・」
「なんか、オツだよね・・・。朝風呂って」
「ホンマ。あ、ああ~。声が響く・・・」
「うん。でも、聞こえないでしょ。外には」
「どうだか・・・」

「後で、ここのマネジャーにバンカーの穴のこと、言わなくちゃ」
「そやね」
「今、言うとここへ来ちゃうからね。それまで、誰も落ちないことを祈るしかないね・・・」
「うん・・・」


寅がキコの肩を抱きながら、ハミングをする。


「何? ベートーベン?」
「そう・・・」
「そういえば、うちも予約したよ」
「クラシックス・ヒーロー?」
「うん・・・。あんたがナビゲイトするのやろ?」
「うん、そう」

「いろんな作曲家の曲が集まってるの?」
「そう。34歳の時にね、何を成し遂げたかってね。それぞれ、34歳の時の曲」
「そうかあ・・・。あんたの年で何を書いたかやねえ」
「うん」

「誰が好き?」
「そうだなあ・・・。映画を撮るなら、ショパンかな・・・。そこに恋があるからね」
「ミニョンさんみたいな寅ちゃんが見られるのやね」(笑う)

「ふん。(笑う)そうだね、ミニョンさん・・・。気になるのは、やっぱりベートーベンかな・・・」
「ふ~ん。ベートーベンて、耳が悪かったやろ? だから、あん人が譜面に書いたテンポて、実際の速さと同じかどうかわからないのやて。あん人が頭の中で考えていたテンポやから。ホントのところはわからんのやて。自分でも本当に演奏されてるの、聴きたかったやろな・・・」
「ふ~ん。だから、指揮者によって、テンポが違うんだ」
「そうらしいわ」

「ふ~ん。ベートーベンの内なる激しさっていうか、激情というか・・・あの人の情熱的なところが好きなんだ・・・」
「そうなん・・・。なあ、寅ちゃん。それて、寅ちゃんの心の奥のマグマが呼んでるのとちゃう?」
「そうかもしれないね・・・」

「うん。・・・あんたの、外には見せない激しさや強さがベートーベンと合ってるのや、きっと。あん人ってね、それまでの作曲家さんとはちゃうねん・・・。それまでのモーツァルトなんかは、貴族のお抱えやろ? ベートーベンは作曲することで、初めて収入を得た最初の人なんよ。自立した初めての音楽家」
「よく知ってるね」

「うん、そういう余計なことはいろいろ知ってんねん。寅ちゃん、なんでも最初に始める人ていうのは、内面に強さや激しさがあるのかも・・・。開拓精神? 反骨精神? あんたも新しいこと、していきたいほうやから、きっとその辺に惹かれる何かがあるのやな・・・」
「・・・」



寅がキコの顔を自分のほうに向かせ、軽くキスをする。
キコは、寅の強い視線に、恥ずかしそうにする。




「なあ、足上げられる?」
「え?」


突然、キコが違う話を始めた。


「足、上げてみて」
「こうお?」
「うん。やっぱ、長いわ・・・。でも、毛むくじゃら」
「濡れてるから、そう見えるだけだよ」
「そうお? うちなんかぜんぜんないで・・・」


キコも足を上げる。


「女の人だもん」
「そうかあ」


「毛むくじゃらじゃ、いやなの?」
「うううん・・・好き・・・。寅ちゃんなら・・・なんでも好き・・・」

「ふん。(笑う)でも、一号にはならないんだ・・・」
「・・・」
「でも、今はいいでしょ? 一番好きなんだから・・・」
「・・・うん・・・」


「つまんないこと、考えるのはよそう・・・。なるようにしかならないから・・・」
「・・・」
「今は好きなんだから・・・それでいいじゃない」
「・・・」
「二人とも独身なんだし・・・」



寅がキコを見た。


「あまり泣くと、目がハレるよ・・・」
「・・・ん・・・」(肯く)


「二人でゆっくり休んで・・・昼飯も二人で食べよう・・・」
「・・・ん・・・」(肯く)


「今日はゆったりとできていいねえ・・・」
「・・・うん、そうやね・・・」


「その目は、ハレるね・・・」(じっと見て、笑う)
「・・・」


寅が幸せそうに、愛しそうにキコの頭を撫でた。



二人は寄り添って、また、天窓を見上げた・・・。













終わってしもた・・・。


キコは、飛行機の窓から雲を眺める。


今回は二人でたくさんの時間を持てた気がする・・・。
でも、もっともっとほしかった。

あん人を抱きしめる時間・・・もっともっとぎょうさん・・・。


二人でいる幸せがなぜか涙が出る・・・。

いつもやさし過ぎや・・・。


でも、うちにくれた時間は全部覚えてるで・・・。忘れない・・・。




帰りもふつうの乗用車でわざわざ途中まで送ってきてくれた。

キムさんとの待ち合わせ場所に着く前に、車を止めて、キスをした・・・。




こんなんなって・・・これから、うちはどないしたらええ?



あんたが隣にいないと、立っていられなくなったら?
あんたに抱かれてへんと、寂しくて仕方なくなったら?

あんたが恋しくて恋しくて、辛くて辛くて困ったら・・・?


もう困ってる・・・。


でも、今はあんたの愛がうちの中であふれてる・・・。


だから、すごく寂しいけど・・・大丈夫や・・・。





寅ちゃん!




ヨンジュンはん・・・・・・サランへ!








12部 終わり







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