2009/12/18 00:51
テーマ:【創】オレたちに明日はない カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「オレたちに明日はない」終




BGMはこちらで^^



BYJシアターです^^

本日は、「オレたちに明日はない」第7部「最終回」です!

ちょっと~ブルブル・・vv


【配役】
イ・ミョンジュン  捜査一課刑事 ・・・・ぺ・ヨンジュン
キム・ジヨン   同じく新前刑事 ・・・チョン・ジヒョン

パク・インソン  同じく刑事  ・・・・チョ・インソン

ソン・ヨンジュ  科捜研・監察医 ・・・イ・ヨンエ


この作品は全てフィクションです。
ここに出てくる団体・名称は実際のものとは異なります。



ミョンジュンは、ジヨンは、インソンは・・・。

手に汗を握ってというより、指先が冷たくなりそうな寒さですので、
どうぞ、暖かくして、お楽しみください。


最終回、正直言って、長いです。

どうぞ、最後までお付き合いください!


ここより本編。



~~~~~~~~~~~~~~~~




「おまえは何を求めてるんだ?
答えなんか探すな


オレたちは、狙った獲物を捕まえるだけだ・・・

そのためだったら、
命も辞さない・・・それがオレたちの仕事だ



正義のためなんて考えないほうがいい。
そんなのは、クソ食らえだ。

それじゃあ、自分の命も守れないぜ



好きなやつはいるのか?

そいつを思い出せ。
そいつのために戦え。



それが、生き残る道だ」





【オレたちに明日はない】7部


主演:ぺ・ヨンジュン


   イ・ヨンエ
   チョ・インソン


   チョン・ジヒョン








【幼稚園教師・ヒヨンの恋】


11月初めの日曜日。幼稚園教師のヒヨンはソウルのあるショッピングセンターに来ている。
久しぶりにこの冬用のセーター2枚とブーツを一足新調した。
上の階で軽くランチを食べて、下りのエレベーターに乗り込むと、170センチのヒヨンは、周りの女性よりノッポで、みんなが振り返る。

今日もだ。やんなっちゃう!


そうでなくても内気なのに、なんとなく居心地の悪さを感じてしまう。
ヒヨンは背の高さを気にするあまりに、実はその視線が彼女のずば抜けた容姿のせいだということに気づいていない。

ヒヨンが乗った階の2つ下のフロアに止まる。

紳士服の階で、ここから人が乗ることはほとんどないが、今日は一人、背の高い男が乗ってきた。
その男は、ヒヨンより20センチ近く背が高く、周りの客より頭一つというより二つは飛び出ていて、ヒヨンはなんとなく、自分の仲間が乗ってきたような気がして、彼を見た。

男もヒヨンの方を見た。その端整な顔をした育ちのよさそうな男は、ヒヨンを見て、にっこり笑い、その後、穴が開きそうなほど、ヒヨンを見つめている。

24歳になるヒヨンは自分の内気さと身長がコンプレックスで、男の人と付き合ったことがなかったので、こんなに見つめられることは初めてで、しかもその美しい顔が自分を見つめていると思うだけで、胸がざわめいて呼吸が苦しくなった。


もしかしたら、これって運命の出会い?
そうかな・・そうかも・・・。


ヒヨンも、ときめく思いに打ち勝って、じっと男を見つめ返した。






今日、初めて出会ったばかりの男とデートの約束をしてしまった。

でも、彼はちゃんとした商社に勤めている人だし・・・きっと恋ってこういうものなのね・・・。

一緒にフランス料理を食べにいく約束をした。
何を着て行こうかしら。

初めてのデートって困っちゃう。
何にもわからないわ・・・いつも女のコの輪の中から出たことがなかったから。
勤め先も幼稚園だし・・・。
仲良しのジョンア先生は結婚しているから、いろいろ、アドバイスしてもらおうかな。
でもまだ、ちょっと早いわね・・・あと2、3回、デートがうまくいったら・・・相談してみよう。






3日後、フレンチレストランで二人、向かい合っている。


ヒ:ジュソンさんは、こういう場所がお好きなの?
ジュ:君は? 結構素敵なところでしょ?
ヒ:ええ。とっても素敵・・・。でも、私、あんまりこういうところに来たことがないから、ちょっと戸惑うわ。・・・お仕事で、海外もいらっしゃるの? 商社でしたよね?
ジュ:ええ。でも、僕は人事課だから。ずっとソウルにいますよ。
ヒ:そうですか・・・。なんか、安心しました・・・私も、ここが一番好きだから・・・。(見つめる)
ジュ:そうなんだ。(微笑む)じゃあ、初めてのデート、乾杯しようか?
ヒ:・・・ええ・・・。

二人はにこやかに見つめ合った。





デートから帰り、部屋に戻ってきたジュソンに、ドンスがイラついたように、クッションを投げる。


ド:何してたんだよ? また、女かよ・・・。
ジュ:ごめん・・・。
ド:おまえ、オレのこと、どう思ってるの? 本気じゃないのかよ?
ジュ:それは・・・好きだよ。・・・でも、結婚もしないと、父さんや母さんが・・・。


ドンスが殴りかかる。


ド:ふざけんなよ。もっと真剣に付き合えよ。いつまで、親父やお袋のことを言ってんだよ。
ジュ:ごめん・・・。
ド:どんな女だ?(睨む)
ジュ:えっ? キレイな人だよ。やさしくて・・・。
ド:へえ、オレとその女とどっちが好き?
ジュ:えっ? それは・・・。
ド:どっちだよ?

ジュ:・・・ドンス・・・。

ド:よし。なら、その女、オレによこせよ。
ジュ:えっ? でも、おまえは・・・?
ド:オレもやりたいんだ・・・。せっかくあいつがいるのに。
ジュ:ちょっと待てよ。それは・・・。(慌てる)
ド:その女はだめなのか!(睨みつける)
ジュ:いや・・・。(でも、彼女は・・・)

ド:決まりだな?! ふん。(笑う)なんかおもしろくなってきたな・・・。楽しくやりたいな・・・。その女ってどのくらいの背?
ジュ:170センチくらいかな・・・。
ド:ふ~ん、そうか。おまえとお似合いなんだ・・・。(笑う)それは、いい大きさだな・・・。おまえが後ろで押さえて、オレが前から刺す・・・。
ジュ:えっ!(怖がる)オレも一緒にやるのか? (いやだ)
ド:当たり前さ。オレはおまえみたいなドジは踏まないぞ! 思いきり、刺す!(刺す真似をして、笑う)何を使おうかな。楽しみだな・・・。それになんか、メッセージでも残したいじゃないか・・・。警察のバカどもにさ。

ジュ:ドンス・・・やめないか? あの女は死んでなかったじゃないか。まだ、重体だろ? あの男も生きてる・・・。殺すなら、あの男を自殺に見せかけてやろうぜ。・・・それで終わりにしよう・・・。
ド:おまえは甘いよ・・・。(睨みつける)それにこの間の女をやったのは、おまえだからな。オレは何にも手だしはしていない・・・。(脅す)
ジュ:そんな!
ド:協力しろ・・・。おまえだけ楽しむなんて、ズルイよ。(睨んで笑う)




ジュソンは震えた。

このドンスの暗い執念。
子供の頃に、母親の浮気で離婚した両親への深い憎悪。
とりわけ、母親への憎しみは大きい。

彼はそれがもとで、女性を愛することが出来なくなったと言ったけど、
彼にはもともとその要素があったのだ・・・。
女を憎んで、男との恋を楽しむ・・・。


男所帯のラグビー部で、ひょんなことから、恋人同士になって、それからずっと彼に引きづられている。

自分は、本当は女性も愛せるのだと、ジュソンは思う。
でも、その恋もことごとく、ドンスに壊された。


しかし、今回は、もっとも深刻だ・・・。


ヒヨンは稀に見るいい子なのに・・・。

今、あいつの手の内に落ちようとしている。
阻止できるか・・・いや、できない。


オレはやつに従ってしか、生きられない・・・。
あいつから、離れられない。

弱い男だ。

それにもう、罪を一つ犯してしまったから・・・。







11月14日朝。
今日は雨だ。

ヒヨンはこんなお天気は嫌いだ。
しかし、ジュソンは雨の日ではないと、ラグビーの練習があるそうだから、恵みの雨ということか。

それにしても、待ち合わせが小学校の裏山なんて。
こんな日に彼の思い出の木なんて見なくてもいいのに・・・。
仕方ないか。
次回は、もっと素敵なところへ連れてってもらおう。この間のレストランみたいなところへ・・・。






ド:おい。いい雨だな。


ドンスはマンションの窓から外を見る。


ド:こういうのを、恵みの雨って言うのかな?(笑う)雨は、血を流し、指紋を消して、ニオイも消してくれる。幸先いいぜ。な、ジュソン!(ジュソンのほうを振り返る)


ジュソンは青白い顔をして、黙々と朝食の準備をしていた。











【長い一日】


ジヨンは、ソウルデパートの外商部で、少々緊張気味に暗い顔で仕事をしている。
ジヨンは冷たくなった指先を見る。


今朝、出勤前に先輩に巻いてもらったサラシだけが彼女の味方だ。
それに、今日は腰に銃をつけていくこともできない・・・。

でも、先輩はコートを着たら、必ず銃を装着しろと言った。


先輩の左肩は銃で撃たれたものだ。
そして、左脇腹は包丁で刺されたものだ。


それでも、頑張って仕事を続けている・・・。


私も生き残れるだろうか・・・。


今は、午後2時50分。
6時に、ソウルデパート近くのコーヒー店で待ち合わせをした。

もし、あの「Trait」犯行の特性に従えば、7時半には私の運命は決まっている。


生き残ろう。



ああ、先輩!





イ:今、先輩って呟きましたね・・・。
ミ:そうか? (ちょっとぎこちなく言う)
イ:ええ。感度がいいから、本人が気づかない呟きも入りますよ。


インソンとミョンジュンで、ジヨンのマイクの音を拾っている。

ミョンジュンにも確かに聞こえた。しかし、それは一瞬、空耳かと思った。

でも、ジヨンは呟いたのだ。






あと3時間。自分たちは、確実にジヨンを守れることができるだろうか。
ミョンジュンは、イヤホーンを外して、一瞬だが、机にうつ伏せた。


ジヨンの生死は、自分の手の中にあると言っても、過言ではない。
あいつはオレを信じている。




イ:先輩。あいつ、トイレに行きましたよ。(笑う)
ミ:えっ? (ミョンジュンが顔を上げた)
イ:(笑っている)こいつ、おかしいよ。先輩、聞いてみて・・・。


ミョンジュンがイヤホーンをする。


ジヨンがとぼけた歌を歌っている。

ミョンジュンとインソンが笑った。

次にトイレが流れる音がして、ドアを開け、手を洗っている。


静寂。


ジヨンが呟く。

ジ:先輩、助けてね。絶対守ってね。私は命を賭けるから・・・。


ミョンジュンとインソンは、胸を締め付けられて、言葉を失った。






現在、午後5時。

今日のジヨンは5時半までの勤務だ。
そして、商社は定時に終われば、5時45分だ。

そして、コーヒー店での待ち合わせは午後6時だ。




イ:先輩! 時間です。
ミ:よし。行こう。

ミョンジュンとインソンは、それぞれにジヨンの声が聞こえる小さな受信機を身につけて、車に移動していく。

会議室を出て、ミョンジュンが次長に声をかける。


ミ:これから出動します。応援をよろしくお願いします。
次:うん。二課のやつらに頼んであるから、大丈夫だ。しっかりな。(じっとミョンジュンたちを見る)
ミ:はい! 行くぞ。
イ:はい。








【決戦の時】


午後6時。

冷たい雨が降り注ぐ中、ジヨンが待ち合わせのコーヒー店に行く。
ジヨンは動きやすいように、パンツにハーフコートを着ている。

ジュソンだけが来ている。


ジ:こんばんは。パク・ドンスさんは?
ジュ:ああ、まあ、座って。遅れてきますよ。(ニヤリとする)
ジ:そう・・・。(緊張を隠す)
ジュ:何にする? コーヒーでいい?
ジ:ええ。(見つめる)




ジュ:ところで、君のお姉さんて、すごい美人だよね?
ジ:姉? (ヨンジュさん!) なぜ、知ってるの?
ジュ:地下鉄でいつも一緒に通勤しているところを見かけるからさ。
ジ:そう・・・。(やっぱり見られていた)
ジュ:ドンスがね、お姉さんにも興味があるって。
ジ:ドンスさんが姉に興味があるの?(マイクにちゃんと入るように繰り返す)




コーヒー店の近くに駐車した車の中で、ミョンジュンとインソンが聞いている。


イ:先輩、ヤバイですよ。ヨンジュさん!
ミ:うん。(携帯でヨンジュに電話する)早く出ろよ・・・・ヨンジュ! 今どこ? どこでもいいから、人がいて、目立つところへ入れ! えっ? ジヨンの男がおまえも付け狙ってる! 早くしろ! ・・・え? いいじゃないか! そこへ飛び込め! 中へ入るまで電話を切るな。安全を確認するまで切らないで!・・・・(待つ)・・・入ったか? よし。場所を教えろ。これから、インソンが迎えにいく。うん・・うん・・わかった。迎えにいくまで、そこに居させてもらえよ。いいね? じゃあ。(電話を切る)

イ:どこですか?
ミ:ソウルバンク本店の近くの美容院だ。「シックカット」っていう店。迎えに行ってくれるか。それで、署に送り届けてくれ。
イ:でも、ジヨンが・・・。

ミ:こっちはオレがいるし。周りに二課も張り付いているから・・・。送ったら、また合流しろ。

イ:はい。わかりました。
ミ:じゃあ、よろしく頼む。(インソンをちょっと見つめて、車を降りる)

ィ:じゃあ、行ってきます。


インソンの車は発進し、ミョンジュンはダウンジャケットのフードをかぶって、通りを渡って、ジヨンのいるコーヒー店に向かう。


自分はヨンジュまで巻き込んでしまった・・・・。



今のミョンジュンの出で立ちは、いつもとは違う。あの商社で、ハンチングにサングラスのミョンジュンをジュソンに目撃されているので、あえてメガネをかけず、赤いダウン・ジャケットを着ている。
そんな服装をすると、まるで、別人のように、ごく普通の若い青年に見える。




ミョンジュンがそのコーヒー店へ入っていく
耳には、ジヨンの声の受信機のイヤホーンをして。ポケットに入れた手にはレシーバーも持って。

今日の服装では、ジヨンもミョンジュンをすぐわからない・・・。


捜査二課の面々が助っ人で、コーヒー店の周りをぐるりと囲んでいる。





ジュソンの携帯が鳴った。


ジュ:着いたか? OK! これから行く。
ジ:ドンスさん?
ジュ:そうだよ。
ジ:まさか、姉になんか会ってないわよね?
ジュ:なんでそう思うの? ただ興味を持ったって言っただけだよ。だって、面識がないじゃない?
ジ:そうよね・・・。私って、バカね。




引っ掛けられたか・・・。
どういうことだ・・・。

まさか、ジヨンの身分を知っているのか?




ジュ:じゃあ、出ようか。
ジ:ええ。



二人が立ち上がったのが、ミョンジュンから見える。

ジヨンが表の方へ出ようとすると、ジュソンが呼ぶ。


ジュ:こっち。(反対側を指差す)
ジ:そっちにも出口があるの?
ジュ:ああ、ビルの中への出口がね。
ジ:そう・・・。



ミョンジュンが見ている中、二人はビルの中への出口に向かう。

コーヒー店を出ると、まさに、オフィスビルの内側で、何もない。



ジ:どうするの?
ジュ:エレベーターで上へ上がるんだよ。
ジ:・・・でも、ここって、オフィスビルでしょ?
ジュ:う~ん、だけど、ここの屋上って夜景がキレイなんだ。(顔を覗き込む)
ジ:そう・・・。でも、今日は雨が降ってるわよ。(見つめる)
ジュ:雨降りもいいのさ。(笑う)
ジ:・・・。




エレベーターが来て、二人乗り込む。


ミョンジュンは、エレベーターが一つしかないので、階段で上がっていく。
途中、途中、エレベーターの通る階を確認する。

階段の途中で、ミョンジュンのレシーバーが鳴った。


ミ:こちら、ミョンジュン。
次:おい! ミョンジュン! パク・ドンスの釜山の実家に在った赤ん坊の時の髪の毛と、この間の釜山の事件のDNAが、一致したぞ。
ミ:えっ!(戦慄が走る)





イ:ジヨン!

インソンがヨンジュを乗せた覆面パトカーの中で、今の報告を聞いて驚く。


イ:ヤバイ・・・。(同乗しているヨンジュに)このまま、現場へ戻っていいですか? ジヨンが危ない!
ヨ:行ってちょうだい!(泣きそうになる)


インソンの車が現場へ向かう。






この週末、インソンは、パク・ドンスの実家が釜山にあり、あの事件の日、親戚の結婚式に列席していたのを突き止めた。
実家が床屋と知ったインソンは、業界紙の記者のふりをして、父親がやっている床屋を訪ねた。


ウィンドーに、赤ん坊の産毛で作る筆というのがあって、そこに古い筆が飾ってあるのを発見する。

赤ん坊の頃の大事な思い出を他人の店に飾るはずはない・・・。
もしかして、一人息子のドンスのものか。




イ:すみませ~ん。「月刊理髪」ですけど、ご主人は?
パ:私ですが。(気のいい顔をしている)
イ:えっと、パク・ドンジンさんですか?
パ:そうだけど。
イ:いやあ、探しましたよ。(笑う)雑誌で古くから赤ちゃん毛筆を作っているお店を探していて、こちらだったんですね?
パ:(うれしそうに)ああ、そうですよ。私のライフワークになっちゃっててね。

インソンはうその取材をする。


イ:この飾ってあるのは? どなたのですか? まさか、お客さんのじゃないですよね?
パ:うちの息子のですよ。これが第一号。(懐かしそうに見る)
イ:写真を撮らせてください。
パ:どうぞ、どうぞ。

イ:(デジカメで撮る)ちょっと触ってみてもいいですか? 何年前のですか?
パ:もう、29年になりますよ。
イ:へえ、柔らかい・・・。さすが、赤ちゃんの髪だ。(撫でながら、2本、失敬する)いいですね。ホントにいい思い出になりますね。・・・ありがとうございました・・・。(返す)


インソンはドンスのDNAを手に入れながら、愛しそうに撫でる父親を見て、胸が痛くなった。




そして、そのDNAと釜山の女子殺人事件の犯人のDNAが一致したのだ。








エレベーターの中で、ジュソンが粘液質な視線でジヨンを見る。


ジュ:君ってうそつき?(見つめる)
ジ:え? (不思議そうに見る)
ジュ:君のお姉さんてさ、科捜研に勤めてるじゃない?
ジ:それが?
ジュ:君って何者?
ジ:なんで? 姉の職業がなんか問題なの?


ジュ:だって、気がついちゃったんだ。君のこと・・・。初めて会った時、刑事さんと一緒で・・・。それでも信じてたのに・・・。お姉さんが科捜研じゃ・・・。君だって、怪しいじゃない?
ジ:変なこと、気にするのね。姉がそういう仕事だったり、刑事さんを案内してたら、変なの?

ジュ:普通、刑事って、人に案内されないで来るものだよ。




ミョンジュンは耳から入ってくる会話に危険を感じながら、階段を上っていく。




エレベーターが7階建ての屋上に着いた。


ジュ:降りよう。
ジ:・・・・。(ジュソンの顔を見る)
ジュ:ドンスが来ているはずなんだ。彼は君がすご~く気に入ってるからね。
ジ:なぜ、一緒じゃなかったの? 一緒に来たってよかったじゃない?
ジュ:だって、刑事さんを減らさないとね。・・・お姉さんのほう、見に行ってる人もいるんでしょ? 今頃? (ジヨンの腕をぐいっと掴む)
ジ:・・・わからないわ、言ってることが・・・。




ジヨンは引っ張られるようにして、エレベーターを降りる。

屋上の外に出る。小雨が雪に変わっている。
サラサラと雪が舞っている。



ドンスが、屋上の大きなタンクの影から出てきた。


ド:こんばんは。ソンさん・・・。(笑ってから睨む)あなたって人は最低だな・・・。僕たちの計画を崩して。困っちゃうじゃない。この落とし前はどうやってつけてくれるの?
ジ:(覚悟を決める)自分の心に聞いてみたら? 今までやってきたことを振り返って・・・。何人、殺したの?

ド:知ってるでしょ? ソンさん。

ジ:なんで、テスを殺したの? あなたたちには全く関係ない人間でしょ? ただ、セールスに行っただけ・・・。
ド:そう・・・。でもさあ、あんなにかわいい子、生かしておくわけにはいかないじゃない? どこかで男を泣かせそうだし。ね? そうでしょう?




パトカーの中で、インソンが聞いて涙ぐむ。




ジ:あんた、人間じゃないわね? 私を殺したら、ただじゃすまないわよ。わかってるでしょ?
ド:当たり前じゃないか。でも、最高の獲物だよ・・・。オレの好みの顔、スタイル。ふん、刺しやすい胸の高さ・・・。おまけに、刑事。最高だぜ。もし、おまえが刑事じゃなかったら、魅力も半減だ・・・。
ジ:そう・・・。負け惜しみね。
ド:怖いか?
ジ:・・・ぜんぜん・・・。あなた、わかってないわね・・・刑事というものが・・・。(睨みつける)
ド:・・・。

ジ:命を賭けても、獲物を仕留める、それが刑事よ。・・・たとえ、あなたが命乞いをしても、私は許さないわ・・・。

ド:ずいぶん、大きな口を利くじゃないか。こっちは二人だぞ。

ジ:あんたたちはバカよ。



ジュソンがドンスのほうへ歩いていったので、ジヨンは後ろへゆっくり下がる。


ジ:ただの人殺し! 他に才能なんて何にもない、最低のろくでなし。今までよく大手を振って生きてこられたわね!
ド:なんだと!
ジ:皆が嫌がらなかった? なんにもいいところのないあんたたちに? 女が逃げたでしょ? 
ド:何を!
ジ:そっか。自信がなくて、女の子とは付き合えなかったのよね。


ジュソンがハッとする。


ジ:自分のどこが好き? 人を見下してるところ? いやらしい目つき? ・・・命の重さも測れないところ? 他人のことなどいっさい考えない頭の悪さ? どれ? どれもお気に入りなの?
ド:言わせておけば・・・。(怒っている)
ジ:バカな男・・・。ぜんぜん中身がなくて、カッコだけ・・・それじゃ女は振り向かないわ。
ド:このアマ!





ミョンジュンが屋上のドアを開けようとするが、カギがかかっている。
ナイフを使ったりするが、開かない。


ミ:くそ!




ド:やっちゃおうぜ。(ジュソンを見る)こいつを生かしておくわけにはいかない。(内ポケットからアイスピックを取り出す)
ジ:・・・。(二人の位置を確認しながら、構える)


ドンスが近づいてきた。ジュソンと二人で挟み撃ちにしようとしている。




ミョンジュンの耳に、ジヨンの息が聞こえる。


ハア、

ハア、

ハア、

ハア~


ジヨンの心の声が聞こえる。


先輩!

早く!


ミョンジュンは心を決めて、腰から銃を取り出し、安全装置を外す。

ドアのカギを撃った。



バーン!



ジュ:(驚く)ドンス。銃声だよ! 警察だよ!(怯む)
ド:もうやるしかないだろう!






ジュソンがドンスを見つめる。



小学校の裏山で、大雨の中、自分が羽交い絞めにして、ドンスがヒヨンを刺した。
命を落としたヒヨンの胸にアイスピックを突きたてて、「刺す練習をしろ」と言ったドンス。


ソウルデパートの通用口を出たところで、愛想よく、テスに話しかけるドンス。
テスは時間を気にしながらも、笑顔を作っている。そのテスを引っ張り込むように、二人で路地へ連れ込んだ。

ジュ:コートの前を開けろよ。

あの時、テスはレープされると思っただろう。しかし、ただ、一撃、胸に突きたてられただけだった。
そして、あの時も、「殺しの練習」をさせられた。



そして、釜山へ二人で出かけた時も同じように・・・。




結局、自分はこの男から逃げられなかった。
あいつの愛か、憎しみから、自分は逃げられず、共犯者となった・・・。
もう、オレの人生はおしまいだ・・・。



ジヨンは、凍り付いているジュソンの顔を見た。





ドアを押し開けて、ミョンジュンが屋上に現れた。



つい、ミョンジュンに気を取られたジヨンが横を向く。



ドンスが間髪入れず、ジヨンにタックルをして、捕まえ、引きずって、フェンスのほうへ行く。
首にアイスピックを突き立てる。


ド:残念だったな、刑事さん。このかわいい刑事さんはもらっていくぜ。
ミ:おい。もう逃げ場はないんだ。この周りは包囲されている。諦めろ。
ド:逃げ場? そんなのはいらない・・・。ここに落ちればいいんだから。


ジュ:ドンス! 待ってくれ。
ド:ジュソン。おまえは勝手にしろ。オレはこのコと行くよ。(ジヨンを押さえながら、フェンスの外へ出る)
ジュ:まだ、道はあるよ。逃げよう。(ミョンジュンに向かって)銃を捨てろ! でなければ、あの女を突き落とすぞ。




ミョンジュンが、ジヨンとドンスを見て、銃を地面に置く。




ジュソンが銃を握った。


ジュ:ドンス。一緒に逃げよう。今のうちに。
ミ:包囲されてるぞ!
ジュ:大丈夫さ。このビルのことは良く知ってるから。ドンス来いよ。



ドンスがジュソンの言葉に気を取られた瞬間、ジヨンが身を翻した。

地面が濡れているので、ドンスは態勢を崩し、持っていたアイスピックで、ジヨンの首を傷つけながら、ビルの下へ落ちていく。

その時、ジヨンの肩を瞬間掴んだので、ジヨンも一緒に落ちる。




ミョンジュンの目の前で、ジヨンが下へ落ちた。
ジュソンもドンスが落ちたので、一瞬、呆然とする。

ミョンジュンはジュソンを蹴り上げて、倒し、ジヨンのいた場所へ飛んでいく。


ジュソンは、這いながらも銃を拾い、手にする。




ジヨンの手が屋上の縁を掴んでいる。
しかし、縁が濡れていて、もう限界だ。


ミョンジュンがジヨンの手首を掴んだ瞬間、ジュソンの銃弾がそのミョンジュンの腕をかすめた。


そして、ドンスを失って一人になった、ジュソンは、狂ったように銃を乱射する。

ミョンジュンのこめた銃弾は5発。
もう銃弾は残っていない・・・。





ジヨンは力尽きて落ちそうになった瞬間、手首を掴まれ、上を見る。


ミ:ジヨン! ジヨン! (必死で名前を呼ぶ)
ジ:あ~あ、先輩! もう・・だめ・・・。
ミ:(ジヨンの右手首をしっかり握っている)諦めるな! オレを信じろ。この手は絶対放さない。下を見るな。
ジ:ハア・・ハア・・・。(もがく)
ミ:もがくな。壁に足をつけて・・・そうだ。


雨で地面が濡れ、気温が下がったため、地面が凍り、ミョンジュンもジヨンの重さにドンドン滑っていくが、ビルの低い縁で留まり、なんとか自分を支えている。



ジヨンは右手首に生温かいものを感じる。見ると、ジヨンの手首を掴んでいるミョンジュンの右腕から流れ出ている血だ。

ジ:先輩・・・。(手首に流れる血を見る)


自分の腕に伝わって、ミョンジュンの血が一直線に、ジヨンの体へ流れ込んでくる。


ミ:大丈夫だ。おまえは自分が生き残ることだけ、考えろ。・・・そうだ、ゆっくり登れ。おまえならできる!
ジ:あ~あ・・・。(恐々、下を見る)
ミ:だめだ! 下を見るな。オレだけを見ろ!
ジ:ハア・・・ハア・・・。(ミョンジュンを泣きそうな目で見つめる)
ミ:オレを信じろ!
ジ:せん・・ぱい・・・。う~ん、う~ん。(濡れて滑るビルの壁面に足をかけて踏ん張り、左手で壁の窪みを捉えて、登ってくる)
ミ:ジヨン、よし、もう少しだ!




ジュソンはミョンジュン目掛けて、銃を構え、撃つが、もう弾はない。



もう一度、構える。そして、撃つ。



バーン!




銃声が鳴り響いた。





ジュソンはゆっくりと前に倒れ、撃たれた太ももを押さえる。


後ろから、インソンが銃を降ろして、歩いてくる。


そして、ジヨンのもとへ行った。



ミョンジュンとインソンで、ジヨンを救出して、救急隊を呼ぶ。



救急隊を待つ間、インソンがジュソンの前へ行って、顔を見る。
泣きそうな顔をして、ジュソンの腹を蹴り上げ、そして、手錠をかけた。


ジュソンは力なく、空を見上げた。





首を長く切られたジヨンはビルから落ちて壁を登り、もう力尽きていた。
意識が朦朧としている。


ミョンジュンはジヨンを胸に抱き、首にハンカチを押し当てて、必死でジヨンの名を呼ぶ。


ミ:ジヨン! ジヨン! おい、起きろ! ジヨン! 起きろ! 目を覚ますんだ!・・・おい、起きろ・・・起きろよ! ジヨン・・・。

ジヨンには、ミョンジュンの声は聞こえるが、意識がだんだん遠のいていくのが自分でもわかった。






救急隊がやってきた。


ジヨンは、ストレッチャーに乗せられて救急車のほうへ運ばれていく。

そして、別の救急隊がミョンジュンの腕を処置し毛布をかける。



ビルの外へ出ると、救急車が3台来ている。
ジヨンのため、ミョンジュンのため、ジュソンのために。


ミョンジュンは、ジヨンと違う救急車のほうへ肩を抱いて連れて行かれようとするが、その手を振りきり、ジヨンの乗った救急車のほうへ走っていく。


ミ:待ってください! ジヨン! ジヨン!


ミョンジュンの声は救急車には届かず、ジヨンを乗せた車はサイレンを鳴らし、どんどん遠ざかっていく。


後ろからきた救急隊に再び毛布で肩をくるまれたミョンジュンは、その場に立ち尽くし、ジヨンの車を見送った。



ヨンジュは、少し離れたパトカーから出て、サイレンが鳴り響く騒然としたビルの前で、ジヨンを見送るミョンジュンの後姿を見ていた。








【12月24日・クリスマスイブ】


ジヨンはまたミニパトに戻っていた。


幸い、ジヨンの首の傷は浅く、すぐに回復した。
ただ、この傷は残るだろう。まだ、包帯を首に巻いている。

あのまま、刑事を続けたかったが、上の方々の判断で、また元に戻された。女子には、あまりに荷が重く、この事件がトラウマになるということらしい。

でも、あの事件のおかげで、あの夢とも決別することができた。
自分には、よかったのだ・・・。

それに・・・。




今日もミニパトの助手席に座っている。
駐車違反をしている車のタイヤの周りにローラーで線を引く。違反ステッカーを貼る。毎日、それの繰り返し。

ミニパトで、街の中を廻っていると、見慣れた車が止まっている。
ジヨンは車を降りて「駐車違反のステッカー」をワイパーに挟む。運転席のスジンが声をかける。


ス:ジヨン! この車、止まったばかりじゃない? ステッカーはまずいよ。
ジ:いいのよ、この車は。ねえ、ここで少し、この車の持ち主を待ってもいい?
ス:知り合い? そうなんだ。じゃあ、一周してくるわ。
ジ:ありがとう。



ジヨンが車に寄りかかるようにして待っていると、通りの向こうから声がする。


声:おい! ちょっと待ってくれ! 婦警さん、待ってよ。



彼の声だ!



ジヨンが振り返る。ミョンジュンがやってくる。
ジヨンが車を背に寄りかかっている。

ミ:・・・・おまえか。(歩いてくる)
ジ:ご無沙汰してます。(じっと見つめる)
ミ:うん。・・・今、来たばかりだぞ。それに聞き込みをしてるんだ。駐車違反なんかのステッカーを貼るなよ。
ジ:そうですか? でも、私は職務を全うしているだけです。
ミ:おい、パトカーを取り締まることはないだろ? おまえ、このナンバーを覚えてるだろ?
ジ:まあね。(つんとした目で見る)
ミ:何だよ?
ジ:先輩・・・。今、お時間、ありますか?
ミ:まあ、少しはね。
ジ:じゃあ、久しぶりに少しお話しましょう。先輩、人と話をする時くらい、サングラスを外してください。
ミ:・・・。ああ。(サングラスを外す。やさしい目をしている)
ジ:(微笑む)また、新人連れて歩いてるの?
ミ:まあな・・・。でも、もうオレのところには、女は来ないよ。
ジ:なんで?
ミ:おまえをケガさせたし。セクハラだと言われたよ。
ジ:そんな・・・。先輩だって、腕を撃たれたじゃない!・・・大丈夫?(やさしく言う)
ミ:うん・・・なんとかね・・・。かすっただけだから・・・。(腕を動かし、やさしく言う)
ジ:そう・・・。(腕を見つめる)


ミ:まあいいさ。元気そうじゃないか? (顔をまぶしそうな目をして見つめる)
ジ:ええ、首には傷は残りましたけど。
ミ:・・・そうか・・・。お前が元気でいてよかった・・・。駐車違反だけはなんとかしてくれよ。
ジ:だめです。(キッパリと言う)
ミ:なんで? (何なんだよ?)


ジ:・・・。先輩が教えてくれたんです。自分の意思を貫けって。
ミ:待てよ。(何言ってるの?)
ジ:先輩が言ったんですよ。・・・・狙った獲物は絶対捕まえろって。(じっと燃えるような目で見つめる)
ミ:・・・・。(ジヨンの目を見る)
ジ:・・・・だから、実行したまでです。(睨む)
ミ:・・・。(彼女の表情を読み取ろうとしている)
ジ:どうなんです? 返事は? 尋問のほうがいいの?
ミ:(困って)おい、おまえ!
ジ:手荒にしてもいいですよ。そういうの、慣れてますから。


ミョンジュンはジヨンをじっと見つめる。


ジ:なあに?
ミ:・・・。(見つめる)
ジ:先輩、大丈夫? バカになっちゃったの?
ミ:・・・。(見つめている)
ジ:(ミョンジュンのジャケットの襟をぐっと掴む)まだわからないの? 私の言ってることがわからないなら、私に任せてください。(顔をまじまじと見つめる)
ミ:・・・本気かよ?(目はジヨンに釘付けである)
ジ:そうよ。(ミョンジュンの唇を見ている)
ミ:(ジヨンの視線に気が付き)ちょっと待てよ。
ジ:(目を見て)何を待つの? もう待てないわ。もう待ったもん・・・。先輩、私に任せなさい!(唇を見ている)
ミ:ジヨン! ・・・やっぱり、おまえはバカだよ・・・。(やさしく見つめる)
ジ:そんなこと言ったって、私はぜんぜん気にしないわ。(ミョンジュンのジャケットの襟をもっと自分のほうに引っ張って引き寄せる)
ミ:ジヨン・・・。(ジヨンに引っ張られながらも、自分からも寄り目になりそうなくらい顔を近づけていく)
ジ:(もう唇が近づいている)イ・ミョンジュン・・・。あなたはもう、私から逃げられないわ・・・。覚悟しなさい・・・。(唇をふさぐ)


クリスマスの飾りつけが華やかな大通りの真ん中。
婦警の制服を着たジヨンがミョンジュンの襟を掴んでキスをする。
次第にジヨンの力が抜けていき、唇を離して顔を見つめあう。
ジヨンがとろんとした目つきでミョンジュンを見つめる。


ミ:キム・ジヨン、おまえはもう、オレから逃げられない・・・。覚悟しろ・・・。


今度はミョンジュンがジヨンを包み込むように抱きしめる。

どちらが求めてキスをしているのか、お互いが相手を制覇しようとしているようにも見える。



ジヨンは制服のまま、ミョンジュンの腕に抱かれて、幸せそうに微笑み、またキスをした。






主題歌【少し遠回りして】


♪♪~~
今夜はHoly Night
少し酔ったみたい
あなたの肩を貸してほしい

そんな顔して私を見ないで
わかってるくせに
気づいてるくせに


いつもちょっと意地悪かしら?
本当は気になって仕方がないの




今夜はHoly Night
もう少しあなたといたい
あなたの胸で眠らせてよ


そんな目で見つめないでよ
わかってるでしょ?
気づいてるでしょ?



今日は少し遠回りをして
二人だけの時間を作りましょう


人生の遠回りなんて気にしないで
私に出会うまで時間を潰しただけよ


いつだってあなたが好き
本当はわかってるでしょ?



そんな顔して私を見ないで
わかっているから
気づいているから


大好きだってあなたの目が言ってるわ
言葉なんて選ばなくていいの


今夜はHoly Night
この時を逃さないで
二人で朝焼けを見つめましょう

~~~♪♪












THE END



2009/12/16 01:18
テーマ:【創】オレたちに明日はない カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「オレたちに明日はない」6




BGMはこちらで^^



BYJシアターです。

joonは今、サッカー見ているのかな^^


さて。
こちらの事態は急変してきました。

ミョンジュンやジヨンは犯人を捕まえることができるのでしょうか。


本日は、【オレたちに明日はない】第6部です。


【配役】
イ・ミョンジュン  捜査一課刑事 ・・・・ぺ・ヨンジュン
キム・ジヨン   同じく新前刑事 ・・・チョン・ジヒョン

パク・インソン  同じく刑事  ・・・・チョ・インソン

ソン・ヨンジュ  科捜研・監察医 ・・・イ・ヨンエ



この作品は全てフィクションです。
ここに出てくる団体・名称は実際のものとは異なります。


ここより本編。
暖かくしてご覧ください!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






「何のために戦うの?
あなたは答えを探してはいけないと言った

でも、
私には見えない恐怖と
戦いを続けていく虚しさが
とても辛い


あなたは命も辞さないと言った


私は怖い
恐怖が私を包み込む


お願い
助けて

力をちょうだい

いつも私を守って

見えない恐怖に飲み込まれないように

ちゃんと戦えるように
命を惜しまないように

正義のために
愛のために

全力を尽くせるように



ちゃんと
私を捕まえていて」






【オレたちに明日はない】6部



主演:ぺ・ヨンジュン


   イ・ヨンエ
   チョ・インソン


   チョン・ジヒョン





【手がかりを求めて】


さっきはあまりに状況が苦しくて先輩に抱きついてしまった。
先輩の体は大きくてガッチリしているだけでなく、温かく私を包み込み、受け入れてくれた。


やさしく抱いてくれた。
でも、それだけ・・・。


ヨンジュさんと先輩の距離を考えれば、私はただのひよっこだ。
それ以上の抱擁は期待できないのだろうか・・・。



私たちは今、机に斜向かいに並んで座っている。
私があまりに震えているので、先輩はとても心配そうに、私の両手を包み込むように両手でぎゅっと握ってくれている。


ミ:怖いか? ジヨン。
ジ:(顔を見上げる)・・・はい・・・。私が今までうなされてきたのは、夢です・・・。でも、それが現実になりそうで、とっても怖いんです。生きている男たちが、あんな目付きで、私を見ている。・・・獲物・・・そういう目で見つめてくるんです。


ミョンジュンがやさしく、ジヨンの手を撫でた。
そして、やさしい顔をして、ジヨンを見つめた。


ミ:いつか、そういう目じゃなくて、もっとおまえをちゃんと見つめてくれる目に出会えるさ。
ジ:・・・。(今の先輩みたいに?)その日が来るまで、生き残りたいです・・・。
ミ:うん・・・。(握っているジヨンの手を見る)オレとインソンで守るよ・・・。
ジ:先輩・・・。(先輩の愛で守ってください)



ドアがノックされた。


ミョンジュンがドアのほうを見て答える。


ミ:はい。
イ:インソンです。
ミ:入れ。(手を放す)


インソンが入ってきた。


イ:お待たせしました。(ジヨンを見て)おう、ジヨン、元気か?
ジ:はいと言いたいけど、だめです。
イ:おい、しっかりしろよ。大丈夫か?(心配そうに見る)
ミ:・・・じゃあ、始めよう。
イ:先輩。今、コンピュータを繋ぎます。


インソンのPCの準備ができた。

イ:いいですよ。
ミ:じゃあ、まず、ジヨンの報告から。
ジ:はい。今日、例のM商事の総務課に忘年会の景品を納品しまして、ついでに例の男のいる人事課へセールスに行ってきました。そこで、人事課の忘年会の商品も見積もりを取りました。
イ:おまえ、すごいなあ。セールスマンのほうがいいんじゃない?
ジ:先輩!(ったく!)ここからがたいへんなんだから! その担当があの男。ここに名刺があります。名前はチョン・ジュソン。


名刺をミョンジュンに渡す。


ジ:それから、その時に見たカタログ。どっちも指紋ベタベタです。(袋に入れたカタログを渡す)
ミ:あとで、こいつを調べよう。(インソンに見せる)
イ:はい。(名刺を見て、あの男の名前と肩書きをインプットする)
ジ:・・・それで、奇妙なことが起こったの。商談中に、あの男のところに同じラグビー部の男が現れて、そいつも大男で同じくらいの背の高さ。でも、ずっとにこやかなやつなんだけど・・・うん・・・にこやか、それでいて厚かましいって感じかな。そいつがジュソンの肩を抱いた感じが・・・。

ミ:感じが?(ジヨンをじっと見る)

ジ:う~ん・・・パッと頭に浮かんだ言葉が、「仲間」と・・・「恋人」。
イ:気持ち悪いな・・・。(ジヨンの顔を見る)
ジ:でも、こいつが・・・ソウルデパートのテスさんを知ってたの・・・。
イ:え? (複雑な顔)
ジ:彼女が出入りしてない部署なのに・・・知ってて。この、(名刺を見せる)パク・ドンスのいる海外統治部っていうのは、同じフロアのエレベーターの反対側にあるの。


ミ:それで?(ジヨンを見つめる)
ジ:そいつが私をエレベーターホールまで追いかけてきて、デートしようって言うんです。仕事をやるから、デートしようって・・・雨か雪の日に・・・。(二人を見つめる)
ミ・イ:・・・・。
ジ:今、ラグビー部で借りてるグラウンドは、雨の日は使っちゃいけないんだって。整備の関係で。
ミ:それで、他になんと言った?(睨むように見る)
ジ:ジュソンと3人でデートしようって。私は一人で来いって。それで、テスさんにも声をかけたのかって聞いたら、その男、僕は君のほうが好みだからって・・・。僕は気に入ったって・・・。

イ:・・・先輩、ヤバイですよ、それ・・・。(ぞっとして、ミョンジュンを見る)
ミ:・・・。そいつは「僕は君のほうが好みだから」「僕は気に入った」って言ったんだな?
ジ:はい。
ミ:う~ん・・・。テスさんは誰の好みだったんだろう・・・?
イ・ジ:・・・・。(ミョンジュンを見る)
ミ:ジュソンのか・・・。二人で一人か・・・。
イ:先輩! ちょっとヤバイですよ。もうやめさせましょうよ。ジヨンまで失うことになったら・・・。
ミ:・・・。でも、ここまで出てきたんだぞ。
イ:先輩・・・。


ミ:うん。インソンの報告を聞こう。
イ:・・・はい・・・。おととい、PCで他の地域の殺人事件を調べてみたんです。そうしたら、釜山で一件、同じような事件があったんだ。それが11月19日で、妙に日付が符合するんだ。それを入れると、ヒヨンの事件と「彼女」の事件の間が埋まるんだよ。だいたい一週間おきに。雨の都合もあるけどね。
ミ:時間は?
イ:これは、午後10時なんです。ただ雨が降り出したのが、午後9時過ぎだから、雨の様子を見て、実行する気になったのかもしれません・・・。
ミ:殺し方は?
イ:同じく、26歳女性をアイスピックで一突きです。それにこの女性は172センチで、被害者のパターンが同じなんです。これが現場の写真と、被害者の写真。(PCを二人に見せる)

ジ:なんか・・・雰囲気が似てますね・・・。一回で致命傷を負わせているのに、何回も刺している・・・。
イ:それにね、実際に行ってみると、この場所って周りがものすごく寂しいところで、目撃者なんて探しようもないって感じなんだ。たぶん、車を使っている。


ミ:うん・・・。なぜ、釜山なんだろう? 遊びに行ったついでか、仕事で出かけたついでか。19日って何曜日?
イ:ええっと、土曜日です。
ミ:遊びかな・・・。まず、疑いのある連中のアリバイを調べよう。その二人だな。そいつらがその日、何をしていたか。
イ:それから、先輩。ここからがすごい発見なんですよ。
ミ:早く言えよ。(笑う)
イ:その女性の爪の中に、たぶん、ガイシャの皮膚だと思うんですけど、肉片がありました。
ミ:え?
ジ:すごい!

イ:右手の中指と薬指の爪にほんの少し。だから、片方を分けてもらって、ヨンジュさんにDNAの鑑定、頼んできました。
ミ:そうか・・・。うん・・・。
ジ:ということは・・・私がその二人の何かを手に入れればいいのね?
イ:おい、ヤバイよ、それ。
ミ:ジヨン、まだ早まるな。あまり危険を冒さないほうがいい・・・。
ジ:でも!(ミョンジュンを見つめる)
ミ:待て。慌てるな。・・・一人で危険なことはするな。(少し怒ったように見つめる)



ジヨンはその顔にドキッとした・・・。
いつもとちょっと違った感じがしたから・・・。


でも、確かめようがない・・・先輩はサングラスをしているから・・・。
目がはっきり見えたら、その何かがはっきりわかったかもしれないのに。





ミ:DNA鑑定を急いでもらうのと、とりあえず、そのM商事の二人を調べよう。早めにしないとな。インソン、天気予報はどうだ?
イ:13日の火曜日が雨か雪ですね・・・。
ミ:週明けか。



3人は背筋が凍るものを感じた。

・・・どうやって、ジヨンを守るか・・・。



ミ:ジヨンの場合は、防弾チョッキという訳にはいかないからな・・・。コートを脱がないところなら、それでもいいが・・・。ホントにデートだった場合に困る・・・。(考える)
イ:・・・。(とても心配そうだ)
ミ:この週末に対策を練ろう。デパートの定休日は月曜日だったな。月曜日に雨が降ってもあっちからは連絡がつかないわけだから、日曜日まで雨が降らないことを祈ろう。
イ:ふう・・・。ジヨン・・・。おまえ・・・。(どうしようもないという顔をする)
ジ:何? (インソンを見る)
イ:・・・・頑張れよ。(やさしく言う)
ジ:うん・・・・。(見つめる)










【男たちの部屋】


ジュソンは、買ってきたコンビニ弁当の袋をテーブルに置いて、一息ついた。

あの女が今日、会社へ来た。
初めて見た時から気に入った。

とてもいい・・・。
顔もなかなかだ。
あのスタイル。あの背の高さ。
ちょうどピッタリ・・・。


しかし、忘年会の景品も魅力的だな。
まずは、仕事を発注しておこうかな・・・。


今日は、ドンスは残業だと言っていた。


この係りは大嫌いだ。
しかし、仕方ない。

あいつがいなかったら、この遊びも続けられないからな。

仕方ない、やるか。


冷蔵庫からコーラを取り出す。
そして、今、テーブルの上に置いたコンビニ弁当の袋とともに、奥の部屋まで持っていく。



カギを開ける。

中を覗く。


ジュ:おい。夕飯だ。ここに置くぞ。おい! 礼ぐらい言えよ。
男の声:・・・ありがとうございます・・・。(弱々しい)
ジュ:ふん!


バタンとドアを閉め、カギをかける。


ジュ:まったく、くせ~ぜ。







リビングでソファに座り、TVを見ていると、ドンスが帰ってくる。


ド:ただいま~。ああ、疲れた。・・・飯はやったのか?
ジュ:ああ。
ド:(冷蔵庫へビールを取りにいく)おい。今日の女、なかなか、よかったじゃないか。見っけもんだな。(笑って、ジュソンの隣に座る)
ジュ:まあな。
ド:ふん。(笑う)来週、やるだろ?
ジュ:うん・・・。だけど、忘年会の景品も魅力的だよな。
ド:だよな?(笑う)そのくらいのお礼はしてやろうぜ。ファックスで注文しちゃえよ。
ジュ:うん・・・。でも、もう一度会いたいな・・・。(ちょっと笑みを浮かべる)
ド:おい!(持っていたビールをジュソンの顔にかける)女なんか、好きになってるんじゃねえよ。
ジュ:(顔を拭き、ドンスを見つめる)わかった・・・。
ド:あいつらみたいに醜い生き物と一緒になることを考えるな。
ジュ:わかった・・・。
ド:好きになんかなるなよ・・・。おまえにはオレがいるだろ?(見つめる)
ジュ:・・・。(見つめる)あ、この間、釜山で買った漬物、食べてみるか?
ド:いいねえ。










【ヒョンソンの悲劇】


大学の近くのコーヒー店はキム・ヒョンソンにとって、最高の憩いの場であった。
大好きな漫画を読んで、大好きなコーヒーを飲む。
そして、彼の大好きなアニメのキャラクターにそっくりのパク・ユンヒがそこにいる。
彼女が笑顔でコーヒーを持ってくる。最高だ。

おととい、彼女に手紙を渡した。「僕と付き合ってください」と。
僕だって、こんな身なりで今は冴えない感じだけど、頭だって悪くないし、将来、アニメの仕事についたら、誰にも負けないものがある。
今、有名なアニメのプロダクションにシナリオを送っている。後は、結果待ちだ。



ユンヒがやってきた。


ユ:ねえ。これ、見て。


封筒をおいていった。

ドキドキしながら、開ける。


「ごめん。付き合えない。ユンヒ」

これだけかよ・・・理由は? それもないのかよ・・・。



店の中では他の客もいて、話にならない・・・。

ユンヒはバイトの時間が終わって、帰り支度をして、裏から出てくる。マスターに、


ユ:お先に失礼しま~す!
マ:お疲れ!




ヒョンソンは、何かに憑かれたように、カバンの中から、筆箱を出して、カッターを取り出し、ユンヒのあとをついていく。


少し雨が降り出して、赤い傘を差して、ユンヒが歩く。
ヒョンソンはコートのフードをかぶり、後ろをついて行く。


狭い路地の脇を彼女が通った。


ヒ:ユンヒさん、待って!
ユ:(振り向いて)なんなの、あんた。
ヒ:もう一度、考え直してくれないか?
ユ:だめなもんはだめよ。私、あんたにぜんぜん興味ないのよ。
ヒ:そんな・・・。いつも笑顔でコーヒー出してくれるじゃないか!
ユ:だって・・・だって仕事だもん。
ヒ:ねえ。ねえ、もう一度、僕のこと、考え直して。(ユンヒを押す)
ユ:ちょっと、何よ。放してよ。人を呼ぶわよ!


今の言葉に、ヒョンソンの顔つきが変わった。
ユンヒをドンドン押して、路地の奥へ連れていく。小雨の中で、ユンヒに圧し掛かる。


ユ:やめてよ、やめて!
ヒ:もう一度、もう一度さあ・・・。



ヒョンソンが彼女のコートを開き、むりやり体を押し付けた。


ユ:バカやろう!(強く足蹴りをして逃げようとする)


ヒョンソンはユンヒにバカにされたと思い、ポケットからカッターを取り出す。


ユ:な、何よ、あんた・・・。何なのよ。・・いや・・・いや・・・。(カッターを持ったヒョンソンともつれる)






白い車が路地の手前のジュースの自動販売機の前に止まる。


ジュ:(運転席から)オレ、コーヒーでいいや。



ドンスが傘を差しながら、自動販売機でコーヒーを買っていると、赤い傘が転がっている。不審に思って、路地を覗くと、男と女がもつれている。

ジュソンを呼ぶ。


ド:おい。ちょっとおもしろそうだぞ。




二人はヒョンソンとユンヒがもつれているところへ行く。

ドンスがヒョンソンを捕らえる。

仰向けになったユンヒが小雨の中、大男の二人を見て、叫ぶ。


ユ:そいつを警察に連れてって・・・。


ドンスとジュソンがよく見ると、女は血だらけだ。
ヒョンソンがユンヒをカッターで脅して、レープした時にできた切り傷が手や胸にあり、そこから血が流れている。


ド:(うれしそうに)ジュソン。すごいチャンスだぞ。簡単に殺せるよ。おもしろいじゃないか。犯人もいるしさ。
ジュ:えっ? (驚く)
ド:一回やってみたいって言ってたじゃないか。刺せよ。早く刺せよ! こんなチャンスはないぞ!(睨みつける)




ジュソンはちょっと躊躇するが、ドンスの強い視線に、落ちていたカッターを拾い、ユンヒのほうへ歩いていく。


ヒョンソンが我に返って叫ぶ!


ヒ:ユンヒ! 逃げろ! 逃げるんだ! 殺される!




ユンヒが「えっ?」と男を見た瞬間、男の影が彼女を覆った。









今、ヒョンソンは一人、暗い部屋に閉じ込められている。


あのユンヒは死んだのか・・・。
彼女が血だらけでぐったりしたのを見たのが最後だった。

あれからどうなったのか・・・。


僕があんなことをしなければ、彼女は殺されずに済んだ。
ただ、脅すだけだった・・・。
ただ、彼女を自分のものにしたかっただけなのに。
殺す気なんかなかった・・・。
それなのに。



男たちはまだ僕を生かしておくつもりらしい。


あいつらが人殺しゲームに飽きた時は、僕も死ぬんだ・・・。
その犯人として・・・。


でも、ユンヒのいない世界で生きていても仕方ないさ・・・。













【ジヨンの運命】


12月10日。
ソウルデパートの外商に、ジュソンから電話が入った。


ジ:はい。お電話変わりました。ソンです。
ジュ:ソンさん? M商事のチョン・ジュソンです。人事課の忘年会の景品、お願いします。これから、ファックスで、商品名と個数を送りますから、手配お願いします。
ジ:あ・・・ありがとうございます。昨日のお見積もりでよかったんですか?
ジュ:とても、気に入りました。
ジ:よかったです。
ジュ:今日中に手配してください。会社が土日休みだから。確認だけしておきたいんです。
ジ:・・・はい。
ジュ:ソンさん・・・。
ジ:はい。
ジュ:昨日、パク・ドンスがお誘いしましたけど、来週中に一度、飲みましょうよ。たぶん、月曜日か火曜日。この辺りが雨か雪ですよ。
ジ:(ドキンとする)あのお、月曜日はこちらは定休日なんです。
ジュ:じゃあ・・・携帯教えてくれる?
ジ:・・・申し訳ございません。お客様には、そういうことはできかねます・・・。
ジュ:ふ~ん・・・。まだ、お客さんなんだな、僕たち。わかりました。じゃあ、たぶん、火曜日に。とにかく、商品のほうは今日中にお願いしますね。
ジ:かしこまりました。



ジヨンは電話を置く。

呼吸が苦しくなってくる。



あいつらは、私の命を奪っても、買い物だけはちゃんとするんだ・・・。


ジ:ちょっと席を外します。






ジヨンはデパートの屋上へ上がる。

この季節は子供たちの遊園地もお休みだ。
エレベーターのある建物のペットショップしか開いていない。




ジヨンは人気のない遊園地に佇んで、寒さに凍える指で、先輩に電話を入れた。


ミ:はい、ミョンジュン。ジヨン?
ジ:・・・はい・・・。(苦しい)
ミ:どうした?
ジ:たぶん、火曜日に会います、あいつらに。
ミ:連絡してきたのか?
ジ:ええ。・・・あいつ、買い物だけは急いでましたよ。私を殺す前に、ちゃんと手続きをしてほしいって。
ミ:ジヨン!
ジ:先輩・・・。やっぱり、きっとあいつらです・・・。

ミ:一度、会おう。明日、また「紫の部屋」で。インソンと行くよ。
ジ:私は今、先輩に会いたいです! (先輩に会って、抱きしめてもらいたいです)
ミ:・・・仕事を片付けろ。そいつの依頼があるんじゃないか? 
ジ:ええ・・・。(涙ぐむ)
ミ:こっちもおまえのための準備をしなくちゃならないから・・・明日。
ジ:はい・・・。
ミ:また、明日、電話してくれ。
ジ:先輩!
ミ:頑張れ!
ジ:はい!





翌日、インソンと3人で会って打ち合わせをしたが、ジヨンが一番望んでいた、ミョンジュンの抱擁はなかった。











火曜日の朝。
ポツポツと、冷たい雨が降ってきた・・・。

ジヨンは窓の外を見て決戦の時を思う。



どうか、私に力をください!




ヨンジュが部屋をノックする。


ヨ:ジヨン!
ジ:はい、どうぞ。


ヨンジュが入ってきた。



ヨ:こんな日に朝から検死が入っていて。先に行くけど・・・。ああ、ジヨン!(思わず、泣けて、ジヨンを抱きしめる)・・・。(髪を撫でて、顔をやさしい目で見つめる)
ジ:ヨンジュさん、今までありがとう。なんとか、頑張ります。
ヨ:うん。・・・ねえ、座って。




二人でベッドに座る。ヨンジュがやさしく、ジヨンの手を両手でギュッと握り締める。



あっ、先輩とそっくり・・・。


こうしていつも手を握ってもらったのかしら・・・。

それとも、
・・・握ってあげたの?



ヨ:(目を閉じて)あなたが無事に帰ってこられますように・・・。あなたの心が恐怖に打ち勝って、自分の力を発揮できますように・・・。私の愛であなたを守れますように・・・・。



ジヨンはじっとその手を見つめている。

ヨンジュは目を開けて、ジヨンのその視線に気がつき、ジヨンの顔を見る。



ヨ:ジヨン・・・・。(ジヨンを見つめている)
ジ:・・・・?(ヨンジュの顔を見る)
ヨ:・・・彼が手を握ってくれたのね?
ジ:・・・。(ただヨンジュの顔を見つめる。なぜか、涙が出てくる)
ヨ:・・・そうだったの・・・。



ヨンジュもじっとジヨンを見つめて、涙ぐむ。
そして、頷いた。


ヨ:そうだったの・・・。(涙がこぼれる)



ミョンジュンの声:オレの愛でおまえを守り抜くことができるように・・・。






ジヨンはよくわからないが・・・何かが・・・何かが漠然とわかる。



ヨ:行くわね・・・。頑張って。祈っているわ。あとで、ミョンジュンが来るのね?
ジ:はい。万が一の時のために、なんか武装してくれるって・・・。
ヨ:そう・・・。なら、大丈夫ね。くれぐれも気をつけてね。(そして年上らしく見つめる)ホントに身の危険を感じたら逃げなさい! 恥じゃないわ。生きてることが大事よ。わかってるわね?
ジ:はい!
ヨ;じゃ、行くわ。



ヨンジュは出かけていった。




ジヨンはさっきのヨンジュの言葉を噛み締めるが・・・・本当のところはどうなのか・・・。




もうすぐ、先輩がやってくる。








ミョンジュンがやってきた。


ジ:先輩!(ドアを開けて招き入れる)
ミ:大丈夫か? ヨンジュは?
ジ:検死があるからって、今日は先に出ました。でも、とても励ましてくれました。
ミ:そうか・・・。(やさしく言う)
ジ:先輩。それ、なあに?(ミョンジュンの荷物を見る)
ミ:うん・・・。




リビングに入って、ミョンジュンは持ってきたものを取り出す。
ジヨンの前にミョンジュンが立つ。


ミ:まずはマイクをつけるぞ。
ジ:どこに?
ミ:胸に。
ジ:やだ・・・自分でつけます。(困った顔をする)
ミ:何言ってるんだよ。恥ずかしがってる場合じゃないだろ?
ジ:だって・・・。(すごくいやな顔をする)
ミ:失敗は許されないからな。ヨンジュがいないんだから、仕方ないよ。彼女にやってもらうつもりだったんだよ。
ジ:う~ん。どのくらい、開けたらいいですか。(セーターの胸を開ける)
ミ:下着になれよ。
ジ:ええっ!(ゲ~!)
ミ:早く。時間がもったいない。それにこういうことは事務的にやったほうがいいんだ。
ジ:はい・・・。(ブスッたれる)



ジヨンは上半身、ブラジャーだけになる。
ミョンジュンが右の乳房の上にマイクを貼り付ける。
そして、少し離れてみる。


ミ:その辺でいい? 胸が開いたものを着るのか?
ジ:いえ、ここなら見えません。
ミ:よし。(今のところに補強のテープを張る)出来上がり。
ジ:これでいいんですか?(胸のマイクを見る)
ミ:うん、これで、こっちにおまえの声が入る。
ジ:そうですか。(安心する)でも・・・トイレも入るんですよね?(怪訝そうな顔をする)
ミ:仕方ないだろ? まあ、オレとインソンしか聞いてないんだから・・・。(ノンキに言う)
ジ:一番やなパターン・・・。最悪・・・。(ちょっとムッとする)
ミ:(ちょっと笑う)心配なら、音なしでやって。
ジ:イヤミだなあ・・・先輩。




ジヨンは洋服を着ようとする。



ミ:おい、まだだよ。これからだ。






ミョンジュンがサングラスを外した。


ジ:これから?
ミ:これから、最高の装備をする。・・・おまえ、今のままだと、刺されたらイチコロだよ。
ジ:・・・。(ぞっとする)



ミョンジュンは、長いサラシのあいだに新聞紙を挟んであるものを取り出す。


ジ:どうするんですか?(サラシを見る)
ミ:これを巻く。防弾チョッキとか考えたけどね、あれだと脇腹を刺される・・・刺されたからね、実際。
ジ:・・・。
ミ:それで、これ。もっとも原始的だけど、暴力団の抗争の時は、あいつらは昔っから、これだ。つまり、これがベスト・オブ・ザ・ベスト。
ジ:それをどこに巻くんですか? ・・・まさか、胸?
ミ:他にどこに巻くんだよ。あいつらは心臓を狙ってくるんだぞ。
ジ:ああ、やだ~。(すごくいやな顔をする)




ミョンジュンがジヨンの前にサラシを持って立つ。


ミ:脱げよ。(普通に言う)
ジ:・・・。この上じゃダメ?(ブラジャーの紐を触って、ミョンジュンの顔を覗く)
ミ:ダメ。ズレるだろ? そうなったら、ヤバイぞ。・・・早くしろよ。



ジヨンは、じっとミョンジュンを見つめるが、サングラスをしていないミョンジュンの目が真剣だ。

意を決して、ブラジャーを外す。




ミョンジュンが覆いかぶさるようにして、胸に新聞紙の入ったサラシを巻く。


ミ:大丈夫? きつ過ぎない? あまりきついと息ができないから、言えよ。
ジ:大丈夫です・・・。




ミョンジュンは黙って、真剣な顔をして作業をしている。
ジヨンの体の曲線に合わせて、胸を巻き、胸の下を巻き、ウエストまで、グルグル巻いていく。
心臓に近いところは厚紙を入れて、念入りに・・・。



ジヨンはその様子を見ていて、なぜか、涙がこみ上げてくる。


ミョンジュンがちょうど胸の下辺りの巻き具合をチェックしていると、手の甲にポツンと、ジヨンの涙が落ちた。





ミョンジュンはジヨンを見上げた。

泣き顔で、ミョンジュンを見下ろしている。



二人はしばし、見つめ合ったが、ミョンジュンは仕事を続け、サラシを完成した。

そして、ミョンジュンが立ち上がった。





ミ:絶対、守るから。おまえだけを死なせはしない。(見つめる)
ジ:先輩。(ジヨンはミョンジュンの瞳を食い入るように見つめる)絶対、守ってね。絶対!
ミ:おまえを見捨てたりなんかしないよ。




ジヨンはミョンジュンの目に確信を持って抱きつく。
ミョンジュンが強く抱きしめてくれた。


ミ:必ず、助ける・・・!
ジ:うん! 絶対、助けに来てね。頑張るから。心を強く持って頑張るから!(先輩のために!)



ミョンジュンの胸の温かさ。彼のニオイがして、ジヨンはしばし、目を閉じる。







ミ:さあ、行くぞ! (体を離す)おまえ、その顔じゃあ、外へは出られないな。(涙を拭ってやる)
ジ:ヒドイ!(自分でも涙を拭う)
ミ:さあ、トイレも済ませて。そうしたら、マイクのスイッチ入れるからな。(見つめて笑う)
ジ:(じっとミョンジュンを見つめる)はい!



ジヨンが洗面所へ行った。

顔を直して、トイレに行って・・・そして、ここから始まる。







リビングに一人残ったミョンジュンの顔が、一瞬暗くなって、そして、きゅっと引き締まった。











7部へ続く。







次回は最終回・・・。


ジヨンの運命は・・・。
そして、ミョンジュンとインソンは彼女を救えるのか・・・。












2009/12/14 02:38
テーマ:【創】オレたちに明日はない カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「オレたちに明日はない」5部




BGMはこちらで^^




BYJシアターです。


【オレたちに明日はない】第5部です。


【配役】
イ・ミョンジュン  捜査一課刑事 ・・・・ぺ・ヨンジュン
キム・ジヨン   同じく新前刑事 ・・・チョン・ジヒョン

パク・インソン  同じく刑事  ・・・・チョ・インソン

ソン・ヨンジュ  科捜研・監察医 ・・・イ・ヨンエ





この作品は全てフィクションです。
ここに出てくる団体・名称は実際のものとは異なります。

ではどうぞ、暖かくして、お楽しみください。


ここより本編。



~~~~~~~~~~~~~




「おまえは何を求めてるんだ?
答えなんか探すな


オレたちは、狙った獲物を捕まえるだけだ・・・

そのためだったら、
命も辞さない・・・それがオレたちの仕事だ



正義のためなんて考えないほうがいい。
そんなのは、クソ食らえだ。

それじゃあ、自分の命も守れないぜ



好きなやつはいるのか?

そいつを思い出せ。
そいつのために戦え。



それが、生き残る道だ」




【オレたちに明日はない】5部

主演:ぺ・ヨンジュン


   イ・ヨンエ
   チョ・インソン


   チョン・ジヒョン








【出動-癒されぬ夢を抱いて】



ハア、

ハア、


ハアア、


助けて・・・


助けて!




先輩!!!



「ああ!」



ジヨンは飛び起きた。

部屋の中は真っ暗だ。
時計を見る。まだ3時だ。

そうだ、ここはヨンジュさんのマンションだ。



あの夢を見た。
そして、あの夢がまた少し歪み、私を苦しめた。



竹林で男が肩をたたく。

振り返ると、あの背の高い男だった。

そして、いつものあの土木作業員が私に言うことを、あの男が私に囁く。




父は、私を強いコだと言ったけど、私はちっとも強くない。
こうして、今日も夢にうなされている。




ああ。

先輩に助けてほしい・・・。
明日から、ソウルデパートへ行くというのに、これではだめだ。

こんな弱気では!

自分から切り出しておいて、弱音を吐いてもいいだろうか。


先輩は起きているだろうか。


電話してみようかな・・・。
ヨンジュさんは離れた部屋だし、声は聞こえないだろう。





ジヨンは携帯でミョンジュンに電話する。

ドキドキしながら、ミョンジュンが出るのを待った。




ミ:はい・・・ミョンジュン。・・・ジヨン?(寝ているような声)


わかったの?

そうよね、
携帯に私の名前が出るもんね・・・。


ジ:先輩・・・。寝てた?(つぶやくように言う)
ミ:うん・・・。何?(声がくもっている)
ジ:こんな遅くにすみません・・・。話してもいいですか?
ミ:あ~。(寝返りをして仰向けになる。そんな感じの音がする)・・・いいよ・・・。
ジ:・・・眠れなくて・・・。
ミ:うん・・・。・・・夢でも見たのか?


今のミョンジュンの言葉にジヨンは泣けてしまう。


ジ:(震える声で)すみません・・・。
ミ:・・・いいよ、話してみろよ・・・。
ジ:夢であの男が出てきて・・・。あの竹林にあの男が出てきて・・・。
ミ:うん・・・。
ジ:(少し嗚咽が入って)自分から「おとり」捜査をするって言ったのに、泣き言、言ってごめんなさい・・・。
ミ:・・気にするな・・・。誰だって怖いさ・・・。
ジ:先輩も?
ミ:うん。
ジ:そうお?
ミ:うん・・・。
ジ:明日はなんとか元気になって行きます。でも、今は・・泣かせてください。
ミ:うん・・・。


ジヨンがすすり泣く。


ミ:・・・・。(聞いている)
ジ:先輩、なんか言って・・・。(鼻をすする)なんか・・・勇気の出る言葉をください。
ミ:うん・・・。人は皆、弱いものさ・・・でも、それで泣いていてはいけない時もある。戦わなければいけない時が。その時、踏ん張れるように・・・今は泣いておけ・・・。(やさしく言う)
ジ:・・・はい・・・。先輩・・・いざという時は好きな人のために頑張ればいいんですよね・・・?
ミ:そうだ・・・。
ジ:・・・そうします。
ミ:うん・・・。

ジ:・・・先輩・・・ありがと・・・電話に出てくれて・・・。
ミ:気にするな・・・。
ジ:でも、でもホントは・・・手を握ってほしかったんです・・・。
ミ:そうか。(ちょっと笑う)
ジ:でも、それは明日にします。明日、先輩に会ったら、手を握ってもらって、力をもらいます。
ミ:そうか。
ジ:はい。・・・ありがと、先輩・・・。
ミ:うん・・・。おまえから電話を切れよ。
ジ:私から? ・・・切れなかったらどうします?
ミ:ああ、このまま、寝ちゃうよ・・・。
ジ:ふん。(少し笑う)じゃあ・・・切ります。お休みなさい。
ミ:お休み。




ジヨンは電話を切った。


先輩は温かかった。
迷惑がらず、心を抱いてくれた。




頑張ります。

誰のため?

妹のため? 
自分の心が再生するため?



うううん、先輩のために。

いつも心を抱きしめてくれる先輩のために、
勇気をくれるあなたのために、

私は戦います。



だから、
見守っていて。


朝が来たら、泣かないから。

頑張るから。

命を賭けて戦うから!


今は、先輩のやさしさを抱きしめて、眠ります・・・。

お休み、先輩。








午前8時30分。
今日は、ヨンジュが貸してくれた、ちゃんとしたスーツを着込み、ソウルデパートへ出勤する。
ヨンジュと一緒に地下鉄に乗り、途中でわかれ、ソウルデパートまで来た。

今日はあの男には会わなかった。しかし、どこで見ているかわからない。
注意して行動しなくちゃ。


ソウルデパートの通用口に来ると、守衛室の前に、スーツを着たミョンジュンが立っていた。
初めて見る姿だった。

先輩のスーツ姿はとても素敵だった。
ジヨンはその姿を見ただけで幸せになり、力をもらった気がした。



ジ:おはようございます。
ミ:おはよう。うちの署長から、こっちの外商部の部長にお願いしてもらった。全面的に協力してくれるそうだ。行こう。オレは挨拶して帰るけど、おまえは今日からここのOLさんだからな。
ジ:はい。
ミ:部長と課長はおまえの身分を知っているが、他の人はおまえを本当の社員だと思っているから。わかったか。
ジ:はい。(あ、そうか!)だから、先輩もサラリーマンしてきたの?
ミ:(笑う)・・・。
ジ:・・・とっても素敵・・・。かっこいいです。(目を輝かせて見る)
ミ:行こうか。
ジ:はい!




二人は社員用のエレベーターに乗り、10階の外商部を目指す。
今日は早めに来たので、他に人は乗っていなかった。


ミョンジュンが横に立っているジヨンの手を何気なく掴み、ぎゅっと握った。
ジヨンは一瞬驚いたが、深夜の電話のことを先輩は覚えていてくれたのだ。


ジヨンはそっと目を閉じて、その手の温もりに心を集中した。









ヨンジュは科捜研の自分のデスクで、頬杖をついて、俯いている。

先輩であり同僚の監察医のパク・テウが入ってきた。
ヨンジュのデスクの端にちょっと腰掛けて笑う。


テ:おい、どうした?
ヨ:え?(顔を上げる)
テ:(顔を覗き込んで)おい、目が赤いぞ! また、元ダンナのことで泣いたか?
ヨ:そうよ・・・よくわかるわね。
テ:それしか泣くことがないだろ?(微笑む)
ヨ:そうね・・・。(ちょっと俯く)
テ:君の人生最大の失敗は、あの男と結婚したことだ。
ヨ:そうお? 最高の出来事だと思ってたけど。(見上げる)
テ:大失敗さ。
ヨ:そうお?
テ:どこがいい? 頭より体を張る男。
ヨ:そこがいいわ。(にこやかに言う)
テ:自分のカミサンを泣かせて仕事に命を賭ける。
ヨ:そうね。
テ:最低だ!(ちょっとおどけた感じ)
ヨ:まあ!
テ:あいつ、ドンパチ以外でなんかできることはあるのか?
ヨ:たとえば?
テ:デスクワークは?
ヨ:ぜんぜん。
テ:計算なんかできるのか?
ヨ:たぶん、ダメ。
テ:料理は?
ヨ:ぜんぜん。
テ:掃除は?
ヨ:たぶん、できない。
テ:洗濯は?
ヨ:たぶん、しない。
テ:愛妻のために時間を割いたことがあったか?
ヨ:う~ん・・・そんなこともあったような・・・。
テ:でも、ない!
ヨ:そんな!(ちょっと笑う)
テ:ちっともいいところがないじゃないか!
ヨ:ホント!(笑って言う)


テ:元気になった? (笑顔で言う)
ヨ:うん。
テ:そう?
ヨ:うん・・・ありがとう・・・。
テ:でもって顔してるよ。(やさしく言う)
ヨ:そう?
テ:もう、ミョンジュンのことは忘れろよ。(少し真面目になる)
ヨ:(ため息をつく)はあ・・・。


テ:あいつを心配して、一生を過ごすつもり?
ヨ:わからない・・・でも、心から離れないの・・・・。


テ:確かに、あいつはいいやつだ・・・。僕も好きだよ。でも、たぶん・・・君とは根本が違うんだ。
ヨ:そんな・・・。
テ:もう手放せよ。他の人にやれよ。
ヨ:そんな。
テ:彼を心配しながらも、元気にやっていける人に預けろよ。
ヨ:・・・。
テ:きっと、そういう人はいるさ。君のように、いつもいつもあいつの事を心配してたんじゃあ、参っちゃうよ。
ヨ:でも・・・。


テ:ヨンジュ。君が彼を好きなのはわかる。・・・でも、こう考えたことはない?
ヨ:何・・・?
テ:君はミョンジュンと結婚して、いつも、とっても不幸だって顔をしてた・・・愛してるけど、不幸・・・。それって、ミョンジュンだけのせいかい? 
ヨ:・・・。
テ:あいつが撃たれたり刺されたりして、確かに大変だった。でも、あいつは自分の仕事に忠実で、君を愛していて・・・幸せになれるはずだった。でもなれなかった。それってあいつが選んだ仕事のせい? あいつだって君を思って、苦しんで悩んだじゃないか。全てあいつが悪いのかな? 君は自分の気持ちをあいつに押し付けていなかった?
ヨ:そんな・・・。
テ:あいつはこの結婚が失敗に終わって、きっともう、自分は人を幸せにできないって思い込んでるよ。・・・でもさあ、もし、違う相手だったらどうだろう? あいつの仕事も全て受け入れて、それでも好きでいてくれる人だったら? あいつが疲れて帰ってきた時、心配だったと泣かれるより、「疲れたでしょ? 元気が出るもの作ってあげる」って言ってくれる人だったら? そうしたら、もっと家が好きで、家に戻ったかもしれない・・・。いつも君に「すまない、ごめん」て言ってた生活ってちょっとかわいそうだった気もするな。
ヨ:もう・・・どっちの味方?


テ:つまり、もう君は、あいつの妻の座を明け渡せっていうことだよ。
ヨ:もう明け渡したわよ。
テ:違うだろ? 今でもずうっと心配してて、あいつを思ってて・・・あいつの気持ちを引き止めている。それをあいつも知ってるから、恋もしないし、再婚もしないんだよ。
ヨ:・・・。(下を向く)
テ:自分から別れておいて、あいつとの結婚式の写真を飾ってるって、変だよ。
ヨ:・・・だけど・・・。
テ:もう手放せ。それで幸せにしてやれよ。そして、君も、その重荷を下ろして、次の道に進んだほうがいい。愛してたって、どうしようもないこともあるさ。
ヨ:ふ~ん・・・。(ため息をつく)


テ:おい。いい思い出だけ残して、もう楽にしてやれよ。そうすれば、君も楽になるさ。
ヨ:う~ん・・・。(悩む)
テ:ソン・ヨンジュ! ・・・僕をいつまで待たせるつもり?
ヨ:テウ・・・。ごめん・・・・。
テ:楽な道はもう用意されてるのに。
ヨ:・・・・。


テウがヨンジュの手を握った。







ジヨンは外商部の部長席に座って、秘書の手伝い兼雑用をしていた。


12月9日。

あの商社の総務課に忘年会の景品を納める日だ。

今日まであの男と会っていない。
正確には、自分の記憶では会った覚えがない。

納品車に乗って一緒に出かけることにする。


部長がデスクでジヨンに声をかける。


部:ソン君。
ジ:はい。
部:今日はM商事の総務課の納品日だね。荷物と一緒に、新任の挨拶に行ってきてくれ。くれぐれも粗相のないように。大事なお得意さんだからね。
ジ:はい、かしこまりました。
部:同じフロアでも、もしご希望があれば、聞いてあげて。少しずつ顧客を増やしたいからね。
ジ:はい。


ジヨンはここでは「ソン」と名乗っている。ヨンジュのマンションの表札が「ソン」だから。








ジヨンは今、M商事の総務課の男性と一緒に人事課を訪ねている。


ジ:もしよろしかったら、忘年会の景品、うちにやらせてください。
総:ここに頼むと、2割引きだし、どこでも運んでくれるし、いいですよ。
人:そうか・・・。そうだな・・。あ、ジュソン! おまえ、忘年会のほうはどうなってる?

人事課長が部屋に入ってきた男に声をかけた。



ジヨンは何気なく後ろを振り向いた。

あの男だった。






あの男が近づいてくる。

ジヨンは立ち上がって軽く会釈をする。


ジ:初めまして。ソウルデパートのソン・ジヨンです。いつも総務課でお世話になっております。(名刺を差し出す)
ジュ:あ、どうも。僕はチョン・ジュソンです。(名刺を出す)
ジ:忘年会を仕切ってらっしゃるんですか?
ジュ:ええ、まあ。
ジ:なんなりとお申し付けください。うちのデパートではいろいろな商品を扱っておりますし、お値段も外商を通すと、2割引きです。それをソウルデパートの包装紙でお包みするので、とても割安感があるんですよ。(にこやかに言う)
ジュ:はあ。(ジヨンをじっと見ている)
人:じゃあ、ジュソン。頼んだよ。私はこれで。(ジヨンに挨拶する)
ジ:(人事課長に)ありがとうございました。では、チョンさん、こちらにカタログがございますので、ご覧ください。
ジュ:ええ。(ジヨンを見つめながらカタログを見る)



そこへ男が入ってきた。


男:ジュソン!


ジュソンが振り返る。

その男はとても朗らかそうで屈託のない笑顔を浮かべている。
ジュソンの横に来てジュソンの肩を抱く。

男:おい。ラグビー部の忘年会のことだけど・・・。(ジヨンに気づく)オタクは?
ジ:ソウルデパートのソンです。ラグビー部も忘年会なんですか?(にこやかに男を見る)
男:ええ。そうだけど。



ジヨンは二人の男を見る。
二人とも身長が190近くあり、ガッシリしている。後から入ってきた男のほうが明るい感じだ。
しかし、ジュソンの肩を抱くしぐさがとても・・・不思議な感じに見える。


「仲間」あるいは、「恋人」・・そんな言葉が頭に浮かんだ。



ジ:あ、失礼しました。これが私の名刺です。何かありましたら、声をかけてください。
男:じゃあ、僕のも。はい。(懐から名刺を出す)
ジ:(名刺を見て)海外統治部ってどちらのフロアにあるんですか?
男:ここの階ですよ。エレベーターの反対側。
ジ:そちらにも顔を出してみようかしら?
男:(ジヨンを見て笑う)積極的な人だな。前任者とかなり違うな。



テスを知ってるの??



ジ:うちのハンがそちらにもお邪魔したんですか?
男:あ、いや・・・。(ちょっと表情が翳る)



男の返答に、ジュソンが男を見つめる。

妙な感じだ・・・。この二人の関係は・・・。そして、テスは。

どうなってるの?




ジュ:すみません。少し見積もってもらっていいですか? この辺の品で。
ジ:ええ、喜んで。うれしいです。いくらでも見積もりますよ。



そう話している横で、さっきの男が少し暗い目をした。

ジヨンは気がつかないふりをして、テキパキと仕事をした。


ジヨンは父親が税理士なので、大学時代はよく経理のアルバイトをした。だから、計算やデスクワークはこなれていて、とても速い。

手早く見積もりをして、デパートのほうへ後ほど電話をもらうことにして別れた。







エレベーターホールで、エレベーターを待っていると、さっきの男が追いかけて来た。


男:ねえ、ソンさん。今度、デートしませんか?
ジ:は?
男:ラグビー部のも見てくださいよ。ジュソンと3人でデートならいい?
ジ:・・・・。
男:仕事をあげるよ。(笑って見つめる)
ジ:・・・いつですか?
男:次の・・・雨か雪の日。
ジ:雨か雪?
男:そう。最近借りてるグラウンドがね、雨だと、使わせてくれないんだ。整備がたいへんて。それに雪はこっちもお手上げだろ?
ジ:・・・そうですか・・・。(呼吸が苦しくなってくるが、我慢する)では連絡をお待ちすればいいんですか?
男:そうだね。(名刺を見て)ソウルデパートのここへ電話すればいいんだね? あ、上司なんか連れてこないでよ。君に会いたいだけなんだから。(にこやかに笑う)
ジ:はい・・・。


男が去って行こうとする。

ここでちょっと勝負をするか。



ジ:あの・・・パクさん。
パ:何? (振り返る)
ジ:前任者のハンにもお声をかけていただいたんでしょうか?
パ:(奇妙な目つきをする)なぜ?(声が低くなった)
ジ:さっき、ハンをご存知のようでしたから。
パ:ああ。そうか・・・。(ジヨンをじっと見る)でも、君のほうが僕は好みだから・・・。君のほうが積極的だし。僕は気に入ったよ。じゃあ。(去っていく)





ジヨンはエレベーターが来て、乗り込もうとするが、視線を感じて人事課のほうを見る。ジュソンがこちらを見ている。

ジヨンは作り笑いをして、エレベーターに乗り込んだ。





エレベーターの中で、一人になって、ジヨンは血の気が引いていくのがわかった。



ここにいる!

犯人は絶対ここにいる!

でもどっち? いったいどっち・・・。

それとも二人?

二人の見つめ合った感じが奇妙だった・・・。




ああ、先輩!





ジヨンは納品車を先に帰したので、一人、地下鉄に乗り込んだ。


胸が苦しく呼吸ができない・・・。

今、先輩に会わないと、窒息してしまう。



携帯で電話する。



ミ:はい・・・ミョンジュン。ジヨン?
ジ:先輩! M商事に行って、ちょっとたいへんな事態になってきました。
ミ:どうした?
ジ:今、会いたいんです! 先輩に会いたいんです!
ミ:落ち着け。
ジ:これから署に行きます。
ミ:待て。署には近づくな。あの男には、オレの顔もバレている。
ジ:どうしたらいいの? すごく先輩に会いたいんです。
ミ:まず、デパートのほうを早退しろ。そして、オレの言うところへ行くんだ。
ジ:はい・・・。(息が漏れるような声)
ミ:ジヨン。深呼吸してみろ! 落ち着け。まずはオレが言うところまで辿り着け。
ジ:はい。







ジヨンは、まず、ソウルデパートの外商部の部長に電話して、今日は「直帰」ということにしてもらう。
そして、地下鉄を乗り継ぎ、先輩の指定した中華料理店へ行く。


ジ:(携帯で話しながら)もしもし。着きました。
ミ:入って、まっすぐ厨房へ行け。
ジ:厨房?
ミ:そうだ。扉を開けて、中を突っ切れ。



ジヨンは言われたとおりに進む。厨房を通り、主人に、ミョンジュンに言われた通り、ピースサインを送る。主人は知らん顔で、ジヨンをやり過ごす。




そして、裏通りに出る。そこから細い路地にある壊れそうな木賃宿に入る。
意地悪そうな女将が出てくる。



女:なんだい?
ジ:「紫の部屋」は空いていますか? (ミョンジュンに言われた通りに言う)
女:おいで。



ジヨンは女将の後をついていく。


回りまわって、奥まった部屋に通される。

中に入ると、そこは、机があって、まるでオフィスのようだ。




イスに座って、ミョンジュンを待つ。



15分程して彼がやってきた。


ドアが開く。


ミョンジュンが入ってきた。

たった4日ぶりなのに、ジヨンは、ものすごく懐かしくて、会いたくて仕方がなかった思いがあふれてきた。
そして、今日の出来事がジヨンに与えた戦慄を思い出し、ジヨンは思わず、ミョンジュンに抱きついてしまう。




ジ:先輩!(ミョンジュンを強く抱きしめる)
ミ:どうした?(顔を覗き込む)
ジ:・・・。(泣きそうだ)
ミ:どうした? (やさしく顔を見る)何があったんだ?
ジ:それが・・・。(目を見開いてミョンジュンを見る)


ミョンジュンがやさしく見つめて答えを待つ。



ジ:先輩・・・。たぶん・・・私。今日、犯人に会ってます・・・。(抱きついたまま、見つめる)
ミ:・・・。(顔を覗き込む)どういうことだ?
ジ:今日、M商事で、奇妙な2人に会いました・・・。あの男とその友人。二人とも身長が190センチほど。ラグビー部です・・・。
ミ:(ジヨンをゆっくり引き離し)・・・もうすぐ、インソンもやって来る。釜山へ行ってたんだ。あいつも新情報を持ってくる・・・。
ジ:え?・・・釜山・・・?
ミ:全て照らし合わせてみよう・・・。必ず、何か、糸口は見つかるさ・・・。



ジヨンは、いよいよこの事件の犯人との対決が近づいてきたことを予感し、ミョンジュンを熱く見つめた。



自分の癒されぬ夢を打ち砕くため、
そして、この人への愛のために、私は戦う・・・。



二人は、インソンがやってくるのを待った。









6部へ続く。





ジヨンの出会った男たちはいったい・・・。
インソンはなぜ、釜山へ行ったのか・・・。
















2009/12/12 00:41
テーマ:【創】オレたちに明日はない カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「オレたちに明日はない」4




BGMはこちらで^^




BYJシアターです。


【オレたちに明日はない】第4部です。


【配役】
イ・ミョンジュン  捜査一課刑事 ・・・・ぺ・ヨンジュン
キム・ジヨン   同じく新前刑事 ・・・チョン・ジヒョン

パク・インソン  同じく刑事  ・・・・チョ・インソン

ソン・ヨンジュ  科捜研・監察医 ・・・イ・ヨンエ


この作品は全てフィクションです。
ここに出てくる団体・名称は実際のものとは異なります。



幼稚園教師のヒヨンの死から2週間・・・。
インソンの恋人、テスが殺された。

これは猟奇的な殺人者の仕業なのか?




いよいよ佳境に入っていきます。


心と心が触れ合い、縺れ合う思い・・・。

恋も。事件も。



心が苦しくなる回ですが、最後までお付き合いください!


ではどうぞ、暖かくして、お楽しみください。


ここより本編。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






「何のために戦うの?
あなたは答えを探してはいけないと言った

でも、
私には見えない恐怖と
戦いを続けていく虚しさが
とても辛い


あなたは命も辞さないと言った


私は怖い
恐怖が私を包み込む


お願い
助けて

力をちょうだい

いつも私を守って

見えない恐怖に飲み込まれないように

ちゃんと戦えるように
命を惜しまないように

正義のために
愛のために

全力を尽くせるように


ちゃんと
私を捕まえていて」





【オレたちに明日はない】4部



主演:ぺ・ヨンジュン


   イ・ヨンエ
   チョ・インソン


   チョン・ジヒョン







【殺人の行方】


会議室でインソンがPCの画面を壁に映し出している。


イ:今までのデータをまとめると・・・ええっと、一人目の被害者である、パク・ユンヒ、24歳は大学近くのコーヒー店で働く女性で、身長153センチの小柄な美人。これが写真です。ね、キレイでしょ? 彼女には日ごろから付きまとっていた男がいまして、それがこの・・・、ちょっと写真を出しますね、こいつです。(顔写真を映す)近くの大学に通う23歳の男、キム・ヒョンソンです。非常に内気な、というか、オタクっぽいやつで、俗に言う、アニメオタクってやつですけど。それで、しょっちゅう、このコーヒー店でアニメを読んでいて、それで、ユンヒに恋しちゃったらしいんです・・・。それで、やつの筆箱がですね・・・この店に残されているんですが、たぶん、そこから、凶器のカッターを持ち出したと思われます。

ジ:じゃあ、もう犯人だって断定されてるみたいじゃないですか? なぜ捕まえないの? この事件て、うちの管轄じゃないにしたって、一連の事件の発端なわけでしょ? 一回、彼の話を聴きたいですね。

イ:それが、こいつが行方不明なんだ・・・ユンヒの事件以来ね・・・。アパートに帰った様子もないんだ。着たきりすずめで行方不明。それから、こいつも小柄で、165センチだから、あとの2人は襲えない・・・。


ミ:それに凶器も違いすぎるな・・・。ヒョンソンは小柄で痩せている男だから、ヒヨンやテスさんのような大柄な女性を一突きで刺し殺すことはできないだろう。検死でわかった刺し方は、こいつじゃ、無理そうだからな。・・・殺人に対する思い切りも違う気がする・・・。ユンヒに対しては、つついたり切りつけたりしているが、殺しには至っていない・・・。殺しに対しての思い切りが、今一つ弱くて、付き合いを拒否された恨みを晴らすために、相手を傷つけているだけで、殺す気がなかったんじゃないかな・・・。ユンヒを傷つけた凶器はカッターで、とりあえず筆箱に入っていた手持ちのもので相手を傷つけている。準備をしてないんだな、殺人のための。・・・しかし、あとの2人はアイスピックだ。・・・これは筆箱になど入っていない・・・。買いに行かなければ、普通の家にはないさ。今は皆、冷蔵庫の氷を使うからな・・・。アイスピックなんて、日常的に持っているとは思えないんだ・・・。

ジ:じゃあ、やっぱり違う犯人説ですね? インソン先輩もそう?

イ:うん・・・。こいつってアニメオタクということだけで、人を次から次へ殺す殺人鬼っていうニオイがないんだよ。周りの評判もおとなしいやつで、猫をかわいがってたそうだからな・・・。一回、やってしまうことはあっても、ソレを持続するような、うちに秘めたる熱っていうのがあんまり感じられないんだな。

ジ:今、どこにいるのかしら? ずいぶん長い間、隠れてますよね・・・。

イ:それがわからない・・・。突然失踪してしまった・・・何も持たずにね。(ジヨンを見る)
ミ:うん・・・あるいは殺されたか・・・。(ボールペンの先をメモに突き刺す)
イ:・・・ですよね・・・。(ミョンジュンを見る)

ジ:えっ? 誰に?(二人を見る)
イ:真犯人に。(ジヨンを見る)
ジ:真犯人て、ヒヨンやテスさんをやったやつ?
イ:うん・・・。(ちょっと涙ぐんでくる)
ジ:先輩・・・。(インソンの涙に驚く)
イ:ごめん・・・。あいつの名前出さないでくれる? 「被害者3」とかにして。
ジ:わかった・・・ごめんなさい・・・。

ミ:ま、とにかく、我々が持っている事件は2つ。ユンヒは別として考えよう。そして、ヒョンソンの謎の失踪だな・・・。それがこの事件のカギかもしれない。
ジ:先輩。あのヒヨンの死体の近くの木に彫られた「Trait」トレイト、あの謎も解かないと。

イ:どういう意味だろう・・・。

ジ:ヨンジュさんは「裏切り者」って言ってたわ。あの時はそんな風にも考えたけど・・・テスさ、いえ、「被害者3」のことを考えると、どこに裏切りがあるのって思うんです。
イ:・・・・。(複雑な顔をしている)
ミ:じゃあ、それはそれぞれの宿題ということで、考えてこよう。
イ・ジ:はい。










大学2年のジヨンが自宅の階段を下りていくと、階下で話す父と母の声が聞こえる。

リビングで父と母が話している。


母:でも、ジヨンが自分の目で、あいつの公判を見届けたいって言うんですよ・・・。
父:どうするかな・・・連れていくか。しかし、殺人時の詳細が読み上げられるだろう? 若い娘にどうかな・・・あのコの心の傷にならないといいが。将来、男性不審になることもあるだろうし、トラウマとして残らなければいいが・・・。

母:どうしましょう・・・。
父:・・・連れていくか・・・あのコは強いコだから・・・。

母:でも、とても心配なの、心の傷になったらって。
父:しかし・・・あれだけ仲のよかった妹の公判に行かないで済ますやつじゃないからな、ジヨンは。あいつは強い。うん・・・大丈夫だよ。
母:お父さん・・・。


ジヨンは階段に座って、父と母の言葉を噛み締めている。








裁判所。法廷内。

裁:主文、連続婦女強姦殺人で、被告を死刑。・・・・被害者は未成年の少女を中心に、被害者が一人歩きしているところを、道を尋ねるなどして、被害者の善意に付け込むと言う極めて悪質且つ残虐な手段を使っており、その特性は、情状酌量の余地がなく・・・。


極めて悪質且つ残虐な手段を使っており、その特性は、・・・「Trait」トレイトは・・・。



そうだ!
裏切りなんかじゃない!


犯人の残虐な手段あるいは手法-美しく若い女性を、アイスピックを使って、一突きで殺すという手段がこの連続殺人の「Trait」特性・特色であり、

雨の日に、それも午後6時半から7時半の間に犯行が実行できるという生活習慣の「Trait」特徴を持っている・・・。


また、「Trait」犯行の継続の特性を考えた場合、
ユンヒの犯行はヒョンソンがやったとしても、それを真似て、それを続けて、殺人を実行している。

ユンヒが11月5日、ヒヨンが14日、テスさんが28日に殺害されていると見ていくと・・・


ヒヨンとテスの間って雨が降らなかった? 

ううん、そんなことはないわ。今年は雨が多いもん。
それに、殺し方が上手になってる。


間に、まだ発見されてない殺しがあるのかしら?


そうよ、きっと何かある・・・。
だって、殺しがうまくなっているもの。そう言ったわ、ヨンジュさんも・・・。


まだ、隠れている事件があるはず・・・。










ジヨンがハッとして目覚める。


そうよ、裏切り者なんかじゃない・・・。
犯人は自分の生活の「Trait特徴」をおいていったのよ・・・。
そして、犯行の「Trait特性」を・・・。


攻撃的なやつだわ・・・。
私たちに宣戦布告をしている・・・。

ヒョンソンじゃないわ。
先輩が言うように殺されているかもしれない・・・その理由はわからないけど。




ああ、先輩!





会議室を出て、捜査一課を見る。インソンはまたPCで分析している。
インソンの前に立つ。


ジ:ねえ、ミョンジュン先輩は?
イ:先輩? 今、ロッカールーム。(PCをやりながら答える)
ジ:そう・・・。


ジヨンは駆け出していく。


窓際でコーヒーを入れていた次長がその様子を見た。


次:ジヨン君、どうしたの?

イ:先輩を探しにロッカールームへ。(PCを見たまま)あいつ、先輩をお袋代わりにでも思ってるんでしょうかね・・・?
次:なんで? (コーヒーを啜る)
イ:いつも目が覚めたら、先輩を探してますよ。
次:う~む。

イ:あ、いっけねえ・・・。(PCから顔を上げる)
次:どうしたの?
イ:先輩、体調がいいからってシャワー浴びに行ったんですよね・・・マズイな、着替えてるよ・・・。
次:う~む。ま、いいでしょう・・・。
イ:参ったな。あいつが女だって、すぐ忘れちゃうんだよなあ・・・。(反省しながらまたPCを見る)



次長が窓の外を見る。


次:お袋じゃないさ・・・恋だよ・・・。










ジヨンが男性用のロッカールームへ滑り込む。


ジ:先輩?


ミョンジュンはロッカーの前にはいない。
奥に更衣室があるので、そっちのほうへ足を伸ばす。


ジ:先輩?


その奥にシャワールームがあり、今、シャワーの音が止まって、カーテンを開け、人が移動している音がする。


ジ:先輩? (静かに抜き足差し足で歩く・・・) せ・ん・ぱ・い?




奥へ入っていくと、モワッとした湯気の中、背の高い男が鏡に向かって、ヒゲを剃っている。

腰にバスタオルを巻いて、ガッチリした肩、太くて引き締まった上腕、筋肉質な背中、くびれた腰、美しい姿をしている。

ジヨンは、いつも厚着の姿から想像できない後ろ姿に驚くが、その男に声をかけてみる。



ジ:ミョンジュン先輩?


男は驚いて、ヒゲを剃るのをやめ、鏡の中のジヨンを見る。



ミ:おい、おまえ!(驚く)

ジ:先輩! 見っけ!(うれしそうに鏡の中で微笑む)
ミ:おまえ・・・ここをどこだと思ってるんだよ?
ジ:先輩がロッカールームにいるって聞いて・・・。
ミ:全く、おまえは・・・。(呆れる)ちょっと・・・ここはマズイよ。
ジ:なんで?(よくわからない)
ミ:ここは男子用だろ? ・・・それにおまえがオレとここにいるのはマズイよ・・・。
ジ:なんで?

ミ:う~ん・・・たとえ、おまえでもさ・・・。じゃあ・・・オレのロッカーの前で待ってろよ。すぐ行くから。
ジ:・・・は~い・・・。(少しガッカリする)







ジヨンがミョンジュンのロッカー前のベンチに腰掛けて待っていると、ズボンをはいたミョンジュンがやってきた。
足は素足でサンダル履き。上半身はまだ裸でバスタオルを首にかけている。ジヨンはその美しさにしばし見とれる。


ミ:で、何? 事件?
ジ:いえ・・・ちょっと思い当たって・・・。
ミ:そう・・・じゃあ着替えるから、少し待ってて。
ジ:はい。




ジヨンは座ったまま、先輩の着替えを見ている。
ミョンジュンがロッカーを開け、バスタオルを首から外した時、ジヨンは驚く。


左肩と左脇腹に長い傷跡があった。



ジ:先輩・・・それって・・・?

ミ:ああ、これ? ホシにやられた・・・。(ジヨンのほうは気にせず、おばさんが洗濯してくれたTシャツを着込む)

ジ:スゴイですね・・・。

ミ:(ちょっとジヨンを見る)ショック?

ジ:ええ・・・よく死にませんでしたね・・・。(傷を眺めている)
ミ:まあね、いっぺんにやられたわけじゃないから。違う時だから。(ドンドン上着を着ていく)
ジ:スゴイ・・・スゴ過ぎる・・・。(感心している)
ミ:そういう世界におまえはいるっていうことだよ。
ジ:・・・そうですね・・・。(感心する)




ミョンジュンは着替え終わって、ベンチのジヨンの横に座り、ベンチ下の床にあるコンセントにドライヤーのプラグを差し込み、まだ乾き切っていない濡れた髪をドライヤーで乾かす。



今、隣に座っているミョンジュンはいつもの彼と違って、シャンプーのニオイがして、無精ヒゲを剃り落とした美しい横顔で髪を乾かしている。




ジヨンは静かに彼に見とれ、そして・・・とても幸せな気持ちになる。




ミ:どうした? 口数が少ないな・・・。
ジ:え? ・・・先輩を待ってるだけです・・・。(静かな声で答える)



ミョンジュンがジヨンを見て微笑み、また髪を乾かしている。





ジヨンはそんなミョンジュンを見て、胸がときめいてキュ~ンと痛くなり、いつまでもこの平穏な時が続いていけばいいのにと、心から願った。












捜査課に戻った二人はコーヒーを持って、会議室へ行こうとする。
なんとなく幸せそうにウキウキしているジヨンを見て、次長がミョンジュンに声をかけた。


次:ミョンジュン! ちょっと。

ミ:はい。(立ち止まる)
次:(小声で)おまえ・・・ジヨンに何かしたのか?
ミ:え? 何を?
次:いや、いいんだ。・・・あんまり、残業ばっかりさせるなよ。
ミ:はい。
次:一応、女のコなんだから・・・。
ミ:(笑う)そんなことは最初からわかってますよ。(立ち去る)


次:・・・やっぱりね・・・・。うん・・・。









今日のジヨンは、久しぶりに地下鉄に乗って、早々に自宅へ向かう。


最近のジヨンがミョンジュンにべッタリなのは、ミョンジュンも薄々は気がついていた。
次長からの忠告もあって、他人からちょっとでも変な目で見られるようなら、その辺は少し自重したほうがいい。ジヨンはまだ嫁入り前の娘なのだ。

とにかく、仕事が早く切り上げられる時は、やはりきちんと家に帰すことにした。






ジヨンは、電車の中でつり革にもたれて揺れながら、何気なく前に映る窓ガラスの中を見る。
まずは自分の顔を見て・・・何か視線を感じて、目をそちらへ移していくと、ジヨンをじっと見ている男と視線が合った。


後ろのほうからじっと見つめるその顔、あの男だ!
あの商社で会った奇妙な背の高い男・・・。



急に息が苦しくなり、次の駅に着くや否や、ジヨンは人を掻き分け、逃げるように飛び降りてしまった。

そして、電車の中を見る。


あの男がジヨンをじっと見つめていた・・・。



ジヨンは言い知れぬ恐怖に気が動転して、携帯でミョンジュンに電話をかける。


ジ:もしもし、先輩! 先輩?
ミ:どうした? 聞こえてるよ。
ジ:先輩! 大変! 大変なんです! い、今、今、あの男が、あの男が私を見ていて・・・。
ミ:落ち着け・・・どこにいるんだ? ・・・どこの駅? そこまで行く。そこから動くな。


ジヨンは駅のホームで、得体の知れない胸騒ぎに震える胸を抑えながら、ミョンジュンが来るのを待った。







ミョンジュンの車の中。


ミ:本当にあの男だったのか?

ジ:(ミョンジュンを見つめて)絶対に見間違えません。じいっと、じいっと、私を見ていました。電車を降りて中を確認した時も、あいつも見てたんです! 私を確認してたんです!・・・どうしよう、先輩!(気持ちがパニックになっている)
ミ:う~む。ただおまえに興味を持っている男なのか。ストーカーなのか・・・殺人鬼なのか・・・。
ジ:どうしよう・・・。

ミ:あの日から今まで、おまえはあいつを見てないのか?
ジ:だって先輩、最近泊まりだったから、地下鉄に乗ってなかったじゃないですか!
ミ:・・・ということはおまえの家もまだ知らないわけだ・・・。
ジ:・・・そうですね・・・。でも家まで来られたら・・・もうおしまいだわ・・・。

ミ:おまえは刑事だぞ。しっかりしろよ。
ジ:はい・・・。でも・・・。
ミ:とにかく、一人住まいはマズイな・・・。
ジ:・・・。
ミ:いったん署に戻ろう。対策を練ろう!
ジ:はい。









会議室の中で、ミョンジュン、ジヨンとインソンが小さく集まって座っている。


イ:でも先輩。それはヤバイですよ。もし、殺人犯だったら、ジヨンもテスみたいに・・・いくら、ジヨンが刑事だって言っても、危険です。(ものすごく心配になる)
ミ:しかし、ここにジヨンを監禁しておくわけにはいかないだろう。
イ:それにしたって・・・。(二人の顔を見る)
ミ:それに、犯人とは限らないさ・・・ただこいつに興味があるだけかもしれないし・・・断定的なことは言えない。
イ:でも、なんか胸騒ぎがするんですよね・・・。今、行方不明になっているあの大学生。あいつは連続殺人の犯人じゃないでしょ? 最初の被害者のユンヒは、やったかもしれませんが。他は・・・。
ミ:うん・・・。あいつは、ヒョンソンは、小柄で内気な学生だ。たぶん、あいつはユンヒに恋心を持っていたに過ぎないだろう。それを相手に拒否されて・・・。しかしなぜ、あいつはどこにもいない? なぜ、見つからない・・・。
イ:そうですね・・・。

ミ:そのカギも、何かこの男に絡んでいるような気がするんだ。
イ:どんな風に? やつが、あいつを殺して成り代わって、殺人をしているとでも言うんですか?
ミ:う~ん・・・。何か怪しい感じがする。
イ:なら、余計に危ないじゃないですか!(それだったらどうするんだよ!)
ミ:ただ、そのキーパーソンの男が、今ジヨンを怪しく見ている男かどうかはわからない・・・。感触としては、ヒョンソンは小柄で、ヒヨンやテスさんのような大柄な女性で一突きに刺して殺すことはできない。そして、ジヨンの男は、身長が190センチはあり、テスさんが出入りしていた商社に勤め、総務課の隣の人事課にいるということだ。ジヨンと同じように、テスさんともエレベーターに乗り合わせて、目をつけたのかもしれない・・・。



3人は黙り込む。ジヨンが二人を見て言う。



ジ:先輩、私やります。インソン先輩も心配しないで。あの男の正体を暴くわ。ただのストーカーだったら、それはそれで一つ選択肢は消えるわけだし。やるだけの価値はあるもの。
イ:参ったな・・・。もしですよ。これは仮説として、そのヤバくてデカイ粘着質な男が犯人で、なんかの理由で、ヒョンソンを殺して、あいつの犯行と見せかけて、次から次へ自分の快楽のために人殺しをしていたら・・・それこそ、ヤバイですよ・・・。

ミ:うん・・・。しかし、それって考えられる選択肢の一つだろ?
イ:先輩! だから・・・!(二人を説得したい)

ジ:インソン先輩。私、やるだけのことはやってみる! ヒヨンの事件の時に、犯人が置いていった言葉が気になるの。「Trait」犯人の生活の特徴、そして犯行の特性・・・。私たちに宣戦布告をしているのよ! オレを見つけてみろって。だから、だから、絶対私たちの前に現れるわ。暗い自己顕示欲・・・。許せない・・・人の命をおもちゃにしやがって! だから、そいつがそういうやつか確認したいの・・・。先輩も助けて。ミョンジュン先輩と一緒に私を守ってくれますよね?(インソンを睨むように見る)

イ:・・・ああ・・・。(やりきれない)

ミ:まずは始めてみよう・・・。しかし、少しでも危険ならすぐにやめる。わかったな? ジヨン。すぐにやめるんだぞ。(ジヨンを見つめる)
ジ:はい。
イ:・・・ああ・・・。(辛い・・・)






ミ:まずは、ジヨンは普通のOLだ。ソウルデパートの外商部の。
イ:えっ?
ミ:あちらに協力してもらおう。そして、住まいだが・・・・。う~ん・・・。ちょっと電話してみるよ。
ジ:誰に?
ミ:うん? こういう時に頼れる人間は一人しかいないんだ・・・。





ミョンジュンが立ち上がって会議室の隅に行き、携帯で電話をしている。




ジ:誰?(ミョンジュンを見ながら、インソンに聞く)
イ:わからないの? たぶん、ヨンジュさんだよ。あの人しかいないだろ?



それを聞いて、ジヨンは少し胸が痛くなった。こんな時でも協力してくれる前の奥さん・・・。





ミ:そうなんだ、行ってもいいか? そう・・・。じゃあこれから連れていくよ。じゃあ。(携帯を切る)


ジヨンたちの方へやってきた。


ミ:話はついた。じゃあ、少し着替えを持って行くか?
ジ:・・・。(ミョンジュンを切なく見つめる)
ミ:行こう。(ジヨンを見つめる)

ジ:どこへ?・・・。・・・ヨンジュさんの所ですか?(ミョンジュンをじっと見つめる)
ミ:当たり! 行こうか。(ジヨンをじっと見る)
ジ:・・・はい。(うなずく)

イ:先輩、オレはここで待ちます。もう少し、データを分析してみますよ。
ミ:わかった。じゃあ、行こう。車で送っていくよ。
ジ:はい。











【宣戦布告】


ヨンジュのマンションは、ジヨンと同じ地下鉄の沿線にあった。
高級そうなマンションの3階に彼女は住んでいた。



ドアのチャイムをミョンジュンが鳴らすと、インターホンから「今、行きます」というヨンジュの声が聞こえた。


玄関のドアを開け、ヨンジュが顔を出した。



ヨ:いらっしゃい。どうぞ、入って。(二人を見る)
ミ:お邪魔するよ。(ちょっと見つめる)
ヨ:ジヨンさんも遠慮しないで、どうぞ。
ジ:お邪魔します。(硬く挨拶する)


ミョンジュンはヨンジュに続いてどんどん中へ入っていく。
ミョンジュンは何も気にせず、奥へ入っていったが、ジヨンはリビングの入り口にあるコンソールの上に二人の結婚式の写真があったのには、ギクリとした。


別れたはずの人じゃないの?


ジヨンはゆっくりとその前を通り、その写真を見る。

今より若く、そして、優しげで。どちらかというと、甘い感じの柔らかいミョンジュンがそこにいた。
二人は仲良く笑っている。


愛にあふれた写真だ・・・。


ジヨンは、急に胸が苦しくなってきて、この空間に3人でいることが辛くなってきた。



ヨンジュは職場と違い、とても柔らかい感じの女性に見える。
そして、なぜか、ミョンジュンの近くに立っている彼女は、白衣の時に比べて、女のニオイがするのである。


ジヨンはヨンジュの持つ「女」に圧倒されそうだ。



ヨンジュさんに「敗北」を感じるにはなぜ・・・?




ヨ:ねえ、二人とも座って。お茶を出すわ。(ミョンジュンの顔色を見て)ミョンジュン、ずいぶん、具合が良くなったんじゃない?
ミ:うん。やっと峠を越えた感じだよ。でもその代わり、こっちの殺人事件のほうがたいへんなことになってきているけどね。
ヨ:そうね・・・。


ミョンジュンとジヨンはソファに並んで座り、ミョンジュンの斜め前にヨンジュ用の一人がけのイスがある。
ヨンジュがお茶を持ってきた。


ヨ:どうぞ。(ティーカップを置く)ジヨンさん、あまり硬くならないで。しばらくここで暮らすんでしょ? 硬くならないで・・・。よろしく。
ジ:あ、よろしくお願いします・・・。(立って頭を下げる)



ミ:ヨンジュ、君に頼むのは申し訳ないけど、他に知り合いがいないんだ。ジヨンを付け狙っている男がホントの犯人かどうかはわからない・・・しかし、そうでないという確証も必要なんだ。


ヨンジュが俯きながら、ミョンジュンの話を聴いている。


ヨ:ああ・・・胸が苦しくなるわ、あなたとこういう話をしていると・・・。なぜそんなに、命を賭けて犯人を捕まえることに終始するのか・・・。
ミ:・・・これが仕事だって言ってるだろ? これ以上犠牲者を増やしたくないんだよ・・・。(ヨンジュを見つめる)


ヨンジュの声は穏やかだが、そこに秘められたミョンジュンへの熱い思いが、ジヨンには痛いほど伝わってくる・・・。


ヨ:ミョンジュン、ジヨンさんに命を張らせていいの? お願い、違う方法はないの? 探して。これからでも探して! 何かあるはずよ!
ミ:・・・ごめん・・・。また、おまえを傷つけたね・・・。でも、これがオレたちの生き方なんだ・・・。狙った犯人は落とす・・・。これ以上、人を殺させないためにもね。

ヨ:それで、あなたたちが犠牲になるの?
ミ:・・・大丈夫だよ・・・。
ヨ:何が? 皆殺されているじゃない? あなたの肩の傷は? あなたの脇腹の傷は何? ・・・いつかは命を落としてしまうわ!(ミョンジュンを食い入るように見つめる)

ミ:・・・もう心配しなくていいよ。・・・おまえはもう十分に苦しんだ・・・。(辛そうに言う)

ヨ:あなたが生きてる限り、この苦しみに終わりがないのはわかっているでしょう・・・・?

ミ:・・・すまない・・・。(辛そうに済まなそうにヨンジュを見る) とにかく、ジヨンを頼むよ。

ヨ:また私に、辛い手伝いをさせるのね・・・あなただけでなくジヨンさんまで・・・。(涙ぐむ)
ミ:すまない・・・。(強い視線で見る)




ジヨンは二人の脇でその会話を聞いているだけで苦しくなってくる。



ヨンジュのミョンジュンへの思いがあふれているから・・・。

この人はまだ先輩を愛している。
何も終わっていない・・・。

先輩はどう思っているのか・・・。





ヨ:ジヨンさんは座ってて。ミョンジュンを玄関まで送ってくるわ。(立ち上がる)
ジ:あ、はい・・・。
ミ:じゃあ、ジヨン。明日はヨンジュと一緒に出勤するんだよ。ソウルデパートの通用門のところで待ってるから。いいな。(ジヨンを見て、ちょっと微笑む)
ジ:はい、先輩。(見つめる)



ヨンジュが送って、ミョンジュンは帰っていった。






愛しい人は帰っていく・・・彼を愛している、前の奥さんに送られて・・・。





もっと、もっと、先輩に別れを言いたかった、励ましてもらいたかった。

肩を抱いて、頑張れって。

手を握って、絶対、助けてやるって。






ジヨンはこのまま、ミョンジュンと別れたくなくて、立ち上がって窓の外を見る。
ミョンジュンがマンションの外へ出てきた。



こっちを向いて! 

先輩!


私だけを見て!





しかし、ミョンジュンは振り返らず、車に乗って帰っていってしまった。

ヨンジュは、窓際でミョンジュンを見送るジヨンの後ろ姿を見つめている。



ヨ:ジヨンさん、あなた・・・ミョンジュンが好きなのね?(ジヨンの背中に声をかける)

ジ:(振り返って)なぜです? どうしてそんなことが気になるんですか?(しっかりと見つめる)
ヨ:・・・。
ジ:・・・まだ好きなんですね?



ヨンジュはちょっとジヨンを睨むような目をして、ティーカップを流しのほうへさげる。
そして、流しの前に立って振り返り、ジヨンを見た。


ヨ:・・・別れてもあの人の無事を祈らない日はないわ・・・。バカでしょ? 自分から別れておいて? でも、一緒にいると、彼のことが心配で心配で、息苦しくなっちゃうの。今は離れて、少し落ち着いたかしら・・・。

ジ:自分のもとへ帰ってこなくなって、心配じゃなくなったんですか? それで安心できるようになったんですか? ・・・刑事の妻ってそんなに苦しいものなんですか?

ヨ:・・・あなたは自分がそうだから気が付かないのかしら? 愛する人が、日々命を賭けて生きているのを見ていることが、どんなに苦しいことか・・・。ジヨンさん、彼がそうだからって、あなたまで、そんな・・命をかけることはないわよ。

ジ:ヨンジュさん・・・。(ヨンジュの近くまで行く)・・・この仕事は私の運命なんです。・・・。・・・。(思い切って言う)私は、高校3年生の時に、妹を強姦殺人で失いました。あんなに、かわいかった妹・・・。あいつらには心がないんです! この犯人を捕まえなくちゃ、私には、いつまでも平安は来ないんです。

ヨ:ジヨン・・・。(辛い顔をする)

ジ:先輩はこのことを知ってるんです。それで、私が「おとり」になることを承諾してくれたんです・・・。
ヨ:・・・なんてことなの・・・あなたが考えたの?(愕然とする) ああ、あなた達って、いったい・・・。私は、あなた達二人の無事を祈って、また苦しい時を過ごさなければならないの? ジヨン、あなたまでそんな・・・。

ジ:(じっとヨンジュの目を見る)ヨンジュさん、心配しないで・・・。私は命がけでも、捕まえたいんです! 警察に宣戦布告してくるようなやつ・・・。人間をバカにしたようなやつら・・・。あいつらをこの世の中にのさばらせておくなんて、私にはできないんです! 命を賭けても、私は、やります!








5部へ続く。






ジヨンの運命はいかに・・・。
そして、真犯人は・・・。

ジヨン、ミョンジュン、ヨンジュの関係も、非常に微妙です・・・・。



2009/12/10 02:29
テーマ:【創】オレたちに明日はない カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「オレたちに明日はない」3




BGMはこちらで^^



BYJシアターです。

本日は「オレたちに明日はない」3部です。


いよいよ事態は思わぬ方向へ向かっていきます。

怖がらずに今日の部分を読み進んでください・・・。



【配役】
イ・ミョンジュン  捜査一課刑事 ・・・・ぺ・ヨンジュン
キム・ジヨン   同じく新前刑事 ・・・チョン・ジヒョン

パク・インソン  同じく刑事  ・・・・チョ・インソン

ソン・ヨンジュ  科捜研・監察医 ・・・イ・ヨンエ


この作品は全てフィクションです。
ここに出てくる団体・名称は実際のものとは異なります。


ではここより本編。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「おまえは何を求めてるんだ?
答えなんか探すな


オレたちは、狙った獲物を捕まえるだけだ・・・

そのためだったら、
命も辞さない・・・それがオレたちの仕事だ



正義のためなんて考えないほうがいい。
そんなのは、クソ食らえだ。

それじゃあ、自分の命も守れないぜ



好きなやつはいるのか?

そいつを思い出せ。
そいつのために戦え。


それが、生き残る道だ」




【オレたちに明日はない】3部


主演:ぺ・ヨンジュン


   イ・ヨンエ
   チョ・インソン


   チョン・ジヒョン





【11月29日・朝】


「ソウル南連続女子殺人事件」は解決の糸口が掴めないまま、二週間が過ぎた。


今日は昨日の土砂降りから一転して、爽やかな青空だ。
しかし、凍えるほど寒いことには変わらない。



ミョンジュンとジヨンは、捜査課の奥にある会議室で、カップラーメンを朝ごはんの代わりに食べている。

ここは今、二人のアジトだ。捜査課との間のドアは開けっ放しである。



ジ:こんな食生活してると、いつか病気になりますね・・・。あ、だから、先輩、風邪が治んないんですよ。(ミョンジュンを見る)
ミ:おまえに言われたくないね。(麺を啜る)
ジ:先輩、そのうち、成人病になりますよ、きっと・・・。(顔を覗き込む)
ミ:なんか、イヤミだなあ。
ジ:先輩。・・・朝なのに、サングラスして、ちょっと変だと思いません?(茶目っ気たっぷりに言う)
ミ:いいだろ? 人の勝手だろ。おまえ、うるさいよ。早く食えよ。(眉間にシワを寄せる)
ジ:ハハア~ン、自分でもちょっと変だって気づいてるんだあ。(食べながら笑う)
ミ:おまえさあ、食べながら、鼻を鳴らして笑うのはやめない?・・・全く下品な女だな・・・。参ったな・・・。(呆れ顔)
ジ:先輩?
ミ:何だ?
ジ:食べながら、よだれ垂らして、笑わないでくださいね・・・下品ですから・・・。(挑戦的な目付き)
ミ:!!!(一本やられた)






イ:おはようっす!(ちょっとふて腐れている)


捜査一課のデスクにインソンが出勤してきた。ジヨンが振り返って見る。



ジ:なあんか、元気なさそうですね。(インソンを見ている)
ミ:ふ~ん。おまえさあ、ちょっと気があるんだろ? あいつに。(茶化すように言う)
ジ:ま、まさか!(ちょっと赤くなる)
ミ:ふ~ん。(笑いながらラーメンを食べる)





ジ:先輩。あの人、本当に暇そうですよ。(箸をくわえてインソンのほうを見ている)


インソンがちょっとしょげたような、ふて腐れた様子で座っている。
昨日までは、合同コンパやクリスマス会の手配で忙しかった男が今日は静かに座り込んで、何もやる気がなさそうだ。



ミ:インソンか? あいつはだめだ・・・。
ジ:そうかしら?


二人で追いかけるには、今回の事件、人手不足に感じていたところを、ジヨンがインソンに目をつける。


ミ:足手まといだ。(スープを飲んで食べ終わる)
ジ:そうかな・・・。少なくとも私たちよりは頭がいいですよ。(ジヨンもスープを飲んで食べ終わる)
ミ:??(ティッシュで口を拭く)
ジ:インソン先輩、ソウル大卒ですもん。(手持ちのポットからコーヒーを入れてミョンジュンに出す)


ジヨンは初日に持ってきたポットをこの会議室でフル活用している。


ミ:よく知ってるな・・・。あいつに興味があるんだ。(やっぱり!)
ジ:というより、自分で言ってましたよ。自己紹介で。(自分の分のコーヒーを入れる)
ミ:チェッ! (なんてやつだ)(コーヒーを飲む)
ジ:先輩・・・あの人、コンピュータは私たちより使えますよ。分析依頼しましょうよ。
ミ:う~ん・・・。(考える)
ジ:バカとハサミは使いようって言うでしょ?(コーヒーを飲む)
ミ:・・・そうだな。それにしても、おまえって、ホントに、言うことが性悪だな・・。(呆れる)
ジ:そうですか? まあ、最後の決め手は先輩の勘が一番ですけど・・・。
ミ:・・・。よし。



ミ:インソン!



ミョンジュンが会議室の中から呼ぶ。



イ:はい。なんですか?(顔を上げる)
ミ:こっちに参加しろ。
イ:えっ? それは・・・。(面倒くさそうな顔をする)
ミ:命令だ!
イ:ハア~。(ため息をつく)なんでだよう・・・。


重い足取りでミョンジュンたちのいる会議室のほうへやってくる。
ジヨンは二人のラーメンのカップを片付け、テーブルを拭いて、仕事の態勢に戻る。



ミ:おい、どうした? 今日はちょっと凹んでるじゃないか?(インソンの様子を見て言う)
イ:・・・。すっぽかされました、昨日。(凹んでいる)
ミ:あの、ミスソウル大学にか?
ジ:ええ? そんな人と付き合ってたんですか?(驚いてインソンを見る)
ミ:(ジヨンに)やっぱり、おまえ、こいつに興味があるんだ。
ジ:いや、そういうわけじゃなくて・・・。(ミョンジュンの言葉にちょっとふて腐れる)
イ:先輩。ミスキャンパスでしたけど、ソウル大学じゃないですよ。
ジ:でも、美人なんだ・・・。(インソンを見る)
イ:でも、フラレました。(情けない顔をする)

ジ:何で?(インソンの言葉に興味を持つ)
ミ:(ジヨンに)おまえ、うれしそうな顔するなよ。
ジ:(ミョンジュンに)そんなことないですよ・・・。真面目に聞いてるんです。
イ:昨日、来なかったんだ。大事な話があったのに・・・。携帯も「この電話は使われていません」だし。
ジ:・・・でも、それってちょっと変じゃないですか? 「大事な話」のデートの約束をしている相手に、その日のうちに携帯の番号、変える人っていないと思うけど・・・。
ミ:まったく連絡がつかないのか?(真面目に聴く)
イ:ええ・・・。

ミ:会社に電話してみたか?(声が重くなってくる)
イ:いえ。まだ・・・。
ミ:おまえには、刑事らしい勘っていうものがないのか。(呆れる)
イ:・・・。



インソンが携帯から彼女の勤めるソウルデパートの外商部へ電話を入れる。



イ:すみません。パク・インソンと言いますが、ハン・テスさん、お願いします。
女:あ、おはようございます。インソンさん? ミンジャです。テスちゃんから今日はまだ連絡が入ってなくて・・・。昨日、一緒だったんでしょ?
イ:え、うううん。(決まり悪そうに言う)
女:え、うそ! すごくウキウキで帰ったわよ。
イ:そうなの?(ちょっと心配になる)会社に何の連絡もないの?
女:うん・・・。


インソンの顔が翳る。
ミョンジュンとジヨンが顔を見合わせる。



ちょうどその時、課長席に電話が入る。


次:はい、捜査一課。殺人事件? また、女が殺された? 場所は?・・・うん、うん。ソウルデパート裏の、郵便局の横の路地? 


今の声にインソンが振り向く。


イ:じゃあ、またあとで・・・。(電話を切る)


インソンがぼーっと不安そうに、次長の方を見つめている。
ミョンジュンとジヨンは出動の準備をしながら電話を聞いている。




次:被害者のバッグはそのまま。身分証明書が入ってる・・・うん・・・で名前は? ソウルデパート外商部に勤務の・・・。(書き取る)



インソンの顔から血の気が引いていく。ジヨンはインソンを見つめ、ミョンジュンを見る。
ミョンジュンが会議室を出て、次長の近くへ歩いていく。


次:ハン・テス? 25才ね・・・。


インソンが「あ~あ!」とつぶやいて、力が抜けたようにその場に座り込んでしまった。


ミ:(ジヨンに)行こう。
ジ:・・・はい・・・。


ジヨンはインソンを抱き起こして、イスに座らせながら答えた。







二人が現場に向かおうと歩き出すと、インソンが、ミョンジュンを呼び止めた。


イ:先輩、待ってください・・・オレも行きます。


インソンは俯きながらだが、しっかりとした声で言い、自分のデスクにコートを取りにいく。


ミ:・・・いいのか・・・。
イ:連れてってください。


ミョンジュンが次長を見ると、うなずいている。


ミ:一緒に来い・・・。


横でジヨンが泣きそうな目をして、インソンとミョンジュンを見ている。




3人は現場に向かうべく、パトカーに向かった。


ミ:キーを貸せ。(ジヨンに言う)
ジ:私が運転します。
ミ:後ろで、インソンの隣に座ってやれ。
ジ:あ、・・・はい・・・。



後部座席にインソンとジヨンが座り、ミョンジュンが運転し、サイレンを鳴らして、車は、現場へと向かった。









【午前9時40分】


昨日からの土砂降りの雨も明け方には止んで、今は空も晴れ渡って青空だ。
ソウルデパート裏、郵便局脇の細い路地。


女が仰向けになって横たわっている。
胸を何箇所か刺され、彼女は命を落としていた。



インソンは彼女の変わり果てた姿を目の当たりにして震え、もう立っていることができなかった。



ミョンジュンが近くにいた警察官に頼み、インソンはパトカーで自宅へ帰ることになったが、パトカーのドアを掴んだ瞬間、思いが溢れて、ドアの取っ手を握ったまま、座り込んで泣いてしまう。


ミョンジュンとジヨンは、そんなインソンの姿を現場からやりきれない思いで見つめた。





昨日も大雨だった。


雨が被害者の血液を流し、指紋を落とし、残されたニオイを消し去った。




ビルとビルの狭間、まるで切り立った山と山の谷間。人の目に触れることのない都会の落とし穴。

冬の早く来る闇が彼女の姿を隠し、犯人の逃亡を助ける。



美しかった彼女は今、静かにそこに横たわっていた。
虚しく空を見上げて・・・何か言いたそうに・・・。


まるで、デパートに置かれたキレイなマネキンが倒れているようにも見える。
その均整の取れた姿態は、美しいまま固まっている・・・。
着衣の乱れもなく、ブーツをちゃんと履いている。

ただ一つ、彼女の服装が奇妙であるとすれば、白いコートの内側がまだら模様に赤く、白いコートの背中側が真っ赤に染まっているということ。
コートの前を開け、かわいいお出かけ着の胸に無数の穴が開いているということ。


そして、髪は、今洗髪したように地面を這い、この零下の朝に、霜とともに固まっていた。



鑑識が入り、できる限りの情報を集めようとしている。

何か答えはないか、路地の側溝もふたを開けて覗いている。




聞き込みでも彼女には落ち度はなかった。
美人で元気だった25歳の普通の女。確かに人目も奪う美しさを持っていたが、職場でも評判がよく・・・そして、何より、職場の皆が、彼女には、インソンという恋人がいたことを知っていて、彼女には翳りというものがなかった。

昨日も、デートがあるからと、同僚の女子社員に告げており、少し残業で遅くなったことを気にしながらも、ウキウキと帰っていったと言う。
皆の証言をまとめれば、インソンとの関係も大っぴらにして、幸せそうにしていたところを見ると、他の男の影はない・・・。









【午後4時】


会議室でミョンジュンとジヨンが今までのことを整理している。


ジ:でも、通り魔じゃないですよね・・・。だって、あんな奥まった場所で殺されているんだもの。引きずっていったとしても、そんな長い距離は無理ですよね・・・。こんな街中で。
ミ:職場の人間はインソンとの仲は好意的だったし、他の顔見知りだとすると・・・どんな関係の親しい人間かな・・・あるいは客か・・・。
ジ:お客ね・・・。相手が知り合いのお客さんだったら、これからデートだから失礼って言うわけにはいきませんよね。笑顔を作って、ちょっと立ち話でもしたのかしら。・・・テスさんは外商部に勤めていましたよね・・・。帰りにそのお得意さんとでも、出会ったんでしょうか・・・。
ミ:彼女の顧客は大手の会社の総務関係で担当も決まっているから、まずそこから考えてみよう。それと彼女の友人関係をもう少し広げてみるか。
ジ:はい。先輩・・・。(ミョンジュンの顔を見る)

ミ:なんだ?
ジ:インソン先輩、大丈夫でしょうか?

ミ:しばらく、そっとしておくしかないな・・・。お前は大丈夫か? この仕事は辛いだろう?
ジ:・・・ええ。(俯く)でも、このために刑事になったのかもしれません。妹を陥れたような卑怯なやつらを懲らしめるために・・・。
ミ:あまりムリをするな・・・。
ジ:・・・ええ・・・。でも、先輩!(明るく言う) ここにはちゃんと働ける人間って先輩と私だけしかいないんですよ。頑張んないと。
ミ:(やさしく笑う)そうだな・・・。


電話が鳴る。


ミ:はい、捜査一課。あ、何? わかった、これから行く。ありがとう。(電話を置く)検死結果が出た。科捜研に行くぞ。
ジ:はい!







赴任した日にインソンと訪れた地下の解剖室。

今日はそのインソンの愛した女性の検死結果を聴きに来ている。
まったく、皮肉だ。


この間のように、ジヨンはメンタムを鼻の下に塗る。
中へ入ると、奥に前回と同じ監察医のソン・ヨンジュが白衣のポケットに両手を突っ込んで立っていた。


ヨ:来たわね。(二人を見る)
ミ:よろしく。
ジ:よろしくお願いします。





ヨ:というわけで、殺害時刻は午後6時30分から7時30分の一時間。この時間帯は、昨日も大雨だったわね。
ミ:前回と時刻が同じだな・・・。ところで、この傷をどう考える?
ヨ:うん・・・。これも、アイスピックみたいな穴なの・・・。
ジ:この間と同じということですか?(メモを取っている)
ヨ:そうね。今回はまっすぐに刺している。立ち居地がよかったのかしら。・・・うん、刺し方が上手になったわね。
ミ:うん・・・。(刺し傷を凝視している)

ヨ:それにしてもすごい力だわ、というか、すごい実行力・・・。そして、正確さ。今回は容赦なく一突きで殺している。
ミ:一突き? あとの傷は? 後からつけているものか?(ヨンジュの顔を覗く)
ヨ:この前と同じく、偽装か快楽か・・・わからないわ。
ミ:もし、これが連続殺人事件なら、最初の被害者は、命まで奪うことはできなかった・・・。犯人にもまだ迷いがあって・・・技術も未熟だったということか。
ジ:二人目の幼稚園教師の、小学校裏山事件は致命傷が2箇所・・・。あとは後からただ刺している・・・。あれも偽装だった・・・? でもなんで偽装する必要があったんでしょうか?


ミ:う~ん・・・また新しいことがわかったら教えてくれ。
ヨ:ええ・・・とにかく、これはレープ目的ではないわ。人を殺すことが目的よ。それははっきりしているわね。


ジヨンは今のヨンジュの言葉に驚く。ただ人を殺したいだけ。そんな! 同じ人間なのに・・・。


ジ:どんな人間なんでしょうか・・・。ただ殺したいだけなんて・・・。(ショックを受けている)


ヨンジュが若いジヨンを見つめる。そして、ミョンジュンを。


ヨ:辛い仕事ね・・・。







解剖室から出て、ジヨンは大きく息を吸った。

なんとも居たたまれない事件だ。
この犯人の残虐性・・・。


また、亡くなった妹が頭をよぎる。


ミョンジュンが中から出てきた。



ミ:おい、大丈夫か?(心配そうに顔を見る)
ジ:はい、なんとか・・・。
ミ:じゃあ、行くか。
ジ:はい。




行こうとすると、中からヨンジュが出てきて、ミョンジュンを後ろから呼び止める。


ヨ:ねえ、ミョンジュン! ちょっと待って。(ミョンジュンの横に立つ)あの子と二人で捜査するなんて、危険すぎるわ。やめて・・・。もうこれで、3人目よ。たぶん、2人目と3人目をやったのは同じ人間・・・。
もしかしたらもっと殺しているかもしれない。殺しに慣れてきているわ。うまくなってきている。相手は残虐な男よ。相手に考える隙を与えず、殺す。あの子とでは危ないわ。女の子ではダメよ。相手の餌食になってしまうかもしれない・・・。それに今のあなたの体調を見ていると、万全ではないわ。あなたが倒れてしまったらどうするの!
ミ:・・・。これがオレたちの仕事なんだ・・・。(見つめる) わかってるだろ?(行こうとする)
ヨ:待ってよ。(ミョンジュンの腕に手をかける)
ミ:ヨンジュ。彼女も刑事なんだ。自分で選んだ職業なんだよ。・・・おまえと同じだ・・・。(ヨンジュの顔を見つめる)危険なマネはさせない・・・しかし、これは仕事だ。(去っていく)
ヨ:お願い、危ないマネはしないで。ミョンジュン!(後ろ姿を見送る)




離れたところから、ミョンジュンとヨンジュの様子を見ていたジヨンは少し胸がざわめく。


あの人は何なのだ・・・先輩にとって・・・。


ミ:行こう。


ジヨンの横を通り過ぎ、ミョンジュンがどんどん歩いていく。ジヨンは、ミョンジュンを見送るヨンジュに頭を下げて、後を追った。






車の中でミョンジュンは何か考え事をしているようだ。


ジ:先輩。あの監察医の人は先輩の何なんですか?
ミ:え? (その質問に驚く)なぜ?
ジ:いえ・・・。
ミ:今度はオレに興味を持ったのか?
ジ:そんな・・・。
ミ:・・・ふ~ん。元のカミサンだ。
ジ:えっ?
ミ:別れた女房っていうやつだ。
ジ:(意外だったので拍子抜けする)そうだったんですか・・・。
ミ:これで返事になっているか?
ジ:でも、仕事は一緒にするんですね・・・。
ミ:仕事だからな・・・。仕事は一番信頼できる・・・優秀なんだよ、彼女は。
ジ:そうですか・・・。
ミ:帰ろう。
ジ:はい。







テスが殺害されてから5日。
ミョンジュンとジヨンは、聞き込みに追われている。
テスの勤めていた外商部が顧客にしている会社をミョンジュンとジヨンがしらみつぶしに回っている。




最後に訪れた商社の総務課。

テスはここに事件に会う5日前に商談に来ていた。担当の男は中年の落ち着いた人で、とてもテスと彼の間に何か起こるような気配は感じられなかった。
忘年会の景品をテスが一手に引き受けていて、その納品日まで決まっていた。特に問題はなさそうだ。



何も得られないまま、ミョンジュンとジヨンがエレベーターホールに立っていると、同じフロアの、奥の人事課から背の高い男が出てきた。そして、同じようにエレベーターを待っている。


何気なく、ジヨンはその背の高い男を見上げた。ミョンジュンより10cmほど背が高い。

端整な顔立ち。
品のよいその男は、ジヨンの視線に気がついて、じっとジヨンを見つめて、微笑んだ。
ジヨンは一瞬困ったが、ちょっと会釈をした。
ミョンジュンは何も言わず様子を見ている。


エレベーターが来て、二人とその男が乗り、無言のまま、1階を目指す。


その男は、エレベーターの中でも、ずうっとジヨンを見つめている。
ジヨンは困ったように視線をずらしてはまた、彼を見る。

男はまるでジヨンを・・・獲物をとらえたヘビのように執拗に見つめている。




1階に着き、ミョンジュンとジヨンは降り、その男も降りた。そして、その男は正面玄関ホールで立ち止まり、ジヨンの後ろ姿をずっと見送っている。


ミョンジュンが前を向いたまま、ジヨンに言う。


ミ:オレのほうを見るな。他人の顔をしてまっすぐ歩いていけ。



そういって、自分は左のほうへ反れていく。

ジヨンは一人まっすぐ歩いていく。



その男から見えないところまで来たミョンジュンが今の会社の総務に電話を入れた。


ミ:先ほどはどうも。申し訳ありませんが、警察が尋ねたことは内密にお願いします・・・たとえ、社内の人にも漏らさないように・・・。ええ、そうです。もしどうしても言わなければならない時は、刑事が一人で来たと。女性のことを尋ねられたら・・・ソウルデパートの外商部員が刑事を案内してきたと言ってください・・・。よろしくお願いします・・・。


かなり歩いてから、ジヨンと携帯で連絡をとり、待ち合わせる。






先ほどの商社からは離れたところに車を停車している。


ミ:さっきの男はなんだろう・・・。(外を見ながら考えている)
ジ:かなりハンサムでしたが・・・ちょっと変な印象でした。
ミ:おまえもそう思ったか? (ジヨンを見る)
ジ:ええ。やたら、こっちの顔を見ていて・・気持ち悪いくらい、視線が粘っこくて・・・。まるで・・・。
ミ:まるで?(顔を覗く)
ジ:まるで・・・。(言いにくい)
ミ:まるで獲物を物色しているみたいに・・・?



ミョンジュンが口にした言葉は、ジヨンの考えにもぴったりと合致して、二人はしばし見つめ合った。




先ほどの商社で出会ったなぞの背の高い男・・・。
彼は何者なんだ・・・。






午後3時。
二人は署に戻り、捜査課に入っていくと、インソンが自分の席でPCに向かっている。



ジ:インソン先輩!(見て驚く)


その声に、インソンが気づいて立ち上がる。


ミ:おい、大丈夫か? (やさしく微笑む)
イ:ご心配をおかけしました。(頭を下げる)まだ、気持ちの整理はつきませんけど、家で泣いているだけではいけないと思ったんです。・・・彼女のために、犯人を捕まえないと。オレがやらないと・・・。
ミ:うん。(インソンの背中をやさしく撫でる)そうか・・・。葬儀の時のおまえが、あまりに辛そうで心配したよ・・・。
イ:先輩、オレにも参加させてください! 彼女のためにも今、オレも命を賭けなくちゃいけないんです!


ミ:わかった・・・。一緒に頑張ろう。
イ:はい。・・・先輩、この連続殺人事件の資料をコンピュータに今取り込んでいるので、これからオレなりに分析してみます。
ミ:そうだな、よろしく頼むよ。(見つめる)
イ:はい。(しっかりとした顔で見つめ返す)
ジ:・・・先輩・・・。



今のインソンの話を聴いて、ジヨンは胸がいっぱいになった。








4部へ続く。







インソンは最愛の人を失ってしまった・・・。
彼女にいったい何が起きたのか?


ミョンジュン、インソン、そしてジヨンの3人は、この事件を解決することができるのだろうか・・・。





2009/12/08 00:16
テーマ:【創】オレたちに明日はない カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「オレたちに明日はない」2




BGMはこちらで^^


BYJシアターです。


【オレたちに明日はない】第2部です。


【配役】
イ・ミョンジュン  捜査一課刑事 ・・・・ぺ・ヨンジュン
キム・ジヨン   同じく新前刑事 ・・・チョン・ジヒョン

パク・インソン  同じく刑事  ・・・・チョ・インソン

ソン・ヨンジュ  科捜研・監察医 ・・・イ・ヨンエ



この作品は全てフィクションです。
ここに出てくる団体・名称は実際のものとは異なります。




赴任早々に大きな事件を担当することになったジヨン。
ミョンジュン先輩と二人三脚で事件を解決することができるのか。


そして、ジヨンの暗い横顔は何を意味しているのでしょう。

これは刑事物語なので、
とても辛いシーンもあります・・・。

今日も・・・辛い気分になりますが、
そこに彼らの心を見ていただけるとうれしいです・・・。




冷たい冬の雨が降りしきる中・・・


ではどうぞ、暖かくして、お楽しみください。


ここより本編。


~~~~~~~~~~~~~~




「何のために戦うの?
あなたは答えを探してはいけないと言った

でも、
私には見えない恐怖と
戦いを続けていく虚しさが
とても辛い


あなたは命も辞さないと言った


私は怖い
恐怖が私を包み込む


お願い
助けて

力をちょうだい

いつも私を守って

見えない恐怖に飲み込まれないように

ちゃんと戦えるように
命を惜しまないように

正義のために
愛のために

全力を尽くせるように


ちゃんと
私を捕まえていて」





【オレたちに明日はない】2部



主演:ぺ・ヨンジュン


   イ・ヨンエ
   チョ・インソン


   チョン・ジヒョン





【11月15日・刑事の生活】



帰りの車の中。降りしきる雨の中、視界を開くワイパーが規則正しく音を立てて動いている。

ジヨンは無言で運転し、行きの明るさは全くない。


被害者を見たわけではない。
血を見たわけでもない。


しかし、彼女の感情の重さが、ミョンジュンの心の奥にまで流れ込んでくるようだ。


いったいどうしたというのだ。


今朝、科捜研からインソンと一緒に帰ってきた彼女は、検死に立ち会ったにもかかわらず、インソンを心配しながらも背をピンと正していたではないか。



ミョンジュンが携帯で本部と連絡を取る。


ミ:ミョンジュン。これから署に戻ります。・・・ええ、被害者の遺体は今、科捜研。この雨では警察犬の出動も無理だし。・・・鑑識が頑張ってはいますけど・・・。インソンがデジカメで現場を押さえました。ええ。ええ。科捜研から検死の結果が来たら、知らせてください。




帰りはサイレンを鳴らさず、普通車のように走っている。

しばらく走っていくと、先がかなり渋滞しているようだ。



ジ:先輩、どうしますか? かなり渋滞してますね・・・。雨ということもあるけど、ここから先っていつも渋滞なんですよね。抜け道で行きますか? それともサイレン鳴らしますか?
ミ:サイレンの必要はないだろ。鑑識の結果が出ないと、動きようがないからな。しかし、おまえみたいのが運転手だと楽でいいな、道を知ってて。(ジヨンの顔をちょっと見てにこやかに言う)ミニパトのお姉さんでも紹介してもらおうかな。
ジ:先輩・・・。(全く!横目でミョンジュンを睨む)
ミ:ふん。(笑う)少しは元気になったか?
ジ:えっ?(ちょっと困ったような目をする)
ミ:まあ、いい。

ジ:先輩。実はここ、私の地元なんですよ。
ミ:なんだ、そうか。・・・おまえの家ってこの近くなの?
ジ:ええ。
ミ:じゃあ、着替えを取ってこいよ。オレたちの仕事はいつ泊まりになるかわからないからな。署に少し着替えを置いておいたほうがいい。
ジ:そうなんですか? ・・・でも、先輩みたいに、住み込みはちょっといやですけど。
ミ:・・・。(笑う)
ジ:・・・わかりました。少し持っていきます。
ミ:オレは車で待ってるから。
ジ:はい。





ジヨンのアパートの前に車を止める。エンジンを切ったので、カゼ引きのミョンジュンに悪いと思い、


ジ:・・・先輩。寒いから、上がってください。





ジヨンは自分の狭いアパートにミョンジュンを入れ、まず電気ストーブのスイッチをつけて、ミョンジュンに特等席のベッド下の座布団に座るようにすすめてから、コーヒーメーカーをセットして、自分は洋服ダンスの中から服を取り出す。

3日分ほどの着替えと下着を1週間分ほど。そして厚手のコートを用意して、ボストンバッグに詰め込む。洗面所に行って、歯ブラシや化粧品をまとめてポーチに入れ、タオルとバスタオルも2枚ずつ持って、部屋に戻ってくると、ミョンジュンが床に蹲ったように、横に倒れて寝ている。ハンチングを脱いで、マスクは呼吸しやすいようにアゴにかけている。


サングラスをしたままのミョンジュンの顔を見て、ジヨンがゆっくりと近づき、サングラスを外す。
そして、首をかしげて、ミョンジュンの顔を見入った。



ふ~ん、こういう顔なんだ・・・。



ミョンジュンの携帯が鳴った。
ぼんやりとした目つきでミョンジュンが目を覚ました。

ジヨンはミョンジュンと目が合い、一瞬驚いて一歩退き、リビングテーブルに膝の脇をぶつける。


いった~い!vv


ミョンジュンは、膝を押さえて痛がるジヨンの顔を見ながら、携帯に出る。


ミ:もしもし、ミョンジュン。検死結果は明日ですか? 混んでるの? わかりました。担当は、ソン・ヨンジュにお願いしてありますよね? わかりました。これから署に戻ります。(携帯を切る) 署に戻るぞ。
ジ:あ、はい!(膝を押さえながら、慌てて、サングラスをミョンジュンに渡す)



ジヨンはストーブを消して、ボストンバッグを持ち、コーヒーを入れたポットも持つ。


ミ:(ハンチングとサングラスを持って立ち上がる)何それ? (ポットを見る)
ジ:コーヒー、入れたんです。先輩に出そうと思って。車で飲んでください。(ポットを差し出す)
ミ:(ジヨンの顔を見て微笑みながら、ポットを受け取る)サンキュ!
ジ:(ミョンジュンと目が合い、ちょっと赤くなる)行きましょう。


ミョンジュンがサングラスをかけた。








二人はまた覆面パトカーに乗り、警察に向けて走っている。


車の中で、ミョンジュンがコーヒーの入ったポットを掴む。


ミ:おい、なんで人の顔なんか見てたんだ?
ジ:えっ?・・・先輩の顔、知りたいじゃないですか。顔も知らない人と一緒に働くなんて変ですよ。
ミ:まあな・・・。で、感想は? (ポットのふたを開けている)
ジ:(ちょっと赤い顔だが、)えっ? 別に・・・。ちゃんと人間の顔をしてて、ホッとしました。
ミ:(笑う)そうか・・・そうだな。(カップにコーヒーを注ぎ入れ、飲む)うまい。あったまるよ。


ジヨンは運転しながら、ミョンジュンを横目で盗み見して、微笑んだ。








署に戻ってから、被害者の同僚や家族の事情聴取をして、一応終わったのが、午後11時過ぎだった。
今日もミョンジュンは泊まりと決めていて、インソンは報告書をまとめると、さっさと帰っていった。


ジヨンは悩んでいた。
帰るべきではあったが、自宅から着替えを持ってきていたし、この雨の中、わざわざ、電車に乗って帰るのが面倒くさい。


結局、ミョンジュンに右へ倣いで、泊まることにした。

しかし、このまま、あの先輩ミョンジュンのペースに合わせていると、自分も自堕落になっていきそうな気がして、彼のペースに乗らないようにしないといけないとは、薄々感じてはいるのだが・・・。









【11月16日・命の重さ】


翌日午前10時30分。
科捜研から検死の結果が出たという連絡が入り、ミョンジュンとジヨンが科捜研へ向かった。



行きの車の中で、突然ミョンジュンが言う。


ミ:おい。そこで、止めろ。
ジ:どうしたんですか? 何があるんですか? あそこに。(前方を見る)
ミ:あそこのドラッグストアで、コロンを買って来てくれ。(お金を渡す)

ジ:なんで?

ミ:おまえがオレのこと、臭がってるのはわかってるんだ。オレだって、気持ちが悪いんだよ。風邪を引いて熱がある時は臭うもんさ・・・。さいわい、今のオレは、鼻が利かないから自分ではわからないけど・・・。
ジ:そんなあ、いいですよ、先輩・・・。
ミ:早く行けよ。ただし、5分で買ってこい。わかったな・・・。おまえの好きなのでいいから。

ジ:・・・。・・・・。行ってきます!(車のドアをバタンと閉めて、店へ走っていく)
ミ:・・・。


ミョンジュンは咳をしながら、助手席に蹲るように座り、彼女の後ろ姿を見送っている。




ジヨンは5分きっかりに走って車に戻ってきた。


ジ:はい、先輩。(袋を手渡す)
ミ:サンキュ!


ミョンジュンが袋の中を覗くと、コロンではなく、携帯の使い捨てカイロとマスクが入っている。
顔を上げて、ジヨンを見る。



ジ:先輩。カゼを引いている時は、体を冷やさないほうがいいですよ。アンド、先輩、そのマスク、ババッチイですよ。(鼻にしわを寄せる)きっと菌がウヨウヨしてますよ。新しいのに変えたほうがいいです。使い捨てできるように、予備も買ってきましたから。


ミョンジュンは袋の中を見てから、ジヨンを見て微笑む。
ジヨンは自分用に買ったメンタムの小さな容器をミョンジュンの目の前に出して見せる。



ジ:ほら、これを鼻の下に少し塗れば、(塗って見せる)先輩のニオイも我慢できます。
ミ:・・・。
ジ:先輩・・・死体と同じですよ・・・。(見つめてから笑う)
ミ:チェ、こいつ。(口では怒っているようだが、うれしそうに微笑む)おい、つりを寄こせよ。
ジ:・・・。(聞こえないふりをして、方向指示器を出し、通りを見る)


ジヨンは知らん顔で、車を発進する。


ミ:おい、つり!(ジヨンのほうへ手を伸ばす)
ジ:そんな約束しました? 先輩! 子供の使いじゃないんですよ。私、これでも時給は高いんです。(ちょっと横目で見る)

ミ:こいつ・・・。



ミョンジュンは鼻で笑うが、そのまま黙って、ジヨンの言う通り、新しいマスクに替えて、二人の乗っている車は、科捜研へ向かった。







科捜研の地下。
昨日の朝も訪ねたところだ。捜査一課に配属されてから、連日訪れているこの解剖室。
こんな暮らしをしていたら、死に対する感覚が麻痺してしまう人がいてもおかしくないだろう・・・。



昨日、インソンが教えてくれたように、今、ジヨンは自分用に購入したメンタムをポケットから出した。
確かにこれだけでもあの異臭から身を守れたし、それだけでも救いだった。
ミョンジュンがジヨンの様子を見て微笑んだ。



解剖室に入ると、昨日とは違う女性の監察医がいた。


ミ:おはよう。
ヨ:いらっしゃい。新人さん?
ミ:ああ。昨日から捜査一課に配属されたキム・ジヨン君。
ジ:キム・ジヨンです。よろしくお願いします。
ヨ:監察医のソン・ヨンジュです。よろしく。じゃあ、早速見てちょうだい。


3人は遺体の前に立った。

報告書でも身長が170と書いてあった通り、大柄の女性だった。残念ながら、細かな土砂が付着していて、生きていた時の美貌を台無しにしていた。

それを見て、ジヨンの目が少し曇った。ヨンジュがそんなジヨンの目を見た。



ヨ:大丈夫よ。お葬式の時には、葬儀屋さんがとてもキレイに仕上げてくれるの。だから、遺族も少し救われる。でも、私達は亡くなった時の様子を残して観察していかないと、真実を探し出せないのよ。
ジ:・・・そうですね・・・。

ヨ:ではいいかしら。まず、殺害時刻は、発見された日の前日。つまり、11月14日の午後6時30分から7時30分ね。
ミ:もっと正確には出ないのか?
ヨ:ええ・・・あの土砂降りと発見現場の泥濘のせいで、このくらいの誤差は出てしまうのよ。被害者の胃の中はクッキーが少し残っていただけ。この人、幼稚園の先生だったわよね。給食はちゃんと消化されていたわ。殺されたのはまだ食事前ね。
ジ:同僚の先生が残業していた時、少しクッキーを食べたと言ってましたね・・・・。それから、幼稚園を出たのが6時45分ごろだったそうです。(自分のメモを読んで、ヨンジュの話も克明にメモを取る)

ヨ:ちょっと下半身を見て。


ヨンジュが遺体を覆っていた白い布を剥がした。遺体の全貌が明らかになり、ジヨンは自分と同じ年頃の女の子の無残になった肉体の全貌を見る。
ジヨンの目が少し翳った。


ヨ:辛い? 同じような年頃よね。


ミョンジュンもジヨンの顔を見た。


ミ:昨日も来たんだろ?
ジ:・・・昨日は酔っ払いの男性の凍死でした。
ミ:そうか・・・。(ヨンジュを見る)
ヨ:(ミョンジュンの顔を見て)続けるわね。ジヨンさん、辛かったら、あっちで座ってて。
ジ:いいえ・・・。見届けます。それが私の仕事ですから。
ヨ:わかったわ。じゃあ、腰から下を見て。引きずられた痕があるわ。ここでしょ。ここも、ここも。わかる? これは死後についた傷よ。でも、そう長い距離じゃないわね・・・。道の様子によっても違うけど、10mはいかないわ・・・もし、山道だったら、5mとかでもおかしくないわね。

ジ:ずいぶん短い距離を移動してるんですね・・・。(観察している)
ミ:あの木か・・・犯人がメッセージを残してるんだ。遺体の置かれたすぐ横の木に。新しく彫られたものだから、たぶん、犯人のものだ。あの木の下に遺体を置きたかったんだな。
ヨ:なんて? なんて彫ってあったの?

ジ:こう書いてあったんです。(メモに走り書きをして見せる)「Trait」トレイト。「特徴」とか「特質」とか?
ヨ:ふ~ん、何かしらね。じゃあ、今度は致命傷になった胸を見て。



3人は移動して胸を見る。


ヨ:こことここの2箇所が、致命傷ね・・・。たぶん、ここの2箇所をやって、ほとんど即死状態だったと思う。そのあと、周りを傷つけているのよ。
ミ:なんのために?
ヨ:憎しみ? あるいは偽装、快楽か・・・。
ミ:性的には傷つけられていないのか?


ジヨンがドキッとして固まった。ヨンジュがその様子を見逃さなかった。


ヨ:全く。犯人は性的には全く興味がなかったみたいね。ただの殺人。
ジ:人を殺したくて襲ったってことですか?
ヨ:知人かもしれないわよ。まだ犯人像は固まってないんでしょう?
ミ:ああ。・・・凶器は何?
ヨ:うん。見て。傷がとっても細いでしょ? アイスピックのようなもので、刺してる。それにしても、この犯人は背が高いわ。

ミ:なぜ?
ヨ:ほら、被害者の胸、斜め下の角度で刺し傷になっているでしょう? それから、たぶん、左利き。傷が全て被害者の左へ逃げてるわ。ねえ、ミョンジュン、ジヨンさんを刺すマネをしてみて。



ミョンジュンがジヨンの胸をボールペンで刺すマネをする。


ヨ:ね? 被害者と同じくらいの背の高さのジヨンさんをあなたが刺すとしたら、この角度では刺せないの。ミョンジュンくらいの人だったら、ほぼ胸に対して垂直に刺し傷がつくはずだわ。彼女を座らせて刺すかしないとね。座っているところを殺したか、あるいはあなたより背が高い・・・190cm近い相手ね。

ミ:うん・・・。あの土砂降りの中では、座らせたと考えるより立ったまま刺したと考えるほうが順当だろうな。もし立って刺したなら、男であることは確かだな。そんなに背の高い女はいないだろう・・・。

ヨ:それにすごい力だわ・・・。これって憎しみかしら? こんなに力強く容赦なく、二突きで人を殺すなんて・・・。両方とも致命傷だもの。それに、もしアイスピックなら、ここまで刺すというのは、かなりの意志と力が必要よ・・・。
ジ:同じ人間なのに、簡単に人を殺せるなんて・・・。(呆然とする)







ミ:ありがとう。また、なんか新しい発見があったら教えてくれ。
ヨ:わかったわ。


ミョンジュンとジヨンが部屋を出ようとすると、奥からヨンジュが呼び止める。


ヨ:ねえ、待って。(ちょっと考える)ジヨンさん。さっき、「Trait」トレイトって書いてあったわよね・・・。
ジ:はい。
ヨ:もしかしたら、それって途中で終わったのかもしれない。
ミ:途中?
ヨ:ええ。「Traitor」トレイターもしくは女性だから「Traitress」トレイトレス。・・・「裏切り者」よ。
ミ:裏切り者・・・?
ヨ:わからないけど、「Trait」では、特徴とか特質とか・・・意味がちょっとわからないでしょ?
ミ:そうだな・・・。ただわかったことは、英語が少しできて、ある程度教養がある人間だと言うことだな。
ヨ:・・・そうね・・・そして、心は野蛮だということね。


3人は見つめ合った。







二人は、署に戻り、会議室でデータを整理している。
被害者の両親の話では、とても親孝行で、どちらかというと内気で、恋人もいなかったという。その彼女はなぜ、裏山まで出かけたのか・・・。


勤務する幼稚園から小学校の裏山まで、歩いて10分ほどの距離だ。あの日も午後から雨が降っていた。
わざわざ、あんな泥濘のある場所まで行く理由は何なんだ。



ジ:先輩、もう少し交際範囲を広げてみますか?
ミ:そうだな・・・。おまえ、あの遺体の顔を見たか?
ジ:ええ。
ミ:どう思った?
ジ:どうって?
ミ・写真で見ると、ただ驚いている感じだが、よく見ると、悲しげでやさしい目をしていなかったか・・・。
ジ:・・・恋人だったんでしょうか・・・あるいは、好きだったんでしょうか・・・その殺人鬼を。
ミ:う~ん。なんかそんな気がしてならないんだ。淡い思いがあったかもしれない・・・。

ジ:それなのに、無常に殺したんですね。
ミ:うん・・・。しかし、先週、殺されかけた女性は小柄だったな。何センチだっけ、背の高さは?
ジ:え~とお、あ、153cm。小さいですね・・・それに何箇所も胸を刺されているわりには致命傷にはなっていない・・・。似ていながら、全く感触が違いますね。
ミ:暴行痕もあったな・・・。凶器は・・・。(資料を見る)カッターのようなものか・・・。
ジ:違う犯人でしょうか。そこにある殺意が違うような気がしますね。
ミ:あり得る・・・しかし、なぜ、同じ雨の日に襲うのか・・・。オレならもっと上手に殺せるという自己顕示欲か・・・。
ジ:やですね・・・。
ミ:それに、本当に「裏切り者」なら、何を裏切ったんだろう?
ジ:もう少し男関係をさらわないとダメですね。
ミ:今日は、幼稚園が終わるのは3時だったね。それまでに、もう一度、整理して、同僚への聞き込みを正確にできるようにしよう。
ジ:はい。

ミ:少し休むか?(ジヨンを見る)
ジ:え? 
ミ:おまえも朝から検死じゃ疲れただろう。コーヒーを取ってくるよ。(立ち上がる)
ジ:先輩、私が。
ミ:いいよ、オレが二つ持ってくる。おまえは休んでろ。
ジ:はい。







捜査課の奥まったところにある小さな会議室で資料を広げていた二人だが、ミョンジュンが出て行き、ジヨンはちょっと机にうつ伏せになる。


二つの事件は別の犯人なのか・・・?









制服姿の、高校3年生のジヨンが7月の終業式を終えて、家路に向かっている。

学校からの帰り道、竹林の横を歩く。
そこは人の往来がほとんどない。
しかし、まだ昼間で外は明るく、夏の暑い日差しを竹林が遮り、やさしく涼しい風を運んでくる。
ジヨンは近道を選んでここを歩いている。


後ろから、声をかけてくる男がいる。


男:お嬢さん。すみません、ちょっと道を教えてほしいんだけど・・・。


ジヨンは振り返り、その男を見る。・・・どこかで見たことがあるような気がするが、記憶が定かではない・・・。


誰だったかしら?


こんな土木作業員みたいな格好をした人に知り合いはいなかったと思ったけど・・・。


ジ:どちらへいらっしゃるんですか?


男はにんまりと笑った。そして、


男:あんた、妹にそっくりだな・・・。同じことをしてあげようか?


ジヨンが訝しそうに男を見る。
男が近寄ってきて、ジヨンをまじまじと見て、いやらしい笑いを浮かべる。


男:ふん(笑う)、 同じにしてほしいか・・・。


男の手がいきなり伸びてきて、ジヨンの首を絞める。
苦しい息の中、男を見つめる。

男の力に押されて、二人はもつれるように竹林の中へ落ちていく。



ああっ、ナヨンを、ナヨンを襲ったやつ!



ジヨンは目を見開いて、男の顔を見る。



ああ、ああ、もう苦しくて息ができない・・・。





もがくが、男を押し退けることも、足蹴りすることもできない。

体が全く機能しない! 
体が重くて、ゆっくりとしか動かない。





助けて! 

・・・助けて! 


助けて! 



助けて、先輩!!!


先輩!!!








はあ! 


ジヨンは会議室で目を覚ます。

今、首を絞められた感触が生々しく彼女の首に残っている・・・。




はあ、はああ・・・あれは・・・あの男は・・・。


ジヨンの心を過去へ引き戻す暗い夢。




後味の悪い夢から覚めて、部屋の中を見回すが、ミョンジュンの姿はなく、ジヨンのために入れたコーヒーだけが置いてある。


どこへ行っちゃったのかしら?


会議室を出て行く。

捜査一課のデスクではインソンがPCに向かっている。次長が、壁際にあるコーヒーメーカーの前でコーヒーを入れている。


ジヨンはインソンの前へ行って、


ジ:ミョンジュン先輩は?
イ:(顔を上げて)医務室だよ。
ジ:ええっ!



ジヨンは驚いて、医務室の方へ走っていく。

次長がその様子を見て、


次:どうしたの? ジヨン君は?
イ:(首をかしげ)さあ、先輩が危篤とでも思ったんでしょうか?
次:まあ、あり得る・・・・。(コーヒーを啜る)








医務室にすべるように走りこんだジヨンは、ナースのシンジャに聞く。


ジ:ねえ、ミョンジュン先輩は? 先輩はどこ?! (せっぱ詰まったように言う)
シ:どうしたの? なんか事件なの? ミョンジュンさんなら、今・・・。(カーテンのほうを指差し、振り向く)



ジヨンは真剣な顔つきで、カーテンのほうへ向かい、ザアッとカーテンを開ける。


ミョンジュンは、ハンチングを取り、サングラスを外して、セーター姿で点滴をしながら、ベッドに横たわっていた。


ジ:先輩!(大きな声で呼ぶ)
ミ:(目を開ける)どうしたんだよ? 何か事件でも起きたのか?
ジ:(のんびりしたミョンジュンを見て)いえ・・・そうじゃないんですけど・・・。(決まりが悪そうな顔をして髪を掻き揚げる)
ミ:(笑顔で)どうした?
ジ:いえ・・・。(困る)


ミ:まあいい。イスを持ってきて、座れよ。(やさしい目をする)
ジ:いえ・・・。(困っている)
ミ:おまえもここで少し休めよ。(見つめている)
ジ:あ、はい・・・。(イスを引き寄せてくる)
ミ:カーテンも引いてくれ。
ジ:はい・・・。(カーテンを引く)




ミョンジュンとジヨンだけの空間になった。


ミ:ゆっくりしろよ。事件は、今始まったばかりだ。3時の事情聴取までまだ時間はある。少し考えを整理してからもう一度始めよう。
ジ:はい・・・。(かしこまって座っている)

ミ:(ジヨンを見る)少しは落ち着いたか?
ジ:えっ?
ミ:・・・ちょっと、さっきの様子が普通じゃなかったから・・・。
ジ:あっ・・・。
ミ:・・・話してみろよ。
ジ:いえ・・・。(ちょっと俯く)

ミ:わざわざオレを探しに来たんだろ?
ジ:ええ・・・。でも・・・。(俯いたまま、目だけミョンジュンを見る)
ミ:今は時間がある・・・。言ってみろよ。
ジ:う~ん。・・・。・・・。ただの夢の話なんです・・・。
ミ:それでもいいさ。(やさしい目で見つめる)言ってみろよ・・・。



ジヨンは躊躇うが、さっきはどうしてもミョンジュン先輩に会いたかった。



先輩に会って・・・何を言いたかったのか・・・何をしてほしかったのかはわからない。
でも、先輩にあの時助けを求めたように、心の底から、先輩を求めて、会いたくてここへ来たのだ。



ジ:(ミョンジュンの顔をじっと見る)昔よく見た夢なんです。最近はほとんど見ていなかった・・・。(遠くを見ながら話す)高校3年の夏を思い出したんです。通学路の竹林のある道で・・・あの男は声をかけてきた・・・。
ミ:・・・。

ジ:・・・道を教えてほしいと言ったんです。初め、私は・・誰だかわからなかった・・・見たことのある顔。それは・・・。・・・。(辛そうに言葉をのむが)それは・・・妹をレープして殺害した、あの男でした・・・。近くの工事現場に来ていた、土木作業員。卑劣なやつ・・・。あいつに高校生の私が殺される夢なんです・・・。私があいつを見たのは、実際には大学2年生になってからの公判でです・・・あいつは妹を殺した後も他の女の子を襲い続けた・・・。高校時代になんか会っていない・・・出会ってしまったのは、高校1年生の妹なんです。夏休み前の終業式の日・・・。昼間で道はまだ明るかった・・・彼女は近道をしたんだと思います・・・。その日は、私は委員会があって、一緒に帰ることができなかった・・・。そこを通るなって言ったのに・・・。一人で歩くなって言ったのに・・・。(涙が出てくる)


ミ:そうか・・・。


ジ:あの男は、公判で、私を見つけて、こう言ったんです。「そっくりだね、お嬢さん・・・。あんたに妹と同じことをしたやろうか・・・」(言葉に詰まり、涙が流れる)

ミ:もうそこまででいい・・・。

ジ:いえ。(涙を拭う)そして、こう言ったんです。「オレは姉貴のあんたともやりたかった」って・・・・。それも笑って・・・。



ミ:・・・・。いいか、ジヨン。おまえの妹を襲ったやつは、今、刑務所の中だ・・・。そいつのことは、忘れろ。犯人のイメージをそいつとダブらせるな。そうしないと、本当の犯人を見失ってしまうぞ。オレたちが追っている犯人は、その土木作業員ではない・・・。同じ土木作業員かどうかもわからない。真面目そうなやつかもしれない。美人の被害者が振り向くほど、いい男なのかもしれない・・・。普通に道を歩いている男・・・。普通に暮らしている男。英語でメッセージを残せる男・・・。見失うな。


ジ:でも! でも、あいつは、妹を、罪のない妹を、地獄へ陥れたやつなんです!




ミョンジュンを強い視線で見つめ、ジヨンの顔には、やりきれなさと怒りが表れている。

ミョンジュンがジヨンの顔をじっと見つめた。



ミ:ジヨン、手を貸してみろ。(点滴をしていない右手を伸ばす)



ジヨンは言われるままに、右手をミョンジュンのほうへ伸ばした。
ミョンジュンは、ジヨンの手をぎゅっと握って目を瞑った。


ジヨンはその手の温もりに、急に、声を張り上げて泣き出したくなった。




今まで心の奥深くしまっておいた思いがふき出した。

親にも言えなかった・・・こんな苦しい夢を繰り返し見てきたなど・・・そんなことを言って悲しませたくなかった。
今なぜか、ミョンジュンには自分の思いを素直に表現することができる・・・。


ミ:いいか、泣きたい時は我慢しないで泣くんだ。いいな・・・。辛い気持ちを閉じ込めたままにするな。オレたちの仕事は、これから、もっと、辛いことばかりが増えていくんだ・・・。


ジヨンはミョンジュンの温かくて大きな手を両手で握り締め、その手を見つめている。



ミ:そして・・・その男を忘れろ・・・。
ジ:無理です! 先輩、先輩は私の何を知ってるんですか? 私の何がわかるんですか?
双子のように育った大切な妹を殺された私の何がわかるんですか?!


ミョンジュンは静かに目を開けた。


ミ:おまえは、おまえの心が生き残れるように踏ん張れ。
ジ:・・・。(胸がいっぱいになる)

ミ:おまえは何のために刑事になったんだ・・・? 不幸な死を迎えた妹の仇を討つためか? 自分をもっと惨めにするためか? もっと意味のあることを見出せよ。
ジ:先輩。・・・私、あいつらが憎いんです・・・罪もない妹の命を奪って・・・。でも、とても怖いんです・・・。自分もあいつらの餌食になるんじゃないかって。(涙が出てくる)気持ちが今も負けそうになるんです。あいつらが・・・あいつが私を支配しそうになるんです・・・。

ミ:ジヨン、おまえなら勝てる。自信を持つんだ。卑怯なやつらに負けるな。
ジ:ええ・・・。でも。

ミ:おまえは一人じゃない。オレたちがついてるじゃないか。




ジヨンは、後から後から流れ出てくる涙を堪えることができなかった。


今、長い年月、思い続けたこと、思い悩んだことを吐き出すことができた。
あいつらに負けそうだなんて、心が支配されそうだなんて、いったい誰に言うことができただろう・・・。


ただ無言でミョンジュンを見つめて泣く。
ミョンジュンはやさしくジヨンを見つめて、しっかりと手を握り、また目を閉じた。



ジヨンは、ベッドに横たわるミョンジュンの右手を両手でしっかりと握り締めた。この手の中に、ジヨンの思いは全て受け止められたような気がする。


ジヨンはまるでその手に添い寝するように、ミョンジュンの手に頬を寄せて、声を殺して泣き、静かに目を閉じた。








3部へ続く。







そして事態は思わぬ方向へ向かっていきます。


2009/12/06 00:39
テーマ:【創】オレたちに明日はない カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「オレたちに明日はない」1

Photo


BGMはこちらで^^






BYJシアターです。

12月は、「オレたちに明日はない」をお送りします!

こちらは、2005年の12月に書かれたもので、季節はぴったり^^


さて!

今回は、猟奇的な犯罪者に、ペ・ヨンジュン扮するミョンジュンたちは立ち向かわなければなりません。

彼らに楽しいクリスマスはやってくるのでしょうか。


少々怖いシーンがありますが、
どうぞ最後まで、主人公のミョンジュン(joon)とジヨン(チョン・ジヒョン)を応援してください!



そして、とても寒いソウルの冬。

雨や雪が降りしきっています。
ご見学の皆様も、どうかカゼを引かないように暖かくしてご覧ください。



【配役】
イ・ミョンジュン  捜査一課刑事 ・・・・ぺ・ヨンジュン
キム・ジヨン   同じく新前刑事 ・・・チョン・ジヒョン


パク・インソン  同じく刑事  ・・・・チョ・インソン

ソン・ヨンジュ  科捜研・監察医 ・・・イ・ヨンエ


主人公ミョンジュンは回を増すごとに素敵に見えてくるはずですので、
最初は「え~~~~」でも、お付き合いくださいませ^^
(なかなかこの人はいい男です・・・)



この作品は全てフィクションです。
ここに出てくる団体・名称は実際のものとは異なります。


ではここより本編。
今回は命がけでどうぞ・・・。


~~~~~~~~~~




【オレたちに明日はない】1部




主演:ぺ・ヨンジュン


   イ・ヨンエ
   チョ・インソン


   チョン・ジヒョン




午後6時30分。
そぼ降る雨の月曜日。11月だというのに、今年は雨が多い。
幼稚園教師のヒヨンは、窓の外の雨の様子を見て、そして、教員室の時計を見た。

今月に入ってから、クリスマスの降誕劇の準備で忙しく休む暇がない。
お母さん方も衣装作りを手伝ってくれてはいるが、劇の指導、そして子供たちと一緒に描いている舞台の背景画の指導と、ここのところ、精神的に追い込まれている。
あと一ヶ月で形になるかしら。
思った以上の長台詞を、子供たちに一つ一つ口移しに教える。年少の子達も星の役でぞろぞろ舞台に上げることにしたので、考えていたより、たいへんなことになってしまった。

先輩教師のジョンアがヒヨンに声をかけた。


ジ:ねえ、このクッキー、もう少し食べない? お腹空いちゃったでしょ?
ヒ:あ、もういいです。今日はそろそろ帰らないと・・・。
ジ:そうね。お腹も空いたし。もう帰りましょうか。ヒヨン先生、今から根を詰めると続かないわよ。子供たちって、意外と切羽詰るとできるものだもん。案ずるより生むが易しよ。
ヒ:そうですね・・・。でも、こんな大役、引き受けちゃってちょっと気が重いです。
ジ:大丈夫よ。皆やってきたことだもの。あなたは真面目だから。大丈夫、大丈夫!・・・今日はデート?
ヒ:え? なんで?(少しぎこちなく顔を赤らめる)
ジ:うん? ちょっと口紅が濃いから・・・まあ、楽しくやってよ。ね! さあ、帰りましょう!
ヒ:はい。(また時計を見る)


幼稚園の戸締りをして、門を出たところで、ヒヨンは先輩のジョンアに言った。


ヒ:ジョンア先生。今日は私、こっちから帰りますから。
ジ:そう? じゃあまた明日ね! お疲れ様!


降りしきる雨の中、ヒヨンはいつもと違う方向へ小走りに走っていった。


なぜかうれしそうな後ろ姿を先輩のジョンアは、にこやかに見つめた。















「おまえは何を求めてるんだ?
答えなんか探すな


オレたちは、狙った獲物を捕まえるだけだ・・・

そのためだったら、
命も辞さない・・・それがオレたちの仕事だ



正義のためなんて考えないほうがいい。
そんなのは、クソ食らえだ。

それじゃあ、自分の命も守れないぜ



好きなやつはいるのか?

そいつを思い出せ。
そいつのために戦え。



それが、生き残る道だ」















【11月15日午前8時・初出勤】


ソウル市警。第八分署・捜査一課。
ジヨンは、今日から配属になった捜査一課に初出勤の日だ。
大学を出て、刑事を夢見ていた彼女だったが、実際に配属になった先は交通課だった。
ミニパト生活3年を経て、やっと自分の望む部署への配置換えである。

それも、あの憧れのインソン先輩のいる捜査一課だ。彼はジヨンより2つ年上で、その美貌は交通課の婦警たちからは憧れの的だ。その彼のいる部署となれば、心が弾まないわけがない。


それに、今日からは念願の刑事の仲間入りだ。



捜査課の扉を開けて入っていくと、一課と書かれた席はもぬけの殻で、奥の席にぽつんと一人、次長だけが座っていた。


ジ:失礼します。本日付を持って配属になりました、キム・ジヨンです。


その声に細面の背の高い男が立ち上がった。


次:ああ、君ね。私は一課次長のユ・サンミン。よく来たね。ずいぶん早かったじゃない。まあ、座りなさい。君の席はここね。昨日、大きな事件が解決したばかりでまだ皆、仮眠中なのよ。と言ってもね、課長は胆石の手術で入院中。一人は出張でもう一人は撃たれちゃったから、残りは、君と僕と、あと二人だけ。
ジ:え~え!(驚く)
次:まあ、ゆっくりしてて。(微笑む)
ジ:あ、・・・はい。(自分の席に着く)
次:今まではミニパトだったの?
ジ:はい。
次:そうか・・・。これからが大変だね・・・。柔道が強いんだって?
ジ:一応・・・。
次:射撃もうまいんだってね。
ジ:一応・・・。
次:ふ~ん、そう、頑張ってね。


電話が鳴る。


次:はい。捜査一課。死体、上がったの? あ、そう・・・、わかった。もうすぐインソンが出てくるから、彼を行かせるから・・・。えっ? フフフ・・・(笑う) まあ、大丈夫でしょう。


ジヨンが緊張した面持ちで次長を見ている。


次:もうすぐ、インソンっていう若い刑事が出てくるから、そうしたら、君も一緒に行って。
ジ:えっ?
次:死体は初めて?
ジ:解剖学は一応とりましたけど・・・。
次:なら、OKだね。
ジ:はあ・・・。



死体の洗礼は、受けないわけにはいかないだろう・・・。殺人事件を扱う部署なんだから・・・。

インソンさんと一緒に行けるのか・・。
それはラッキー。
このまま、ペアだと、尚ラッキーだけどな。


ジ:インソンさんとペアなんですか?
次:いや。君はね・・・ミョンジュンと組むんだ。ベテランと組まないと、力が付かないからね。
ジ:そうですか・・・。(残念!)



しばらくすると、インソンがにこやかに捜査課に入ってきた。
いつも通りのハンサムだ。朝の笑顔は飛び切り美しい。


イ:おはよう~っす!
次:おはよう。インソン、科捜研に死体が上がってるんだ。このジヨン君と一緒に行ってくれ。
イ:えっ!(驚く)僕がですか!(如実に嫌な顔をする)
次:う~ん・・今、人がいないのよ。
ジ:(立ち上がって)インソン先輩。私、キム・ジヨンと申します。今日から、こちらに勤務します。よろしくお願いします。
イ:あ、どうも。(ジヨンの顔にあんまり興味がなさそう)う~ん、じゃあ、行きますか。次長、ジヨンさんと僕でペアを組むんですか? (ジヨンを見ないで次長を見る)
次:いや、彼女はミョンジュンとだ。
イ:あ、やっぱり。わかりました。行ってきま~す。じゃあ、行こう。(ジヨンに言う)
ジ:あ、はい!


ジヨンはインソンの後をうれしそうについて行く。
インソンの覆面パトカーに乗り込み、科捜研へ向かう。




イ:(運転しながら)君も大変だね。こんな部署に来ちゃって。
ジ:え、どうしてですか?(驚く)
イ:だって、殺人事件を扱うんだよ。ちょっと物騒で、やじゃない?
ジ:・・・でも、それが刑事でしょ?
イ:僕は、管理畑だけ行きたかったのに・・・なまじ、ソウル大学を出たのがアダだったな。皆に期待されちゃって。ここで、警察の実務を修行しろって言われちゃって。まったく・・・。はあ~。(ため息)
ジ:・・・。なんで、警察なんか選んだんですか?
イ:だってカッコイイじゃない?(笑う)君、前はどこの部署にいたの?
ジ:交通課です。
イ:いいとこにいたじゃない。勿体ないな、こんなとこに来ちゃって。命張るんだよ、ここは。
ジ:まあ、そうですけど・・・。(インソンの端整な横顔を不思議そうに見る)
イ:女の子なのに、かわいそうだな・・・死体検分だなんて。
ジ:・・・。そうですか・・・?





科捜研に着き、二人は地下に降り、解剖室の扉の前に立つ。
インソンがジヨンを見た。


イ:ホントにいいの? こんなとこに来ちゃって?
ジ:でも、仕事でしょ?
イ:まあね。(ポケットから)これ、メンタム。鼻の下につけるといいよ。死体の臭いがしないから。
ジ:ありがとうございます。(少しとって、鼻の下に塗る)
イ:じゃあ、行く?・・・はあ・・・参ったな。僕しかいなかったなんて、最悪だよ・・・。
ジ:・・・?

インソンは躊躇したが、ジヨンの手前、中へ入らないわけにいかず、扉を開いた。








午前9時を過ぎて、仮眠室で寝ていたミョンジュンが洗面を済ませて、捜査一課に入ってきた。


ミ:おはようっす。
次:昨日はお疲れ。風邪引いてるのに、悪いね。
ミ:う~う。(大きく伸びをしながら大あくびをして、サングラスをかける)朝方から寒気もしてきちゃったんですよ。(コートを着ている)
次:そうか・・・重くならないうちに休めるといいけどね。課長が入院してて、ソンちゃんが出張で、パクちゃんが撃たれちゃって、人手がないからなあ、悪いね・・・まあ、ちょっと頑張ってよ。なにしろ、インソンは役に立たないからさ。・・・あ、今日から配属されたキム・ジヨン君が来てるから、よろしくね。今、インソンと科捜研へ行ってもらってるけど。インソンよりは働けると思うよ。柔道と射撃の腕はかなりのもんだ。ただし、女だけどね。
ミ:女か、ふ~ん・・・。(席に着く)
次:君と組んでもらうからね。
ミ:オレとですか?(驚く)
次:そう。まさか、インソンと組ませるわけにはいかないだろう。やつみたいなボンクラと一緒じゃ、仕事が覚えられないからさあ。
ミ:まあね。参ったな・・・。風邪と女か・・・。あ~あ。(イスの背を撓らせながら、伸びをしてまた大あくび)
次:まあ、顔はかわいい子だからさ。でも、かなり気は強そうだよ。(笑う)
ミ:(イスの背を戻して)そうこなくちゃ!(一緒に笑う)しかし、寒いな、参ったな・・・。(ポケットからマフラーとマスクをとり出してつける)






窓際の応接セットで、カップラーメンを食べ終わり、マスクを外したままのミョンジュンが窓の外を見ている。
インソンの車が戻ってきた。

どんな女が現れるかと、助手席のほうを注目していると、あの弱虫のインソンが口に白いハンカチを当てて真っ青な顔をして出てきた。

運転席からは長いストレートの髪を後ろに縛った女が降りてきて、インソンを心配そうに眺めている。だが、その顔付きはちょっと生意気そうだ。170センチほどの身長に、スレンダーな姿態。その女は遠目にも背筋がピンとしているのがわかる。


窓辺で、サングラスをしたミョンジュンがニヤリと笑った。








イ:(ぐったりとした表情で)ただいま、戻りました。
次:お帰り。ご苦労様。報告書まとめてね。あ、ジヨン君、こっちへ来て。君の上司でパートナーのミョンジュンを紹介しよう。
ジ:はい。


次長について、窓際の応接セットに行くと、部屋の中だというのに、コートを着てマフラーをし、ハンチングをかぶって、サングラスをかけ、大きなマスクをして、蹲るように座って、新聞を読んでいる男がいる。


次:ミョンジュン。キム・ジヨン君だ。


男は顔を上げて、ジヨンを見た。多分、見ているはずだ。サングラスの中の目は見えないが。
ジヨンはその風変わりな服装の男をじっと見つめた。


いったい、どんな顔の、いくつくらいの人間なんだ? わかっていること、それは男だということだけ。


ジ:どうも。キム・ジヨンです。
ミ:ああ、どうも、イ・ミョンジュンです。ちょっと風邪を引いているので、こんな格好で失礼。
ジ:はあ・・・。(不思議なものでも見るように見つめる)





どうもここの面子はちょっと変わっているようだ。

妙に馴れ馴れしく、やさしい感じの次長。
ずば抜けた美貌の持ち主であるインソンも実はちょっと見当違いな男だった。
そして、極めつけはこのミョンジュン・・・。何、この格好! 何、この男!



次:まあ、ジヨン君。座ってて。直に忙しくなるから。今ね、人手が足りないからさ。(同じことを繰り返し言っている)
ジ:はあ・・・。(念を押してるってことなのかな・・・)
次:ミョンジュン、なんか仕事あったら、ジヨン君にあげてよ。
ミ:ああ、経費の伝票、書いてもらおうかな・・・。溜まってるんだ。
次:あ、それ、いいじゃないの。






ジヨンは、今、ミョンジュン先輩の溜めに溜めた経費の伝票をまとめている。
隣に蹲るように座り、机にうつ伏せてジヨンの仕事ぶりを見ている先輩に、


ジ:よくこれだけ、溜めましたね。(レシートを整理しながら言う)
ミ:まあな、ここは忙しいからな。おまえさんが来てくれてホントによかったよ。・・・計算、速いんだね。(感心している)
ジ:ふ~。(ため息)このくらい、誰でもできますよ。(電卓をたたく)
ミ:いや、そうともいえない・・・。なかなか手早いよ。




ジヨンの初日の午前中はこうして終わった。
死体を見て、卒倒した憧れの先輩インソン。そして、正体不明のパートナーの経費の精算にすべての時間を費やした。









【午後・幕開け】


午後になり、周りはにわかに忙しく動き出した。
隣の捜査二課は、窃盗や万引きといった生死にかかわらない事件を扱っているためもあって、人の出入りが激しい。
しかし、一課のミョンジュンとジヨンだけは時が止まったように座り込んでいる。あのインソンでさえ、伝票をつけたり報告書を書いたりで忙しそうである。


ジ:皆さん、忙しそうですね。(周りを見回す)
ミ:そうだな・・・。(机に伏せている)
ジ:・・・。(ミョンジュンを見る)
ミ:(ジヨンの視線を感じて)昼飯でも食べておくか。(立ち上がり)次長、ヤンさんのとこ、行ってます。
次:わかった。(何か事務をしながら言う)
ミ:一緒に来い。
ジ:はい。



部屋から出ていくと、掃除のオバサンが親しそうにミョンジュンを見る。


ミ:こんちは。
オ:ミョンさん、洗濯物できてるよ。あとで届けるから。
ミ:いつも悪いな。
オ:いいんだよ。あれ、それより具合が悪いのかい?(ミョンジュンのマスクの顔を心配そうに見る)
ミ:ええ、ちょっと風邪をこじらせて。
オ:そう・・・ゆっくり休めるといいのにね・・・。あとで、ゆず茶も届けるよ。医務室で見てもらったほうがいいよ。
ミ:そうだね・・・。ありがとう。あとで行ってみますよ。
オ:(やっとジヨンに気がつく)あれ、おたく、新人さん?
ミ:今日から捜査一課に配属されたキムさん。オレと一緒だから、よろしくね。
ジ:キム・ジヨンです。よろしく。
オ:よろしく。ミョンさんをよろしく頼むね!


ジヨンが困った顔でオバサンを見る。ミョンジュンがちょっと笑って、オバサンに手を振って出ていく。
ジヨンはちょっとオバサンに頭を下げて、急いで彼についていった。




第八分署から、歩いて3分のところに定食屋があった。ヤンさんという50代の女将さんが一人で切り盛りしているようだ。


ミ:こんちは~。
ヤ:いらっしゃい! あれ、やだ。ミョンちゃん、風邪でも引いたの?(心配顔をして出てくる)
ミ:う~ん。ちょっとね。
ヤ:じゃあ、特製サンゲタンでも出すよ。こっちの姉さんは?
ミ:うちの新人。
ジ:キム・ジヨンです。
ヤ:そう、御ひいきにね。ミョンちゃんのパートナー?
ミ:ああ。
ヤ:じゃあ、毎日来てくれるわね。よろしく。じゃあ、姉さんも同じものでいいわね。
ジ:あ、はい。



二人はテーブルに着く。




ジ:先輩って・・・。(不思議そうに見る)
ミ:何? 
ジ:オバちゃんに人気があるんですね・・・。
ミ:やな、言い方するな。・・・なんだよ?
ジ:(顔をじっと見て)いえ、なんでもないです・・・。(ちょっとミョンジュンに興味を持つ)



ミョンジュンがマスクを取って、熱いお茶を啜るように飲んでいる。ミョンジュンの顔の周りに湯気が立つ。

二人の前に特製サンゲタンなるものが出てきた。
ミョンジュンとジヨンは、ふうふういいながら食べ始めるが、ジヨンは中の鶏肉を見つめて、ミョンジュンの顔を見る。



ジ:先輩。先輩ってまさか・・・鳥インフルエンザじゃないですよね?(顔を覗き込む)
ミ:おまえ、何が言いたいの?(ちょっと不機嫌)
ジ:いやあ、先輩と心中は・・・ちょっとね・・・。
ミ:ふん。(笑う)おまえみたいなやつには移んないよ。
ジ:なぜ??
ミ:・・・。(お茶を飲み、ジヨンの顔をじっと見て)おい。おまえって、初めての先輩に対しても容赦ないんだな・・・。(ジヨンの顔を見ながらスープを飲む)なあ、おまえ、なんでこの仕事についたんだ?
ジ:えっ?(一瞬、真顔になる)それは・・・。
ミ:正義のためなんて言うなよ。
ジ:・・・だめですか?
ミ:実際にはそれだけじゃ、やってられないからな。・・・周りが忙しそうでも焦るな。オレたちが忙しいってことは、人殺しがたくさんいるっていうことだからな。よその部署と違うところがそこだ。わかってるな。
ジ:はい・・・。(真面目に聞く)
ミ:やつらに勝つためには、正義感だけじゃあ、こっちがやりきれなくなる時もある。・・・おまえ、好きな男はいるのか?
ジ:えっ!(顔を真っ赤にする。昨日まではインソンだった。しかし、今日のことで、それが揺らぎ始めている)
ミ:まあ、いい・・・。(ちょっとサンゲタンの器の中をスプーンでかき回し、ジヨンを見る)男でなくても、母親でも何でもいい。好きな人のために、その人を守る気持ちで戦わないとこの勝負は負ける・・・。わかるか? オレたちの相手は恩情をかけるようなやつなど一人もいないんだ・・・卑劣なやつしかいない。そんなやつらに正義感だけでは勝てない・・・。キレイ事をいくら並べて頑張っても虚しいものさ。これだけは覚えておくんだな。
ジ:はい・・・。(ハンチングにサングラスをかけた男の顔を見つめる)




ジ:先輩。サングラス、取らないんですか? ・・・よく見えますね・・・。(不思議そうに見る)


ミョンジュンがじっとジヨンを見つめる。


ジ:なんですか?
ミ:オレたちの仕事はいったん事件に入ったら、犯人が捕まるまで、終わりがないんだ。わかるな?
ジ:はい。
ミ:だから、焦るな。オレたちのヤマは大きい。わかったな。
ジ:はい。
ミ:よし。さっさと食べてしまおう。この次こうやって、ちゃんとテーブルで食事ができるのがいつになるか、わからないからな。
ジ:はい。






ミョンジュンとジヨンが昼食を済ませ、ヤンさんの店の外へ出ると、空はどんよりと曇り、雨がぽつぽつと降ってきた。

ミョンジュンが空を見上げる。
空がなんとも言えない暗さを持っている・・・。



ミ:こういう日はいやなことが起きるんだ。


中からヤンさんが出てきた。


ヤ:ミョンちゃん、傘持ってって。濡れると、カゼがひどくなるからさ。
ミ:あ、ありがとう。また来るよ。
ヤ:傘はいつでもいいから。気をつけてね。姉さんもね!


ミョンジュンが差し出す傘にジヨンも入り、署までの道を二人は並んで歩く。



ジ:先輩。ホントに不思議なくらい不気味な空ですね・・・。
ミ:うん・・・。せっかく体が温まったのに、また寒気がしてきたよ。
ジ:先輩、大丈夫ですか? (ちょっと心配な顔をする)
ミ:う~ん、オレは鳥インフルエンザだからな、オレを当てにするなよ。(横目で見る)
ジ:そおんな~。(顔を見て笑う)




しかし、この空の色は・・・。
この冷たい雨。
二人の心にすうっと冷たい風が吹き抜けた。







署に戻って、二人が雨を払いながら、捜査一課へ入っていくと、署長初め、次長が、今入院中の課長の席に集まっている。


署:あ、ミョンジュン。帰ってきたか。
ミ:はい、なんですか?(課長席まで歩いていく)
署:さっき、ソウル南の小学校の裏山で女性の死体が発見された。今、インソンが行っている。
ミ:・・・。(二人の顔を見る)
署:これから行ってくれるか。
ミ:はい。・・・先週もその辺りで若い女が刺されて、今も重体で意識不明でしたよね。
次:うん・・・。つながりがあるかどうかはまだわからないが・・・。たいへんな事件になるかもしれないな。


次長が腰にダウンジャケットを巻きつけている。
ミョンジュンは話を聞きながらもそのジャケットを見る。
そして、署長と次長の顔を見る。



ミ:オレとインソンでやれということですか?
署:いや、ジヨンと君だ。
ミ:でも、ジヨンはまだ今日来たばかりですよ。
次:被害者の女の心理を考えるとジヨンのほうがいい・・・。
ミ:・・・。(署長を見る)
署:しっかりやってくれたまえ。
ミ:わかりました。(後ろを振り返る)おい、ジヨン。行くぞ。事件だ。
ジ:は、はい!


後ろの方で話を聞いていたジヨンが緊張した面持ちで答えた。



ミョンジュンがポケットから、自分の覆面パトカーのキーをジヨンに投げる。
ジヨンは受け取り、青ざめた顔でそのキーを見つめた。





ミ:ちょっとついて来い。
ジ:はい。


ミョンジュンは、男子用のロッカールームにジヨンを連れていき、自分のロッカーを開ける。


ミ:おまえはこれを着ろ。(長めのダウンジャケットを渡す)
ジ:先輩は? 先輩、カゼ引いてるのに。
ミ:オレはもう一枚中にフリーズを着ていくよ。おまえのそのコートじゃだめだ。今日はもっと天候が悪くなる・・・。
ジ:わかるんですか?(驚く)


ミョンジュンがコートを脱いで、中にもう一枚フリーズを着込んでいる。


ミ:次長の腰に巻いたジャケット、見たか?
ジ:ええ。
ミ:あの人は、腰を撃たれてから、天候が悪くなると、いつもダウンジャケットを腰に巻くのさ。古傷が痛むんだ。
ジ:・・・撃たれたんですか・・・?(また驚く)
ミ:うん・・・。それで今はずっとデスクだ。心は癒えても、体が癒えない・・・現場に戻りたくても体が行かせないのさ。
ジ:はあ・・・。(ため息)

ミ:いいか。オレもおまえもこの銃で自分の身を守るんだ。(胸に着けた銃を掴む)・・まあ、安心しろ。今日はもう犯人は現場にはいない・・・たぶんな。(そういいながら、ロッカーからレインコートとタオルも2枚出している)
ジ:・・・そうですね・・・。(青ざめている)
ミ:長靴も持って行こう。小学校の裏山はぬかってるはずだ。
ジ:そうですね。



ジヨンはミョンジュンに渡された厚手のジャケットを着込み、ミョンジュンから受け取ったPOLICEマークのレインコートとタオルを持った。








配属されて、たった半日で、血生臭い事件への扉が開いた。






二人が署の外へ出ると、外は雨がザアザアと降りしきっている。
まだ2時過ぎだというのに、空はとても暗い・・・。

11月中旬だというのに、凍てつくような寒さだ。



ジヨンが緊張した面持ちで車のキーを開け、覆面パトカーに乗り込む。
ミョンジュンが助手席に沈み込むように座った。
車の中に雨の匂いが広がった。



ミョンジュンが静かにジヨンを見つめる。


ミ:・・・いいか。もう現場には犯人はいない。だから、舞い上がるな。その目で現場をよく見るんだ。感じるんだ。現場には何かがある・・・。いいな。
ジ:(緊張して、ミョンジュンを睨むように見る)はい。
ミ:行こう。



ジヨンはエンジンをかけ、ワイパーを動かして、土砂降りの中を車を走らせていった。












車の中で、ジヨンが堪えきれず、大きなくしゃみをした。

ジ:ハックション! (運転しながら、前のめりになる)
ミ:(助手席に沈み込むように座りながら)おい! 運転中にくしゃみなんかするな。おまえ、今3秒くらい、目を瞑っただろ?
ジ:だってこれって自然現象ですよ。我慢できませんよ!
ミ:我慢しろ! 雨も降っているんだ。事故ったらどうするんだよ。我慢できなかったら、目を開けたままで、くしゃみをしろよ。
ジ:先輩はできるんですか! (呆れる)
ミ:そりゃあ・・・・・いざとなったら、やるさ。
ジ:ふん!(バカ!)わかりました!(ちょっと横目で見る) 今度からは目を開けたままで、くしゃみをします。
ミ:よし!
ジ:・・・。(バカ!)






ジ:(そうだ!)先輩、面白いこと、教えてあげましょうか?
ミ:なんだ?
ジ:私、ミニパト運転するまで、運転しながら、バックミラーを見るものだって知らなかったんです。
ミ:・・・おまえ、それでよく今まで無事に生きてこられたな。
ジ:ですよね~。(横目で勝ち誇ったようにミョンジュンを見る)


ミョンジュンが助手席でどんどん小さく沈んでいく。


ミ:おまえって、ちょっとヤバイやつだな・・・。(ジヨンの横顔を見つめる)
ジ:ふん!(鼻で笑って楽しそうに運転する)


ミョンジュンがそれを見て笑った。


ジ:なんですか?
ミ:うん? そのくらいのほうがいいさ・・・。これからオレたちを待っている現実の重さを考えれば、おまえはそのくらい、元気なほうがいい・・・。
ジ:・・・先輩・・・。(真面目な顔になる)











【初めての現場】


ソウル南の小学校の裏山。
子供たちがよく遊びに行くところでもある。
ここのところ、雨が降ったり止んだりで、道がぬかっているため、子供たちも裏山には入っていない。


二人は着膨れした上にPOLICEマークのレインコートを羽織り、傘も差さず、フードをかぶり、長靴を履いて、雨で泥濘のできた道を進んで行く。

すでに鑑識が現場を調べている。

先に来ていたインソンが彼らを見つける。


イ:先輩~! 今、被害者は科捜研のほうへ運ばれました。
ミ:被害状況をちゃんと確認したな。
イ:はい。自分のデジカメでも撮影しました。胸の辺りを何度も刺されていて、死後一日は経過していそうです。それと・・・第一発見者は、ここの小学校の一年生の担任教員、2人です。工作の授業で使う、クリスマスリース用のツルを2人で取りに来て発見したそうです。



鑑識のサブを勤めるハン・モクリンがやってきた。


ミ:あ、モクさん、お世話になります。
ハ:なんとか凶器を探しているんだが、この雨ではな・・・。足跡もとれなかったんだ。こんなにぬかってベタベタと足跡が残っていたというのに。発見者の先生方が死体の周りを歩き回って、足跡を消しちまったのさ。この雨でニオイも消えた。(現場を見つめる)
ミ:着衣はどうでしたか?
ハ:まったく乱れてなかったんだ・・・。性犯罪じゃないな・・・。
ミ:う~ん・・・。(周りを見渡す)


木々がうっそうとしていて、道といっても、とても狭く、人が4人横に並べるかどうかの幅だ。


ハ:遺体の近くに大きな木があって、そこに文字が彫られているんだ。あの木だ。来てみろ。
ミ:ジヨン! 行くぞ!
ジ:は、はい!

遺体が横たわっていた場所の近くの木に文字が刻まれている。
「Trait」


ジ:なんでしょう? トレイト・・・英語だけど、う~ん、「特徴」とか「特質」とか?
ミ:う~ん・・・。ちょっと意図がわからないな・・・。


インソンがその文字をデジカメで写す。


なぞの文字。
証拠はそれだけだ。



ミョンジュンは周りを見回してから、何気なくジヨンの顔を見た。

雨が滴るフードの奥のジヨンの顔は暗く、何かに憑かれたような目をして、遺体発見現場をじっと見つめている。


その横顔には、刑事としての顔の他に、なんとも言えない、虚しさなのか、怒りなのか、苦しさなのか、言い知れぬものが浮かんでいた。






2部へ続く。





赴任早々に事件を担当したジヨン。

パートナーの先輩ミョンジュン始め、個性的なメンバーの揃った捜査一課。
いよいよ、刑事生活が始まります!

ミョンジュンのふと見たジヨンの横顔の翳りはいったい・・・。



(少しコメディタッチのところがありますが、事態はだんだん深刻になっていきます・・・)




こちらは、一日置きにアップします・・・



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