2010/01/27 00:35
テーマ:【創】東京恋物語 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「東京恋物語―僕たちの場合」(後)











BYJシアターです。

後編が遅くなりました。
ミアネヨ!




ではお楽しみください!
ここより本編。


~~~~~~~~~~~~




主演:ぺ・ヨンジュン
    石田ゆり子


【東京恋物語―僕たちの場合】後編




【主題歌】「いつから恋に」


♪♪~

いつから恋が始まったのかわからない
気がつけば、いつもあなたがそこにいて

いつも弱虫の私は恋に踏み出すことができず
今まで心を閉ざしてきたけど


いつから恋が始まったのかわからない
気がつけば、あなたの温もりがここにある

あなたが勇気をくれたの
僕を信じていいよって


あなたは夢ではなくて、ここにいる
だから私は告白するわ、愛していると

あなたは王子さまではなくて、私の愛する人
だから誓うわ、きっと私たちは幸せになるって


いつから恋が始まったのかわからない

でも私にはわかるの、あなたが運命の人だと
私のかけがえのない人だと・・

♪♪~









水曜日昼近く。
あずさの会社。あずさの携帯が鳴る。見るとヨンジュである。


あ:はい。おはようございます。写真? もうできたんですか。見たいわ。・・・ええ、いいですよ。地下街の「鳥カツのつくね丼」が結構おいしいんですよ。


そういいかけると、美香とカコが通りかかって、


美:ねえ、今日は鳥カツにしようか。つくね丼、食べたいし・・・。
あ:(ちょっと姿勢を低くして声をひそめ)あ、ごめんなさい。今日は違う所のほうがよさそう。じゃあ、**のあたりで待ち合わせしましょうか。では後ほど。
美:(あずさの席に戻ってきて)先輩、鳥カツ、ご一緒しませんかぁ?
あ:ごめん、今日はちょっと用事があるから。
美:なあんだ。 冷たいですねぇ。(そういって行き過ぎる)



ヨンジュと待ち合わせ、少し離れた所にある中華料理店に入る。


ヨ:なにがお勧めなの?
あ:う~ん、とくにないけど(微笑んで)、チャーハンセットか日替わりが人気かな。ヨンジュさん、今度、つくね丼、食べに行きましょうね。


チャーハンセットを注文し、ヨンジュが早速写真のアルバムを見せた。


あ:わあ、よく写ってる。ああ、ミミちゃん、かわいい・・・。ヨンジュさん、写真お上手ですね。(ヨンジュに微笑む)




美香とカコが入ってくる。


美:鳥カツ、混んでたね。今度、もっと早く行こうね。
カ:(美香の腕を引っ張りながら)先輩、あれ・・・。
美:なあに?(カコの指さすほうを見る。ヨンジュとあずさが楽しそうに話している)え、うそ!


美香とカコは二人から見えない席に座り、二人の様子を見る。注文をとりに店員がやってきて、


カ:ラーメン。
店:へい、ラーメン一丁!
美:ちょっと気持ち(どいてくれないかな。見えないよ)。
店:へい、キムチチャーハン一丁!


美香が、唖然として、店員を見つめる。




あ:すごくいい写真ばかりですね・・・(めくって自分ひとりの写真を見る。いつになく、華やいだ明るい笑顔。忘れていた屈託のない笑顔。驚く)
ヨ:どうですか。僕は気に入っているんだけど。このアズさんの笑顔。(あずさがちょっと涙ぐんだのに気づき)アズさん・・・?
あ:いえ・・・こんなに明るい笑顔の写真って最近なくて。・・・ありがとう、ヨンジュさん。



カ:見つめ合いましたね、今。
美:う~ん。あっ!


あずさが、ヨンジュのチャーハンのグリンピースをとって自分のほうに入れる。
ヨンジュは驚いてあずさを見る。


あ:写真のお返し。


あずさが微笑むと、ヨンジュも一緒に微笑む。二人で和気藹々と昼食をとる。




美:謎の東洋人とか言っちゃって・・・やっぱり、あずさ先輩は普通の人じゃないわ。速攻ね。やっぱり未婚の母は違うわ。


カコも一緒にうなずく。
なにも知らずに、あずさとヨンジュは、楽しく食事をしている。






日曜日、午後2時、あずさの実家のキッチン。
ヨンジュが早々に来ている。エプロンをし、ノートとボールペンを持って、ミキの講義をまじめに聴いている。


ま:(小さな声であずさに)珍しいお客さんよね。筆記用具持ってくるって。
ミ:じゃあ、始めましょう。皮の硬さは耳たぶで確認しながらね。焼き餃子と水餃子の皮の違い、わかりましたね?
ヨ:はい。


あずさとまどかが顔を見合って笑う。


ミ:二人ともヨンさんを見習って手伝って。
二人:はい。先生!(言ったあとで笑う)


ヨンジュがミキと皮を作る。
先に作っておいた具と皮を持って、ダイニングテーブルに移り、4人で仲良く餃子を包む。
時々、あずさがヨンジュの手つきを確認しながら、和気藹々である。





夕方。
子どもたちも入れて楽しそうに食事する風景。
ヨンジュとあずさが並んですわり、楽しそう。ヨンジュ一人いるだけで女所帯が華やぐ。あずさは久々に屈託のない笑顔。時々、ヨンジュと顔を見合わせ、笑いあう。
サラダのボールをとろうとするあずさ。


ま:よそってあげる。(あずさの皿に盛り付けるが、嫌いな生ピーマンのスライスを上にドンとのせる) はい、どうぞ。


あずさが受け取るが、ピーマンに気づき、一瞬困った様子。
しかし、なんでもないように隣においてあるヨンジュのサラダの皿にピーマンをのせ、知らん顔で食事を続ける。ヨンジュはあずさの様子を視界内で捕らえたが、まったく気にせず、何事もなかったかのように食べる。


ミキとまどかが、ちゃんと一部始終を見ている。







夜。
亮太はすっかり疲れきり、あずさの実家の日本間で寝ている。ヨンジュが寝ているミミをおんぶして玄関に立つ。


ヨ:どうもご馳走様でした。楽しかったです。ミキさん、どうもありがとうございました。


あずさも亮太と実家に泊まるつもりで、リラックスしてミキとまどかの横に並び、ヨンジュたちを見送ろうとしている。


ミキ:あーちゃん、あなたも一緒に帰りなさい。亮太は明日迎えに来ればいいし。会社用の服持ってきてないんでしょう?
あ:(面倒くさそうに)う~ん。
ま:おねえ、ヨンジュさんと帰りなよ。荷物持ってあげてさ。(あずさをつつく)
あ:(二人に促され)そうね。ヨンジュさん、待って。コート着てくるから。






夜道。
ミミを背負ったヨンジュと、ヨンジュたちのバッグを持ったあずさが、並んで歩く。
あずさは解放感を感じながら、


あ:わあ、星がキレイ!(伸び伸びとしたあずさがそこにいる)
ヨ:(ちょっと星を見上げ、あずさを見る)アズさん、・・・アズさんはまだ、亮太くんのお父さんのことを忘れられないんですか?


あずさは言葉に詰まる。
考えてもいなかった展開だ。
言葉に窮してヨンジュを見る。

ヨンジュの目が光っている。


あ:(素直な言葉を探す)・・・忘れてました・・・たぶん、忘れたと同じです。私は恋がよくわからないまま、彼の胸に飛び込んで、気がついたら、亮太がお腹にいたんです。彼にとって、私がどれだけの人間だったのか・・・わかりません。(うつむく)
でも、恋が終わった時、私は母親になろうとしていたんです。(ヨンジュをじっと見て)その事は後悔してません。・・・本当に愛していたのかどうか、今の私にはよくわからないんです・・・ただ後悔はしていないとしか・・・。

ヨ:アズさん、僕はあなたが好きです。とても、とても好きなんです・・・あなたをこのまま思い続けていいですか・・・。アズさんに恋していていいですか?



あずさが、ヨンジュの目を見る。
愛おしそうに見つめるヨンジュの瞳。

あずさは思わず涙が出る。


あ:(うん、うんと首を縦に振り)ええ、もちろん。私も、あなたが好きです・・・心から、とても好きです・・・。



星空の下、見つめ合うヨンジュとあずさ。







同じく夜。
あずさの実家のリビング。ソファで本を読むまどかの隣にミキが来て座る。


ミ:まどちゃん。あなた、ヨンさんのこと、本気で好きだったの?(心配そうに見つめる)
ま:えっ?(なんで?)
ミ:だって、あーちゃんにあんなにピーマン・・・。

ま:違うって・・・そりゃ好きだけど、別に恋人にしたいわけじゃないもん。・・・ただ、おねえちゃん見てたら、ああ、おねえちゃんて本当はこういう人だったなあって。・・・華があって、男の人をやさしく包み込むような・・・。思い出しちゃったのよ。(横目で母を見て微笑む) あの事があってから、おねえはガードが固くて、品行方正の優等生って顔になっちゃって。そりゃあ人からちゃんと見られたいって気持ちわかるけど。隙のないつまらない人になっちゃったから。久しぶりに昔のおねえを見て・・・妬けたのよ・・・。(ちょっとため息) ヨンジュさんだって、おねえちゃんに気持ち、持っていかれてたでしょ。(ねえ、ママ)

ミ:そうね。本当だ。(感慨深げ)

ま:ママさん。(母の顔をしっかり見る)私にもママさんの愛、少し分けてちょうだいよ。おねえちゃんのことばっかり心配してないでさあ。(笑いながら母の胸に心地よさそうに頭をうずめる)
ミ:よしよし。(微笑みながら、娘の頭をよしよしする)今日はママも思いっきり失恋しちゃったし、一緒に飲もうっか。(顔を覗きこむ)
ま:ママ、今度は子供からじゃなくて本人から攻めたほうがいいんじゃない?


まどかとミキが見つめ合って笑い、泣くふりをするミキをまどかがうれしそうに肩を抱いて、よしよしする。








夜。
ヨンジュのマンション。
子供部屋のベッドにミミを寝かしつけ、そっと部屋を出るヨンジュとあずさ。

子供部屋のドアを閉め、廊下のダウンライトの下、ヨンジュがあずさを見つめる。



あずさは、この狭い空間と人工的な明かりの中、逃げ場を失って、ヨンジュから発散する男の匂いと熱気にさからうことができない。
なぜか自分では体の均衡を保つことができず、彼のほうへ倒れこみそうな錯覚に陥ってしまう。


ヨンジュの指先が、あずさの髪に触れ、頬に触れる。

ヨンジュの瞳があずさを愛しそうに見つめている。
あずさのあごを少し上へ持ち上げてやさしくキスをした。

あずさは胸が苦しくなって、呼吸がままならず、深く息を吐く。
とても彼を見つめていられない・・・ちょっとうつむくが、またヨンジュがしっかりと顔を持ち上げる。
あずさは動悸が激しくて、どうしていいのかわからない・・・。

ヨンジュが両手であずさの顔を包み、もう一度、真剣に顔を見つめ直して長くキスをする。

あずさはヨンジュのセーターの両肘の部分をギュっと掴んで立っているのがやっとだ。



・・・再びヨンジュがあずさを見つめ、まるであずさの骨格を調べるかのように、その大きな手は顔をなで、首をなで、細い肩をなで、豊かな胸を包み、細い腰をなで、ヒップを抱え込むように押さえて引き寄せる・・・。

あずさは、もう一人で立っていることができず、彼の首に腕を巻きつけ、自分からヨンジュにキスをする。

ヨンジュはそれに応え、あずさをより引き寄せて、二人は長くて熱いキスをする。




ヨンジュのベッドの中で彼に腕枕されているあずさがいる。
二人は同じ方向を向いて重なり合って寝ている。
まるでヨンジュがあずさを膝にのせて抱いているかのようだ。

あずさが寝返りを打ち、ヨンジュの厚い胸板に顔を寄せた。
反射的にヨンジュはあずさに布団をかけるが、二人は幸せそうに安らかに熟睡している。



明け方、帰っていくあずさを玄関口で抱き締め、キスするヨンジュ。


ヨ:(抱き締めながら、やさしく)通りまで送るよ。
あ:ううん。ここでいいの。近所だから、誰かに見られたら困るから・・・。
ヨ:僕じゃだめ・・・?(心配そうに見つめる)
あ:違うの・・・ただ、恥ずかしいの・・・。


あずさはヨンジュの頬にキスして体を離す。
ヨンジュの手があずさの手を握っているが、あずさは、そっと振りほどいて笑顔で別れる。

あずさが、一人帰っていく。








火曜日の昼下がり。
今日は在宅の日。あずさが家のPCの前で、コピーを考えながら、コーヒーを飲んでいる。
あの夜からあずさの心は夢見心地である。今までと違って、ため息も幸せの息である。

今日はヨンジュやミミのためにもなにかおいしいものを作ろう。


まずはコピーよりメニューだ。
そこへヨンジュからの携帯電話が鳴る。



あ:はい。
ヨ:あ、アズさん。ちょっと急ぎの取材が入って。今日はミミを預かってくれますか。
あ:ええ、いいですよ。今私も、夕飯を一緒に食べたいなと思って、メニューを考えていたんです。
ヨ:そうか。・・・僕のほうは何時までかかるかわからないんです。(裏で、「ヨンジュさん、出ましょう!」と緊急の様子)
あ:私に任せて! 安心して行ってきてください。お仕事が終わったら電話くださいね。
ヨ:ありがとう。(「ヨンジュさん、急いで」)



電話が切れ、ヨンジュのたいへんそうな状況があずさにも伝わってきた。

今日は亮太とミミの好きなものを・・・オムライスとから揚げでも作るか。
保育園に迎えに行く前にスーパーに寄ることにする。








取材車の中。
ヨンジュが複雑な顔をしながら、外を眺める。


ヨンジュの声「学校は英語圏でとは思っているんですが、まだミミを手放せなくて」

マークの声「がんばってこい。これでワシントンには確実に戻れる。第一線に戻る最後のチャンスだ。機会を逃すな」

ヨンジュの声「アズさん、僕はあなたが好きです。とても、とても好きです。あなたをこのまま思い続けてもいいですか・・・アズさんに恋していてもいいですか?」

あずさの声「ええ、もちろん。わたしもあなたが好きです・・・心から」


ヨンジュの声「オレはいったいどうしたいんだ・・・」



車は現場へと向かっていく。








あずさは早めに家を出て買い物をすませ、保育園に亮太とミミを迎えにいく。
なんとなく幸せな気分だ。

下駄箱の前で、見知らぬ女が栄子先生と言い合っている。


女:母親が来ているのに娘を渡せないなんて、おかしいわ。
栄:保護者の方から連絡があった場合のみ、他の方が迎えにきてもいいことになっているんです。最近はいろいろな事件があるので・・・。


女はイライラしている。そこへ後ろからあずさが現れ、


栄:亮ちゃんのお母さん。(困った表情で)
あ:こんにちは。(なにも知らないので明るい顔)


栄子先生が子供たちを連れてきていいのか、迷っている。


あ:先生。亮太と、今日はミミちゃんを・・・。


あずさの言葉に、女が振り返り、厳しい目つきであずさを見つめる。
あまりの形相にあずさは驚く。
その女は白いパンツをはき、高いヒールを履いているため、おそろしく背が高く、180センチ近く見える。まるでスーパーモデル並みだ。
あずさの横にそびえ立つようにして、あずさを見据えている。
顔は美しいが少しケンのある面持ち。どこかで見た瞳、似た顔を知っている。

馴染み深い・・・だれ?



女:(あずさに向かって)ミミとどんな関係です? ヨンジュと何かあるの?(英語訛りの日本語)


ミミの母親だと悟るが困って、あずさは先生を見る。先生も困り果てた顔をしている。


あ:あのう、ミミちゃんの同級生の亮太の母です。
女:そう。


そういいながら、女はあずさを上から下まで見回す。
あずさはスーパーの袋を提げて普段着ではあるものの、中々の美女である。

あずさには負けられない。


女:ミミの母親です。今日はミミを連れて帰ります。
あ:えっ?(『聞いてない・・・たぶん、ヨンジュさんも知らないことだ』)



そうするうちに亮太とミミがあずさを発見して出てきてしまう。


亮:ママ~。
ミ:おばちゃん。(走ってきて、あずさの横に立っている女を見て、しばし考え)ママ? ママなの?
女:ミミ! ママよ。マミーよ。会いたかったわ!(自分ではミミの顔がわからず、ミミから声をかけてくれたので安堵する)
ミ:(喜んで抱きつく)迎えにきてくれたの? パパの代わり? 
女:そうよ、一緒に帰りましょう。
ミ:(うれしそうに)うん!!



あずさはこの展開にどうしていいかわからない。先生も見ているだけだ。
しかし、ヨンジュの知らないところでミミを行かせるわけにはいかず、


あ:待ってください! ミミちゃんのパパはご存知なんですか。今日は私がお預かりすることになっているんです。困ります。待ってください。


あずさが女に取り付こうとするが、すごい勢いで、あずさを払い、ミミを連れていってしまう。






保育園の帰り道。肩を落として歩くあずさ。横から亮太が母親の顔をチラチラ見る。


亮:ママ、泣いてるの?
あ:だって、ミミちゃんのパパから預かったのに。守ってあげられなくて・・・。
亮:でも、しかたないよ。ミミちゃんのママだもん。僕だってママが来たらうれしくて行っちゃうよ。・・・ママに会いたがってたもん。
あ:そうだね・・・。(亮太を引き寄せ、手をつないで帰る)







夜8時過ぎ。
やっとヨンジュからの電話が入る。


ヨ:アズさん、すみません。連絡が遅くなってしまって・・・でもまだかたがつかなくて。ミミはもう寝ましたか?
あ:(ヨンジュの声を聞いた途端、今まで我慢していた気持ちがこみ上げて)ヨンジュさん、ごめんなさい・・・。私・・・。
ヨ:アズさん、どうしたんです? 泣いてるんですか? 何があったんですか?
あ:ミミちゃんのお母さんが保育園に迎えにきて、ミミちゃんを連れて行ってしまったんです。私、ミミちゃんを守ってあげることができなくて・・・。
ヨ:(一瞬驚くが)そうだったんですか・・・仕方ありません。ミミの母親です。ミミだってうれしくてついていってしまったんでしょう。

あ:どうしましょう。
ヨ:直に連絡がくるでしょう。母親ですから、悪いようにはしないはずです。それにパスポートは僕が持っているし。・・・勝手なことはできないはずです。アズさん、大丈夫。ゆっくり休んで。・・・・・・あずさ、僕は怒ってなんかいないよ・・・。
あ:ヨンジュさん・・・。(泣けてしまう)



電話のあと、一人暗いダイニングに座り、頭を抱えているあずさ。

取材車から降りて、タバコに火をつけ、一服するヨンジュ。空を仰いでいる。







ホテルの一室。


ミ:今日はパパは来ないの? 亮ちゃんのおばちゃんにちゃんと話してくれた? こっちにお泊りしますって。


ナンシーはミミの話に適当に答え、


ナ:大丈夫よ。ママと一緒だとわかれば、パパだって安心するわ。ねえ、ミミ、よくミミはマミーだってわかったわね。(顔を覗きこむ)
ミ:ママだって、ミミのこと、すぐわかったでしょう?(微笑む)
ナ:ええ。(実は2歳の頃までしか知らない)
ミ:ミミねえ、いつもママの写真とかビデオを見てるんだ。
ナ:そうなの?(驚く) パパも?
ミ:パパ?・・・ 一緒の時もあるよ。(ミミがビデオを見ている後ろでPCをやったり、まったくビデオの映像を見ないヨンジュのショット)写真はミミの机の上。ビデオはミミが好きな時に見られるようにって、パパが「ママ」って書いたの、作ってくれたんだ。
ナ:パパが・・・。ふ~ん。(思いをめぐらす)


ミ:ママ。また3人で一緒に暮らすの? 
ナ:そういうこともあるかもね・・ミミがそうしたければね。
ミ:本当?(喜ぶ) 今日は一緒に寝てくれる? パパは寂しい時、怖い時、いつも一緒に寝てくれるよ。
ナ:そう・・・。今日のあの女? だあれ? 亮太とかいう子のお母さん。どんな人?
ミ:やさしい人だよ。かわいがってくれるよ。おいしいオムライスも作ってくれるんだ。
ナ:パパとはどういう関係?
ミ:(質問がよくわからず、とりあえず)お友達。








翌日の午後。
ホテルの一室。ミミは部屋に閉じこもっていて、もうすっかり飽きている。母親の用意したおもちゃはミミには子供すぎて遊べない。ナンシーはどこかへ行っている様子。寂しそうなミミ。







会社を休み、実家に来ているあずさ。リビングのソファでミキと並んで座っている。


ミ:あーちゃん、それで一睡もできなかったの?(心配した面持ち)
あ:ママ。どうしよう。
ミ:ヨンさんが解決するしかないでしょう。様子を見たほうがいいわ。私たちにはどうすることもできないもの。
あ:うん。(心痛な面持ちで母を見る) 彼は帰ってくるわよね? 私のもとへ帰ってくるわよね?
ミ:あーちゃん・・・大丈夫よ。ヨンさんを信じて、ね。
あ:うん。



ミキがあずさの肩を抱いて、やさしく肩をなでる。







ヨンジュがマンションに戻っている。こざっぱりとした服装に着替え、電話の前に座る。

ヨ:すみません。そちらにナンシー原岡は泊まっていませんか。

延々と続くホテルへの問い合わせ。







夕方。
○○ホテルのロビー。意を決してきたような顔つきでヨンジュが立っている。エレベーターからナンシーが現れる。3年ぶりの再会。ナンシーに促され、客室に行くヨンジュ。




部屋の中。(ふたりの会話が英語のため、ヨンジュはいつもよりはっきりとした表現で、スピーディにたたみかけるように話す)



ヨ:ミミは?
ナ:(にこやかに)今、プレールームで預かってもらってるの。話し合いの間はいないほうがいいでしょ。久しぶりね、ヨンジュ。元気だった? 座ったら?

ヨ:(ナンシーの態度が理解できないが一応ソファに座る)何しに来たの? なぜミミを連れ出したの? 僕はミミを人に預けていたんだよ。なんの許可もなく勝手に連れ出して。なぜそんな危険なことをするの? ちゃんと話せば僕は君をミミに会わせるよ。

ナ:そう、ありがとう。急に会いたくなっちゃったの。ミミやあなたに、ヨンジュ。
ヨ:なぜ? どういうこと?
ナ:私、彼と別れたわ。やっと自由になったのよ。あなたやミミのためにこれから生きてあげることができるわ。
ヨ:どういうこと?(わからない)


ナ:あなた、私と一緒にいたいって言ったでしょう。私が戻ればそれでハッピーエンドじゃない。戻ってきてあげたのよ、あなたのところへ。うれしくないの? ヨンジュ。(甘えた顔をする)

ヨ:君の言ってることが、僕にはわからない。・・・僕たちは3年前に離婚した。いやその前から破綻していた。(睨みつける)この結婚は失敗だったんだ。僕は君という人を見間違えていたし、君も僕を知らなすぎたよ。



ナンシーの自由で明るい物言いや態度は、若いヨンジュには、聡明さに裏づけされたリベラルで強い意思の表れだと思われた。
確かにそうではあったが、その裏には金持ちの娘特有の傲慢さがあった。
それは結婚して初めて生活してみるまでわからなかった。

そして、ナンシーも、韓国育ちのヨンジュの東洋的な思慮深さや感覚が微妙にわかりづらかった。
ヨンジュの外見は、アメリカにいるアジア系の中では抜群だったし、英語も流暢でアメリカ育ちの自分と大して変わらない気がしていた。しかし、実際暮らしてみると、ヨンジュの核にあるものは、ナンシーとは決定的に違っていた。

ナンシーから見ると、時に優柔不断な男に映った。
その煮え切らなさに、ナンシーは他のわかりやすい男を求めていった。・・・結局、二人とも相手の本当の姿をあまり理解していなかったし、歩み寄る前に破綻してしまった。

それなのに、ナンシーはなぜまた、ヨンジュを求めてくるのか。

ヨンジュに未練があるのか。




ナ:あなた、私と別れたくないって言ったでしょう。(言ったのはあなたじゃない)

ヨ:それはミミのため。・・・でも君は新しい男の元へ行き、ミミを捨てた。この3年間、僕がどんな思いでミミを育ててきたか、君にはわからない・・・。(第一線の記者をやめ、育てやすい環境に身をおいたのだ)・・・最初の2年半は韓国で母さんの力を借りながら育てた。そして今、この日本でミミを育ててる。・・・なぜ今、僕がここにいるのか、君にはわからないだろう? 僕が自分の手で、なるべく安全なところで、あの子をこの手で育てたかったからだよ。・・・君は僕をどう思っているの? 結婚は愛してなければだめだ。僕は、ナンシー、君を愛していないんだ。

ナ:でもミミに私のことを教えたり、ビデオや写真を見せたり、あなただって寂しかったはずだわ。

ヨ:それはミミのためさ。あの子の母親だからね、君は。顔を忘れないようにしてあげたかっただけだよ。君に対しては・・・愛がないんだ。(見つめる)・・・君もないだろう。ただ今寂しくなっただけだろ。

ナ:(返す言葉がない。もっとヨンジュは簡単に戻ってくると信じていた)なぜ、私が浮気した時、怒らなかったの? あなたは私を許してくれたわ。

ヨ:ミミのためだよ。そして、もうそこには愛がなかったからだ。・・・もうこれ以上言わせないでくれ。君を傷つけるだけだよ。(もうやめよう、終わったことだ)・・・帰るよ。・・・僕には、待っている人がいるんだよ。ミミを連れにいくよ。もし、君が本当にミミを手元で育てたいのなら、ちゃんとした方法で僕にコンタクトをとってくれ。・・・ミミと帰るよ。



ナンシーは、自分の過ちに気づいた。

ヨンジュの愛は冷めていた。
かけらも残っていなかった。
彼はナンシーを愛していたのではなく、娘のミミを愛していたのだ。

彼の気持ちを簡単に考えていた。
彼をもっと情に流されてしまう人間だと思っていたが、その芯は強く、優柔不断というより、考えて選び取った道は、簡単には変えない人間だったのだ。


ナンシーは、戻る道など、どこにもないことを悟った。







ホテルの3階のプレールーム。
ヨンジュとナンシーが迎えにくる。ミミが喜んで出てくる。


ヨ:ミミ、おうちへ帰ろう。ママにさよなら、言って。
ミ:一緒じゃないの?(寂しそうな顔になる)
ヨ:もう一緒にはなれないんだ。わかるね。ママといて楽しかったかい。さあ、帰ろう。

ミ:(ふたりの様子を見て、複雑だが、結局はいつものおうちに帰るしかないのだとわかって)ママ、バイバイ。



ナンシーはミミを力いっぱい抱きしめる。ミミもママを忘れないように首に抱きつく。



ナ:(涙目になりながら)ミミ、会えてマミーはうれしかったわ。元気でね。
ミ:うん。ママも元気でね。




ナンシーは、自分にそっくりな大きな瞳の娘を見つめ、ミミも母をじっと見つめている。
ヨンジュに引かれて帰っていくミミ。
エレベーターに乗ったミミが最後にナンシーにバイバイと手を振る。


エレベーターホールで、ナンシーはエレベーターが閉まった後もドアを見つめている。
娘を簡単に手放したことへの後悔が今になって、込み上げてくる。
堪えきれなくなり、座り込んで泣いてしまう。






帰りのタクシーの中、ミミがヨンジュにしっかり抱きついて眠る。







夜。
ヨンジュはミミを寝かしつけてから、あずさが待つ実家を訪ねた。
あずさが出てきて、別れた妻と話し合い、ミミを取り戻して帰ってきたことをヨンジュが報告する。

それを聞いたあずさが、安堵からか、今までの溜まっていた思いを吐き出すように泣き出した。

ヨンジュもミキも驚くが、母の見守る中、ヨンジュの胸に抱かれて泣くあずさ。
ミキも娘の様子に胸がいっぱいになる。



ミ:ヨンさん、あずさをよろしくお願いしますね。
ヨ:はい。



ミキは娘をヨンジュに託した。








3月の晴れた日曜日の昼下がり。
近くの公園。亮太とミミが遊んでいる。

ヨンジュとあずさが並んでベンチに座っている。

風が温かくそよいでいる。




ヨ:アズさん。今度ワシントン本社の社会部の部長としていくことになったよ。
あ:(少し驚いて)えっ。
ヨ:(あずさを見つめ)遠いけど、一緒に来てくれるかい。
あ:(しばし、ヨンジュを見つめ)私でいいの?
ヨ:僕は君でなきゃだめだよ。・・・結婚してくれますか・・・。
あ:(うれしそうにうなずき)ええ、もちろん!



二人見つめ合い微笑んで、肩を抱き合う。

あずさは少し涙ぐむが、最高の笑顔でヨンジュを見つめる。

ヨンジュがそんなあずさの肩をギュッと抱き寄せて、笑った。







【主題歌】


♪♪~

いつから恋が始まったのかわからない
気がつけば、いつもあなたがそこにいて

いつも弱虫の私は恋に踏み出すことができず
今まで心を閉ざしてきたけど


いつから恋が始まったのかわからない
気がつけば、あなたの温もりがここにある

あなたが勇気をくれたの
僕を信じていいよって



あなたは夢ではなくて、ここにいる
だから私は告白するわ、愛していると

あなたは王子さまではなくて、私の愛する人
だから誓うわ、きっと私たちは幸せになるって



いつから恋が始まったのかわからない

でも私にはわかるの、あなたが運命の人だと
私のかけがえのない人だと・・

♪♪~










ワシントン郊外の住宅地。
庭が森につながっているように見える一軒家。

美しい紅葉の中、亮太とミミが、ブランコの近くで追いかけっこをして遊んでいる。

ヨンジュはエプロンに軍手をつけ、バーベキューの準備をしている。
後ろ姿のあずさがテーブルセッティングをしている。



ヨンジュが声をかけると、あずさが振り返り、ふっくらとしたお腹をさせて、笑顔で応えた。











THE END






う~ん・・・これは5年前の作品ですが、
ヨンジュは、ぺ・ヨンジュンしてますね~~

なんか、エプロンつけて餃子の作り方をノートするヨンジュが
とても今のjoonに近くて驚きです^^


また、次回、創作でお会いしましょう!






2010/01/16 00:28
テーマ:【創】東京恋物語 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】東京恋物語―僕たちの場合(前)









BYJシアターです。

ここのところ、PCが壊れまくり、実は私のもとには
新しく書き溜めた原稿がゼロ~になりました・・・。

ふ~~~


ところで、過去の冬の作品を探していていいのがありました~~^^



今日は、2005年2月に書いた作品です^^
ものすごく古いですが、大好きな作品です^^


今回は温かくて爽やかな恋をお送りします。
ホームドラマ系です。


昔は配役にいろいろ条件つけてました~~~

それと、古いのは、主題歌あり^^
シナリオ的に作っているので、ちょっと読みにくいかも。
でも、読んでね~~



配役
ぺ・ヨンジュ: ぺ・ヨンジュン(32歳。**通信社の特派員。訳あって5歳の娘と二人暮らし。書いた当時は、髪の色を抑えた大人のチュンサンがイメージでした。しっかりしていて、男らしい人でしたよね。インスでもいいですよ。)
ぺ・ミミ  :  (5歳。英語名がミミ。韓国名はぺ・ミンヒ。ヨンジュの娘で日本の保育園に入る)

今井あずさ: 石田ゆり子(ヨンジュナより若かった頃の石田さん。30歳。広告代理店のコピーライター。男の子が一人いる。)
今井亮太 :  (5歳。保育園に通う)
あずさの母: 風吹ジュン(現在の風吹さんで)


2月の作品です。冬服でどうぞ。




ここより本編。
ではお楽しみください!

~~~~~~~~~~~~








【オープニング】

日差しの暖かな冬の朝、マンションの一室。暗い奥の廊下から上半身裸の上に羽のようにふわりと、ワイシャツをまといながら、ヨンジュが現れる。(ヨンジュの上半身アップ)コーヒーのカップを片手になにやら様子を見ている。
ダイニングテーブルで、一人娘の5歳のミミが朝食を取っている。小さく切り分けられたフレンチトーストをフォークに刺し、頬張る。ミルクをぐいっと飲んで、


ミミ:パパ~。食べ終わったよ~。
ヨンジュ:食べ終わった? よし。(コーヒーカップを置き、横に用意してあった大きなブラシで娘の前髪をサッサと後ろにとき、ゴムで止める。そこに熊のぬいぐるみのついたゴムをまた巻きつける。慣れた手つきである)


ヨンジュがテーブルの皿を片付けようと足を踏み込んだ瞬間、


ヨ;ああ~。(食べこぼしを踏んでいる。足の裏を見ると、ベトベトである)ミミ・・・。
ミ:ごめんね、パパ。(謝ってはいるが、おかしそうに笑う)





同じく朝、別のマンションの一室。あずさの足がアップで映る。部屋の中をスリッパでパタパタと歩き回る。それを見ながら、5歳の息子の亮太がのんびり、


亮太:ママ~。ウィンナーにケチャップつけていい?


あずさの声:どうぞ、お好きに。(あずさ、探し物に余念がない)・・・ええ~と、イヤリング、イヤリング・・・いけない! 亮ちゃんのエプロンはと。


あずさは、洗面所の乾燥機の方へ走る。
亮太は、自分で冷蔵庫からケチャップを取り出しウィンナーにかけようとするが、たくさん出てしまい、それを拭き取った指のふく場所を探してテーブルに擦りつけ、朝食を食べ始める。


あ:(やっとあずさの顔が映る)亮ちゃん、今日はママさんと行ってね。ママ、忙しい日だから。お迎えもママさんね。いいわね!
亮:(素直に楽しそうに)うん!


チャイムが鳴って、


あ:あっ、ママさんだ!(笑顔で亮太を見る)



あずさが玄関の方へ走っていく。あずさの後ろ姿がスローモーションで止まり、





主題曲が流れる~。





主演 ぺ・ヨンジュン
    石田ゆり子

【東京恋物語―僕たちの場合】







【主題歌】「いつから恋に」


♪♪~

いつから恋が始まったのかわからない
気がつけば、いつもあなたがそこにいて

いつも弱虫の私は恋に踏み出すことができず
今まで心を閉ざしてきたけど


いつから恋が始まったのかわからない
気がつけば、あなたの温もりがここにある

あなたが勇気をくれたの
僕を信じていいよって


あなたは夢ではなくて、ここにいる
だから私は告白するわ、愛していると

あなたは王子さまではなくて、私の愛する人
だから誓うわ、きっと私たちは幸せになるって


いつから恋が始まったのかわからない

でも私にはわかるの、あなたが運命の人だと
私のかけがえのない人だと・・

♪♪~






(タイトルロールが流れる中)


あずさが大きなバッグを肩にかけ、コートの前を開け、スーツ姿できりっとした面持ちで通りを歩いていく。
地下鉄に乗り込む。しっかりとした佇まい。美しい横顔、自信に満ちている。
つり革にかけた右手の白いブラウスの袖先、べっとりとケチャップのシミ。しかし、そんなことには気づかず、ぴんと胸を張っている。




保育園への道。ミミの手を引きながら歩くヨンジュ。ノータイでラフなスーツ。コートを羽織っている。
ミミが何かうれしそうに話しかけ、一緒に笑いながらゆったりと歩く。前から来た人に気がついて、


ヨ:ミキさ~ん。(うれしそうに声をかけ、手を振っている。横でミミも笑って手を振る)







大手町。ビルの11階。小さな広告代理店。あずさの職場。
午前10時、始業のベル。あずさはジャケットをイスにかけ、机の上に2時からのプレゼンテーションの企画書のコピーを並べ、サイズの違うコピーを挟み込みながら一部ずつファイルしている。
あずさより6つ後輩の美香があずさのブースにやってきて、イスをガラガラと引き寄せる。


美:先輩~い、お手伝いしますぅ。(美香は手伝うふりをしながら) 先輩!知ってます? (あずさも何かいいたくて仕事を手伝いに来た事に気づいて、ちょっと苦笑)最近、うわさになってるんですけど、隣のビルに超かっこいい人、いるんですよ。
あずさ:ふ~ん。(あずさは仕事の手を休めないが、美香はコピーを一部、手に握っているだけで仕事は止まっている)
美:それがあ~、先輩! 聞いてる~? 背がめちゃくちゃ高くて~、メガネをかけてて~、すごくハンサムなんです~。年頃としては30ちょっとくらいかなあ。
あ:この部屋にも似たような人、いるじゃない。
美:だれ?
あ:部長! 年は違うけど、背が高くて、メガネかけてて、顔なんか歌舞伎役者だし。
美:あ、バカにした!・・・先輩!(あずさの腕の下にあるコピーを指差しながら)コピーに赤いシミがついてますよ~。
あ:あ(ちゃ~!)、まいった。(ブラウスの右の袖先にケチャップの跡。今朝の亮太のケチャップに違いない。ブラウスの袖を拭き、仕方なく、袖をたくし上げる)
美:亮太君ですね、犯人は。
あ:最近、ケチャップに凝っているから。テーブルでまた手を拭いたんだわ。まいったな、今日は大切な日なのに・・・。

美:さっきの話、続けてもいいですか? それが~、カコちゃんが見たときは中国語がベラベラで~、よっこちゃんが見たときは英語が超かっこよかったらしいんです。
あ:じゃあ、中国の人なんだ。(仕事の手は休めない)
美:山本先輩が見たときは日本語で話してたらしいですよ。
あ:ふ~ん、じゃあ、中国の人か、日本人か、語学が堪能ってこと?・・・でも山本先輩まで参戦してるのォ?(と言って、ひょいっと腰をあげて、定年近い先輩を見る)
美:田崎さんが見たときは韓国語を話してて、その声がぐ~っと染み入るいい声だったって。(美香が目をとろ~んとさせている)私まだ、声を聞いたこと、ないんですけどねえ。
あ:じゃあ、韓国の人かもしれないんだ。・・・謎の東洋人ってとこか・・・。
美:いつも、なんかちょっとセクシーなんですよねえ・・・。あごのラインなんか、こう・・・。(自分のあごを撫でている)
あ:要するに、年は30ちょっとくらい。背が高くてハンサムで、メガネをかけてて、語学が堪能で、(ここまで美香、あずさの言うことをいちいちうなずきながら聞く)女の守備範囲が広い、(美香、ふう~ん?)謎の東洋人ね。(美香、ちょっと違うんだけどという顔つき)
美:う~ん、先輩と話してると、なんか~・・・、先輩、女、やめてないですよねえ?(部屋に入ってきた新入社員の経理のカコを見つけ)あ、カコちゃ~ん。(カコのほうへ飛んでいく)
あ:(仕事の手を休め)ふぅ~、しかし、新入社員から山本先輩まで、守備範囲が広いな。どんなやっちゃ?(とつぶやき、ちょっと興味を持つがまた仕事を続ける)







あずさがロッカールームでブラウスを脱ぎ、スーツを直に着る。会社におきっぱなしのスカーフを取り出し、


あ:ふう・・・。あんた、女、やめてないよね?(スカーフを結び、スーツに押し込みながら、ロッカーの小さな鏡の中の自分につぶやく)






午後6時半。住宅地。一軒家の玄関口。
中からミミが出てくる。ヨンジュが中の人物に、


ヨ:どうもお世話になりました。ありがとうございます。お土産までいただいて、ご馳走様です。
女:いえ、気になさらなくても。この子も一人で寂しいので、ミミちゃんが来てくれると本当に助かります。それにヨンさんも私、大好きだし。(そういいながら笑う)
ヨ:ハハハハ・・・(楽しそうである)
女:今度はヨンさんも夕飯、ご一緒しましょうね!
ヨ:はい、今日はご馳走様でした。ではまた。
ミ:バイバイ、また明日ね。(かわいく手を振る)


ミミのコートのボタンを直して、ヨンジュはミミの手を引き、帰っていく。







午後8時。あずさの実家のダイニング。
長いテーブルの奥に家長である母がどんとすわって、ドーナツを食べながら、雑誌を読んでいる。あずさが疲れきった様子で入ってくる。


あ:ただいま・・・。ふう。(荷物を隣のイスの上にどさっとおいて、母の近くのイスに座り)疲れた。亮太は? 寝た?
母:お帰り、疲れたでしょう。亮太はもうお風呂に入って寝たわよ。泊まっていくでしょう?(そういいながらキッチンのほうへ向かう)今日は横浜? プレゼンはうまくいったの?
あ:うん、なんとかね。気に入ってもらえた。いつもの私の「下着屋さん」。お得意さんだもん。ママさ~ん、ドーナツ揚げたの? そんなに手間かけなくてもいいよ。いつもお世話になってるんだし。ありがとね。
母:あーちゃん。(いそいそした声で)私もその下着屋さんの補正下着、買ってみようかな。
あ:なによ、急に? 高いわよォ。ママさんなんてもういらないじゃない。(出されたビーフシチューを見て)どうしたの? もしかして、私のプレゼンのお祝い?


そこに、妹のまどかが入ってくる。
風呂上りの様子。頭にタオルのターバン、パジャマ姿のいでたち。缶ビールを2つ持っている。


ま:お帰り。おねえちゃん、ママさんにだまされちゃだめよ。この人、下心たぁっぷりの人なんだから! はい、まあ一杯どうぞ!(缶ビールを差し出す)
あ:サンキュ! 乾杯! (一口飲んでひと心地したという様子で)なあに? 下心って・・・このシチュー、食べてもいいんだよね?
母:(まどかに向かって目配せし)下らないこと、言わないの。おいしいわよ、食べて~。


あずさは笑いながら食べる。


ま:ママさんのやる気、見え見えでしょう。ドーナツにシチュー。ひと手間かかってる。本来はホットケーキとカレーだったのよ。


あずさは、母とまどかの顔色を見比べながら、不思議そうに食べる。



母:まあ、愛の力ってやつね!


あずさがまどかに「なあに?」と目配せをするが、


ま:教えない!(まどか、あっかんべーをして、さっさとリビングのテレビの前に陣取る)



母が幸せそうになぞの微笑み。あずさにはよくわからないが、最近、更年期の話もしないし、まあいいかっと楽しそうな母に合わせる。







同じ頃。
ヨンジュのマンション。ミミと二人、湯船に浸かりながら、


ミ:パパ~。ミキさん、いい人だよね。優しいし、キレイだし、お料理も上手だし。
ヨ:そうだね。本当にあったかい人だね。
ミ:パパ、ミキさんだったら結婚する?
ヨ:(びっくりして)う~ん、きっとミキさんはパパじゃ物足りないよ。ミキさんはパパより大人だし。パパじゃ、だめだよ。
ミ:そうかな・・・新しいお母さんだったら、ぜったいミキさんがいいなあ・・・。


ヨンジュが困ったように笑う。
ヨンジュの家の流し台。片手なべに水を張っておいてあるが、茶色いスープの洗いもののよう。






数日後の夕方。
あずさの実家のダイニング。母とまどかの二人の顔の大写し、興味津々の顔つき。


ミミの声:ミキさんはお料理も上手だし顔もキレイだし、すっごくあったかい人だって。
母:それで? それからパパ、なんて言ったの?
ミミの声:でも結婚するにはパパじゃ物足りないだろうって。ミキさんにはパパより大人の人のほうがいいって。



母はちょっとがっかり。まどかが意地悪そうに母を見てから笑顔で、



ま:おねえちゃんのこと、なにか言ってた?
ミミの声:かっこよすぎて、パパじゃだめだって。
母:なんで、どこがかっこいいの?(解せないという顔でまどかと見合うが、まどかはうれしそう)
ミミ:(ここでミミの顔が映って、ホットケーキを食べながら)まどかねえちゃんは、背も高いし(そう、170センチある)、顔もいいし、頭もいいからカッコイイよって言ったんだ。それにもっとカッコイイのは、缶ビールの一気飲みもできるし。タバコの吸い方だって、パパと違って、すごくカッコイイよって。口にくわえたまま、吸えるんだよって教えてあげたのに、パパがそれじゃ、パパにはカッコすぎてだめだって。


まどかは、ムッとした顔になる。母が横目で見て、ちょっと優越感。


亮:ねえ、いい加減に食べ終わってあっちで遊ぼうよ!!(ちょっとすねている)
ミ:うん!(イスから飛び降りて、亮太のほうへいく)






午前中、記者らしい顔つきでカメラマンと街の中を歩くヨンジュ。なにか取材をしている様子。






正午。あずさの会社の隣のビル。
大手新聞社がメインだが、海外からの通信社がいくつか入っている。地下にはレストラン街。あずさは地下街に向かうため、近道の人通りの少ない薄暗く狭い階段を駆け下りる。ここは地下鉄を使う人間も通るが、多くの人はメインの広い階段を使い、この階段など、目にもとめていない。


あずさが駆け下りると、下から勢いよく上がってくる影があり、すれ違い様に、二人はぶつかり、彼女は階段を踏み外し・・・。転ぶと思われたその瞬間、大きな影の男が彼女の体をぐいっと引き上げて、彼女は下まで転げ落ちずにすむ。


男:大丈夫ですか? すみません。急いでいたものですから・・・。


男の声は深みがあり、ゆっくりと丁寧に話すので、まるで急いでなどいないように思えるほど。


あ:大丈夫です。私こそ・・・階段の真ん中を歩いていて、すみません。(彼のほうを見上げるが、自分のほうが下の段にいることもあり、大きな男がより大きく見え、顔も光線の具合でわかりにくく、もともと暗い階段だが、彼に光を奪われたようにその人は影にしか見えない)






昼下がり。
ヨンジュが勤める通信社。窓際の席でむずかしい顔をして、資料とPCを前に考え事をしているヨンジュ。アメリカ人のボスのマークがやってきて、


マ:ヨンジュ。(ヨンジュのデスクの端に腰をかけ)
ヨ:(気がついて)ハイ、マーク。なにか?
マ:どうだ、うまく進んでいるか。
ヨ:まだシッポを出しませんね。でももうすぐです。
マ:うん。(うなずく)ヨンジュ。そろそろワシントンにカムバックしてみないか。ミミちゃんももうすぐ小学校だろ。ここまで手をかけてきたんだ。もうそろそろ・・・。
ヨ:ええ。(うなずきながら)学校は英語圏でとは考えているんですが、まだミミを手放す気にはなれなくて。
マ:ボーディングスクール(寄宿学校)に入れると言っても、おまえの稼ぎがなくてはだめだろ。もう年齢的にも現場に戻るギリギリのところまで来てるぞ。
ヨ:ええ・・・。(心が決めがたい様子)
マ:ワシントンのほうではおまえの席を用意しようという気になってる。あのスクープがあればより確実だぞ。悩むことはない。答えは一つだ。ここで流されてこのままの職にあるか。現場に戻るかだ。わかったな。
ヨ:ええ、わかってますよ。







夕方。
地下鉄のホームを走って走って、やっと電車に飛び乗るあずさ。ドアにはさまれそうになる彼女を、長くてがっちりした腕が伸びて、抱え込むように中へ引き入れる。


あ:ありがとうございます。(お礼を言おうと、横に立っているその男を見るが、背が高すぎて、混んでいる地下鉄の中では、顔を見ることができない。)


やっと見上げて顔を見ると、何やら、楽しげに微笑んでいる。顔は、かなり端整で優しげだが、ニヤニヤしていて『変な人・・・危ないひ・と?』


男:(ゆっくりとした口調で)今日は二回目ですね。
あ:??
男:昼は階段で・・・。
あ:あっ、(と気がついて)あの時の・・・すみません。気がつかなくて・・・。お顔がよくわからなくて。
男:いいんですよ。


そうだ。あの時と同じ感覚。そして、その深い声。
二人にはそれ以上話すこともなく、前を向いてシーンと押し黙る。次の停車駅まで息を殺したように立っている。電車が止まり、たくさんの人が降り、がらんとした車内は少し息ができるようになり、隣に立っている男とも少し距離ができ、ほっとするあずさ。


男:あのビルにお勤めなんですか?
あ:いいえ。
男:そうですか・・・。


また押し黙る二人。


男:あのお・・・。
あ:えっ?
男:いえ・・・。



あずさはそっぽを向いて、男は広告のほうに目をやって、押し黙る二人。



あずさの駅に着き、降りようとすると、その男もついてくる。


あ:??
男:(微笑みながら)僕もここの駅なんです。
あ:そうなんですか?


電車を降り、ホームの階段も同じ、同じ改札に向かっている。


男:奇遇ですね。(ちょっと笑う)


あずさは、『本当?』ちょっと不安がよぎり、ストーカーなのかよく分からないがといった感じで、ドンドン心配顔になりながら、改札口を出ていく。

我慢できず振り返り、


あ:(思いきったように)どこまでいらっしゃるんですか?
男:えっ! 子供の保育園まで。
あ:(とても強い口調で)保育園まで? どこの?
男:(そこまではっきり答える必要があるのかと訝しがりながら)小鳩保育園です。
あ:えっ? 小鳩ですか・・・私と同じですか?
男:あなたも?(ちょっとうれしそう)


あずさは気になりながらも、駅から徒歩2分の小鳩保育園まで振り向かず先頭をきって足早に歩き出す。
男はゆっくりだが、確実にあずさの後を歩いている。








夕方の無認可保育園。
中から担任の栄子先生がにこやかに出てきて、


先:亮太く~ん、ミミちゃ~ん、お迎えよ~。


この一言に、あずさが男を見て確認する。子供たちが元気に飛び出し、カバンを親に渡しながら、


ミ:パパ! 遅い! 今日はもっと早い約束だったのに。
亮:ママ! 今日ね、お絵かき、すごく頑張ったよ。


子供たちはどうも仲良しのようで、二人仲良く靴を履き、保育園の門のほうへじゃれながら、走っていく。


男:亮くんのママだったんですね。ミキさんとは、いつも仲良くさせていただいてます。
あ:(驚く)あ、そうなんですか。『ミキさんって呼んでるんだ。』(心の中でつぶやく)よく知らなくてすみません。(遅くなる時はいつも母親頼みなので、一本取られた感じ)


子供たちを見守りながら、とくに話すでもなく、並んで歩く。男がサッとあずさのほうに体を向けて、


男:僕はぺといいます。ぺ・ヨンジュです。娘はミミ。韓国名はミンヒです。韓国出身です。どうぞよろしく。(手を差し伸べる)
あ:あ、あの今井亮太の母です。どうぞよろしく。(手を出して、彼の大きな手に包まれるように握手する。その手が温かい)
ヨ:お母さんのお名前は?
あ:あずさです。今井あずさです。
ヨ:あず~さ、さん?(とても発音しにくそうである)
あ:アズさんでいいですよ。友達はアズと呼びますし。
ヨ:アズさん。いい名前ですね。・・・
あ:外国の方だったんですね。(どおりで、ちょっと感じが違う)
ヨ:日本に来て5ヶ月になりますが、学生時代に1年間日本に留学してたんですよ。
あ:それで、日本語が上手なんですね。(ちょっと興味がわいて)あと、他にできる言葉はあるんですか?
ヨ:英語は、大学、大学院とアメリカだったので、韓国語と同じくらいですね。あと、北京語は仕事を始めてから習ったので、日本語より下手なんですよ。
あ:すごいですね。私なんて、日本語もちょっとあやしいかな(あずさが笑顔でヨンジュを見ると、彼も楽しそうに見つめている)。あと、英語が少し。仕事でも使うんですけど、原稿はいつもチェックしてもらわないと、心配で。

ヨ:僕は○○通信の特派員です。あのMビルにいます。アズさんは?
あ:私は、隣のNビルにある広告代理店のコピーライターです。こういうとカッコいいんですけど、今はあまりたくさん仕事はしてなくて・・・。亮太のことを優先するので、あまり遅くまで残業もできなくて。週に2日は、在宅でPCで仕事をしているんです。小学校に上がるまでは細々です・・・。
ヨ:ふ~ん、なかなかたいへんですね。とにかく、お近づきになれてうれしいです。会社も近いし・・・お母様のミキさんにはミミも僕も本当にお世話になっていて・・・。     
あ:そうですか。ぺさん、母は人の世話をするのが大好きな人なんです。だから気にしないで、楽しくやってください。
ヨ:ぺさんじゃなくて、ヨンジュと呼んでください。僕もアズさんと呼びますから。
あ:あ、はい。(あずさのマンションが見えてきて)では私たちはここで。ここのマンションなんです。
子供たち:バイバーイ。また明日ねえ!



お互い、軽く礼をして別れる。ヨンジュはミミと一緒に、あずさたちがマンションに入る姿を見送る。







ある金曜日の夜。
亮太、風呂から上がると、


亮:ママに話すの、忘れちゃった。今度の日曜日、ミミちゃんに、一緒に遊園地に行こうって言われてたんだ。ミミちゃんのパパが一緒に連れていってくれるんだって。
あ:亮ちゃん、なぜ早く言わないの? もう9時過ぎじゃない。電話するにも遅いでしょ。
亮:大丈夫だよ。ミミちゃんチもいつも夜が遅くなっちゃうんだって。(保育園バッグからメモを出して)ママ、電話番号。電話して。


あずさは電話番号を見ながらも、なんていおうか、迷う。


亮:ママ、早く電話しないと、失礼だよ。
あ:じゃあ、ミミちゃんと、ミミちゃんのパパとママと行くのね?
亮:違うよ。ミミちゃんチはパパとミミちゃんの二人なんだ。ママはいないの。
あ:えっ?


そんなことを聞くと、なおさら電話しづらい感じ。しかし、思い切って受話器を握り、ダイヤルする。


電話のベルと同時に画面半分、ヨンジュの書斎が映る。厳しい顔つきで仕事をするヨンジュ。
顔を変えないまま、受話器をとる。


ヨ:(仕事に没頭しているせいか、ちょっと冷たい)はい。ぺです。
あ:(声を聞いて緊張し)こんばんは。遅くにすみません。今井亮太の母です。
ぺ:あ、アズさん。(急にソフトになって)こんばんは。お元気でしたか?


やさしく丁寧だ。そして声が深い・・・。耳もとのその声に、あずさは、なぜか心がざわめく・・・。


あ:(呼吸を整えて元気に)ええ、元気です。ミミちゃんから遊園地のお誘いを受けて・・・。
ぺ:ああ、そうでしたね。僕もミミも楽しみにしているんです。亮くんとアズさんが来てくださるといいなって。(やんわり誘う)
あ:(胸のざわめきを押さえながら)私もご一緒していいんですか?
ぺ:ええ、もちろんです。アズさんさえよければ。(うれしそうに誘う)
あ:え、ええ。はい・・・。


画面はあずさだけになり、亮太が「ママも行くの? 本当? ママの顔、赤いよ? どうしたの?」電話の近くでちゃちゃをいれるので、あずさの顔はますます赤くなり、しどろもどろになりながら、一緒に行く約束をする。






日曜日の朝。
とある遊園地の入場口。ヨンジュがミミと立っている。そこへあずさと亮太がやってくる。今日のあずさは会社帰りと違い、カジュアルな服装。ヨンジュの目に爽やかに映る。


亮:ママ。ミミちゃんたち、もう来てるね。(と指さす)
あ:本当、早いわね。(そういいながら、二人を見るが、ヨンジュの姿に少し胸がときめく)
ヨ:おはようございます。
あ:おはようございます。
ヨ:早く来てしまいました。さあ、中へ入りましょうか。
あ:よろしくお願いします。(相手にときめきが悟られないよう、元気よく言う)


遊園地の中を4人で歩く姿。まるで一つの家族のよう。子供たちと手をつなぎながら、笑って歩く。


亮:ママ、コーヒーカップに乗りたい。
ミ:ミミも!


4人で大きめのカップに乗り、グルグルカップを回しながら笑う。
マッドマウスに乗る4人、小さなジェットコースターでも声を出して楽しむ。
子供用の木馬に乗った子供たちに外から手を振り見守る二人。
ヨンジュがカメラのファインダーを覗き時々シャッターを切る。

大観覧車の中、二家族、向かい合って座る。
子供たちは窓の外を見ながら「高~い」と言いながら眺めている。


ヨンジュとあずさは無言で外を眺め・・・。


ヨンジュの視線は、外へミミへ動きながらも、次第にあずさに吸い込まれるように見入る。








帰りのファミリーレストラン。


亮:楽しかったね。今日は。
あ:うん、ヨンジュさん、誘ってくれてありがとう。本当に気晴らしもできてよかったです。
ヨ:それはよかった。僕も楽しかったですよ。(ミミの皿を見て)ニンジンもちゃんと食べて・・・。
ミ:ううん、やだ。
亮:ミミちゃん、うちのママね、生のピーマン、食べられないんだよ。
ヨ:(興味を持って)なぜ?
あ:やだ、恥ずかしい。子供の頃、だまされて生を丸ごとかじっちゃって、それからだめなんです。火が通れば大丈夫なんですけど。ヨンジュさん、なにかあります? いやな食べ物。
ヨ:僕はいやでも食べちゃうほうだから(笑う)・・・ああ、チャーハンの上の萎れたグリンピースはちょっといやかな。
あ:(笑って)おもしろいものがいやなのね。
ミ:今日はすっごく楽しかったね。ああ、ミキさんも一緒だったらよかったのに・・・こんなに楽しいならミキさんも呼べばよかったのに。きっと喜んだよ。


ヨンジュがちょっと困って苦笑。「今度、一緒に来ようね」とミミをなだめる。









翌日の夕方。
あずさの実家のダイニング。あずさが入ってくる。


あ:こんばんは~。
ミ:あーちゃん、昨日、どなたかとデートしたんですって?
あ:デート? してないよ。
ま:子供たちがパパとママ、見つめ合ってたって。





【回想シーン】


野外の丸テーブルで子供たちにジュースを飲ませる二人。ヨンジュとあずさが向かいあって座り、子供たちが並んで間に座り、二人に挟まれている。
ジュースを飲みながら、ミミと亮太の目が一緒に右へ行ったり左へ行ったり。

ヨンジュとあずさの二人が目を伏せ、照れながら話をするわりにはしっかりお互いを見つめている。




あ:やだ、知らないわよ。(赤くなる)
ミ:ミミちゃんが帰りに、ミキさんも連れてきたかったって言ったんだって。けなげじゃないの? ・・・ところで、あーちゃん。今度の日曜日、水餃子パーティやりますから、ヨンさんたち、ご招待してね。あなたからのほうがあちら様もうれしいでしょうから。(そういって席を立つ)
あ:ママさん、誤解だって・・・やだ、怒ってるの~?(まどかの顔を見る)

ま:おねえちゃん、ヨンジュさんはママさんじゃなくておねえちゃんを選んだってことよ。まあ、ふつう23歳年上の女と2つ年下の女じゃ、条件があまり違わなかったら2つ年下を選ぶわね。要するにヨンジュさんはふつうの男だったってことよ。
あ:困ったな。(母を怒らせてしまった)
ま:おねえちゃんてバカね・・・。ママさんがせっかくお膳立てしてくれるっていうんだから、ちゃんとパーティに誘うのよ! ・・・ママさんはいっつも、おねえのことばかり心配してるんだから。大学受験の時だって心配で自分まで受験しちゃう人だから・・・本当に過保護! 私にも少し、愛情分けてほしいよ。(あずさの顔を覗き込んで)ちゃんとやってくださいね。(そういって去っていく)



あずさが一人残され、テーブルの上のマドレーヌを食べながら少し考え込む。








その夜。
あずさが携帯のヨンジュの番号を見る。




【回想】


遊園地の夜、あずさの携帯が鳴る。


あ:はい。
ヨ:こんばんは。今日はありがとう。これはテストコールです。ちゃんとアズさんにつながるかと思って・・・。
あ:(やさしく笑って)ちゃんとつながった・・・。
ヨ:うん。・・・じゃあ、おやすみなさい。
あ:おやすみなさい。

なんとなく幸せな気持ちになるあずさ。






ヨンジュの書斎。ヨンジュの携帯が鳴る。


あ:こんばんは。今井あずさです。今度の日曜日、実家で水餃子パーティをやるんです。ヨンジュさんたちもいらっしゃいませんか?
ヨ:水餃子ですか。(うれしそうに聞き返す)
あ:ええ、よく冬にやるんです。水餃子をたくさん作ってみんなでなべを囲んで・・・昔は父もいたし、母のお友達もたくさん来て、本当に一大イベントだったんですけど。最近は母の友達も東京を離れたりでバラバラになってしまって。ヨンジュさんとミミちゃんが来てくれると、本当にうれしいです。
ヨ:いいですか、お邪魔して。楽しみにしています。



ヨンジュの机の上に置かれたあずさの写真。
屈託なく微笑んでいる。

しんみりとヨンジュが写真を見入った。











少しずつ二人の距離が縮まってきましたね・・・。

では後編をお楽しみに!


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