2009/10/08 00:17
テーマ:【創】Oh,My テディべア カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「Oh,My テディべア」後編



本日はブログがアップできなかったので、
BGMに使っていたmp3を取り除きました・・・。
これで大丈夫かな・・・と信じています・・・が。



BYJシアターです。

本日は「Oh,My テディべア」後編です。


長い月日をともにしてきた、親友ともいえる二人。
でもその心の奥にはお互いへの恋心がありました・・・。

この揺れる思いは、果たして成就するのでしょうか・・・。


ところで、配役の確認^^

スンジュンとミンジュはわかりますね^^

最初の構想では・・・

ミンジュの後輩は、チョ・インソン
ヒョンスは、ユン・ソナ
ミンジュの彼は・・・キム・テウ

でした・・・。いかがですか?



ここより本編
ではお楽しみください!



~~~~~~




【Oh,My テディべア】後編

主演:ぺ・ヨンジュン
   チョン・ジヒョン




【真実のありか】

日曜日の昼下がり。スンジュンが自室のリビングのソファに座っている。
スンジュンは憂鬱だ。
ここのところの、恋愛の成り行きに戸惑っている。確かに身を固めたいと思い出したことは事実だが、あの酔っ払いのミンジュの告白から、自分の気持ちがより鮮明になってきて、ヒョンスはかわいくていい子だが、ミンジュを諦めきれなくなってきている。

まいったな。
なんで今まで気がつかなかったのかな。何年も一緒にいたのに。慣れっこになりすぎていたのかもしれない。
まさか、自分がこんな混戦状態に陥るなんて思わなかった。

ふと、リビングボードの上に置かれたテディベアを見る。それは昔、バレンタインデイにミンジュがくれたものだ。あの頃のミンジュは素直でわかりやすいやつだった。
スンジュンがテディに話しかける。

ス:おい、ミンス。おまえの母さんには困ったもんだよ。あいつのせいで、どんどんアリ地獄に落ちていく感じだよ。

そういってミンスを眺めていると、あることに気づく。
ミンスがいつも大切そうに持っているプレゼントの箱はなんだ。
今まで、それはただの飾りだと思ってきたが、なぜ、クマが箱を持っているんだ?
ミンジュの手作りのクマのぬいぐるみ。どういう意図で箱があるんだ。
近づいて箱を取ってみる。リボンを解き、ふたを開ける。
中に一枚の手紙が入っている。

6年前の手紙。
ミンジュが大学4年の2月。卒業する月のバレンタインデイ。スンジュンも大学院を卒業する年だった。


開いてみる。スンジュンが驚いた顔をして、中を読む。



「スンジュン先輩へ。


今日はバレンタインデイです。
毎年、ソヨンと一緒に先輩に何をあげようか、楽しく相談しています。
でも今年は私も先輩も、もう卒業ですね。

それを機会に、勇気を出して、私は先輩に告白します。

先輩、私は先輩が好きです。
というより、すごく愛しています。
この気持ちは止められません。

ソヨンと一緒に先輩を、オッパと呼ぶ時がありますが、
私は兄さんなんて思っていません。
ただ愛しい人と思っているのです。


こんな告白をして、先輩は怒りますか。
悲しみますか?

喜びますか?

私には先輩がどんな返事をしてくれるのか、
よくわかりません。
でも自分の気持ちに正直に生きたいのです。

もし、先輩がこの気持ちを受けとめてくれるなら、
私に答えをください。


もし、迷惑だったり、私では役不足だと思ったら
これを見なかったことにしてください。
二度と、この話はしないでください。


その時は諦めます。
そして、今後、先輩よりステキな人に
巡り会えなかったら、
何か他に幸せになる手段を
探してみます。


そして、先輩は私の心の宝だから、
もし先輩がステキな人に巡り会えなかったら、
私が一生懸命、その人を捜してあげます。



先輩の返事を待ちます。


199○年2月14日


先輩を思う、

チョン・ミンジュ」





スンジュンは血の気が引くような思いだ。

この手紙がどんなにミンジュにとって大切なものだったか、そして、自分にとってもどれだけ
重要なものだったか。
ミンジュが変わってしまったことの、すべてのなぞが解けた。
それにしても、なんで今まで気がつかなかったのか。
毎日毎日、見てたのに・・・。

ミンジュを変えてしまったのは、オレじゃないか。
なんてことだ!

今からでも間に合うだろうか・・・。いや、間に合わせなくては!

スンジュンは携帯でミンジュに電話する。お話中だ。しかし、めげずに何度も電話し続けた。




【心の行方】

ミンジュは携帯を閉じて、嬉し涙にくれる。
あの人が私を受け入れてくれたのだ。最高だ!

ああ、話がしたい。先輩に会って直に話がしたい!

財布と携帯をジャケットのポケットに入れ、スニーカーをはき、ジーンズ姿で部屋を飛び出していく。


こんな幸せなことってある?
最高! 最高!

空は晴れて、お日様も雲も木々もショーウィンドーも、みんなみんな輝いている!




スンジュンがミンジュとの約束のオープンカフェの方へ走っていく。
内から込み上げるミンジュへの思い。
今、スンジュンの胸の中はミンジュへの思いであふれている。


ミンジュはさっきの電話でうれしくて仕方がない。早く先輩に会って話したい。こんな気持ちってあるかしら。足の遅い自分がもどかしい。


しばらく行くと、前から走ってくるミンジュが見えた。スンジュンが「ミンジュ!」と叫ぶ。ミンジュが、気がついて、大きく手を振り、やってくる。
二人は約束のオープンカフェの向かいにある公園の入り口で出会う。


ス:ミンジュ!(少し息を切らし、まぶしそうな目をして名前を呼ぶ)
ミ:ああ、先輩!(うれしそうに見つめる)
ス:ミンジュ。実はね・・。
ミ:先輩、聞いて。彼がね、彼がね、婚約解消したの。私と結婚したいって!

ミンジュはスンジュンの両手を取って、ピョンピョン飛び跳ねる。


ミ:私のためによ、私のために婚約解消してくれたのよ。先輩。すごいでしょ!
ス:そんな、ポマードなんか・・・。(胸が苦しい)
ミ:先輩、何言ってるの! 私のこと、愛してるって言ったのよ! 私、初めて! 男の人から愛してるって言われたの。すごいでしょ。あ~んもう、絶対、彼を幸せにする! 彼のためならなんでもしてあげる。すごい、すごいでしょ!!
ス:おまえは、(胸が苦しくて呼吸がしづらい。やっとのことで)あいつを愛してるのか。本当に愛してるのか?(それだけ言うのがせいいっぱいである)

ミ:先輩、何言ってるんですか。彼が!彼が愛してくれてるんです。(口調が柔らかくなって)・・・先輩だってわかってるでしょう?(スンジュンを見つめる)
私がいくら好きだと思っても、幸せになんかなれないって・・・。(少しなみだ目になる)だって掴めないんだもん。だから、それより私を、私だけを愛してくれる人を捜していたの。やっといたの!・・・これから愛を育てればいいんだもん。だって、そこに愛があるんだもん!


ミンジュはうれしくて涙があふれる。スンジュンは胸がキューンと締め付けられるほど痛い。今の今まで、あの手紙を読んでいなかったなんて、ミンジュにどうして告白できるだろうか。
オレだっておまえのことが好きで、今までぐずぐずしてきたのに・・・。おまえが変わった理由がオレにあったなんて。

ミンジュを落胆させ、苦しみを与えた自分。
この6年間という時間を使って、自分を愛してくれる人を捜し続けたミンジュ。
やっと彼女の思いが通じたのだ。


あの時、あの手紙に気がついていれば、自分とミンジュの未来は変わっていたかもしれない。
スンジュンは泣きそうだ。胸がズキンズキンと痛い。きっとミンジュも過去にこの痛みに耐えてきたはずなんだ。
スンジュンはつらくなって、ミンジュを引き寄せ、抱き締める。
ミンジュもスンジュンの胸に顔を押し当てて泣いている。うれしくてうれしくて涙がこぼれる。スンジュンは自分の腕の中で喜びに打ち震えるミンジュを見てると、悲しくてせつなくてやるせない。


こんなにおまえは温かいのに・・・。こんなにおまえは存在感があるのに。オレのものではないんだね・・・。
こんなに胸が痛いのに。おまえに打ち明けることができない・・・。

ミンジュがスンジュンの顔を見上げた。

ミ:先輩・・・。先輩も泣いてくれるの? ありがとう。私、きっときっと幸せになる。応援してね。(スンジュンをじっと見つめる)
ジ:(目のやり場に困りながらも)・・・ああ。




今日のおまえは、つらかった・・・。元はと言えば、確かにオレが悪い。しかし、おまえだって、あんなわかりにくいところに手紙なんか入れておくなよ。誰だって気がつかないさ・・・。





【行方を知らない心と心】

数日後の夕方。
ソウルのイタリアンレストラン。
会社帰りのスーツ姿のスンジュンと身奇麗なヒョンスが食事をしている。

ヒ:ねえ、聞いたでしょ。ミンジュが結婚するって話。ものすご~くお金持ちなんだって。新婚旅行は世界一周してもいいよって言ったんだって。
ス:ふ~ん、疲れちゃうだろうな、そんなにまわってたら。(サラダのレタスを突き刺し、パクっと食べる)
ヒ:ハハハハ。まあね。でもロマンチックじゃない?・・・いいなあ。(スンジュンの顔を下から覗き込むように見る)
ス:(無視して)お金をかければいいってもんじゃないよ。(肉を真剣に切る)
ヒ:まあね。ねえ、スンジュンさんだったら、どこ行きたい?(にこやかに甘える)
ス:どこでも・・。(肉を口に入れる)
ヒ:どこでも連れてってくれるの? う~ん、ロマンチック!
ス:・・・(うんざり)。





その夜。
ミンジュの携帯が鳴る。
ミ:もしもし。ああ、先輩。元気だった?
ス:最近、ちっとも連絡ないじゃないか。
ミ:先輩。恋する女は、他の男なんて目に入らないのよ。ここのところ、忙しくて。婚約式のチマチョゴリを作ったり・・新婚旅行のパンフも集めないといけなかったりで。新居もね・・・。
ス:わかったよ。もうオレは必要ないってことだな。
ミ:・・・先輩。もちろん、ダーリンは一番だけど、先輩も大切だよ。わかってるでしょ?
ただ、今はよそ見してちゃいけない時期だと思うの。彼に集中する時期だと思うの。
それが幸せになるカギだと思うんだ・・・。
ス:わかった。じゃあまた、結婚式でな。
ミ:・・・先輩。それじゃ・・・お祝いに飲みに連れてってよ。近くの屋台にでも・・。
ス:うん。じゃあ、明日な。・・家に帰って着替えてから行くだろ? じゃあ8時な。



電話を切って、「ああ~!」とベッドに倒れこむスンジュン。もう、どうしようもないよな・・・。


ミンジュは電話を切って、ソファに座り込み、しばらく携帯を見つめている。写真メールを開き、スンジュンの顔を見る。こちらを睨んでピースをするスンジュンがいる・・・。「消去」を押そうとするが、どうしても思い切れない。やめて閉じる。

先輩の声で、胸がズキンとした。先輩と話すと心が後ろ向きになる。そんなことじゃだめだ。・・・そうだ、ウエディングドレスのパンフをみよう。来週中には頼まないと。

ミンジュはふっきるように「ヨッシャ!」と大きな声を出して、立ち上がった。





翌日の午後8時。
地元の屋台。客が10人くらい入る屋台のカウンター。
二人が並んで座っている。屋台の親父が、

親:いつもでいいかい?
ス:ああ、お願いします。

まず、瓶ビールが出てくる。スンジュンがミンジュのコップに注ぐ。そして、自分のコップに注いで、

ス:まずは乾杯するか。・・・おめでとう、ミンジュ。(力なく言う)
ミ:あ、ありがとう。(暗い)

二人は黙り込む。
大皿が二つ、二人の前に出される。いつも二人分を一緒に盛り付けてもらい、好きなだけ食べるのが、二人のやり方だ。

二人は箸を出すが、箸と箸がぶつかりそうになり、引っ込める。

ス・ミ:あっ。

今まではバンバン食べられたのに、なぜか今日は同じ皿からつまむのが、気が引ける。
二人は遠慮しながら、お互いが手をつけていない方の皿から食べる。
スンジュンもミンジュもうまく喉を通らない。
親父が、

親:今日は姉さん、元気ないねえ。
ミ:えっ、そんなことはないですよ・・・。

親父の言葉を受けて、ミンジュがビールを一気飲みする。スンジュンがそれを見ていて、

ス:おい。飲みすぎには注意しろよ。おまえはちょっとやばいからな。
ミ:うん。(素直に聞く)

二人はまたしーんとする。ミンジュが、

ミ:先輩。野菜は好き嫌いしないで、食べないと。自分ひとりで全部食べられるようにならなくちゃだめよ。
ス:・・・うん・・・。

祝いの席だというのに、まるでお通夜のようだ。二人はそれ以上喉を通らず、屋台をあとにする。



二人でよく行く公園で、ブランコの前の柵に並んで腰掛ける。
話すことがなければ帰ればいいのだが、それすらできない。離れることができない。
スンジュンがミンジュのほうを向いた。

ス:ミンジュ。
ミ:えっ?

彼のほうへ顔を向けると、スンジュンの顔がすぐそこにあり、はっと思った時には、ミンジュの顔を覆った。
顔を離すと、二人から吐息が漏れる。ミンジュが目を開けてスンジュンを見ると、やさしい目でミンジュを見つめている。ミンジュは目を泳がせながらスンジュンを見つめるが、はっと我にかえって、眉間にしわを寄せてスンジュンを見つめ、立ち上がる。スンジュンがミンジュの手を引っ張って、彼女を引き寄せる。

ミ:放して。
ス:ミンジュ。
ミ:先輩、放して。

スンジュンは放さず立ち上がり、ミンジュに体を押し付けて彼女を包み込むように抱く。
拒む彼女のあごを右手で押さえて、唇にキスをする。少し長いキスをする。
ミンジュは張り裂けそうな思いでもがきながら、スンジュンを強く押しのける。
スンジュンが抱き締めた腕を放す。
ミンジュがスンジュンと対峙したように立っている。
スンジュンがせつなそうにミンジュを見つめている。スンジュンの目には涙が光っている。
ミンジュはつらそうに顔を歪め、苦しそうな顔をしてスンジュンに言う。

ミ:先輩、ひどい!・・・遅いよ。遅いよ、今頃。(胸にこみ上げるものがある)もっと前にいくらでもチャンスはあったのに!

ミンジュがつらそうに涙を浮かべる。顔ではそんなに泣いていないように見えるが、彼女の肩や胸が小刻みに揺れている。スンジュンが腕を引っ張る。

ス:ミンジュ。おまえを苦しめたくて、こうしているんじゃないんだ。ただ、今のお互いの気持ちを確かめておきたいんだ。今うやむやにするのはよくない。(覗き込むように)なあ。ミンジュ。
ミ:はっきりさせてどうなるの?・・・私は結婚するのよ。
ス:でもまだしてないじゃないか。婚約だってこれからじゃないか。
ミ:(振り絞るように)・・彼に婚約解消させてるのよ!
ス:でもそれはあいつの気持ちだろ。おまえがイエスって言う前にしてるんだろ?
ミ:でも原因は私でしょ? そこまでさせておいて彼を振ったら・・・私、人でなしになっちゃう。・・・もう、遅いよ、先輩。(涙が落ちて、声も震えている)遅いよお。(大泣きになる)
ス:(泣くミンジュを抱き締めて)ごめんよ。おまえを苦しめて。わかっているんだ。でも、でもチャンスをくれよ。もう一度オレにチャンスをくれよ。

ミンジュはスンジュンに抱かれながら涙にくれている。



二人の初めてのキス。こんなに長い間、一緒にいたのに、初めてのキスはほろ苦いものとなった。






それから4日後。
ミンジュが給湯室で休んでいると、ヒョンスが入ってきた。

ヒ:あっ、ミンジュ。・・・聞いた?
ミ:何を?
ヒ:まだ知らなかった? う~ん・・・スンジュンさんと別れたんだ・・・。
ミ:えっ? なんで?(ちょっと顔が引きつる)
ヒ:「君はステキな人だけど、僕には・・・」とか言っちゃって、結局、振られた。
ミ:・・・そう・・・。
ヒ:私がいけなかったのかな。いろいろ遊びに行きたいとか言って、彼を困らせたから。彼って仕事忙しそうだったもんね。
ミ:・・・そう・・・。
ヒ:暗いねえ・・・どうしたの? 結婚する人が。マリッジブルー? そうか、そういうのもあるのね・・・。

ミンジュは「まあね」という顔をして、横を向く。そのまま、給湯室を出る。ちょうどその時、男子トイレから、インスンが出てくるのを目撃する。

ミ:インスン! ちょっと来て!

インスンは「いやなのに会った」という顔をする。いやいやながら、ミンジュの方へ来る。すると、ちょうど給湯室の中からヒョンスが出てくる。インスンはドキッとする。ミンジュが淡々と言う。

ミ:紹介する。こっちが人事のヒョンス。知ってるよね。
イ:(生唾を飲む)どうも。
ミ:ヒョンス、こっちがプレスで後輩のインスン。私たちより2つ年下。身長1m86cm。体重それなり。見た通りハンサム。それから、こう見えても、ソウル大学卒。(ヒョンスの目が輝く)人柄とくに問題なし。それから、ヒョンス、あんたのファンよ。あんたのこと、相当好きみたい。

ヒョンスが目をハートにして、インスンを見つめる。インスンもうれしそうに微笑む。
ミンジュだけ仏頂面で気分が悪そうに出て行く。二人は見つめ合っている。





会社の帰り。
いつものジムでエアロビのクラスに顔を出すが、運動しても気分が冴えない。それにいつもは2クラス続けてとっているが、今日は体力が低下しているのか、ヘトヘトだ。徒労だったかな、今日は。プールで一汗流すか。プールの見える大きな見学用の窓を覗くと、バタフライで泳いでくるやつがいる。
いやな予感だ。プールから上がり、ゴーグルを取る。
ミンジュはとっさに腰を低くして隠れる。そしてまた覗く。スンジュンだ。

ヤバイ! 会いたくない。

腰を低くしたまま、窓から離れ、ロッカールームに駆け込み、エアロビの服装のまま、その上にパンツをぐいっとはく。ジャケットを羽織り、荷物をまとめて逃げるようにして、ジムを後にする。


会うのは当たり前だ。
一緒にジムに申し込んだのだから。先輩の早帰りの日にわざわざエアロビのクラスを2つも取った。先輩と一緒に帰れるように。


いて当然だ・・・。


スンジュンはシャワーを浴びて、帰り支度をすると、エアロビのクラスを覗く。今日はミンジュは来ていないらしい。ちょっと寂しそうに帰っていく。




次の日の朝。
出勤風景。
オフィスビルのエレベーターの中。後ろからインスンがミンジュに気づき、肩をたたく。ミンジュはチラッと見るが混んでいるので、無視する。
11階に着いて降りると、インスンがミンジュを呼ぶ。

イ:(うれしそうに)先輩!
ミ:(振り向き、インスンを上から下まで見る)インスン、ちょっとおいで。
イ:(何か?)はい・・・。

二人は廊下の大きな観葉植物の陰に入る。

ミ:(インスンのネクタイをぐっと掴み)あんた、昨日と同じね。
イ:ええ、まあ。(うれしそうにニヤける)
ミ:替えてきな。サンプル室に古いのがあるでしょ。・・・みっともないよ。そんな格好。
イ:(うきうきしながら)そうですね。先輩、ヒョンスさんて・・・。

ミンジュはインスンを無視してどんどん部屋のほうへ向かう。




夜。ミンジュの部屋。
一人、ダイニングテーブルで缶ビールを両手で挟み、くるくる回しながら、考え事をしている。

先輩は、ヒョンスとのことを終わらせた。
後は、私に身辺整理をしろと言っているのかしら。
あのキスは信じていいのよね? あれは好きだということでいいのよね? 愛しているということでいいのよね?
先輩はチャンスをくれって言ったわ。それは私と一緒になりたいってことよね?

もっとちゃんと先輩に聞くべきだった。先輩が言うように、気持ちの確認をすべきだった。


でも、私のほうは終わらせられる?
彼は婚約解消までした・・・。
それを彼の勝手と言い切っていいのか。


できない・・・。
いくらわがままな私でも・・・。
どうしたらいいの?


私の愛しているのは・・・わかりきっている。

もっと早くキスしてほしかった。
こんなに長く一緒にいたのに。






【決意させるもの】

土曜日の午後。
ミンジュの部屋に宅配便が届く。差出人はスンジュンだ。
ミンジュは包みを持ちながらリビングへ入ってくる。ちょっと頭をかいて考えるが、まずは開けてみることにする。
ミンジュの胸に痛みが走る。

中にはリボンのかかった箱が入っている。

結婚祝い・・・?

先輩はもう私の事を諦めたというの? スンジュンの心が見えない。
答えが知りたくて、少し震える手でリボンを解く。包装紙を取り、ふたをあける・・・。

スーツ姿のテディベアが入っている。
ミンジュは驚いて、息が止まりそうになるが、箱から取り出す。片方の手にリボンのかかった箱がくくり付けられている。
心臓が止まりそうな思いで、テディの小さな箱を開ける。

手紙が入っている。
開く前に深呼吸し、開いて読み出す。




「愛するミンジュへ。


6年もかかってしまった返事です。


僕は君を世界中のだれより、いえ、これ以上考えられないほど、
愛しています。


今までも、いつだって、おまえが好きだった。
嫌いになったことなど、
一度もない。

なのに、オレは表現が下手で、自分の気持ちもうまく掴めなくて、
おまえを苦しめたね。

ごめんな。

でも今は、はっきり言える。

おまえなしでは、オレはだめだよ。
おまえがいつも一緒にいてくれなくちゃだめだよ。


おまえの返事を待ちます。

必ず返事をください。
会って、キチンと答えてください。

どんな答えでも受け入れます。でも会って話してください。

6月○日 午後3時。
ソウル○○○公園、いつものベンチで。

待ってます。


スンジュン


P.S. 相手の答えを確かめられないような手紙はだめだ。
少なくても相手が読んだかどうかは確認した方がいい。」





ミンジュは何度も読み返す。何度も何度も。
手紙の上にミンジュの大粒の涙がぽたっぽたっと落ちる。文字が滲んでいく。

追伸の意味を考える。

胸にこみ上げる思い。
手紙に顔を埋め、声を出さずに泣く。背中が大きく揺れている。



この月日・・・。

それでも、先輩はいつもそばにいてくれた。それは事実。
先輩への愛、冷めた事などなかった。それも事実。
今も続いている。それは真実。
先輩も愛してくれている。それも真実。


私は人でなしになるのか。でも今大切なことは何だ。
まだ、走り出したばかりじゃないか。戻れるはずだ。
遅くない、きっと戻れる・・・。






【決心】

翌日の昼。
午後3時に先輩に会う前に行かなければならない所がある。


彼との約束は1時だ。デートの時間が迫っている。
ミンジュは髪を後ろで縛り、淡いピンクの口紅を塗り、ローラ・アシュレイのやさしい花柄の半そでのロングワンピースを着る。
まるで花かごのようなかわいいバッグに財布と携帯、ポーチを入れる。
鏡で全身を確認する。
バッグと、白のカーディガンを持ち、玄関で、ヒールなしの靴を履こうとするが、しばし考えて立ち止まる。


そして、もう一度、部屋に戻る。
鏡に映る自分を見る。抑制された、普段とはまるっきり違う自分・・・。

こんなごまかしで幸せなんて買えやしない。
やっぱり私は私なんだもん。
生き方だって、男だって、自分にピッタリのものでなきゃ、苦しくて長続きなんてできやしない。



ツッパッて生きる私を先輩は批判もしない。
こんな私と平気で手をつないでくれた。
肩で風を切って歩く私をバカにしない。
ただ笑って見ているだけだ。


本当にドジなのは、先輩なんかじゃなくて、私のほうだ。


心が痛いときは一緒にいてくれる。
私のポーチや荷物を持ってくれるだけじゃない。
心の荷物も持ってくれる。
バカみたいに泣いても、あきれず、心を抱いてくれる・・・。



ミンジュは、今着たロングワンピースを脱ぎ捨てる。
履いていたパンストを脱ぎ捨てる。
クローゼットから、春夏用の薄手の羊皮でできたキャメル色のロングスカートを出してはく。
90cm丈のロングではあるが、左前に太股から長いスリットが入っている。
その上に綿の白いカシュクールのブラウスを着る。大きな襟が高く立ち上がって、首の長いミンジュに良く似合う。カシュクールの太くて長いリボンを腰に巻きつけ、前できゅっと蝶々結びにする。
胸が大きく開いていてセクシーだ。

鏡で確認する。

アクセサリーが足りない。
左手にターコイズのついた太い銀のバングルをつける。

まだ足りない。
そうだ。口紅だ。淡いピンクのうえにビビッドなオレンジを重ね塗りする。

まだ足りない。ネックレスか・・・。

いや違う。

そうだ!
壁にかけてある黒のハンチングを取る。
スンジュンとお揃いで買ったものだ。彼は毎度かぶっているが、ミンジュは壁飾りにしていた。
ふうっとホコリを吹き、叩く。
縛ってあった髪を解き、頭を振って髪をふっくらさせる。
鏡を見ながら、ハンチングを目深にかぶる。

これで完成だ。
かわいいかごのバッグから中味を取り出して、長いフリンジがいっぱいついた、バケットサイズのへビ皮のバッグに入れ替える。色は濃いカーキだ。

もう一度、鏡を見て確認する。
OK.
玄関で、素足のまま、黒の先のあるミュールを履く。6cmヒールだ。



覚悟はできた。これが本当の私だ。
これで最後の勝負をする。
私は人でなしかもしれない。

でも、真実の愛を掴む。それが今、私が望んでいることだ。


ミンジュは部屋のドアを開け、本当の自分で出ていく。





午後1時。
ソウルの高級ホテルの前。
硬い顔つきのミンジュがいる。ぐっと目を見据えてホテルの回転扉からゆっくり中へ入っていく。1階のラウンジはもう目の前だ。頭にかぶったハンチングの上に両手を乗せ、祈るように目を瞑る。
そして、ラウンジの入り口に立つ。中を見る。髪の毛をキレイに七三分けに固め、少し大きめなグレイの背広姿を着た男の後ろ姿が見える。

ミンジュは心を決めて入っていく。






午後3時近く。
地下鉄から上に上がって、ミンジュが約束の公園へ向かう。
公園の中を行くと、遠くからスンジュンが見える。
ベンチに座らず、立って足元の石を蹴っている。
今日はハンチングをかぶっていないが、白のシャツに、麻のカーキのジャケットを羽織り、サンドベージュのパンツをはいている。


またペアだ・・・。
いつになったら、私と違うテーストのものを着るのよ・・・。
スンジュンのジャケットとミンジュのバッグの色が同じだ・・・。
ミンジュは胸が締め付けられる。




でも私は知っている。

先輩がそのジャケットをお気に入りのことも。
きっと今日は、お気に入りでやってくるだろうということも・・・。

夕方のデートでしか、黒っぽいものを着ないことも・・・。


先輩が好きでしょうがないものを、私は皆、知っている。

私が白いブラウスを着ている時が一番好きだってことも。
目でわかるんだよ、先輩が気に入ってる日は。

私の首が長く見えるデザインの服が好きだってことも。
ブラウスの第2ボタンまで開けて首を長めにみせている日が好きだってことも。

高いヒールで大女になって、先輩の顔の横に私がいるのが好きだってことも。

二人で買ったハンチングだって、先輩が試着してステキだったから
私もかぶった。
おまえはこっちのほうが似合うって、後ろ前にかぶせたでしょう。
あの時も先輩はお気に入りの目をしたんだよ。
覚えてないでしょう?


ゴルフだって、サーフィンだって、水泳だって・・・全部知ってるよ。

焼き魚が好きだってことも。煮魚が食べられないってことも。
甘いお菓子が好きだってことも。

どんな本が好きだってことも。

どんなしぐさが好きだってことも・・・・。



皆、全部、全部、先輩のことなんてお見通しだよ・・・。



でもわからなかった。
確証が掴めなかった・・・。


私のことを一番お気に入りに考えてくれているかどうか。


いつもドジで、ノンキで、自然すぎるから、先輩は。
私のことを真剣に見つめることがないから・・・。


だから、先輩の返事を握り締めるまで、私には自信がなかった・・・。


先輩・・・先輩!!





どんどん彼に近づいていく。


スンジュンは、こっちへやって来るミンジュの姿を確認する。
黒いハンチングをかぶったミンジュ。
スンジュンはハンチングで心を確認するが、最後まで気を許してはいけない。

途中で二人は目が合ったが、それからミンジュは知らん顔をして歩いてくる。



まさにスンジュンの真横を通って、そのまま通り過ぎようとしている。
慌ててスンジュンが、通り過ぎようとするミンジュの腕をぎゅっと掴む。


ス:おい。どこへ行くんだ。
ミ:(キッと睨んで)あら、気がつかなかったわ。先輩、影が薄いから。


スンジュンが「フン」と鼻で笑った。背の高いミンジュがヒールをはいているので、ならぶとスンジュンの目線の少し下にミンジュの顔があり、表情がはっきり見える。

今日のスンジュンはいつものスンジュンではない。ミンジュの前でもノンキな顔はしない。
しっかりとした大人の顔でミンジュに正面から迫る。

ス:おい。早く返事をしろよ。
ミ:(とぼけて)何の?
ス:素直に答えろよ。
ミ:答えなんかないわ。何のこと?
ス:めんどくさいやつだな。


ミンジュの腕をもっと引っ張り、引き寄せる。ミンジュとスンジュンの顔が間近になる。スンジュンはミンジュの腕を掴んだままだ。
スンジュンが真剣な眼差しで見つめる。ミンジュも彼の気迫に圧倒されながらも突っ張って見つめ返す。
スンジュンが迫るようにミンジュに言う。



ス:先輩、ずっと好きでしたって言ってみろよ。いつまでもそばにいて下さいって言ってみろよ。先輩がいないと生きていけないって言ってみろよ。さあ。

ミンジュがスンジュンの顔を見つめて、くやしそうな顔をするが、少し涙が光る。


ミ:長い間、好きだって言えなくてごめんって言ってみろよ。(泣き声になる)ずっと好きだったのに、勇気がなくてごめんって言ってみろよ。(少し嗚咽が入ってくる)本当は好きでしょうがなくて、おまえがいなくちゃ、生きていけないって言ってみろよ。

ス:・・・(じっとミンジュを見つめてやさしい声で)そうだよ、その通りだよ。おまえが言った通りだよ。
ミ:先輩のバカ!

ミンジュの目から涙がこぼれる。
スンジュンが愛おしそうにミンジュを見つめ、ミンジュのハンチングを取り、後ろ前にかぶせる。ミンジュが「えっ?」という顔をする。

ス:キスしづらいからさ。
ミ:キスなんかするもんか。(泣き声である)
ス:いいよ、しなくたって。おまえがここにいれば。


スンジュンはミンジュを抱くように引き寄せる。
ミンジュはスンジュンの首に腕を回し抱きついて、声をあげて泣く。スンジュンがやさしく包み込むように抱き締めて、ミンジュの頭を撫でる。

ス:長い間、待たせて悪かった。ごめんな。これからもずっと二人、一緒にいような。一生仲良く二人で一緒にいような。

ミンジュは「うん」とうなずいて、スンジュンの肩に頭を乗せて泣き笑いの顔になる。




ミンジュの長い片思いは、こうして終止符が打たれた。







その夜、二人は初めての夜を迎えた。

先にシャワーを浴びたミンジュはスンジュンのベッドの中にいた。

胸の高鳴りが激しくて、ここから逃げ出したい気分。

でも何年も待ち望んできたことじゃないか。薄い掛け布団に包まるように待っている。
スンジュンがシャワーから出て、腰にバスタオルを巻きつけて入ってくる。

一瞬目が合って、ミンジュは驚いて寝たフリをする。いかにも寝たフリなので、スンジュンも少し微笑むが、

ベッドサイドに来て、


ス:おい、ミンジュ。


と睨みつけるように見る。ミンジュが目をあけないので、仕方なく、布団をはぐ。

ショーツ1枚のミンジュがいた。今まで知っていたミンジュと違うミンジュ。美しい肢体を持つミンジュ。

ミンジュも静かに目を開け、スンジュンを見る。水着姿とはまったく違う印象・・・。輝いていて、野性的だ。


ミンジュの胸にスンジュンの肌が触れていく。呼吸が苦しい。

スンジュンがやさしくキスをする。ミンジュは緊張感でいっぱいだ。

スンジュンのキスもまったく印象が違う。スンジュンがディープキスをするので、ミンジュはそれに応えるのに必死だ。


スンジュンにすべてを任す。

そこには、いつもの強気のミンジュはいない。あのテディべアをくれた時と同じように、従順で素直なミンジュがいる。あの子犬のような目のミンジュがいた。



すべてを彼に任せて・・・スンジュンがミンジュの長い足を彼の腰にかけた。
ミンジュは大きな目をして、スンジュンを見た。


そう、すべては先輩に・・。


この思いも、この体も、私の未来も、すべて、すべて先輩に!


スンジュンが体を起こして、ミンジュの顔を見ると、ちょっと寄り目になったミンジュの目から一筋の涙が落ちた。
ミンジュはそのまま動かず、じぃっとしている。

スンジュンは涙をそっと拭いてやり、自分のほうへ引き寄せてミンジュを抱いて眠った。


ミンジュはその間、一言も発しなかった。ただ「ああ」といっただけ。吐息を漏らしただけ。




スンジュンはとても幸せだ。
今のミンジュは初めての頃のように純粋で自分に一途だ。

この先、ミンジュだって変わっていくに違いない。
いつものミンジュが、自分に高飛車なミンジュがこの場にも現れるだろう。


でも、この初めての時を覚えておこう。
ミンジュが一途に愛してくれていることを。

そしてそんなミンジュが愛しくて愛しくて仕方ない自分がいることを。




明日からはどうなっていくのか・・・。

でも好きで好きでしかたがない気持ち。

一生一緒にいたい気持ちに変わりはないさ!
















【ある朝の風景】

新しいマンションのエントランスから、スンジュンがスーツ姿で颯爽と出てくる。エントランスの階段をゆっくり下りていると、後ろから、同じくスーツ姿のミンジュが飛び出してきて、階段を駆け下りる。
そして、スンジュンの横にきて、腕に手を回す。スンジュンはちょっと見て、微笑んでそのまま前を向いて歩く。ミンジュは彼の顔を見て、幸せそうに微笑み、なついた子供のようにくっついて歩く。



線路沿い。上り電車がやってくる。

ス:おい。来たぞ。

と走り出す。

ミ:バカねえ。間に合わないわよぉ!

そういいながら、うれしそうに、走っていくスンジュンを追いかけていくミンジュがいる。









THE END





2009/10/07 01:42
テーマ:【創】Oh,My テディべア カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「Oh, My テディべア」前編

Photo





BYJシアターです。


あなたが安静にしている間、何をアップしようかしらって悩んだよ・・・。

あなたの「韓国の美~」で
一番好きなところは、朝のご飯の話・・・・。
そう・・・ひとりぼっちはもう飽き飽きだよね。
今は、お母さんの湯気の上がったおいしい朝ごはんを食べているかしら・・・
そんな幸せの中にいるといいな・・・
体がだるくても、そんな幸せの中にいてほしいと願うよ。<


では明るい恋のお話を。前編・後編の2回でお送りします。

ここより本編。
ではお楽しみください!


~~~~~

【Oh,Myテディベア】前編

主演 ぺ・ヨンジュン
    チョン・ジヒョン
    チョ・インソン


主題歌「Let’s fly to the sky」

♪♪~~
空がこんなに晴れて心は弾む
今日は二人の初飛行
Let’s fly to the sky!
いち、にの、さんで飛び出そう


パラシュートひとつで飛び降りる
恐いもの知らずのスカイダイバー
心をひとつに飛び出そう
二人の恋の空中飛行


Let’s 二人でなら
Fly どこまでも
To love 変わらぬ気持ちで
飛んでいけるわ
Let’s fly to the sky!



ねえ、高度はもう下げられない
さあ早く、早く手を握ってよ
飛び込むなら今、この手を離さず
チャンスを掴んで飛んでいこう


Let’s  あなたとなら
Fly  いつまでも
To love  変わらぬ気持ちで
愛し合えるわ
Let’s fly to the love!


Let’s  二人でなら
Fly  どこまでも
To love  変わらぬ気持ちで
飛んでいけるわ 
Let’s fly to the sky!


Let’s  どこまでも
Fly いつまでも
To love  変わらぬ気持ちで
飛んでいけるわ
Let’s fly to the sky!


Let’s  いつまでも
Love  どこまでも
And kiss  変わらぬ気持ちで
愛し合おう
Let’s fly to the love!


Let's fly to the sky!

Let’s fly to the love!

Let’s fall in love forever!


Let's!!

~~♪♪




【二人】

5月の日曜日。昼下がり。
大きな池のある公園のベンチに、スンジュンとミンジュが座っている。普段着姿の二人は、素材は違うものの、白のワイシャツにブルージーンズである。ミンジュは長い黒髪を揺らしながら、中指で目頭から目尻へ涙を拭い、肘を膝に乗せてそっぽを向いている。隣でスンジュンがベンチの背に手をかけて、見つめている。

ミ:(吐き捨てるように)だけど、結婚するならするって言ってほしかった・・・。他に婚約者がいたなんて。
ス:・・・。
ミ:ぎりぎりまで言わないなんて。・・・ずるい・・・。



ス:だいたいさ。あの男のどこがよかったの?・・・オレなんかあいつとキスするなんて考えただけで、ゲーだよ。
ミ:(睨みつける)先輩になんか、私の気持ちなんてわかんないわよ。
ス:もう忘れろよ。おまえには縁がなかったってことだよ。
ミ:だけど・・・。
ス:あのポマード男。金があるだけだよ。
ミ:(睨む)何がいいたいの? お金があってポマード塗ってて、何が悪いの?
ス:それで、他の女と婚約してたんだろ・・・。
ミ:もういいわよ。先輩と話してても慰めにならないから。

ミンジュがさっと席を立つ。ムッとした顔のまま、立ち去ろうとしたので、スンジュンが声をかける。

ス:おい。待てよ。自分から呼び出しておいて。

後を追う。やっと追いついて並んで歩きながら、

ス:(少しドギマギしながら)おい、おまえ。・・・あいつと本当にキスしたの?
ミ:(冷たい目つきで)それがどうかしましたか? (前を見て歩きながら)燃えるようなキスでした。
ス:・・・・!!(少し興奮ぎみ。鼻息が荒い)
ミ:(急に立ち止まって)先輩。先輩のお見合いのほうは続けますからね。いい女、続々ですから。
ス:・・・。もういいよ、なんで見合いなんかしなくちゃならないんだよ。

また二人は歩き始める。ミンジュは両手の親指をジーンズのポケットにかけて、前を向いたまま歩きながら話す。

ミ:先輩には、女の子を釣り上げるセンスが皆無だからですよ。この間のヘジンさん、あれ何?(スンジュンのほうへ振り返る)「ゴルフはされますか? 僕は日曜の早朝ゴルフに限ると思うんです。大人の遠足ですよね・・」先輩、女の子がひっかかると思います? 
前の・・ああ、ヨンスンさんの時。先輩、サーフィン、凝ってたでしょう? 「日曜の朝は4時起きで海へ行くんですよ。サーフィンのあと、仲間と焚き火を囲むのも楽しくて」先輩、女の子は仲間より、ロマンチックに二人で過ごしたいんですよ。先輩ってバッカみたい。
ジ:おい、それはないだろ。(ちょっと怒る)ゴルフの好きな女だって、サーフィンの好きな女だってたくさんいるだろ。・・・あっ、おまえだってそうじゃない。
ミ:だ・け・ど、先輩は、愛の言葉も囁けないじゃない・・・それはだめね・・・女に縁がないですよ、それじゃ。彼だって囁きましたよ、ステキだった。(思い出してポーっとする)ポマードだって上手に囁きましたよ。
ス:いつ?(気になる様子で) ど、ど、どんなところで?
ミ:!!! そんなことまで報告する必要ないでしょう? 先輩ってバカみたい!
本当に反応が子供っぽいんだから。(スンジュンの顔を横目で見上げる)何ドキドキしてるんです? いい年して。・・・情けないよな・・・。
今度はカッコよくして来てくださいね。いい加減な格好で来ないでね。黒づくめとか、そんな格好しないでくださいよ。ハンチングなんかかぶっちゃだめよ。
明る~く、爽やかさを演出してくださいね。(立ち止まり)今度のお嬢さんは上玉だから。
ス:!!! おまえ、いつからやり手ババアになったんだよ。
ミ:(引導を渡すように)とにかく、明後日ね!(どんどん先に歩いていく)
ス:(立ち止まったまま)おい!もう涙は渇いたのかよ。・・・ったく!




いつからあいつはあんなやり手ババアみたいになっちまったんだ。
昔はかわいいやつだった。
大学の4年後輩で、-まあオレが大学をちょっとダブったということもあるが-、オレのいとこのソヨンと親友だったこともあって、妹のようにかわいがっていた。そのせいか、毎年のようにオレにバレンタインデイのプレゼントをくれた。



ある年のこと。
タータンチェックのスカートにピーコートを羽織ったミンジュが、大学の掲示板の脇にある大きな桜の木の下で、憧れの先輩であるスンジュンに派手なリボンを結んだビニール袋を差し出す。

ミ:(顔を赤らめて)先輩、これ受け取ってください。・・これ、手作りなんです。他の人になんか譲ったりしないでくださいね。私、そんなとこ見たら、死にます。(まん丸の子犬のような目で彼を見つめる)
ス:おい、物騒なこと言わないでくれよ。ありがとう。おまえは本当の妹みたいだし、大好きな後輩だから、このクマも大切にするよ。

受け取ったビニール袋の中には、手作りの高さ20センチほどのテディベアが入っている。
テディは、どこかいびつだが、なんとなくミンジュに似て愛嬌があり、St.バレンタインデイと書いたプレゼントの箱を持っていた。

ミ:本当? 大切にしてくれますか?
ス:ああ。
ミ:ありがと。先輩!

ミンジュの目はより大きくなって輝き、顔いっぱいの笑顔で大学の構内を走り去っていく。




あんな時もあったというのに・・・。
今のミンジュときたら・・。
あれをくれたのは、オレが大学院で、あいつが大学4年の卒業の年だった。
その後はどう見ても、義理チョコ程度だ。あれが、あいつが変わった転機だったな。

ここ1~2年ときたら、やたらと金持ちを漁っている。顔とかスタイルとかそういうものはぜんぜん関係なさそうだし・・・。
オレにはやたらと女を紹介したがる。あいつは確かにおかしくなった。
それに、オレに対してもだんだん高圧的な態度をとるようになってきた。最近なんか、おふくろと間違えそうな時がある。オレはおまえの息子じゃない。
おふくろだって、いちいち、「ほら、先輩、ご飯こぼしますよ!」なんて言わないのに。今日の見合いの服装についてのご注意なんて、涙が出そうだ。

どうしやがったんだ、あいつは。

とはいえ、今となっては、この土地に残っているのはあいつとオレだけだ。皆もっと高級住宅地へ引っ越していった。
大学時代の名残を惜しんでここに留まっているのは二人っきりだ。
残った二人で仕方なく、一緒につるんで食事をしたり映画なんかも見に行く。

といっても、別にいやいやながらというわけではない。
あいつとはもうツーカーだから、とにかく気を遣わなくていいし、ノンキに過ごせる。あいつと一緒の時は、服装も自分の好きなものを着ていればいいからラクだ。長く一緒にいるせいか、いつも二人似たような格好をしていて、一緒に歩いていても違和感がない。他の女の子とデートの時は彼女の服装に合わせて服を選ぶので、結構気を遣っている。

まあ、男友達に近い存在になってきたということか。
うん、いいやつではある。男前でキップがいい。
女としてはどうかな。

でもさっき、あいつが話した、ポマードとのキスの話や愛の囁きっていう件は、本当にドキドキして、ちょっと胸が痛くなった。
あいつが言う通り、オレの反応が子供っぽいのだろうか・・・。

また、見合いか。仕方がない・・・。まあ、この辺で本当に身を固めたほうがいいかもしれない。もう32だしな。
妹みたいなやつと一緒に遊び回っていても発展性がないか。




【見合いの日】

2日後の夕方。
ソウルのおしゃれなフレンチレストラン。
ミンジュは、職場で同期のヒョンスを連れて来ている。ミンジュが勤めるアパレル会社のマドンナといえば、ヒョンスである。彼女が人事課にいてくれるだけで、男子の入社希望者が増えたという逸話を持っている。最近、失恋していい男を捜していると言うので、スンジュンにとっては最高の相手であった。
二人は席に座ってスンジュンを待っている。

ミ:もうすぐ来ると思うわ。今日は6時半には来られるって言ってたから。
ヒ:緊張しちゃうな。お見合いって初めて。でもいいわ。すごくいい男なんでしょ?
ミ:もちろん! 先輩もお見合いは初めてなの。(ちょっとウソをつく)私ね、二人のことがピ~ンとひらめいたのよ。(笑う)
ヒ:このスーツでよかったかな。派手かしら。

ヒョンスは麻混のピンクのツイードスーツにフリフリのブラウスを着て、ダイヤのプチペンダントをしている。男性が好みそうな服装だ。おまけに肩より少々長めの髪を内巻きに仕上げている。いかにも女ですといった感じで、これでウィンクなんてしたら、男は一コロリだ。
ミンジュのほうは、薄手の紺のジャケットに、紺のピンストライプのパンツをはいている。ジャケットはほんの少しラッパ袖になっていて、手足の長い彼女にはよく似合う。が、男に媚びたところのない服装だ。それに白のシルクのシャツは第2ボタンまで開けている。髪もただのロングだ。
靴を見ても、ヒョンスのピンクベージュのヒールに対して、ミンジュは魔女のような先の尖った黒のパンプスを履いている。


そうこうするうちに、スンジュンがやってきた。今日の彼は、会社の帰りだということもあって、真面目にピンストライプのスーツ姿である。ミンジュは今日もパンツがお揃いだった・・・と思う。

ス:やあ。

ミンジュに向かって手を上げて入ってくる。
それにしても。そのスンジュンのカッコよさにしばし言葉が出ない。今日はめちゃくちゃ二枚目だ。
ミンジュとヒョンスが立ち上がった。

ヒ:(ミンジュに小さく囁く)すごくステキ! ミンジュ、ありがと!
ス:待った? ごめんな。帰りがけに部長に呼び止められちゃってさ。
ミ:(一瞬声が出ないが、ちょっと裏がえって)だ、だ、(咳払い)大丈夫。私たちも来たばかりよ。先輩、ヒョンスさん。ヒョンス、こちらが大学の先輩のスンジュンさん、高校・大学時代の親友のいとこなんだ。
ス・ヒ:よろしく。

座ってからはスンジュンが笑顔でヒョンスを見つめ、ヒョンスもにこやかにスンジュンと話す。
そう、スンジュンは商社マンだもん。雰囲気作りは上手だ。それに人事課の花、マドンナのヒョンスもあの笑顔だし・・・。んで、私は・・。ふ~ん。ここにいても仕方ないのかな。

ミンジュは自分でセッティングしていながらも、居たたまれない。二人はバッチリお似合いだし、いつものスンジュンは、ミンジュに対して、あけっぴろげというか、みっともない表情もするのに、今日の彼は最高にジェントルマンでハンサムだ。

そうだよね、先輩は昔からカッコよかったもんね。

そうだよ。初めて会った時の衝撃は忘れられない。
大学一年の4月だった。高校時代からの親友のソヨンと、大学の掲示板を見に行った時だ。掲示板の前にいた先輩を見つけて、ソヨンが叫んだ。「オッパ!」って。
それで、先輩が振り返ったんだよね。あの時は、掲示板の横の大きな桜の木が満開で、花吹雪が舞っていた。その中で先輩が振り返った・・・。本当に驚いた。こんな人がこの世の中に実在するのかって。そのくらいカッコよくて輝いていた。

今でも時々、あの掲示板が頭に浮かぶ。いつも先輩がいるわけじゃないけど。いつも花吹雪が舞っているわけじゃないけど。
なぜか私の心象風景はあの掲示板だ。そして、それが頭に浮かぶと懐かしさで胸がいっぱいになったり、幸せであったかい気持ちになったりする。

それなのに! 最近の先輩ときたら、少し緩みっぱなしだ。ちょっと弱気だったりちょっとみっともなかったり。あの初めての衝撃が信じられないほど、ドジだったりすることがある。

しかし、それにしても。今日の先輩は、今までのお見合いの先輩とちょっと違う。
こんなにフェロモンを出していなかった。こんなにカッコよくなかった・・・。いつもの先輩に近かった。
やっぱりヒョンスがかわいいのかな。今までだってこの程度の子、いたと思うけど、ちょっと違うのかな。

気に入ったの?

ヒョンスの顔、輝いちゃって幸せそうだ。

どうしよう、もう帰るか・・・。

ミ:じゃあ私。(さっと立ち上がる)
ヒ・ス:(二人がやっと気がついて)もう帰るの?
ミ:うん、あとは二人で・・・。
ヒ:そうします?(うれしそうにスンジュンを見る)
ス:(にこやかに)そうだね。ミンジュ、今日はありがとう。

二人ともうれしそうな顔をする。
もうお払い箱?

先輩! 今日は送ってくれないの? お見合いの時だって、いつも私を送ってくれたじゃない。今日はだめなの?!


店の外に出て、ミンジュは寂しい気持ちになる。
お見合いは成功した、らしい。
今まで粘り強く頑張った甲斐があって、成功した。

それがこの気持ちだよ。今日は寝る。もう寝込む・・・もうだめだ。




【心が揺れる日】

次の日の朝。ミンジュの会社。
同じ管理部門のミンジュとヒョンスは、フロアが同じなので、嫌がおうにも顔を合わせる。廊下を歩いていると、前からヒョンスがやってくる。とても華やいで幸せそうだ。

ヒ:ミンジュ。昨日はありがとう。超ステキな人だった。32歳までよく一人でいてくれたわ。これって奇跡よね! 昨日なんて、興奮しちゃってもう眠れなかったもん。顔よし、声よし、スタイルよし。学歴よし、職歴よし。やさしくて感じがよくて、話もうまくて。(目がハート)携帯メール、教えてくれたの。今朝から4回も送っちゃった!
ミ:(機嫌が悪く)そう・・よかったわね。(通り過ぎる)
ヒ:ミンジュ、大丈夫?(後ろ姿に声をかける)ミンジュ?
ミ:たぶんね。(だめ。)
ヒ:あ~ん、また送っちゃおう。(携帯をポケットから取り出して、ルンルンで廊下を歩いていく)

ミンジュはブスったれて自分の席につき、頬杖をつきながら、PCを見ている。
私って何?・・・バカ!



ミンジュが携帯を出して、スンジュンにメールする。

【うまくいったの? 教えなさいよ、先輩! 決まりですか?? ミンジュ】

送信。間髪いれず、返信が入る。

【ペンディング。スンジュン】(考え中)

どういうことかな。ヒョンスはOKなわけでしょ。昨日の感じはよかったけど・・・。

【なんで? いい感じだったじゃない。 M 】
【ペンディング。 S 】

わからないな・・・。まあ、あと何回かデートしないと決められないけどね。
ヒョンスからメールが入ってきた。

【明日もデートできるって。キャホ^^ ヒョンス】

ああ、仕事なんかしている場合じゃない。どうしたらいい、どうしたらいいの?
ミンジュは立ち上がって、給湯室へ行く。落ち着かない。 


本当に付き合っちゃうのかな。本当に明日も会うの?

給湯室の中をイライラと歩き回り、スンジュンにメールを送る。

【明日もデート? 本当はどんな具合? M 】

【うるさい。仕事しろよ。ペンディングはペンディングさ。おまえはポマードの心配をしてろよ。 S 】

それを見て、ミンジュは愕然とする。
そうだった。ついこの間、ポマードの件で、スンジュンに泣きついたばかりのに、今のミンジュの頭の中はスンジュンだけだ。
私って、本当に何やってるんだろ! 
でもポマードだって、もう私の手の内からはすべり落ちている・・・。


【ねえ、本当のところ、どうなのよ。M 】

携帯でメールを打つ。次から次へと同じ文面を打つ。また打とうとすると、携帯が鳴る。
ミンジュは驚いて携帯の画面を見る。気取ったスンジュンが睨みつけてピースをしている。

ちょっとこわごわ、電話に出る。

ミ:もしもし。

スンジュンが会社のデスクから携帯をかけている。 コバルトブルーのYシャツが商社マンらしくよく似合う。

ス:おい。同じメール、何度も送るなよ。くどい。ペンディングはペンディングだよ。それ以上でもそれ以下でもないよ。

スンジュンの耳に入ってくるのは、ミンジュの舌打ちと、ため息と鼻息だけだ。スンジュンは口元に手を当て、

ス:おまえ、もしかして、妬いてんの?

ツ~。電話が切られた。


ミンジュはスンジュンの言葉に驚いて電話を切り、携帯を睨みつける。
ミンジュが身の置き所がわからずにイライラしていると、給湯室の入り口からプレスの二年後輩のインスンが覗く。

イ:先輩、ここにいたんですか? そろそろ新作の撮影に行きますよ。
ミ:(我にかえって)ああそうだ。そうだったね、ごめん。

携帯をたたんで、荒っぽくジャケットのポケットに突っ込む。それでもなんとなく気が晴れず、給湯室を出るときに思わず舌打ちして、

ミ:ったくもう! 

と口から出てしまう。インスンが「えっ?」という顔をして、ミンジュを見る。
長い社内廊下を二人が歩いていく。
ミンジュは仏頂面で、ジャケットの両ポケットに両手を突っ込み、肩で風を切るように歩く。
隣を背高ノッポのインスンが歩き、ミンジュの耳元に囁く。

イ:また、お金持ちさんとケンカしたんですか?

ミンジュが立ち止まって、キッと睨む。
ミンジュとインスンの後ろ姿。颯爽と足早に歩くミンジュの横に、背中が笑っているインスンがいる。





夜、仕事帰り。
屋台のテーブルに肘をつき、小さなコップの酒をグイっと飲み干すミンジュがいる。横にインスンがいて、迷惑そうである。

イ:もう、終わりにしましょう、ねえ、先輩。
ミ:まだ、飲む! (ちょっと呂律が回らない)
イ:もういい加減にして下さいよ。・・・先輩はこれだからやなんだよな。飲まないといい人なんだけど。
ミ:えっ? 何? 私が酒乱だとでもいいたいの?
イ:もうこれだよ・・・。(うんざり)

ミンジュがテーブルに両肘をついて、ボーっと遠くを見つめている。ちょっと悲しそうな顔になる。

イ:先輩、大丈夫ですか?
ミ:ヒョンスのやつ・・・。(小さくつぶやく)
イ:先輩、ヒョンスさんと仲良しでしたよね。・・・今度、紹介してくれませんか?
ミ:ええっ?(眉間にしわを寄せてインスンを睨みつける)あんたもヒョンスなの? バッカみたい・・・皆、ヒョンス。・・・(大声で)クダラナイ!

そういうと、そのまま、意識を失って前に倒れこんで寝込んでしまう。ミンジュを見て、うんざりするインスン。

イ:どうすんだい? これ?(まいったという顔)

しばらく様子を見ることにして、ミンジュを見ながら屋台に座っている。



ミンジュはまったく起きる気配がない。グーグー眠っている。
インスンは彼女の住まいも知らないし、とにかく、酔っ払いの先輩の相手はご免こうむりたい。
その時、ミンジュの携帯が鳴る。インスンは困るが、相手がしつこくかけてくるので、携帯を開く。と、ピースをして睨んでいる男の顔が写っている。迷うが、仕方なく、携帯に出る。

イ:もしもし。
ス:(男が出たのでひるむ)もしもし、ミンジュさんの携帯ではありませんか?
イ:ああ、そうなんですけど・・・先輩は今、泥酔してます。
ス:泥酔・・・ですか?
イ:ええ、実は僕、困ってるんです。先輩が寝込んでいて、屋台から帰れなくて。それに先輩の家も知らないもんで。もし、ミンジュ先輩のお友達なら、迎えにきてくれませんか?
ス:(仕方ないなと)あの、どこですか?・・・わかりました。車で行くので、15分あれば着くと思います。お世話をおかけします。



15分ほどすると、黒のハンチングをかぶって黒のTシャツを着た背の高い男がやってきた。

ス:あっ、すみません。お世話になりました。
イ:いえ、こちらこそすみません。

インスンが今まで目撃してきたお金持ちのボンボンとはちょっと違って、感じのよい男だ。
どういう人なのか。とても親しそうだし、こんな人がいるのに、ミンジュ先輩はいったい何をやっているんだ。

ス:おい、ミンジュ。大丈夫か。帰るぞ。・・おい。
ミ:う~ん・・・。

返事はしても、泥酔していて起き上がれない。インスンも手伝って、二人がかりでスンジュンの車に乗せる。



車の助手席で寝ているミンジュを見る。やるせない思いになるスンジュン。
おまえってやつは・・・。人騒がせだよ・・・。





【本当の思い】

翌日のミンジュのオフィス。

始業開始前、頭をかかえたミンジュがデスクに座っている。片目が開けられない。胸がムカムカするが、今日は新作のプレス会議がある。新作を並べて、店頭販売の展開とプレスの方針を話し合う。
しかし、今日のミンジュはものを考えられる状況にない。
インスンが出勤してくる。

イ:先輩、大丈夫でしたか、昨日。
ミ:ごめん、迷惑かけちゃったね。送ってくれたの? ありがとね。ハンカチ、洗って明日返すよ。
イ:先輩、何にも覚えてないんですか?・・・送ったのは僕じゃないですよ。
ミ:えっ?
イ:先輩の知り合いの人、携帯でピースして睨んでる男の人。ハンチングかぶった・・・。
ミ:ええっ!!



給湯室で二日酔いの薬を飲んで、自己嫌悪に陥るミンジュ。
こんな状況では、よりスンジュンが遠い存在になっていく。もともとある意味では、遠い存在ではあるのだが・・・。

吐きそうな胸苦しさを抑えながら、会議室に行こうとすると、ショボショボ歩いてくるヒョンスがいる。

ミ:おはよ。どうしたの?
ヒ:ミンジュも顔色悪いわよ。
ミ:私、二日酔い。昨日、飲みすぎ。あんたはどうしたのよ。
ヒ:スンジュンさんとのデート、キャンセルだって。
ミ:えっ?(私のせい?)なんで?
ヒ:なんか日本から急にお客さんが来てアテンドだって。つまんない・・・。
ミ:(なあんだ・・)そうか、残念だったね。でも延期しただけでしょ?
ヒ:(ちょっと微笑んで)まあね。でも、恋する女にはこの待つ時間が長いのよね・・。うん・・・。

ヒョンスが去っていく。


なんだ。やっぱり惨めなのは私だけだ。先輩にメールしておこうかな・・。でもあっちから何にも言ってこないしな。

携帯を見つめながらも素直にお礼を言う気にもなれず、また携帯をポケットにしまい、会議室へ向かった。





夜。11時過ぎ。
やっと家に戻ったスンジュン。
今日は急に日本からの来客で一日がかりの接待だった。しかし、感触はよかったはずだ。うまくいけば、来週あたり、契約が取れるかもしれない。しかし日本の会社はその場で返事がもらえないから、感触が掴みにくい。本社に戻って、会議をしてから・・・いつもこれだ。担当者に決定の権限がない。まあ、あと一週間、待ってみるか。


ジャケットをソファにおき、ネクタイを取って、第1ボタンを外す。パンツのポケットから財布と携帯を引き出して、ソファに座る。

携帯を開くと、二件メールが入っている。


ヒョンス【お帰りなさい。今日もお仕事たいへんでしたね。次のデート、楽しみにしています。おやすみなさい】

スンジュンが微笑む。

ミンジュ【昨日はごめん・・・。インスンに聞くまで送ってくれたこと知らなくて。情けないよね。ご迷惑おかけしました】

スンジュンの顔が少し沈む。
ため息をついて、目の前にあるリビングボードの上に置かれたミンジュの手作りのテディベアを見つめる。


『あいつ・・・』






真夜中。ミンジュのアパートの前に車を止めるスンジュン。助手席から降ろそうとするが、ぐでんぐでんで動かない。

ス:おい。しっかりしろよ。おまえんちに着いたぞ。・・ミンジュ、ミンジュ。
ミ:あ~ん、先輩。(目を細く開けてとろけそうな笑顔で)先輩、来てくれたの? う~ん、うれしいよ~。すっごくうれしい。やっぱり迎えに来てくれたんだねえ。
ス:ほら、降りるぞ。
ミ:えっ? どこ? うち? いや! 先輩んちに行く。先輩んちでもっと飲みたい!
ス:(この酔っ払い!)おい。・・・・・・オレんちだよ。飲んでいくか。
ミ:(うれしそうに)うん!


スンジュンの手に捕まって車から降りるミンジュ。スンジュンの顔を見て極上の笑顔を作り、スンジュンのかぶっていたハンチングを取って、自分の頭に後ろ前にかぶる。
スンジュンは、フラフラする彼女をなんとか抱えて3階まで上がり、バッグからカギを出し、部屋に入る。部屋の電気をつけると、ミンジュがまぶしそうな顔をして言う。

ミ:うちによく似てる。
ス:そうか。・・・水でも飲むか?
ミ:うん。(ちょっと倒れそうだ)
ス:よし、来い。

ミンジュに肩を貸して、流しまで連れていく。コップに水を一杯入れ、飲ませる。ミンジュは飲んだと思ったら、咳き込んで流しに吐き出す。近くにタオルがかかっているが、彼女に肩を貸したこの体勢では取りに行くことができない。スンジュンは自分のズボンのポケットからハンカチを出して口を拭いてやる。濡れたハンカチは流しの脇に置く。


ス:さあ、ベッドまで行くぞ。しっかりしろよ。
ミ:えっ? (しがみつくように右手でスンジュンの腕に捕まって体を揺らしながら) 先輩、一緒に寝てくれるの? ウソみたい・・・すごくうれしい。本当に寝てくれるの、私と。私のこと、好き? 好きじゃないの? 好きだよね。ヒョンスなんかより10倍、100倍以上、好きだよね。

ミンジュが立っていられず、スンジュンに捕まって、スンジュンを見つめて問いただす。

ミ:好きに決まってる・・・絶対、私を好きに決まってる。
ジ:ほら、ベッドに行くぞ。

やっとベッドに寝かしつけて、体を起こそうとするスンジュンの手をミンジュが握りしめて、

ミ:先輩も一緒に寝よう。ね! ね! 私を好きでしょ。じゃなくちゃ、今まで一緒にいてくれなかったよね。そうでしょう?・・・・先輩、私は、私はね、すご~く好き、先輩が。世界でいっちば~ん好きなんだ。ああ、今日は幸せ・・・先輩と一緒に寝られて・・・。


スンジュンはミンジュの言葉に愕然とする。
ミンジュはすべてを吐き出して寝てしまうが、手はつないだままだ。スンジュンは手をつないだまま、ミンジュのベッドの横に座る。彼女の顔を見入る。
スースー寝息を立てて寝ている。
ベッド脇のサイドテーブルの上。ミンジュとソヨンとスンジュンが大口を開けて笑っている写真がある。写真を見て、スンジュンはせつなくなる。


ミンジュが言ったことは確かだ。
そうだよ、オレはきっとおまえが好きだ。そしておまえもオレが好きなのか? 
じゃあ、なぜオレに見合いばかりさせたがる。なんでいつもオレをはぐらかす。

ス:ミンジュ。おまえ、オレをほんとうに好きなら・・・あんな、ポマードなんかと付き合うなよ。あんなやつのために泣くなよ。・・・オレと一緒にいろよ。


スンジュンはミンジュを愛おしそうに見つめ、ミンジュの頭からそっと自分のハンチングを取って静かに部屋を出ていく。




スンジュンは昨日のミンジュの告白が胸に突き刺さって、にっちもさっちもいかない。
たとえ、酔っ払いの言葉だとしても心にもないことは言わないものだ。
ミンジュが好きで自分も好きなら、それで普通ハッピーエンドだが、あいつは、やたら金持ちを捜すことに夢中だし、オレには他の女をあてがう。あいつが事態を複雑にしている。

好きだけど、結婚するにはお金なのか。そんなに守銭奴だったかな。いつから変わったんだ。
スンジュンにはミンジュの動きがまったく理解できず、ため息をつくばかりだ。




【二人は家族】

久しぶりの土曜日。
ミンジュはスンジュンを食事に誘っていいものか、迷っている。
ここ二週間ほど、ご無沙汰している。なんとなく先輩に電話しづらくて。先輩からもかかってこない。ヒョンスのことで忙しいのか。

今までなら、土曜日の食事といったら決まりごとのように、スンジュンだった。近くに暮らす者同士、土曜日は一緒に食事をするのが暗黙の了解だった。
ソヨンがいた時代はよく三人で食事をしたものだ。それが、ソヨンが結婚してアメリカへ行き、先輩と私だけが残され、その習慣が今まで続いてきた。
そうだ、家族だったんだよ、私たち。
ミンジュの場合はお金持ちの彼とのデートもあったが、できるだけそれは日曜日にして、土曜日は大好きな家族と過ごすことにしていた。


ミンジュはスンジュンの携帯に電話する。

ス:もしもし。
ミ:元気だった?
ス:ああ。
ミ:ヒョンスとデートしてるの?
ス:まあな。何?
ミ:・・・土曜日だよ。
ス:それで?
ミ:土曜日の夕ご飯といえば・・・。
ス:何?
ミ:ミンジュでしょう? 一緒にご飯食べない?
ス:う~ん・・・。
ミ:デートなの?
ス:いや、それは明日。・・・行くか?
ミ:うん。
ス:じゃあ、いつもの・・・どっちにする?
ミ:今日はね・・・「オモニの定食屋」
ス:じゃあ、6時半に現地集合。
ミ:うん!


ミンジュはブルージーンズをはいていたが、なんとなく今日の気分はブラックジーンズかなという直感がしたので、はき替える。ちょっと薄手の柔らかい生地のサイケなブラウスの上に黒の短めのベストを着込む。
「よし、OK」小さなポーチに財布と携帯とハンカチ、ティッシュ、そしてリップを入れて、靴は先のあるミュールをはいて、出かける。

スンジュンが定食屋の前に立っているのが見えた。同じくブラックジーンズだった。それに黒のVネックのセーターを着て袖を少したくし上げ、いつもの黒のハンチングをかぶっている。肩には黒い肩掛けカバンを斜めにかけて、カバンは背中に回していた。

また、いつものようにペアルックになってしまった。とくに話し合うわけではないが、二人はいつも申し合わせたようにテーストがそろってしまう。今日もまたこれだよ。

二人は手をあげて、パンとたたいて挨拶をする。ミンジュが自分の小さなポーチを差し出すと、スンジュンがバッグを前に回して、ふたを開ける。ミンジュがポーチをポンと投げ入れる。

ミ:どうしたの?
ス:今日は臨時休業だって。
ミ:ええ~。(残念)
ス:ちょっと遠出してみようか。
ミ:どこまで?
ス:もう少し繁華街まで出よう。
ミ:車?
ス:あ・る・き。
ミ:うん。いいよ。


二人は黙って歩き出す。何も話さないのも不自然だが、お互い心に引っかかるものがあるだけに話しづらい。息苦しくなる。ミンジュが「あっ!」とつぶやいて立ち止まる。ベストのポケットからハンカチを出して、スンジュンに差し出す。

ミ:(まるでつぶやくように)この間は、ありがとう・・・。
ス:・・・うん。

スンジュンが受け取る。ハンカチを見つめて、キュンと胸が痛くなる。視線を上げて、ミンジュの顔を見つめる。ミンジュがちょっと首をかしげる。スンジュンが「フン」と笑って、

ス:おい。たまには手でもつなごうぜ。(左手を差し出す)
ミ:えっ。(ちょっとドキッとするが)うん。

ミンジュがスンジュンの手を取る。なぜか、二人で手をつなぐ時は指をからめてつなぐくせがある。こうしていると、特に手に力を入れなくても、指同士を挟んでいるだけで手をつないだままでいられるので、実は二人とも不精なのかもしれない。いつも通りスンジュンの手は温かい。

ス:昔はよく手をつないで歩いたよな。
ミ:そうだっけ?
ス:そうだろう。

そういって、スンジュンが握った手を持ち上げて微笑みながら、ミンジュに見せる。ミンジュが「フン」と笑って横を向いた。



そうだ。ただ親友のいとこだというだけで、オッパと呼んで、兄貴みたいに思って手をつないだものだ。今だって土曜日は家族で食事をする日と決めている・・・。
でも、心の中では本当は家族だなんて思っていない。血のつながりなどない、ただ、愛しい人だ。


二人は黙って、お互いの手の温もりを感じながら、繁華街へ続く道を歩く。
街灯だけが二人を見つめている。
ミンジュは、この道に終わりがなく、いつまでも続いていけばいいのにと思った。







後編へ続く・・・





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