2009/09/25 01:09
テーマ:【創】昨日の未来 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「昨日の未来」5最終回



BGMはこちらで^^


BYJシアターです^^

ヨンジュンさんのご本も韓国でベストセラー13位に^^
(村上春樹さん1、2位です^^)

よかった^^
彼の愛する祖国で、認められて^^

でも、体は休めてくださいね^^

さて!

本日は「昨日の未来」の最終回です。


ではここより本編。
お楽しみください!


~~~~~~


ごめんよ・・・
本当に
本当に
君が大好きなんです

君なしではいられないのに

許してくれる?

どうか、
僕の愛を受け取ってください・・・





主演:ぺ・ヨンジュン
    石田ゆり子
【昨日の未来】6(最終回)



あれから、博士からもジュンからも電話がなくなっちゃった・・・。

今日は、クリスマスだというのに、ユリコは一人、家のソファに蹲っている。


ジュンがデパートに来てくれて、お互い仲直りしたはずなのに・・・。
あの日は、一緒に食事をして、うちのマンションの前まできたのに、急に用を思い出して、さっさと帰っちゃった。

最後の電話の時のジュンはなんか気が重そうで、笑って話しても、すぐ黙り込んじゃった。

私が博士のことを聞きすぎたのかな・・・。


「ねえ、この間、コミック・サプライズ、買っちゃった!」
「・・・え?」

あの時、声が変わったな・・・。


「読んじゃった。博士の原作の漫画。おもしろかったあ。それに、グラビアの博士の写真も素敵だったし・・・。ねえねえ、博士ってホントはいくつ? ジュンに年が近い?」
「・・・なんで?」

「だって、写真てホントの年を写すって言うでしょ? とても若く見えるんだもん・・・。私よりは年上?」
「・・・う~ん、なんていったらいいかあ・・・」
「ホントは知ってるんでしょ?」
「・・・」
「なんで教えてくれないの?」
「それを言ったら読者が・・・」
「読者だって、若いと思ってるわよ・・・。私、知りたいの」
「何のために?」
「何のためにって・・・」

「なんか気になるから・・・」
「そう・・・」
「ジュン。どうしたの?」
「別に?」
「妬いてるの?」
「え?」
「私と博士のこと」
「そんな・・・」
「私、博士とは何でもないわよ」
「うん・・・」
「でしょ? どうしたの?」
「また電話する・・・」


それで、終わっちゃった。

ジュンがあれから電話をくれないから・・・私の頭の中では博士がぐるぐる回っている。

ベッドに入ると、余計博士を思い出しちゃう。

だって、ジュンは博士のDNAが強いから、あれは博士だったとも言えるわけだもん。

きっと博士って若い人なんだ。
ジュンと同じぐらいの・・・。

そう思うと、余計、博士を思っちゃう・・・。

なんか、すごく博士に会いたいの。

でも、そうしたら、ジュンはどうなっちゃうの。
私のための彼は・・・でも、あれだけ素敵なら、これからいくらだって恋ができるわ!

ああ、博士・・・。

でも・・・。

博士のDNAって・・・。

ちょっと整理してみよう・・・。

博士のDNAってどこまでなのかしら・・・。確かに入り組んでいるんだろうけど・・・。

まず、顔。
ハルオの部分ね。

ええと・・・目。これはハルオ。でも、光が違うから形だけ。
顔の形・・・これもハルオと似てるけど、博士ともそっくり。

鼻、博士。
口、博士。
身長、博士。
足の長さ、博士。

ええと、声・・・これがハルオと博士が似てるから、どっちとも言えない。

頭の中、これは断然、博士!

ハルオは、バカだもん・・・ああ、言っちゃった! 今まで言葉にしたくなかったことだったのに。


なあ~んだ。
結局は、全部、博士じゃん!

ハルオとは、他人のそら似ってやつね・・・。

・・・。

え・・・そうだったの・・・そうなの?

!!


ユリコは、自分の「ひらめき」に驚いて、ソファから起き上がった。


何よ!

そうよ!
ユリコのバカ!


ユリコは「もうお!」と言いながら、風呂場へと飛んでいった。
「もう、もう、もう!」と独り言を言いながら、服を脱ぎ、シャワーを浴びる。


「もう! あの人ったら! 決戦だわ!」






「あ~あ」

博士は、研究所のイスで大きなあくびをして、反り返った。
その反動で、小さなイスは博士を支えきれず、座ったまま、彼はイスごと、後ろに倒れた。

「いてえ!」

立ち上がって、イスを直す。

「痛あ・・・ついてない・・」



「またやってんの?」
「ああ」


後ろを振り返ると、小林さんがいた。


「何がああよ。子供みたい。博士の体の大きさから考えてこのイス、小さいんだから。ねえ、大きいの買ったら?」
「これでいいです」
「そうお?」
「ええ」

「まあ、お父さんのイスだもんね」
「・・・」
「だったら、そんなことしないで、大切にしなさいよ」
「・・・そうだね」


博士は座りなおした。

「なあんか今日は素直・・・。どうした? まだ恋に悩んでるの?」
「ええ?」
「でしょ?」

「おばちゃんが気にするようなことじゃないよ」
「でもさあ・・・。だったら、私と恋してよ。そのほうが簡単なんだからさあ」
「どうしてそうなるの?」


博士が小林さんの顔をまじまじと見る。

「だってえ。こんなにお世話してんのよ。あと、足りない部分て何かしら・・・。そうよ、博士がベッドでお世話してくれれば、まるっきり夫婦じゃない?」
「・・・ったく。よくそういうこと、考えられるよね」
「ホント、ケチね」

「ケチとかそういう問題じゃないでしょ?」
「そういう問題よ」

「なあんか、変だよ。ケチとか言っちゃって」
「どこが? だって、家族みたいにつかず離れずで、暮らしてるじゃない」


博士がぐるっと、イスを回して、小林さんに正面を向き、まじめな顔をする。

「・・・おばちゃん、小林さん。オレはあなたが好きです。でもねえ・・・手は出せないですよ。親父の助手の奥さんには。オレはちゃんとモラルは守ります。今までお袋代わり、ありがとう」


博士がまじめな顔をして、頭を下げた。


「そう・・・そんな、うちのに、義理立てしてくれてたの・・・」
「ええ」


「ありがとうね・・・なんて、あんた、騙せると思ってんの?!」
「思ってないけど、それだけは諦めてよ。できることとできないことがあるからさ。ねええ。参ったなあ」


小林さんは笑った。


「できないことね。わかったわよ! でも、諦めないわよ。こんないい男が近くにいてさ。勿体ない」
「なんだよ・・・まったく! あ~あ」


博士は机の上のPCを開いて、仕事を始める。


「ねえねえ、今日はお雑煮持ってきた」
「お雑煮って、今日はクリスマスでしょ?」
「だからさ。卵雑煮。食べたいでしょ?」
「まあねえ」

「熱いから気をつけてね」

「うん・・・あっちい」
「だから、気をつけてって言ったのに」

「おばちゃんてさ、子供に言うのと、同じこと言うよね。熱いから気をつけてって」

博士が笑った。

「オレ、もう大人だよ」
「そんなの、わかってるに決まってるでしょ? お嫁さんになりたいんだから」

「ゴホン!」

「大丈夫?」

「ねえ、食べてる時ぐらい、変なこと言わないでよ。餅がのどに詰まりそうになっちゃったよ」
「ごめ~ん」


「でも、おいしいよ」
「ありがとう」


「ねえ、ケーキは? クリスマスでしょ? ケーキちょうだいよ」
「だから、やめた・・・」
「なんで? 食べたい気分なんだけどな。あとで、まあちゃんたちと一緒に食べる?」


「博士・・・。お嫁さんにしてくれるなら、出してもいいけど・・・」
「・・・?」

「こういう日はチャンスでしょ?」
「?」

「か・の・じょ」
「・・・・」

「もう行っちゃえ。なんでぐずぐずしてるのよ。あの子もきっと博士を待ってるわよ」
「う~ん、話が複雑なんだよねえ・・・」

「好きって気持ちに、複雑はないわよ」
「でもねえ・・・」
「私だったら、ここでガバっと抱きしめてほしい・・・そんなもんよ」
「ふ~」

「チャンス、逃すよ。もし、ライバルがいるんだったら、そいつに負けちゃうよ。まずは一番乗りよ」
「ライバルか」
「そうよ。もう好き好きって言っちゃえ」

博士がちょっと甘えた目をして、小林さんを見る。

「また、そんな目をする・・・ズルイ・・・。そうか・・・」
「何?」

「こうしよう。あの子がだめだったら、私と恋をする。ね!」
「なんでえ、最悪じゃない」

「そのくらい、決意しなくちゃ駄目よ、博士は。私はもう20年近くあなたを見ているんだから。あなた、そのくらい、頑張んないと駄目。いつまでも弱気じゃ駄目よ」

「はあ・・・」
「結構、今までもいい女、逃がしてるからね」
「そんないい女でもなかったよ・・・」
「だったら、いいじゃない。私の上を行く子がいなかったんだから、今度は頑張って」
「そうだね・・・。小林さんと結婚することになったら、たいへんだよ」(やな顔をする)
「私は最高にうれしいけど」

小林さんがうれしそうな顔をして、博士の顔を覗きこんだ。

「相手を私だと思って、言ってごらん。さっきみたいに、オレはあなたが好きですって」
「・・・」
「どうしたの?」


博士がじっと小林さんを見つめた。

そして、ぐっと腕を掴んで引き寄せた。


「オレはあなたが好きです・・・」
「・・・」

小林さんはドキッとして、博士の顔をまじまじと見つめた。


真面目な顔をしたおばちゃんは、40代前半のキレイなお姉さんだ。

先代の博士が亡くなってから、博士つまり、ユウの世話を見てくれているうちに、夫にも先立たれてしまった。
ここ8年くらいは、おばちゃんがユウの家を見ながら、ユウがおばちゃんの子供たちの勉強や遊びの相手をしながら、過ごしてきた。
そして、ここ4~5年で、やっと副業のはずのコミックの原作で生活も安定し、自転車操業だった二人もなんとか楽に暮らせるようになった。
おばちゃんもやっとパートの掛け持ちをせず、ユウからのお給料と好きなパートを一つ選んで楽しみながら仕事をやれるようになった。


博士がまた小林さんを引っ張って、小林さんは博士の膝に座り込んだ。


「ホントに大好きだよ。お袋でも姉貴でもなくて・・・何なんだろう・・・運命共同体?」
「・・・博士・・・」
「ずっと好きだからね・・・小林さんのことは」


博士が小林さんを抱きしめた。


「ありがとう・・・ユウ君」
「うん・・・。いつまでも元気でいて」

二人は見つめ合った。

「うん・・・元気でいるよ。ユウ君をずっと応援してるよ」
「うん・・・」
「恋人にはなってもらえそうにないけど」

「ごめんね」(笑顔で言う)
「いいよ・・・ふん。(笑う)諦めてはいないからね」
「そうお? それもいいか」(笑う)
「頑張りなよ。あの子はユウ君を好きだよ」
「・・・うん」

博士はもう一度、小林さんを抱きしめ、小林さんも博士を抱きしめた。
二人は「ふ~ん」と言って、お互いの顔を見合ってまた笑った。





出かける準備をしているユリコのところへ、博士からの携帯メールが入った。

「ユリコさん、忙しいですか? できれば、これからお会いしたいのですが。
研究所まで来ていただけますか? 博士」

博士・・・。

「これからそちらへ向かいます。30分したら着くと思います。ユリコ」




30分きっかりに、研究所にユリコが入ってきた。

研究室は、午後4時だと言うのに、電気がついてなかった。


「こんにちは。博士いる?」
「うん、ここに」

机の向かっていた博士が振り返った。

「お久しぶり」
「なんかずいぶん会わなかった気がする。ねえ、電気はつけないの?」
「つける?」
「・・・ううん、いい・・・このままで・・・」

ユリコがソファに腰掛けた。

「急に呼び出しちゃって悪かったね」
「いいのよ。実は・・・私も、博士に会いたくて・・・来る準備をしてたところ・・・」
「そう・・・何か用だった?」
「うん・・・でも、博士から話して」

「うん・・・」


博士はじっと止まったように考え込んでいる。


「博士。お鼻水博士。あなたの本名を教えてください」
「本名? ユウです。真崎ユウです」
「ユウさん・・・」

「ユリコさん・・・私はあなたに謝らなくてはいけない」
「・・・どんなこと?」
「私はあなたに・・・うそをつきました」
「・・・そう・・・」
「・・・」

「なぜ、うそなんかついたのかしら・・・」
「最初は、ほんの思いつきだった・・・。それで、あなたに、2回目にお会いした時に、それは「うそ」だとバレるはずでした・・・でも・・・」

「でも、私がおバカさんでバレなかった・・・」
「そんな言い方はしないで」
「でも、本当にそうだもん・・・」


ユリコがソファから立ち上がり、博士のほうへ歩いてくる。


「私ってホントにおバカさんだったわ・・・」


ユリコが恐い顔をして、博士を見つめた。


「私はあなたを・・・おバカさんだなんて思っていませんよ」
「そうかしら・・・だったら、どう思っているの?」

「私は、あなたを・・・」
「メガネを外してください」


博士はじっとユリコを見つめたまま、メガネを外した。


「私にとってのあなたは、かけがえのない人なんだ」
「・・・」


ユリコは博士の顔をじっと見据えて、泣きそうになる。


「私は、あなたをとても・・・」
「博士、カツラを取って」


博士は躊躇して、目を見開き、ユリコの顔を見つめていると、ユリコが近づいて、思い切りカツラを引っ張った。
博士の髪が白髪から、ふわっとした若い髪に変わった。

二人は見つめ合った。

「・・・」
「続けて。続けて言って。あなたの気持ち」

「君を愛してるんだ」
「・・・」
「ごめん・・・」

「私を弄んだの?」
「弄ぶなんて・・・」

「なんで? なんで言わなかったの?」
「ごめん・・・あまりに君が真剣だから」
「だからって・・・」

「デートを申し込む代わりに、クローンの話をして、駅前で待ち合わせをしたんだ。君は笑うと思った。バカねって・・・でも」
「でも、信じちゃったのね・・・おバカさんの私が」
「すまない・・・」

「それにしたって・・・。私たち・・・ずいぶん一緒にいたじゃない」
「ごめん・・・。でも、全部、本気なんだ。君に言ったことも、したことも・・・」

「バカ・・・」
「ごめん・・・」

「なぜ、もっと早く言ってくれなかったのよ!」
「・・・」
「私、すごく悩んじゃった。本当は、自分が誰を好きなのかって」
「・・・」
「ジュンも好きだけど・・・あなたが好きで・・・ずっと悩んじゃった・・・」
「ユリコ・・・」

「バカ!」
「・・・」
「意地悪!」
「・・・」
「おたんこなす!」
「・・・」


「・・・でも、あなたでよかった・・・」
「ユリコ・・・」


「苦しかった・・・あなたが好きだって気づいてから・・・苦しかった」
「ユリコ・・・ごめん・・・。君なしでは、いられないのに・・・ユリコにホントのことが言えなくて」

「ジュンを好きになっていくうちに、それはあなたを好きになっていくことだって気がついたの」
「ユリコ」
「だって、どこもかしこもあなたなんだもん・・・」


ユリコはもう泣きそうだ。


「ユリコ、ごめん。許して。ハルオさんのことを疑ったりして・・・。自分だって、ひどいやつなのに・・・。自分のことは棚において、君のことを責めたりして。ホントに最低だよ・・・」
「ホント、最低・・・」

「こんなオレでもいい? 君が好きで、君を失いたくないんだよ」
「博士・・・」


博士は立ち上がって、ユリコを抱きしめた。
ユリコは抱かれたまま、博士を見上げた。


「これがホントのあなた?」
「うん・・・ユリコを好きで仕方がない本当のオレ」


「ジュンより少し大人っぽい・・・」
「そうだね・・・彼は30歳だから」

「あなたは?」
「34歳・・・。ユリコより2つ下」
「そうなんだ・・・。私より年下なのね」

「でも、いいだろう?」
「うん・・・いいよ」


「研究もしてるの?」
「うん・・・。裏の研究室でね・・・。親父が生物学者だったから。その時からの研究室があるんだ。オレも週一回、獣医学部で講義をしてる」
「そうなの・・・。あなたは、ホントは獣医さんなの?」
「そう・・・でも、稼いでいるのは、漫画だけど・・・」

「ふ~ん。あの助手さんたちは? 小学生と高校生ぐらいだっけ?」
「うちのねずみたちの面倒をみてくれてるんだ」
「ふ~ん」
「(笑う)二人とも、小林さん家の子。うちの親父の助手をしてくれてた人の子供なんだ。ああ、奥さんは知ってるね」
「ああ、あの人・・・」

「うん。親父が10年前に亡くなってから、いろいろ面倒を見てくれて。今は、小林のおじさんも亡くなったけど」
「そうなんだ」

「遠くの親戚、近くの他人て・・・。おばちゃんが、ああ、オレはおばちゃんて呼んでるんだけど。いろいろ身の回りの世話をしてくれたんだ」
「そうなんだ。それで、あなたのことに詳しいのね」


「ユリコ・・・こんなオレだけど・・・これからもよろしく・・・」
「うん・・・」

「ホントにいいよね?」
「うん。だって、博士が一番好きだったんだもん」
「うん」

二人はキスをして、見つめ合った。

「今日はオレの部屋で過ごす?」
「うん・・・」
「最高のクリスマスプレゼントだね・・・」
「ふん。(笑う)やっぱり、あなたがいいわ・・・ホントのあなたが」



ユリコは、博士の胸に顔を埋めた。






今、かわいいキャンドルを買って、ユウの寝室は、少しクリスマスのムードを漂わせている。

ベッドサイドのテーブルの上には、ユリコのポラロイド写真の脇にシャンペングラスが2つ置いてある。


布団から飛び出した二人の足が絡まった。


ユリコの「いやん・・・」という囁く声のあとに、博士の幸せそうな笑い声が響いた・・・。







THE HAPPY END




う~ん、もうすぐ来日なので、次回をどうしようかなと思っています^^

短い短編をアップしようか、休もうか・・・さあ、どうするべえ~^^

でも、元気なのがいいですよね?^^

重いのは思いっきり重いから^^








2009/09/24 01:33
テーマ:【創】昨日の未来 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「昨日の未来」4



BGMはこちらで^^



BYJシアターです^^

韓国の美の取材中のヨンジュンさんの様子を見ました。
とっても一生懸命で・・・愛しさ100倍です^^

早く元気になってくださいね。


では本日は、「昨日の未来」4です^^


ではここより本編。
お楽しみください!

  
~~~~~~~


あなたに会えないのは
寂しいけれど・・・

きっとこれが
愛を育てるんだって

今はそう信じて

あなたを待ちます・・・



主演:ぺ・ヨンジュン
   石田ゆり子

【昨日の未来】4



ユリコはこの間、博士の研究所を訪ねてから、少し元気を取り戻せた。

あそこで出会った女性が言っていたように、ジュンは生まれたてで、恋愛経験がないんだもの。

ハルオのことで、気持ちが揺れても仕方がなかったんだわ・・・。

彼には、博士もついているし・・・生きていてくれれば、「運命の恋人」である私以外の女性と恋する心配もないから・・・きっとね・・・・・だから、少し気長に彼の成長を待とう・・・。



片や、博士は完全に落ち込んでいて、毎日、毎日、ため息ばかりだ・・・。

博士は研究所の机の引き出しを開けて、一枚の写真を取り出した。
それは、博士がカツラを被った時とそっくりな白髪をした男の写真だった。

「ユウ、おまえは父さんの最高傑作だよ。だから、自信を持って生きなさい」
「父さん・・・」

「父さんは、今までいろいろ作ってきたけれど、やっぱり、父さんと母さんの二人の愛から生まれたおまえが一番だ」
「父さん・・・」

「私のDNAを残そうなんて考えないようにね。もう私が死んだら、灰にしておくれ」
「でも、今まで二人で頑張ってきたじゃない・・・父さんが病気で死んでしまうなんて・・・。オレ、もう少し頑張ってみるよ」

「でも、私を作るなんて考えたらいけない・・・。母さんが病気になった時は辛くて、もう一度母さんに会いたくて、いろいろ研究してみたが・・・。でもな、ユウ。そっくりの人ができてもそれは外見だけだ。それはもう母さんじゃないんだ・・・。自分が死に直面してわかったよ。私の人生は私にしかない・・・。かわいいペットなら何度も複製してもいいかもしれんが・・・心は一つしかないからね。私の複製はいらないよ」

「父さん・・・」

「今まで二人でいろいろ作ってみたな」
「オレは、お手伝いのトメさんが好きだったよ」(笑う)
「そうそう・・・。トメさん。二足歩行ができなくて、二輪車だった。まあ、ロボットらしいロボットだったが、おまえは母さんのように慕ってたな」
「トメさんはやさしかったよ。いつも質問攻めにして、回路を壊しちゃったのはオレだけど・・・今でも懐かしいよ」

「ユウ、幸せにおなり。好きな人を見つめて、当たり前に結婚して、授かった子供を大切にして・・・自然にできたおまえ以上のものはない・・・おまえ以上にかわいい存在なんてないよ」
「父さん」


はあ・・・。
どうしたらいい・・・父さん・・・。

最初、ちょっとふざけちゃったんだ・・・。
彼女がかわいくて、ちょっとからかうつもりが・・・。

どうしたら、許してもらえるかな。

最低だね、オレは・・・。

こんなに好きになったのに、彼女に差し出したのはフェイクのオレだよ。
本当のオレを彼女は知らないんだ・・・。

ホント、最悪・・・。

ホントにひどいやつだよ・・・オレは・・・。





ユリコは、家の近くの小さな本屋でコミック雑誌を探している。

ええと・・・。コミック・サプライズ・・・。
どこかな・・・。


「すみません。コミック・サプライズありますか?」
「ああ、サプライズは3日したら、新年号が入るよ」
「そうですか・・・じゃまた、来ます」

「とっとこうか?」
「あ、すみません」

「ファンなの?」
「まあ・・・」
「何が好き?」
「ええと・・・お鼻水博士・・・」
「そう!」
「・・・ええ」

「新年号は『お鼻水』の特集ページがあるからねえ・・・それでね・・・うんうん」


ユリコはちょっとうれしくなった。





翌日、ユリコがデパートのイージーオーダーの棚を整理していると、後ろに「ジュン」が立っていた。


「ジュン!」
「・・・こんにちは・・・久しぶりだね」
「・・・うん・・・」

「ごめんね・・・君にいろいろ・・・」
「うううん・・・。ハルオはもう来ないわ。はっきり断ったから」
「うん・・・」

ジュンはユリコの言葉に肯き、二人は見つめあった。


「・・・」
「君に謝らなくちゃいけなかったよね。僕が・・・」

「いいのよ。あなたの気持ちもわかるもん・・・。ねええ。ここって、仕事場だから、ただ話してるのってマズイの。ちょっと買うマネして」

ユリコが笑った。

「ここのイージーオーダーは、お客様があまり来ないから、ホントのお客様が来るまで買うフリして話そ」
「うん・・・。いいよ、ホントに買っても。スーツも一枚持っておきたいし」
「でも、ここは高いわよ。いいのよ、気にしなくても。そうだ、もし、ジュンが、(笑って言い直す)お客様が、スーツを買うとしたらね・・・。どれがお似合いでしょうか・・・と」


「あ、これ、いいわあ。この生地」


ユリコは生地の見本をジュンの胸に当てた。
ジュンはじっとユリコを見下ろしている。

ユリコはドキドキしながら、ジュンの顔を見上げた。


「・・・やっぱり、似合う・・・。こんな紺が似合うわ・・・」

お互い、じっと見つめる。

「・・・ごめんね、君を心配させたね・・・」
「・・・。(じっと見つめて)ちょっと試着してみてください」


ユリコはジュンの体型に合いそうなジャケットを持ってくる。

「これ、着てみて」


ジュンは、今着ているコートを脱いで、ユリコが広げているジャケットに腕を通す。

「そうですねえ。このサイズでいいかしら・・・。ちょっと胸の辺りを見せてください。少しきついかしら・・・。胸のサイズも測らせてくださいね・・・」


ユリコがジュンのジャケットの中に腕を通し、巻尺で、胸囲を測ろうとしている。
ユリコの体が近づいて、離れる・・・その動作を、じっとジュンは見つめている。


ユリコは胸の位置を確認して、巻尺で胸を量る。

ユリコの目の前で、ジュンの胸が大きく深呼吸して・・・ユリコは、ジュンの波立つ胸に目が釘付けになった。


「博士に死にたいなんて・・・言うから・・・」
「ごめん・・・」

「私を残したままで・・・そんなこと、言わないで・・・」
「・・・うん・・・」

ユリコは、サイズを書き取り、ジュンのジャケットを脱がせる。
そして、ワンサイズ大きめのジャケットを着せる。

「そうね・・・これだわ・・・。これなら胸もぴったり・・・」

ユリコがジュンの胸の合わせを確認しながら、ジュンの胸に手を置く。
ジュンは胸が苦しくなる。


「君に謝りたいことがたくさんあるんだ」
「たくさん?」
「うん・・・」


ユリコはジャケットの腕の長さを見る。


「あなたには短いわね。5センチくらい伸ばさないと。ゆきを測らせて」


ユリコがジュンのゆき丈を測る。
ジュンは時々触れるユリコの手に、いつもよりドキドキしている。


「たくさん、謝るって・・・。ハルオのことだけじゃないの?」
「・・・」
「あなたに悪いとこなんて、何にもないわ・・・私は、ただ心配してただけよ」

「・・・ごめん・・・」
「いいの・・・」
「・・・」

「・・・あなたはもう、私を許してくれる?」
「ユリコに悪いとこなんて全然ないよ・・・」

二人が見つめあう。


「また・・・うちに来てくれる?」


ユリコがちょっと甘えたような目をした。


「・・・うん・・・」
「うん、なら、おアイコってことにしない?」

ユリコがやさしく微笑んだ。

「じゃあ、今度は、ズボン、はいてみてね。ジュンの足の長さに合ったの、あるかしら?」

ユリコはいたずらっぽく笑った。

ジュンに合いそうなサイズを探して渡す。


「この間ね、研究所へ行ってみたの・・・博士と3人で話したくて」
「・・・そう・・・」
「でも、留守だったわ。近くの方かしら・・・。40代の女の人」
「女の人?」

「うん。猫を2匹飼ってる人・・・」
「ああ、小林さん」

「知ってるの? その人が今日は留守ですよって」
「そう・・・」
「うん・・・。でも、行ってよかった。なんか、気持ちがすっきりした」

「どうして?」

「え? あなたが「生きてる」ってわかって。その小林さんがね、『あの人』のいい人ですかって。私、ちょっと恥ずかしかった」


ユリコが下を向いて笑った。


「・・・」
「でも、『あの人』は、食欲はないけど、元気だって。ホッとしちゃったの。だって、生きててくれなくちゃ、やだもん・・・」
「うん・・・」

「あの小林さんて・・・博士のなんか?」
「ええ?」

ジュンはちょっと驚く。

「だって、年頃が合ってない?」
「まさか、おばちゃんだよ」
「だって、博士だって、おじちゃんじゃない」

「あ、そうだね・・・」
「ね。ジュンが知らないだけかもしれないわよ」

「ねえ、これ、はいてみて」
「いいよ。そこまでしなくても」

「じゃあ、選んでるフリだけして・・・。博士って、ジュンに顔似てる?」
「・・・どうして?」

「う~ん、度の強いメガネかけてるじゃない・・・だから、どんな感じかなと思って」
「う~ん、よくわからない・・・」
「そう・・・鼻や口の形ってジュンにそっくりよね・・・。よく見ると、ハルオより、ジュンは博士似だもん・・・」
「・・・」

「でも、メガネを取ったら、のびた君だったりして」
「のびた?」

ユリコが笑った。

「目が点よ」

ユリコがにっこりした。

「そおんなあ・・・それはかわいそうだよ」
「そうね」

結局、ジュンはその日、「真実」を打ち明けることができなかった。




コミック・サプライズの発売の日。

ユリコはまたあの本屋へ出かけた。


「こんにちは」
「あ、美人の姉さん・・・。あれだ。サプライズね。ちょっと待ってねえ。今、届いたばかりだからね」

店のおじさんがレジカウンター横の荷を解いている。

「姉さんが好きなお鼻水はいいよ・・・。あれはおもしろい!」
「へえ、おじさんも読んでるの?」(うれしい)

「ありゃあ、大人が読んでもおもしろいよ。クローンとか、ロボットとか・・・近未来の話で・・・そうそう、新年号が、『お鼻水博士』の特集記事でよかったねえ」

「うん!」

やっと紐を解いて、中ごろにあるキレイな表紙のものを取り出した。


コミック・サプライズの表紙に、「突撃! お鼻水博士」とあった・・・。

ユリコはうれしくて、ドキドキする。

「じゃあ、いただきます」
「はい、毎度。姉さん、相当好きなんだねえ」
「ええ。ありがとう!」


ユリコは幸せそうに雑誌の入った袋を抱いて、店を出た。


この幸福感って何かしら?

もう、うきうきしちゃう!

今日のお日様がほかほか温かいからかしら・・・

なんか、なんか幸せ・・・。

早く読みたいわ!



ユリコは本屋から5軒めにあるコーヒー店に入った。


「アメリカン」

そういって、コートは脱いだものの、まだマフラーもつけっぱなしで、早速、コミック・サプライズを開く。


ええと。

あ、グラビアにまで載っちゃって・・・やだ、博士ったら!

この格好って・・・。
ああ、昔あった・・・なんだっけ・・・「シェー」だ!

へえ・・・。

うんうん・・・おもしろい・・・。
やっぱり博士だわ!

この写真もよく写ってる・・・いいよね、すごく!



ユリコは幸せそうにドキドキしながら、ページをめくり、漫画も読んで、『お鼻水博士』の特集ページをもう一度、読み返した。


ああ~ん、素敵・・・。


出てきたアメリカンコーヒーをゆっくり飲んで、グラビアの写真をうっとりとした目で見る。

いいよ、この写真・・・。

かわいい、シェーなんて・・・。

でも・・・こんなに私が夢中になる気持ちって・・・。
やっぱり、ジュンの中身が博士だからかしら?

ジュンを見る思いで、このページを見てるのかな・・・。

なんだか・・・博士も・・・愛しいんだよね・・・とっても。

白髪のおじさんなのに・・・博士といる時の気分て、他の人といる時とはぜんぜん違うもん・・・。

なんか、あったかでさあ・・・なんか・・・。

え・・・でも、愛しているのは・・・ジュンだよね?


ジュンといると、ジュンでいっぱいの気持ちになるのに・・・。

こうやってちょっと離れていると・・・
なぜか、博士でいっぱいになっているような気がする・・・。

ジュンの大好きな中身と、ジュンより大人で落ち着いていて・・・そうだ、私が何でも言える相手で・・・。

ジュンには何でも言えるわけじゃない・・・ちょっと遠慮する・・・嫌われたくないからかな・・・。

ジュンも博士より言葉が少ないし・・・。

う~ん、そこがポイントなのかな・・・。

もしよ・・・結婚するとしたら・・・。

・・・。 ・・・。

なんでだろう・・・。

なんで・・・白髪の「お鼻水博士」なんだろう・・・。

だって、ジュンは私だけの人じゃない・・・。
私のための特別な人。

それに、ジュンとは・・・一緒に寝たりしているのに・・・。

やだ・・・。


ユリコはさっきより、もっとドキドキしながら、博士のグラビアの写真を見入る。


博士・・・。


胸がキュンとした・・・。


だけど、ちょっと待って。
この写真・・・。

博士っていくつよ。

なんか、若く見えるなあ・・・。

気のせいかしら・・・。

だって・・・。


あれ・・・。

確かに、ジュンは博士のDNAだけど・・・。

まるで、まるで・・・ジュンがカツラとメガネをかけてるみたい・・・。

・・・。

え?

ユリコは雑誌を見つめて、呆然とした。





「博士!」
「ああ、おばちゃん」
「今日は少し元気そうじゃない」
「まあね」

「彼女と仲直りできたの?」
「う~ん、少し」

「少しだけ?」
「うん」

「なんだ」
「なんだって何よ?」
「少しって・・・なんで、ガバっていかないの? 私だったら、すぐOKだけど」
「おばちゃんねえ・・・」

「そんなにガツガツしてないんだ」
「変な言い方しないでよ」

「でも、そんなに博士のこと、恨んでる感じじゃなかったけどなあ・・・誤解だって言ってたくらいだから」

「彼女と会ったんだって?」

「うん、ここの前でね」
「それで?」
「それで留守ですよって」
「オレについてなんか言ったの?」

「なんかって? う~ん、『あの人』は生きているんですね?って。なんか深刻そうな顔でちょっと驚いちゃったけど」

「『あの人』・・・」
「うん、そういう言い方だったね」
「そうかあ・・・」

「どうした? また暗くなっちゃったね」
「うん、ちょっとね・・・」

「ねえ、白玉食べる?」
「ぜんざいで?」

「うん」
「あ、うれしいなあ」

「ホント。食べ物には弱いのに・・・。その後はガードが固いんだから」
「そう? (笑う)あ、おいしい。おばちゃんの料理は一番だね」
「つまり、料理だけじゃ、男は釣れないってことねえ・・・」

博士が小林さんをじっと見る。

「やっぱね、いろいろね・・・」
「残念だわ。まったく」

「いつも、ありがとう」
「もう、こんな時だけ、かわいい顔して見せちゃって、全く」

二人は見つめあって、笑った。




ユリコは今日もコミック・サプライズのグラビアを見ている。

やっぱり・・・どう見てもジュンよね・・・。

それとも、博士の代わりに雑誌に載ったのかしら・・・。

撮影の日にたまたま、博士の具合が悪くて、似ているジュンが代わりになったとか・・・。

そうなのかな。

そもそも、クローンて・・・。

でも、あの猫、クローンだったわよ・・・。

あ~ん、ホントはいったいどうなのかしら・・・。

でも、よく考えると、鼻も口も背も性格も、博士にそっくり。

いったいこれって・・・どういうことなの?




博士は、急に鼻がかゆくなり、大きなくしゃみをした。







またまた、続く^^




2009/09/23 00:23
テーマ:【創】昨日の未来 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「昨日の未来」3



BGMはこちらで^^




BYJシアターです。

今日(まあ、昨日ですが)の出版記念会はうまくいってよかったですね。
日本語の通訳も入っていて、joonの心遣いを感じました。

また、来週からの大きなイベントに向けて・・・少し体を休ませてくださいね・・・。


では「昨日の未来」の続き、3です・・・。

ここより本編。
ではお楽しみください!


~~~~~~~~~




私はあなたが大好きなんです

でも、その気持ちはあなたには
伝わらないのでしょうか・・・

あの人のことはもう終わったこと


今、私の中には

あなたがあふれています・・・

  




主演:ぺ・ヨンジュン
    石田ゆり子

【昨日の未来】3



「はあ・・・」

博士は自分のデスクに座って、やるせない顔をして、頬杖をついている。

「はあ・・・」

「ねえ! ちょっと博士! 博士ったら!」
「・・・・」

博士はぼうっと窓の外を見たままだ。


「ねえ!」

女は、博士の頭からスポッと白髪のカツラをとって、博士の顔を覗き込む。

「博士!」

「あ、ああ!」

驚いた顔をして博士が女の顔を見上げた。



「小林のおばちゃん!」
「何がおばちゃんよ。ねえ、大丈夫? ぼおっとしちゃって・・・」
「はあ・・・」(情けない顔をしてため息をつく)

「まったく! ねえ・・・恋煩い?」
「ええ!?」(驚く)

「うそ! やだ、博士、そうなの・・・私というものがありながら・・・」
「おばちゃん・・・」(やな顔をする)

「ねえ、ホントにどうしたの? 博士らしくないよお。そんなシケた顔してんの。あ、まあちゃんが期末試験中で、手伝いができなくてごめんねえ」
「ああ、いいですよ・・・」

「博士のお陰でさ、数学と理科は成績いいんだ」
「それはどうも・・・」

「あと、タクちゃん、今、風邪引いてんのよ。小学校で風邪流行ってるから」
「そう・・・お大事に・・・」

「博士・・・ホントに大丈夫?」

「まあ・・・。いや、だめかな・・・」

「結構、ホントに落ち込んでんだ・・・」

「・・・はあ・・・」

「あんたあ・・・。あんた、こんなにいい男のくせに、妙なカツラかぶったり、メガネかけたりしてるからさあ、もてないんだよ」
「そんなあ・・・」(辛そう)

「ホントに恋しちゃってんだ・・・。ねえ、おでん、持ってきたからさあ、精つけなよ」
「あ、すみません」
「ほら、熱いから気をつけてよ」
「いただきます・・・」

食べたくなさそうな顔で箸をつける。


「なあんか、生きてるのもやだって顔してるよ」
「まあねえ・・・。う~ん。でも、これ、おいしいよ」
「でしょ? ふ~ん」


小林さんはうれしそうな顔をして、博士の横に椅子を持ってきて座る。


「おばちゃんが相手してあげるからさあ」
「結構です・・・」


博士がおでんを食べながら、小林さんを見て睨む。


「博士。私みたいな料理上手の女、手放したら勿体ないよ」
「結構です」


そう言いながら、おいしそうに食べている。
小林さんは博士の食べる姿をうれしそうに見ながら、また自分を売り込む。


「こういっちゃ何だけど、私なんか未亡人だし、いいと思うんだ。女盛りだしさ。いろいろ相手できちゃうし、買いだよ」(笑顔)
「結構です・・・」

「ねえ、言っとくけど、あんたと私って7つしか離れてないんだよ。守備範囲でしょ?」


博士がぼうっと小林さんを見つめるが、小林さんの笑顔は却下された。

「やっぱり、結構です」
「ホント、つれないんだから・・・。こんなに長い間尽くしてんのに」
「おばちゃ~ん・・・」

「それにしてもさ、真面目な話、なんで駄目になったの? あんたなんか収入はあるしさ、顔はいいしさ。スタイル抜群だし。気は優しいし。私なんか、こんなに邪険にされてもついていきたいのに・・・。やっぱり、その変なカツラのせいかしらね?」

「・・・かも・・・」

「カツラばっかり被ってると、ホント禿げるよ。頭が蒸れちゃって」
「やなことばっかり言わないでよ」(ため息・・・)

小林さんは立ち上がって、博士の頭の天辺を見る。

「あやしいよ、ちょっと・・・」
「ねえ、ホントに、やなことばっかり言わないでよ!」

「はあ~ん、少しは元気になった?」
「なんない・・・」
「でも、食欲はあるじゃない」

「よく考えたらここのところ、何にも食べてなかったんだよね」
「忙しかったの? 先週締め切りだったよね」
「そのあとね・・・食べる気もしなくて・・・」
「そっか。そこで事件があったんだ・・・。ねえ、あんたが振られそうなのって、きっと理由は3つのうちのどれかだよ」

「3つ?」
「うん。その相手の女が性悪か、誤解か、あんたの押しが弱いか」

「はあ・・・そうだね・・・」

「元気出しなよ」
「うん・・・」
「コーヒー入れてあげるからさ」
「うん」
「振られても私がいるじゃん」
「うん」

そう言って、小林さんを見るが、


「やっぱり、結構です」
「あんたもシブトイんだから・・・。(博士の肩を叩く)でも、コーヒーは入れてあげちゃうね」

「ありがとう」(笑う)





「岩田さん! 岩田さん」
「あ、はい」
「お客様よ。どうしたの? ここに店員さんいないんですかって聞かれちゃった」
「あ、ごめ~ん。気がつかなかったわ」
「最近、変よ。ぼうっとしちゃって」
「ごめんね」

ユリコは気を取り直して、イージーオーダーを見に来ている客のところへ行く。


ジュンが「もう生きていたくない」と言ってから、一週間が経った。
博士に電話しても、博士は電話に出ない・・・。


深刻な事態になっているのだろうか。

まさか、殺しちゃうなんてことは・・・ないよね・・・。

そんなことしたら、殺人罪になっちゃうもん・・・。

やっぱり、博士を訪ねていくのが一番かな。





夕方、仕事が終わって、デパートの従業員出入り口からユリコが出てきた。

人影が動いて、ユリコの前に男が現れた。


「あ、ハルオ・・・・」
「探しちゃったよ」

ハルオはにこやかな顔をして、ユリコを見つめた。

「・・・」
「きっとどこかのデパートに勤めてるとは思ったんだけど。ここだったんだね」
「何の用よ」

「だから・・・この間、言っただろ?」
「・・・知らないわ。そんな話」
「なあ、戻りたいんだ、ユリコのところへ。ユリコがなんといっても一番!」

「どいてよ。・・・ここはマズイわ」


ユリコはハルオを無視してどんどん歩き始める。


「おい、待てよ。聞いてくれよ」
「とにかく、ここはマズイわ。職場だもん」

「わかった、わかったからさ・・・」
  

デパートから少し歩いたところで、ユリコは立ち止まった。

「ねえ、いい加減にしてよ」
「そんな言い方するなよ。5年も一緒にいたじゃない・・・。もっとやさしくしてくれよ」
「もう十分、甘やかしたわ・・・。今の人はどうしたの?」

「だから、あいつとは・・・」
「そっちへ戻りなさいよ。私はもうあなたとは何でもないの。付きまとわないで」
「そんなあ・・・」

「ストーカーみたいな真似しないで」
「・・・」
「もう終わったのよ」
「・・・」
「私、あなたのこと、もう好きでもなんでもないの・・・。今はかえって・・・あなたのだらしなさやズルさがわかって・・・嫌なの」
「・・・」

「だから・・・これ以上、思い出を壊さないでほしいの」
「ユリコ」

「あなたを好きな時代もあったのに・・・。ホントに嫌いになりそう・・・」

ユリコがハルオを見つめた。

でっぷりとだらしなさそうに弛んだハルオの顔や体を見ていると悲しくなる。


「どうしても駄目か?」
「駄目」

「お前が一番だと思っていても?」
「・・・。お前が一番・・・騙しやすいと思っていても、駄目よ・・・」

「ユリコ・・・そんな言い方するなんて・・・お前も変わったな」

「変わるわよ、私だって。あなただって変わった・・・」
「なあ・・・」

「鏡で自分を見てみて。もう容姿だけじゃ、女を騙して生きられないわよ。もうあなたには、そんな魅力は残ってないんだから」
「・・・」
「今の人のところへ行きなさいよ。長く一緒にいてくれたんでしょ? 行きなさいよ」
「なあ、ユリコお~」

ユリコが呆れた顔で、ハルオを見ていると、その視界に、遠くでジュンがユリコを見つめているのが見えた。


「なあ、ユリコ・・・」
「どいて!」


ユリコはハルオを押し退けて、ジュンのほうへ行こうとしたが、ジュンは寂しそうに、クルっと向きを変えて帰って行ってしまった。


「ユリコったら・・・」
「もう、うるさい!」

「!!」

「何なの!あなたは! もう、もう大事な人を取り逃がしちゃったじゃない! バカ! もう近づかないで! 今度来たら、警察を呼ぶわよ!」

初めてのユリコの剣幕に、ハルオは驚いて引き下がるしかなかった。

  

ユリコは早速、携帯で博士に電話を入れてみる。

でも、なかなか出てくれない・・・。



とぼとぼ歩いているジュンのポケットで携帯が鳴っている。

コートのポケットから携帯を出し、そっと開くと、「ユリコ」からだった。

出ようか、しばらく迷ったが、ジュンはそのまま、携帯をポケットにしまい、頭をちょっと掻いて、街の雑踏の中を歩いていった。





ある日の昼下がり。
今日は、ユリコの定休日で、意を決して、研究所へやってきた。

よくよく考えてみれば、自分のことだけ責めている博士とジュンはおかしい。
ユリコを本当に信じているなら、ハルオなんて目じゃないことぐらい、わかるはずだ。
今日は、言いたいことは全部言う! そんな気持ちで、研究所へやってきた。


チャイムを鳴らしても、人の出る気配がない・・・。

しばらく、建物の前で待ったが、ぜんぜん返事がない。

ユリコがどうしようか迷っていると、40代の女性が声をかけてきた。


「あのう、博士になんか用ですか?」
「ええ」
「そう。今日は出かけてるけど・・・」
「そうですか・・・。ええと、助手の小林・・・」
「ああ、今ね、風邪で寝込んでんの」

「そうでしたか・・・。博士がどちらに行かれたかなんて、わかりませんよね?」

「うん、たぶん、出版社だと思うけど」
「出版社?」

「ええ。ほら、あの人、マンガの原作書いてるじゃない」
「マンガ?」
「あなた、知らないの? コミック・サプライズ」
「ええ」

「まあ、男の子が読む本だけど。うちの息子なんか大好きで、大ファン!」
「そうですか・・・。なんていうお名前で出てるんですか?」

「『お鼻水博士』。超パロッてるでしょ? でも、そこもいいのよねえ」
「へえ・・・」


博士って、ただのペンネーム?

じゃあ、ジュンは・・・?



そこへ2ひきの猫が通りかかる。
そっくりなブチの猫がユリコを睨んで通っていった。


「あれって・・・」

ユリコの目が2匹の猫を追う。

「あなた、気がついた?」

女は笑った。

「うちの猫」
「2匹ともそっくりですよね・・・」
「うん・・・。先代がね、病気になっちゃって・・・私が泣いてたら、博士が作ってくれたの」

「作る・・・?」
「クローンよ」
「・・・」

「あの人の本職。ハムスターだの、二十日ねずみだの、いろいろ作ってたけど・・・猫はうちだけ・・・。これ、内緒よ」
「え、ええ・・・。人間は・・・?」

「それって、違法行為でしょう? そこまではやんないわよ。バイオじゃ食べれないから、SFマンガの原作やったら、当たっちゃったのよ」

女は笑った。

「そうでしたか・・・」
「ここで待っても、帰ってくるか、わからないわよ」
「・・・わかりました・・・」

「もしかして・・・あなたって・・・。『あの人』のいい人?」
「え・・・・」

ユリコは赤い顔をした。

「そうなんだ・・・。ここんとこ、『あの人』、元気なくて、ご飯も食べられなかったのよ」
「・・・そうなんですか?」

「あれで、結構、繊細だから・・・気にしてやってね」
「ええ。でも、なんとか『生きて』いるんですね?」

「当たり前じゃない。それにしても、博士も今までよく隠してたなあ。
あなたみたいなキレイな人だったなんて・・・」
「・・・」

ユリコは恥ずかしくて俯いた。

「全く、男ってしょうがないわね。あなたがここまで来てくれてるんだったら、グジグジしてないで、ちゃんと話し合えばいいのに」
「ですよね・・・」

「まあ、繊細な男は仕方ないか・・・」

「また来ます。でも、なんとか『生きていて』くれたら、いいんです」
「あんた・・・。男をそこまで追いやっちゃったら駄目よ」
「ただの・・・誤解なんです」
「だろうね。うん・・・。『あの人』も恋愛経験がないから、すぐ落ち込んじゃうんだろうね」


恋愛経験がない・・・。
そうだわ・・・だって、私が初めての女ですもの・・・。
そうよ。
だから、どうしていいか、わからないんだわ・・・。


「また、来ます!」

ユリコは微笑んだ。


「そうね。博士も待ってるわよ」
「ええ!」

ユリコは少し心が軽くなった。


そうよ、初めての恋だもん・・・。
それに気がついてあげなくちゃ、いけなかったんだわ。

博士が言うように、少し時間をあげなくちゃ・・・。
彼が大人になるまで・・・。


「失礼します!」


ユリコは、にこやかになって、今来た道を帰っていく。


なんか、心配しすぎちゃったかも・・・。
まあ、ハルオもあれだけ言えば、もう来ないだろうし。





博士は、ぶらんぶらん、切なそうな顔をして歩いている。

確かに、小林のおばちゃんが言うように、変なカツラなんて被らずにまともな格好で仕事をしていたら、この展開も違ったものになっていただろう・・・。


ああ、切ない・・・。
でも、これも、オレのせいなんだよな・・・。



前を見ると、ユリコが歩いてくる。

博士はユリコをじっと見つめて、彼女に挨拶に行こうか悩む。


声をかけようとするが、今の自分ていったい何者だ・・・。

カツラもメガネもつけていない・・・。
ジュンよりは少し大人の自分・・・。

今、ユリコに会って、何を話したらいいんだろう。




ユリコが近づいてきて、博士はとっさに、小さな八百屋に入り込んだ。

ユリコはすうっと通り過ぎて、ちょっと振り返る。

誰かに見られていた気がする・・・。

気のせいかな・・・。

博士たちは、今仕事に出てるんだもん・・・ここにはいないよね・・・。




博士はやるせない顔をして、ユリコの後ろ姿を見送った。

「へい、らっしゃい! どちらにしますか?」
「え! ああ・・・みかんを、ください」
「へい! 毎度!」

「はあ・・・」(ため息・・・)


博士はちょっと泣きそうな目になった・・・。







続く^^




2009/09/20 00:26
テーマ:【創】昨日の未来 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「昨日の未来」2



BGMはこちらで^^



BYJシアターです。

本日は「昨日の未来」2です。

さて・・・?^^


ここから本編。
ではお楽しみください! 


~~~~~~~



あなたの笑顔がやさしくて
わたしは心がとろけそうです・・・

でも、その笑顔は私が知っていたものと
少し違う・・・


でも、いいです・・・

今はあなたが一番好きだから・・・




主演:ぺ・ヨンジュン
    石田ゆり子

【昨日の未来】2





「着丈はこのくらいでよろしいですね?」
「そうだね・・・」

「とてもお似合いですよ。こちらの見本は三つボタンですが、二つボタンも選べますので」
「あなた、二つにしてもらう?」
「そうだな」
「かしこまりました。ボタンは二つ・・・。後ろのベンツですが・・・」



今、ユリコは、あるデパートの紳士服売り場で、嬉々として、楽しそうに仕事をしている。

もともと洋裁が好きだった彼女は、短大の家政科を卒業してデパートに勤務していた。
また、古巣の仕事に戻ったわけだ。
ユリコはこの仕事が大好きだ。

紳士服のイージーオーダーのコーナーは、客はあまり来ないし、来る時はほとんどがホントに買いたい人ばかりで、だいたいが奥方と一緒に来る夫婦ものだ。

だから、自分からセールスする必要はない。ただ、にこやかにお勧めする。

そして、ユリコの得意な採寸を気持ちよく、笑顔で進めていけばいいだけだ。
買いたい客は、ボタンや丈の長さでは悩むが、買ってくれるために悩むのであって、その辺のアドバイスについては、ユリコもプロだ。


保険の外交は辛かった。
性格的に、積極的に突っ込んでいくところがないので、考えてもいない保険に入るという買う行為から客を掴んでいくことができない・・・。

結局、いつも客を採り逃がしてしまうのだ。


今日もユリコの笑顔と丁寧な応対で、客は満足して帰っていった。

早くこの仕事に戻ればよかった・・・。


元夫の「ハルオ」と出逢ったのが、やはり紳士服売り場で、一人で買い物に来たあの「美しくて素敵だった」ハルオに恋をした・・・。

友達は皆・・・ハルオが、ユリコが紳士服で働いているのを知っててやってきて、「引っ掛けた」というが、そんなことは信じたくない・・・。


でも、別れたあと、しばらくはデパートの紳士服売り場なんて見るのも嫌だった。
それでも、自分に合わない仕事より、まるで自分の天職のようなこの仕事は心地よい。


ジュンとまた出会えたからかな・・・気持ちがこんなに安らげるのって・・・。


ほとんど客の来ない売り場を整理する振りをしながら、ユリコは思った。

ジュンと初めて会った日。

ジュンはユリコのマンションまでやって来たが、二人はお茶を飲んだだけで終わった・・・。
もっとジュンが、ハルオのように、積極的に来るのかと思ったら、ジュンは意外とシャイで・・・。
いや、ユリコの、ちょっと迷いのある表情に気がついて、それ以上には求めなかった・・・。


ハルオにはない心遣い。
それがジュンにはあった。




「どうぞ、上がって」
「お邪魔します」

ジュンはうれしそうにユリコを見た。

「こっちよ」
「・・・キレイにしているんですね・・・」


ジュンは狭いユリコの部屋の中を見回した。


「お金がないだけ・・・。いろいろ買えないから。ねえ、お茶飲む?」
「ええ・・・」

「あなたは紅茶が好きだったわね」
「え・・・ええ」
「今、入れるね」

ユリコは楽しそうにやかんでお湯を沸かす。

「ユリコさん・・・僕ってここに住んでいたんですか?」
「うううん・・・。違うところ。ここは、私が一人になってから住んでるの」
「そう」

「あ! あなたの好きなおせんべ、今ないけど・・・みかんならあるわ。食べる?」
「気を使わないでいいですよ」
「別に気なんて使ってないわよ。ねえ、自分の家みたいにくつろいで」
「ええ」

ユリコが笑った。

「どうしたの?」
「ええとか、そうとか、ですなんて・・・あなた、変わったわ」

「そうなの?」
「前のあなたはおしゃべりだった・・・。(思い出すように)訪問販売の口上が上手で。でも・・・今のあなたは違う人なのよね・・・」

ユリコがジュンをじっと見つめる。  

「そんなに違う?」
「うん・・・。あなたって・・・なんか思慮深い感じがする。促成栽培なのに・・・。
あの人より、本物みたい・・・」
「・・・」
  

やかんが鳴った。



「あ、お湯が沸いたわ」

ユリコはキッチンに行き、紅茶を2つ入れる。

ティーバックから紅茶が染み出るのを見ながら、ジュンを見つめる。
佇まいがハルオとは違った。

ハルオはいつもひっきりなしに話しているか、ユリコに抱きついているか・・・
ユリコに・・・手を上げようとしているかだった。


そう、最後は、あの人、手を上げたんだった・・・。
  

でも、ジュンは静かに座って、ソファの横にある雑誌を覗いている。
ハルオは字なんか読まなかった・・・。

とても似ているのに、まるで違うように見える。

外見しか整っていなかったハルオに比べて、クローンであるジュンのほうが、中身までちゃんと詰まっているように見えるから不思議だ・・・。

これって、博士のDNAが強いってことかな・・・。

そうね、あの人は学者だもん・・・。
  

ユリコが入れた紅茶を持って、ソファに行くと、ジュンが雑誌から顔を上げて、にっこりとした。

「ありがとう」
「どういたしまして」

「熱いから気をつけて。お湯が沸きたてだから」
「うん」

ユリコはソファに座らず、ジュンの前に向かい合って座った。

「そこで冷たくない? こっちへきたら?」
「だいじょうぶ。座布団があるから。ありがとう」

「ユリコさんて、どんな仕事しているの?」
「私? あさってから、デパートの紳士服売り場で働くの。昨日、面接に行ってきたの・・・。
昔ね、ハルと知り合った頃は、大きなデパートの紳士服売り場にいたのよ」

「へえ」

「イージーオーダーでスーツ作るところ・・・。そこで、あなたと出逢って・・・。その仕事を一回辞めちゃったから・・・。(ちょっと俯く)また再就職。
この前まではね、保険の外交やってたんだけど、うまくできなくて・・・。私の性格には合わなくて、皆にかわいそうがられていたの。それでね、新聞でデパートの求人見つけて、早速応募したのよ」

「そうか・・・苦労したんだね」
「別に。最初から自分に合う仕事だけしてたら、よかったんだわ・・・。ねえ、ジュンは? 今、何しているの?」

「・・・う~ん、一言では難しいんだけど・・・博士の実験データを読み取る仕事かな」
「へえ・・・。すごいこと、やってるのね・・・」

「だって、僕は・・・知識の部分は博士のものをもらっているから・・・。博士にとっても、僕が分身になるわけで、とっても仕事がしやすいんだって」
「そうかあ・・・。博士と同じことを考えてくれるんだものね。それってホントに楽ね」

ユリコが笑った。

二人は紅茶を飲んで、見つめ合ってまた、微笑んだ。



ジュンが「やっぱり隣へおいでよ」と言ったので、ユリコはジュンの隣へ座った。

ジュンが一瞬真面目そうな顔をして、ユリコのあごをちょっと上げた。
そして、顔を近づけてキスをした・・・。

それはとても控えめなキスだった。

そして、それは、その時のユリコの気持ちにピッタリだったにもかかわらず、ユリコはちょっと驚いて、ジュンを見つめた。

そのキスは、ハルオのものではなかった・・・。


「どうしたの?」
「うううん、なんでもない・・・」
「・・・」


ジュンはユリコの少し困惑した顔つきを見て、それ以上は迫ってこなかった・・・。





「岩田さん。岩田さん、交代の時間よ」
「あら、もうそんな時間?」


ユリコは時計を見た。

今日はこれからデートだが、ジュンがデートの前に、ユリコの仕事をしている姿を見たいと言っていたので、いつ、ジュンが紳士服売り場に現れるかと、ドキドキして待っていたのに、ついに、ジュンは現れなかった。

ユリコは少しがっかりした。


半日待っちゃった・・・。


売り場のカウンターの下から貴重品袋を取り出して、何気なく前方を見ると、ジュンが柱の影に隠れるようにひっそりと立っていた。

気がついたユリコがじっとジュンを見つめると、ジュンは控えめに微笑んだ。

・・・バカ・・・。


ユリコもうれしくてにっこりとした。
  

「岩田さん、どうしたの?」
「え? あ、別になんでもないの。お疲れ様でした」
「お疲れ」

ユリコは、またジュンをチラッと見て、微笑んで、従業員出口のほうへ向かった。


ジュンは来てた・・・。私が、気がつかなかっただけ・・・。
きっと、仕事の邪魔にならないようにしてたのね・・・。


ユリコは幸せな気分になる。

ロッカーで着替えて鏡の前に立ち、化粧を直す。


でも・・・。
これって、ハルの時に感じた気持ちじゃない。


あの時は、ただ舞い上がっていた。


ハルオの「好きだ、好きだ」という攻撃に、ユリコは愛されることに幸せを感じて、ハルオにのめり込んでいった。


でも、ジュンを見ていると、胸がキューンとする・・・。  

ハルオのときとは違う感覚だ。  

ジュンは・・・ハルオのクローンだけど、博士のDNAも受け継いでいて・・・今、ユリコが胸キュンする仕草や態度は、ハルオにはなかったものだ。

ということは・・・今、自分が恋しているのは・・・博士のDNAなのだろうか・・・。





翌日は、ユリコの定休日だったが、ジュンは仕事が忙しいのでデートは出来ないと言った。

ユリコは博士に電話を入れた。

「博士、こんにちは」
「やあ」

「お忙しいの?」
「まあ、ちょっとね」

「ジュンが今日は忙しいって言ってたから。お邪魔でした?」
「いやいや。どうした? 彼とはうまくいってるんでしょ? それとも・・・順調ではないの?」
「いえ、まあ・・・。順調です」

「なら、いいじゃない」
「今、ジュン、そこにいますか?」

「・・・いや・・・今日はね、ちょっと出張に行ってもらってるんだ」
「・・・そうなの・・・お忙しいところ、申し訳ないんですけど、これから、そっちへ行ってもいいですか?」

「な、なぜ?」
「ちょっとお話したいの・・・」
「うん・・・」

「クローンについて・・・」
「そうか・・・。それは貴重なデータにもなるかもしれないな・・・では、いらっしゃい」

「ありがとうございます」





ユリコが研究所を訪ねると、博士は本当に忙しそうに動き回っていた。

「お邪魔します」
「どうぞ。その辺に適当に座ってて」

博士は、ユリコの顔などまともに見ずに、棚からファイルを探している。


「本当に忙しいそうね」
「まあね」

博士は何やらファイルを探し出し、机に持ってきて、早速、データの分析を始めている。


「博士、ねえ、ちょっとだけでも私の話を聞いて」
「聞いてるよ」

「ねえ、ちゃんと聞いてほしいの。こっち向いて。真面目な話なんだから」


ユリコは博士の机に腰を預けるように寄りかかり、博士を見つめた。
博士の手が止まって、ゆっくりと、ユリコを見上げた。


「あら、メガネが違う・・・メガネの度が強くなったのかしら・・・」(顔を覗き込む)
「・・・前のじゃ、ちょっと見づらくなってね」
「博士、働きすぎよ! 目は大切にしないと・・・。博士がいなくなっちゃったら、ジュンと私、困っちゃうもん」


博士のメガネは前より度が強くなっているようで、博士の目がよく見えにくい。


「・・・それで、どうしたんだい?」(ユリコの顔を見つめる)
「それが・・・」

「・・・彼が気に入らないの?」
「そうじゃなくて・・・かえって胸が痛いくらい・・・好きで・・・」

「・・・(一瞬息を飲み)そう、それは・・・それは、よかったじゃないか」(声が少し上ずる)
「・・・ええ。だけど・・・ジュンて・・・」
「ジュンってダンナとは違う名前?」

「ええ、そうなの。元のダンナは「ハルオ」っていうんだけど・・・。そうなの!(急に元気な声で)博士。彼って、ハルオとぜんぜん違うの。同じ名前で呼べないほど」

「・・・」
「それで、名前も変えたんだけど・・・ぜんぜん違って・・・これでいいのかしら?」

「どんな点が問題なのかね? ちょっと待って。メモするから・・・これはかなり貴重なデータだからねえ」
「う~ん・・・とにかく、違って・・・」(あ~ん、説明しにくい!)

「ねえ、さっき胸が痛いほど好きだって、言ったじゃない。それは、恋しているのとは違うわけ?」


博士がユリコをじっと見つめたので、ユリコは、少し口ごもった。


ユリコが今、胸が痛いほどジュンを好きな部分は・・・ハルオになかったところだ。
つまり・・・博士のDNAでカバーされているところ。

つまり、これは・・・博士に間接的に恋しているということなのかしら・・・。

だとしたら、ちょっと博士には言いにくい・・・。


「どうした?」
「え? ええ・・・」(困る)
「どうした。君が、話があるって来たんだよ」
「そうなんだけど・・・」

ユリコはじっと博士を見つめる。

「どうした?」
「つまり・・・ジュンとハルオは全く別人なの」
「うん・・・どの辺が?」

「いろいろ・・・」
「たとえば?」

「たとえば・・・。(ちょっと赤くなる)キスの仕方も違うの」
「う、うん!(咳払いする)そ、そう・・・」

「・・・うん・・・」
「そ、それで? 何が問題?」

「違うけど・・・恋しちゃってもいいのよね?」
「・・・なんでいけないの? 失敗作品だから? そっくりさんじゃないから?」

「失敗じゃないわよ・・・だって、好きなんだもん・・・」
「・・・うん・・・」

博士とユリコが見つめ合う・・・。


「そうよね、彼は彼だものね・・・ハルオとあなたのミックスだけど・・・それがジュンなんだもんね・・・」
「・・・」

「ちょっと私、考えすぎちゃったかな・・・。自分が求めていた人と少し違って・・・。でも、よく考えたら、ハルオは、私を愛してくれたけど、中身が何にもなかったわ・・・彼の愛って、真実だったのかしら・・・」

「ずいぶん、話が遡っちゃうんだね」

「ホント。あなたにハルオを作ってて言ったのにね。そのハルオの愛を疑ってる。たぶん、ジュンがハルオじゃないから、ハルオを客観的に考えられるようになったのね」

「うむ。ユリコ君。君の新しい人生に新しい男・・・。それでいいじゃないか」
「・・・うん。(頷く)そうよね・・・新しい人生に新しい男ね・・・そう思えばいいんだ」(にっこり笑う)

「ねえ、御茶ノ水博士!」
「な、なんだい。その言い方!」

「だあってえ、その白髪が御茶ノ水博士みたいなんだもん。私の恋人は、アトム・・・。素敵なアトム・・・。博士、あなたといると、なんだか楽チン・・・。なんにも構えないで話せるの・・・。不思議」

「・・・そ、それは、君の恋愛対象外だからじゃないか?」

「そうなのかしら・・・う~ん。私って、自分の気持ちがうまく話せない人間なのに。博士には、とってもざっくばらんに話せるの。おかしいわね」

「そうなんだ・・・」
「うん・・・」(幸せそうな顔をする)

「ジュン君にはどうかね?」(顔をまじまじと見る)
「ジュンには、まだ遠慮がある・・・。彼の気持ちは疑うところなんてぜんぜんないけど・・・。
あの人、とっても繊細な人なの。私の表情とかで、すぐ私の気持ちがわかっちゃうの。だから、ハルオみたいに自分を押し付けたりしないの・・・」

「・・・」(じっとユリコを見つめる)

「そうか・・・。あなたが繊細な人なんだ・・・」

「・・・さあ・・・もう年を取っちゃったからね、ジュン君ほど純粋じゃないだろうけど」
「そうなの?」(笑う)

「今日は、彼が帰ってきたら、君のところへ遊びに行かせるよ」
「でも、忙しいんでしょ?」
「まあ忙しいには忙しいが、君たちの恋の邪魔をするわけにはいかないからね」
「ふん」

ユリコがうれしそうに笑った。
  

「ではお願いします」
「わかった。コーヒーでも飲んでいくかい?」

「ええ。今日は小林君は?」
「今、試験・・・いや、今日は彼も出張なんだよ」

「ホントに忙しいのね。だったら、いいわ。私のためにそんなに時間を使わせたくないもの」
「そんなこと言わないで。ここで待ってて。インスタントだけど、今入れてくるから。僕が飲みたいんだよ」

「わかった」(微笑む)


博士は部屋を出ていこうとして、柱にぶつかる。

「博士! 大丈夫?」
「ああ、大丈夫。ちょっと寝不足かな」

「まあ・・・気をつけてね」





ユリコと博士の二人は、インスタントコーヒーを啜っている。

「そうだ・・・」
「どうしたの?」

「ジュンて、もしかしたら、コーヒーのほうが好きだったかもしれない・・・」
「なんで?」

「ハルオが紅茶好きだったから、紅茶ばっかり出してたけど、博士に似てたら、コーヒーのほうが好きかもね。気がつかなかったわ。うん、今度、コーヒーにする・・・コーヒー出してみるわ」

「そう?」
「うん・・・」

ユリコと博士が見つめ合って、笑った。




小一時間ほどユリコは研究所にいて帰っていった。
これから、ジュンのために、コーヒーメーカーを買いにいくと言う。



博士はユリコが研究所を出ていくと、椅子から立ち上がって、窓際へ行き、メガネを外して、ユリコの帰っていく姿を見つめた。




夜になって、ユリコの部屋へ、ジュンが訪ねてきた。

「あ、ジュン・・・」
「こんばんは。こんな遅くにごめん」
「うううん・・・今日、博士があなたをよこすって言ってたから・・・ホントは待ってたの」

「そう」(うれしそうな顔をする)

「ねえ、入って」
「うん」

ジュンは、にこっとして、ユリコの部屋へ入ってきた。


ジュンとユリコは定期的にデートをしているが、こんな夜に会うのはこれが初めてだ。


「ジュン、どうしたの。こっちへ来て座ってよ」
「うん」

「ねえ、今日は忙しかったの?」
「ああ、ちょっと博士の仕事の締め切りがあって」

「締め切り?」
「うん・・・。博士は・・・学会にいろいろ論文を出しているからね」

「そうなの。今日ね、コーヒーメーカー、買っちゃった。もしかしたら、あなた、コーヒーが好きだったかなと思って」

「うん。実はそうなんだ。どんなやつ、見せて」

「これ。普段、コーヒーって自分で入れないから、よくわからないんだけど」

「ねえ、説明書は?」
「これ」

「うん・・・」

ジュンが説明書を読んで、コーヒーメーカーを見ている。


そんな仕草に、ユリコは「博士」という言葉が頭に浮かんだ。


やっぱり、この人は博士の分身・・・見た目は私の好きなハルオで、中身は博士なんだわ・・・。


「コーヒー豆は買った?」
「うん、これ」

「ちょっとやってみる?」

「でも・・・眠れなくならない?」

「もう、寝ちゃうの?」

ジュンがじっとユリコを見つめた。
ユリコはちょっと呼吸が苦しくなった。


いよいよその時が来ちゃったのかしら・・・。


「やってみる?」

ユリコがか細い声で、聞いた。
ジュンはユリコを見て、にっこりとした。

二人でコーヒーメーカーを前にコーヒー豆を出して、説明書を読んでいる。





結局、その晩、ジュンは初めてユリコの部屋に泊まった。

ジュンが博士とのミックスでも、この恋を続けることは間違っていないと確信したユリコは、安心してジュンを受け入れた。

ジュンは・・・ハルオよりはるかに・・・素敵だった・・・。

ハルオは、自分の気持ちだけを押し付けてくるところがあったが、ジュンはユリコの気持ちを優先してくれたし、ユリコが感じるのを待ってくれた・・・。




翌朝、ジュンより早めに起きたユリコは、ジュンの寝顔をじっと見つめた。

私のジュン・・・私だけの人・・・私のために作られた人・・・。


ちょっと頬を触って、首を触って、胸を触った・・・。

ジュンがうっすらと目を開けた。


「もう起きたの?」
「うん・・・」

「もう少し寝たら? 今何時?」
「今ねえ、6時半」

「もう起きちゃうの?」

「朝ご飯の支度するわ・・・ジュンにちゃんと朝ご飯、食べさせてあげたいの・・・」
「うん・・・」

「ねえ、研究所は何時から?」
「何時でもいいんだけど・・・いつも9時ごろから始まってるよ」

「そう、じゃあその時間に間に合えばいいわね・・・あ、でも・・・博士にバレると恥ずかしいから、少し前に戻ってね」

「うん・・・」(甘い声)


ジュンはユリコの体を引き寄せて、優しく抱きしめる。

ユリコはジュンの裸の胸に顔をつけて、うっとりとした。

このまま、ずっと彼とベッドにいたい・・・。
  

二人の間に甘い空気が漂った。





あの日を境に、ジュンとユリコの仲は急速に親密になって、初め、ジュンが「これからは時々、あなたのところへも通います」と言った通り、彼は、「真面目」に通ってきた。

ユリコの生活もハリが出てきて、もうジュンのいない生活など考えられないほどだった。




ある日、近くのスーパーで、夕食の魚を選んでいると、「ユリコ」と呼ぶジュンの声がした。


あら?


ユリコが顔を上げると、そこにいたのは・・・ハルオだった。  

「ハル・・・」
「久しぶりだな」

「・・・どうしたの?」
「お前を見かけたからさ・・・」

「だからって、何?」
「ちょっと話、できるかな?」

「ど、どんな?」
「いいじゃないか。元亭主だろ?」

「でも・・・」

ハルオは戸惑うユリコの腕を掴んで、強引に近くの喫茶店へ連れていった。

「なあに? どんな用?」
「なんか、キレイになったな」

「・・・」
 

目の前に座ったハルオは中年太りして、顔もかなり弛み、昔の「美青年」の面影などなかった。

この人の今の生活がこんな弛んだ姿にしているんだわ・・・。


それに、中年になったハルオの目は、まるで・・・「節穴」で、そこには知性もなかった・・・。

こんな人が好きだったんだ・・・。
  

目の形だけ、ジュンと同じで、その輝きはぜんぜん違う・・・。
  

ユリコはなぜか、ものすごくがっかりした。

この男を愛していた期間・・・この男の本性を知っても自分から別れられなかった期間・・・別れた後も未練がましく、この男の写真や爪を持って歩いていた期間・・・。

バカみたい・・・。




ユリコはすっかり夢から覚めた思いがした。

もし、ジュンに出会っていなければ、この男のだらしなさも、身勝手さも、教養のなさも、きっと目を瞑って、過ごしていったにちがいない・・・。

この男に、「引っかかった」・・・本当にそうだったんだ・・・。


「なあ、オレさ。今のカミサンとここんとこ、うまくなくてさ。ユリコんとこ、戻りたいなあって思ってるんだよ」

ハルオが甘えた目をした。

「そんなこと、言われても困るわ。私には私の暮らしがあるし。そもそも自分から出ていったんじゃない」

「だけど・・・お前、オレのこと、まだ好きだろ?」
「そんな・・・そんなことはないわよ」

「そうかあ? お前がオレの写真持ち歩いてるって、あの、ミチコちゃんから聞いたからさ」


あのおしゃべり!

高校時代から親友がハルオに話したのだ。


「そんなもの、捨てたわよ・・・」
「そうかあ・・・。でも、オレたち・・・合ってたじゃない?」
「合ってないわ・・・」

そう思い込んでた・・・そう思い込まされていただけ・・・。


「ねえ、戻れないかな?」
「戻れないわ!」

「・・・きつくなったな・・・」(驚く)

ハルオがしょんぼりした。前はハルオのこんな姿にすぐ騙された。
ユリコはちょっと気の毒のような気になったが、今のユリコにはジュンがいて、新しい生活がある。

自分のために作られた彼・・・。

それに、ハルオは、最後、ユリコに手を上げた男だ。


「あなた、私に手を上げたくせに」
「・・・そうだったかあ」

「そうよ。同じこと、繰り返すのよ、あなたは。だから、駄目よ」
「なあ、ユリコお・・・」

「私、帰るね」
「そんなあ・・・」

「その人のところへ戻りなさいよ。今の人に頭下げたほうがいいわよ。じゃあね」

ユリコは立ち上がった。


今までのユリコだったら、きっとそのまま、なし崩しに彼を受け入れてしまったかもしれない。

でも、今は自分にはジュンがいるのだ。
  

喫茶店を出たユリコをハルオが追いかけてきて、ユリコに取りすがった。
しかし、ユリコは彼を押し返して、逃げるように、通りを渡った。

ユリコが泣きそうな顔をして歩いていると、前にジュンが立っていた。

「ジュン・・・」
「・・・ユリコが夕飯の買い物にスーパーに来ているんじゃないかと思って、来てみたんだ」
「そう」

「今の人・・・」

「見てたの?」(ドキンとする)

「うん」

「あれが、ハルオ」
「ハルオ?」

「そう。もう情けない男になってたわ・・・」

「・・・ 戻るの、あの人のところへ?」
「うううん・・・戻らない」

「・・・」

「だって、私にはあなたがいるじゃない」

「でも・・・あの人を愛してたんでしょう?」
「それは過去のこと・・・今、私が愛しているのはジュン、あなただもん」

「・・・」

「どうしたの?」

「そうかな・・・」

「そうよ」

「でも、どうしても会いたかった人じゃない」

「だから・・・」

「どうしても会いたくて・・・。僕は・・・コピーだよ・・・」
「だから、今はあなたのほうが大事」

「少し考えさせて」
「考えるって・・・」

ジュンは寂しそうな顔でユリコを見ると、「ごめん」と言って、去っていった。

  
ジュンは、なぜ、私がハルオに会ったのか、知らないんだわ・・・。

どうしよう・・・。
それに、コピーだなんて・・・。

あなたは、あなたはコピーなんかじゃないわ!



ユリコは、急いで博士の携帯に電話を入れたが、かからなかった。

携帯の電源が切られているらしい・・・。


 

困ったわ・・・。

困ったじゃ済まされないわ・・・。


ああ、どうしよう・・・。





夜中になって、やっと博士の携帯に電話がつながった。

「博士?」
「ああ、ユリコ君?」

博士もなんか元気がない・・・。

ジュンから、ハルオの話を聞いたのだろうか。



「博士。今日、実はハルオと突然、スーパーで会っちゃって」
「・・・」
「それを、どうもジュンが見てたみたいで・・・」
「それで・・・?」

「喫茶店で少し話をしたんですけど・・・。ハルオが私のところへ戻りたいって言い出して・・・」

「・・・戻るの・・・?」
「うううん、だって私はもう愛してないんですもの」

「・・・本当に?」
「ええ。ジュンに出逢ってわかったの・・・。私が今までハルオを愛していると思ってたのって、それってまるで魔法みたいだったって。ジュンと出逢って、ハルオがいかにいい加減な人だったかがわかったの」

「・・・そう・・・」

「博士、ジュンの誤解を解いて。私、彼がいなくちゃ駄目なの。もう、彼のいない人生なんて考えられないの」

「・・・」

「博士・・・」

「それがねえ・・・彼は・・・もう生きていたくないって言うんだ」

「な、なぜ?」

「本物には勝てないって・・・。今、ユリコ君、君がそう言ってくれても、ホントにハルオ君が泣きついてきたら・・・やさしい君だ。きっと、助けてやるにちがいない」
「そんなことしません」

「・・・だって、別れても「爪」を持ち歩いていた人でしょ?」

「だから、それってただの思い違いだったのよ。ホントの愛なんか
じゃなかったのよ!それより、ジュンが生きていたくないって・・・
そんなあ・・・博士、どうしよう・・・」

「・・・これは、彼の決意だからね・・・」

「博士、彼を死なせたら、殺人よ! そんなことしないで! ねえ、博士。お願い!」

「・・・」

「ねえ!」

「考えさせてくれ」

「お願い。ねえ、3人で話し合いましょう。博士、駄目よ。安楽死なんてさせたら。だって、だって、この私が愛してるんだから・・・。それに・・・尊敬する博士を人殺しなんかにさせられないわ!」

「まあ、少し時間をくれたまえ」

「なぜ? なぜ、そんなこと言うの?」
「・・・君がハルオ君とのことをちゃんとするまで・・・ジュン君とは会うのはやめたほうがいい」

「なぜ、疑うの? 私のこと」
「・・・ジュン君の気持ちもわかるんだ。自分がその人の複製で、本物が出てきたら、君がそっちへ行きそうだと思い込んでしまう気持ちもね。まして、彼は完全なクローンには成りきれなかったわけだし」

「・・・」

「少し、僕たちに時間をください。ユリコさん・・・」

「・・・。わかったわ・・・でもね、私はハルオなんてもうなんとも思っていないの・・・。ジュンが好きなの・・・。それに、博士のことだって大好きだもん・・・。お願い、彼を説得して。博士、彼は失敗なんかじゃないから。最高に素敵な人だから!」


ユリコは、泣きたい気持ちでいっぱいだった。

もし、こんなことでジュンを失ってしまったら・・・。




博士は携帯電話を切ると、ベッドから起き上がり、冷蔵庫から缶ビールをとり出して、一気にぐいっと飲み込んだ。

そして、深いため息をついた。

「はあ・・・」とやるせない声を出して、少し考え込むように立ち止まったが、またベッドに潜り込んだ。


そして、ビールの空き缶をベッドサイドのテーブルの上に置いた。
  

そこには、写真立てに入ったポラロイドのユリコの写真が飾ってあり、度の強いメガネの横には、白髪のカツラが置いてあった・・・。






続く・・・




2009/09/19 01:55
テーマ:【創】昨日の未来 カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

【BYJシアター】「昨日の未来」1

Photo

BGMはこちらで^^


BYJシアターです。

ペ・ヨンジュン来日も近づき、そわそわする毎日ですね^^
ということで、あんまり重たいお話は帰国後に回して^^

今回は短めで、
ちょっとおとぎ話風のストーリーで楽しくいきたいと思います^^

ここより本編^^
ではお楽しみください!


~~~~~~



昨日、私はあなたに恋してました。

でも、今日のあなたは少し違う・・・。


私はもっともっと胸が痛いです・・・。




主演:ぺ・ヨンジュン
    石田ゆり子
【昨日の未来】1  



あと三軒は回らなくちゃ・・・。
保険の外交なんて、始めるんじゃなかった・・・。

まったく説明下手だし、押しも弱いのに。
今月の成績もビリッケツ・・・。

やっぱり、デパートがよかったなあ。
今度、デパートの求人があったら、絶対そっちに乗り換える。
 

ここ、行ってみるか。



「こんにちは。失礼しま~す。こんにちは?」
「はい。何ですか?」

かわいい男の子が出てきた。

「あら、あのう、お父さんかお母さん、いる?」
「お宅はどちら様ですか?」

ちょっと大人っぽい口を利く。

「保険の外交です」
「へえ。博士は今、お仕事中です」

「博士って?」
「ここは研究所です」
「え、そうなの?」


ユリコはもう一度玄関の外に出て、外の看板を見た。
  

「創造科学研究所」
  

へんなの・・・。


「わかりましたか?」
「ええ・・・。でも、あなたは・・・ここの坊ちゃんでしょ?」
「いえ、助手です」
「助手?」


ユリコと、どう見ても小学生のような助手が向き合っていると、中でトイレを流す音がして、白髪の背の高い男が出てきた。


「小林君、だれかお客様?」
「あ、博士!」
「博士?」


ユリコが声のする方を見ると、背の高い白髪の、ロイドメガネをかけた男が出てきた。

「何でしょうか?」
「あのう、保険の外交です」

「ああ、うちは結構です」
「まあ、そんなこと、おっしゃらずに」
「いえいえ、結構です」

「お客様くらいの年齢の方には、総合保障の『男子元気いっぱい』をお勧めしているんです。生活習慣病とガンにも対応、終身保障もついてるんですよ」
  

ユリコはそう言って、にこっと笑ったが、その「博士」を見上げると、髪は白髪なのに、肌はつるつるである。


いくつなんだろう、いったい・・・。
髪が60で、お肌が二十歳・・・?


「そんな保険はいいですよ。失礼」
「ちょっと待って」


博士が中の事務所のような所へ入っていくので、ユリコも一緒についていく。


「君、くどいねえ・・・」

博士は、自分のデスクに座って、ユリコを見た。
  

「お客様にお勧めしたいのよ・・・。あれ・・・これってえ、DNAの模型?」

博士の机の横に、縦にDNAがつながっている大きな模型が置いてある。


「ああ、そう。よくわかったねえ」


博士の声がやさしくなった。


「へえ、やっぱり。こういうのっておもしろいですよね」

ユリコは楽しそうにその模型を見た。


「こういうことに興味があるの?」
「ええ、まあ・・・」

そういって、ユリコは部屋の中を見回す。


変な人体図や訳のわからないおもちゃのような、実験道具のようなものがずらっと並んでいる。


「ねえ、君。こういうの、好き?」

博士が言った。


「こういうのって?」
「う~ん。(ユリコをじっと見る)つまり、クローンとかサイボーグとか」
「あなた、そういう研究してるの?」(少し笑ってしまう)
「まあね。あ、ちょっと待って」


そう言って、博士は立ち上がり、部屋の扉を開けて、助手に声をかける。

「小林君、コーヒーを2つね!」
「はい!」


「小林君てさっきの子ね。あなたの子供じゃないのね」
「彼は助手ですよ」
「まあ、かわいい。小学生の助手さんね」
「・・・」


「博士、コーヒーをお持ちしました」
「ありがとう」
「ご馳走様です。ありがとう」


ユリコは子供に言うように、笑顔を作る。


「彼、小学生じゃないですよ」
「え?」
「ちゃんとした大人です・・・ちょっと実験で子供に変身してますけどね・・・」
「うふ。(噴出す)おもしろい人」
  
「ホントの話ですよ」
「ええ?」

「君、誰かクローンを作りたいとか、考えたことありますか?」
「そんなの違法でしょ?」

「でもさ、もしできたら・・・誰かが作ってくれるとしたら・・・」
「そうねえ。う~ん。(楽しそうに考える)ああ、別れた亭主かな」

「別れた男?」
「うん。あいつの若い頃ね。うん」(頷く)

「ご主人ていくつ?」
「あいつ? あいつは今、40ぐらい。あいつの30くらいの頃がいいなあ・・・私だけが好きって言ってた頃」

「へえ・・・まだ惚れてるんだ」
「それがいい男だったのよ、その頃は。スラッとしてかっこよかった・・・。声も優しい感じで・・・ああ、あなたの声に似てるわね。うん、あの頃のあいつに出会いたい」

「へえ、別れちゃったのにねえ。どんな仕事してた人?」
「ええとねえ、語ると長いわよ・・・ある時は、布団の訪問販売、ある時はソーラー発電の訪問販売、ある時は店の客引き・・・ある時は、なべの実演販売・・・。いろんなこと、やってたの」
「へえ・・・」

「つまり、長続きしなかったのね・・・。でも、今度の女には長続きしてるみたい。あいつ、ヒモになっちゃったの」

ちょっと寂しそうに下を向く。


「ふ~ん、美人なのに、苦労してるんだ・・・」
「苦労? そうかな・・・」

「だって、そういうダンナって・・・はっきり言ってたいへんでしょ?」
「う~ん、そうとも言えるわねえ・・・でも、好きだったから・・・。友達はね・・・。私があいつに引っかかったって言うんだけど・・・。デパートに紳士服、買いに来たの・・・。ふ~ん、素敵だった・・・。まあ、ちょっと相性もよくって・・・なかなか別れられなかったのよ」

「へえ・・・」
「私がぐずぐずしてるうちに、向こうが出ていっちゃった」
「へえ・・・そんな人のクローンがほしいんだ?」

「そ。また、あいつに出会いたいの・・・若い頃のね・・・熱いあいつに」
「訪問販売の・・・」
「そ。布団を担いでたあいつに・・・」

「その人の写真と、なんかDNAが取れるものない?」
「ええ?」

「おもしろそうだから」
「ええ、ホントにやるの? 怖いじゃない・・・」
「大丈夫。やってみたいなあ・・・」
「・・・」

「なんか持ってる?」
「持ってるけど・・・」

「今、持ってるの?」
「うん・・・時々ね、寂しくなると、あいつの若い頃の写真見たりしてるから・・・」

「見せて」
「え?」
「ちょっと見せて」
「ちょっとって・・・悪用しないでね」
「そんなあ、大丈夫」


ユリコはバックの中から手帳をとり出し、そこについているファスナーを開け、一枚の写真を引き出す。


「これ・・・」
「へえ、見せて・・・・なかなか、いい男だねえ・・・ふう~ん・・・」
「ね、そう思うでしょ?」
「うん」


博士は、じいっとその写真を見入る。
  

「やっぱり・・・私の目に狂いはないでしょ?」
「でも、甲斐性なしね」
「ちょっと返してよ」(怒る)

「まだだ。コピー取らせて」
「なんで?」
「いや、ちょっと」


博士は、写真をスキャンしてPCに取り込み、PCの画面に「彼」を映し出す。


「うん、この人、背は何センチくらい?」
「ええとねえ、173だったかな・・・」


博士がユリコの話す内容をメモしている。


「うん・・・。身長はその通り復元できないかもしれないな」
「なんで。クローンてそっくりにできるはずよ」

「それがねえ・・・。ちゃんと復元できる優良なDNAを手に入れないと、その辺が微妙なんだな」
「そうなんだ。じゃあ、超チビってこともあるのね?」

「それはない」
「どうして言いきれるの?」

「う~ん。ちょっとねえ」
「何がちょっとよ?」

「僕のDNAでその辺をカバーすることがある・・・つまり、背が180になっちゃうんだなあ・・・」
「おっきいのかあ・・・それはいいかも。(にこっとする)よりかっこよくなるもんね。でも、足が短いのはいやよ」

「このくらいだよ」


博士が立ち上がり、ユリコに足の長さを見せる。

ユリコは品定めするように、博士の全身を見た。


「結構、あなた、バランスがいいんだ・・・足長いもん」
「まあね」
「うん、まあいいわ、それで」

「じゃあ、DNAをちょうだい」
「ねえ、ホントにやるの?」

「もちろん」
「だってえ、人間ができちゃうわよ」
「大丈夫。彼にはうちで助手をしてもらうから」

「そうお? でも、私が気に入らなかったらどうする? その人、ストーカーになんかならないでしょうね?」
「大丈夫。そんなスレた人間にはならないようにするから」
「約束よ」
「ああ」


ユリコはバッグの中から、化粧ポーチを出して、その中から小さなマッチ箱のような箱をとり出した。


「この中にね、彼の爪が入ってるの」(笑う)


博士は、ちょっと嫌な顔をした。


「どうしたの?」
「君のほうがストーカーみたいだね」
「そうかしら?」
「・・・」


別れた男の爪を持ち歩く女・・・。

博士はユリコの顔をじっと見つめる。 
  

「なあに?」
「君のほうが危ない感じだなあ・・・」
「大丈夫よ、私は」


ユリコは極上の笑顔で、博士を見た。

博士は、ちょっと咳払いする。


「君っていくつ?」
「何でそんなこと、聞くの?」
「いや・・・30歳の新しい彼氏を手に入れるわけだけど、君自身はいくつなのかなと思って」

「私は・・・35・・・6になったわ・・・」
「そう・・・若く見えるね」

「そうかしら?」
「うん・・・」
「よかった」

「なんで?」
「最近、合わない仕事を続けてるでしょ。ストレスが強すぎちゃって、ちょっと老けちゃったのよ。でも、よかったわ」
「そう・・・」


博士は、ロイドメガネの中から、じいっとユリコを見つめた。


「そうだ。君の写真も一枚、撮らせて。新しい彼にイメージを植えつけないといけないからね」
「そうなんだ」


博士はポラロイドカメラでユリコを一枚撮る。

ユリコの笑顔がかわいいので、博士はその写真を見入る。


「ねえ、それでいい?」
「ああ、O、OK!」


博士はちょっとドモった。


「まあ、いいでしょう。じゃあ、君の名前と携帯を教えて」
「なんで?」
「出来上がったら連絡入れるよ。メルアドある?」

「あるけど・・・。ねえ、そんなに早くできちゃうの?」
「もちろん。促成栽培。知ってる?」

「まあねえ。まるできゅうりと一緒ね。大丈夫かな。デートの途中で死んだりなんてしたらやあよ」
「大丈夫」(笑う)
「うん」

  
ユリコが名前と携帯の番号とメルアドを書いて、博士に渡す。


「これ」
「OK・・・ユリコさんね」
「ええ」

「ねえ・・・」
「何?」

「製作中に、ハエとか入らないようにね」
「え? ああ。(笑う)大丈夫。任せなさい」(胸を叩く)

「博士!」


事務所を高校生ぐらいの男の子が覗いた。


「ああ、小林君。今、ちょっと大切なお話をしているから」
「わかりました」


男の子は帰っていった。


「小林君? 小林君てさっきの子と同じ苗字?」
「ああ、助手の小林君ね。だんだん、元に戻ってきてるから。もうすぐ、大人になりますよ」


ユリコは唖然として、博士を見た。


「ホントにできちゃうのね?」
「そうですよ、だって君だってその気なんでしょう?」
「・・・どうしよう・・・」

「まあ、キレイにして待ってて。(笑う)極上の彼氏を作るから・・・」
「うん・・・」(ちょっと困った顔)
「じゃあ、また」
「ええ・・・」


ユリコは帰りかけて、振り返る。
  

「ねえ、保険は?」
「う~ん、というわけで、僕には保険はいらないから」
「そうねえ・・・自分でメンテナンスできちゃうもんねえ・・・」
「じゃあまた、お会いしましょう」

「ええ・・・どうも」


ユリコは、今出てきた研究所を振り返る。



本当に大丈夫なのかしら、あの人。
でも、極上な彼ね・・・・。ふ~ん・・・。

また、春が来るかな。
これって、夢を買ったって感じかな。

うそでも、楽しいわね。


ユリコはちょっと思い出し笑いをして、帰っていった。





それから、一週間経って、ユリコが喫茶店でコーヒーを飲みながら、履歴書を書いていると、携帯が鳴った。  

見ると、あの博士からだ。


「ご希望の品ができあがりました。つきましては、明日の午後5時、●●駅前の犬の銅像の前で、待ち合わせをしましょう。
彼は君の写真を見ています。
彼の記憶に君は愛すべき恋人だとインプットしてあります。
ではご健闘を祈ります。
何かあったら、僕までメールを送ってください」


ええ!
もうできちゃったの!

参った・・・。

まだ、なんの心の準備もできていないのに・・・。

それに・・・ホントだったなんて・・・。

明日ね。

  

ああ、もう!

履歴書を書く手が震えちゃう・・・。

どうしよう・・・。

でも、こっちは生活がかかってるんだから。

せっかく、デパートのパートの求人があったんだもの。

頑張らなくちゃ!


おっと博士にメール。


「ありがとうございます。まだ心の準備ができてないわ・・・。でも、頑張ります。明日を楽しみにしています。
追伸:保険の外交はやめちゃった。向いてないから。これから、デパートの面接に行きます」

送信。


返信。

「頑張ってください。君が紳士服売り場にいたら、絶対売れますよ」

まあ、博士ったら!

「頑張ります!」






翌日、ユリコは指定された待ち合わせの場所に行った。

もし、へんなやつだったら、博士にメールを送って、お引取り願おう。


ユリコが駅前の犬の銅像前に立っていると、背の高い男がやってきた。


「ユリコさん?」
「え?」

顔を見上げると・・・彼にそっくり・・・というより、もっといい男が立っていた。


少し違うかな・・・。
目は同じ感じだけど、ちょっと鼻が高くて、ちょっと唇がぶるぶるで、かなり背が高い・・・。

これって、あの博士のDNAで少し違っちゃったのかしら・・・。

でも、かなりいい男・・・。


「あのう・・・あなた、ハルオさん?」
「え、ああ、名前ねえ・・・」
「ハルオさんよ。私がハルって呼んでた人・・・。ハル・・・」

ハルはにっこり笑った。

「博士からあなたのところへ行けって。あなたは僕の運命の人だって・・・。ホントにそうですね・・・。キレイな方だ。一目であなただってわかりましたよ」
「そうお、ありがとう・・・」

「歩きますか?」
「ええ・・・」

「食事でもしましょうか?」

「ええ。あなたの頭の中ってどうなっているのかしら・・・」
「え?」

「だって、促成栽培で・・・あ、ごめん。記憶ってあるのかしら?」

ハルは笑った。

「あなたに恋していること・・・。他は、一般的な知識です。博士の知識を分けてもらいました」
「そう・・・。今は博士のところに住んでいるのね?」

「ええ、これからは時々、あなたのところへも通います」
「・・・」(ドキッとする)

「だって、それが恋人でしょ?」
「ええ、でも、そんな急に・・・」

「僕は急にあなたの恋人になりました。でも、幸せです。あなたもきっと幸せになるはずです・・・」

ハルがじっと見つめる。

「そうかしら」
「そうです・・・ご飯もいいですが、せっかくだから、二人だけになれる場所へ行きましょう。ユリコさんのおうちでもいいですよ」

「ねえ、ちょっと待って。まだ心の準備ができてないの。そんなすぐ会って、二人きりって・・・」
「でも、僕たちは運命の二人ですよ・・・僕にはあなたしか見えない・・・」

「困ったわ・・・。やっぱりどこかでお食事してから、考えましょう。ふ~」




レストランで、ユリコは途中、席を立った。

化粧室近くに行って、博士に電話を入れる。


「はい」
「あ、博士。たいへんなの」

「どうした? あの子はいい子だと思うけど」
「でも、これから、うちに行きたいみたいなの・・・困ったわ」

「それが君の希望でしょう?」
「でも、困っちゃうわ。性急すぎて・・・。だって、初めて会った人よ」

「彼は昔のあなたの彼氏のクローンですよ。だから、そんなこと、気にすることはないよ」
「そうかしら・・・。そうなの・・・? でもねえ・・・ドキドキしちゃうわ」

「楽しそうじゃない」
「え、まあ・・・。でも、博士。昔の彼とちょっと感じが違うの。なぜかしら」

「ああ、爪だけだったからねえ。復元に足りなかったから、僕のDNAをちょっと足しちゃったんだ。ごめんなさい。その分、彼氏に似ないところができちゃったかも・・・。少し真面目な感じに仕上がったと思うけど」

「そうなんだ・・・。それで・・・。でも、いいわ。すごくハンサムでやさしい感じだから。でも、昔の彼とはちょっと違うから、初めて会った人みたいでドキドキしちゃう・・・。それなのに、なんとなく懐かしい感じがするのは、やっぱり彼のクローンだからかしら・・・。前に会ったことがあるなって安心するものがあるから」

「そうか・・・う~ん、これは成功ではなかったね・・・。君がほしい彼を復元できなかったわけだから」
「でも、博士、いいわ。いい感じですもの・・・。いいわ。心を決めて、出かけます。あ、やだ、博士にこんなことまで言っちゃって」

「まあ、頑張って」(笑う)
「ええ、ありがとう。彼を待たせちゃいけないから。また電話しますね」


ユリコが化粧室で化粧を整え、席に戻ってきた。

ハルはにこやかに、ユリコを見つめた。


「お待たせ」
「いいですよ、ゆっくりでも。あなたのことを思いながら待ってました・・・」
「まあ・・・。ねえ、あなたの名前、ハルはやめるわ」
「どうして?」
「あなたには・・・ジュンのほうが合ってる。私から名前をプレゼントするわ」
「・・・」

「さあ、行きましょう」
「いいの?」
「ええ・・・私たち、恋人ですもの」
「そうだね」

ユリコは、ジュンと手をつないだ。ジュンがユリコを見て、にこっと笑った。



ジュンは、博士から軍資金を預かっていて、それで食事の費用をまかなった。

そして、二人は手をつないで、ユリコの住むアパートへと仲良く帰っていった。




続く・・・





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