BGMはこちらをクリックチョ・ソンモ「君がいないと・・・」 こんばんは^^BYJシアターです。またまた、お待たせしてしまいましたvvということで、本日は【隣のあいつ】第11~12章(最終回)へと一気に連載します!^^【配役】イ・ヨンサン :ぺ・ヨンジュン(大学4年~30歳。小説家・メガネなし・サングラスのみ・・同感2を参考に)ルル(キム・スヨン :チョン・ドヨン(大学4年~30歳。マンガ家・メガネあり)ではお楽しみください!~~~~~~~~~~~~【隣のあいつ】後編 完主演: ぺ・ヨンジュン チョン・ドヨン【第11章 別れのあとで】12月の初雪の日。スヨンは一人窓辺で雪を見ている。白い雪が静かに街を包んでいく。窓の近くは底冷えがして、スヨンは温かい紅茶を入れる。最後にヨンサンと電話で話した言葉を思い出す。ス:しばらく、友達でいよう。それが一番いいよ。ヨ:男と女になったら、もう友達には戻れないよ。オレは友達なんかいやだ。おまえはオレにとって、もっと大きな存在だったから。もう普通の女として見ることはできないよ。・・・さようなら、スヨン。もう会わないし、もう口もきかない。紅茶に砂糖とミルクを少し入れ、スプーンでかき混ぜる。紅茶がくるくると回る。なぜか胸がいっぱいになる。紅茶がただ揺れているだけだ。でも、スヨンの心にその揺れが大きく広がっていく。初雪を見る。もう堪えることができなかった。涙が出る。雪に心が解けて、事の重大さに気づく。絶対に手放してはいけない恋だった。あんな大切なものを、気の迷いで、私はいとも簡単に手放してしまった。ヨンサン・・・こんなに胸が痛くなるほど、愛しているのに。ヨンサンを手放してしまうなんて、私は、私はなんて大バカ者なんだ。あの人は最後の最後まで愛してくれていたのに。最後の最後まで、私に心を見せてくれていたではないか。人がどう思おうと、何があろうと、貫かなければいけなかった。私のつまらない、ちっぽけなプライドで一番大切なものを失ってしまった。子供だった、子供すぎたよ、私は。もっと自分とも、ヨンサンとも向かい合わなくちゃいけなかったのに!スヨンは泣いて泣いて、自分のしたことを悔やまずにはいられなかった。最近のヨンサンに、謎の美女は疑いを抱いている。なんか熱がない。おざなりな気がする。どうしてかしら。あの人は、いつもこっちを向いているわけじゃないけど、こんな風ではなかった。何かが違うわ。美:ヨンサン。ここ数ヵ月、少しおかしいわよ。仕事は順調なんでしょう? 最近、変よ。ヨ:そうかな・・・。確かに、ルルが引っ越してきてからの自分は変だ。それは十分わかっている。あいつが去ったあと、大学院で2年間を過ごし、その間はただひたすら文学のみに生きた。そして、卒業した年に新人賞をとって、やっと作家への道が開けた。あの時には、もうおまえはコミック界のスターだったよね。同じ出版社の創立記念パーティで、一度見かけたよな。あの時もおまえのほうが上だった。遠くから見て、声もかけずに終わった。長く別れていた。もう縁のない人間だった。今の彼女と、こうしていつものようにデートをしていても、ふっと心がどこかへ飛んでいってしまう。そう、スヨンを思い出してしまうのだ。長年かけて忘れたのに。いや、正しく言えば、うまく共存してたのに、だ。あいつは8年間の努力を一瞬にしてムダにしてしまった。あの入隊の日もそうだった。スヨンはあそこにいた。なぜだ?と思ったが、あいつの痛々しい哀しげな姿を見たら、そんな疑問さえ押しのけて、あいつがオレの心に入り込む。いつだって自分勝手に思いだけ押しつけてきて・・・。オレの気持ちを揺さぶって。でも、結局、オレもあいつが好きなんだ。忘れられないんだ。あいつを恨んだり、無視したり、拒否したりできない。本当のところ、あいつはどうしたいんだ。隣に住んで。オレは今、また恋人を失いかけてるよ、おまえのせいで。あの子だっていいやつなんだ。本当にすごくいいやつなんだよ。申し分ないはずなのに。なのに、おまえのせいで、いつも満足のいく恋ができない。心を埋め尽くすことができないんだ。代わりはいない。そうだよ、代わりなんていないんだよ。おまえはいったい何をしたいんだ? いったいオレのそばで何を?【第12章 隣のあいつ】徹夜明けで、朝からコンビニの買出しに出かけたルルは自分の不甲斐なさがいやになる。30にもなってこれだ。エレベーターが8階に止まり、ルルが降り、歩いていくと、ヨンサンの部屋から謎の美女が飛び出してくる。あまりの勢いでルルの正面に走って来るから、ルルはびっくりして、体を壁のほうにかわす。後から、朝だというのに黒いサングラスをかけた黒尽くめのヨンサンも飛び出してきて、ルルの前を通って女の後を追いかけていく。ルルは、彼のニオイにうっとりするが、バカだな。あいつのニオイはあんたのためじゃない。彼女のためだよ。あいつの輝きも皆、彼女のためだよ。彼女は急いで部屋のカギを開け、部屋に入り、ダイニングテーブルの上にコンビニの袋を置くと、のれんのように上から吊るさがったマンガの原稿の束を潜り抜け、床に散らかった原稿の間をヒョイヒョイと飛び越えて、ガラス戸を開け、ベランダから下を覗く。女に追いついたヨンサンが、女と向かい合って何か言い合いをしている。声は聞こえないが、何かもつれている様子だ。女は怒ったように地団駄を踏み、くるりと向きを変えて帰っていく。ヨンサンがポケットに両手を突っ込んでふてぶてしい感じで、マンションのほうへ戻ってくる。ルルはダイニングテーブルに戻り、座って、コンビニの袋からパンを取り出してがぶっと頬張ってみるが、とても喉を通らない。やっぱり、気になるよ。ハッとひらめいて、玄関のドアを少しだけ開け、エレベーターホールのほうを覗く。エレベーターのドアが開き、ヨンサンが出てくる。見つからないようにそっとドアを閉める。どうか、タイミングよく出られますように!いち、にの、さん! タイミングが見計らって、ルルは飛び出すが、早すぎて、ヨンサンはまだ2軒手前をゆっくり歩いている。出てしまったものは仕方がない。ルルは、玄関の外で、両腕を後ろに回して右足をブラブラさせながら、立っている。ヨンサンはルルを確認したが、憮然とした表情のまま通り過ぎようとしていた。ル:おはよ。今帰ったの?ヨンサン、バカじゃないのという顔をして、ヨ:おい、さっき会っただろ。おまえ、見てただろ。そういって、ルルを見る。ル:まあね。ねえ、お茶でもどう?ヨ:何で。何でおまえと?ル:いいじゃない。たまにはさ。ヨンサンは、いつものことだが、今日のルルのタイミングがあまりに最悪でちょっとイライラしているが、ヨ:しかたない。おまえの相手をするか。まあ入れよ。とさっさと自分の部屋のほうへ向かう。ル:いいの、そっちへ行って?ヨ:おまえの部屋、汚いだろ。ル:まあね。今朝、描き終えたばっかりだから。 部屋にマンガが散らかってんだ。ヨ:コンビニの袋でわかったよ。来いよ。あっ、あんな状況でもこいつはちゃんと見ている。ヨンサンはルルを従えて自分の部屋に入る。黒いサングラスを外して、コーヒーメーカーをセットする。ちょっとソファのあたりを片付ける。まったくルルなんか目に入ってない様子でどんどん部屋を片付けて、開けっ放しだった寝室のドアをパタンと閉める。あの中でなんかあったんだ・・・。ルルは、寝室の中を見てみたいけど、ヨンサンが、ヨ:すわれよ。とソファを勧めるから、覗くこともできなかった。ルルは、ソファの一番奥の端っこに腰掛けた。ヨ:おまえはいつも気軽でいいよな。男なんかいないのか。ルルは、ヨンサンの言葉があまりに図星でいやになる。ル:そんな、はっきり言わないでよ。ヨンサンがコーヒーを入れたマグカップを二つ持ってくる。ル:あんたはマメでいい男なのに。また振られたの?ヨ:人のことは構うなよ。おまえ、オレを監視してるの?ルルはムッとする。ル:あんた、バカじゃない。たまたま出会っちゃっただけでしょ。ヨンサン、ふんと笑って、ソファに深く沈みながら、ヨ:タバコ、吸うよ。ヨンサンが一言、断る。でもよく考えると、今のあんたには、話すことなんてなんにもない。私がここにいてもいいのかな。大丈夫なのかな。女に振られた後なのに。私はいい。うれしいよ。あんたのニオイがしてて、あんたを見られて。言葉なんかなくたって幸せだもん。ヨ:ああ。ヨンサンが深くため息をつく。私がいるなんて念頭にないみたい。今別れた女のことで頭がいっぱいなんだ。彼はソファに沈み込んで口を尖らせて、じっとしている。私はこのままでいいけれど、あんたの邪魔になるよね。ル:ごちそうさま。ルルが立ち上がる。ヨンサンは驚いて、初めてルルを見る。ヨ:もう帰るの? まだなんにも話してないだろ。・・・もう少し、ここにいろよ。・・・一人だとやりきれないからさ。なんか話せよ。おまえ、おしゃべりなんだから。ル:何を?ヨ:大学時代からおしゃべりだったじゃないか。なんか話せよ。ヨンサンの目はちっともルルなんか見てやしない。ずうっと遠くを見たままだ。ルルは、今回はこいつもこたえているのかなと思う。少しは元気づけるか。ル:んじゃあさ。最近のコミック業界における傾向とか、話しちゃう?ヨ:そんな面倒くさい話じゃなくてさ、おまえの身近な話をしろよ。頭、使わなくていいやつ。得意だったろ。ヨンサンがぶっきらぼうに言う。でも、恋にやぶれた男に何を話せてって言うのよ。ル:ねえ、あんたのつけてるオーデコロン、どこの?ヨンサンは、ルルが急にそんなことを言うから驚いてルルを見る。ヨ:なんで?ル:・・・いいニオイがするよ。ルルはヨンサンの顔が見られず、目をそらしながら、口を尖らせながら、言う。ル:私もつけたいからさ。女がつけてもいいニオイだよね。ヨンサンがちょっと笑う。そして、ルルをじっと見る。ヨ:隣の部屋で同じニオイか・・・。意味深だな。ルルは、ちょっと言葉に詰まるが、意地になって、ル:いいじゃない。昔からの友達なんだしさ。ニオイくらい分けてよ。あんたのいいニオイ。ヨンサンがルルを見つめる。ヨ:もっといろんなもの、分けてやったろ。・・・おまえがほしいのはニオイだけかよ。ルルが、ヨンサンを見る。ほしいものは、ほしいものはもっとあるよ。あんたのこと、好きだから。だから、だから、隣に住んじゃったんじゃない。わかってる?でも、ルルは言い出すことができない。だって、自分が振った男だから。彼は許してくれないかもしれない。ル:いいじゃない、教えなさいよ。私、そういうこと、ちっともわかんないから。おしゃれじゃないからさあ。いっつも、机に向かってることしか、私にはできないからさ。あんたみたいにかっこよく生きられないからさ。ヨ:どこがかっこいいよ?またぶっきらぼうに尋ねる。ル:だって、いい小説書いて売れっ子だし。私はあんたの小説、全部好きだよ。それにいい男だし。なんでも知ってて何やってもうまいしさ。ヨ:おまえだってそうだろ。超売れっ子マンガ家じゃないか。雑学はあるし、結構、頭もいいし。ルルは、なんだか自分が情けなくて伏し目がちだ。ル:でも・・・私はあんたみたいに器用じゃないから。あんたは外へ出ていけるけど。私はいっつも自分の部屋にいる・・・。ヨンサンはルルを見つめながら、やさしく言う。ヨ:オレの部屋には遊びに来るじゃないか。ル:それはね。あんたのとこはね。ここしかないからさ、行けるとこ。でもあんたの所は女がいるから、しょっちゅうは来られないし。ヨンサンが、ずうっとルルを見続けている。ヨ:おまえ、オレのこと、いい男とか言ってるけど、ちっとも好きじゃないだろ。バカ・・・。ル:そ、そんなことないよ。好きだよ。友達じゃない。大学時代から長いじゃない。こうやって一緒にいるじゃない。ヨンサンが黙ってまたタバコに火をつける。また、さっきの女のことを考えているの?あんた、何人女の子、変えたの? それでいいの? 幸せになれるの? ・・・それでもあんたが好きって気持ち、私っておかしい? バカだよね。でもしょうがないよね。 私はちっともかっこいい女じゃないし。オーデコロンも選べない。・・・ただあんたのニオイが好きなだけだよ。ヨンサンは黙ったままだ。ルルは彼の気持ちに付き合って、少し黙って見守っている。急にヨンサンが大きく深呼吸して、口を開いた。ヨ:おまえ、オレのこと、どう思ってた?ル:えっ?ルルはなんて答えたらいいか、わからない。ヨ:オレは・・・おまえが好きだったよ。おまえは忘れちゃったかもしれないけど。大学4年の夏のこと、今でもずっと覚えているよ。ルルは、胸が痛い。私だって覚えてる。忘れるはずがない。だってあれは初恋。あれが初めてだった。あんたはあの夏をくれた人。最高の夏をくれた人だもん。忘れられるはずがない・・・・。あんたは今でも私には最高の男なんだよ。ヨ:あの時が一番よかったな・・・。本当に好きで抱けた女だったよ、おまえは。・・・それが友達なんて言い出しちゃって・・・突然去っていったくせに、隣になんか引越してきやがって。いつもオレの気持ちをかき乱しておいて・・・。おまえは最低の女だよ。ルルは、胸が苦しい。そんな風に思ってたの? ちっともゴージャスじゃないよ。こんな私だよ。化粧もうまくできないし、メガネもかけてるし。部屋の中は原稿だらけだし。いいニオイもつけられない女だよ。ヨンサンがルルに言う。ヨ:おまえもなんか言えよ。オレは言ったぞ。なんか言えよ。本当におまえは最低だよ。・・・いつまでオレのそばにいるんだよ。その気がないなら、とっととどっか他に行けよ。なんで隣になんかにいるんだよ。ル:ヨンサン、・・・私。ヨ:ルルなんてバカみたいなペンネームつけて隣になんかいるなよ。・・・いいかげんに忘れさせてくれよ。おまえがいると、先に進めないんだよ。ヨンサンは真剣な眼差しでルルを見る。ヨ:言えよ、おまえの気持ち。言えよ。・・・オレはおまえが好きだったって言ったんだぞ。おまえを抱いた時が一番幸せだったって。忘れられなかったって言ったんだぞ。なんかあるなら言えよ。ルルは、泣きそうになる。ル:怒らないでよ。私は、私は(胸が詰まってしまう)、あんたが好きだよ。あんたが・・・今でも好きなんだよ。あんたしかいないんだ、本当に好きになれる人。本当に心が許せる人。・・・本当に抱かれてもいい人。私は、一番大切なものを簡単に手放しちゃったんだよ。バカだった(涙が止まらない)・・・子供だったよ。大切な時に、ちゃんとあんたと向かい合えなかった。自分とも向かい合わなかった。・・・でもあんたは、私にはもったいないでしょ。キラキラしてるもん・・・。本当はね・・・隣なんかじゃなくて、一緒に住みたいよ・・・。同じオーデコロンつけるんじゃなくて、あんたからニオイを移してほしい。・・・でもあんたは高嶺の花だもん。ルルは涙だけでなく鼻水を流しながら、ヨンサンに告白する。ヨンサンは黙ってティッシュを渡す。ヨ:・・・オレにはおまえが高嶺の花だった・・・。才能があって、自分があって。オレを残して自分の道をさっさと歩いていっちゃって。ヨンサンがルルをやさしく見つめて、ヨ:ここへ来ればいいよ。隣じゃなくて。一緒にいろよ。ルルは驚いてヨンサンを見つめる。ヨ:たまには隣にすわれよ。そんなに離れてないで。ルルは言われるままに、ヨンサンの隣に座る。ヨンサンがすっとルルの肩を抱く。ルルのメガネを外す。ヨ:こんなにかわいいのに・・・。おまえっておかしなやつだよ。ヨンサンがルルをもっと引き寄せて、ルルのあごをちょっとあげ、キスをする。ルルはヨンサンにつかまるように彼のシャツをぐっと握り締めた。ああ、これだ。私が待ってたやつ。こいつのキス・・・気が遠くなるようなこいつのキス。ヨンサンがやさしくルルを見つめ直す。そして、笑いながら、ヨ:だけど、仕事場は隣にしろよ。あんなに散らかされたら、たまらないよ。ルルがうっとりした目でうなずいて、彼の首に腕を巻きつける。ヨンサンが微笑み、やさしく抱きしめてルルの背中をトントンとたたく。暖かい朝の日差しの中、二人はしばらくぶりに恋人に戻っていった。ヨンサンの寝室はキレイなままだった。あの日は使われていなかった。きっと、長い長い夜をあの二人はソファで過ごしたのだろう。今、ヨンサンの下に私がいる。あの時と同じだ。あの時も朝だった。白いカーテンから漏れる朝の光で、ヨンサンの顔がよく見える。この人には朝の光りが合っているのかもしれない。ルルは笑顔を作ろうとするが、なぜか涙がこぼれて仕方がない。でも、ヨンサンの目にも光ったものが見えたよ。もう放さない。絶対放さないよ。だってこれは一生の恋だもん。あんたの代わりなんて、どこにもいない。朝日の漏れる寝室の片隅に、白いスヨンのテーブルが存在感を持って輝いている。【エピローグ】ソウルでも一流のホテル。二人で初めて出席するヨンサンの出版パーティ。ヨンサンはいつものようにダークなスーツでスタイリッシュだが、今回のルルは、ちょっとおしゃれで、ヨンサンが選んでくれたロングドレスを着ている。ピンクベージュの薄手の生地が何層にも重なっていて、ところどころにみごとな刺繍がなされている。色味がルルの肌によく映り、薄手の生地が体の線をキレイに見せている。胸のくりが大きく開いていて、ちょっとセクシーである。髪は少しウエーブをきかせ、メイクもミー姉さんの知り合いのメイクさんがやってくれた。二人にとっては、自分たちがペアであることを、世間に知らしめる会であり、実質的なお披露目である。ルルはドレスを選ぶ時、「でも胸開きすぎじゃない?」と心配したが、ヨンサンが「おまえは子供かよ」と一言言ったので、これに決めてしまった。そういう意味では、ヨンサンは、いいものはいい、特に自分の女だから隠そうとか、そういうふうには拘らない性質のようで、ルルは、そんな所にもヨンサンのよさがあるとまた好きになった。先に行われたお披露目の記念写真ではにこやかだったルルが一旦、控え室に入ると、目が痛いと言い出した。ル:コンタクトがずれちゃったみたい。ヨ:直せば。ル:わかんないのよ。痛い・・・ヨ:メガネで来てもよかったのに。ル:いじわる!(鏡で真剣にコンタクトを探す)ヨンサンも薄い色合いのサングラスを外して、一緒に目の中を覗き込み、やっとコンタクトがちゃんとした位置に戻る。ルルはまた、キレイなルルに戻った。でも、隣で、ヨンサンが鼻のところに手を当てて、笑っている。ル:何よ。人が痛がっているのに、笑ったりして、やな感じ。ヨ:おまえって・・・本当にドジで・・・(ルルの顔を覗き込んで)かわいい。飽きないよ。ルルはちょっと鼻にしわを寄せて笑ってヨンサンを見る。ヨンサンは笑顔で、かわいいルルを見つめ返す。係りの人が控え室を覗いた。係:そろそろ会場にお入りください。ヨンサンは左腕で、輪を作り、ルルがそこに腕を通す。ルルは左手に大きなカサブランカの花を3輪無造作に持って、二人は美しい笑顔で、新郎新婦のように、颯爽と会場に向かって歩いていった。THE ENDヨンサンとルルの長い長い恋の物語でした。その時は気づかなくても後でわかる大切な恋。交通事故も記憶喪失もものすごい事件もありませんが、そんなアクシデントにあわなくても人はほんの些細なことから迷ったり見失ったりすることがあるのではないでしょうか。そして、また発見することも。ではまた、BYJシアターでお会いしましょう^^次回は、今までの登場人物のその後を、オムニバスでお届けします~^^もちろん、ペアになった二人だけです^^
BGMはこちらをクリックチョ・ソンモ「君がいないと・・・」 こんばんは^^BYJシアターです。お待たせしてしまいましたvv本日は【隣のあいつ】第10章です^^【配役】イ・ヨンサン :ぺ・ヨンジュン(大学4年~30歳。小説家・メガネなし・サングラスのみ・・同感2を参考に)ルル(キム・スヨン :チョン・ドヨン(大学4年~30歳。マンガ家・メガネあり)ではお楽しみください!~~~~~~~~~~~~【隣のあいつ】後編2主演: ぺ・ヨンジュン チョン・ドヨン【第10章 不確かな思い】大学の構内。ヨンサンとの待ち合わせの前に化粧室に入ったスヨンは、後から入ってきた数人の女の子たちの話し声を聞く。女1:ねえ。あのイ・ヨンサン。今、牛乳瓶と付き合ってるの、知ってる?女2:キム・スヨンでしょ。笑っちゃうよね。どうしちゃったのかな。ゴージャス好みじゃなかった?女3:夏休み前にさ、ミス・キャンパスに振られたって噂あったでしょう。あれで、頭がへんになっちゃったんじゃない。女1・2:やだあ。笑い声がする。女3:でも、よりによって、ねえ。女1:一番ブス、選んじゃうなんて。女2:どこがよかったのかな。不思議。あんな子。とにかく、極端すぎるよね。笑い声。彼女たちが去り、やっとトイレから出てきて、手を洗いながら、洗面台の鏡を覗く。今朝までかかっていた魔法がサッと解けたように、あのかわいいはずのスヨンはそこにはおらず、なぜかちょっと貧相なスヨンがいる。私とヨンサンではへん? 合わない? そんなことないよ。だってこんなに幸せだよ。でもなぜか萎んでいく気持ちがある。待ち合わせの文学部前のベンチで、ヨンサンが本を読んでいる。遠くから見ても、その姿はとてもキレイで、絵になっている。いつもなら飛んでいくスヨンだが、なぜか気後れして、ゆっくりヨンサンに近づく。ヨンサンが顔を上げて微笑むが、スヨンの様子がおかしい。ヨ:どうしたの? なんかあったの?ス:・・・・(黙ったまま、ベンチに座り、ヨンサンの顔を見る)ヨ:・・・・。ス:私たちっておかしい? 私じゃヨンサンに合わない?ヨ:なんで?ス:・・・・。ヨ:どうした?ス:皆が噂してる。変だって。ヨ:気にするの?ス:・・・・ヨンサンがミス・キャンパスに振られたから、へんになったって。牛乳瓶と付き合うなんて。おかしくなったって。ヨ:・・・。ス:そう? そうなの?ヨ:スヨン、人の言うことなんか関係ないだろ。自分を信じろよ。オレを信じて。・・・ミス・キャンパスなんて関係ないよ。ただ頭の悪い女はキライだ。それだけだよ。スヨンがヨンサンを見る。本当に私でいいのかな。本当に、私みたいのがタイプ? もっとゴージャスな人のほうがよかったの?何か急に現実に引き戻された様な気分になった。ヨンサンに出会うまで、私はみにくいアヒルの子だった。それがヨンサンに出会って、世界一幸せになったけど、それは魔法だったのかな。でもヨンサンは現実だよね。こうして向かい合っているもん。ヨンサンと二人の世界にいた時には気づかなかったこと。二人きりだったこの夏は私は、最高に幸せな王女様だった。そうだったのに・・・。その日の出来事は、スヨンの心に小さなシミを残した。12月に入ってから、コミック新人発掘大賞の授賞式があり、スヨンは一躍有名人となった。いよいよ連載物が描けるのだ。学校と仕事。卒業式までの3ヵ月間。なんとか頑張るつもりだ。ヨンサンも応援してくれている。でも、今まであんなに素直に思いをぶつけていた自分が最近、ヨンサンに対して仰々しい態度をとっているのがわかる。いつも待たせているのは私のほうだ。ヨンサンに会ってもせわしなく、本当は仕事をしたいのにここにいるのよっていう気持ちになる。彼の部屋に行くのも億劫になってきた。なんでかな。いつもヨンサンに対して、約束が守れなくて、ごめんねと言っている。そのためか、なぜか、素直に甘えられなくなっている。この間もヨンサンがキスしようとしたとき、顔をはずした自分がいた。なぜかな。ヨンサンと一緒に本屋に行った帰り道。ヨ:スヨン、おまえ、最近おかしいよ。どうしたの?ス:えっ?ヨ:心ここにあらずって感じがする。なんかわからないけど、変わった。ス:そんな事言われても・・・。ヨンサンへの思いは変わらないよ。ヨ:・・・。ス:なんでそんなこと言うのよ。ヨ:(スヨンの顔を覗き込んで)オレのこと、面倒って思ってない?ス:・・・?ヨ:面倒くさいって思ってない? 最近のおまえは話さなくなったよ。前みたいに。ス:忙しくなったからだよ。ヨ:・・・・(スヨンを見る)ス:学校と仕事の二つになって忙しくなったからだよ。ヨ:スヨン、相手に対して、面倒くさいとか、時間がないとか、そんなこと思い出したら、もう先が見えてるよ。ス:ヨンサン。ヨ:オレが重荷? 面倒? 邪魔? そう?ス:ううん。(・・・でもそうかもしれない)スヨンはアパートに戻り、自分の気持ちがわからなくなった。ヨンサンをどう思っているのか。もう愛していないのか。そんな・・・。ついこの間まで中毒のように夢中だったじゃないか。その人を重荷に思うなんて。いったいどうしちゃったんだ。女の子たちが噂してたから? コミックで大賞を取ったから?・・・どれも答えになってない。でもどんどんヨンサンへの気持ちが薄れていくのがわかる。これっていったい何?自分の気持ちがつかめずに、ただ今はヨンサンよりも自分自身のことで精一杯で、なにも周りが見えないスヨンだった。12月半ば過ぎ。ヨンサンと待ち合わせた文学部前のベンチ。遠くからヨンサンを見る。でも、歩いていくことができない。あんなにキラキラしている彼を、なんでこんなふうに疎ましく思うのか。しばらくヨンサンを見つめ、スヨンは裏門から一人帰っていった。ヨンサンは一人、時計を見て、またベンチで本を読み続けている。ヨンサンとも別れた創作ゼミの教室では、スヨンとヨンサン、そしてインジュンが楕円テーブルの中に二等辺三角形の頂点を描くように、お互いが決して交わることはなかった。ただ淡々と授業は進み、彼らはそれぞれに帰っていった・・・。【第11章】へ続く・・・・
BGMはこちらをクリックチョ・ソンモ「君がいないと・・・」 こんばんは^^BYJシアターです。お待たせしてしまいましたvv本日は【隣のあいつ】第9章です^^【配役】イ・ヨンサン :ぺ・ヨンジュン(大学4年~30歳。小説家・メガネなし・サングラスのみ・・同感2を参考に)ルル(キム・スヨン :チョン・ドヨン(大学4年~30歳。マンガ家・メガネあり)ではお楽しみください!~~~~~~~~~~~~【隣のあいつ】後編1主演: ぺ・ヨンジュン チョン・ドヨン【第9章 夏が終わる】4年生の夏が終わろうとしている。ヨンサンのケガもあって、スヨンは8月後半は、ヨンサンとほとんど毎日一緒に過ごした。ヨンサンの腰も回復して、スヨンも一安心だ。一緒にいて、ヨンサンは暮らしやすい人だった。とにかく生活がキチンとしているのだ。15歳の時から父親を助けて、掃除、洗濯、料理をしてきたので、親に甘えてきたスヨンよりずっと大人で仕事の段取りがよかった。スヨンにとってのヨンサンは愛やキスを教えてくれただけでなく、生活の師匠でもあった。スヨンは何事にも没頭しやすいたちだったから、自分のことをやり出すと、多少部屋の中が汚れていても気にせず過ごしてきてしまったが、ヨンサンを見ていると、生活の中のちょっとした動きで、部屋が美しく保てることがわかった。スヨンの部屋へ遊びにきたヨンサンは、部屋に上がるとき、玄関先の絵の額が曲がっていることも見逃さなかった。別にスヨンに言うわけでもなく、そこを通り過ぎるとき、すっと手で直していくのだ。なにげなく、ゴミを拾う。なにげなく、通りかかったときに修正する。これは、ヨンサンがスヨンに言葉ではなく、教えてくれたことだ。スヨンには、ヨンサンが両親と同じくらい、いやもっと身内のように思われて、彼に対してはいつも素直に、ストレートに気持ちを表していた。それがヨンサンにとっては魅力的で、そしてそれは、ヨンサンの心の澱(おり)や、時々彼の心に落ちてくる影を払拭してくれる力さえ、持っていた。ヨンサンには、人からはわかりにくい微妙な繊細さがあり、それが時に鋭角的な物言いをさせたりしたが、スヨンのヨンサンへのストレートな表現やストレートな愛が、ヨンサンの持つ鋭角的な角をやさしく溶かし、心を満たしていた。この夏の出来事としては、ヨンサンとの出会いが最高のものだったが、もうひとつ、長年の友人を失うという事件もあった。恋とか結婚とか、まったくスヨンには縁のないはずのことがいっぺんに押し寄せた夏。インジュンという友達をバッサリ切り捨てるという苦い思い出まで作ってしまった。腰を強く打撲したヨンサンのために、彼の家に泊まりこむための着替えをとりに帰ったときだった。電話が鳴り、相手はインジュンだった。デパートや本屋が並ぶ目抜き通りの広場のベンチで二人は待ち合わせをした。インジュンはヨンサンの話はせず、前回のプロポーズの返事がほしかったようだった。スヨンにとっては終わったことだったが、彼はまだ諦めていなかった。ス:もう断ったはずでしょ。それ以上の返事なんて出てこないよ。私はあんたに言ったよ。私はあんたに向いてないって。だから、この話は終わりにして。イ:(とうとう)ヨンサンのせいなのか。君が断る理由は。スヨンはとうとうきたと思った。そうじゃない。でも今はそう。スヨンは、最後にこれを言って別れようと立ち上がった。ス:インジュン。話を混同させないで。男のことじゃなくても女はプロポーズを断るのよ。あんたとではだめなの。イ:ヨンサンと何かあったのか。あいつと君が一緒のところを何度も見たやつらがいるんだ。目を覚ませよ、スヨン。あいつは、あいつは・・・。ス:インジュン。あんた、あいつの何を知ってるの? なんにも知らないじゃない。私のことだって、なんにも知らないじゃない。あんたが思うほど、ひどいやつじゃないよ。イ:スヨン!なんで、なんで君はわからないの?インジュンがスヨンの両肩をぎゅっと掴んでスヨンの体を揺らす。インジュンの目がギラギラ光った。イ:君を渡さない。あいつになんか、君を渡さない。ス:放して。放してよ。(スヨンがもがく)周りの人が驚いて二人を見るので、インジュンははっと我に返り、手を放した。スヨンはインジュンを見つめ、ス:ヨンサンにもこうやって、暴力を振るったの? あの人はなんにも悪くないのに。殴るなら、私でしょう?イ:君は殴れないよ。あいつが、あいつが君を誘惑するから・・・。ス:インジュン。・・・・私があんたに引導を渡してあげる。もう私なんか好きなんていえないように。インジュンは訳がわからず、スヨンを見つめる。スヨンは、こみ上げてくる思いを吹っ切って、真昼間、目抜き通りの真ん中で、インジュンの左ほおを力いっぱい平手打ちする。インジュンが揺れた。ス:あんたはなんにもわかってない。あんたはなんにもわかってないのよ。ヨンサンのことも私のことも。自分のことも。私が友達を失う寂しさも。これで終わり。これがお返し!そういうと、赤く腫れ上がった右手の痛みを押さえながら、さっときびすを返すと彼の前から去っていく。彼は左ほおを押さえながら、呆然として、スヨンを見送った。インジュンの嫉妬。そして執着。それも今ならわかる。私はなにげなく付き合っていたが、インジュンにとっての3年半という月日はきっととても重いものだったにちがいない。今、ヨンサンに恋をして、その月日の持つ重みも意味もわかる。スヨンはインジュンを決定的に振った。そして、自分自身も返り血を浴びた。力いっぱい、平手打ちしたことで、スヨンは一週間も手が腫れて、ペンを持つことができなかった。その夜、着替えを持ってヨンサンのアパートへ行ったスヨンを、驚きの目でヨンサンは見つめ、ヨ:何があったの?ス:転んで手をついた。と言ったけど、あいつにはきっとわかっていた。いつもなら、もっと気をつけて歩けよというはずなのに、何も言わず、手を氷で冷やし、シップをしてくれた。ヨンサンの腰が良くなるまで、二人は家の中で過ごした。宿題のレポートを協力し合って書いたり、自分たちの書きたいものをそれぞれに陣地を作って書いた。スヨンはマンガなので、机が陣地で、ヨンサンはベッドに座ったり寝そべったりしたりして、大学院の入試に向けて英語の勉強をしたり、小説を書いた。穏やかで楽しい時間。二人でいるだけで何もなくても、特に話しをしなくても、それだけで幸せなだった。9月になると、2学期が始まり、ヨンサンやスヨンも大学へ戻っていったが、今までと違っていたことは、いつも二人仲良く構内を歩いていることだ。二人は他人の目など、気にせず、自分たちの恋を謳歌していた。ヨンサンは9月、10月としばらく勉強に明け暮れたが、11月の大学院の試験をみごとにパスした。同じく11月の末には、スヨンはコミック誌の新人発掘大賞に選ばれ、いよいよ念願だったマンガ家デビューを果たすことになった。二人でスクラムを組めば、恐いものなど何もないはず、だった。【第10章】へ続く・・・
BGMはこちらをクリックチョ・ソンモ「君がいないと・・・」 こんばんは^^BYJシアターです。本日は【隣のあいつ】とうとう後編、第8章です^^【配役】イ・ヨンサン :ぺ・ヨンジュン(大学4年~30歳。小説家・メガネなし・サングラスのみ・・同感2を参考に)ルル(キム・スヨン :チョン・ドヨン(大学4年~30歳。マンガ家・メガネあり)注)ポートフォリオ・・・絵や写真などの作品や書類を整理していれておく厚い紙製のファイル ではお楽しみください!~~~~~~~~~~~~【隣のあいつ】後編1主演: ぺ・ヨンジュン チョン・ドヨン【第8章 忘れえぬ人】サングラスをかけたヨンサンが高速道路を走っている。車のラジオを入れると、懐かしい曲が流れてくる。あの夏、海の帰りにスヨンと一緒に聴いた曲だ。ボリュームを大きくする。ヨンサンが助手席を見ると、大学生のスヨンがいる。ノリノリでめちゃくちゃ英語でラジオにあわせて歌っている。おまけに手で振りまでつけている。ヨ:おまえ、よく恥ずかしくないな。ス:だって楽しいじゃない。聞いてるの、ヨンサンだけだし。ヨンサンが「チ!」と舌打ちして笑う。窓を全開にした中古自動車。風がスヨンの髪をなでていく。スヨンの前髪は切りすぎで短くなっているが、それがまたかわいい感じだ。ヨンサンはランニング姿で運転している。スヨンはヨンサンの半そでシャツを着込んではいるが、下はバスタオルを巻いているだけだ。後部座席にはスヨンのスカート部分が濡れた白のワンピースが干してある。ヨ:(笑いながら)こんな日に、なんかの検問があったら、やだよな。ス:(ちょっと睨んで)強く押したのはヨンサンだからね。だから転んじゃったんだよ。こんな格好、最低!そう言いながらも笑って、めちゃくちゃ英語で歌っている。現在のサングラスのヨンサンがあの時のことを思い出して、微笑む。思い出の曲にのせて、海に行った日のことを思う。8月の初め。海へ行こうと、ヨンサンが友達から古い中古の車を借りてきた。冷房が効かないのには驚いたが、それはそれで楽しくて窓を全開にして走った。狭い車の中で水着に着替え、二人は手をつないで海の中へ入っていく。戯れる二人。スヨンはメガネをかけず、生き生きと美しい姿をしている。ヨンサンが魚のようにドンドン泳いでいく。海辺で仲良く寝転ぶ。二人、太陽に手をかざして楽しそうに話す。海の家の横にある水道でスヨンが髪を洗う。ヨンサンが左手でホースを持って、右手で洗うのを手伝っている。帰り支度をして、服を着た二人が波打ち際を歩く。スヨンが貝殻を拾う。どれがいい?とヨンサンに差し出して微笑んだ。波打ち際で、じゃれ合って、スヨンがヨンサンの背中を押した。お返しにヨンサンがスヨンを押したところに波が来て、足をすくわれ転ぶスヨン。白いワンピースが腰から下がビショビショになり、ヨンサンに抱き起こされる。呆然とするスヨン。車の横で、ヨンサンが見張り、バスタオルで隠す中、腰にバスタオルを巻きつけ、ヨンサンのシャツを着て隠れるように車に乗り込むスヨン。サングラスのヨンサンは甘酸っぱい気持ちになる。そして、頭の中にあのスヨンの夏がドンドンよみがえった。坂道を下っていく二人の後ろ姿。坂を下りきると正面に大きな建物がある。右を見て左を見て途方にくれるヨンサン。隣で笑い出すスヨン。スヨンのアパートの前庭で、肩にエプロンをかけてイスに座ったスヨンが前髪を触りながら、ヨンサンに文句を言っている。ヨンサンの番には、ちょっと恐そうな顔をして、ハサミをチョキチョキ動かし、脅しをかけるスヨンがいる。手をつないだまま、本屋に入り、本を立ち読みする二人。スヨンは右手で楽勝だが、ヨンサンは左手で不器用に本をめくる。ヨンサンが横目で見ると、にんまり笑うスヨンがいる。ヨンサンの部屋で冷たいシャワーにあたる裸の二人。初めは笑いあっているが、我慢できずに震えだしたスヨンに驚いて、慌ててお湯に切り替えるヨンサン。ヨンサンが青ざめたスヨンを心配して顔を覗き込み、抱き合って熱いシャワーを浴びたあの日。思い出の洪水の中を、ヨンサンの車が西日に照らされながら、街へ入っていく。「ルルのファンタスティック・トリップ」というイラスト集を出すからと、午後一番に、ミー姉さんがはりきってルルのところへやってきた。ミ:とにかく、読者からの声がすごくてさ。今朝の企画会議、通っちゃったのよ。やっぱり読者は見てるわよ。ルルはマンガというより、ものすごく繊細で力強い絵がかけるでしょう。あの「入魂」って感じがいいのよね、ファンには。あれがたまらないのよね。いままで、グラビアに載せたイラストのほかに、若い頃のものでもいいものがあれば載せたいし。この本用に書き下ろしもしてほしいの。全ページ、カラーなんて、すごいことよ。ル:姉さん、ありがとう。姉さんのおかげだよ。うれしい。今までの集大成だね。古いのもあるよ。すごく気に入った作品は捨てずに全部とってあるんだ。机の左横のポートフォリオに入ってる。ルルはキッチンへ行って、コーヒーか紅茶を入れようとするが、あいにく両方とも切らしている。キッチンからミー姉さんに声をかける。ル:姉さん、ちょっと見てて。コーヒーが切れてんだ。買ってくるよ。それにケーキなんかも買っちゃおうかな。おごるから。ミ:(仕事部屋から)サンキュ! わかった。探してみるわ。ルルは財布の入ったポシェットを提げて出ていく。ミー姉さんはいくつもあるポートフォリオを出して見ている。一つのポートフォリオの表紙に何か書かれている。整ったキレイな字で、レイアウトもなかなかいい感じだ。「愛するスヨンに捧ぐ」君が大きな夢を持って進んでいくことを僕は誇りに思っています。君がいつも心に抱いていること、僕がいつも頭に思い描いていること、それらを共有できたら、僕たちは最強のチームになれるね。君の夢を応援します。君の頑張る姿は僕を応援してくれる。大きな力を僕にくれます。いつも前向きで一生懸命な君が大好きです。ここに君が思い描いた夢をたくさん詰め込んでください。いつまでも僕たちの心が一つでありますように。僕たちは二人で一人です。一つの心臓を共有しています。いつもお互いを励まして、一緒に歩いていこう。199○年 夏。 イ・ヨンサンミー姉さんはこれを読んですっかり力が抜けてしまった。ルルが信じているイ・ヨンサンがここにいる。本当にイ・ヨンサンとルル、そう、スヨンは恋人だったのだ。そして、ミー姉さんたちの知らない素直なイ・ヨンサンがそこにいた。ルルが帰ってきた。ミー姉さんは慌てて、どうしたらいいかわからず、その辺の本を手にした。ル:あったあ?ミ:あっ、ごめん。違うもの見てて、探してなかった。ル:なあんだ。この辺にあるんだよ。そういって例のポートフォリオを選び出し、表紙が見えないように持つ。ミー姉さんを見て、ル:あったよ。中味、机のうえに並べてみるね。大学時代からのやつだけど。・・・姉さん、目が赤い? 泣いた? 泣くような本、あったっけ。ルルは表紙を上手に隠し、絵を取り出している。第9章に続く・・・二人の思い出は、それぞれの心の中にしっかりと残っている・・・。そして・・・ではまた~~^^
BGMはこちらをクリックチョ・ソンモ「君がいないと・・・」 こんばんは^^BYJシアターです。本日は【隣のあいつ】第7章です^^【配役】イ・ヨンサン :ぺ・ヨンジュン(大学4年~30歳。小説家・メガネなし・サングラスのみ・・同感2を参考に)ルル(キム・スヨン):チョン・ドヨン(大学4年~30歳。マンガ家・メガネあり)ではお楽しみください!~~~~~~~~~~~~~【隣のあいつ】 中編3主演: ぺ・ヨンジュン チョン・ドヨン【第7章 思い出づくり】二人の夏の第一日目。あいつは汚れてもいい服装で来いと言った。スヨンは濃い色のTシャツにジーンズをはき、ヨンサンのアパートへ向かう。ヨンサンがアパートの前で待っていた。ヨンサンの顔を見ると、うれしさと恥ずかしさで、胸が弾けそうだ。ス:(息せき切って走って近づき)まだ時間になってないよね。(腕時計で確認する)ヨ:うん。二人の夏の第一弾。このちゃぶ台をペイントする。ス:えっ?ヨ:もう、ボロいだろ。ペンキを塗ってキレイにする。ス:(ちゃぶ台を見て、少し考えて)私にペイントさせて。トールペイントしてあげる。私、絵は上手なんだよ。美大か文学部か迷ったくらいなんだから。マンガみたいじゃなくて、芸術的に仕上げる!スヨンは自信満々で応える。ヨ:よし。じゃあ、オレはそのための下準備をする。サンドペーパーをかけたりとか・・・。ス:うん。・・・あっ、うちへ持ってきて。うちの方でやろうよ。トールの道具もあるから。途中でサンドペーパーやペンキを買いながら。ね。そうしよう。ヨ:よし、そうしよう。ヨンサンの自転車の買い物かごにスヨンのバッグを入れ、後ろには、スヨンがちゃぶ台を背中にひもでくくりつけて乗っている。初め、重くてよれよれするが、一生懸命にこぐ。後ろでスヨンが恐がって、悲鳴を上げているが、幸せそうだ。へんな格好の二人乗りだが、幸せいっぱいで走っていく。スヨンのアパートの前庭で、二人はちゃぶ台にサンドペーパーをかけている。スヨンが何か思いついて、ス:ねえ、部屋に来て。とヨンサンを引っ張った。二人で、スヨンの部屋に入るが、部屋に似つかないベッドを発見してヨンサンが驚いた。ヨ:おい、このベッドなに? こんなに大きいのに一人で寝てるの? セミダブル、いやそれより大きい感じだ。他の家具はまったく平凡な机や本棚やタンスなのに、これだけは、金色のパイプでできた、やたらデコラティブな、ちょっと卑猥な感じさえするベッドである。ス:うん。リサイクルショップに買いに行ったら、これが一番安かったんだ。売れ残りだよ。でも、寝やすくて気に入ってるんだ。ヨンサンはニッコリした。ヨ:ふ~ん。いいねえ、これ。ちょっといやらしくてさ。・・・楽しみだね。そういって横目でスヨンの顔を見るから、スヨンは体が熱くなって、しどろもどろになる。スヨンはまだうぶだから、こういう会話をすると、ヨンサンにはかなわない。それにヨンサンの言葉で体のあちこちが反応してしまうのだ。こいつもそうなのかな・・・?ヨ:まずは今日の仕事を片付けよう。ス:うん!スヨンは気分を変えて、机の脇から、四つ切サイズの入るポートフォリオを一つ取り出す。ス:ヨンサンに、仕事あげる。これにカラーのグラビアに載るみたいな作品を入れていくつもり。だから、ヨンサンは表紙に言葉を書いて! う~ん、「愛するスヨンに捧ぐ・・なんたらかんたら」って。心を込めなくちゃだめよ。真剣にやんないと。ヨ:(笑って)なんたらかんたらね。ス:このペン立てのペン、どれでも使っていいから。ヨ:(真面目な顔をして)う~ん、結構、気合いがいるな。ス:ちゃぶ台だってそうだよ。真剣勝負だよ。二人は笑った。初日から、結構ハードな取り組みだった。ヨンサンの部屋に置く、いや飾る、初めてのスヨンの作品。彼のイメージを考える。長く愛用できるものに・・・。スヨンはアパートの前庭でちゃぶ台の前に座り込み、真剣に構想を練る。ヨンサンは、スヨンのベッドの奥のほうに座り、壁に寄りかかって、スヨンに贈る言葉を考えている。スヨンと自分はいつまで続くのだろう。スヨンは記念にとっておくのかな。・・・先のことはいい。まずは、今、自分が愛するスヨンに贈る言葉を考えよう。スヨンがマンガ家として大成できるように励ます言葉。お互いに重い仕事に着手する。午後いっぱいかかり、それぞれの仕事を終えた。二人はアパートの前庭に立った。ス:どう、気に入った? ヨンサンのイメージに合わせたよ。真ん中はなんか置いてもいいように空けてあるよ。白く塗られた下地に輪のように描かれた植物画。とても清楚でありながら、力強い。まるでそこにスヨンが存在するかのように生き生きとしている。スヨンの観察力とデッサンの確かさがわかる。ヨ:すごいな。気に入ったよ。スヨン。ありがとう。ヨンサンがポートフォリオを渡す。そこに書かれたヨンサンの言葉。とてもやさしく心に沁みる。そして、彼の美しい文字。こういう字を書く人だったんだ。そして、掃除の行き届いた部屋だった。普段はぶっきらぼうなイメージだが、やはりこの人は繊細な人なんだ。ス:(ちょっと涙ぐむが)すごくステキ。ずっと使う。有名作家になってもずっと使うよ。(目をキラキラさせて言う)ヨンサン、うれしい。ありがとう。二人のプロジェクト・ワンは終わった。そして、明日もまた新しいことをしよう。スヨンのベッドに寝転びながら、ヨ:今度、料理も一緒に作ろう。ス:下手なんだ、私・・・。ヨ:教えてやるよ。海も行くし。もっとやりたいことある?ス:う~ん、あっ、自転車! 私、乗れないんだ。ヨ:よし。じゃあ、明日は自転車の特訓。オレので練習しよう。ス:うん。ヨ:それから、水風呂大会もおもしろいな。どれだけ水につかっていられるか、競う。ス:ハハハハ。カゼひくよ。じゃあ、お互いの髪を散髪する。キレイに仕上げなくちゃだめだよ。ヨ:それから・・・。どこまでもずうっとまっすぐに歩く。普段は行かないところまでドンドンまっすぐ歩き続けてみる。ス:まっすぐ? 建物があっても? アハハハ。(笑う)それから、本屋めぐり。二人で手をつないだまま、本屋で本を見る。絶対放しちゃいけないんだよ。ヨ:それは右手が自由なほうがいいな。ス:もちろん、じゃんけんだよ。二人はどんどん夏の計画を立てていく。二人でやること。楽しいこと。それをいっぱい作る。他の4年生が、就職活動や卒論で忙しい最中、大学院を目指して勉強するヨンサンとマンガ家を目指すスヨンには、毎日がゆったりとした日曜日だ。大きなベッドに寝転んで、二人はにこやかに夢を語り合った。午後10時を過ぎて、ルルはそろそろ夕飯の買出しに行かないと、明日も食べるものがないことに気がついた。今日の昼だって、冷蔵庫のパン一枚しか食べていない。仕事に追われ、席を立つこともできない。ルルは財布をポシェットに入れ、部屋を出る。エレベーターのドアが開いて、乗ろうとすると、中から夜なのにサングラスをかけたヨンサンが謎の美女と降りてくる。一瞬、ヨンサンとルルはお互いを意識するが、二人とも知らん顔でやり過ごす。ルルのもとにヨンサンのニオイだけが残った。彼のニオイのするエレベーターの中、少し瞳が曇ったルルがいる。ヨンサンの寝室。スタンドを二つだけつけて、ムードある雰囲気。部屋全体が白い色調である。チェストとダブルベッドだけが落ち着いた濃い木目調で、白いベッドカバーがよく似合う。女は服を脱ぎながら、スタンドが置かれた部屋の隅にある小さなサイドテーブルを見る。白い天板にはキレイな植物画が描かれている。女:いつ見ても本当にいいわよね、あのテーブル。なんか惹きこまれちゃうのよね、気持ちがぐうっと。ほしいなあ。絶対だめなの? あれ、ほしいのに。すごくいいわよ。ヨ:・・・作家物だから。あれは譲れないよ。女:ふ~ん、やっぱり。ふつうのとちょっと違う感じがステキなのよね。ヨンサンはカフスをはずしながら、ちらっとテーブルを見る。足を長く付け替えたあのちゃぶ台がここにある。ヨンサンは一人、本屋で本を眺めている。8月も10日すぎて、スヨンが実家に帰省しているのだ。なるべく早く帰るとは言ったが、一人娘の帰りを待ちわびる両親にとっては、最低一週間は滞在しないとまずいとスヨンは言った。ヨンサンの父親は、5年前から日本に駐在している。彼は一人韓国に残った。毎年のように学校の長期休暇のときは父のもとを訪れていたが、今は、新しい母親がきて、ここ一年ほど足が遠のいている。その人とは年齢が10歳も違わない上、20歳を過ぎて親子になったため、なかなか馴染めない。いい人であることはわかっているが、父より自分のほうに年が近いことや普段会っていないことから、最近、父を訪ねることが、重荷になってきている。15歳の時にガンで逝った母親への思慕が、彼の心の奥にはあって、現在の両親を見ていると、呼吸困難に陥りそうになる時があるのだ。いずれ、自分も結婚でもすれば、気軽に遊びにいって話ができるかもしれない。親友のウソンもこの春からアメリカに留学し、今年の夏はサマースクールがあるから帰れないという。こうしてみると、スヨンがいなければ、なんとつまらない日々だろう。大学のグルーピーのやつらとは、せっかくの夏には会いたくない。ヨンサンが本を眺めていると、後ろから、イ:イ・ヨンサン。と呼ぶ声がする。振り向くと、パク・インジュンだった。ヨ:やあ。イ:キム・スヨンに会いにソウルに戻ったけど、留守みたいなんだ。インジュンには帰省することを言っていないんだ。イ:ヨンサン。今君を見かけたから。ちょっと話があるんだ。少しいいかな。ヨ:ああ。インジュンに誘われて、近くのコーヒーショップに入った。ヨンサンは深く腰掛け、足を組んでそこに手を添えている。インジュンは太ももあたりに両手を置き、少し肩をいからせている。コーヒーが運ばれて、インジュンが話しを切り出す。イ:最近、君とスヨンが一緒にいたのを目撃した人がいてね。そうさ、ずうっと一緒にいたよ。イ:君に言っておかなければと思って。君がどんな気持ちでスヨンと一緒にいるか知らないが、僕とスヨンはこの3年半という月日を一緒に過ごしてきたんだ。それで。この間、学校で君と会っただろう。あの日、僕はスヨンにプロポーズしたんだよ。インジュンがヨンサンの様子を伺っている。ヨ:それで。彼女はOKしたのか。イ:(ちょっと返事に困って)たぶん、今考えている最中だと思う。僕が性急にことを進めたからね。あの日か。オレとスヨンが一気に近づいた日だ。そんなことがスヨンにあったのか。スヨンはとても早く家に戻っていた。オレの電話を待っていたと言った。これからインジュンが何を言っても気持ちがぶれちゃだめだ。スヨンを信じろ。イ:つまり、ヨンサン。君がどんな気持ちでもスヨンとの将来はないということだよ。ヨ:それで。イ:(ヨンサンの反応がいまいちなので焦る)つまり。スヨンと手なんかつないで歩かれたら困るということだよ。ヨ:それはおまえの気持ちだろ。イ:とにかく、スヨンと君とは・・・まったく縁がないということだ。ヨ:・・・。イ:僕たちは大学を出たら結婚する。そして僕の故郷で暮らす。そういうことだ。 ヨ:スヨンの仕事はどうする。イ:(少し笑って)仕事? 家事のこと?ヨ:マンガは?イ:彼女、そんな夢みたいなことを言っているのか。君もそんなこと、信じてるの?ヨンサンは少しむかついてきた。この男は3年半も一緒にいて、彼女の実力を知らない。あのゼミの文集を読んでなんとも思わなかったのか。彼女の絵を見たことがないのか。彼女の意思の強さを知らないのか。おまえはスヨンを知らないのか。あいつの思考回路をまったく理解していない。ヨ:帰るよ。イ:待てよ。ヨ:いずれにしろ、スヨンは自分のことは自分で決めるよ。オレはスヨンじゃないから何も答えられないよ。そういって、席を立った。通りに出て一息つき、帰ろうとすると、後ろからインジュンがやってきて、「イ・ヨンサン!」と叫ぶので、振り向くと、その瞬間、思い切り顔に一発パンチをくらう。ヨンサンはバランスを崩し、倒れこんだ。その前にインジュンが仁王立ちになり、ものすごい形相で立っている。イ:僕の女に手を出すな! おまえみたいな最低な男にスヨンを渡さない。女なんか他にいくらでもいるだろう。おまえに、あの清純なスヨンはやらない。覚えておけ!インジュンは捨て台詞をはき、去っていった。ヨンサンは転んで腰を強く打ち、しばらく立つことができなかった。あの事件から3日後の夕方。スヨンから電話が入った。ス:ヨンサン。元気だった? 我慢できなくて帰ってきちゃった。5日も我慢できなかったよ(笑っている)。親にはうそをついた。初めてのうそだよ。コミック誌の編集者に会うって言っちゃった。私がそういうと親もなんにも言えないんだ。ヨンサン、聞こえてる?ヨ:うん。(ヨンサンは口の中が腫れているので、うまくいえない)ス:具合、悪いの?ヨ:うううん。ス:これから行くよ。いいでしょ?ヨ:う~ん・・・。ス:行くよ、だめでも行く。スヨンはヨンサンに習った自転車でゆっくりだが、なんとかヨンサンのアパートまでたどり着いた。ヨンサンの部屋のドアをたたく。ヨンサンが出てきたら、絶対、抱きつく!ヨンサンがゆっくりドアを開けた。スヨンはうれしくて、抱きつこうとするが、ヨンサンの左ほおから口のあたりがあざになっていて、少し腫れている。ヨ:やあ。ス:(驚いて)どうしたの?ヨ:うん・・・自転車で来たの?ス:うん。ヨ:公道はまだ走らないほうがいいよ、おまえは。目も悪いんだし。危ないよ。ス:うん、でも早く来たくて。でも、どうしたの?スヨンが部屋に入ってくる。ヨンサンは腰も痛そうに歩いている。いったい何があったのだ。ス:ねえ、教えて。何があったの? お医者さんには行ったの?ヨ:うん。(ベッドに腰掛けてスヨンを見て)・・・おまえの元ボーイフレンド。ス:えっ?(誰? ああ、)インジュン?ヨ:そう。ス:なんで。ヨ:僕の女に手を出すなって。いきなり殴られた。それで転んで腰も打っちゃって。ス:(ヨンサンの前に座って)大丈夫? ひどいなあ。・・・ヨンサン。私は、ヨンサンの女だよ。(顔を覗き込むように、笑顔で)ヨンサンしか好きじゃないし、ヨンサンにしか抱かれたこともないよ。他の人なんて、絶対やだもん。ヨ:でもあっちはそうは思ってないみたいだよ。3年半の月日とか、言ってたよ。ス:ごめんね。介抱するよ、ずっと。お母さんのキムチ、持ってきたけど、今は食べられないね。おかゆでも作るよ。ヨンサンに教わったから。そういってヨンサンの隣に座って、ヨンサンの頭を膝まくらしてあげる。ヨンサンの顔が下になり、スヨンが上から見下ろす。ヨンサンの頭をやさしく撫でる。ス:本当はね。ヨンサンに会いたくて、抱きしめてほしくて来たんだよ。でも、今日は私が抱きしめてあげる。ヨンサンが手を伸ばし、スヨンのメガネを外す。スヨンの大きな目からヨンサンの顔に涙が落ちた。ヨ:バカだな。ス:バカだよ。(泣き声になって)こんなことになってるなんて。あんたはなんにも悪くないのに。・・・ごめんね、ごめんね、とばっちりだよね。スヨンはヨンサンの頭をどけると、ヨンサンと同じ方向に寝た。そして、うつ伏せになり、仰向けのヨンサンの髪を撫でて、ヨンサンの上に重なるようにキスをした。後編に続く・・・一生忘れたくない夏。一生心に刻む人・・・。ではまた明日~~^^
BGMはこちらをクリックチョ・ソンモ「君がいないと・・・」 こんばんは^^BYJシアターです。本日は【隣のあいつ】第6章です^^【配役】イ・ヨンサン :ぺ・ヨンジュン(大学4年~30歳。小説家・メガネなし・サングラスのみ・・同感2を参考に)ルル(キム・スヨン):チョン・ドヨン(大学4年~30歳。マンガ家・メガネあり)ではお楽しみください!~~~~~~~~~~~~~【隣のあいつ】 中編2主演: ぺ・ヨンジュン チョン・ドヨン【第6章 運命のとき】二人は学校に近い屋台街で待ち合わせをした。ヨンサンのほうが少し早く到着したが、そこへ、笑顔で大きく手を振りながら、スヨンが走ってやってきたので、ますます彼はうれしくなってしまった。二人、顔を見合わせた途端、何を言っていいかわからなかったが、幸せな気持ちがあふれ出て、ただ見つめ合って笑っているだけでもいいように思えた。7月の宵は気持ちがよくて、まず食事より二人は近くの公園まで歩いた。というより、今すぐになんて、二人ともとても食事が喉を通らない感じがするのだ。ヨンサンは自分の気持ちを隠さずに話そうと思った。それができる女だ、スヨンは。ヨ:うれしいよ。本当に会いたかったんだ。この前、話をした時から。スヨンは本当にと驚く。私もそうだ。ス:私もよ。あんたってなんかとっても話しやすくて。なんでも言えるし。わかってもらえるような気がしてた。ヨンサンはだまって、優しい眼差しをスヨンに向けた。彼のこんなに素直な表情を見るのは初めてだ。それに・・・とスヨンは思う。彼が見ているのは、メガネではない。その奥の私を見ている。なんてステキなんだ。この人は私を見ている!公園に着くと、スヨンはブランコに座った。ス:風が通るね。気持ちいいね。なんかとっても開放的で、すごく幸せな気分!ヨ:そうだな。ヨンサンも隣のブランコに座った。電話で話がしたいと言ったくせに話なんかしなくてもこうして並んでいるだけでよかった。もともとヨンサンは口数が多いほうではなかったから、これで十分だ。二人はしばらく無言でブランコに乗り、言葉はなくてもお互いが思いやれることを知った。少し気持ちに余裕が出てきて、屋台街に夕飯を食べに出かけた。スヨンは言葉遣いが多少ガサツではあるものの、ヨンサンは、その食事をする姿が好きだ。何を食べても清潔でチャーミングな口元、そして一番好きなのは優雅に動く指先だ。そうだ。こいつは本を読む時も指先の動きがキレイだった。初め、いかついメガネにだまされて動きまでガサツな感じがしたが、ひとつずつ見ていくと、とてもキレイだ。右手の中指。大きなペンだこがある。ヨ:おまえって指がキレイなのに、すごい大きなペンだこがあるんだな。ス:(ヨンサンを見て)だって商売道具だよ。ヨ:本当だね。ヨンサンも笑った。二人で、小説の話、映画の話。スヨンが考えているマンガ家へのステップ。いろいろ話して、午後9時半を回った。ヨンサンが時計を見た。ヨ:もうこんな時間だ。おまえのうちまで送っていくよ。二人は店を出た。ヨ:書き上げたばかりの小説があるんだけど、今度読んでくれる?ス:えっ、いいの? 読みたい。・・・今日でもいいよ。早く読みたいよ。スヨンには、これと思ったらすぐに実行せずにはいられないところがあった。ヨンサンは女の子をこんな時間に自分の部屋に上げることにちょっと躊躇したが、スヨンとは離れがたかったし、それに彼女なら、まるで男友達のように家に来ることも自然な事のように思えた。ヨンサンのアパートまで来て、彼は流しにおいたラーメンを思い出し、ヨ:ちょっと待って。窓開けてくるから。といって先に入る。急いで流しのラーメンを処理し、窓を開け、部屋のニオイを入れ替えた。そして、スヨンを招いた。ヨンサンの部屋はとても狭くて、ベッドと机、この間が30cmにも満たない。机の右側は壁沿いに本棚がずらっと並んでいる。それに付け足したように細い洋服ダンスがあるだけだ。テレビもなく、机の脇に古びたラジカセが置かれている。歩くところなど、ほとんどなかった。でも、男の子のわりにはきれいに片付けられていた。ス:おじゃましま~す。スヨンが少しはにかみながら入ってくる。さっそくヨンサンが机に新作を出してスヨンの席を作る。ヨンサンは、お湯を沸かしながら、ヨ:インスタントコーヒーでもいれるから、そこで読んでいて。ス:うん。ヨンサンはベッドの上に座ってスヨンを見る。彼女はヨンサンにニコッとして、机に向かって座り、真剣な眼差しで、原稿を読み始める。彼女の美しい横顔。そして、原稿をめくる繊細な指先。ヨンサンの好きな彼女のテイストが凝縮されているようだ。想像していたより、スヨンの集中力はすさまじく、出されたコーヒーも一口飲んだだけで、ずうっと原稿を読み続けている。ヨンサンはベッドの上で、本を読みながら彼女を待っていたが、眠くなって寝てしまう。午前3時。やっと読み終えたスヨンは両手を伸ばして伸びをする。ヨンサンに声をかけようとするが、彼はもう寝てしまっている。ベッドへ行き、ヨンサンの顔を覗き込む。端整な顔立ちだ。気持ちよさそうにスウスウと寝息を立てている。スヨンはどうしようか迷う。こんな時間に一人で外を歩くのは危険だし。自分でも不思議だが、ヨンサンの隣なら寝てもいいかなと思う。寝ている彼をぐいっとベッドの壁のほうへ押しやって自分のスペースを作る。そして、メガネを机の上に置くと、ベッドで仮眠をとるようにスヨンも眠る。狭いシングルベッドの上で、ヨンサン、スヨンが思い思いのスタイルで、服のまま、寝転んで熟睡している。朝の日差しに、スヨンは目をさますが、メガネをかけていないので、最初ボーっとしてここがどこかわからない。・・・そうだ、ヨンサンの部屋だ。でもヨンサンは見当たらず、寝ぼけたまま、洗面台に行く。洗面台の奥にトイレと狭いシャワールームがある。男の子にしては、タオルをキチンとたたみ、洗濯機の上につけられた棚に、キレイに積んである。その一枚を借りて、まず歯みがきを指につけ、指で歯を磨き、顔を洗う。ついでにタオルを濡らして体をざっと拭く。さっぱりして、ヨンサンの部屋を見渡し、本棚の本を見てみる。部屋のドアが開き、ヨンサンが帰ってきた。ヨ:起きてたの?ス:おはよう。(照れくさそうに)泊まっちゃったね。ごめんね。タオル、借りたよ。ヨ:ああ、いいよ。ヨンサンは本棚の横にたたんであったちゃぶ台を出して、コンビニの袋を置き、ヨ:おまえ、いびきがすごかったぞ。(そういって笑う)ス:(驚いて)えっ、本当? いびきなんてかいてた?ちょっとはずかしい。ヨンサンが笑って、ヨ:うそだよ。飯でも食おうよ。コンビニの袋から海苔巻きを取り出し、流しに行って、お茶を入れる。一緒に海苔巻きを食べながら、ヨンサンを見る。スヨンは、男の部屋に泊まったわりにはノンキにしている自分を発見する。ス:なんか、自分がうそみたいなんだけど・・・男の子のとこ、泊まったのって初めて。こうしてる自分が信じられないよ。ヨンサンがやさしく笑う。ヨ:どうだった? オレの。ス:うん、すごくよかったよ。途中泣いちゃったよ。スヨンが屈託なく、感想を言う。よい点だけでなく、改善点も。ヨンサンも素直に聞いている。ヨ:ありがとう。・・・参考になるよ。うれしいよ。スヨンも自分の感想を真面目に聞いてくれるので、うれしい。ご飯も食べ終わり、特にすることもなくなり、二人とも手持ち無沙汰になる。ヨンサンがゴミをまとめ、流しに湯のみをさげる。スヨンがベッドの横に立ち、窓の外を見ている。ヨンサンは、このままスヨンを帰すのも寂しい気がするが、これといってやることもない。窓際のスヨンの横に行き、スヨンの顔を見る。スヨンが気づいてヨンサンの顔を見上げる。こんな近くで愛しいスヨンが見つめている。ヨンサンは思わずスヨンを抱きしめ、顔を覗き込むように見つめる。スヨンもヨンサンを確かめるように見つめる。お互いに引かれるように顔が近づいて、ヨンサンがスヨンにキスをする。スヨンは生まれて初めてのキスで、ヨンサンのTシャツにしがみつく。彼女は、もしキスの長さというものを計るとするなら、これは長いのかそれとも・・・。気が遠くなりそうだ。ヨンサンにスヨンの全体重がかかってきて、支えるのがやっとだ。支えきれなくなって、そのまま、横にあるベッドに倒れこむ。ヨンサンの下にスヨンがいる。ヨンサンは自分の下にいるスヨンのメガネを外し、顔を覗き込んで言う。ヨ:おまえって本当にかわいいな・・・食べちゃいたいくらいだよ。ス:食べたら犯罪だよ。笑顔でスヨンが答える。ヨンサンも楽しそうに笑い、ヨ:めちゃくちゃかわいいよ。そういってスヨンの顔中にやさしくキスをする。スヨンは自分というものが一般的なレベルでどの程度なのかよくわからないが、彼が気に入ってくれていること、好きでいてくれること、それだけでうれしい。それにこんなにキスをされるのもはずかしくて、くすぐったくて、体がとろけそうに幸せだ。ヨンサンの手がスヨンのTシャツをたくしあげる。スヨンは彼がするままに任せる。ヨンサンの手が綿パンツのボタンにかかる。スヨンは、自分から彼を助けるようにズボンを引き下げた。午前11時。なんという運命の時間だ。日は高く、彼ははっきり見えるし、彼からもスヨンがはっきり見える。それでもスヨンははずかしくなかった。・・・ヨンサンをしっかり見つめていたい。彼の全てを受け入れたいと思った。次の瞬間、スヨンは目をぎゅっとつむり、あっと小さく言って、ヨンサンにしがみつくように抱きついた。こいつと私は同じ素材でできている。と、スヨンは思う。もし人間も綿とか麻とか区別ができるなら、二人の素材は同じに違いない。どうみてもこの皮膚感も同じだし、おもしろいと思うツボも同じだ。あいつが感じてることが手にとるようにわかるし、あいつのことばが体の芯まで沁みてくる。スヨンはこうも思う。私には足が4本あって、私の意識で動くのは2本だけ。そして、胴から上はまた二つに分かれていて、すこしがっちりした方に顔の作りのいいのがついている。二つの顔は見つめ合い、お互いの唇から栄養を補給し合っている。そして、二つの体の中を通ってまた新しいエネルギーとなって戻っていくような・・・二人でありながら一人のような錯覚にまで陥ってしまう。あいつの手はやさしく、まるで自分の手が動いているように、不思議なほどに、違和感がない。あいつは、私が初めてではない・・・。聞かなくったってそんな事はわかる。それでもいいよ。あいつは不思議そうに私に尋ねる。ヨ:おまえってオレが触っても、ちっともどぎまぎしないんだな・・・。ス:・・・気持ちいいよ。あんただから、安心していられる。(ちょっとテレながらも)初めてでも、ぜんぜん平気だよ・・・。ヨンサンがスヨンの横に寝転ぶと、彼女は天井を見つめながら、ス:私ね、高校時代にね。美術部の部室でデッサンしてたら、同じ美術部の男の子に急に首筋に息を吹きかけられた事があったんだ。びっくりしただけじゃなくて、それから一週間も学校休んじゃった・・・。息を吹きかけられただけだよ。それなのに、毎日毎日、一日に何回もシャワー浴びちゃって・・・おかしいよね? でもあんたは大丈夫。だってあんたがまるで自分の体みたいに思えるんだもん。へん?ヨ:(にっこり笑って)オレもおまえがまるで自分のように思えるよ。なんだか、二人は気持ちだけでなく、すべてが通じ合っているようで、スヨンはうれしくてしかたがなかった。夜、スヨンの部屋。ベッドに寝転んで、今日のことを思う。今朝の出来事は思い返してみても、スヨンには不思議な感じだ。まるで現実ではなかったみたいに・・・。初めて大学で見かけた彼は少し恐い感じがした。確か1年生の時は同じクラスだった。彼の話し方は少々ぶっきらぼうで、それでいて顔はハンサムで勉強ができて、切り口が鋭い発言をするから、スヨンにはまったく縁がない人のように思えた。それが4年生のゼミで一緒になって、彼の実力を知って、ちょっとは興味を持ったものの、やっぱり遠い存在だった。それが、たった一日で二人の間には秘密なんてないような距離にまでなってしまった。今朝のことで、まだ下半身には違和感が残っているものの、なんであんなに彼を信じて、受け入れられたのだろう。あの瞬間だって、本当だったら痛くて逃げ出したいところだったのに。返ってその痛みさえ、彼を思うとうれしく感じた。他の人だったら、なんて考えたら死にたいくらいだ。これが恋なのかな・・・そうだ、本当の恋なんだ。いままでの私はまったく間が抜けていた。マンガでも、間抜けな恋愛を描いていたのかもしれない・・・。ヨンサンは夏を一緒に過ごそうと言った。毎日、自分の仕事は午前中に片付けて、二人で一緒にいろいろ楽しもうと言った。海へも遊びに行こうと誘ってくれた。初めての遠出。大学最後の夏をこんなふうに、愛する人と一緒に過ごせるなんて・・・私はなんて幸せ者なんだ。【第7章】に続く・・・大学生のヨンサンとスヨン。この恋が、この夏が、二人にとって忘れられないものになるとは、まだ知る由もありません。二人は今・・・青春の真っ只中にいます。一生忘れたくない夏。一生心に刻む人・・・。
BGMはこちらをクリックチョ・ソンモ「君がいないと・・・」 こんばんは^^BYJシアターです。本日は【隣のあいつ】第5章です^^【配役】イ・ヨンサン :ぺ・ヨンジュン(大学4年~30歳。小説家・メガネなし・サングラスのみ・・同感2を参考に)ルル(キム・スヨン):チョン・ドヨン(大学4年~30歳。マンガ家・メガネあり)ではお楽しみください!~~~~~~~~~~~~~【隣のあいつ】 中編2主演: ぺ・ヨンジュン チョン・ドヨン【第5章 スヨンの選択】しばらくたったある日。ルルの郵便物の中に転送されてきた結婚通知葉書が混ざっている。パク・インジュン。大学時代の同級生。3年半近く、ルルの近くにいた男。あいつ、結婚したんだ。住所を見る。実家になっている。彼は計画通りの人生を歩んでいた。ルルはあの時のことを思い出した。暑い夏の日差しが照りつける中、真昼間の表通りの真ん中で、彼女が男の前に立っている。彼女は怒っているのか、泣いているのか、わからないが、ぐっと男を睨みつけ、右手で力の限り、思いっきり相手の顔を平手打ちする。ス:なんにもわかってないくせに。あんたはなんにもわかってないのよ! これがお返し!彼女はそういうと、赤く腫れた右手の痛みをぐっと押さえながら、さっときびすを返して去っていく。男は左頬を押さえ、呆然とした様子で、彼女の後ろ姿を見送った。ルルにとって、苦い思い出を残すパク・インジュン。別れの平手打ち。それはヨンサンへの愛の証でもあった。大学4年生の7月。あの土曜日。インジュンと待ち合わせをしていたスヨンが偶然、ヨンサンに出会ってしまったあの日。大学の図書館で、待ち合わせの時間まで過ごし、約束の正門まで行こうと図書館を出たところで、ヨンサンに会った。そして、電話番号を教えて別れた。あの瞬間が私の人生を変えたんだ。その日はインジュンが一緒にCDを選んでほしいというので、スヨンは彼と一緒にCDショップに来ていた。しかし、インジュンの様子がいつもと違ってとても硬く、なんだか居心地が悪い。一人で黙って、CDを見て歩くインジュン。スヨンは困って、ス:ねえ、インジュン、どんなジャンルのもの、買うの?インジュンは答えない。スヨンは困って、「ふう」と息を吐く。インジュンがスヨンのほうを見た。イ:スヨン、今日は、CDはいいや。それより話したいことがあるんだ。あまりに真剣な目つきでインジュンが言うので、スヨンは緊張気味にうなずいて、「いいよ」と応えた。CDショップからそう離れていないコーヒーショップに二人は入った。コーヒーを前においてなにやら、インジュンは緊張した面持ちである。しばらく間があって、インジュンが決意したように話し出した。イ:スヨン、大学を卒業したらどうするの? まだマンガを続けるの?ス:うん。インジュンは?イ:僕は 故郷に帰って役人になるよ。仕事をしながら、同人雑誌に書いていく。・・・スヨン、僕がソウルを離れたら寂しい?スヨンは長年、一緒にいてくれた友達がいなくなるのが寂しくて、ス:そうだね。寂しくなるよ。インジュンはそんなスヨンによい感触を持ったのか、言いたかったことを口にした。イ:スヨン、卒業したら、僕と一緒に来てくれないか。そうすれば、二人一緒だよ。僕の家にはまだ小さな弟がいるけど、結婚して暮らせるスペースは十分あるんだ。そこで君は家事をしながら、好きな時間を見計らって、マンガを描けばいいし。・・・きっと僕たち、幸せになるよ。インジュンはにこやかにスヨンを見つめた。スヨンには、インジュンがイメージしていることがよくわからなかった。というより、彼女にはインジュンと結婚したいという気持ちがまったくなかったのだ。私はマンガを本気でやりたいんだ。あんたが言う片手間になんかできない。私はまだ22だよ。諦めるには早すぎる。ス:インジュン。あんたの気持ちはうれしいけど、私には向いてないみたい・・・ごめんね。インジュンは驚いてスヨンを見る。君は何をいってるんだと言わんばかりだ。イ:スヨン、よく考えてごらんよ。僕たちってぴったりじゃないか。堅実でどっちかというと、地味で真面目で。きっとうまくいくと思うんだ。僕はこの3年半、君を見てきて、絶対、君には僕が必要なんだと思ったよ。結婚しよう、スヨン。インジュンは唐突に言ったわけではなかったのだ。3年半もの間、彼の中で温めてきたものだった。でも・・・とスヨンは思う。私はそういう女じゃないんだ。あんたはこの牛乳瓶の底のメガネをかけている私を平気だと言ったけど、あんたはメガネにだまされている。私は堅実でもない。自分の夢を追いかけていて、そのためだったら、野垂れ死にしてもいいくらいなんだ。それに、インジュン。見かけは地味でも、私はそんなに家庭的ないい人じゃない。 ちっとも従順じゃないし。自分の思い通りに生きたいんだ。ス:インジュン。ごめん。私はあんたが考えているような人間じゃない。ごめんね。まだソウルで頑張りたいし。インジュンは少し首をかしげながら、もしかしてという顔になる。イ:さっきのイ・ヨンサンのせいか、君がそんなふうに言うのは。ス:イ・ヨンサン?イ:あんな男のどこがいいんだ。周りに女を侍らせて、それでいてぶっきらぼうなやつ。スカしたやつ。あいつとなんか関係があるの? 僕はあんな男は嫌いだ。あいつと君なんてまったく合ってないよ。ぜんぜん似合ってないよ。スヨンはインジュンの誤解を解きたいが、でもなんて言えばいい?あいつはああ見えても私の実力をちゃんと評価してくれてるよ。私の将来の夢も理解してくれてるよ。あいつと話しているとなんか楽しいし、のびのびできる。あいつになら、考えていることを、気兼ねなく話せる。あいつはぶっきらぼうだけど、私の気持ちをちゃんとわかってくれている。あいつの目がそういっている。それに、・・・それに、私は・・・もしかして・・・いや、きっと。・ ・・あいつに惹かれている。好きなんだよ。ス:インジュン。イ・ヨンサンのことが原因じゃないの。私自身なんだ。私自身があんたには合わない。ごめんね。イ:スヨン、よく考えて。こんな言い方変だけど、僕を逃したら君に合う相手なんていないよ。僕は君がどんな見た目だって、関係ない。君の純粋さが好きなんだ。君はマンガ家になんかなるより、僕の妻になるほうが百倍も合ってるよ。人との競争や自分を削る仕事なんか、君には合わないよ。スヨンは愕然とした。それより、いままで低姿勢で来たことに後悔した。こいつはまったくわかっていない! 仮にこいつと結婚なんかしたら、きっと亭主関白だ。もう席を立とう。十分、私は誠意を見せたはずだ。ス:インジュン。残念だけど、本当にだめなの。それに、もし私がこの先、まったく結婚に縁がなくても私はいいと思ってる。それより自立した人生を生きたいの。それが私。それが私なの。ごめんね。スヨンが立ち上がると、インジュンはびっくりしてスヨンを見つめ、怒ったような顔をした。しかし、彼女はこれ以上彼と話す気はなく、バッグを背負って店をあとにした。それにしても・・・とスヨンは思う。もしインジュンがあんなことを言い出さなかったら、きっと自分はまだぬるま湯の中にいただろう。自分を理解してくれていると思っていたインジュンと一緒に。そして、薄々は気がついていたものの、やっぱり、イ・ヨンサンに好意を持っていることもわかった。確かにあいつの周りにはいつもグルーピーのような女の子がいるが、それがあいつの本質となんの関係があるのだ。あの時。あの学食の、あの時。確かに私たちを阻むものはなかった。少なくても、私にはあいつしか映っていなかったし、あいつだって、私を見つめていた。ああ、早く確認したい。自分の気持ちを。あいつの気持ちを。電話番号を貰えばよかった。・・・電話してくれるよね? 大丈夫だよね。私が8月の第一週まではソウルにいること、わかっているんだし。でも、7日に電話をする気かもしれない。そんなに待つのかな。長いな、私から告白しに行きたいくらいだ・・・。今日の昼に会ったばかりなのに、スヨンはイライラしながらヨンサンからの電話を待っている。自分からデートがあると言っておきながら。まだ5時だ。そんな時間に家に戻っているなんて思わないだろう。でも、私はもう4時間もあんたを待っている。早く早く、留守電だっていいじゃない。電話してよ!ヨンサンは自分のアパートの部屋の小さなキッチンで、ラーメンを作っている。時計を見ながら、6時か。まだ早いよな、電話するには。いくらなんでも急ぎすぎかな。8月の第一週まではソウルにいるとあいつは言った。今電話したら驚くかもしれない。6日とかのほうがいいのかな・・・。やっぱり待てない。あいつはデートしてたんだぞ。早く距離を縮めないとこの夏はない。いや4年生の夏がないということは先がないということだ。気が急いて、留守電でもいいからと、ヨンサンはスヨンに電話する。間髪いれずにスヨンが出たので、ヨンサンはあまりの速さに驚いた。ス:はい。キムです。ヨ:キム・スヨン? イ・ヨンサンだ。ス:ヨンサン・・・。ヨ:もう家にいたの?ス:うん・・・(本当の気持ちを言おう!)電話、待ってたよ・・・。ヨンサンの中に喜びが広がっていく。ヨ:本当? よかった。オレ、おまえと・・・(本当の気持ちを言おう!)すごく話がしたかったんだ。ス:私も。・・・もしよかったらどっかでご飯食べない? 安いものしか食べられないけど。ヨ:いいよ。今から会おう。なんてことだ。こんなに気持ちが通じ合えるなんて。ヨンサンはなべを覗きながら電話をしていたが、そのなべはそのまま流しに置かれ、彼は急いで財布をズボンのポケットに入れ、飛び出していく。スヨンはバッグからリップクリームをとり出して念入りに塗ると、バッグを背負って、楽しげに部屋を出て行った。【第6章】へ続く・・・^^いよいよ・・・あの夏が始まる・・・。
BGMはこちらをクリックチョ・ソンモ「君がいないと・・・」 こんばんは^^BYJシアターです。本日から【隣のあいつ】中編です。【配役】イ・ヨンサン :ぺ・ヨンジュン(大学4年~30歳。小説家・メガネなし・サングラスのみ・・同感2を参考に)ルル(キム・スヨン):チョン・ドヨン(大学4年~30歳。マンガ家・メガネあり)ではお楽しみください!~~~~~~~~~~~~~【隣のあいつ】 中編1主演: ぺ・ヨンジュン チョン・ドヨン【You’re the one!】(主題歌)You’re the one! (あなたなの!) You’re the oneentirely in the world! (世界で一人、あなただけ!)他を探してもだめよそんなに簡単には見つからないあの手この手で探しても代わりの人なんていやしないYou’re the one! (あなたなの!)You’re the one entirely in the world! (世界で一人、あなただけ!)人を好きになるってそういうことあなたじゃなきゃだめだからやりなおすチャンスがあるならば代わりの人ではむなしくてYou’re the one! (あなたなの!)You're the one I truly love in the world. (世界で一人、本当に愛してるのはあなただけ)堂々めぐりはいやだから心を見せて告白するわずっと私にできることそれがあなたを愛することYou’re the one! (あなたなのよ!)You’re the one entirely in the world! (世界に一人、あなただけ)そこに愛があるのならば掴んでぜったい放さないOh, my sweet darling (ああ、私のダーリン)Please accept my whole love. (私の愛をぜんぶ 受け止めて)Forever! (いつまでも!)I’ll make you happy Forever. (ずうっと幸せにしてあげる)【第4章 思い出】引越しの挨拶から3日後。午後2時ごろ。ヨンサンがマンションの部屋を出ると、ちょうど隣のルルの部屋から家具屋の配達員が二人出てくる。家:どうもありがとうございました~。(帰っていく)ルルがその後を見送るように出てきて、ヨンサンに気づく。ル:あ、ヨンサン。ちょうどよかった。時間ある? 15分? ううん、10分。ヨンサンは捕まったという顔をして、ヨ:なあに? なんか用? 今のやつらに関係あるの?ル:(上機嫌で)大当たり! あんたって勘がいい。机が来たんだ。この間話したでしょ。ねえ、見てってよう。ねえ。ヨンサンもルルが熱心に引っ張るものだから、しかたないという顔で、ヨ:じゃあ、15分な。しめた! 15分ももらったぞ。ヨンサンが、ルルの部屋に上がる。ルルは、リビングを仕事部屋に使っている。オレンジ系のカーテンがかかっていて、家具もナチュラルカラーの木目のもので、明るくハツラツとした雰囲気だ。壁や部屋の境目にひもが下がっていて、そこに洗濯バサミのようなものが吊るさっている。どうやら絵や原稿を下げるためにつけているらしいが、ルルの部屋で見るとそれもかわいらしい装飾に見える。そこに長さ2メートル半はある、新しい机が入ったのだ。ル:どう? いいでしょ。ほしかったんだ、こういうの。ヨ:うん、いいなあ。使いやすそうだね。随分長いの、買ったんだ。ル:うん!ルルは子供のように、キャスター付きの回転イスに座り、机の端から端まで移動する。ル:ほらね、いい感じでしょ。いままでのもよかったけど、これだけ広いといいよ。ヨンサンも一緒になって、机の表面の手触りを見ている。少し目を移すと、机の右端に手作りの細長いスタンドがあり、紙製のかさに貝殻が張ってある。ヨンサンは、そのスタンドを見入る。胸が少し痛くなる。それに気がついたルルがうつむき加減で、ル:ほら、私、貝殻が好きじゃない。だからちょっとおきたくて作ったんだ。どう? 実際の照明としてはあまり役に立たないけど。いいでしょ。ヨンサンはしばらく見入っていたが、何も言わず、机のほうの話を始める。ヨ:使いやすそうだけど、またこの上に本だとか道具だとか積んでいくんじゃない? おまえのことだから。ル:あっ、見透かされてる。でも頑張ってそうならないように努力するつもり。そのためにスタンドとかおいてるんだ。あのスタンド、見たいからさ。ヨンサンは聞こえないふりをして、回りを見渡して、深く息をし、腕時計を見る。ヨ:ああ、もう行かないといけないな。ル:まだ、15分も経ってないのに・・・。あんたはいつも時間には厳しいよね。ヨ:おまえと違ってね。すっぽかしたりしないよ。ちょっとツンとした顔で言う。ルルは耳が痛くて、話題を変える。ル:・・・今日はデート?ヨ:う~ん、まあね。ル:ふうん・・・。ヨンサンの後について、玄関のほうへ向かう。ル:ありがとね。見てくれて・・・。そのスーツ、かっこいいよ。ルルはそういうと、ヨンサンが玄関でルルのほうへ振り返った瞬間、サッとヨンサンのジャケットの胸を開く。ヨンサンはびっくりして、ルルを見た。ル:プラダか・・・。やっぱりね。いいよ、すごく。すごく似合ってるよ。そういってヨンサンの顔を見るが、ヨンサンが固まっているので、変に思って、ル:どうしたの?ヨ:・・・刺されるかと思ったよ。ヨンサンはちょっと青ざめて答えた。ル:バカみたい。包丁なんて持ってないじゃない。ルルが笑いながら、ヨンサンを送り出して、ドアを閉める。そうだよ。刺したよ・・・他の人の所なんか、行かせたくなんかないじゃない・・・。ヨンサンは何度も咳払いをして、気分転換し、エレベーターに乗る。頭の中にあの頃のことが浮かぶ。夏の海辺。白い綿ワンピースを着た女の子の足元。波打ち際を素足を埋めるように歩く。スカートを少したくし上げて座り込み、小さな貝殻を拾う。それを後ろから見ている若いヨンサンがいる。ランニングに半そでの爽やかなシャツを着て、半ズボンにビーチサンダルを履いている。彼女が左手を差し出す。小さな貝殻がいくつか乗っている。女:私、キレイな貝殻、集めてるんだ。ねえ、どれが好き?ヨンサンが小さな巻貝を選ぶ。女:これが好きなの? 今度、これでキーホルダー作るよ。樹脂にいれて加工する。今日の思い出に。二人でおそろいにして、ね!ヨンサンが風に髪をなびかせながら、微笑んで彼女を見つめている。エレベーターから降りるヨンサン。何かを吹っ切るように息をはき、歩いていく。ルルの部屋。まだヨンサンの残り香はあるものの、なにか物寂しい気分。ルルは大きな机にうつぶせながら、そっとスタンドを眺めた。ルルが引っ越してきてから、約一ヵ月。朝帰りを待っていたかのように、ルルが一階のメールボックスの所にいる。ヨンサンは彼女を避けたくて、気がつかないふりをして、エレベーターホールに向かうが、ルルはそれを許さない。追いかけてきて、一緒にエレベーターに乗ろうとする。ヨンサンが濃いサングラスをかけているせいか、ルルには、ヨンサンの表情がいまいち、よくわからない。8階ともなると、階段で上ると言えば角が立つし、結局仕方なく、ヨンサンはルルと同じエレベーターに乗る。ルルが少しずつヨンサンの方へ寄ってくるので、ヨンサンはそれを避けるようにまた少し離れる。そうすると、またルルが動く…。ヨ:もっと離れろよ。ル:・・・・。ヨ:二人しか乗ってないんだ。つめる必要なんてないだろ。ル:・・・・。ルルはうらめしそうに睨む。ヨンサンは朝帰りの時にルルと並びたくない。他の女のニオイをさせた自分に近づいてほしくない。ルルにはそれがわからないのか。こういうところが気持ちを逆撫でする。エレベーターを降りると同時に、ヨンサンが、ヨ:バカか、おまえは。近づくなよ。そういってさっさと歩いていってしまった。ルルには悪気はなく、たまに会えた時くらい近くにいたいだけなのだ。近づくったって、ほんの少し、近寄るだけなのに! ヨンサンのケチ!ルルにはヨンサンの気持ちがわからない。ある昼下がり。ヨンサンが駐車場に向かって歩いている。こんな日にはルルに会わないものだ。だいたいあのタイミングの悪いあいつと会うのは、女の所へ行くときか朝帰りのときに決まっている。ヨンサンは駐車場の自分の車の前に立つ。今日みたいなハレの日には、あいつは待ち伏せしたりしない。憧れの先輩作家との対談があって、こんなにうれしい日には、あいつとは会わないんだ・・・。本当にタイミングの悪いやつだ。ちょっとため息をついて、ヨンサンは車のキーを開ける。エンジンをかける。貝殻のキーホルダーが揺れている。ルルの部屋。校了間際の彼女が、編集者のミー姉さんの横で、カラーページの色校正、ふきだしのせりふに間違いはないか、このせりふでOKか、最終チェックに余念がない。【第4章】に続く・・・それぞれの心に残る思い・・・ではまた~^^
BGMはこちらをクリックチョ・ソンモ「君がいないと・・・」 BYJシアターです^^「隣のあいつ」第3章です^^さあ、ヨンサンとスヨンは・・・^^ではお楽しみください^^~~~~~~~~~~~~「隣のあいつ」前3ぺ・ヨンジュンチョン・ドヨン主演【第3章 恋は突然やってきた】8年前の6月の暑い午後。大学4年生のヨンサンは大学の部室が集まっているF棟に向かって歩いていた。先日出来上がったばかりの文芸部の同人雑誌を取りにいく予定だ。 F棟の1階には文芸部の隣にマンガ研究会や演劇部、チェス研究会といった文科系の部室が並んでいる。ヨンサンが文芸部のある通路にかかると、ちょうど、文芸部かマンガ研の前あたりの通路で窓を開け、涼んでいる女の子がいる。彼女は薄手の黄色いワンピースを着て、窓から上半身を乗り出すようにして、髪を風になびかせている。この辺では見かけない顔。鼻筋が通っていて横顔がとてもチャーミングだ。ヨンサンが近づいていくと、こちらを振り向き、彼のことをじいっと見ている。大きな目をしたその顔は卵のようにつるんとしていて、そのパーツの配置は決してハデではないが、上品で嫌味がなかった。なによりとても親しみやすく、かわいいという印象だった。ヨンサンは相手がずうっと見つめているので、知ってる子かなと考えてみるが、思い当たる節はまったくない。ドンドン近づき、1mのところまで来るとその顔の持ち主が笑った。女:ああ、こんちは。今日はここの棟、冷房が壊れてるんだって。部室なんか暑くていられないよ。親しそうに話しかける。この声は、とヨンサンがよ~く彼女を見ると、4年の創作ゼミで一緒のスヨンのようだ。ヨ:キム・スヨン?ス:なあに?ヨンサンは驚く。あのド近眼の牛乳瓶の底のスヨンだ。ヨ:どうしたの、メガネ?ス:ああ。ちょっと恥ずかしいけど、自分で踏んじゃった。見えなくて。ドジだよねえ。確かにスヨンの声で言う。しかし、人というものは不思議なもので、このキレイな子がいうと、バカみたいな失敗ではなく、とってもかわいい失敗だ。ヨンサンは少し興味がわいてきてこの顔をもっと観察してみたくなった。ヨ:ねえ、アイスでも食べに行かない?ス:えっ、いいの私で?・・・いいよ。ヨンサンはスヨンに少しそこで待っていてもらい、部室にさっと顔を出すと雑誌だけもらって、そのまま、二人は大学の近くの店へ出かけた。ス:おいしい。本当に今日は暑いね。スヨンは元気に話す。それに少しも気取ったところがない。背の高いチョコレートパフェをドンドン食べながら話しているのだが、口元がチャーミングで、清潔感いっぱいだ。二人をはさんだテーブルの幅は60cmくらいしかない。スヨンの顔の表情がよく見える。ヨ:この間の創作ゼミの文集、読んだか。おまえのすごくよかったよ。ヨンサンがカキ氷を食べながら言うと、スヨンが、ス:ありがと。でもあんたのが一番だよ。他とはレベルが違うもん。あんたは作家になれると思うよ。それだけの力があるもん。大学を出たらどうするの?ヨンサンはこんなにストレートにほめられたことがなかった。ヨ:うん。作家になりたいけど、まだなあ。一応、大学院に進んでもう少し書いてみたいんだ。自分もストレートに夢を語った。ス:それがいいよ。きっとあんたならチャンスが来ると思うもん。ヨンサンが今まで付き合ってきた女の子たち。ヨンサンが大学を出たらどこの会社に就職してくれるのか、そればかり心配していた。早く安定してそして・・・。ヨ:おまえはどうするの?ス:私? 私はマンガ家になるのが子供の頃からの夢なんだ。今ね、マンガのコンクールに応募してるんだけど。高校時代から今まで、入選や佳作はあるけど、まだ金賞や銀賞を取ったことがなくて。これが取れればデビューできるんだけどね。だからもう少し頑張ってみるつもり。なんの衒いもなく言う。ヨ:親にはなにか言われないのか?今までのガールフレンドの親といえば、とにかく、ヨンサンを見ると将来の娘との結婚への夢を語り出す。彼らは少しも本当の夢はなにかを語るチャンスを与えてくれたりはしなかった。そしてもちろん、女の子たちも。ス:別に、なんにも。・・・ああ、ヨンサンが心配してるのって、お嫁にいけないんじゃないかって事? 私は大丈夫。・・・私は牛乳瓶の底だから・・・親もそれほど期待してないんだ。だから自分の道は自分で切り開いていかなくちゃいけないんだ。スヨンが半分感慨深げに、半分笑って言った。それがまた実にチャーミングに見える。ヨ:ねえ、この距離でオレの顔がはっきりわかる?ス:(ちょっと困って)ぼんやりね。そう言って、大きな目で見つめる。スヨンが衒いなく話せるのは、相手がよく見えないからかもしれない・・・。ヨンサンはそれをいいことにスヨンの顔を、姿を、食べる表情を、しぐさを食い入るように見つめた。。あの部室の前で、スヨンに会った日から彼女が気になってしかたがない。あいつは言葉遣いは悪いが、よくモノを分析してみていることもわかったし。なによりうそがなくて、彼女の話すことが、ヨンサンにはストレートに入ってくるのだ。今までそういう経験があまりなかった。高校時代を男子校で過ごしてしまったせいもあるが、だいたいの女の子は自分に対して、はっきりとした目的を持って近づいてきたし、自分自身も目的を持って女の子に近づいていたことは確かだ。しかし、スヨンと自分の間にはそうしたある種の垣根がなかったし、まず彼女には男に媚びて生きるということが念頭になかった。あれから、ゼミの日が来るのが楽しみになった。4年生の創作ゼミは人数が少なく、12人しかいない。その中でも本当に作家を目指すものは半分にも満たなく、ヨンサン目当ての女の子も含まれていた。ゼミの教室は選択教室といって、真ん中に大きな楕円の会議用テーブルがあり、それを囲むように教官と学生が座った。ヨンサンとスヨンの席は斜め向かいだった。 >6月に入ってからは、この間製本されたゼミの文集を読んで、それぞれの作品の意図と問題点などを検証していく作業をしていたが、ヨンサンはスヨンの分析に注目していた。多くの学生は牛乳瓶の底のスヨンが話し出すと、「あいつかよ」という顔でろくに話を聞いていない。ヨンサンはあの日から、彼女のメガネにはだまされない。彼女の話すことがしっかり聞き取れる。顔を見ないで聞いていると、あの美少女のスヨンがしっかりとした自分を持って分析している。話し終わったスヨンにヨンサンは笑顔を送った。スヨンもそれに気がついて、にこやかにヨンサンを見た。授業が終わって、学生たちは次々に席を立っていったが、ヨンサンは彼女ともう一度話がしたくて、席を立たずチャンスをうかがった。今日初めて気がついたのだが、彼女の横にはなかなかハンサムな学生、パク・インジュンが座っている。今まで、ヨンサンは彼女のことなど考えたことがなかったから、その席順というものが示す意味がわからなかったが、よく見るとインジュンはスヨンになんらかの感情を持っていて、隣を確保しているようだった。ヨンサンがスヨンの帰り支度をしている様子を見ていると、それに気がついたインジュンがかなり厳しい視線をヨンサンに送ってきた。どういう関係なのか、あの二人は・・・。ヨンサンの気持ちが揺れる。インジュンはスヨンが最後に筆記用具をしまい終えたところで、スヨンに言った。イ:学食に行かないか?ス:ああ。(時計を見て)今日はコミック雑誌の編集者の人に会う約束なんだ。30分だったら付き合えるけど。イ:(うれしそうに)いいよ、それでも。そういって二人は立ち上がった。ヨンサンは自分でもなぜだかよくわからないくらい胸が痛くなるのを感じた。今日のスヨンは相変わらずの牛乳瓶の底なのに・・・。立ち上がったスヨンはインジュンが後ろを向いた隙に、斜め前のヨンサンににこやかに笑いかけ、はにかんだように胸のあたりで小さく手を振ってさよならをし、インジュンとともに去っていった。手を振ってくれたことはうれしいが、こんな気持ちで女の子を見送ったことはなかった。せつない思い、それが今のヨンサンだ。ヨンサンファンの女の子たちがヨンサンを囲んだ。女:ねえ、お昼にしようよ、行こうよ、ヨンサン。ヨンサンは皆と同じようにノンキに昼食をとる気にはなれなかったが、ひとりが女:早く行かないと、学食、席が取れないよお。と言い出したので、ヨンサンは少し元気を取り戻して、ヨ:よし、行こう。女の子3人を従えて学食に行く。スヨンとインジュンは、既にランチのトレイを手に持って席に着こうとしている。ヨンサンはまずスヨンがよく見える席を取ると、女の子にヨ:この席とっておいて。一緒に買ってくるから。一人を席取りに残し、ランチを買いにいく。ヨンサンたち4人は仲良く食べだしたが、ヨンサンはスヨンとインジュンが気になって、チラチラ向こうの席を見ている。ライスを一口食べて、スヨンのほうを見上げたヨンサンの目にスヨンの視線が入ってきた。その瞬間、ヨンサンの周りには誰もいなくなり、スヨンしかいなかった。スヨンもヨンサンをしっかり見つめている。まるでスローモーションのようにスヨンが微笑み、二人の視界の中には他の人間は存在せず、音もなく声もなく、そこにはヨンサンとスヨンしか存在しなかった。牛乳瓶の底のスヨンは今までのスヨンではなく、表情豊かなヨンサンのスヨンに変わっていた。あの部室の前で会った日から、出会って二週間の間にスヨンとの距離が縮まるわけはなく、ヨンサンは小説の構想を練りながらも、自分が恋に落ちたことをはっきり認識するに至った。ベッドに寝転んで、スヨンのことを考える。胸に痛みが走る。あいつはどこに住んでいるのか。インジュンとの関係も確かめることができなかった。彼氏なのか。ヨンサンは自分を持て余した。ヨンサンを好きでしょうがない女の子はいくらでもいるというのに、自分が好きなのはスヨンだけなのだ。代わりがいないか・・・。そういうことだ。恋をするということは。7月も半ばに入った土曜日、ヨンサンは文芸部の部室に夏合宿の予定表をとりに出かけた。もう後輩にクラブの運営を譲ったものの、最後の夏の合宿には自分もアドバイザーとしてついて行くつもりだ。正門からまっすぐイチョウ並木を歩いていくと、正面の図書館の中から、スヨンが現れた。ヨンサンは心臓が止まりそうなほど驚いたが、うれしかった。夏休みの前に会えたこと、こんなチャンスを逃すわけにはいかない。ヨンサンは走ってスヨンのほうへ向かった。ヨ:スヨン!彼の声に気がついて、スヨンはヨンサンに小さく手を振った。ス:元気だった?スヨンはうれしそうに、はにかみながらそう言った。おまえに会いたかったよ。ヨンサンはそう言いたかったが、言葉に出すと、あまりに唐突のように思われた。ヨ:おまえは? マンガ描いてんの?ス:うん、なんとかね・・・。あんたは? やってる?ヨ:ぼちぼちね・・・。そう、おまえの事を考えていて、小説どころじゃないよ。ヨンサンは思い切って、言葉に出してみる。ヨ:ねえ、これからどこか行かない? 少し話をしようよ。ス:(腕時計を見て)うれしいけど、今日はインジュンとここで待ち合わせしてるんだ。もうすぐ来ると思う。ヨンサンはこれだけは聞きたい。・・・一歩踏み出せ!ヨ:インジュンとつきあってるの?ス:えっ? ああ・・・ただの友達だよ・・・私は。インジュンは私を避けないし、ちゃんと友達として認めてくれる人なんだ。(ヨンサンを見て)・・・あんたもそうだよね? 彼ってこんなメガネの私もぜんぜん気にならないんだって。皆、こんな不さいくと一緒に歩くのいやがるのに。ヨンサンの頭の中は嫉妬でいっぱいだ。ヨ:オレだって平気だよ。おまえがメガネかけてたって。スヨンはちょっと興奮して話すヨンサンを不思議そうに見つめる。本当に信じていい? もしかして・・・。ス:ありがと。じゃあね。また秋にね。スヨンがあまりにあっさりとさよならを言い出したので、ヨンサンはあわててしまうが、なんとか何か切り出したい。しかし、スヨンの目が正門のほうに向いていて、ス:インジュンがもうあそこまで来てるから、私行かなくちゃ。(歩き出す)ヨ:スヨン、今度オレとデートしないか。スヨンは振り返って、ヨンサンを見た。ス:えっ?ヨンサンがどうしたいのかよくわからなかったが、ちょっとひらめいて、ス:そうか、小説の話ね。私もあんたとマンガの話、したいよ。なんかあんたは私をわかってくれるような気がするから。いいよ。ヨンサンの視界にもインジュンが入ってくる。ヨンサンは慌てて、スヨンの電話番号を聞き、8月の第一週までは実家に戻らず、ソウルのアパートにいることなどを聞き出した。スヨンはにこやかに笑うと、インジュンのほうへ走っていった。続く・・・やっと電話番号をもらったヨンサン。スヨンのほうの感触もいいようではありますが。これから、二人の夏が始まっていきます。一生忘れたくない夏。一生心に刻む人・・・。ということで、中編部に進んでいきま~~す^^
BGMはこちらをクリックチョ・ソンモ「君がいないと・・・」 BYJシアターです^^「隣のあいつ」第2章です。元気いっぱいでいながら、超切ない恋のお話。私の代表作です。禁句がどこかに入っているらしく、少しずつ、確認しながらアップしていきます。ヨンサンとルル・・・5年前の春の作品ですが、いつ読んでも、新鮮で、作者の私にもときめきをくれ、心が温かくなります^^もちろん、ヨンサンは同感のサングラスのjoonです!ではお楽しみください!~~~~~~~~~~~~~~「隣のあいつ」前編の2ぺ・ヨンジュンチャン・ドヨン主演【第2章 再会のとき】ミー姉さんからの電話が入った。ミ:今朝、成田を出たって。だから、もうすぐそっちへ着くと思う。今回は男性編集者と二人旅だったらしいわ。ルル、聞いてる?ル:うん。ミ:大丈夫だよね。気を確かにね。ルルがそこでどうしたいんだか、よくわからないけど、まあ頑張って。じゃあね。また、来週、顔出すから。ル:うん。姉さん・・・・ありがとね。それから、ルルは窓の外を覗いて彼が帰るのを待った。4時過ぎにタクシーが止まり、ヨンサンらしき人が降りてきた。トランクからスーツケースを出している。やっぱり、ヨンサンだ。ああ、現実だ。これは現実! 今、ヨンサンが帰ってきた。ルルは部屋を出ようとするが、勇気がない。ドアの内側の覗き穴から外を覗く。しばらくして、スーツケースを引きずる音がして、ヨンサンが見えた。サングラスをして、すうっと通り過ぎた。今行けば、会える。・・・でも勇気が出ない。なんていうの? こんにちは? おう、久しぶり! 今日はムリだ。・・・やはり、私は無謀だったのか・・・。翌日午前11時。ルルはアズキ色のカットソーにサンドベージュのパンツ姿で、ヨンサンの部屋の前に立った。チャイムを鳴らす。ヨ:はい。ル:(呼吸を整えて)隣に引っ越してきた者ですが、ご挨拶をと思いまして。ヨ:今行きます。ルルは心臓が痛い。ドアが開く。視界が開けて、ヨンサンの顔が、ルルの顔が、お互いがはっきり見える。ヨンサンは驚いて少し固まる。ル:・・ヨ、ヨ、ヨンサン。(上ずるな!)ここに住んでたの? この間の水曜日に隣に引っ越してきたの・・・。ヨ:・・・・。(見つめているだけで言葉が出ない)ル:・・・これからもよろしく・・・。(ちょっと下を向く)ヨンサンが何も言わないので、これは引き下がるしかない。ル:じゃあ・・また・・。ルルが帰ろうとすると、ヨンサンが、ヨ:まあ、上がれよ。お隣さん。ルルはびっくりしてヨンサンを見て、中へ入る。ヨンサンはダイニングテーブルの上に置きっぱなしだったキーホルダーをサッとポケットにしまう。後ろからルルが入ってくる。ル:おじゃましま~す。ヨンサンの部屋はキレイに片付いていて、昨日まで出かけていた家とは思えない。きっといつもキレイにしているんだ。少し懐かしい。ダイニングを通り、広いリビングに入る。南向きのこの部屋には、窓際の角に大きな観葉植物が一つ置かれ、サイドボードがある。白いソファは大きく、L字型になっている。カーテンは天井から吊るされていて、クリームがかった白だ。レースのカーテンはあえてつけていないようだ。センスがいい。ヨ:座ったら。ル:うん。ルルはソファの一番奥の端っこに腰掛ける。それを見てヨンサンがちょっとフンといった感じで、笑った。ヨンサンは手前の角に腰掛け、ルルを見る。今日のヨンサンは紫がかったグレーの柔らかいシャツに黒のパンツをはいていて、ちょっとセクシーだ。ヨ:今なんて名前だっけ?ル:ルル。ヨ:そうだ・・・。(下を向いて)昔の名前もよかったよ。誰がつけたの?ル:編集者の人。私のマンガに合ってるって。ヨ:ふ~ん。でも描くものが限定されるな。・・・コーヒーでも入れるよ。ヨンサンが立ち上がり、リビングに入り口のある寝室のドアをパタンと閉めた。コーヒーができる間、ルルは緊張しながら、部屋を見渡したが、何よりもこの部屋に漂うヨンサンのコロンのニオイが甘く心に沁みてきて、うっとりする。ヨ:(キッチンのほうから)メガネ、変えたんだ。ル:(ヨンサンに聞こえるように)うん。プラスチックになって、薄くなったよ。ヨ:見やすくなっただろう。ル:うん。何より歪みがなくなって見やすくなった。それに重さもぜんぜん軽くていいよ。ヨ:それはよかった。ルルは他に話すこともなくて、ル:ヨンサンの書斎、見てもいい?ヨ:ああ。ヨンサンが戻ってきて、ルルを案内する。書斎は見せても寝室はだめなんだな、きっと。書斎は6畳ちょっとというくらい小さいが、左の壁いっぱいに書棚。右手には書棚とオーディオセットが置かれていて、下のほうに本が積まれている。正面には大きめの机があって、PCや資料が置いてあり、使いやすそうだ。何より、ルルが気に入ったのは、机の全面に一枚ガラスでできた大きな窓があり、そこから漢江が見渡せる。そして、上のほうは収納棚になっていて、棚の底には蛍光灯がついていて、照明の点でも合格だ。やっぱり、ミー姉さんが言ったとおりだ。ル:(感激して)ステキだね。いい書斎だね。東向き? 日差しが変わらないからいいな。マンガなんか描いたら最高だよ。景色もいいし。この王様のイス、本皮? 本はこれだけ?ヨ:隣に書庫があるんだ。あ、見てて。コーヒーができたようだから。ル:うん。ルルは書棚に手をかけると、ヨンサンの本を取り出す。中を見る。ヨンサンは書斎に戻り、ルルを呼ぼうとするが、ルルが首を傾けて本を読み、ゆっくり繊細な人差し指でページをめくるのを見て、立ち止まる。しばし、見つめる。しかし、これ以上はもう・・・ヨンサンが、気分を入れ替えて、ルルを呼んだ。ヨ:コーヒー、入ってるよ。ル:あ、ありがとう。ヨンサンはマグカップを二つリビングテーブルの上に置く。ルルの席のテーブルの上にはキーホルダーが置いてある。小さな貝殻が樹脂の中に入っている。鎖は壊れたのか、違う鎖で止められている。随分長く使っているもののようだ。ヨンサンはこれを見て、ギクリとし、目のやり場がない。ルルが戻ってきて、あわてて、キーホルダーをポケットに入れた。一瞬二人の間に緊張感が漂うが、二人、なにもなかったように座った。ル:ありがとう。(コーヒーを一口二口飲む。しかし、もう気まずくなってしまい、席を立つ)ヨ:もう帰るの?(ルルを見る)ル:うん。玄関に来て、ヨンサンが口を開いた。ヨ:スヨン。ルルが振り返る。ヨンサンが見つめている。ヨ:・・・ごめん。ルルさんだったね。ル:(ヨンサンを見て)今日はありがとう・・・。私の、・・今ね、新しい机を頼んでるんだ。すごく大きいの。・・・来たら見に来て・・・。ヨ:うん。いいよ。ル:じゃあ。部屋に戻って、ルルはなんとなくやるせない。ヨンサンはヨンサンのままだった。私が引っ越してきたことを、怒りもしなかった。あの入隊の日のことも確認しなかった。ここに来てよかったのかな。まだ始まったばかりだよ、ルル。明日は明日の風が吹く。あんた、女出入りがあっても、へっちゃらって、ミー姉さんにいったじゃない。まだまだ甘いよ、ルルは。これからこれから。でもさっき、ヨンサンが「スヨン」って呼んだ。胸に突き刺さったよ。やっぱり、忘れることなんてできないよ。・・・・諦めるなんて、できない。ヨンサンのダイニングテーブルの上。ヨンサンのキーホルダーが置いてある。男にはめずらしく、小さな巻貝の入った樹脂で固められたキーホルダー。鎖は新しいものになっているが、古いもののよう。ヨンサンの後ろ姿。ヨンサンはリビングで窓の外を見ている。最初、亡霊でも見たかと思った。スヨンだった。・・・オレのスヨンだった。【第3章】へ続く・・・・3章にアップできない文字があるのかな・・・。1章ずつ点検しながら進みます^^一生忘れたくない夏。一生心に刻む人・・・。では・・・
BGMはこちらをクリックチョ・ソンモ「君がいないと・・・」 BYJシアターです^^残り少ない私の創作^^私の中では、ライフワークに近いキャラクターが二人います。その中の一人イ・ヨンサンをご紹介しましょう^^共演はチョン・ドヨンさんです。先日のスンスさんの本で、ヨンジュンさんがドヨンさんの新しい映画を見ているのを知って、うれしかったです^^さて。これは、2005年3月からの連載「隣のあいつ」です^^イ・ヨンサンはその主人公です。彼は私の中では格別な彼の一人です。もう一人凄い人(爆)いるんですけどね^^もう5年も時々、彼のその後を書いています^^というより、彼はソウルに住んでいるんですね^^先ほどアップしようとしたら、禁句が含まれていると出てしまったので、短くして少しずつアップしていきます。どこに禁句が入っているのかわからないので。ということで、いつもよりは短いですが・・・・出だしから、ドキドキざわざわ、胸が騒ぐのは私だけでしょうか・・・。元気があって、超切なくて、恋しさいっぱい・・・それが「隣のあいつ」です。配役を確認してくださいね^^イメージが大切です!同感の彼がヨンサンです。また昔の作品には、挿入歌もありました~^^【配役】イ・ヨンサン :ぺ・ヨンジュン(大学4年~30歳。小説家・メガネなし・サングラスのみ・・同感2を参考に)ルル(キム・スヨン):チョン・ドヨン(大学4年~30歳。マンガ家・メガネあり)ではここより本編。私の大好きなお話・・・いえ、彼らはきっとソウルにいます^^どうぞ、お楽しみください!【隣のあいつ】1主演: ぺ・ヨンジュン チョン・ドヨン【You’re the one!】(主題歌)You’re the one! (あなたなの!) You’re the oneentirely in the world! (世界で一人、あなただけ!)他を探してもだめよそんなに簡単には見つからないあの手この手で探しても代わりの人なんていやしないYou’re the one! (あなたなの!)You’re the one entirely in the world! (世界で一人、あなただけ!)人を好きになるってそういうことあなたじゃなきゃだめだからやりなおすチャンスがあるならば代わりの人ではむなしくてYou’re the one! (あなたなの!)You're the one I truly love in the world. (世界で一人、本当に愛してるのはあなただけ)堂々めぐりはいやだから心を見せて告白するわずっと私にできることそれがあなたを愛することYou’re the one! (あなたなのよ!)You’re the one entirely in the world! (世界に一人、あなただけ)そこに愛があるのならば掴んでぜったい放さないOh, my sweet darling (ああ、私のダーリン)Please accept my whole love. (私の愛をぜんぶ 受け止めて)Forever! (いつまでも!)I’ll make you happy Forever. (ずうっと幸せにしてあげる)【第1章 引っ越す!】最近、マンションの上の部屋の音にはまったく辟易としている。120キロを超えた奥さんがここのところ、ヒップポップダンスに燃えているのだ。ルルはモノには限度がある、と思う。昼ならまだしもこの夜中の12時に至っても彼女は踊り続けているらしい。奥:ルルちゃ~ん、ヒップホップの先生、ステキなのよん。まだ23なんだけど、かっこいいってないの! ルルちゃんもやらな~い?ルルは、マンション1階のメールボックスの所で何度この話を聞かされたことか。わかった、わかった。この奥方は、ルルの連載しているコミック雑誌の編集長の奥方だから、文句のいいようがない!まったく、こんな夜中に! こっちは仕事してんのに。まあ、旦那が帰らなくて寂しいかもしれないけど。その旦那、ひいてはあんたも食べさせてるのは、私たちだよ。少しは仕事させてよ。今日もだめだ、仕事も睡眠も・・・。なんとかしなくちゃ。翌日の昼。おいしいランチを持って、編集者のミー姉さんが現れた。ミ:ルル。ここのおいしいのよ。食べてみてよ。今度の特集ページの打ち合わせ、食べながらしようよ。ル:うん。ミー姉さんはルルより6歳上の36歳。痩せぎすのお姉さまだ。ルルがコミック新人発掘大賞を受賞してからの担当で、長年、一緒にやっている。なんと言っても、彼女の、「この子は本物です」という後押しがあって、ルルが受賞したのだと後から後輩編集者から聞いている。それだけに恩義はあるし、センス的にも二人はとてもよく似ていた。二人は丸いテーブルに並ぶように座り、お弁当を食べている。ル:ミー姉さん、どっかさ、いいマンションないかなあ。ほら、聞こえるでしょ。あれ。毎日、時間構わずやられてて困ってんだ。ミ:編集長の奥方? 帰ってないのよ、あの人。他に行っちゃってるんだって。ル:そう、でも困るよ。仕事もできないし。眠ることもできないんだよ。ミ:う~ん。いいとこね。(はっと思いつく)一つだけ知ってるけど、ああ・・・。ル:どこ?ミ:ルルにはどうかな・・・。(しばし考えるが、仕方ないかという感じで)オカマのヘボさん、知ってるでしょ。彼女がこの前まで住んでた所。だから、部屋の中はめちゃくちゃキレイに掃除してあってね、環境は抜群なんだけど・・う~ん・・。ル:なんで出たの?(オバケのような手をして)これ?ミ:(笑って)違うわよ。風水だって。今の彼が香港出身の人らしくて凝ってるんだって。ル:へえ。そこは私には向かないの? なんで?ミ:(ルルを横目でじいっと見て)イ・ヨンサンが隣に住んでるのよ。やでしょ?ルルは、驚いてちょっと固まるが、次第に顔が赤くなってきて、ミー姉さんを見つめて、ル:本当にそこ、空いてるの?ミ:ルル、やめときなさいよ。・・・なんで言ったかというと、他の人があんたに勧めるといけないなと思って、私が言いました、マル。ル:(真剣な顔をして)本当に隣? 隣だよね? 本当に空いてるの?ミ:(呆れた顔をして、ルルを見て)あんた・・・。彼が入隊した時、バカみたいに車走らせて会いにいったわよね。あの時の、彼を見送るあんたの後姿、忘れられないもん・・・もうやめなよ。大学時代のことなんでしょ? もう忘れた方がいいわよ。ル:(静かに、お弁当の中を見ながら)忘れない。絶対、忘れない。死んでも忘れない。(ミー姉さんを見つめて)あいつが懇願してきても忘れない。姉さん、私、そこへ行くよ。引っ越す! 不動屋さん、紹介して。 ね! ミー姉さん!次の日の朝、あんなに嫌がっていたミー姉さんから、早速電話があった。まだ空いていると。そして、今週中はイ・ヨンサンは日本に取材旅行に出かけていると。ルルは取り急ぎ今日の午後、その部屋を見せてもらう約束をして、マンションに向かう。10階建てのりっぱなマンションの入り口にミー姉さんが立っていた。ミー姉さんはカギを預かっていて、部屋に案内してくれる。8階に着くと、ルルは自分が呼吸困難になるのではないかと思うほど、息苦しくなった。今日はヨンサンに会うことはないのに。安心していいのに。ワンフロアに8軒ずつ入っていて、通路を歩いて一番奥の東南の角がヨンサンの部屋だ。ルルが訪れた部屋は、その隣。ミー姉さんがカギを開ける。ミ:ここよ。平気? ルル。ルルの目はヨンサンの部屋のドアを見ている。ルルはミー姉さんに促されて、うなずくのがやっとだ。中へ入ると、確かにオカマのヘボさんがキレイに暮らしていた様子がよくわかる。下手な女の一人暮らしより、洗面台、キッチン、サッシがキレイに磨きこまれている。窓際に立って見る。なかなか眺めがいい。ミ:ここの窓は全部南向きだし、明るいわね。隣のイ・ヨンサンの部屋は、ここより一部屋分大きいらしいわよ。東側の書斎から漢江が見えるって文芸部の先輩が言ってた。ル:そう。でも、これでも今のとこより広いよね。(歩きながら)このリビングを仕事部屋にして、隣は寝室でしょ。あっ、この小さい部屋は・・・書庫にする。う~ん、いい感じ。気に入ったよ。ミ:(小さな声で)でも隣はイ・ヨンサン。ル:今はそれが第一条件!ミ:あいつのどこがいいの? 小説はいいけど、本人はぶっきらぼうでスカしたやつ。女出入りもあるってよ。ル:(きっぱりと)気にしない。ミー姉さん、何が心配? 放っておいたって私なんか結婚できるタイプじゃないんだからさ。なんにも失うものはないよ。・・・好きな男の隣に住む。最高でしょ?ミー姉さんは胸が痛くなる。ルルのヨンサンに対する愛というのか執着というのか、不思議なくらい揺らぎがないのだ。二人がどのような経緯で仲よくなって、別れたのかは知らないが、どうひいき目に見ても釣り合わない。大学時代のルルは、牛乳瓶の底のような度の強いメガネをかけた冴えない女の子だった。話をすれば、確かに頭の良さや人柄の純粋さが伝わってきたが、どう見てもオタクといった感じの女の子だった。相手はあのイ・ヨンサンだ。同じ出版社の文芸部の先輩の話では、大学時代から原稿を持って編集部を訪れていたヨンサンは、女性社員が驚くほど、キレイだったという。確かに今も美しいが、彼には女性問題が尽きなくて、ミー姉さんなどは引いてしまうのだ。それなのに、大学時代から一貫してヨンサンを思い続けているこのルルという人。その純愛っていったい・・・。ヨンサンはどう思っているのか。ルルはただのストーカーなのか。イ・ヨンサンの噂の女たちはゴージャスな女ばかりだ。いったいルルとヨンサンにどんな接点があるというのだ。4年前。仕事の途中でなにげなく、ミー姉さんは、去年、小説新人大賞を受賞したイ・ヨンサンが入隊することになり、ファンの女たちが泣いているという話を笑いながらした。ミ:どんなにいい男だって、俳優の入隊じゃあるまいし、よく泣けるわよね・・・。ル:(ちょっと硬直して)・・・いつ? いつ、入隊するの?その声はいつものルルと違って、とても低い声だった。ミ:え~。あんたもファンだったの? ああ、大学が一緒だったんだ。 ルル? ルル? 大丈夫? ル:姉さん、いつ? ミー姉さんはルルの様子が急変したので慌てて、文芸部に電話を入れた。ミ:明日だって。ル:・・・・。ミ:ルル? ルルったら。ル:行く。会いに行く。姉さん、車に乗せてって。彼が入隊するところ、見届けたいんだ。遠くからでいいからさ。ミ:(首をかしげながら)どういう関係?ル:(ルルは目を落として、自分のツメを指先で撫でながら、静かだが、低いやさしい声で)・・・昔、知ってた人。・・・一番、好きだった人。・・・絶対にキライになれない人。・・・忘れられない人なんだよ。(そういうと机にうつぶせる)そういった時のルルは、ミー姉さんが初めて知る、女の顔をしていた。そして、あの日のルル。ミー姉さんがルルを乗せ、車をとばして出かけたあの朝。遠くから見守るルルの放心したような哀しげな後姿。あの時もルルは切ないほどに女だった。やっと引越しの荷物の整理がついて、そろそろ仕事にとりかかろうと思うのだが、ヨンサンが一両日中には日本から帰国するというので、気がそぞろになってしまい、まったく仕事に打ち込めない。姉さんはこれを心配してたのかな。ちゃんと仕事はするよ。でもね、まずヨンサンに会わないと。私がここにいることを教えなくちゃ。あいつ、嫌がるかな。歓迎は・・・してくれないか、やっぱり。でもあの時。ルルが最後に見た入隊の時のヨンサン。遠くからだったけど、あの時、しっかり私を見てた。確認してた。私にはわかる。私を見つめるあの目。あれは大学の卒業式の帰り、正門に向かうイチョウ並木でお互いを確認した時と同じ眼差しだった。あの時と同じようにメガネの奥にいる私をしっかり見つめていた。・・・たぶん、ヨンサンは、私がここに来ても怒ったりはしない・・・そうだよね、ヨンサン。8年前。大学の卒業式の帰り。私は一人、正門へ急いだ。謝恩会も出たくない。もう二度と彼には会いたくないんだ。彼の顔はもう見たくない。胸が苦しくなるから。この日は、いつもの牛乳瓶の底のメガネをかけて、髪を一つに縛り、紺のスーツを着てその上に卒業式用のケープを羽織っていた。手にはバッグと卒業証書。構内は卒業生やその家族でにぎわっていた。その中を一人、友達もなく、正門へ急ぐ。正門へ続くイチョウ並木を、一人、まっすぐに脇目も振らずに歩く。左手前に見えるイチョウの木の下に卒業生たちが何人か集っている。ふと見ると、その中にヨンサンがいて、強い視線を私に送っている。彼を取り巻く周りの子達がヨンサンの視線に気づいて振り返り、私を確認すると、また不思議そうにヨンサンを見つめるが、彼はまったく目をそらすこともなく私を見つめている。いつものように、いやいつも以上に彼はステキだった。黒のスーツに白いワイシャツ、黒の細めのタイをつけ、そのうえに少しアズキがかった色の卒業式用のケープを羽織っている。手には卒業証書と優秀賞。誰よりもステキだ。一番会いたくなかった人だったのに、一番会いたくて、見つめたくて仕方がない。私は目をそらすことができない。あんたのその姿から目を離すことなんてできない。私は泣きそうな気持ちを抑えながら、眉間にしわを寄せてあんたを見つめた。そこを通過するまで、何分、いや実際には何秒だったかもしれないけれど。でも、もう他の人は見えなかった。あんたしか見えなかった。ずっと私を見てたよね。瞬きさえも感じなかった。私たちは吸いつけられたように見つめ合い、そしてそのまま、別れたよね。まるで、スローモーションのように見えたよ。あの夏をくれた人。一番好きだった人。心から愛した人。そして、全身全霊で愛せた人。それがイ・ヨンサンだった。【第2章】へ続く・・・