KA・ZO・KU
私のデビュー作。2年3ヶ月前の作品です。サークルでは前後編に分けましたが、
本来はこれがオリジナルです。原文のままUPしようと思っていたのに、変な改行、
変な文法^^にやっぱりほんの少し手を入れました(笑)
書いた時にはこの作品だけで終わるつもりだったのに・・今に至っています。
何から話せばいいんだろう・・・・
僕とヒョンとの事、母さんとの関係・・・
ヒョンは、ごく当たり前にいつも僕の傍にいたし、
それを不思議に思った事もなかった。
あれは、僕が5歳の頃。
ヒョンがこんなにアジア中の注目を集める人物になるなんて、
思ってもいない頃。
母さんと、ヒョンは出逢ったんだ・・・
「こら!!レウォン!いつまで寝てるの!起きなさい!
早く朝ご飯食べて!遅刻しちゃうよ!」
毎朝の母さんのカミナリ。
よくも毎日飽きずに同じセリフを言えるよな。
自分が寝坊したからって、いつも僕のせいにする。
しかも、どんなに寝坊しても朝食は欠かさない。
「朝食は、一日の力!」これが、母さんの持論。
・・・いいかげん、耳たこだよ!
僕は、「シン・レウォン」この時5歳。
ごく普通の保育園児。
母さんは「高山 笑」26歳。
現代映画社で広報の仕事をしてる。そう・・・日本人だ。
母さんは20歳の時、父さんと結婚して、ここソウルにやって
きた。
父さんとは日本の大学で知り合って、大恋愛の末、駆け落ちし
てきたんだ。
日本には、僕のお爺ちゃんやお婆ちゃん、母さんより3つ下の
叔父さんがいるらしいけど、僕は会ったことがない。
それに・・・父さんにも・・・
父さんは僕が生まれる前、母さんが妊娠7ヶ月の時、交通事故で死んだ。
道路に飛び出した子供を助けて轢かれたんだ。
だから母さんは、外を歩く時は、絶対僕の手を離さない。
じーっと前を見て、何にも話さない。普段はあんなにお喋りで、
大口開けて笑ったり、TVのドラマ見てぽろぽろ涙流してるのに。
片親で、しかも、日本人とのハーフ。
目つけられる条件揃ってるよな。
保育園に入ってやっぱ、きたきた。
どっから聞いてきたんだか、うるさそうなおばさんが。
母さんに何の文句があるんだか、アパートの玄関口で、
やいのやいの。
「え~い!うるさい!僕の母さんをいじめるなー!」
僕が飛び掛ってったら、なぜか、母さんの平手打ち。
“ばっち~ん!!”
「アンタは黙ってなさい!」
その圧倒的な迫力に、おばさんたちも
「あら、まあ、ほほほ・・」と、すごすご帰ってった。
高山 笑。恐るべし・・・
母さんは僕のジンジン痛むほっぺたを冷やしながら、
「レウォン、強くなりなさい。父さんがいない事も、母さんが
日本人なのも、アンタには何の罪もない。だから、正々堂々と
生きなさい。そして、悔しかったら強くなりなさい。
あんたは男の子なんだから・・」
僕は、母さんが大好きだった。
そんな時、僕らの前にヒョンが現れたんだ。
ジュンに初めて逢ったのは、映画のロケ現場だった。
冬のとても寒い日で、スタッフ、キャスト、皆震えていた。
「おい!そこの若いの!コーヒー買って来い!」
「ハイ!」
助監督の声に走り出した一人の青年。
「あんな子、ウチにいたかしら?」
「ああ・・笑ssi、逢った事なかったっけ?ヨンジュンだよ。
2ヶ月くらい前バイトで入ったんだ。体力あるよ!ガタイもいいし、
顔もいい」
「へ~・・・大学生?かな・・」
それから一時間後、重そうなヤカンとカップを持って、
その青年は帰ってきた。大粒の汗をかいて、真っ赤な顔で・・
私は、スタッフにコーヒーを配る彼を見つめていた。
そうだ。
今思えば、ジュンに私は一目惚れしたのかもしれない。
その時の私は気が付かなかったけれど・・・
「君・・どこで、コーヒー買ってきたの?
この辺、店なんか何にもなかったみたいだけど・・」
「ええ、そうなんです。随分探したんですけど見つからなくて。
しかたがなかったんで、近くの民家でコーヒー淹れてもらいました。
だから時間掛かって・・どうもすみませんでした!」
恥ずかしそうに彼は答えた。
「そう・・なかなかやるわね!あ・・名前聞いてなかったね。
私は広報の高山 笑。ヨロシク」
「ヨンジュンです。制作部のバイトです。笑ssi?
日本の方ですか?こちらこそ、よろしくお願いします」
そう言うと、年長者にするように、肘に手を添えて握手に応えた。
「またか・・・どうして、こっちの人は年齢にこだわるかな~。
ヨンジュン君、あなたいくつ?私の方がそんなに年上??」
「すみません、気に障りましたか?でも、僕よりお姉さん・・
ですよね!」
悪戯っ子の様な顔で微笑む。
改めてよく顔を見ると・・たしかに美青年だ。
笑うと目がくじらの形になる。
「お姉・・ま、だ26歳よ!君は、22?23?」
「僕は21歳です。ああ・・アハハ!何か僕たち、気が合いそうな
気がしません?僕、妹しかいなくて、お姉さんが欲しかったんです。
・・・そうだ!今から、ヌナって呼ばせてもらっていいですか?
僕の事も、遠慮せずにジュンって呼んで下さい。
ヌナ・・・ヌナ・・うん、いいな。決まりですよ!」
出逢ってまだ10分と経たないうちに、私たちは姉弟関係(?)になった。
それから、なぜかよく、私たちは会社ですれ違った。
階段で、社員食堂で、あわてて入ろうとしているトイレの前で・・・
そのたびに、あの悪戯っ子の様な微笑で、
「おはよう!ヌナ!」
「今日は何食べるの?ヌナ!」
「あわててるね・・ヌナ♪どっちの方??」
あ・の・ね!どうして、私にかまうのよ!
それでも、時々ジュンと話す時間は心地よかった。
少したれ気味の目をさらに細めて、自分の事を話すジュン。
【将来映画監督になりたい事】
【2回も受験に失敗して、両親に心配かけてしまった事】
【高校時代の武勇伝】
「ヌナは日本で何をしていたの?」
「恋愛経験あり?彼氏いるの?」
彼の質問に戸惑ってしまう事もあったけど、ジュンとのそんな
時間は私にとって、大切なものになっていた。
出逢ってから3ヶ月。
主人を失ってから、初めてのこんな穏やかな気持ち・・
「ヌナ!僕これからロケなんだ。ハハ・・また交通整理。
ねえ、帰ったら一緒に晩御飯、食べに行こう。じゃ、行って来るね~」
なんて、無邪気な奴。まだ私のことよく知りもしないくせに・・・
晩御飯か・・私は、その日、一つの決意をした。
ジュンがロケから戻ったのは、ちょうど私が退勤する時間だった。
「ジュン、晩御飯、私の家で食べよう。パスタ好き?
・・・その前に、ちょっと付き合って・・」
「ここ・・どこ?・・」
「見た通りよ。保育園」
「母さん!おっ帰り~~!・・・誰?・・・・父さん?」
「違うわよ、レウォン。この人は、母さんの会社のお兄ちゃん。
ジュン、レウォンよ。私の息子」
「息子?・・・・ヌナ、結婚してた・・の?」
「うん、この子が生まれる少し前までね。レウォン!今日は、
お兄ちゃん、一緒に晩御飯食べてくれるって。お家で。」
「ええー!!お客さんなの?初めてだね、お客さん。うれしいな♪
お兄ちゃん、なんて名前?僕、シン・レウォンだよ!よろしくね~」
それが、僕とヒョンとの出逢い。
今から12年前・・か。
ヒョンは、それから(毎日の様に)家にご飯を食べにきた。
僕達はテコンドーごっこをしたり、TVゲームをしたり、思い切り遊んだ。
ヒョンはまるで、子供みたいな人で、僕のおかずを横取りしたり、
(後から食べようと思って大切に取っといたヤツをだよ!)
ゲームで僕に負けると、5歳児相手でも意地になって
「もう一回!!」
と、必ず言う。
「母さん!晩御飯なに?~」
「ヌナ!お腹空いた!」
「ああー、もう!うるさ~い!!
ジュンなんか家につれて来るじゃなかった。
子供が2人になっちゃったじゃない!!」
母さんはぶつぶつ文句を言ってたけど、決して嫌そうでなく、
僕達がぎゃあぎゃあ言いながら遊んでいるのを台所のイスに
腰掛けて、ぼんやり見ていた。
あの時、母さんは何を思っていたのかな・・・
季節が変わって夏が来る頃、ヒョンは俳優になるため、勉強を始めた。
映画会社のバイトもまだ続けていたけどね。
「映画監督になりたいんだ。アメリカに留学したい。
そのためには、もっとお金を稼がないとな」
ヒョンは僕に、そう夢を語った。
ヒョンが俳優になる事を選んだのには、母さんがそうするように
薦めたのも大きかったと思う。
母さん達の会社で作った映画に、エキストラで出演したヒョン。
「ジュンは、きっと、すごい俳優になるわよ、レウォン・・」
ほんの端役だったのに、母さんは夢見るように、そう言った。
そしてある日・・・
母さんのデスクの電話が鳴った。
「ヌナ!!オーデション受かったよ!秋からの新番組。
僕が主役だ!レウォンにもそう伝えて!」
鮮烈なデビュー。新人演技賞。取材。インタビュー。
etc、etc・・・・
僕らのヒョンはあっという間に、韓国中のアイドルになった。
母さんは録画したヒョンのドラマを、それこそ何回も、何回も、
セリフが全部スラスラいえるくらい見ていた。
僕と一緒の時は大はしゃぎで、楽しいシーンではゲラゲラ笑い、
僕が眠った後は、暗い部屋で膝を抱えて静かに見ていた。
あれから、ヒョンは家に来なくなった。
たまに、電話はかかってきたけど。
「元気?ご飯ちゃんと食べてる?」
そんな会話の後、母さんは決まって、
「レウォン。ジュンから電話・・・」と、
僕に受話器を渡してしまうんだ。
僕らは相変わらず仲良しで、ドラマ撮影の面白い話や、子供番組の
キャラクターに逢った話や、今度現場を見せてくれるというヒョンの
約束に胸躍らせてたりしていた。
でもしばらくすると、そんな電話さえ掛かってこなくなり・・
2年が過ぎたある日、ヒョンは突然やってきた、
下校時間。僕の学校に。
「よう!レウォン、久しぶり。でかくなったな~!」
校門の横に、ヒョンのスポーツカー。
僕の大好きなあの笑顔。
僕はなぜだか、めちゃくちゃに、ヒョンの胸を叩いていた。
涙で、ぐちゃぐちゃになって、それでも叩いていた。
「ヒョンのバカ!どうして今まで来なかったんだ!
逢いたかったのに・・ずっと、ずっと逢いたかったのに。
・・母さんだって・・・」
僕はその晩、帰ってきた母さんの顔をきっと一生忘れない。
僕とヒョンが、「お帰り・・」と言った時の母さんの顔。
ヒョンが、「ヌナ・・・」と言った時の母さんの顔。
その夜・・・
初めてヒョンは僕の家に泊まった。
その年のドラマは、「パパ」というタイトルのラブコメディーで、
ヒョンは、バツイチの子持ちの大学教授。
【24歳の年齢で、子供への愛情表現や嫉妬の感情を好演】と、
新聞にも書いてあった。
(8歳児でも、新聞くらいは読めたさ!)
そりゃあね。
僕と付き合ってたし、保育園にもよく迎えに来てもらった。
実に参考になったんじゃないかと思うけど?
それからのヒョンは・・もう言うまでもないか。
一年に一本に絞った作品選び。
苦しいくらいの役作り。
血の滲むようなトレーニング・・・
そんななかでも、オフの時はゆったり時間をとって一緒に旅行もした。
(最も、僕達の存在はごく一部の人しか知らないトップシークレット。
完全オフレコだったけどね)
そうそう、去年は、3人で、日本にも行ったよ。
初めて、お爺ちゃんや、お婆ちゃんにも逢った。
韓国人だってことで、反対された父さんとの結婚。
結局、また韓国の人連れて来ちゃったけど、
今回はさすがに驚いたらしい。そりゃ、そうだよね。ハハハ・・
ヒョンが、僕達の本当の家族になったのは、5年前。
僕の本名(?)は今、「ペ・レウォン」だ。
あ・・これこそ、本当の【トップシークレット】だね。
知っているのは、社長と、数人のスタッフだけ。
母さんは、結婚するつもりは無いって言い張ってたけど、
ヒョンの意思は固かった。
あるドラマの最終回のオンエアの晩、
僕の家にやってきたヒョンは、
ラストシーンと同じセリフを、母さんに言った。
「僕を 待ってた?」
こんなかっこいい事、サラリとやっちゃうんだ。
それがまた、憎らしいほど似合っちゃう。
役にのめり込んじゃうヒョンは、時々母さんを不安にさせる。
(事実、い・ろ・い・ろ・あったらしいよ)
あの二人の喧嘩は結構見ごたえあるよー!
母さんは、さばさばした(男顔負け!)な性格だけど、
焼きもち焼きで、涙もろい。
「私が何も知らないと思ってるんでしょ!ソン君や、ウンギョンssiが、
ちゃ~んと教えてくれるのよ!今度はあの娘ね・・アーー!
もう我慢できない。・・別れる!!」
「ヌナ~!悪かったよ。ね!機嫌直して・・・・
それにしても、あいつら・・余計な事を・・・」
「何?なんか言った?」
「いいや?ハハ・・何にも?」
「何が、微笑みの貴公子よ!何がアジアの恋人よ!!
やっぱり、若い娘がいいんでしょ?あなたのか・ぞ・くが聞いたら
ひっくり返るわね。天下のぺ・・・」
「待った!ストップ!あれは・・その・・ほら、役作りで、さ。」
(あ~あ・・ヒョン、認めちゃってるよ、それ)
「だいたい、あなたは、そういうことに対して自覚がないってい
うか、自分の立場がわかってないっていうか。
これから、高句麗の王様になるのよ!そんなことで・・・」
「ヌナ!!」
「ヌナって言わないで!!」
「えみ!」
「え?」
「僕は、笑だけだ。心から笑えるのは、笑の傍だけだ・・
わかってるよね」
「ジュン・・・」
「笑・・愛してる」
「ジュン・・・愛してるわ・・」
ああ~~。勝手にやってよ!僕、ココにいるんだけど・・
もう、なにも分からなかった5歳児じゃないんだよ。
僕、17歳になったよ。背も、もう少しでヒョンに追いつく。
来年は、ヒョンの通った大学にいくつもり。
そして、映画監督になって、僕の“父さん”を撮るんだ。
これが、僕の夢。
母さんと、ヒョンの話は、いつか・・また・・・
☆お・ま・け☆
母さんは【冬ソナ】だけは、まだ見てないんだ。だって・・・
ヒョンが交通事故にあうのは、ドラマでも嫌なんだってさ。
しかも2回もじゃ・・ね♪
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