KA・ZO・KU ― そして、未来へ・・・ ―
思えば、この話はサークルUP時には「最終話」と銘打っていました。
レウォンを書く事も、このシリーズそのものも最後のつもりで。
なのに、確か2ヶ月もしないうちに番外編を書き、その後も書き続けています。
彼のちょっとした言動やエピソードを知ると、このKAZOKUに当てはめて
考えたりして・・
さて、この回は例の「世紀の記者会見」です^^
シリーズもこのお話を入れて、あと6作。もう少しお付き合い下さいね♪
・・そうそう。このお話を書いたのはまだテサギがクランクアップする前。
撮影があんなに延びるなんて思ってなかった頃です。
なので、本当の日付とは大きな差が・・(笑)
「カット!!
はい、これで、すべて撮影終了となります。
クランクアップ、おめでとうございまーす!!
皆さん長い間、お疲れ様でしたー!」
2007年 初春
ソウルの撮影スタジオ
去年、いや、一昨年からヒョンがかかりきりだった大型歴史劇。
やっと、クランクアップの日を迎えた。
僕はスタジオの片隅で、スタッフに、にこやかに挨拶している
ヒョンを見ていた。
監督、助監督、照明さん、音響さん、美術さん・・・
そういえば、ヒョンはいつもスタッフの中にいる。
本来なら大スターとして、
ディレクターズチェアーにただ座っていればいいのに。
親しげに肩を叩き、
共に笑い、冗談を言い、
時には彼らの仕事を手伝う。
現場にいるヒョンは、とても男らしい顔をしている
長い撮影が終わった今は、開放感もあってか、とても晴れやかだ。
そんなヒョンを見ていた僕を、社長が見つけた。
「よう、レウォン!また、背が伸びたな。
もう親父よりでかいんじゃないか?
・・・なあ、相変わらずいい男だな、お前の親父は。
お前も、そう思うだろ?」
僕たちの目は、ヒョンをずっと追っていた。
「うん、信じられないくらいにね。
・・・ねえ、おじさん。ヒョンはね、僕の目標なんだ」
「あん?お前も俳優になるのか?あいつ、そんな事言って
なかったけどな。やる気があるなら、俺のとこに来い。
第2のヨンジュンになれるかもしれないぞ、お前なら」
「違うよ、おじさん。いろんな意味で、人生の目標・・かな。
とても超えられそうに無い、とてつもない大きな壁さ。
普通ならここで、グレたりするとこなんだろうけど、
僕はそれすら出来そうにない。
“偉大な父を持つ、宿命”ってヤツ?
僕もいつか、あんな男になれるのかな・・はぁ~なんか凹む」
「そうだな。ま、俺がお前だったら確実にグレてるな。
あんな男が親父だったら、息子はたまったもんじゃない。ハハ・・
・・大学、始まるのか?あいつ言ってたぞ!
“レウォンなら、ソウル大にも行けるのに”って」
「言ったでしょ?ヒョンと同じとこ行くって。
ヒョンは卒業できなかったからね。
僕はあそこで勉強して、アメリカに行く。
ヒョンの夢を僕が叶えるんだ。
・・でも、ほんとに僕にそんなことが出来るのかな?
“よし!頑張るぞ!”と思ったり、“アァ~”って落ち込んだり
何だか落ち着かないんだ。」
「ハハッ、青少年。まさに、そ、れ、が、青春だ!悩め、悩め!
・・まったくあいつは何でもできると思ったが、
子育てまで上手かったのか。あ~やだやだ」
背中越しに僕にひらひら手を振りながら、
社長はスタジオのスタッフの輪の中に入っていった。
「ん?どうした?レウォン」
ボーっとしていた僕の隣に、いつの間にかヒョンが立っていた。
「ん?あれ?もういいの?打ち上げは?」
「今回は大プロジェクトだからね。打ち上げも仕事のうち。
一週間後に、記者発表があって、その後にパーティーになった。
ま、スタッフはこれから飲みに行くんだろうけどな。
俺はほら、“家族が一番”だろ?・・ハハ!!笑にメールしたら、
もう家にいるってさ。ちょっと、待ってろ。顔落としてくる」
小さい頃から、僕はヒョンに連れられてよく撮影現場に
出入りしていた。母さんと正式に結婚してからは、
以前より少なくはなったが、それでもこの場所は、
いつでも僕を興奮させる。
監督の「よ~い・・・アクション!!」の掛け声。
カチンコの音。
音響、照明、さまざまな機材。
息を詰めて見守るスタッフ。
そして、俳優達。
いつか僕も入りたい・・この中に。
いつも、いつも思っていた。
心が、体中の血が、騒ぎ出す。
“あぁ、僕は・・・映画が好きだ”って。
家に帰った僕らを、母さんの参鶏湯が待っていた。
ヒョンはその晩、いつもより饒舌で、
おいしそうに参鶏湯を食べては、少し焼酎も飲んだ。
そして・・少し頬を染めた母さんの内緒話に驚き、
やさしく母さんを抱き寄せた。
夕食の後、自室に戻ろうとする僕に、
ヒョンが思いついた様にこう言った。
「そうだ!・・なぁ、レウォン。
明日から記者発表まで、オフにしてもらったんだ。
・・釣りに行かないか?久しぶりに、キャンプしてさ。
お前に話しておきたいこともあるし。
いいだろ?男同士でさ、な?」
翌日、僕らはヒョンの運転(これが実は結構怖い!)で、
湖にキャンプに出かけた。
久しぶりの二人だけの遠出。
ヒョンはよく笑い、上機嫌で、
途中出逢った日本のアジュンマ達にも、
笑顔でサインし、記念写真に納まっていた。
そして、湖畔に僕らはテントを張り、
缶詰とラーメンの晩御飯で、心も体も温まり、
ヒョンの特別の許可を得て、僕は少しタバコも吸った。
僕らは、一晩中、いろんな話をした。
『高校の時、友達と海を見に行き、そのまましばらく
帰らなかった話』
『デビュー作の撮影のとき、ほんとに溺れかけた話』
『バック宙が出来るようになって嬉しくて、
調子に乗って骨折した話』
ヒョンの話は面白く、僕らは笑い転げた。
もちろん、男同士の卑猥な話も欠かせない。
ヒョンはさんざん僕をからかい、大いに盛り上がった。
そしてヒョンが話し出した。
『母さんと、出逢った頃の話』
僕も記憶にはあったけれど、
ヒョンの口から語られる母さんへの想いは、
18歳の僕の心にズシンと響いた。
母さんが“僕の母親”としての顔だけじゃなく、
時折見せる“女”としての顔を、
小さな頃は少しフクザツな思いで見ていたこともあったけれど、
この2人には、僕でも到底入り込めない深い愛情がある。
「お前から母さんを奪って、悪かったな・・」
ぽつりとヒョンはそう言った。
・・・ううん、違うよ、ヒョン。
僕はそんな風に思った事、本当にないんだ。
深くタバコを吸いながら、暗い湖をみているヒョン。
その横顔は、僕が見ても、息が止まるくらい美しくて。
・・ヒョン。
僕にとっては、あなたは父さんなんだ。
母さんを奪った人じゃない。
“父”を、与えてくれた人なんだ。
その晩、僕らは、朝まで眠らなかった。
6日間の休暇を、思いっきり楽しんだ僕らは、
気持ちも新たにソウルへ帰ってきた。
休暇中にヒョンから聞かされた “決意”
それと・・・“もうひとつのビッグニュース”
そうして、
記者発表の日はやって来た。
朝から落ち着かないのはヒョンではなく、
僕と母さんの方だった。
ヒョンはそんな僕達を笑い、母さんを抱きしめ、
僕にわざと見せ付けるように、キスをし、
そして、まるでいつもと変わらずに、迎えの車に乗り込んだ。
母さんも出社した。
「家で会見を見てても落ち着かないから・・」
そういって、少し緊張した顔で、出かけていった。
そうだね、母さん。
明日から。
いいや、きっと今日から、
母さんの周りは大変なことになるだろうしね。
僕はその後、会見場に向かった。
今回は自分の目で、ヒョンの会見を見たかったから。
事務所に寄り、他のスタッフと一緒に会見場へ着くと、
もうものすごい数の記者たちが、
国内外から集まってきていた。
立錐の余地がないほどの、脚立、三脚。
プレスカードを首から提げた記者、
マイクテストをするインタビュアー、
そして。
カメラ・・カメラ・・カメラ!!!
これから始まる会見に備え、皆、準備に余念がない。
僕は、非常口のそばのドアの前で、ひとつ深呼吸をした。
そしてプロデューサー、監督が入場した後、出演者が入ってきた。
ヒョンは長い髪をひとつにまとめ、黒のスーツに縁なしメガネ。
背筋をピンと伸ばして、笑顔で入ってきた。
そして、席に着くと・・・僕の方を見て、ニヤっと笑った。
まぶしい程の、一斉のフラッシュ。
報道陣の掛け声が会場に響きわたる。
会見が始まった。
関係者の紹介、このドラマについての解説、
プロデューサー、監督の挨拶、そして・・
主演のヒョンが、マイクを握った。
・・その時、突然僕の携帯が震えだした。
ディスプレイを見て驚いた僕は、慌ててメールを開いた。
『送信者 キム・ミナ 受信者 ペ・レウォン
レウォン君、元気?今日はお知らせがあります。
実は、父がまたソウル勤務になりました。
今回は本社に戻る形なので、たぶんもう転勤はないと思います。
私は音大受験を控えてたし、日本に残ることを先生がたも薦めて
くださったけれど、私もソウルに行く事にしました。
大学は来年またソウルで受けます。
私にはまだ時間があるし、焦ることはないものね。
それに・・少しでも早く、レウォン君の傍に行きたかったから・・
早く逢いたいな。
PS 今・・ソウルに着きました。』
僕は夢中で返信を押した
『送信者 ぺ・レウォン 受信者 キム・ミナ
今、どこ?』
『送信者 キム・ミナ 受信者 ペ・レウォン
“漢江公園”』
驚いて顔を上げると、そこはものすごい喧騒だった。
まばゆいばかりのカメラのフラッシュ。
一斉に叫ぶ記者たちの声。
大混乱の会見場。
もう僕からはヒョンの姿もよく見えない。
あぁ・・・ヒョン。
遂にやったんだね。
ゴメン!!肝心なとこ聞きそびれちゃったよ。
その瞬間に息子として立会いたかったのにな。
僕は、ごった返す会見場を、流れに逆らいながら出口に急いだ。
ああ・・タクシーが捕まらない・・
僕は走った。
君が待っているその場所へ。
今頃、母さんはどうしているだろう。
でも、僕はもう何も心配してないよ。
これから、どんなことが待っていても、
大丈夫。
母さんはヒョンが護ってくれる。
そしてもうひとりの小さな家族が、僕達を見守っていてくれる。
・・僕も少し、大人になったかな。
今、走ってるこの道がどんな絆に繋がるのか、
僕にもまだ分からない。
でも、今は精一杯走ってみたい。
息が切れて、足がもつれても、
待っている人がいる、そこに走って行きたい。
ヒョン。
父さん。
最高にかっこいいよ。
・・・僕の名前は、 「ペ・レウォン」
僕は胸を張って、この名前で生きていきます。
そして僕は、最後の角を、
全速力で、駆け抜けた・・・・・
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