2008/09/26 00:32
テーマ:創作 いつか、あの光の中に カテゴリ:韓国俳優(ペ・ヨンジュン)

いつか、あの光の中に 1話 「入団」

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いつも、私のマニアックな話題^^にお付き合いくださいまして、
ありがとうございます・・

昨日予告しました通り、今日から私の創作「いつか、あの光の中に」を
連載いたします。

これは、昨年1月から、創作サークル【Creative Square】-創作の広場 で、
掲載された作品です。


主役の「影山 仁」に、彼をイメージして書いたお話です。
仁は俳優であり、タップダンサー。彼のダンス姿!を妄想してお読みください。

尚、CS版には私の拙い背景とコラージュがあります。ここは文字だけですが、そちらも気が向いたらお越しくださいね。


 

 





いつか、あの光の中に  1話 「 入団 」

 


君は知らない   


俺がいつから君を見ていたのか

 


君は知らない   


俺がどれほど、君のことを愛しているのか

 


君が幸せならばそれでいい    

 

俺には君は眩しすぎるから

 


だけど


もし許されるなら

 


君の瞼に一度でいい

 


口づけさせてくれないか・・・

 

 

 

 

 

 

『合格通知  木村 瞳 様

  
   おめでとうございます


あなたは、2月20日、当劇団「宇宙(そら)」にて行われた


入団試験に合格されました。


養成所入所式は、4月1日、劇団稽古場にて行われます。


尚、入所手続きは3月15日までに、劇団事務所に・・・・・』

 

 


う、そ?


合格?この私が合格??

 


今、注目されているミュージカル劇団『宇宙(そら)』

その研究生に合格した。

 


私、 木村 瞳 20歳。

 

静岡の田舎の高校を卒業し、花の(?)東京に2年前やって来た。

無謀にも、女優を目指して。

 


高3の夏休み。

友達と見た、「宇宙(そら)」の舞台。


その圧倒的な衝撃に、「絶対、ここに入る!!」と、女優宣言。

卒業後、両親の反対を振り切って、単身上京。


そして、遂に・・・


っていうと、なんかかっこいいけど、

現実はそんなもんじゃないんだよね。

 


反対されて家出同然に出てきたから、

(結構、後先考えないんだ、私って)

まず住むとこから困っちゃって・・

 

不動産屋の前でうろうろしてたら、背の高いオジサンに

「紹介してあげるよ!」って声かけられた。

 

身なりはしっかりした人だったんだよ!

「すぐそこだから・・」なんて言われてあやうく変な店に

“紹介”されそうに。

 

バカだね。まるで田舎モンまるだし!

 


あれから、私も少しは都会人になったんだよ。

新宿の地下街でエステや宗教の勧誘に出合っても、もう大丈夫。

キャッチやナンパも見向きもしない。

 

強くならなきゃ!都会で1人で暮らすには。

 


田舎の母さんは、いつもそっと、仕送りをしてくれる。

父さんに見つからないように、毎月ほんのわずかだけれど。

それでも、役者の卵はいつも金欠だ。

 

それもこの一通のハガキで報われた。

あ~!!うれしいよ~~!!

 


そして、遂に入所の日。

 

“ああ・・これから私の役者人生が始まるんだわ”


感慨にふけってた私はすぐに現実にぶち当たる。

 


みんな、綺麗・・・

背、高い・・・


ここって、どこ??

どうしてここに私がいるの?

なんで私が合格したの?

世界が・・違う・・

 


私は身長150㎝。

どう大雑把に見ても、この人達と20cmは違う。


しかも、今回の試験。


受験者300人。合格者30人。内、女子は、10人。

劇団員に残れるのはその中から2、3人って聞いた。

私、このモデルみたいな人達とライバルにならなきゃなんないの?

 


あ・・・めまいしてきた。

 

落ち込んだ私の隣で、ニコニコ笑ってる女の子。

 

“ほっ・・10人並みじゃん”

 


「たぶん、私、今あんたと同じこと考えてたよ。

私、“相原 萌”。あいちゃんって呼んで!ヨロシク!」

 

「あ・・木村 瞳です。よろしく・・

あいちゃん?萌ちゃんじゃないの?可愛い名前なのに」

 

「そう、そこが問題。

私の顔、“萌”ってイメージじゃないんだってさ。

失礼しちゃうよね。このまま芸名でいける名前なのにさ。

昔からそう呼ばれてるから、瞳もそう呼んで!

あ、瞳でいいよね。あんたとは仲良くやれそうだ。

あのモデルみたいな連中とは話合いそうにないもん。

しかし、私達、何で受かったんだろうね。

ゴメン、率直な意見だ。あぁ瞳は分かる。あんた、歌うまいよね。

憶えてるよ、試験の時聞いたから。私は・・やっぱダンスかな?

4歳からクラッシック、モダン。ずっとやってたから。

我々の容姿じゃ到底あんなのに敵わないもんね。

あ!またまたゴメン!」

 


ふっ・・なんか少しホッとした。

今すぐシッポ巻いて逃げちゃおうかと思ってた。


少し落ち着いた頭で稽古場を見ていると、何か視線を感じる。

 

「何?・・」

 


視線の主が私に向かってピースした?


・・・・あ~~~!!!

 

「拓海せんぱ、い?」

 

「やっと気がついたか、瞳。

俺はお前が入ってくる時からずっと見てたのに。

どうした?驚いたろ。」

 


田舎の高校の演劇部。

私達女子の憧れの部長、緒方拓海先輩。

 

背が高くてカッコ良くて、芝居もダンスもすごく上手くて。

全然勉強してそうも無かったのに、あっさり現役で東京の大学

受かったって聞いてたのに。


それがいったいどうして、ココに?

 


「大学には行ったさ。勉強だってしてたんだぜ。

芝居は趣味って親とも約束してたのに、こっちで宇宙の舞台

見たらもう堪らなくて。

やっぱり役者になろうって思って1年で辞めたんだ。

親には泣かれたよ。ハハ、もう勘当同然。

俺は去年劇団員になったんだ。

今年の本公演でやっと役もらえてさ。

お前が来るって知って俺、ワクワクして待ってたんだぜ。

また一緒に芝居できるな。瞳・・絶対上がって来いよ。

研究生で落ちたら承知しないからな!」

 


うわ!すっごいプレッシャー。

 

でもココに先輩がいるなんて。


だって・・・


ずーっと、好きだったんだもの。


私が演劇部に入ったのだって、

新入生勧誘公演のときの先輩を見たからだし。

 


やさしくて、かっこよくて。


あの時よりもっと素敵になったなあ。

 

上かぁ・・


一年後、私は残ってるのかな。

こんな人達を何人も抜いて。

 

 


入所式が始まった。

 

正面に劇団関係者(要するにお偉いさん)が、

ずらーっと並ぶ。

 

劇団代表、幹部俳優、養成所講師。

 

あ・・あの人。

萩原 咲乃だ。

 

この劇団の看板女優。

彼女の魅力がこの劇団の大きな“売り”。

 

わ~っ、やっぱオーラが凄いよ。

周りが光って見えるもん。きれ~い!

 

でも思ったより背ちっちゃいんだ。

舞台では大きく見えるのに。

なんかちょっとホッとしたかも。

だからといって、私が小さいのとは関係ないけどさ。

 

演出家でもある劇団代表木島さんの話。

 

「なんでも吸収できる新しいスポンジになれ!

未経験者も、いままで芝居をやっていた者も、

真っ白になってついてきてくれ。」

 

宇宙の色に染まれってことかな。


うん。ある意味、私は“真っ白け”だけどね。

 

さ、頑張らなきゃ。

そのために今までやってきたんだもん。

それに、拓海先輩が上で待ってくれてるし。

 

武者震いにドキドキが加わって、

私の心臓は今にも爆発しそう。


本当に、本当に私、


これから役者になるんだ・・

 

 


そんな私を稽古場の隅からじっと見ていた人がいたんだ。


その時の私はまるで知らなかったけれど・・

 

 

黒の皮ジャンに黒いサングラス。


長い足を無造作に組んで、フロアに直に座っている。

 

 

劇団宇宙幹部俳優   影山 仁(じん)

 

 

その後の私の人生を変えてしまう男だった。



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